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今、日本は.PDF

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今 、日本 は

目 次 第 1章 今 、日 本 は 第 2章 技 術 開 発 の ジレンマ 第 3章 プロパテントの 潮 流 第 4章 産 業 、技 術 、そして 科 学 第 5章 知 識 社 会 の 出 現 第 6章 非 必 要 経 済 社 会 第 7章 文 化 、文 明 そして 西 欧 文 明 の 飛 躍 第 8章 若 人 へ の メッセージ

資 料 編

図1 100年間の成長率 図2 日本の内外価格差 図3 製造業の中間投入価格の推移 図4 時間当たり労働生産性上昇率(製造業) 図5 物価水準と1人当たりGDP(2000年) 図6 労働分配率の変化:全産業 図7 比較優位構造の変化(1990-96年) 図8 10年単位で見た世界経済成長率 図9 経済成長率の寄与度分解 図10 主要国の研究費の推移 図11 R&D投資収益率の低下 図12 先後願の実例 図13 産業革命のダイナミズム(Ⅰ) 図14 産業革命のダイナミズム(Ⅱ) 図15 産業革命の意義 図16 知識社会とは? 図17 情報・知識・知恵 図18 職業別就業人口構成 図19 鉄鋼・エネルギー・貨物輸送の対GDP比 図20 輸入/輸出量 図21 戦略とは 図22 ミンフォード・チャート 図23 Marketingと営業 図24 クルーグマン・チャート 図25 ルイス的転換点 図26 中国の失業者 図27 バーノンのプロダクト・サイクル 図28 3つの資本主義 図29 スイスの時計・日本の時計 図 30 私の薦める本 25 冊

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第 1章 今 、日 本 は (1)今 日 は 、2 0 0 4 年 5 月 2 日 、ゴールデンウィークの 最 中 である。今 朝 の 朝 日 新 聞 朝 刊 1 面 トップは 「視 聴 率 3 0 % 超 、大 ヒット激 減 」と言 う見 出 し だった 。休 みなのでゆっくり新 聞 も読 める。見 出 しを見 た瞬 間 に何 を考 えた だろうか ? たいていの 新 聞 の 1 面 トップは 、政 治 ニュースか 経 済 的 な動 き に関 する報 道 である。まず「今 日 は 変 わった 見 出 しだなあ。」と感 じた。テレ ビの 大 ヒット番 組 の 目 安 は 「視 聴 率 3 0 % 以 上 」との 事 で あ り、四 半 世 紀 前 に比 べ 1 % 以 下 に激 減 していることが ビデオ・リサーチの 調 べでわかった と書 かれている。3 0 % を超 えた番 組 の 放 送 回 数 は 、7 9 年 の 延 べ 1 8 6 0 回 をピークに、8 2 年 に 1 千 回 を割 り、9 5 年 か ら 1 0 0 回 を下 回 り続 け、0 3 年 には 1 0 回 に落 ち込 んでしまったと。何 故 このように 約 1 0 年 単 位 で一 桁 ず つ減 り続 けたのか? これだけはっきりした 変 化 が 四 半 世 紀 に も亘 って続 い ている事 実 は 、決 して偶 然 ではない。社 会 変 化 がこの 減 少 を引 き起 こして いると考 えられる。ここでいかなる社 会 変 化 が 大 ヒット激 減 の 背 景 にあった か を考 えてみて欲 しい。 この 朝 日 新 聞 の 紙 面 では 、まず 1 日 1 世 帯 当 たりの 平 均 視 聴 時 間 は 9 0 年 8 時 間 3 分 、9 3 年 8 時 間 2 8 分 、0 3 年 は 8 時 間 とほ とんど横 ば いと伝 えた上 で、時 間 帯 による総 世 帯 視 聴 率 を 9 0 年 と 0 3 年 で比 べると 午 前 8 時 台 は 5 1 . 4% か ら 4 8 . 9% 、ゴールデンタイム の 午 後 8 時 台 も 7 2 . 5 % か ら 6 9 . 0 % に 減 少 しており、一 方 、午 前 1時 台 は 1 0 . 5 % か ら 1 8 . 2% へ 、また午 前 5 時 台 も 3 . 9 % か ら 1 1 . 4 % へそれぞれ 大 幅 に 増 えて いることを報 じている。深 夜 型 ・早 朝 型 な ど日 本 人 の ライフスタイル の 多 様 化 や 社 会 の 高 齢 化 が 朝 の 連 続 ドラマや 夜 の ゴールデンタイム の 視 聴 率 を 押 し下 げているのであろうというのが朝 日 新 聞 の 結 論 として書 かれている。

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私 は 、ライフスタイル の 変 化 や 高 齢 化 という原 因 が 視 聴 率 の 高 い時 間 帯 の 視 聴 率 を下 げ、そ れ が 大 ヒットを減 らしているのも事 実 と思 うが 、それ 以 上 に 日 本 人 の 価 値 観 の 変 化 が 大 ヒット激 減 の 最 大 の 原 因 ではないか と思 う。 記 事 の 中 で大 ヒットは 、NHK の 朝 の 連 続 ドラマが 多 い と書 か れ て い て 、 1 9 9 4 年 度 以 降 、朝 の 連 続 テレビ小 説 の 平 均 視 聴 率 が 3 0 % を超 えたこと は 一 度 もないそうで ある。 N H K の 朝 ドラは 、日 本 の 平 均 的 家 庭 人 に 強 く訴 えるものを持 っていた。 1 9 8 3 年 には 「おしん 」が 5 2 . 6 % という超 高 視 聴 率 を得 た。その 朝 ドラが 大 ヒットに 繋 がらなくなったのは、平 均 的 日 本 人 自 体 が 消 滅 し、人 々 が 多 様 な 価 値 観 を持 つようになったからと思 わ れ る。バブル 崩 壊 以 降 の 経 済 不 況 が 長 引 く間 に所 得 分 布 の バ ラつきが 始 まったと言 われているけれども、 依 然 として日 本 の 幅 広 い階 層 が 中 産 階 級 に 所 属 しているという意 識 を持 っている。そ の 中 産 階 級 意 識 の 中 で 多 様 な価 値 観 が 生 れ 、多 様 な選 択 肢 が 嗜 好 されるようになってきた。 2 0 世 紀 最 大 の 社 会 実 験 であった 社 会 主 義 が 失 敗 し、世 界 が 1 つの 市 場 の 中 でグローバル・メガ・コンペティション を競 うこととなった。日 本 が 戦 後 官 主 導 で中 産 階 級 を中 心 とする同 質 的 社 会 を築 き、強 い 国 際 競 争 力 の 産 業 がもたらす 国 富 によって 、少 な い 犯 罪 、マ イ・ホ ー ム 主 義 、エコノミッ ク・アニマルという小 市 民 的 安 逸 をエンジョイ出 来 た時 代 は 1 9 9 0 年 代 の バブル 崩 壊 と共 に終 った。 大 ヒット番 組 の 激 減 に顕 れ た内 なる価 値 観 の 多 様 化 と今 、求 められてい る自 己 責 任 の 社 会 へ の 志 向 に対 し、国 際 的 には 「安 くて良 い規 格 品 を大 量 に作 って世 界 中 で売 る」というビジネス・モデル は 中 国 ・東 アジアの 台 頭 によって 終 焉 を迎 え、次 なるビジネス・モデル は 出 来 ていない。ドイツの IW

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経 済 研 究 所 が 発 表 した 1 9 0 0- 1 9 9 9 年 の 1 0 0 年 間 の 国 民 1 人 当 たりの 実 質 経 済 成 長 率 は 、日 本 が 1 6 6 0 % で飛 びぬけて 1 位 だった 。(図 1 参 照 ) 明 治 維 新 以 来 、欧 米 以 外 のどの 国 も達 成 出 来 なかった 豊 か な物 質 文 明 社 会 を日 本 は 実 現 できた。戦 争 と植 民 地 主 義 の 間 違 いは 強 く反 省 し なければならないけれども、勤 勉 な労 働 と賢 明 なリーダーシップによっても たらされた経 済 的 繁 栄 や 犯 罪 の 少 なさは 誇 りにして 良 い と思 う。唯 、今 、 日 本 は 様 々 な問 題 と抱 えて、明 確 なヴィジョン もなく、グローバル競 争 の 海 で漂 いはじめていることは 確 かである。価 値 観 の 多 様 化 の 裏 には 、価 値 観 の 喪 失 が 潜 んでいるように 思 わ れ る。多 くの 人 たちに支 持 される目 標 、説 得 力 のある理 念 として語 られるものがなくなってしまった 。日 本 は 、どこに行 こうとしているのか誰 にもわからない。この 状 況 の 中 で、私 なりに 今 までの 人 生 で考 え 続 けてきたことを整 理 し、自 分 なりに 次 の 世 代 に 考 えるべきと 信 じるものを書 き残 しておこうと考 えた。 (2)まず日 本 経 済 の 体 質 が 抱 える問 題 をいくつかの図 表 で辿 ってゆくこと か ら始 めよう。 (イ)世 界 一 の 高 コスト社 会 図 2 を見 ると日 本 の 諸 価 格 が 諸 外 国 に 対 し、い か に高 い か が 一 目 瞭 然 で あ る。特 に サービス 産 業 の 価 格 競 争 力 の 差 が 大 きい 。 少 し古 いが 1 9 9 4 年 にシャープがまとめた経 営 資 源 の 価 格 比 較 で も陸 上 運 賃 3 0 0 k m (2 0 フィートコンテナ)という項 目 で日 本 を 1 0 0 とした場 合 、米 国 1 9 、欧 州 1 5 、タイ 2 5 となっている。図 3 は 製 造 業 へ の 非 製 造 業 からの 中 間 投 入 価 格 の 推 移 を示 している。9 5 年 以 降 、上 昇 を続 けている。デフレ現 象 下 での 上 昇 は 構 造 的 要 因 に

