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起床前漸増光が小学生の目覚めや日中の気分におよぼす影響について

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Academic year: 2021

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起床時の目覚め感の改善21-27)や,コルチゾール分泌 量の増加22),起床前睡眠構造の浅眠化21),心拍数の 緩やかな増加 28)などの生理的反応が実験室での評 価結果として報告されている.健常者を対象とした フィールド評価は,2003 年の Leppämäki らが主観的 目覚め感の改善29)を,Giménez らが主観的目覚め感 の改善および主観的集中感や気分,活力感の向上に 加え,睡眠慣性持続時間の短縮30)や,加算タスクの ような認知パフォーマンスの向上を報告 31)してい る.加えて,小学生や中学生を対象とした評価では, 主観的目覚め感の改善や 1 日を通した集中感の改善 が,Evantina らや神川ら,青木らによって報告32-35) されており,DS が健常者に与える影響について,フ ィールド評価でも多く示されている.しかしながら, 上記報告に用いられている多くの光源は白熱ランプ やハロゲンランプであり,LED 光源による評価は Gabel らや青木らなどの報告 23,24,34,35)にみられる程 度である.加えて,20 代男女を対象とした報告が多 く,小学生を対象とした報告は Evantina らや神川ら, 青木らの報告 32-35)のみであり,20 代男女における 報告数と比較してその数は少ない. 文部科学省によると 1970 年には小学生の睡眠時 間は 9 時間 23 分であったが,2000 年には 8 時間 43 分と 30 年の間に 40 分も減少していることが報告36) されている.加えて起床時の眠気についても,小学 生の半数以上が起床時の眠気を感じることが報告37) されている.小学生などの子どもたちにみられる生 活の夜型化と睡眠不足傾向は,その心身の健康や学 力,ひいては生活の質全体に影響をおよぼすことが 神川らによって報告38,39)されており,小学生の生活 習慣を改善する必要性が示されている.そこで本研 究では,小学生を対象に LED を用いた天井照明によ る起床前漸増光の連続的な使用が,起床時や一日の 気分,日中のパフォーマンスさらには睡眠習慣に好 ましい影響をおよぼすかを,日常の生活に支障をき たさない方法として被験者の自宅における評価によ って実施した. 2.評価方法 2-1. 評価期間・対象・手順概要 富山県内 F 小学校の児童 3-6 年生 33 名を対象に, 被験者宅に照明器具を設置して評価を依頼し,2016 年1~3月にかけて連続して4週間実施した.条件は, 漸増光あり条件(DS 条件) と漸増光のない条件 (No-DS 条件)の 2 条件で,平日に連続して 5 日間同 じ条件を実施し,各条件 2 回ずつ計 4 週間(5 日間 ×2 回×2 条件)評価を依頼した.実施順序は,順 序効果が出ないよう被験者毎にランダムに実施した. 起床直後および登校前(起床から一時間程度経過後), 就寝前に調査票記入を依頼し,起床直後のみ,調査 票記入に加え簡単なミニテストを実施した.その他, 週に 2 度被験者毎に決められた曜日の昼休みに重心 動揺テストを F 小学校内の保健室で実施した.実験 プロトコルを図 1-1,1-2 に示す.実験に用いた照明 器具は,市販の家庭用 LED シーリングライト (パナ ソニック社製:HH-CB0870A)である.DS 条件では, 起床設定時刻の 30 分前から光を微弱に点灯させ始 め徐々にその出力を増大させ,起床設定時刻に照明 器具からアラーム音がなるよう設定した.光源は 2 種類の青励起 LED(相関色温度は 2700 K と 6500 K, 図 1-3)で, 図 1-4 の例 40,41)と同様の漸増出力にお いて違和感が生じないよう,低色温度から高色温度 に変化する調色制御も実施した.全ての被験者とそ の保護者に対し,事前に実験概要を説明し被験者承 諾書への記入を依頼し同意を得た上で実験を行った. 図 1-1 一日の実験プロトコル 図 1-2 全体プロトコルの例 4 週間の条件内訳は,DS 条件 No-DS 条件ともに1週分×2 回 の全 6 通りである.それらの実施順序は被験者によって異なり, 4週分の条件実施順序に偏りがないようランダムに配置した. 図 1-3 漸増光に用いた 2 種の LED 相対分光分布 月-金 土日 月-金 土日 月-金 土日 月-金 土日 DS No-DS DS No-DS 1週目 2週目 3週目 4週目 0.00 0.25 0.50 0.75 1.00 300 400 500 600 700 800 相対強度 波⻑ [nm] 6500K 2700K ■Original Paper(受付:2017 年 8 月 31 日 受理:2017 年 12 月 6 日)

