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2. 日本語発音講座の概要今回新しく制作することになった日本語発音講座 ( 第 1 回 ~ 第 5 回 ) の各回の構成は次のとおりである 1) 本編 : 講師による講義映像 ゲストによるインタビュー映像 2) 会話で学ぶ日本語発音 & カルチャー ( 仮題 ): 発音を焦点化した会話教材 3) シ

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MOOCs(Massive Open Online Courses)による

日本語発音講座の開発プロセス

戸田貴子(早稲田大学日本語教育研究科・教授)

大久保雅子(東京大学教養学部・非常勤講師)

サイ ティ マイ(ホーチミン市師範大学日本語学部・専任講師/

早稲田大学日本語教育研究科博士後期課程)

1.MOOCs の開発背景と教育的意義

世界中の日本語学習者ならびに日本語教育関係者に向けた「日本語」に関する講座を MOOCs(Massive Open Online Courses) の 世 界 的 プ ラ ッ ト フ ォ ー ム で あ る edX (https://www.edx.org/)1で配信することになった。MOOCs は edX 以外にも Coursera

など複数あるが、日本語教育コンテンツはどのプラットフォームにも未だ提供されていな い。本企画は、世界初のMOOCs による日本語教育コンテンツの開発について、その開発 プロセスを参加者と共有するものである。 本講座は 4 月に正式にNihongoX プロジェクトとして発足した。5 月にはプロモーショ ンビデオ制作開始、6 月にシラバス確定、7 月には受講申込開始、8 月には本編(全講義、 会話教材、シャドーイング練習用教材、インタビュー等)収録、その後の編集作業を経て、 11 月に講座開講というスケジュールは、従来の教材開発の常識を逸脱したものである。教 材・教育コンテンツの開発は膨大な時間と労力を要するものであるからだ。たとえば、拙 著「コミュニケーションのための日本語発音レッスン」(2004)は 4 年間、8 学期にわた る発音クラスでの簡易製本版の使用を経て、出版に至ったものである。 開発プロセスにおける最重要課題のひとつはプロジェクト構成員間の合意形成である2 合意形成における課題は複数あるが、本発表では、次の2点を挙げる。1)語学教材とし ての日本語教育コンテンツのあり方、2)ターゲット受講者層の設定。 本講座のベースとなったのが、上記の発音教材に基づき、日本語音韻学習を行うことに より、発音に対する意識化を促すことを目指して開発したオンデマンド日本語発音講座で ある(戸田 2009)。2009 年以来、大学の留学生対象発音クラスで継続的に運用されている。 昨年度まで、正式に履修登録をした学生のみがCourseN@vi にアクセスし、本コンテンツ

を利用できるようになっていたが、2015 年 5 月から Waseda Course Channel という講義 動画サイトで一般公開されている。これにより、インターネット接続環境があれば、国内 外の日本語学習者が自由にアクセスし、発音学習をすることが可能となった。アクセス状 況に関する調査の結果から、学外からの接続比率が高く、国内よりも海外からの接続比率 が高いことがわかっている。このことは、海外の日本語教育関係者によるニーズを反映し ていると言えよう。また、Waseda Course Channel で公開されている全ての学問領域の

講義動画の中で、2015 年の視聴回数合計が1位であったことから、日本語教育関連コンテ

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2.日本語発音講座の概要

今回新しく制作することになった日本語発音講座(第1 回~第 5 回)の各回の構成は次 のとおりである。 1) 本編:講師による講義映像・ゲストによるインタビュー映像 2) 会話で学ぶ日本語発音&カルチャー(仮題):発音を焦点化した会話教材 3) シャドーイング練習用教材:シャドーイング練習に使う音声教材 4) 世界の日本語学習者の発音:世界で活躍する日研修了生・在籍生による実践報告 5) 発音チェック:会話を録音した音声ファイルを提出し、チェックを受ける機能 6) ディスカッションフォーラム:受講生の意見交換の場

