口腔粘膜骨膜弁の切開法 -その基礎と変法-
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(2) 小. 児. A. D. B. E. F:Obwegeser 切開法 C. F. A:Partsch 切開法. 口. 腔. 外. 科. June 2011. B:Pichler 切開法 C:遠藤切開法 D:Reinmöller 切開法 E:Neumann 切開法. 図 1 顎囊胞摘出術に用いられる基本的な切開法 (文献 3 より引用) A,Dでは歯頸線より5mm離す.. 図 3 古典的 L 字状弁(文献 6 より引用) 遠心縦切開の Two-sided flap である.. A :近心縦切開法 B :近遠心縦切開法 C :近心縦切開・遠心延長法. A. 図 2 Three-sided flap と Two-sided flap (文献 5 より引用). B. C. 図 4 歯肉弁の基本(文献 9 より引用) 縦切開の 位置により分類する.. Three-sided flapは歯肉歯頸切開,歯肉縁切開,または 台状切開,Two-sided flap は三角弁法と呼ばれる. A. Wassmund 切開法と呼ぶことは我が国の口腔外科の 源流がドイツの顎外科にあるためでもある. 本稿では文献引用上の都合にて Neumann 切開法 として記載する.. B. C. Ⅱ 歯肉弁の基本 歯根から根尖部にかけての部分を露出する切開線 の基本としては,Three-sided flap(歯肉歯頸切開 または歯肉縁切開)と Two-sided flap(三角弁法) がある(図 2)5).さらに Two-sided flap では遠心 縦切開のものを古典的 L 字状弁と呼ぶ(図 3)6). 適応としては,弓状切開の不適当な場合と口腔上 顎洞瘻の防止が挙げられる 7).特に Neumann 切開法 は Partsch 切開法の欠点を改良したものとされる 8). また Three-sided flap と Two-sided flap は合わせ て,歯肉弁とも呼ばれ縦切開の位置により,近心縦 34. 図 5 剥離の設計と範囲(文献 9 より引用) 目的の根尖の高さまで剥離するためには, TwosidedflapではThree-sided flapより長い縦切開と広 い基部を持つ必要がある.. 切開法,近遠心縦切開法および近心縦切開・遠心延 長法がある(図 4)9). Two-sided flap では目的の根尖の高さまで剥離.
(3) 口腔粘膜骨膜弁の切開法. Vol. 21 No.1. 図 6 Three-sided flap 切開時の注意点 (文献 11 より引用). 図 9 基部を広げない Three-sided flap(下顎前歯部) (文献 14 より引用). 基部の幅は広く取る.. 一方の縦切開は歯頸部の中央で, 他方は乳頭を避 けている.. b. a a′. b′. A. B. A′. A. B′. B. 図 7 Three-sided flap の基部(文献 12 より引用) A:誤り B:正しい. 図 10 基部を広げない Three-sided flap(上顎前歯部) (文献 16 より引用) 縦切開は両側ともに歯頸部の中央である.. A. B. 図 8 Three-sided flap の切開と血流 (文献 13 より引用). 図 11 Three-sided flap における縦切開の位置(1) (文献 17 より引用). A:正しい B:誤り. 縦切開は歯間乳頭を避ける.. するためには,Three-sided flap より歯間部に始まる斜 9,10) . めの長い切開と広い基部を有する必要がある (図 5) Three-sided flap の基部の幅は血流との関係から広 く取り,粘膜骨膜弁も骨膜に直角となるよう形成す. る事は当然ではある(図 6 ~ 8)11 ~ 13).しかし,前歯 部における基部を広げない切開線も記載されている (図 1,9,10)3, 14 ~ 16). 縦切開の位置としては,術後の black triangle の 35.