起床前漸増光が小学生の目覚めや日中の気分におよぼす影響について

Effects of dawn simulation on subjective feelings of awakening and daytime

in elementary school children.

八田和洋

**,***

,腰本理沙

,道盛章弘

**

,野口公喜

**

,小山恵美

****

,神川康子

富山大学大学院人間発達科学研究科*,パナソニック(株)**

京都工芸繊維大学 大学院工芸科学研究科 設計工学専攻***,京都工芸繊維大学 情報工学・人間科学系****

Kazuhiro Hatta

**,***

Koshimoto Risa

Akihiro Michimori

**

, Hiroki Noguchi

**

,

Emi Koyama

****

, Yasuko Kamikawa

Graduate School of Human Development, Toyama University*Panasonic Corporation** Doctoral Program of Engineering Design, Graduate School of Science and Technology,

Kyoto Institute of Technology***,

Faculty of Information and Human Science, Kyoto Institute of Technology****

起床前漸増光(DS)が起床時の気分向上などにおよぼす影響について,小学生対象の研究は少ない.そこ で,事前に同意を得た小学生 33 名を対象に DS が起床時や日中の気分におよぼす影響を評価した.市販の LED 天井照明を用い,起床時刻 30 分前から徐々に光の出力を増加させる DS 条件と漸増光なし条件の 2 条件で, 連続して一週間同じ条件を 2 回実施し,計 4 週間,評価用紙への記入とミニテストを平日に毎日実施した. 加えて保護者に子どもの機嫌や起床方法の評価を依頼した.その結果,DS 条件で起床時気分や午後の集中感 等の有意な向上が,ミニテストの成績が高い値を示す傾向が,保護者からみた子どもの機嫌や自立起床割合 の有意な改善が示された.それらの改善は利用開始 4 日目以降にみられた.DS の習慣的な利用は小学生の起 床時に加え日中の気分や集中感の向上,起床後のパフォーマンス向上や自立起床を促す可能性が示唆される. keyword : 照明,起床前漸増光,フィールド評価,小学生,起床時眠気 1. はじめに 情報化社会の発達やサービスの 24 時間化によっ て,日本人を取り巻く環境やライフスタイルは変化 しており,人々の睡眠習慣に影響を与えている.睡 眠習慣が悪化すると,睡眠障害やうつ病などを発症 するリスクが高まるだけでなく,日常生活や社会生 活で生活の質(QOL)の低下が発生する1,2).睡眠習 慣・生活習慣を改善するための有効な手段の一つに, 起床設定時刻の前から光を微弱に点灯させ始め徐々 に 出 力 を 増 加 さ せ る 起 床 前 漸 増 光 ( DS : Dawn Simulation)の利用が考えられる3) 1989 年に Terman らや Avery らが,起床時に顔面 照度 1000 lx となる起床前漸増光によって,冬型の 季節性感情障害(SAD:Seasonal Affective Disorder) 患者を対象に,メラトニンリズムの位相前進やハミ ルトン式うつ病評価尺度スコアの改善 4,5)を報告し ている.さらに,顔面照度が比較的低い照度(100 ~300 lx)であっても,うつ病評価尺度スコアの改 善6,7)や起床時の主観的気分が良好8)となることが 報告されている.1994 年には,Avery らによって DS と dim red light との比較評価が行われ,DS 条件に のみ抑うつ状態の改善が報告9)されている.その他, 1998 年にはアルコール中毒症状を有する SAD 患者で あっても抑うつ状態の改善が報告10)されている.さ らに,被験者宅でのフィールド評価においても,研 究室における評価結果と同様の傾向が示されており, うつ病評価尺度スコアの改善11-16)や生体リズム位相 の前進が報告15)され,それらは,起床後に高照度環 境に一定時間曝露させる高照度光療法と同程度11,14) 時にはそれ以上であること12)が示されている. 一方で,健常者を対象とした研究は,1998 年に Arakawa らが起床時に顔面照度が 1000 lx となる DS で健常な大学生 24 名の主観的な気分の改善17)を初 めて報告し,Danilenko らがメラトニンリズム位相 の前進18)を,小山らが体温波形の安定傾向19)を, 白川らが統計的有意差にはいたらなかったが起床前 の体温上昇傾向20)を報告している.さらに,顔面照 度が比較的低照度(100~300 lx 程度)であっても,