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よるものであろう。製 造 業 からの 中 間 投 入 価 格 は 1 9 9 0 年 以 降 一 貫 して低 下 していることと対 照 的 である。図 4 で見 る通 り、時 間 当 たり労 働 生 産 性 上 昇 率 で製 造 業 は 1 9 8 0 年 代 、1 9 9 0 年 代 ともに 欧 米 に 比 べ 遜 色 がない 。日 本 の 製 造 業 は 高 価 格 の サービス とエ ネ ル ギ ー にもかかわらず 健 闘 している訳 だ 。もし、サービス とエネル ギー が 米 国 並 みであったなら、製 造 業 の 価 格 競 争 力 は 相 当 改 善 さ れ る の は間 違 いない 。では 、何 故 、日 本 の サービス とエネルギー が 高 い の か ? 私 は 規 則 緩 和 の 不 徹 底 に尽 きると思 う。参 入 障 壁 を撤 廃 し、不 必 要 な規 制 を廃 止 して、新 規 参 入 を促 進 し、新 規 ビ ジネス形 態 の 出 現 を応 援 すること、つまりは 競 争 原 理 の 徹 底 を図 れ ば 、かなりの 価 格 低 下 が 生 じると期 待 され る。唯 、エネルギーに ついては 、ドイツと同 様 に税 政 策 によって 高 価 格 が 与 儀 なくされて いるので、これを変 更 しない限 り大 きな価 格 低 下 は 難 しい。我 が 国 の 乏 しい 資 源 事 情 と産 業 政 策 上 省 エネ 型 産 業 を強 化 すべきこと を考 慮 すると、高 価 格 エネルギー 政 策 は む しろ維 持 すべきであろう。 ところで余 談 であるが 、経 済 学 がもっとこのような 国 際 的 な価 格 差 を研 究 し、積 極 的 に政 策 提 言 すべきであると考 えられるが 何 故 そ うならないのだろうか 。2 0 世 紀 初 頭 か ら増 大 し続 けている政 治 、行 政 、司 法 という政 府 の コスト差 比 較 も含 め、優 れ た 学 問 的 成 果 を 期 待 したい。科 学 的 分 析 によってのみ正 しい 政 策 が 創 出 される。 図 5 で日 本 が 高 い 1 人 当 たり G D P にも拘 らず世 界 最 高 の 物 価 水 準 によって 豊 さを実 感 出 来 な い現 状 が 表 現 されていることを付 言 する。 ( ロ) 日 本 資 本 は 労 働 優 遇 一 国 の 経 済 活 動 は 、付 加 価 値 の 発 生 ととらえられる。その 付 加

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価 値 労 働 の 報 酬 たる人 件 費 と投 下 資 本 へ の 配 分 たる企 業 利 益 (税 引 前 )と利 子 とに分 割 される。労 働 分 配 率 は 、付 加 価 値 ÷ 人 件 費 で表 される。図 6 に示 された我 が 国 の 労 働 分 配 率 は 、1 9 8 0 年 以 降 、ほ ぼ 一 貫 して上 昇 を続 けており、1 9 9 2 年 以 前 は 米 、英 、 独 より低 かったけれどもバブル 崩 壊 以 降 は 、これらの 諸 国 が 少 しず つ 低 下 し つ つ あ る の に対 し、依 然 として 上 昇 を続 け て お り、今 や 数 % これら諸 国 よりも高 くなっている。バブル 崩 壊 以 降 、日 本 企 業 は 成 果 主 義 の 導 入 、リストラ等 の 人 員 削 減 、人 件 費 削 減 等 の 痛 み を伴 う改 革 を断 行 してきた。当 然 、労 働 分 配 率 は 減 少 している と思 わ れ た の で、この 数 字 は 意 外 である。付 加 価 値 が 減 少 する過 程 で 日 本 企 業 は 出 来 るだけ労 働 へ の 配 分 を温 存 す る態 度 を維 持 してきた訳 である。欧 米 企 業 は 、グローバル競 争 化 で資 本 強 化 に 向 かっているのだからこの 傾 向 は 決 して 喜 ばしいことと手 放 しで 歓 迎 することは 許 されない。ごく一 部 の 企 業 を除 き、多 くの 平 均 的 企 業 は 、内 部 留 保 してきた備 蓄 も使 い果 たしたり、持 株 の 株 価 下 落 によって 資 産 の 目 減 りを余 儀 なくされている。グローバル 競 争 が ますます 進 んでいる現 今 において労 働 分 配 率 が 依 然 として上 昇 し、 欧 米 に 差 をつけられているのはやはり大 きな問 題 で あ り、こ れ を下 げる努 力 をしなければならない。 (ハ )日 本 製 品 の 輸 出 競 争 力 図 7 は 、経 産 省 の 「機 械 統 計 」か ら東 洋 経 済 社 が 作 成 した資 料 であるが 、中 に引 いたラインは 私 が 勝 手 に引 いたものだ。 同 一 の 商 品 、例 えば 、カラーテレビが 日 本 か ら外 国 へ 輸 出 された 金 額 か ら外 国 か ら日 本 へ 輸 入 された金 額 を差 引 いて、その 残 りを

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純 輸 出 という。この 表 は 、1 9 8 9 年 の 純 輸 出 額 を 1 0 0 として純 輸 出 額 の 変 化 を表 したものだ。マイナス表 示 は 、純 輸 出 額 が マイナス、 つまり輸 入 の 方 が 輸 出 より大 きくなった事 を示 している。1 0 0 を上 廻 れ ば 、純 輸 出 額 の 増 加 、1 0 0 を下 廻 れ ば 、純 輸 出 額 の 減 少 で ある。真 中 の 開 閉 制 御 器 か らコンデンサーまでの ラインに 囲 まれた 製 品 群 は 、す べ て 1 0 0 以 上 な の に対 し、その 上 の 製 品 もその下 の 製 品 もすべて例 外 なく1 0 0 以 下 となっている。よく見 ると 1 0 0 以 上 の 製 品 は す べ て最 終 消 費 財 ではない。逆 に 1 0 0 以 上 の 製 品 は 、 す べ て 最 終 耐 久 消 費 財 で あ る。実 はこの 事 に 気 付 い た の は 偶 然 だった 。英 訳 をしようとして 開 閉 制 御 装 置 の ところで単 語 が 出 て来 なくなった 。日 頃 我 々 がそれ 自 体 として使 っていないモノだ か ら英 語 を知 らない訳 で 、上 や 下 の 最 終 消 費 財 の 中 に 組 み 込 まれる機 能 部 材 であった 。 機 能 部 材 は 、す べ て純 輸 出 が 増 加 している。最 終 消 費 財 はすべ て純 輸 出 が 減 少 し、いくつかのものは、輸 入 超 過 になっている。こ の 事 は 、何 を意 味 するのだろうか ? 最 終 消 費 財 は 、機 能 部 材 を組 み 立 てたアセンブリー 製 品 である。機 能 部 材 が 知 識 集 約 財 だとす ると、アセンブリー 製 品 は 、その 知 識 集 約 財 の 周 りに肉 体 労 働 とい う価 値 を取 り付 けたものといえる。具 体 的 には 、乗 用 車 で言 えば 、 エンジンとか 変 速 機 という機 能 部 材 、知 識 集 約 財 の 周 りにボ デ ィ ーという知 識 集 約 度 の 低 い部 材 を肉 体 労 働 で取 り付 けるという訳 だ。 日 本 が 重 厚 長 大 の 重 化 学 工 業 か ら軽 少 短 薄 という組 立 加 工 型 の 産 業 にシフトし、世 界 最 強 の 競 争 力 を誇 った 1 9 7 0 年 代 後 半 か ら 1 9 8 0 年 代 末 までとは 異 なる状 況 が この 図 7 に示 されている。

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本 章 の 要 約

・ 明 治 維 新 か ら 2 0 世 紀 にかけて、日 本 経 済 は 成 功 したといってよい。 安 くて良 いものを大 量 に作 るビジネス・モデル

・ しか し、この モデル は アジア諸 国 の キャッチ・アップによって 通 用 しなく なってきた 。社 会 の 求 心 力 も失 われてきた 。

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第 2 章 技 術 開 発 の ジレンマ (1)図 8 は 、第 2 次 世 界 大 戦 後 の 世 界 経 済 全 体 の 成 長 率 を 1 0 年 単 位 で見 たものである。この 図 で明 確 に 見 てとれるのは 、1 9 7 0 年 代 以 降 の 成 長 率 の 鈍 化 である。右 の 欄 は 左 側 の 成 長 率 を人 口 増 加 率 で割 って 、1 人 当 たりの 成 長 率 を出 したものであるが 、これだと 1 9 7 0 年 代 以 降 の 成 長 率 鈍 化 はもっとはっきりしている。この データは 1 9 9 7 年 からの アジアの 経 済 危 機 以 前 の 1 9 9 4 年 までしかないので、1 9 9 0 年 代 は 日 本 を除 くアジア だけでなく、欧 米 も絶 好 調 だった 1 9 9 0 年 代 前 半 の 時 期 であるにも拘 らず、 1 人 当 たりの 成 長 率 は - 0 . 3 % とマイナスになっている。 何 故 、1 9 7 0 年 代 以 降 に世 界 経 済 の 成 長 率 が 鈍 化 したのかの考 察 に ついては 第 5 章 で詳 しく述 べ る予 定 な の で、ここでは、成 長 率 鈍 化 が 何 を もたらしたかを考 えてゆきたい。 図 9 は 「日 本 の 経 済 成 長 率 の 寄 与 度 分 解 」である。見 て分 か る通 り経 済 成 長 率 は 、経 済 成 長 に寄 与 する 3 つの 要 素 に因 数 分 解 できる。「資 本 の 寄 与 」、「労 働 の 寄 与 」、「その 他 の 要 素 」の 寄 与 である。資 本 と労 働 の 寄 与 量 は 、資 本 、労 働 の そ れ ぞ れ の 分 配 率 に そ れ ぞ れ の 伸 び 率 を掛 けて 算 出 される。経 済 成 長 率 からその 資 本 の 寄 与 量 と労 働 の 寄 与 量 を差 引 い た も の が、「そ の 他 の 要 素 」の 寄 与 で あ り、そ の 理 由 か ら「そ の 他 の 要 素 」の 寄 与 分 を残 差 成 長 率 とも言 う。アメリカの 経 済 学 者 の ロバート・ソロ ーがこの 「『その 他 の 要 素 』の 寄 与 の 内 容 は 、技 術 革 新 である」という説 を 発 表 し、支 持 されるようになった 。資 本 、労 働 と言 う生 産 要 素 をより効 率 よく使 用 することを可 能 とする技 術 革 新 によって 、新 しい付 加 価 値 が 生 ま れるという訳 である。唯 、技 術 革 新 といっても製 造 業 の 物 作 りの 技 術 に限 定 される訳 ではない。資 本 、労 働 という生 産 要 素 の 使 用 効 率 の 向 上 によ る付 加 価 値 の 増 大 をもたらすもの 全 てがここでいう技 術 革 新 である。技 術