(4) 小 児 口 腔 外 科 小 児 口 腔 外 科. June 2011 June 2011. 図 12 Three-sided flap における縦切開の位置 (2) (文献 18 より引用). 図 15 「くの字状」に切開する方法 (文献 21 より引用). 縦切開は歯頸部の中央から行われている.. 縦切開は歯間乳頭を避け, くの字状に切開する.. 図 13 Two-sided flap における縦切開の位置 (文献 19 より引用). 図 16 歯頸部中央から 2 mm 下げてから直線的に切開 する方法(文献 22 より引用). 縦切開は歯頸部の中央から行われ, 歯頸線切開 は歯頸部の中央で終わっている.. 切開を歯頸部中央から 2 mm 下げてから直線的に 行う Neumann 切開法の変法である.. richtig A. richtig B. falsch C. 図 14 Three-sided flap の正しい設計 (文献 20 より引用). 図 17 歯頸部中央から弧状に切開する方法 (文献 23 より引用). A・B:正しい C:誤り. 一次閉鎖が困難な場合に縦切開を延長する方 法である.. 発生を避けるために,歯間乳頭を避けるのが基本で ある(図 11)17).また,歯頸部の中央からの切開線 も記載されている(図 12 ~ 14)18 ~ 20)が,歯頸部の退 縮に注意する必要がある.. 縦切開の形態は直線が基本であるが,縦切開の位置 により「くの字状」に切開する方法(図 15)21),歯頸部 中央から 2mm下げてから直線的に切開する Neumann 変法(図 16)22)および歯頸部中央から弧状に切開する. 36.
(5) Vol. 21 No.1. 口腔粘膜骨膜弁の切開法. 図 18 歯肉縁切開を避け側方に延長する切開 (文献 25 より引用). 図 21 半月状切開変法(文献 17 より引用) 上唇小帯を避けた半月状(弓状)切開である.. 延長された弁は鼻腔側壁の補強に用いられる.. 図 19 縦切開からの剥離(文献 26 より引用). 図 22 乳頭に沿った切開法(文献 17 より引用). 剥離子を骨から離さず前後に動かして剥離する.. 歯間乳頭を残す横切開を行う.. Ⅲ 各種の切開法. 図 20 縦切開からの剥離の角度(文献 27 より引用) 歯頸部の剥離は剥離子の角度を 45 度にして行う.. 方法(図 17)23)もあるが,図 17 の切開は本来は一次 閉鎖が困難な場 合に縦切開を延長する方法である. さらに,Partsch Ⅰ法を行う際に歯肉縁切開を避 け側方に延長する切開法もある(図 18)24, 25).この 延長された弁は鼻腔側壁の補強に用いられる. 粘膜骨膜弁は縦切開から剥離子を骨から離さず前 後に動かして剥離し(図 19)26),歯頸部の剥離は剥 離子の角度を 45 度にして行う(図 20)27).. 手術部位や病変の特殊な事情により,文献上では 種々の切開法が記載されている.各切開法には各々 に考案された理由や利点と欠点があることは当然で あり,基本的な方法以外の方法を知ることは特殊な 状態での症例や術中に予想外の事態が生じた場合に 必要である. さらに高齢者や有病者の治療をおこな う際に有用であろう. 半月状切開法や台状切開法の他に,上唇小帯を避 けた半月状(弓状)切開法である半月状切開変法 (図 21)17)や歯間乳頭を残す横切開を行う乳頭に沿 った切開法(図 22)17)もある.後者では歯間乳頭の 退縮が危惧される. 付着歯肉と歯槽歯肉の境を横切開する Three-sided flap は Lebke-Ochsenbein(Ochsenbein-Lebke)切開 法と呼ばれる(図 23)5).本法は適応を選択すれば 有用な方法であり,著者も小さな歯根囊胞の摘出術 および歯根端切除術には好んで使用している. 過去には一字切開法,十字切開法,工字状切開法, 鎧状切開法,弓状切開法などの様々な切開法が行わ 37.
