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日本地球化学会編「地球と宇宙の化学事典」

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Academic year: 2021

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書 評

火山 第 58 巻 ( 2013)第 1 号 329 頁

日本地球化学会編「地球と宇宙の化学事典」

富 樫 茂 子

Shigeko T

OGASHI* 本書は辞典ではなく事典である.地球化学と宇宙化学 の基本的かつ最新の項目が選ばれており,それぞれの専 門の日本の第一線の研究者が担当し,各項目 1-2 ページ 程度でわかりやすく解説している.日本地球化学会によ り,総勢 193 名もの研究者の力を結集した力作である. 全体としては,1.地球史,2.古環境,3.海洋,4. 海洋以外の水,5.地表・大気,6.地殻,7.マントル・ コア,8.資源・エネルギー,9.地球外物質,10.環境 (人間活動)の章から成り立っている.各章では 20-60 のかなり具体的な項目が選択されている.目次を見るだ けでも,この分野の研究対象の広さや深さを実感できる. 「はやぶさ」をはじめとしてトピック的な項目は,コラム として散りばめられており,読む事典としての魅力を高 めている. 内容はいずれもかなり専門性が高く,理解が難しいと 思われる部分もあるが,読者の対象を,大学 / 大学院生 のみならず,一般社会人まで視野に入れて,図表や写真 を効果的に配置するなどの工夫の努力は評価できる.地 球化学や宇宙化学の進歩はめざましいので,パラパラと めくって興味のある話題について,最新の科学読み物と して読んでも興味深い. また,自分の専門とは少し離れた話題のテーマについ ての現状を知りたい時にも役に立つ.多くの項目には, そのテーマに重要な文献が引用されており,執筆者名も 手がかりとすれば,更に深く詳しく知ることが可能であ る. 巻末の付録には,19 世紀以降の地球化学・宇宙化学の 歴史が年表としてまとめられており,世界と日本の発展 を一覧できる.元素存在度などの基礎データの採録や, 和文・英文索引に加え,元素ごとの項目索引など,利便 性が図られている.あえて注文するとすれば,各項目の 末尾に,特に関連する項目番号をつければ,読み進める 上での参考になったであろう. 以下に印象深かった項目の例を幾つか列記する. 1)大気中酸素濃度進化 (1-26) 特に分析技術が急速 に進んだ,鉄や硫黄の同位体比や微量元素を用い た諸説の進展について,簡潔にまとめられている. 2)「コラム」地殻流体 (6-22) 深部低周波地震,温泉 や熱水鉱床などの身近な現象と地殻流体の関連を, 非常にわかりやすい概念図として示している. 3)マグマとは何か (7-18) このような極めて基本的 なテーマについて,生成のメカニズムから,化学的 な多様性,物理化学的な性質や水の関与に関する 最近の知見までがカバーされている. 4)月と月隕石 (9-09) 月隕石は,裏側からの情報も 得られる貴重な情報源であり,月探査結果も含め, 月の地殻形成に関する理解の現状を,図や表を駆 使して簡潔に示している. 最後に一言.地震や火山にしても地球環境にしても, どれだけ地球のことを知っているかによって,人間社会 の対策が律速されている.今後それほど遅くない時期 に,この事典の大改訂が必要になるくらいに,この分野 の科学が進歩することを切に願っている.そのためにも この事典が多様な人に活用され,次世代の研究者の育成 と,社会における科学のリテラシーの向上が促進される ことを期待したい. (479 頁,定価 12000 円(+税),2012 年 9 月 30 日 朝倉書店発行,ISBN 978-4-254-16057-4 C 3544) e-mail: [email protected]

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