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起床時の目覚め感の改善21-27)や,コルチゾール分泌 量の増加22),起床前睡眠構造の浅眠化21),心拍数の 緩やかな増加 28)などの生理的反応が実験室での評 価結果として報告されている.健常者を対象とした フィールド評価は,2003 年の Leppämäki らが主観的 目覚め感の改善29)を,Giménez らが主観的目覚め感 の改善および主観的集中感や気分,活力感の向上に 加え,睡眠慣性持続時間の短縮30)や,加算タスクの ような認知パフォーマンスの向上を報告 31)してい る.加えて,小学生や中学生を対象とした評価では, 主観的目覚め感の改善や 1 日を通した集中感の改善 が,Evantina らや神川ら,青木らによって報告32-35) されており,DS が健常者に与える影響について,フ ィールド評価でも多く示されている.しかしながら, 上記報告に用いられている多くの光源は白熱ランプ やハロゲンランプであり,LED 光源による評価は Gabel らや青木らなどの報告 23,24,34,35)にみられる程 度である.加えて,20 代男女を対象とした報告が多 く,小学生を対象とした報告は Evantina らや神川ら, 青木らの報告 32-35)のみであり,20 代男女における 報告数と比較してその数は少ない. 文部科学省によると 1970 年には小学生の睡眠時 間は 9 時間 23 分であったが,2000 年には 8 時間 43 分と 30 年の間に 40 分も減少していることが報告36) されている.加えて起床時の眠気についても,小学 生の半数以上が起床時の眠気を感じることが報告37) されている.小学生などの子どもたちにみられる生 活の夜型化と睡眠不足傾向は,その心身の健康や学 力,ひいては生活の質全体に影響をおよぼすことが 神川らによって報告38,39)されており,小学生の生活 習慣を改善する必要性が示されている.そこで本研 究では,小学生を対象に LED を用いた天井照明によ る起床前漸増光の連続的な使用が,起床時や一日の 気分,日中のパフォーマンスさらには睡眠習慣に好 ましい影響をおよぼすかを,日常の生活に支障をき たさない方法として被験者の自宅における評価によ って実施した. 2.評価方法 2-1. 評価期間・対象・手順概要 富山県内 F 小学校の児童 3-6 年生 33 名を対象に, 被験者宅に照明器具を設置して評価を依頼し,2016 年1~3月にかけて連続して4週間実施した.条件は, 漸増光あり条件(DS 条件) と漸増光のない条件 (No-DS 条件)の 2 条件で,平日に連続して 5 日間同 じ条件を実施し,各条件 2 回ずつ計 4 週間(5 日間 ×2 回×2 条件)評価を依頼した.実施順序は,順 序効果が出ないよう被験者毎にランダムに実施した. 起床直後および登校前(起床から一時間程度経過後), 就寝前に調査票記入を依頼し,起床直後のみ,調査 票記入に加え簡単なミニテストを実施した.その他, 週に 2 度被験者毎に決められた曜日の昼休みに重心 動揺テストを F 小学校内の保健室で実施した.実験 プロトコルを図 1-1,1-2 に示す.実験に用いた照明 器具は,市販の家庭用 LED シーリングライト (パナ ソニック社製:HH-CB0870A)である.DS 条件では, 起床設定時刻の 30 分前から光を微弱に点灯させ始 め徐々にその出力を増大させ,起床設定時刻に照明 器具からアラーム音がなるよう設定した.光源は 2 種類の青励起 LED(相関色温度は 2700 K と 6500 K, 図 1-3)で, 図 1-4 の例 40,41)と同様の漸増出力にお いて違和感が生じないよう,低色温度から高色温度 に変化する調色制御も実施した.全ての被験者とそ の保護者に対し,事前に実験概要を説明し被験者承 諾書への記入を依頼し同意を得た上で実験を行った. 図 1-1 一日の実験プロトコル 図 1-2 全体プロトコルの例 4 週間の条件内訳は,DS 条件 No-DS 条件ともに1週分×2 回 の全 6 通りである.それらの実施順序は被験者によって異なり, 4週分の条件実施順序に偏りがないようランダムに配置した. 図 1-3 漸増光に用いた 2 種の LED 相対分光分布 月-金 土日 月-金 土日 月-金 土日 月-金 土日 DS No-DS DS No-DS 1週目 2週目 3週目 4週目 0.00 0.25 0.50 0.75 1.00 300 400 500 600 700 800 相対強度 波⻑ [nm] 6500K 2700K ■Original Paper(受付:2017 年 8 月 31 日 受理:2017 年 12 月 6 日)