(6) 小. 児. 口. 腔. 外. June 2011. 図 23 Lebke-Ochsenbein flap(文献 5 より引用). 図 26 工字状切開法(文献 32 より引用). 付着歯肉と歯槽歯肉の境を横切開する Threesided flap である.. 二本の水平切開とその中央に垂直切開をおく.. A. B. 図 24 一字切開法(文献 29 より引用). 図 27 Neumann 変法(文献8より引用). 水平切開法または Teichmann-Sicher 法と呼ばれる.. 歯頸線切開と歯頸部中央からの縦切開を用いる. A:Neumann変法 B:Neumann法. 図 25 上唇小帯を横切る一字切開法(文献 31 引用) 唇小帯を横切る大きな切開をおく.. れていた 28).以下ではこれらの方法を中心に概説 する. 1)一字切開法 水平切開法または Teichmann-Sicher 法とも呼ば れる(図 24)29).一字切開法では歯根端を露出し視 野を得ることは難しく 30),このため上唇小帯を横切 る大きな切開をおく場合もある(図 25)31).歯肉と 頰粘膜移行部に二本の水平切開をおく Weiser 切開 38. 科. 法もあるが 29),この中央に垂直切開をおくと後述す る工字状切開法となる 30). 2)十字切開法 詳細な記載がある文献はなく,おそらく一字切開 法や鎧状切開法にて十分な視野を得られない場合に 縦または水平に切開を追加したものと考えられる. 視野は良いが縫合時に固定が困難とされている 30). 3)工字状切開法 二本の水平切開とその中央に垂直切開をおく,扉 状切開法とも呼ばれる(図 26)30, 32).十字切開法と 同様に鎧状切開法では視野は良いが縫合時に固定が 困難とされている 32). また小囊胞に対しては,歯頸線切開と歯頸部中央 からの縦切開を用いる方法が Neumann 変法と記載 されている(図 27)8).この方法で縦切開が不足す る場合には横切開を追加する 8) が,追加した場合 には工字状切開法とほぼ同様になる. 4)鎧状切開法 頰側歯根端から歯槽の上縁を超えて舌側に至る切 開である(図 28)30, 33).本法で粘膜骨膜弁を剥離す ると切開線両側の剥離した弁があたかも鎧の肩当て.
(7) Vol. 21 No.1. 口腔粘膜骨膜弁の切開法. 図 28 鎧状切開法(文献 33 より引用). 図 31 Thoma の切開法(文献 39 より引用). 頰側歯根端から歯槽の上縁を超えて舌側に至る 切開である.. 歯頸部寄りに設定される台状切開法である. 図30の弓状切開に類似している.. 図 29 鎧状切開法(文献 34 より引用). 図 32 鎧状切開と併用する弓状切開法 (文献 37 より引用). 難抜歯の切開法として, 図28の切開を短縮した 切開である.. 図 30 弓状切開法(文献 37 より引用) 歯頸部寄りに設定される弓状切開法である.. のようになるためこう呼ばれたのであろう.これを 短縮した切開が難抜歯の切開法とし記載されてお り 34 ~ 36),これも鎧状切開とされている(図 29)34). 5)弓状切開法 ここで説明する弓状切開法は Partsch 切開法とは 異なり,より歯頸部寄りに設定されている方法である (図 30)37, 38).これとほぼ同様の台状切開が Thoma. 鎧状切開と弓状切開法を併用する.. の著書にも記載されている(図 31)39).しかし,これら の切開線は図 14 に示した誤りとされている切開線に近 いが,縦切開を短くすれば血流上の問題点は少なくな ると考えられる.また,鎧状切開法と弓状切開法との 併用も記載されている(図 32)37, 40). 逆弓状切開法とされる Pichler の切開法は Partsch Ⅰ法を改良したものであるが 41),弧状ではなく逆コの 字状の方形切開法も記載されている(図 33,34)42, 43). この方形弁は囊胞開窓術(Partsch Ⅰ法)の際に切断 した歯根端を被覆するために使用される(図 35)44, 45). さらに Partsch Ⅰ法時に逆弓状弁を折り返すための補 助切開を加えた方法も記載されている(図 36)46).ま た遠藤の切開法と Pichler の切開法が 類似している ことは指摘されているが,その相違も示されている (図 37)41, 47).下顎前歯部の Pichler 切開は遠藤の切 開に類似しているといえる(図 38)48, 49).Pichler の切 開法は Partsch Ⅰ法のみだけではなくⅡ法にも用いら れるが,この場合には逆弓状弁の先端は囊胞摘出後の 骨面上には必ずしも設定されない(図 39)45).本法は 歯頸部よりに基部を持つため血流が乏しくなりやすいと 39.