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= テクノロジーと解 すると狭 すぎる。シュンペーター の 言 うイノベーションと同 義 に解 するべきであって 、製 造 業 以 外 でも、新 しい 金 融 商 品 や サービス ・ ビジネスの 創 出 、更 には 産 学 連 携 による新 規 事 業 もある。図 9 で T F P 寄 与 と示 されている部 分 がこの イノベーション による成 長 寄 与 率 である。T F P は t o t a l f a c t o r o f p r o d u c t i v i t y の 略 であり、全 要 素 生 産 性 と訳 される。 1 9 7 0 年 代 以 降 の 経 済 成 長 鈍 化 は 、各 企 業 に 技 術 革 新 による生 き残 りを強 いた。各 企 業 は イノベーションによる成 長 を目 指 して知 恵 を絞 り、戦 略 を錬 った。成 長 率 が 鈍 化 すると言 うのは、市 場 の 伸 びが 小 さくなることで ある。お 金 (資 本 )と人 (労 働 )を調 達 して、新 しい 工 場 を建 て れ ば 企 業 が 発 展 できるのは 、高 度 成 長 期 である。新 しい 工 場 を作 っても、売 れなけれ ば 、企 業 は 大 きくならないし、下 手 をすると倒 産 するかもしれない。 図 1 0 で見 るようにどの 国 も 1 9 7 0 年 代 か ら研 究 開 発 費 をどんどん増 や し ている。各 企 業 の 研 究 開 発 費 の 増 大 による結 果 である。 「当 社 は 、技 術 による差 別 化 戦 略 を追 求 する。」「我 々 は 、技 術 を磨 いて 競 争 に 打 勝 つ。」等 々 の 技 術 立 社 宣 言 をよく聞 く。技 術 系 の トップも増 え ている。資 本 、労 働 による 成 長 が 困 難 になってきた以 上 は 、研 究 開 発 の 成 果 、技 術 革 新 、イノベーション による 成 長 乃 至 競 争 優 位 を求 めるのは 合 理 的 行 動 である。 ところが、ここにジレンマが 発 生 する。図 11 を見 て頂 きたい。わ が 国 の 研 究 開 発 投 資 によって 増 加 する GNP の 大 きさを示 すもので、R & D 投 資 収 益 率 と言 う。産 業 連 関 表 という経 済 学 の 手 法 を用 いて大 量 の デ ー タ処 理 をし、作 成 した 由 で あ り、二 度 と作 れない 貴 重 な 図 表 である。1 9 7 9 年 以 前 は 実 績 で、1 9 8 0 年 以 降 は 予 測 である。1 9 7 0 年 か ら 2 0 年 間 で数 分 の 一 に激 減 している。恐 らく、これ 以 降 は 、バブル 期 を除 き、もっと低 下 が 激 化 していると思 わ れ る。多 くの 企 業 で「当 社 は 、研 究 開 発 費 を増 やしてい

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るのに、最 近 いい技 術 が 出 て来 ない 。どうなっているんだ! 」という声 をよく 聞 か れ る。研 究 者 、技 術 者 が サ ボっている訳 ではない 。経 済 現 象 の 論 理 的 帰 結 である。 私 は 、この ロジックを約 5 年 間 かけて発 見 し、そ れ を 2 つの コンセプトに集 約 した。 である。 究 極 、成 長 率 低 下 が 惹 き起 こす企 業 の 技 術 開 発 の ジレンマである。 (2)コンペティター が 追 随 す る の に長 期 間 を要 する大 きな 技 術 革 新 は 最 早 不 可 能 となった。しか し、コンペティター に 勝 つには 技 術 による差 別 化 し かない。この ジレンマを抜 け出 すには 、小 さな差 異 でも良 い か ら技 術 の 差 を 強 調 して、どんどん 新 しい 技 術 革 新 の 創 出 を繰 り返 すしかない 。技 術 革 新 の 当 事 者 にとっては、大 きな研 究 開 発 経 費 が か か っ て い る成 果 であっ て、小 さな技 術 革 新 と呼 ば れ る の は 不 本 意 であろうが 、コンペティター もほ ぼ 同 じ技 術 レベル に達 していると考 えられる状 況 において、コンペティター と の 競 争 優 位 差 こそ市 場 で評 価 される真 の 技 術 革 新 であるのだから、技 術 革 新 の 小 幅 化 という表 現 が 的 確 と考 えられる。もし、コンペティター が 市 場 で負 けたと判 断 したら同 じような技 術 でセールスポイントを別 の 切 口 で考 え 出 してすぐ追 いついてくる。従 って、市 場 で勝 ち続 けるためには 、次 々 に技 経 済 成 長 率 低 下 → 技 術 差 異 化 志 向 → 研 究 開 発 投 資 増 加 → R D 投 資 収 益 率 低 下 = 技 術 開 発 成 功 率 低 下 「技 術 革 新 の 小 幅 化 、ダウンサイジング 」 「R D の 同 期 化 」

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術 革 新 を繰 り出 していかなければならない 。無 限 に研 究 開 発 コストを使 え な い 以 上 、か か る“微 分 的 技 術 革 新 ”中 心 の 研 究 開 発 は 、画 期 的 な 技 術 革 新 が 生 まれにくくなる要 因 でもある。 ところでロジックは 別 として、如 何 なる技 術 革 新 が 大 きな技 術 革 新 と言 えるか 具 体 例 を示 さないと理 解 しにくいであろう。私 は 、化 学 メーカーに勤 務 していたので化 学 技 術 の 例 を挙 げる。 1 9 4 0 年 代 に 米 国 化 学 メーカー の デュポン社 の 天 才 化 学 者 カローザス が ナイロンを開 発 した 。1 9 3 6 年 にドイツの シュタウディンガーという学 者 が “巨 大 分 子 ”という仮 説 を発 表 した。それまでは 多 くの 分 子 が 鎖 のように 繋 がっているとは 考 えられていなかった 。今 で言 う高 分 子 ポリマーという概 念 が 初 めて示 された。従 って、まだ誰 もその仮 説 に基 づいて実 際 に繊 維 を作 ろうとは 考 えもしなかった 時 に カローザスは 果 敢 に チャレンジした。もっとも 彼 は 、最 初 、ナイロンではなくポリエステル 繊 維 の 開 発 を目 指 し、失 敗 して、 ポリアミド繊 維 “ナイロン”の 開 発 に 目 標 を変 えて 成 功 した。誰 もこんな危 険 なチャレンジをしようと思 うコンペティター は 存 在 しなかったし、しばらくは 同 じナイロンでさえ 別 の 技 術 を開 発 して追 い駆 けようとは 考 えなかった 。2 0 世 紀 の 間 にデュポンは 、ナイロン事 業 でこの 先 行 者 利 益 によって 2 5 0 億 ド ル の 利 潤 を得 たと言 われている。 昭 和 3 1 年 に東 レ(当 時 の 社 名 は 「東 洋 レーヨン」)が デュポンからこの ナ イロンの 製 造 に 必 須 の 特 許 の ライセンスを取 得 した。東 レが 偉 かったのは、 その ライセンス契 約 の 一 時 金 1 0 億 円 は 、当 時 の 同 社 の 資 本 金 7 億 円 よ り大 きかったにも拘 らず、社 運 をかけて ライセンス取 得 に 踏 み 切 る英 断 を 下 したことである。当 時 の 日 本 の 繊 維 メーカー の 名 門 企 業 は 、紡 績 会 社 であり、レーヨン会 社 は 、新 興 企 業 に過 ぎなかった 。更 に 東 レの 勇 気 を賞 賛 すべきなのは、ノウハウを含 む技 術 導 入 ではなく、特 許 だけの ライセンス

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に踏 み 切 った事 である。ノウハウを自 社 で確 立 するのは苦 労 が 多 く、リスク も負 う。し か し、他 社 からの ノウハウをライセンス によって 取 得 することでは 得 られない know - w h y が 習 得 でき、人 材 が 育 ち、将 来 の 様 々 な技 術 開 発 の 礎 が 築 ける。その 後 の 東 レの 発 展 と紡 績 会 社 の 合 成 繊 維 事 業 へ の 出 遅 れによる停 滞 を見 れ ば そ の 時 の 東 レの 先 見 の 明 は 、大 変 優 れたもので あった 事 が わ か る。 ところでそのナイロンを開 発 したデュポンが 2 匹 目 の ドジョウ を狙 ってポリ アリタール樹 脂 という工 業 用 エンジニアリング・プラスチックを開 発 し成 功 し た時 に 驚 いた 事 が 起 こった。デュポンが ポリアセタール 樹 脂 を世 界 で 始 め て上 市 した 3 年 後 にセラニーズ社 というアメリカの 繊 維 会 社 が ポリアセター ル 樹 脂 市 場 に参 入 してきたのである。デュポンはびっくりしてすぐにセラニー ズ社 に対 し特 許 侵 害 訴 訟 を起 こした 。しかししばらくしてこの 訴 訟 は 取 り下 げられる。デュポンが 調 査 したところ、セラニーズの ポリアセタール 樹 脂 は 、 コー・ポリマーと言 って異 なる分 子 の 連 鎖 で出 来 ており、単 一 の 分 子 の 連 鎖 であるホ モ・ポリマーの デュポンの ポリアセタール 樹 脂 とは 異 なっており、 訴 訟 に 勝 てるメドがないのがはっきりした 。これが 次 に説 明 する「R D の 同 期 化 」である。 そ れ と同 時 にデュポンの ナイロンという大 きな技 術 革 新 に対 し、ポリアセ タール樹 脂 の 技 術 革 新 は 、デュポンにとってもセラニーズにとっても「技 術 革 新 の 小 幅 化 、ダウンサイジング」であった。 「R D の 同 期 化 」という造 語 は シンクロナイズド・スイミングからの 連 想 で ある。コンペティター間 で、同 じテーマの 研 究 開 発 が 同 じ時 期 に始 められ 、 終 了 する時 期 のみならず 、研 究 開 発 の 成 果 の 内 容 まで似 てくる現 象 を意 味 す る。シンクロナイズド・スイミングは 、スイマーが 繰 り返 し練 習 して 息 の 合 った泳 ぎを演 出 する。「R D の 同 期 化 」は コンペティター 同 士 で息 を合 わ