起床前漸増光が小学生の目覚めや日中の気分におよぼす影響について

Effects of dawn simulation on subjective feelings of awakening and daytime

in elementary school children.

八田和洋

**,***

,腰本理沙

,道盛章弘

**

,野口公喜

**

,小山恵美

****

,神川康子

富山大学大学院人間発達科学研究科*,パナソニック(株)**

京都工芸繊維大学 大学院工芸科学研究科 設計工学専攻***,京都工芸繊維大学 情報工学・人間科学系****

Kazuhiro Hatta

**,***

Koshimoto Risa

Akihiro Michimori

**

, Hiroki Noguchi

**

,

Emi Koyama

****

, Yasuko Kamikawa

Graduate School of Human Development, Toyama University*Panasonic Corporation** Doctoral Program of Engineering Design, Graduate School of Science and Technology,

Kyoto Institute of Technology***,

Faculty of Information and Human Science, Kyoto Institute of Technology****

起床前漸増光(DS)が起床時の気分向上などにおよぼす影響について,小学生対象の研究は少ない.そこ で,事前に同意を得た小学生 33 名を対象に DS が起床時や日中の気分におよぼす影響を評価した.市販の LED 天井照明を用い,起床時刻 30 分前から徐々に光の出力を増加させる DS 条件と漸増光なし条件の 2 条件で, 連続して一週間同じ条件を 2 回実施し,計 4 週間,評価用紙への記入とミニテストを平日に毎日実施した. 加えて保護者に子どもの機嫌や起床方法の評価を依頼した.その結果,DS 条件で起床時気分や午後の集中感 等の有意な向上が,ミニテストの成績が高い値を示す傾向が,保護者からみた子どもの機嫌や自立起床割合 の有意な改善が示された.それらの改善は利用開始 4 日目以降にみられた.DS の習慣的な利用は小学生の起 床時に加え日中の気分や集中感の向上,起床後のパフォーマンス向上や自立起床を促す可能性が示唆される. keyword : 照明,起床前漸増光,フィールド評価,小学生,起床時眠気 1. はじめに 情報化社会の発達やサービスの 24 時間化によっ て,日本人を取り巻く環境やライフスタイルは変化 しており,人々の睡眠習慣に影響を与えている.睡 眠習慣が悪化すると,睡眠障害やうつ病などを発症 するリスクが高まるだけでなく,日常生活や社会生 活で生活の質(QOL)の低下が発生する1,2).睡眠習 慣・生活習慣を改善するための有効な手段の一つに, 起床設定時刻の前から光を微弱に点灯させ始め徐々 に 出 力 を 増 加 さ せ る 起 床 前 漸 増 光 ( DS : Dawn Simulation)の利用が考えられる3) 1989 年に Terman らや Avery らが,起床時に顔面 照度 1000 lx となる起床前漸増光によって,冬型の 季節性感情障害(SAD:Seasonal Affective Disorder) 患者を対象に,メラトニンリズムの位相前進やハミ ルトン式うつ病評価尺度スコアの改善 4,5)を報告し ている.さらに,顔面照度が比較的低い照度(100 ~300 lx)であっても,うつ病評価尺度スコアの改 善6,7)や起床時の主観的気分が良好8)となることが 報告されている.1994 年には,Avery らによって DS と dim red light との比較評価が行われ,DS 条件に のみ抑うつ状態の改善が報告9)されている.その他, 1998 年にはアルコール中毒症状を有する SAD 患者で あっても抑うつ状態の改善が報告10)されている.さ らに,被験者宅でのフィールド評価においても,研 究室における評価結果と同様の傾向が示されており, うつ病評価尺度スコアの改善11-16)や生体リズム位相 の前進が報告15)され,それらは,起床後に高照度環 境に一定時間曝露させる高照度光療法と同程度11,14) 時にはそれ以上であること12)が示されている. 一方で,健常者を対象とした研究は,1998 年に Arakawa らが起床時に顔面照度が 1000 lx となる DS で健常な大学生 24 名の主観的な気分の改善17)を初 めて報告し,Danilenko らがメラトニンリズム位相 の前進18)を,小山らが体温波形の安定傾向19)を, 白川らが統計的有意差にはいたらなかったが起床前 の体温上昇傾向20)を報告している.さらに,顔面照 度が比較的低照度(100~300 lx 程度)であっても,

