Mg^2+結合による豚脳S-100b蛋白の立体構造変化の特徴
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(2) 平成 2 6イ │ 二 8月. 北海道教育大学紀要(自然科学編)第 6 5巻 第 1号 J o u r n a lo fHokkaidoU n i v e r s i t yo fE d u c a t i o n( N a t u r a lS c i e n c e s )Vo . l6 5 .No. l. Augus . t2014. Mg2+結合による豚脳 S-100b蛋白の立体構造変化の特徴 松田禎行 北海道教育大学旭川校化学教室. F e a t u r e so fC o n f o r m a t i o nChangei nP i gB r a i n 2+ S-100bP r o t e i nC a u s e dbyMg B i n d i n g MA TSUDASadayuki. Departmento fC h e m i s t r y .AsahikawaCampus.HokkaidoU n i v e r s i t yo fE d u c a t i o n .Asahikawa0 7 0 8 6 2 1. 概要 トリプルオペラジン (TFP),或いはコンゴーレッド (CR) 存在下の吸収スベクトル測定か Z+結合は C端領域をより疎水的な雰囲気へ移行させることが示 ら,豚脳 S-100b蛋白への Mg. された。 2-p トルイジニルナフタレン 6 スルホン酸 (TNS) を添加した蛍光スベクトル測定 の結果もこれを裏付けた。これに対し CaZ+結合ではその程度は小さいか,むしろ C端領域を 親水的雰囲気へ移行させることが示された。 S-100蛋白への. Ml+結合はその立体構造に大き. く寄与しているものと推測される。. 1.序論. 午や豚の S 1 0 0 a . a '及び、 S-100bへの CaZ+結合 ではチロシン ( T y r ) 残基の環境変化に基づく明. 豚脳 S-100蛋白は等電点 4 . 2の酸性 CaZ+結合蛋. 瞭な紫外部吸収差スベクトルが得られるが,. 白質で三つのアイソフォーム ( S 1 0 0 a,S 1 0 0 a ',. MgZ+を加えても幅広くはっきりしない形の差ス. S 1 0 0 b ) で存在する 1-3)。これらは各々 αs ,α' s,. ベクトルがかろうじて観られるだけである。また. s sのサブユニット対で構成されるが, αとα'の化 のそれとは 学的性質は殆ど同じであるのに対 Ls. CaZ+のS 1 0 0 a . a 'への結合ではトリプトファン. 大きく異なるため,実質上 S 1 0 0 a . a '( S 1 0 0 a,. トル強度の大幅な増加が認められるが, MgZ+の. S 1 0 0 a 'の混合物)と S-100bに大別できる。 S-100. 添加によるそれは極めて小さい。それ故, S-100. 蛋白は EFハンド構造を持つ蛋白族に属し,各サ. 蛋白は MgZ+ と相互作用しないものとかつては考. 0 . 5 0 0 ) は二つの EF ハンド ブユニット(分子量 1. えられていた 4.7刈。近年になって,間接的な実. 領域を有している。このうち N端側の EFハンド. Z+を結合し(解 験手法から脳の S-100蛋白は Mg. 領域の Ca Z + 解離定数は 200~500μM , C端側のそ. 離定数は 1~ 3mM),構造変化を起こすことが. れは 20~50.uM と報告されている 4-6) 。. 見出された 9)。また C端側疎水性アミノ酸残基と. ( T r p 9 0 ) 残基の環境変化に基づく蛍光スベク. 5.
(3) 出. 松. 禎. 行. してシステイン ( C y s ) 残基に着目し蛍光試薬で. の TFPの代わりに 10μMTNSを含んだものとし. 2+結合では 修飾して構造変化を調べたが, Ca. た 。 。フタルアルデヒドによるアミノ基の蛍光. Cys 残基は溶媒中へ大きく移行するのに比較し. .Bohlen等の方法に従って S-100bに対 修飾は P. Mg2+結合によるそれは極めて僅かであることが. し等モル量の oフタルアルデヒドを添加して. 示された 10)。これらのことから多くの研究者は,. 行った 12)。また蛍光スベクトル測定は試料溶液. Mg2+結合による構造変化は Ca2+結合によるそ. を340nmで、励起(バンド幅 1 0nm)しておこなった。. れに比較して小さく生理的意味の乏しいものと捉 えている。 しかし,疎水性アミノ酸残基には他にも多くの 種類があることに加えて親水性アミノ酸残基の挙. 3 . 結果と考察 3 . 1 TFP/S-100bの紫外吸収スペクトル. 動も観るべきであり,まだ構造変化の大小につい. 2+結合 図 1に示すように TFP/S-100bへの Ca. ての早急な結論付けは出来ない。そこで本実験で. は Ogoma等により報告されている 3) とおり吸収. Mg2+結合による立体構造変化を四つの方法. 帯の深色効果を起こした。