(8) 小. 児. 口. 図 33 方形の Pichler 法(文献 42 より引用) 逆弓状ではなく逆コの字状の方形Pichler 切開法である.. 図 34 方形の Pichler 法(文献 43 より引用) 逆弓状ではなく逆コの字状の方形Pichler 切開法である.. 図 35 囊胞開窓時の方形の Pichler 切開 (文献 44 より引用). 腔. 外. 科. June 2011. 図 36 補助切開を加えた Pichler 法 (文献 46 より引用) Partsch Ⅰ法時に逆弓状弁を折り返すための 補助切開を加えた方法である.. 図 37 遠藤の切開と Pichler の切開 (文献 41, 47 より引用) ……:遠藤の切開 ――:Pichlerの切開 両切開は類似している.. 図 38 顎前歯部の Pichler 法(文献 48 より引用) 下顎前歯部の切開は遠藤の切開に類似している.. 孤形弁は囊胞開窓時に切断した歯根端を被覆 するために使用する.. 考えられる.この方法の初出は 1921 年頃と考えられる が確認はできなかった. Partsch の切開はよく使用される方法であり,金森 は常に本法にて行っていると述べている 50).Partsch Ⅱ法時の切開線は囊胞摘出後の骨面上で(図 40)51), 40. 3mm 以上離れる 52).また歯頸部よりは 5mm 下方 に設定される(図 41)11).当然,Partsch Ⅰ法の場合 にはこの限りではない. しかし, これら 3mm 以 上 と 5mm下方の原則を守ると適応が制限されるため, これらの条件をやや緩和する場合もあるが,5mm.
(9) 口腔粘膜骨膜弁の切開法. Vol. 21 No.1. 図 39 Partsch Ⅱ法時の Pichler 切開 (文献 39 より引用). 図 42 1905 年の Partsch 切開 (文献 53 より引用). 逆弓状弁の先端は囊胞摘出後の骨面上には必 ずしも設定されない.. 1905 年に初めて紹介されたが、縫合された のは 1908 年であった.. 図 40 Partsch Ⅱ法時の Partsch 切開の位置 (文献 51 より引用). 図 43 渉猟し得た最初の弓状切開 (文献 54 より引用). Partsch Ⅱ法時の Partsch 切開線は囊胞摘出 後の骨面上に設定する.. 成書のうえで渉猟し得た最初の弓状切開は 1923 年のものであった.. 図 41 Partsch 切開の注意点 (文献 11 より引用). 図 44 Wassmund の arched incision (文献 56, 57 より引用). Partsch Ⅱ法時の Partsch 切開線は歯頸部よ りは5 mm 下方に設定される.. Reinmöller切開法に類似し, 2つの角を有する, 歯頸部に平行で約 5 mm 離す.. 下方の原則を優先する. 1905 年に Partsch の 切開法が 初めて紹 介された が,絹糸にて縫合されたのは 1908 年であったとされて いる(図 42)53).著者が成書のうえで渉猟し得た最初. の弓状切開は 1923 年のものであった(図 43)54, 55). 本法の変法として,Wassmund の arched incision ( 図 44)56, 57)や angled arched incision( 図 45)56)が あるが,これら 2 法はその形が後述する 2 つの角を 41.
(10) 小. 児. 口. 図 45 angled arched incision(文献 57 より引用) arched incision の角を明確にする方法であるが, 2 つの角を有するReinmöller 切開法に類似する.. 外. 科. June 2011. 図 48 Reinmöller 法(文献 59 より引用) L 字状切開線である.. 図 46 Reinmöller 法(文献 29 より引用). 図 49 Reinmöller 法(文献 60 より引用). 2つの角を有する切開法である.. L 字状の角を広くした切開線である.. 図 47 Reinmöller 法(文献 58 より引用). 図 50 Reinmöller 法(文献 61 より引用). 2 つの角を有する切開法である.. 有する Reinmöller 切開法に類似し,両法ともに歯 頸部に平行で約 5mm 離すが近遠心ともに広い基部 を有するのが特徴であり,簡便で効果的な方法であ る.後者は前者の角を明確にする方法で,2 つの角 を有する Reinmöller 切開法に極めて類似している. 6)Reinmöller 切開法 様々な文献により微妙に変化しており,謎の多 い方法であるとも言える.すなわち,2 つの角をもつ 42. 腔. 縦切開は遠心に設定されている.. 切 開 線( 図 46,47)29, 58),L 字 状 切 開 線( 図 48)59), さらに L 字 状 の 角を広くした 切 開 線( 図 1,49)3, 60) もある.また縦切開は遠心(図 50)61)または近心(図 48,51)21)に設定される. Wassmund が記載している下顎大臼歯部の Partsch の切開線はあたかも角の丸い L 字状の Reinmöller 法 を思わせる(図 52)58)..