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図 2 睡眠・疲労調査票(実験参加前調査) 図 3 起床直後調査票 図 4 果物テストの例 図 5 文字探索テストの例 2-3. 統計解析 各種調査票の評価値を順序尺度として,各条件(5 日間×2 週間)の計 10 日間における中央値を被験者 毎に算出し,各被験者の中央値を用いて条件間比較 を行った.検定にはノンパラメトリックの Wilcoxon の符号付順位検定を用いて有意差を検定した. ミニテスト,重心動揺テストの値は連続尺度とし て扱い,各被験者の条件毎に平均値を算出し,条件 間比較を行った.統計解析には,対応のあるt検定 を用い有意差を検定した.検定結果は,(t(自由度)=t 値,p 値)と表記した.検定結果は,p<0.01 を**, p<0.05 を*,p<0.1 を†(有意傾向)として表記した. 統計解析ソフトは SPSS Statistic 22 を使用した. 3.結果 3-1. 睡眠・疲労調査票 睡眠・疲労調査表の結果を表 1 に示す.被験者 33 名のうち,記録が不十分であった3名を除き30名(内 男子 17 名)を解析対象とした.特徴的な結果として, 普段の睡眠習慣は,「規則的」が 2 名(6.9 %),「だ いたい規則的」は 24 名(82.8%),「不規則」は 3 名 (10.3 %)であった.その他,普段の目覚めの気分 は「爽快に目が覚めることが多い」が最も多く 13 名(44.8 %)で,次いで「不快なことが多い」が 9 名(31.0 %)であった. 3-2. 起床直後・登校前・就寝前調査票 3 つの調査票の結果を表 2 に示す.気分項目では, 起床直後(以下,起床時),朝(登校前),午後の気 分で条件間に有意差(p=0.001**,0.021,0.014 がみられ,いずれも DS 条件で気分が良好であった. 起床時の眠気項目では,DS 条件で有意に眠気が少な 図 1-4 起床前漸増光の出力例40,41) 2-2. 評価項目 まず実験参加前に,普段の睡眠習慣について,小 学生が回答しやすいように,既存の睡眠に関する調 査票を基に神川らが作成した睡眠・疲労調査票34) 用いて評価を実施した.実験期間中は,神川らが用 いた調査票33,34)と同様の 3 種の調査票(起床直後調 査票,登校前調査票,就寝前調査票)を用いて起床 直後・朝(登校前)および就寝前に気分や眠気など の主観評価を実施した.加えて,2 種のミニテスト で起床直後のパフォーマンスを評価した.また,他 者による観察評価として,起床時の気分などの評価 を保護者に依頼した.昼休みの時間帯には重心動揺 計測を実施した.各評価項目の概要を以下に示す. ・睡眠・疲労調査票 (図 2) 毎日の睡眠のとり方を「1.規則的」,「2.だいたい 規則的」,「3.不規則」の 3 段階で,普段の就寝時刻, 起床時刻,睡眠時間に加え,普段の目覚めの気分を 「1.