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せたくないにも拘 らず、自 社 独 自 の 技 術 をどの 会 社 も狙 うために成 長 力 の 小 さくなった市 場 が 彼 等 を同 じところへ追 い込 んで行 く。 (3)実 は 、私 は 勤 めていた企 業 で 1 9 9 0 年 代 は じめにエレクトロニクス関 連 事 業 分 野 の ライセンス業 務 を担 当 し、特 許 ゴロ的 な金 (特 許 ロイヤルティ ー)をせびる多 くの 会 社 、個 人 に悩 まされ 続 けた。私 が 企 業 で特 許 部 の 仕 事 を始 めた 1 9 6 0 年 代 か ら 1 9 7 0 年 代 にはそんな現 象 は 起 こらなかったの に何 故 そうなってしまったのかを考 え込 んでしまった 。日 本 の 電 機 メーカー や エレクトロニクス企 業 は 1 9 8 0 年 代 か ら既 に主 に米 国 か ら訴 訟 を含 む激 しい特 許 攻 勢 を受 けていた。この 現 象 の 原 因 、本 質 は 何 か ? しかし、それ に答 えてくれるものはなかった 。では 自 分 で勉 強 して答 を出 そう! と考 えた が 何 を勉 強 すれ ば 良 い の か ? 特 許 法 の 教 科 書 ではなさそうだし、科 学 技 術 史 でも駄 目 だろう。一 体 、特 許 とは 如 何 なるものであろうか ? 結 局 、自 分 だけで 発 明 を独 占 して、金 儲 けをしようという経 済 的 動 機 が 特 許 制 度 の 本 質 だ か ら、1 9 6 0 年 代 の 頃 と現 在 で経 済 の 何 が 変 わ っ た か を研 究 す れ ば 疑 問 が 解 けるかも知 れない。経 済 原 論 をはじめ 、積 み 上 げ れ ば 1 メー トル 程 の 経 済 に 関 する本 を読 ん だ。「技 術 革 新 の 小 幅 化 」「R D の 同 期 化 」という2 つの 概 念 に辿 り着 いた時 は 、とても嬉 しかった。成 長 率 の 鈍 化 が 惹 き起 こすこの 2 つの ジレンマが 生 じた時 代 に企 業 はどうやって 利 潤 を 確 保 す れ ば 良 い の か ? 「一 日 で も早 く特 許 庁 へ 駆 け込 んでコンペティター との 僅 差 の 技 術 的 リードを何 とかして 特 許 にすれば、2 0 年 間 リードを法 的 排 他 力 として保 証 してくれる。こんな有 難 い便 利 なものはない。」こう考 える のはごく自 然 だ し、合 理 的 である。これは日 本 だけではない 。欧 米 先 進 諸 国 も同 じである。侵 害 訴 訟 の 増 加 、欧 米 の 特 許 出 願 数 増 加 、特 許 ゴロ の 横 行 、特 許 性 (特 に進 歩 性 )の 低 い特 許 の 輩 出 、米 国 の 知 的 財 産 保

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護 強 化 の 要 求 、プロパテント政 策 は 全 てこの 2 つの 概 念 で要 約 される経 済 現 象 である。 「R D の 同 期 化 」現 象 は 、歴 然 たる証 拠 が あ る。特 許 庁 へ 特 許 出 願 を 申 請 すると 1 8 ヵ月 の 間 は 出 願 人 以 外 の 者 はその 内 容 を知 ることが 出 来 ない。「R D の 同 期 化 」が 起 これば、同 じ内 容 の 発 明 を複 数 の コンペティタ ーが お互 いに 知 らないまま特 許 出 願 することが 発 生 する筈 である。出 願 が 公 開 された後 にはその 確 率 は 、ぐっと下 がるけれども 1 8 ヶ月 という未 公 開 の 期 間 中 には 、自 社 が 最 初 の 特 許 出 願 だ と思 って出 願 した 結 果 、他 社 の 方 が 早 かったという事 が 起 こる。いわゆる先 後 願 である。図 1 2 は 三 菱 化 学 社 長 長 谷 川 治 雄 氏 か ら教 えて頂 い た同 社 において実 際 に 起 こった 実 例 である。分 野 を問 わ ず、多 くの 研 究 の ベテラン にこの 話 をすると「自 分 は 、偶 然 同 じ発 想 で他 社 でも研 究 をしていて、たまたま同 じ時 期 に 同 じ発 明 に 到 達 したのだろうと思 っていたが、成 程 こういう理 屈 で 同 じ時 期 に同 一 発 明 が 出 てくる訳 だ! 」と納 得 して貰 える事 が 多 い。 図 1 2 の 一 番 上 に書 か れ た難 燃 ポリアミドは 、ナイロンを燃 えにくくするた めに シアヌール 酸 メラミン をナイロンに 配 合 するという発 明 である。三 菱 化 学 を含 め 5 社 が 1年 4 ヶ月 の 間 に全 く同 じ発 明 を出 願 したという驚 くべ き 事 例 である。恰 もこの 5 社 が 情 報 交 換 をしたのではないかと疑 いたくなる。 実 は 、R D の 同 期 化 という現 象 は 、市 場 が 情 報 を媒 介 することによって 促 進 されているのだ。例 えば 、A 社 が X 社 に今 までよりはるかに良 いポリマー をオファー して来 たとすると X 社 は 何 を考 えるだろう? 「これは良 いポリマー で A 社 か ら買 いたいけれども、A 社 からしか 買 えないと困 る。値 段 が 高 くな るし、A 社 が 事 故 で供 給 できなくなったら、この ポリマーを使 った自 分 の 製 品 が 作 れなくなってしまう。A 社 の ライバルである B 社 、C 社 に 対 し、A 社 か らこんな良 い ポリマーが 出 来 て き た け れ ど、お 前 のところでも作 れ な い の

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か ? とプッシュしなければならない。」という話 になるだろう。 これもまた当 然 の 経 済 現 象 であるが 、X 社 というポリマーの 市 場 が 媒 介 して A 社 からもたらされた新 しい情 報 (秀 れ たポリマーの 出 現 、ポリマーの 性 能 、A 社 によるオファー 等 )が B 社 、C 社 へ 流 通 し、B 社 、C 社 の 同 じポ リマーの 開 発 を促 す。 先 後 願 の 例 ではないが 、市 場 が 情 報 媒 介 によって 「RD の 同 期 化 」を起 こしたもう 1 つの 例 を示 す。 昭 和 6 2 年 に花 王 が 従 来 の 4 分 の 1 の 容 量 で洗 えるコンパクト洗 剤 「ア タック」を発 売 し、ライオンとほぼ 同 じ 4 0 % の 市 場 シェアーを二 分 していた 合 成 洗 剤 市 場 で一 挙 に 6 0 % の シェアーを握 ることに 成 功 した。1 年 後 の 昭 和 6 3 年 には ライオンも急 遽 「ハイトップ」というコンパクト洗 剤 で対 抗 した が 、2 0 % に低 下 したシェアーの 回 復 は 出 来 なかった 。「アタック」の 出 現 した 市 場 が ライオンに急 遽 アタックと同 等 の コンパクト洗 剤 の 開 発 を迫 り、1 年 という短 期 間 で 上 市 まで 至 らしめた。実 は 、コンパクト洗 剤 に は 長 い歴 史 があり、ライオンが 十 数 年 以 前 にコンパクト洗 剤 を上 市 したが ヒットしなかっ たし、花 王 も 2 分 の 1 容 量 の 商 品 を出 してうまく行 かなかった 事 があった 。 時 代 と商 品 の ミスマッチなのであろう。とにかく大 都 市 集 中 による狭 い住 居 でいずれ コンパクト洗 剤 は 必 要 になると考 えられており、事 業 化 失 敗 の 歴 史 も踏 まえつつ両 者 は 、コンパクト化 の 技 術 の 鍵 である菌 の 探 索 を含 むコ ンパクト化 技 術 の 蓄 積 を図 っていた。その 蓄 積 があったからこそ ライオンは 、 たった 1 年 でキャッチ・アップが 出 来 たのであろうが 、それにしてもライオンの 研 究 開 発 の 人 達 は 大 変 な苦 労 を強 いられた筈 である。市 場 による「R D の 同 期 化 」の 強 要 とでも言 って良 い実 例 である。 しか し、「R D 同 期 化 」は 、成 長 率 の 鈍 化 がもたらす 論 理 的 帰 結 であっ て決 して市 場 による情 報 媒 介 が な け れ ば 発 生 しないと言 う事 ではない 。そ