7) Quiz(第1回~第4回)および Final Test(第5回)

上記のように、講師による一方向的な講義に留まらず、学習者が主体的に学習に関わり、 発音練習を継続することができる機能が充実している。「伝えたい内容や気持ちがきちんと 伝わる発音で日本語が話せるようになること」を目標に、日本語の発音の仕組みを学習し、 発音練習を行い、発音の練習方法を身につけることができるよう工夫を凝らしている。し かも、講義受講、Quiz、Final Test をこなし、シラバスに定められている一定の評価基準 (60%以上)を満たすと、希望者には edX の「修了証」が発行される。これは、すでに就 職活動等に有利になるとの報告もなされており、今後もより多くの人々に、教育の機会を 提供する公開教育資源としての役割を果たすと考えられる。

3.発音を焦点化した会話教材-「会話で学ぶ日本語発音&カルチャー(仮題)

本教材は、本編講義と連動した会話教材である。現在、日本語教育において DVD 等の 視聴覚教材やe-learning 教材が複数存在するが、オンライン動画による「音声に特化した 会話教材」は管見の及ぶ限り見当たらず、画期的な教材と言える。 3.1.概要 本教材の構成を表1 に示す。第 1 回では、日常生活で欠かせないあいさつの日本語発音 を学ぶことができる。第2 回では、2020 年の東京オリンピックをトピックにした会話で、 名詞のアクセント・複合名詞のアクセントを学習する。第3 回では、若者の自然な会話の 中で、イントネーションの特徴を学ぶことができる。第4 回は、ビジネスパーソンの会話 の中で、出張場面を取り上げ、話しことばの発音を学習する。MOOCs は大学生等の若年 層だけでなく、社会人層の受講者も多いため、若者の日本語会話に偏ることなく、社会人 の日本語会話も学ぶことができるよう配慮している。第5 回は、会話の中で発音の上達の ための練習方法を紹介し、学習者の自律学習を促している。

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表1 各週の構成 回 タイトル 音声項目 フォーマル/インフォーマル 第1 回 卒業式 あいさつの発音 フォーマル・インフォーマル 第2 回 東京オリンピック 複合語アクセント、強調、清濁 フォーマル 第3 回 原宿 イントネーション、名字のアクセント、外来語のアクセント インフォーマル 第4 回 出張 縮約形、短縮語 フォーマル・インフォーマル 第5 回 応援団 外来語の発音、短縮語 フォーマル 3.2.カルチャー紹介 本教材では、日本語発音を学習する会話教材の中で、会話のトピックと連動したカルチ ャーを取り上げ、紹介している。(表 2)。海外ではアニメやマンガなど日本のポップカル チャーをきっかけに日本語学習を始める学習者も多い。伝統的な日本文化に偏らず、様々 なカルチャーを紹介することによって、海外で学ぶ日本語学習者の日本への関心を高める ことが期待される。 表2 カルチャー紹介の内容 回 カルチャー紹介 回 カルチャー紹介 第1 回 卒業式、お祝いの品、名刺交換 第4 回 日本食、駅弁、ご当地グルメ 第2 回 東京、オリンピック、五輪マーク 第5 回 学ラン、応援団、日本のスポーツ 第3 回 原宿ファッション、原宿駅、ポップカルチャー