いつも爽快に目が覚める」,「2.爽快に目が覚め ることが多い」,「3.不快なことが多い」,「4.いつも 不快である」,「5.どちらともいえない」の 5 段階で 実験参加前に評価を依頼した. ・起床直後調査票 (図 3) 起床直後の気分および眠気を 5 段階の SD 法42) 用いて評価した.気分を「気持ち良い」,「やや良い」, 「ふつう」,「やや悪い」,「悪い」,眠気を「すっきり」, 「ややすっきり」,「ややねむい」,「かなりねむい」, 「非常にねむい」としてそれぞれ評価を依頼した. その他,起床時刻等の記入を依頼した. ・登校前調査票 起床直後からしばらく時間が経過した後の朝の気 分等を 5 段階の SD 法を用いて評価した.朝の気分評 価は,起床直後調査票と同様の評価用語を用いた. ・就寝前調査票 就寝前に一日を振り返って午前および午後の集中 感や気分等を 5 段階の SD 法を用いて評価した.集中 感は「とても集中できた」,「まあまあ集中できた」, 「どちらでもない」,「あまり集中できなかった」,「全 く集中できなかった」とし,就寝前に一日を振り返 っての午前および午後の気分については起床直後調 査票と同様の評価用語を用いた.その他,就寝時刻 等の記入を依頼した. ・ミニテスト 起床直後のパフォーマンスを評価し,眠気や気分 との関連を検討するため,以下に示す 2 種のミニテ ストを実施した.果物テストは週 3 回(月/水/金), 文字探索テストは週 2 回(火/木),起床直後調査票 の記入後に実施した. ‐果物テスト (図 4) A4 用紙 1 枚に 53 個の 3 種の果物(イチゴ・ミカン・ バナナ)を印刷し,各々の色が正しいか判別する正誤 判断テストを実施した.回答後に見直さないよう指 示し,テスト開始および終了時刻の記入を依頼した. ‐文字探索テスト (図 5) A4 用紙1枚に印刷されたひらがな文字の中から, 指定したひらがなを探索するテストを実施した.指 定した文字は,「あいう」,「なにぬ」,「まみむ」,「や ゆよ」であり,被験者毎にランダムに指定した.そ の他,テスト開始時刻,終了時刻の記入を依頼した. ・保護者による観察調査票 起床直後に保護者による子どもの観察評価を行っ た.評価項目は,起床方法および子の朝の機嫌とし た.起床方法は,「自然に起床」,「アラームで起床」, 「家族が起こして起床」とし,自然に起床以外では その大変さも評価した.子の朝の機嫌は,「良い」, 「やや良い」,「どちらでもない」,「やや悪い」,「悪 い」とした. ・重心動揺テスト 日中のパフォーマンスを評価し,集中感や気分等 との関連を検討するため,重心動揺を評価した.重 心動揺の評価は,平衡機能計(ユニメック社製, UM-BAR)を用いて,開眼状態の「軌跡長」,「実効値 面積」,「横方向軌跡長」,「縦方向軌跡長」,「横方向 最大振幅」,「縦方向最大振幅」をサンプリングレー ト 20Hz で評価した.所要時間は 1 回の計測で 3 分程 度である.