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本 章 の 要 約 ・ 1 9 7 0 年 代 か ら始 まった世 界 経 済 成 長 率 鈍 化 の 現 象 は 、今 までの 歴 史 になかった 新 しい現 象 を惹 き起 こしている。 ・ 技 術 開 発 においては 「技 術 革 新 の 小 幅 化 」「R D の 同 期 化 」というジ レンマ現 象 が 発 生 している。 ・ この ジレンマ を克 服 するために特 許 等 の 法 的 排 他 権 を利 用 するの は 理 の 当 然 である。 のことを示 す歴 史 的 事 実 を 1 つ紹 介 しよう。 ビ デ オ・テ ー プ・レコーダー(” V T R ” )は 、アメリカの アンペックス 社 、R C A 社 等 が 開 発 した。放 送 局 用 の 巨 大 な装 置 であった 。当 然 値 段 も高 かった 。 これをコンパクトにして 家 庭 用 V T R を開 発 しようとアンペックス、R C A を含 む多 くの 企 業 が 競 い合 った。その 過 程 で今 でも使 われている秀 れ た アイデ アが 出 て来 た。ダブル ・ヘリカル ・スキャンというスキャニング の 方 法 で、斜 向 した 2 つの トラックの 間 でヘッドが 回 転 して記 録 容 量 を飛 躍 的 に 高 め V T R を小 型 にするための 画 期 的 な発 明 である。この 同 じ発 明 が 昭 和 3 4 年 にビクター 、ソニー、松 下 電 器 の 3 社 によって 2 週 間 の 間 に 特 許 出 願 さ れたのである。結 果 的 には ビクター が 第 1 出 願 人 として特 許 を取 得 した。 家 庭 用 V T R が 価 格 数 万 円 になって 、多 くの 家 庭 に入 るようになったのは、 昭 和 5 0 年 代 の 終 わりから6 0 年 代 のはじめ 頃 だったと記 憶 している。昭 和 3 4 年 と言 えば 、まだ家 庭 用 V T R の 商 品 は 全 く存 在 せ ず、したがって 市 場 による情 報 の 媒 介 は 起 こるべくもなかった 。市 場 の 媒 介 のみによって 「R D の 同 期 化 」が 起 こる訳 ではない。

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第 3 章 プロパテントの 潮 流 (1)米 国 が 1 9 8 5 年 の ヤング・レポートによって 米 国 製 造 業 の 再 生 のため に「知 的 財 産 権 保 護 強 化 」を提 唱 し、いわゆるプロパテントの 潮 流 が 本 格 化 したけれども、その 潮 流 を冷 静 に分 析 すると 2 つの 現 象 が 発 生 している ことが 判 る。1 つは 、他 国 に対 し、米 国 政 府 として自 国 の 経 済 優 位 を確 保 するために今 まで以 上 の 「知 的 財 産 権 」の 保 護 を要 求 する対 外 政 策 の 推 進 と、米 国 企 業 によるその 政 策 果 実 の 享 受 である。 1 9 9 5 年 の W T O (W o r l d T r a d e O r g a n i z a t i o n の 略 ) 設 立 、ウルグアイ ラ ウ ン ドの 中 の T r i p s ( T r a d e R e l a t e d As p e c t s o f I n t e l l e c t u a l P r o p e r t y R i g h t s の 略 ) 協 定 の 成 立 、米 国 関 税 法 第 3 3 7 条 の 改 正 とそ れ を使 った I T C ( I n t e r n a t i o n a l T r a d e C o m m i s s i o n の 略 ) による外 国 企 業 製 品 の 締 め出 し、スーパー3 0 1 といわれる米 国 特 別 通 商 法 に基 づく日 本 を含 む各 国 に 対 する知 的 財 産 権 保 護 強 化 要 求 が 具 体 的 政 策 の 中 味 である。 もう 1 つの 流 れ は 、米 国 内 での 知 的 財 産 権 保 護 強 化 の 動 きである。米 国 は 既 に 1 9 8 2 年 に C A F C ( C o u r t o f A p p e a l s f o r t h e F e d e r a l C i r c u i t の 略 ) を設 置 し、特 許 に関 する連 邦 地 裁 の 控 訴 審 たる高 等 裁 判 所 を 1 つ に 集 約 し、プロパテント政 策 を統 一 的 に 推 進 す る形 を整 えた。そして 、次 第 にこの 新 しい体 制 を活 かして C A F C のみならず 、米 国 全 体 の 裁 判 所 で 均 等 論 の 拡 張 、特 許 の 有 効 、無 効 判 断 を特 許 権 者 有 利 に転 換 すること、 特 許 侵 害 の 損 害 賠 償 金 の 増 額 等 を進 めて行 った 。この 後 者 の 動 きは 、 日 本 の 均 等 論 判 決 の 定 着 に影 響 を与 えたのは間 違 いないだろう。 1 9 7 0 年 代 までは 、連 邦 地 裁 での 特 許 の 有 効 性 が 争 わ れ たケースでは 、 約 3 0 % しか 有 効 と認 められなかったのに対 し、1 9 8 0 年 代 以 降 は 、逆 に約 3 0 % しか 無 効 とされなくなったと言 われている。

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このような 米 国 内 での プロパテント政 策 は 、米 国 特 許 庁 ( U . S . P a t e n t & T r a d e m a r k O f f i c e、略 称 U S P T O ) の 特 許 性 審 査 にも影 響 を与 えたと思 わ れ る。従 来 なら拒 絶 された発 明 が 米 国 特 許 として認 められるケースが 増 加 していると思 わ れ る。かつて米 国 特 許 を取 得 することは 真 の 発 明 と認 め られたという勲 章 だったけれども、1 9 8 0 年 代 後 半 には ヨーロッパ で特 許 に ならなかったものが 米 国 では 特 許 になることが しばしば 発 生 した 。米 国 特 許 の 質 の 低 下 である。一 方 、日 本 でも 1 9 8 0 年 代 か ら低 い特 許 性 の 発 明 が 特 許 化 されることが 多 くなった 。ただし、この 現 象 は 、アメリカの 影 響 では ないと思 わ れ る。 私 は 、この 特 許 性 低 下 の 減 少 を皮 肉 って「馬 鹿 な特 許 、され ど特 許 」現 象 と言 っている。 (2)「馬 鹿 な特 許 、さ れ ど特 許 」現 象 を含 む プロパテントの 潮 流 はなぜ 発 生 したのだろうか ? 私 は 、複 数 の 要 因 が 重 なり合 って発 生 したと思 う。 まず第 1 に「第 5 章 知 識 社 会 の 成 立 」「第 6 章 非 必 要 経 済 化 」で詳 述 す る先 進 資 本 主 義 社 会 の 変 質 が あ る。そしてそれらの 変 質 の トリガー は 、1 9 7 0 年 代 からの 世 界 経 済 成 長 率 の 鈍 化 であったと思 う。一 言 で言 えば 、成 長 率 が 鈍 化 してくると、頭 が 生 み 出 す価 値 のあるものの価 値 を高 めて、成 長 を図 ろうという動 きが 出 てくるということだ 。中 でも「技 術 革 新 の 小 幅 化 」「R D の 同 期 化 」の ジレンマを打 破 するには 、必 死 になって 自 己 の 達 成 した技 術 革 新 を法 的 権 利 として確 保 し、コンペティター を排 除 したり、 高 いロイヤルティー や 侵 害 の 損 害 賠 償 金 を強 要 したり出 来 るようにしたい という動 機 が 強 く作 用 していると考 えるとこの プロパテントの 潮 流 は 納 得 し やすい。ヨーロッパ が E P O ( E u r o p e a n P a t e n t O f f i c e の 略 。現 在 は 2 0 カ 国 を越 えた E P O 条 約 加 盟 国 の 特 許 審 査 を集 中 的 ・一 元 的 に行 う機 関 )

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の 拡 大 とともに一 時 発 生 した特 許 性 低 下 の 審 査 を危 惧 して審 査 の レベル アップに 努 め、今 でも高 い質 の 特 許 審 査 を維 持 しているのに対 し、日 ・米 の 特 許 性 低 下 が 著 しいことの 背 景 として 、ヨーロッパ 社 会 が 文 化 的 に 保 守 的 であるため技 術 革 新 の 惹 き起 こす階 級 変 動 、貧 富 の 差 の 拡 大 を嫌 って、イノベーション 型 社 会 の 変 換 が 遅 れているのに対 し、日 ・米 は 強 引 に イノベーション 型 競 争 を促 進 してきたために 2 つの 技 術 革 新 の ジレンマ克 服 の 切 迫 感 が 強 く、何 が 何 でも特 許 という魔 法 を求 め る度 合 いが 強 いこ とが 挙 げられる。そして 、この 事 が 結 局 特 許 性 の バ ー を低 くする力 となって 働 いていると解 釈 す れ ば 理 屈 が 成 り立 つ。もう 1 つの 理 屈 は 、特 許 出 願 数 が 増 加 してくると、審 査 の バラツキが 生 まれる。そ れ に対 しては、出 願 人 は 勿 論 、利 害 関 係 人 も文 句 を言 う。異 議 申 立 、審 判 、裁 判 である。そうす ると審 査 の 側 ではどうしても審 査 を証 拠 に 頼 るようになる。特 許 の 進 歩 性 判 断 は 、主 観 的 な価 値 判 断 であるけれども 、公 知 文 献 という証 拠 に 頼 る 審 査 は 、新 規 性 偏 重 の 審 査 になってしまう。出 願 数 が 増 加 すると進 歩 性 に対 す る判 断 は 甘 くなって 行 く傾 向 にある。新 規 性 偏 重 の 特 許 審 査 であ る。 研 究 開 発 の 成 果 は 、どんなに思 案 しても自 分 しか 使 えないように 競 争 優 位 戦 略 の 武 器 として保 持 するには 2 つしか 方 法 がない。特 許 等 の 法 的 権 利 を取 るか 、ノウハウとして人 に知 らしめないかのいずれかである。しかし、 「R D の 同 期 化 」が 起 こるという事 は 、ノウハウとして研 究 成 果 を保 持 する 意 味 が ないという事 である。「技 術 革 新 の 小 幅 化 」も同 じ結 論 に導 く。勿 論 、すべての 研 究 が 必 ずこの 2 つの ジレンマに陥 るとは 言 えないし、特 許 出 願 が 全 くなくて 、コンペティター が ど ん な に 苦 労 して キャッチ ・アップの 研 究 開 発 を行 っても追 いつけない 技 術 革 新 の 実 例 もある。しか し、経 済 発 展 の 理 論 的 帰 結 であるこの 2 つの ジレンマは 強 力 であるため、研 究 開 発