(11) 口腔粘膜骨膜弁の切開法. Vol. 21 No.1. 図 51 Reinmöller 法(文献 21 より引用). 図 54 X 字状切開(文献 61 より引用). 縦切開は近心に設定されている.. X 字状よりは H 字状に近いと思われる.. 図 52 下顎大臼歯部の Partsch の切開 (文献 58 より引用). 図 55 Wustrow 法(文献 58 より引用). 角の丸い L 字状の Reinmöller 法に類似している.. 図 53 鉤状切開(文献 29 より引用) 一字切開法または L 字状の Reinmöller 法の変法 と考えられる.. 7)鉤状切開 一字切開法の視野をよくするための変法か L 字状 の Reinmöller 法の変法と考えられるが,弁先端の 血流は悪いと考えられる(図 53)29). 8)下顎大臼歯部に用いる切開法 下 顎 大 臼 歯 部 に用いる特 殊な 切 開 法としては, Wassmund による X 字状切開(図 54)61)や歯頸部に. 歯頸部よりに逆 L 字状の基部を有するため血流 が乏しくなりやすい.. 基部をもつ逆 L 字状の Wustrow 法(図 55)58, 62)が ある. X 字状切開もおそらく一字切開法では十分な視野 を得られないために補助切開を追加したものと考え られる.視野は良いが縫合時に固定が困難であり, 骨欠損上に縫合線がくる.本法は X 字状よりは H 字状に近いと思われる. Wustrow 法では歯頸部よりに基部を持つため血 流が乏しくなりやすいと考えられる. また両法ともにオトガイ神経への配慮が前方部切 開にあると考えられる. 9)上顎大臼歯部に用いる切開法 上顎大臼歯部において,遠藤は歯頸線とその下方 の切開とを用いて後方を基部とした弁を記載してい る(図 56)63).この切開は口蓋の Peter 法(図 57)64) を大臼歯部頰側に応用したものと考えられる.ま た,Caldwell-Luc 法( 図 58)65)は Neumann 法 の 一 方の縦切開を歯肉頰移行部で後方に弯曲させた方法 である. 両方ともに,弁先端の血流が乏しくなりやすいと 考えられる. 43.
(12) 小. 児. 口. 図 56 歯頸線とその下方の切開とを用いて後方 を基部とした弁(文献 63 より引用). 腔. 外. 科. June 2011. 図 59 C 字状切開(文献 66 より引用) 側方での基部も広く歯頸部への侵襲も比較的少ない.. 弁先端の血流が乏しくなりやすい.. 図 57 Peter 法(文献 64 より引用). 図 60 C 字状切開(文献 67 より引用). 口蓋の切開法である.. 側方での基部も広く歯頸部への侵襲も比較的少ない.. 図 58 Caldwell-Luc 法(文献 65 より引用). 図 61 くの字状切開(文献 68 より引用). Neumann 法の一方の縦切開を歯肉頬移行部で後 方に湾曲させた方法である.. C 字状切開の原法と思われる.. 10)C 字状と「く」の字状切開 鎧状切開法の変法とも考えられるものであり,C 字状切開(図 59, 60)66, 67)と,くの字状切開(図 61)68) とがある.くの字状切開が C の字状切開の原法な のかも知れない.ほとんど知られていない方法では あるが,側方での基部も広く歯頸部への侵襲も比較 的少ないため,顧みても良い方法ではないかと考え られる.. Ⅳ 上唇小帯を避けるべきか. 44. 上唇小帯については,横切る切開を避けると考え る者と避ける必要はないと考える者がいる. 1)上唇小帯を横切る切開を避ける方法 上顎正中部での Neumann 切開法の適応には上唇 小帯を避ける利点がある. 遠藤は森の切開線 31)に類似した小帯を横ぎる切開.