これは戸サブユニッ. で調べてみた。 一 つ 日 は ト リ プ ル オ ペ ラ ジ ン. トの C端にあると推測されているの TFP結合サ. (TFP) を添加し紫外部の吸収スペクトルを測. イトがより親水性の雰囲気に移行したことを示唆. は ,. TFP/S-100bへの Mg2+結. C R )指 定する方法, 二つ目はコンゴーレッド (. する。 これに対し,. 示薬を添加し可視部の吸収スベクトルを測定する. 合は吸収帝の浅色効果を示した。これは TFP結. p 一トルイジニルナフタレン 6 方法, 三つ目は 2. 2+結合に伴い,より疎水的雰囲気 合サイトが Mg. スルホン酸 (TNS) を添加し蛍光スベクトルを. 2+結合で生じた立体 へ移行したことを示す。 Mg. 測定する方法, 四つ日はオルト. ( 0 ) フタルアル. 構造変化の特徴が明示されたことになる。. S 1 0 0 a . a 'においても Ca2+や Mg2+の結合で同. デヒドでアミノ基を蛍光修飾する方法である。. 様な現象が認められたがその効果は S -100bのそ れより大きかった(未発表)。. 2 .実 験. このことは. S 1 0 0 a . a 'と S-100bの立体構造の違いを反映す. 試薬. S -100bは豚脳より既報に従って調製し. るものであろう。. た 11)。 TFP, CR , TNS, 。フタルアルデヒド. は,それぞれシグマ杜,和光純薬工業社,半井化. 紫外可視吸収スペクトル.紫外可視吸収スベク 0. 守. n u. U '. -100b, 用いて測定した。 溶 液 組 成 は 10μMS. ﹄﹄由一山内相︿. 5Cにて島津 UV-3100S型分光光度計を トルは 2. p γ. 。ucu. 学社,関東化学社から購入したものを使用した。. む. 8 1. 25μMTFP ( 或 い は 10μM CR), 2 0m M . 0 ) を含む。追加 MOPS-NaOH緩衝液 (pH= 7 s -ア 成分は, O.lmMエチレングリコールピス (. ミノエチルエーテル). N,N ' 四酢酸 ( E G T A ), 0. 10mMMg2+, 1m MCa2+である。. 2 5 0. 5C 蛍光スペクトル法.蛍光スベクトル測定は 2 0. にて島津 RF-1500型蛍光光度計でおこなった。. TNSの蛍光スベクトルは試料溶液を 350nmで励 起(バンド幅 10nm) して得た。溶液組成は前述. 6. ¥. 2 9 0. λ!nm. 3 3 む. FP/S-I00bの紫外部吸収スベクトル 図1 T 2+/ TFP/ S 1 0 0 b . Ca2+ 曲線 1, 2, 3は各々 Mg. /TFP/ S l O O b . TFP/ S l O O bのスペクトルを指す。.
(4) Mg2+ 結合による豚脳 S 1 0 0 b蛋白の立体構造変化の特徴. z. 3.2 CR/S-l00bの可視部吸収スペクトル. 立体構造変化検出用の試薬が求められる。吸着指. 3 ・﹄﹂国}比. 増加は約 10%と僅かなため(図 1),より鋭敏な. ︹開山一 C. 2+結合による TFP/S-100bの吸収ピークの Mg. 示薬としてよく用いられる CRに蛋白質表面の環 境変化検出を期待し,. S-100bへの添加をおこ. 図 2。 ) CR/S-100bの吸収ピークの吸 なった ( 光度は Ca2+結合,. Mg2+結合に伴ってそれぞれ. λ/nm. 始めの 72%, 78%へと明らかに減少した。 また. 2+結合により CRの吸収ピークは 497nmから Ca 490nmへ と 移 動 し 浅 色 効 果 を 示 し た 。 一 方. M l +の結合では吸収ピークは 484nmへ移動した. NS/S-100bの蛍光スベクトル 図3 T 2+/Mg 2+/ 曲線 1, 2, 3, 4は各々 Ca S 1 0 0 b, 2+/ Mg2 +/ S 1 0 0 b,Ca S 1 0 0 b,S 1 0 0 bを指す。. ことから S-100bの CR結合サイト付近は更に疎. ことは,午脳 S-100蛋白への Mg2+結合が僅かな. 水性の環境へ移行したことがわかる。 このことは. TNS蛍光強度の増加を示したこと 9)とは大きく. Mg2+結合よる CR結合サイト付近の立体構造変. 異なる。豚脳 S-100蛋白と牛脳 S-100蛋白とでは. 化は,. Ca2+結合によるそれよりも大きいことを. その立体構造に僅かな違いがあると推測される。 また,これら TNS/S-100b錯体のスベクトルの. 意味する。. ピーク波長はそれぞれ4 30,4 3 6,4 2 0,427nmで. 2+結合では発光ピー あった。豚 S-100bへの Ca クは長波長側へ移動し,. 。 。. 0 . 4. TNS結合サイト(戸サ. ブユニットの C端側にあると推測されている 8)). 丸 、 一 川 r. CGAMOWA司. はより親水性の雰囲気に移行したことがわかる。 一方,. S-100bへの. 長側へ移動し,. M l +結合ではピークは短波. TNS結合サイトは疎水性雰囲気. に移行したことがわかる。同様な現象は豚脳. 