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成 果 を全 く特 許 出 願 しないという決 断 は 、容 易 ではない 。そして 多 くの 研 究 開 発 投 資 をした 成 果 をできるだけ広 い 権 利 として 確 保 したりと特 許 出 願 するとコンペティター は 、自 分 も金 をかけてほぼ 同 じ研 究 をしているのだ か ら、そんな発 明 が 特 許 化 されると困 る の で 必 死 になって 公 知 文 献 を調 べ 、特 許 無 効 の 論 理 を考 え、特 許 つぶしにかかる。ここでも「技 術 革 新 の 小 幅 化 」、「R D の 同 期 化 」の 2 つの ジレンマは 、その 特 許 つぶしに 有 効 と 思 わ れ る公 知 文 献 の 存 在 を約 束 してくれ る筈 だ か ら。発 明 者 とその企 業 にとっては、やっと手 に入 れ た虎 の 子 でもコンペティター にとってはこんなも の が 特 許 になるような 馬 鹿 な事 は 絶 対 に困 ると思 うことになる。 結 局 、プロパテントの 潮 流 は 、「馬 鹿 な特 許 、され ど特 許 」という病 理 現 象 も惹 き起 こしながら進 む 他 ないのだ。更 に プロパテント政 策 を米 国 が 推 し進 めた 裏 に は 、ソ連 崩 壊 とその 後 の 世 界 の 変 化 の 予 測 があったのでは ないだろうか 。後 述 する非 必 要 経 済 化 という現 象 によって 豊 か で 楽 しさに 溢 れ た先 進 資 本 主 義 国 との 間 で否 定 できない 大 きな差 をつけられたソ連 は 、遅 か れ 早 か れ 崩 壊 するであろうと 1 9 8 0 年 初 の アングロ・サクソンの リ ー ダ ー 達 は 判 断 したと思 わ れ る。そうなるとソ連 、東 欧 、中 国 、インド、東 南 アジア、中 南 米 の 共 産 主 義 者 や 反 体 制 派 は 宗 旨 替 えをして 、市 場 主 義 経 済 に 参 加 する他 なくなる。1 0 億 人 の 先 進 国 が 握 っている世 界 経 済 へ 3 0 億 人 の 人 々 が 参 入 してくることになる。世 界 でたった 1 つの 市 場 をグ ローバル市 場 という。1 9 8 0 年 代 か らグローバル化 と言 われるようになった の は 、そ れ ま で の 国 際 化 とか 多 国 籍 化 とは 違 う世 界 経 済 の 一 元 化 が あ る。 そして 共 産 主 義 国 との 間 を遮 断 していた鉄 の カーテンが 消 失 す れ ば 、先 進 国 企 業 は 、人 件 費 を含 む 物 価 が 著 しく安 い 3 0 億 人 の チープ・レーバー の 国 へ と技 術 と資 本 を持 ち込 めば 、高 コストの 先 進 国 よりもはるかに安 く

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同 じものが作 れるようになる。 そうなった 時 に 先 進 国 の 豊 か さは 失 われてしまうかも知 れ な い。少 なくと も先 進 国 の e s t a b l i s h m e n t と言 わ れ る上 流 階 級 がその 豊 かさをうしなわ ないようにするにはどうすればよいかを彼 等 は 考 えた 。「自 分 達 が 所 有 し、 管 理 し、支 配 できる富 の 源 泉 とは 何 か ? 彼 等 が 持 っていなくて、我 々 だけ が 持 っているものは何 か ? 」そ れ は、知 の 力 で ある。頭 の 生 み 出 すもので 価 値 があるものである。頭 が 生 み 出 す 様 々 な価 値 があるものを今 までより も広 く、強 い私 有 財 産 にしなければならない。そ れ を彼 等 は 知 的 財 産 と呼 び 始 め た 。知 的 財 産 の 価 値 を高 め 、知 的 財 産 を持 たない 人 々 にその 保 護 を要 求 することが 彼 等 の 戦 略 となった。そ れ が プロパテントの 潮 流 で あ る。 私 は W T O の 設 置 が 話 題 になり始 めた時 に、世 界 の 貿 易 ルール とその 管 理 機 構 は 第 2 次 世 界 大 戦 終 了 後 まもなくもう世 界 を巻 き込 んだ悲 惨 な戦 争 が 二 度 と起 こらないように 開 放 貿 易 推 進 を標 榜 した I M F = G A T T 、 世 界 銀 行 体 制 が アメリカ、ニューハンプシャー 州 ブレトン・ウッズ で合 意 され 、 今 でも存 在 し、機 能 しているのに何 故 、W T O が 必 要 な の か 理 解 できなか った。ある時 、新 聞 でその ブレトン・ウッズ 体 制 と W T O の 差 を初 めて知 った。 ブレトン・ウッズ 体 制 に は 存 在 しない形 のない モノの ル ー ル を加 えるために W T O を作 ることになったと新 聞 は 報 じていた。形 のないモノとは 、金 融 、サ ービスそして 知 的 財 産 だった 。 第 5 章 の 主 題 である有 体 物 社 会 か ら知 識 社 会 へ の 転 換 の シンボリック な存 在 が 1 9 9 5 年 の W T O の 誕 生 である。

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本 章 の 要 約

• 「技 術 革 新 の 小 幅 化 」「R D の 同 期 化 」という2 つの ジレンマが プロパ テントの 潮 流 の 背 景 にある。 • 知 的 財 産 保 護 強 化 は 、アメリカの グランド戦 略 • ソ連 崩 壊 とグローバリゼーションとプロパテント潮 流 は 深 く結 び つ い ている。 • そ れ は 「馬 鹿 な特 許 、され ど特 許 」という病 理 現 象 も惹 き起 こしてい る。

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第 4 章 産 業 、技 術 、そして 科 学 近 未 来 を予 測 するには 近 い 過 去 を見 るだけでも可 能 だろう。しかし、大 き な未 来 を構 想 するには 大 いなる過 去 を学 ばなければならない。ここまで現 代 の 世 界 と日 本 が 戦 後 5 0 年 の 歴 史 の 過 程 でどのような 変 容 を遂 げ、ど のような 問 題 に遭 遇 してきたかを技 術 開 発 と特 許 の 視 点 か ら見 てきた。こ の 視 点 をもとに 大 きな未 来 を見 据 えるには 、人 類 の 文 明 の 歴 史 を繙 く必 要 がある。 (1)まず今 か ら約 1 万 年 前 に人 類 の 文 明 を築 い た と言 わ れ るメソポタミア について見 て み る。 その 前 に産 業 とは 何 だろうか ? 私 は 「産 業 とは 、生 産 及 び生 産 物 に関 す る一 連 の 事 物 を合 理 的 に 組 織 化 することにより行 わ れ る生 産 活 動 乃 至 生 産 組 織 」と定 義 する。そうす るとメソポタミア文 明 を含 む 古 代 文 明 は 、そ れ ぞ れ 農 業 を産 業 化 すること によって 文 明 の 営 み を始 めたと言 える。狩 猟 ・採 集 の 段 階 では 、産 業 化 は 無 理 である。では 遊 牧 ・牧 畜 の 産 業 化 はどうかと言 うとこれは可 能 である。 ただし、メソポタミア、エジプト、インダス、中 国 の 4 大 古 代 文 明 もメソ・ アメリ カ、ラテン・アメリカの 古 代 文 明 も遊 牧 ・牧 畜 の 産 業 化 によって 文 明 が 始 ま ったとは 言 えないし、ユーラシア大 陸 の 文 明 史 の 中 で発 達 した 遊 牧 ・牧 畜 民 族 の 帝 国 は 、す べ て農 耕 民 族 社 会 の 上 に乗 っかって 権 力 を維 持 し、最 終 的 には 圧 倒 的 多 数 の 農 民 社 会 の 中 に消 滅 するか 、再 び草 原 へ 帰 って 文 明 の 発 展 か ら離 れてゆく運 命 にあった 。農 業 と言 う産 業 に比 べ 、遊 牧 ・ 牧 畜 産 業 が 文 明 を育 てる力 は 弱 い 。実 は 、メソポタミア より早 く農 業 を始 めた地 域 がある。東 南 アジアで約 1 万 2 0 0 0 年 程 前 に農 業 が 開 始 される。 けれどもこの 東 南 アジアの 農 業 は 文 明 を育 むことは 出 来 なかった 。では 、メ