(13) 口腔粘膜骨膜弁の切開法. Vol. 21 No.1. 図 62 両側同時に手術する場合の切開線 (文献 63 より引用). 図 65 上唇小帯を横切る Partsch 法 (文献 70 より引用). 上唇小帯両側の切開である.. 上唇小帯を大きく横切る.. 図 63 改良弧状弁(文献 69 より引用). 図 66 上唇小帯を横切る Piecher 法 (文献 71 より引用). 縁歯肉より 5 mm 離れた付着歯肉に横切開を加え, 必要に応じて片側または両側に縦切開を追加する.. 図 64 上唇小帯を横切る Partsch 法 (文献 58 より引用) 上唇小帯を大きく横切る.. を誤りであるとし,両側同時に手術する場合におこな う上唇小帯両側の切開を記載している(図 62)63).ま た上唇小帯の上方で小帯を避ける半月状切開変法 17)も ある. 2)上唇小帯を横切る切開 これらに対して,前述したように横切開や改良弧 状弁で上唇小帯を横切る切開線もある.. 上唇小帯を大きく横切る.. 改良弧状弁(modified semilunar flap・付着歯肉弁) は半月状切開変法(modified semilunar incision)17) と区別するため,この訳とした(図 63)69).この方法 は少なくとも歯肉溝から 1mm 根尖側で,辺縁歯肉 より 5mm 離れた付着歯肉に横切開を加える.この 切開は直線または歯頸線に沿った形態にし,必要に 応じて上唇小帯を横切るか片側または両側に縦切開 を追加する.後者の場合には Reinmöller 切開法や Ochsenbein-Lebke 切開法に類似する. さらに上唇小帯を大きく横切る Partsch 法(図 64, 65)58, 70)や Piecher 法(図 66)71)も記載されている.. Ⅴ 口蓋の切開法 簡便な切開法には図 27 で示した Neumann 変法と Neumann 法 7)の口蓋への応用があり(図 67)72),後 者では大口蓋動静脈束を切断・結紮する.また,口 蓋側での歯頸側寄りの弧状切開も Neumann 法と呼ば れ,C 字状切開は Williger 法と呼ばれる(図 68)73). 歯頸線切開と縦切開を組み合わせる方法には 2 種 45.
(14) 小. 児. 口. 腔. 外. 科. June 2011. 図 67 Neumann 変法と Neumann 法 (文献 72 より引用). 図 70 歯頸線にて切開する Wassmund 法 (文献 72より引用). 図27のNeumann法の口蓋への応用である.. 歯頸線切開と傍口蓋正中切開を行う.. b. a. 図 68 Williger 法と Neumann 法 (文献 73 より引用). 図 71 歯頸線にて切開する Wassmund 法 (文献 74, 75 より引用). a:Williger法 b:Neumann法. 前方に延長した切開もある.. 図 69 Peter 法(文献 64 より引用) 2 種類の方法がある.. 図 72 歯頸線から離れて切開する Wassmund の切開 (文献 14 より引用) 歯頸線から離れて切開する.. 類の Peter 法がある(図 69)64).また歯頸線切開と傍 口蓋正中切開とを行う Wassmund 法(図 70)72)とが ある.さらに Wassmund 法にて前方に延長した切開 もある(図 71)74, 75). また歯頸線より離して切開する Wassmund 法もある (図 72)14). 46. 歯頸線を避ける L 字状切開線として,Hauenstein 法がある(図 73)58).Harnisch 法では大口蓋動静脈 を温存するが切歯孔近傍まで剥離するため剥離範囲 が広くなる欠点がある(図 74)58). 歯頸線切開と大口蓋孔後方の縦切開にて大口蓋動 静脈の走行を確認し,前方に大口蓋動静脈を切断し.
(15) 口腔粘膜骨膜弁の切開法. Vol. 21 No.1. 図 73 Hauenstein の切開(文献 14 より引用) 歯頸線を避ける L 字状切開線である.. 図 76 歯頸線切開と上顎結節への減張切開を 組み合わせた方法(文献 76 より引用) 大口蓋動静脈を切断しない.. 図 74 Harnisch の切開(文献 14 より引用) 大口蓋動静脈を温存するため切歯孔近傍まで剥 離する.. 図 77 傍歯頸線切開と口蓋正中を越えた切開 を併用した方法(文献 77 より引用) 大口蓋動静脈を切断しない.. a. b. c. d. 図 75 大口蓋孔後方に切開を加える方法 (文献 74, 75 より引用). 図 78 口蓋部埋伏歯抜去に用いる各種の切開線 (文献 78 より引用). 大口蓋動静脈を切断しない.. これまでの口蓋部の切開線が応用されている.. ない範囲で縦切開を加える方法もある(図 75)74, 75). 大口蓋動静脈を切断しないために,長い歯頸線切 開と上顎結節への減張切開を組み合わせた方法(図 76)76)や.傍歯頸線切開と口蓋正中を越えた切開を 併用した方法がある(図 77)77). これらの切開線に準じて口蓋部埋伏歯抜去に用い. る各種の切開線も記載されている(図 78)78).さら に口蓋部埋伏歯抜去の切開の基準線も記載されてい るが(図 79)79),剥離範囲がやや大きい感じがし, 補助切開を応用する方がよいと思われる. 口蓋の切開は大口蓋動静脈束を切断・結紮するの か否かに大別されるが,大口蓋動静脈束を保存する 47.