4.世界の日本語学習者の発音―ベトナム人日本語学習者を中心に

各回の講義における「世界の日本語学習者の発音」では、中国語、韓国語、英語、タイ 語、ベトナム語を母語とする日本語学習者の発音の特徴と指導法・学習方法について、世 界各地で活躍する日研修了生・在籍生による動画が提供されている。 本発表では、近年日本語学習者の激増とともに、発音上の問題が指摘されることが多く なっているベトナム語を母語とする日本語学習者に焦点を絞りたい。 4.1 ベトナム人学習者の発音上の問題点 ベトナム人学習者の発音の一番大きな問題点として、日本語にベトナム語にない子音が ある場合、ベトナム語にある子音で置き換えることが挙げられる(戸田・大久保2016b)。 まずは、「ヤ行音」と「ラ行音」の発音である。ベトナム語には「ゆ」[yêu]にやや近い 音はあるが、「や」と「よ」の発音が存在しない。そこで、ベトナム人にとって、母語で一 番近いと感じられる「d」で置き換える傾向がある。しかし、ベトナム語の「d」の発音 は、従来の歯茎破裂音より緩い発音であるため、日本語母語話者には、緩い「z」に聞こ えてしまう。これが、「山」が「ざま」、「夜」が「ぞる」のように発音される原因である。

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もう一つの問題点は、「ラ行音」の発音である。「ラ行音」は、ベトナム語にはないため、 ベトナム語で近い子音、[l],[n],[d]に置き換えられることがある。例えば、「衣(ころも)」 は、「こども」と「このも」になる場合がある。[l]で置き換えられた場合は、問題は少ない が、[n]で置き換えられた場合は、「ラ行音」が「ナ行音」になってしまう。また、[d]で置 き換えられた場合は、日本人には「ダ行音」や「ザ行音」に聞こえてしまう。 4.2 ベトナム人日本語学習者への指導法・学習法 ベトナム人日本語学習者の発音指導に関して、出身地、母方言等ベトナム人学習者の背 景に合わせ、様々な指導法と学習法が考えられる。本発表では、ここで指摘した発音の問 題点およびアクセントの問題点に対する具体的な指導法・学習法を提案したい。

5.まとめ

本企画では、MOOCs による日本語教育コンテンツについて、その開発プロセスを発表 した。7 月に受講申込を開始したところ、現在の登録者総数はすでに4000 名を超えてい る(2016 年 9 月 2 日現在)。数千人規模におよぶ本講座の具体的な授業運営方法について は、別の機会に譲りたい。 注 1. edX:Harvard 大学、MIT が共同で設立したオンライン授業配信プラットフォームであ り、約 75 の教育機関ならびに企業・団体が参画、600 以上のコースに約 500 万人の学 習者が登録している。 2. 本プロジェクトは、大学総合研究センター・早稲田アカデミックソリューション・戸 田研の 3 チーム、合計 12 名により構成されている。 参考文献 戸田貴子(2009)「日本語教育における学習者音声の研究と音声教育実践」『日本語教育』142 号、日本 語教育学会、pp.47-57 戸田貴子(2004)『コミュニケーションのための日本語発音レッスン』スリーエーネットワーク 戸田貴子・大久保雅子(2016a)「国内外で学ぶ日本語学習者の自律的な発音学習を促すオンデマンドコ ンテンツ」2016 年度日本語教育学会春季大会予稿集、pp.325-326 戸田貴子・大久保雅子(2016b)「ベトナムにおける日本語発音指導―ベトナム方言を考慮して―」 2016 年日本語教育国際研究大会(Bali ICJLE2016)

Waseda Course Channel<http://course-channel.waseda.jp/subject/contents>(2016 年 7 月 30 日) edX(NihongoX)<https://www.edx.org/course/japanese-pronunciation-communication-wasedax-jpc111x >(2016 年 7 月 30 日)

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トダ タカコ([email protected])・オオクボ マサコ([email protected])・ サイ ティ マイ([email protected])

表 1  各週の構成  回  タイトル  音声項目  フォーマル/インフォーマル  第 1 回  卒業式  あいさつの発音  フォーマル・インフォーマル  第 2 回  東京オリンピック  複合語アクセント、強調、清濁  フォーマル  第 3 回  原宿  イントネーション、名字のアクセント、外来語のアクセント  インフォーマル  第 4 回  出張  縮約形、短縮語  フォーマル・インフォーマル  第 5 回  応援団  外来語の発音、短縮語  フォーマル  3.2.カルチャー紹介    本教材では、日

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