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ソポタミアの 農 業 と東 南 アジアの 農 業 の 差 は 何 だったのだろうか ? 意 外 に もそれは単 純 な 違 いだった 。東 南 アジアの 農 業 は 、タロイモや ヤムイモとい うイモだったのに対 し、メソポタミアの 農 業 は 、大 麦 や 小 麦 と言 う穀 類 だっ た。イモは 保 存 していると発 芽 してしまうけれども穀 類 は 長 期 保 存 が 可 能 である。貯 蔵 という事 は 、富 で あ り、富 は 殆 ど権 力 を意 味 し、権 力 によって 社 会 に支 配 階 級 と被 支 配 階 級 が 生 まれ 、王 や 貴 族 、神 官 、高 級 官 僚 達 は 宮 殿 、神 殿 を持 つ都 市 に住 み 、活 動 を行 う。 文 明 を英 語 で c i v i l i z a t i o n と言 う。この 言 葉 は ギリシャ語 の シノイキモス、 ラテン語 の キビタス という語 源 か ら来 て お り、この ギリシャ語 、ラテン語 は 人 々 が 集 まって 住 むこと、集 住 と言 う意 味 を持 つ。様 々 な 階 級 や 人 種 の 集 まる都 市 には 、様 々 な 文 物 が 集 まり、そこから更 なる創 造 が 生 まれる。 c i t y 、c i v i l という言 葉 もここから出 来 た。エジプトを除 き、古 代 文 明 はいず れ も最 初 都 市 国 家 の 形 態 をとった。 京 大 の 前 川 教 授 の 研 究 に よ れ ば、古 代 シュメールの 農 業 生 産 性 は 極 めて高 く、一 粒 の 大 麦 か ら 7 6 . 1 粒 の 大 麦 が 収 穫 されたとの 事 である。西 欧 で 11 世 紀 ないし1 3 世 紀 の 三 圃 農 業 や 有 輪 重 量 鉄 犂 等 による農 業 生 産 性 の 飛 躍 を達 成 した第 1 次 農 業 革 命 及 び 1 7 世 紀 の 四 圃 農 業 による 第 2 次 農 業 革 命 を経 た後 の フランスで 1 粒 の 小 麦 か ら 1 0 粒 の 小 麦 が 収 穫 できなかったことと比 較 するとこの シュメールの 農 業 の 高 い 生 産 性 は 驚 嘆 に値 す る。チグリス ・ユーフラテス両 河 のもたらす肥 沃 な大 地 に加 え、多 くの 労 働 力 による灌 漑 施 設 の 整 備 や 等 間 隔 に 直 線 状 に播 種 するための 機 械 である条 播 機 の 発 明 等 がこの 豊 か な稔 りをもたらした 。この 章 の 最 初 の “産 業 ”の 定 義 を思 い出 して欲 しい。農 業 は 立 派 な産 業 と言 える。実 に この メソポタミアの 高 い 農 業 生 産 性 が 農 業 に 携 わらない人 々 を可 能 とした。 都 市 の 支 配 階 級 や 職 人 や 商 人 である。シュメール人 は 文 字 を発 明 したと

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一 口 メモ ・ エ ジ プ ト、アメリカ 大 陸 を除 く、古 代 文 明 は 、い ず れ も最 初 の 農 耕 は 山 麓 か ら始 まり、次 第 に下 流 域 へ 広 がって 行 った 。人 間 が 制 御 でき る水 の 量 が 権 力 の 拡 大 に つ れ て 大 きくなったことを意 味 している。 ・ 現 在 の 日 本 では 米 1 粒 か ら 1 0 0 0 粒 以 上 の 収 穫 がある。 言 われている。かなり洗 練 され 、体 系 化 された文 字 で豊 か な内 容 を表 現 し、 記 録 できるものであるが 、その 文 字 を考 案 し、改 良 した人 々 はどんな 人 だ ったのだろうか 。恐 らく 1 人 の 天 才 によるものではなく、多 くの 人 が 長 い年 月 をかけて最 初 は 、バ ラバ ラの 絵 や 符 号 だったものを整 理 し、論 理 的 に体 系 化 して行 ったのであろう。いずれにせよ朝 か ら晩 まで農 業 労 働 をしていた のでは 、文 字 の 創 出 という知 的 営 為 が 出 来 る筈 がない。知 の 能 力 を誇 示 する階 級 、部 族 の 存 在 を窺 わ せ る。彼 等 、知 的 階 級 が 文 字 を操 り、計 算 をして 、税 を集 め 、社 会 をコントロール することによって 、人 類 史 上 初 の 文 明 を築 いた。ラピスラズリ(紅 玉 髄 )というアフガニスタン 産 の 宝 石 が メソポ タミアの 遺 跡 か ら発 見 され 、広 域 の 貿 易 活 動 が 証 明 されている事 、バビロ ニア朝 の ハムラビ 法 典 には 戦 争 寡 婦 を都 市 が 支 援 する義 務 の 規 定 が 存 在 する事 等 の 驚 くべ き事 実 がその 文 明 の 高 さを示 している。そしてそれは、 なんと穀 類 の 長 期 保 存 性 か ら始 まった訳 である。

文 明 は 農 業 という産 業 によって始 まった。

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皮 肉 にも農 業 という自 然 の 営 み を農 業 という産 業 に組 織 化 したのは、豊 か な農 業 が 可 能 にした 都 市 という新 しい現 象 に付 随 す る権 力 と知 の 力 で あった 。 (2)次 に 1 8 世 紀 にイギリス で始 まった産 業 革 命 について考 える。図 1 3 は 、

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1 8 世 紀 の イギリス 産 業 革 命 の 時 に活 躍 した発 明 者 達 と彼 等 の 発 明 の 名 称 、発 明 年 度 、職 業 を示 している。力 織 機 を発 明 した カートライト以 外 は 全 員 大 学 卒 で は な い 職 人 で あ る。産 業 革 命 は 、人 類 にとっていくつかの 大 きな意 義 を持 っている。図 1 5 にそれを示 したが、私 自 身 は 、産 業 革 命 の 最 大 の 意 義 は 「技 術 が 産 業 ・社 会 を大 きく変 える力 を持 つことを人 類 が 始 めて知 ったこと」だ と考 えている。た だ し、「未 だ 科 学 と技 術 との 本 質 的 関 係 についての 認 識 には 至 らなかった 」とも言 える。図 1 3 の 発 明 者 の 殆 どが 知 識 階 級 出 身 ではない事 実 がこの 事 を示 している。ニュートン が 万 有 引 力 の 法 則 を発 見 したのが 1 6 8 7 年 である。学 問 としての科 学 の 発 展 は あったにも拘 らず、イギリス の 貴 族 や 上 流 階 級 が 産 業 技 術 の 開 発 に 関 わ る事 はなかった 。 人 々 は 、産 業 革 命 によって 新 しいものが 出 現 し、社 会 がどんどん 変 わ る ことを実 感 したであろう。そ れ は技 術 が 実 現 させた。ジョン・ケ イが 織 物 の 横 糸 を織 るために飛 杼 を発 明 すると織 布 の 生 産 が 3 . 4 倍 になった 。そうす ると糸 が 不 足 する。ハーグリーブズ 、アークライト、クロンプトンが 次 々 に紡 績 機 を発 明 した 。糸 を効 率 よく沢 山 作 れ ば 金 儲 けが 出 来 ると考 えた 。だ か ら彼 等 は 、全 て特 許 出 願 をして 、特 許 をとり、模 倣 者 に対 し、特 許 侵 害 訴 訟 を起 こしている。ランカシャーの か つ ら職 人 で床 屋 だった アークライトは 、 妻 の 友 人 か ら聞 いた 内 容 を特 許 出 願 したので真 の 発 明 者 ではないとして 訴 えられ 結 局 特 許 無 効 にされてしまった 。それ 程 金 儲 けの 欲 望 に突 き動 かされた人 間 達 が 次 々 に発 明 を連 鎖 反 応 のように 生 み 出 し、産 業 を変 容 させ 、社 会 を変 革 していったのが 産 業 革 命 であった 。繊 維 工 業 が 最 初 の 牽 引 車 であったけれども図 1 4 に示 したように 新 しい技 術 、発 明 の 連 鎖 は 様 々 な 産 業 分 野 に波 及 し、社 会 全 体 が 国 内 需 要 を上 回 る巨 大 な生 産 力 を獲 得 し、世 界 に植 民 地 を持 ち、7 つの 海 を支 配 する大 英 帝 国 を築 く

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一 口 メモ

・ 産 業 革 命 当 時 の 英 国 では 、職 人 が 親 方 (m a s t e r )になるには 7 年 間 の 経 験 を経 て か ら、ギ ル ドに自 分 の 作 った商 品 を提 出 し、審 査 を 通 ら な け れ ば な ら な か っ た 。無 事 、審 査 を 通 っ た 作 品 を m a s t e r p i e c e と言 った。 ・ ジェームス・ワットは 大 変 知 的 な人 物 だったらしいが、親 方 で は な か っ た。当 時 、グラスゴー大 学 の 先 生 だった アダム ・スミス が ワットの 才 能 を惜 しんで自 分 の 大 学 の 実 験 器 具 の 管 理 人 になるように 就 職 斡 旋 したと言 わ れ て い る。そしてそこに 熱 力 学 の 創 始 者 であり、潜 熱 、比 熱 の 概 念 を見 つけた ブラックという先 生 がいた事 が ワットに幸 いした 。 ワットは ブラックか ら熱 の 科 学 について多 くを学 び 、熱 効 率 を画 期 的 に高 めた 蒸 気 回 転 機 関 を発 明 できた。もっとも発 明 当 時 は ピストン とシリンダーの 間 に小 指 が 入 る程 の 精 度 の 鉄 の 加 工 しか 出 来 な か っ た。その 後 、ウィルキンソンという人 物 が 中 ぐり旋 盤 機 を発 明 し、ピス トンとシリンダーの 精 度 が 上 が っ た の でワットの 蒸 気 機 関 の 熱 効 率 はぐんと高 まった。面 白 いことに ワットは 怜 悧 であったので、自 分 の 発 明 した蒸 気 機 関 を売 ってしまうだけではもったいないと考 え、リースに して、借 り手 が 今 までの 蒸 気 機 関 より節 約 できる石 炭 の 量 の 一 部 を リース代 に 加 えて支 払 うという契 約 を要 求 したため、みんなは 敬 遠 し て使 わなかった 。 最 大 の 要 因 となった。

産 業 革 命 によって 人 類 は 、技 術 が 産 業 ・社 会 を大 きく変 える力 を

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持 つことを認 識 した。

. ..... . ...