(16) 小. 児. 口. 図 79 口蓋部埋伏歯抜去の切開の基準線 (文献 79 より引用). 腔. 外. 科. June 2011. 図 81 Cseryei 法(文献 80 より引用) 粘膜弁を挙上後に骨膜付骨弁を挙上する.. 剥離範囲がやや大きい.. 結 語. 図 80 Brosch 二重弁(文献 80 より引用). 種々の口腔粘膜骨膜弁の切開法が考案・工夫さ れ, 多 く の 方 法 が 歴 史 の 中 で 忘 れ 去 ら れ て い っ た.しかし,特殊な状態での症例,術中に予想外の 事態が生じた場合,高齢者や有病者に一部の方法は 応用が可能であると考えられた. 本稿を記述するにあたり,可能な限り一次資料を 入手しようと試みたが,調査すればするほど初出が 不明なことが多く,今後はさらに初出を追求したい.. 歯根端切除術後の歯根端を骨膜弁にて被覆する.. 引 用 文 献. 場合は剥離範囲が大きくなる傾向にある.手術侵襲 と目的を明確にして切開法を選択する必要がある.. Ⅵ 骨膜弁と骨膜付き骨弁の応用 本稿のタイトルにもあるように前項までは粘膜骨 膜弁(全層弁)の切開線について論じてきたが,粘 膜弁(分層弁)を形成する方法もある. Brosch 二重弁は粘膜弁をコの字状に挙上後に逆 コの字状に骨膜弁を挙上する.囊胞摘出術と歯根端 切除術後の歯根端を骨膜弁にて被覆し,粘膜弁を復 位・縫合する方法である(図 80)80).そもそも歯根 端切除術後の歯根端を骨膜弁にて被覆する必要性と その効果に疑問がある. Cseryei 法は粘膜弁を挙上後に骨膜付き骨弁を挙 上する.囊胞摘出と歯根端切除後に,骨膜付き骨弁. を復位しさらに粘膜弁を復位・縫合する(図 81)80). この方法で骨再生を助けるとされるが,小さな囊胞 では手技が煩雑であり,思うように骨・骨膜弁は形 成できないとされている 62). 48. 1)佐藤伊吉:実地口腔外科(下巻).第 6 版,日本歯科評論, 東京,1980,853 頁. 2)山下一郎 訳:顎囊胞の臨床と治療.第 1 版,クインテッ センス出版,東京,1978,165 頁. 3)高橋庄二郎,園山 昇,河合 幹,高井 宏 編:標準口腔外 科.第 1 版,医学書院,東京,1985,308 頁. 4)生 田信保:歯科臨床に必要なる口腔手術図説.第 1 版, 歯苑社,東京,1941,101 頁. 5)P edlar, J.and Frame, J.W.ed.: Oral and maxillofacial surgery. An objective-based textbook. Churchill Livingstone, Edinburgh, 1st ed, 2001, p78. 6)P edlar,J.and Frame, J.W. ed.: Oral and maxillofacial surgery. An objective-based textbook. Churchill Livingstone, Edinburgh, 1st ed, 2001, p240. 7)佐 藤伊吉:実地口腔外 科(下巻) .第 6 版,日本歯 科評 論,東京,1980.850 頁. 8)小磯東吾 編:最新歯科学大辞典. 第 1 版, 板東三弘社, 東京, 1938,190-191 頁. 9)H ayward, J.R. ed.: Oral surgery. 1st ed, Charles C. Thomas Pub., Springfield, 1976, p48. 10)Pedersen,G.W.: Oral surgery. 1st ed, W B Saunders Co., Philadelphia , 1988, p48. 11)大 関 悟,覚 道健 治,又賀 泉 編:カラーアトラス ハ ンドブック 口腔 外 科臨 床ヒント集.第 1 版,クインテ ッセンス出版,東京,2004,34 頁. 12)Pedersen, G.W.:Oral surgery. 1st ed, W B Saunders Co.,.
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