2+結合においても観られた(未 S-100aa 'の Mg ,. 発表)。図 3の結果は先の図 1, 2及び Cys残基 蛍光修飾の結果 1 0 )を支持するものである。 図 2 CR/S-100bの可視部吸収スベクトル 曲f 来 1, 2, 3は各々 C R/S-IOOb,Mg2 +/CR/S-. 2+/CR/S-100bのスベクトルを指す。 1 0 0 b,Ca. 3 . 4 oフタルアルデヒド /S-100bの蛍光スペク 卜jレ. 図 4に oフタルアルデヒド /S-100b各種錯体の. 3 . 3 TNS/S-l00bの蛍光スペクトル 環境変化検出に鋭敏な TNS蛍光法で Ca2+,. 蛍光スベクトルを示す。前述の TNS/S-100bと 同様,. Ca2+や Mg2+の結合で蛍光スベクトル強. Mg2+結合がスベクトルに及ぼす効果を調べた. 度は大きく増加を示した。 スベクトルピークの. ( 図 3。 ) これらのイオンを結合すると. Ca2+ 相 対 強 度 比 は S-100b, M g2+/S-100b,. TNS/S-100bの蛍光強度は大きく増加した。即ち,. 2+/S-100bに対しそれぞれ /S-100b, Ca2+/Mg. 2+ スベクトルピークの相対強度比は S-100b, Ca. 1 .0,1.8,2 . 1,2.4であった。親7 ] ( 性で、あるアミ. 2+/S-100bの 2+/S-100b, Ca2+/Mg /S-100b,Mg. ノ基付近においても,. . 1であった。 この 順にそれぞれし 3. 4 , 4 . 3,5. Mg2+結合でも明白な構造変化が起きることが示. Ca2+結合は無論のこと. 7.
(5) 松出禎行. .Matsuda,B u l l .Chem.5 0 c .j p n .1 9 9 467 ,8 8 8 . 1 1 .S 1 2 .P .Bohlen.P .S t e i n .W.Dairman.S .Udenfriend. A r c h .B i o c h e m .B i o p h y s .1 97 3 .155,2 1 3 .. (旭川校教授). 0 4 0 0. 図4. 480. > ' / n m. 0 フタルアルデヒド/ S-100bの蛍光スベクトル. 曲線上. 2, 3, 4は各々 Ca2+/Ml+/S-100b,. Ca2+/S-100b,Mg2+/S-100b,S-100bを指す。. された。またピーク波長に関しては S-100bと他 錯体とで明らかな差は認められなかった。 まとめると,豚脳 S-100bへの M g2+結合は C 端側蛋白表面の疎水性領域をより疎水的雰囲気へ 移行させるような大きな立体構造変化を起こす。 一方,. Ca2+結合は疎水性領域をむしろ親水性雰. 囲気へと移行させる構造変化を起こす。また同蛋 白への M g2+, Ca2+結合はアミノ基付近でも立 体構造変化を起こす。. 文献 1.T .Isobe, T .Nakajima, T .Okuyama, Biochem.. B i o p h y s .Acta ,1 9 7 7,494,2 2 2 . 2. T .I s o b e, T .Okuyama, E u r . ] .Biochem.1 9 81 .116, 7 9 3.Y .Ogoma, T .Shimizu, H .Kobayashi, T .F u j i i, A . Y .Kondo, M.Hatano, Biochem.B i o p h y s Hachimori,. Acta ,1 9 8 9,997 ,1 8 8 . 4.R .S .Mani, B .E .Boyes, C .M.Kay, Biochemistry, 1 9 8 2,21,2 6 0 7 5.J .K .Harley, M.F .F i l l a t, C .Gomez-Moreno, G .T o l -. B i o c h e m i s t r y ,1 9 9 5,77 , 5 3 9 l i n, 6.J .Baudier, N .Glasser, D .Gerard, ] .B i o l .Chem. 1 9 8 6,261,8 1 9 2 7.P .L .P i n g e r e l l i, H .Mizukami, A .S .Wagner, D .E . J .P .O l i v e r, ] .P r o t .Chem.1 9 9 0, 9,1 6 9 . B a r t n i c k i,. 8.J .B a u d i e r, D .G e r a r d, B i o c h e m i s t η1 ,1 9 8 3, 22 , 3 3 6 0 . 9 .S .Matsuda , Bul . lC hem.5 0 c .j p n .2 0 0 2,75 , 2 5 0 3 .. B u l l .Chem.5 0 c .j p n .2 0 0 8, 81, 3 01 . 1 0 .S .matsuda,. 8.
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