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特 許 が 満 了 したらそんな要 求 は 出 来 なくなったので急 速 に 普 及 が 進 んだという。この 史 実 からも科 学 という学 問 の 世 界 と産 業 に実 際 に使 わ れ る技 術 との 関 係 が 窺 えるし、発 明 の 動 機 としての金 銭 的 欲 望 が 認 められる。蒸 気 機 関 車 を発 明 したスチーブンソン 父 子 の 父 が 炭 坑 の 蒸 気 機 関 士 であったが 、息 子 に は エジンバラ大 学 に行 か せ 、職 人 としての知 恵 を学 問 としての知 識 と合 わ せ て発 明 に至 ったことも科 学 と技 術 がもう少 しで結 合 する段 階 に至 っていた事 を示 唆 している。 ・ アダム ・ス ミスは グラスゴー大 学 の 経 済 学 教 授 ではなく倫 理 学 の 先 生 だった 。彼 が 経 済 学 を造 った最 初 の 人 だったのだから当 然 と言 え ば 当 然 な 訳 だ。彼 は 高 い倫 理 が 実 現 するためには経 済 が 豊 かであ ることが 前 提 で あ る か ら経 済 の 理ことわりを探 求 しようとした 。「国 富 論 」と 訳 される彼 の 著 作 の 原 題 は ” A n I n q u i r i n g i n t o t h e N a t u r e a n d C a u s e s o f t h e W e a l t h o f N a t i o n s ” である。直 訳 す れ ば 「諸 国 民 の 富 の 性 質 と原 因 に関 する探 究 」という事 になろう。この 本 で冒 頭 、 スミス は 鉄 の ピンを製 造 する時 に 1 人 で全 てを行 えば 、1 日 かかって も 1 本 も出 来 ないかもしれないが 、工 程 を分 けて複 数 の 人 間 が 行 え ば 1 日 に何 千 本 も造 ることが 出 来 ることを述 べ 、分 業 の 力 が 文 明 社 会 を支 えていると説 いている。彼 は 当 時 、支 配 的 だった 国 の 富 は 輸 出 入 の 差 として国 に 蓄 積 される金 、銀 の 量 であるとする重 商 主 義 を 否 定 し、国 の 富 の 源 泉 は 労 働 であると主 張 した。直 接 は 言 っていな いが 、分 業 によって 専 門 化 、熟 練 が 生 まれて労 働 によって 生 じる価 値 の 増 大 がもたらされるということを理 論 付 けた訳 である。非 常 に平 易 な 文 章 で 書 か れ た 「国 富 論 」の 冒 頭 だ け で も読 んでみることを 推 す。

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(3)では 、次 に人 類 は 、何 時 、科 学 という学 問 と技 術 という実 践 の 技 の 本 質 的 関 係 を知 ったのだろうか ? その 答 えは 、1 9 世 紀 末 の ドイツである。ドイツは スペイン、イギリス 、フラン スのように 絶 対 主 義 王 権 の 確 立 がなされず、プロシャ、バ イ エ ル ン等 の 数 多 くの 領 邦 国 家 に分 かれていた。1 9 世 紀 初 めにこれらの 領 邦 国 家 間 で 関 税 同 盟 が 出 来 て、それをもとに プロシャ主 導 でドイツ帝 国 という国 家 統 一 が 成 立 したのが 1 8 7 1 年 であった 。その 時 、周 囲 の イギリス 、フランス、オ ランダと言 う諸 国 は 産 業 革 命 を達 成 し、世 界 に 進 出 して植 民 地 を形 成 し、 富 国 強 兵 を実 現 していた。遅 れ たドイツは 、これらの 先 進 国 にどのようにし て追 い付 くか を考 えた結 果 、科 学 の 力 を高 めることによって 技 術 を生 み 出 す生 産 性 を上 げるという大 変 秀 れ た 戦 略 を編 み 出 した 。具 体 的 には 多 く の 工 科 大 学 を設 置 したことと、今 まで技 術 は 個 人 発 明 家 によって 開 発 さ れてきたのを企 業 や 国 の 研 究 機 関 を設 け、多 くの 科 学 者 、エンジニアが 協 力 して組 織 として技 術 開 発 を効 率 的 に 実 施 することである。1 9 0 0 年 にお ける大 学 工 学 部 の 学 生 の 数 が 、イギリス では 3 0 0 0 人 に過 ぎなかったのに 対 し、ドイツは 1 万 人 であった 。ちなみにヨーロッパ を追 い駆 けていたアメリ カは 1 万 3 0 0 0 人 であった 。人 類 最 初 の 科 学 技 術 研 究 機 関 は ドイツの 化 学 企 業 の 研 究 所 であったと言 われている。多 くの 科 学 者 や エンジニアが 分 担 して新 しい科 学 技 術 の 知 の 発 見 、発 明 を行 う場 である研 究 所 と言 う概 念 が 、革 新 で実 効 があった 。 統 一 か ら 3 0 年 後 の 1 9 0 0 年 においてドイツの 鉄 の 生 産 量 は 、イギリス を 追 い抜 いてしまった 。ドイツの 科 学 技 術 戦 略 は 、飛 躍 的 にドイツの 生 産 力 を高 めることに 成 功 した。ところが、ここで大 問 題 が 発 生 した 。イギリス や そ れ に続 く先 進 西 欧 諸 国 の 産 業 革 命 は 、既 に世 界 の 需 要 以 上 の 供 給 力 を持 つに至 り、1 8 2 5 年 以 降 、ほ ぼ 1 0 年 間 隔 で恐 慌 が 発 生 していたが、

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そこに 更 にドイツの 生 産 力 が 割 り込 んできた。つまり、ドイツにとって巨 大 に なった 生 産 力 に対 し、そ れ を受 け 入 れ る市 場 が 無 いという大 問 題 である。 植 民 地 主 義 の ブロック経 済 は 、新 参 者 の ドイツの 参 入 を妨 げた 。戦 争 と 言 う手 段 しか ドイツには 残 されていなかった 。第 1 次 世 界 大 戦 も第 2 次 世 界 大 戦 も根 本 的 には 、急 速 に 生 産 力 を高 めつつあった 遅 れ た資 本 主 義 国 が 先 進 資 本 主 義 国 の 世 界 帝 国 主 義 体 制 の 再 編 を求 め る戦 いであっ た。そ れ を防 禦 す るシステム が 存 在 しない以 上 、悲 劇 は 必 然 であった 。日 本 は 、ドイツの 追 随 者 であった 。 ところで、戦 争 する他 途 のなかった ドイツにとってもう 1 つの 技 術 的 問 題 があった 。当 時 、爆 薬 は 南 米 の チリ硝 石 を使 って製 造 されていた。しかし、 世 界 の 7 つの 海 は 大 英 帝 国 が 支 配 していて、チリまで硝 石 を採 りに行 って もドイツに持 ち帰 ることは 出 来 ない。そこで ドイツは 再 び 頭 脳 の 力 、科 学 の 知 恵 を使 った 。硝 石 の 有 効 成 分 は 窒 素 である。空 気 中 の 窒 素 を使 えば 良 い と考 え て 、そ れ をア ン モ ニ アに 合 成 す る技 術 を開 発 しようとした 。 B A S F 社 の ハ ー バ ー とボッシュが 1 9 0 9 年 頃 に完 成 し、1 9 1 1 年 に工 場 生 産 を開 始 した 。世 にハ ー バ ー・ボッシュ法 という画 期 的 な技 術 で あ る。アン モニアを酸 化 して硝 酸 を製 造 し、ニトログリセリン、ダイナマイト等 の 爆 薬 が 作 れるようになった 。1 9 1 4 年 に第 1 次 世 界 大 戦 が 始 まった。 2 0 世 紀 後 半 の 豊 か な物 質 文 明 は 、多 くの 技 術 開 発 によって実 現 した。 その 技 術 開 発 は 、真 理 の 探 求 を使 命 とする科 学 が 支 えている。コンピュー ター は 半 導 体 がもたらした 。半 導 体 の 理 論 は 、量 子 力 学 の 一 分 野 である。 量 子 力 学 は 電 磁 気 学 と相 対 性 理 論 とともに 1 9 世 紀 末 か ら 2 0 世 紀 初 頭 にかけて多 くの 物 理 科 学 の 巨 人 の 頭 脳 が 築 いた 学 問 である。バイオ 革 命 が 2 1 世 紀 には 人 類 に別 の 文 明 の 稔 りをもたらすであろう事 は 、まず間 違 いない。その バイオ 革 命 を切 り拓 いた最 も大 きなマイル ・ストーンは や は り、

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本 章 の 要 約 ・ 人 類 は 農 業 という最 初 の 産 業 を始 めることで 文 明 の 歴 史 を開 始 した。 ・ その 後 、産 業 革 命 によって 技 術 と産 業 の 深 い係 りを認 識 した 。 ・ 最 後 に 科 学 と技 術 の 本 質 的 関 係 を知 ることによって 、科 学 、技 術 、産 業 の 深 い結 びつきの 全 体 像 を理 解 し、現 代 文 明 を実 現 した 。 ・ 文 明 の 3 段 階 を一 言 で 表 すならば 、「人 類 の 文 明 の 歴 史 は 、知 へ の 傾. . . . . . . . ... . . . 斜 である. . ..」と言 える。

一 口 メモ

・ ハ ー バ ー・ボッシュ法 を完 成 したハ ー バ ーは カールスルーエ工 科 大 学 の 教 授 であったが 、B A S F 社 の ボッシュと共 同 研 究 して後 、B A S F 社 に入 社 している。ここでも学 問 と技 術 の 結 合 が 見 られる。 1 9 5 0 年 代 はじめの ワトソンとクリックの D N A 二 重 らせんの 発 見 であろう。 エレクトロニクスとバイオ の 大 きな学 問 的 成 果 が 次 々 に 新 しい 科 学 的 発 見 を惹 き起 こし、そ れ が 技 術 発 明 の 基 盤 となって数 多 くの 開 発 が 試 みられ 、 文 明 の 富 をもたらしている。 今 や 誰 もが 科 学 という真 理 探 究 の 学 問 と文 明 の 手 段 である技 術 発 明 が 深 い本 質 的 な関 係 にあることを知 っている。人 類 は 、文 明 の 第 3 段 階 において科 学 と技 術 と産 業 社 会 の 全 体 的 な結 びつきを理 解 し、その 関 係 を積 極 的 に強 化 して更 なる発 展 を目 指 そうとしている。

参照

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