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図 2 睡眠・疲労調査票(実験参加前調査) 図 3 起床直後調査票 図 4 果物テストの例 図 5 文字探索テストの例 2-3. 統計解析 各種調査票の評価値を順序尺度として,各条件(5 日間×2 週間)の計 10 日間における中央値を被験者 毎に算出し,各被験者の中央値を用いて条件間比較 を行った.検定にはノンパラメトリックの Wilcoxon の符号付順位検定を用いて有意差を検定した. ミニテスト,重心動揺テストの値は連続尺度とし て扱い,各被験者の条件毎に平均値を算出し,条件 間比較を行った.統計解析には,対応のあるt検定 を用い有意差を検定した.検定結果は,(t(自由度)=t 値,p 値)と表記した.検定結果は,p<0.01 を**, p<0.05 を*,p<0.1 を†(有意傾向)として表記した. 統計解析ソフトは SPSS Statistic 22 を使用した. 3.結果 3-1. 睡眠・疲労調査票 睡眠・疲労調査表の結果を表 1 に示す.被験者 33 名のうち,記録が不十分であった3名を除き30名(内 男子 17 名)を解析対象とした.特徴的な結果として, 普段の睡眠習慣は,「規則的」が 2 名(6.9 %),「だ いたい規則的」は 24 名(82.8%),「不規則」は 3 名 (10.3 %)であった.その他,普段の目覚めの気分 は「爽快に目が覚めることが多い」が最も多く 13 名(44.8 %)で,次いで「不快なことが多い」が 9 名(31.0 %)であった. 3-2. 起床直後・登校前・就寝前調査票 3 つの調査票の結果を表 2 に示す.気分項目では, 起床直後(以下,起床時),朝(登校前),午後の気 分で条件間に有意差(p=0.001**,0.021,0.014 がみられ,いずれも DS 条件で気分が良好であった. 起床時の眠気項目では,DS 条件で有意に眠気が少な 図 1-4 起床前漸増光の出力例40,41) 2-2. 評価項目 まず実験参加前に,普段の睡眠習慣について,小 学生が回答しやすいように,既存の睡眠に関する調 査票を基に神川らが作成した睡眠・疲労調査票34) 用いて評価を実施した.実験期間中は,神川らが用 いた調査票33,34)と同様の 3 種の調査票(起床直後調 査票,登校前調査票,就寝前調査票)を用いて起床 直後・朝(登校前)および就寝前に気分や眠気など の主観評価を実施した.加えて,2 種のミニテスト で起床直後のパフォーマンスを評価した.また,他 者による観察評価として,起床時の気分などの評価 を保護者に依頼した.昼休みの時間帯には重心動揺 計測を実施した.各評価項目の概要を以下に示す. ・睡眠・疲労調査票 (図 2) 毎日の睡眠のとり方を「1.規則的」,「2.だいたい 規則的」,「3.不規則」の 3 段階で,普段の就寝時刻, 起床時刻,睡眠時間に加え,普段の目覚めの気分を 「1.いつも爽快に目が覚める」,「2.爽快に目が覚め ることが多い」,「3.不快なことが多い」,「4.いつも 不快である」,「5.どちらともいえない」の 5 段階で 実験参加前に評価を依頼した. ・起床直後調査票 (図 3) 起床直後の気分および眠気を 5 段階の SD 法42) 用いて評価した.気分を「気持ち良い」,「やや良い」, 「ふつう」,「やや悪い」,「悪い」,眠気を「すっきり」, 「ややすっきり」,「ややねむい」,「かなりねむい」, 「非常にねむい」としてそれぞれ評価を依頼した. その他,起床時刻等の記入を依頼した. ・登校前調査票 起床直後からしばらく時間が経過した後の朝の気 分等を 5 段階の SD 法を用いて評価した.朝の気分評 価は,起床直後調査票と同様の評価用語を用いた. ・就寝前調査票 就寝前に一日を振り返って午前および午後の集中 感や気分等を 5 段階の SD 法を用いて評価した.集中 感は「とても集中できた」,「まあまあ集中できた」, 「どちらでもない」,「あまり集中できなかった」,「全 く集中できなかった」とし,就寝前に一日を振り返 っての午前および午後の気分については起床直後調 査票と同様の評価用語を用いた.その他,就寝時刻 等の記入を依頼した. ・ミニテスト 起床直後のパフォーマンスを評価し,眠気や気分 との関連を検討するため,以下に示す 2 種のミニテ ストを実施した.果物テストは週 3 回(月/水/金), 文字探索テストは週 2 回(火/木),起床直後調査票 の記入後に実施した. ‐果物テスト (図 4) A4 用紙 1 枚に 53 個の 3 種の果物(イチゴ・ミカン・ バナナ)を印刷し,各々の色が正しいか判別する正誤 判断テストを実施した.回答後に見直さないよう指 示し,テスト開始および終了時刻の記入を依頼した. ‐文字探索テスト (図 5) A4 用紙1枚に印刷されたひらがな文字の中から, 指定したひらがなを探索するテストを実施した.指 定した文字は,「あいう」,「なにぬ」,「まみむ」,「や ゆよ」であり,被験者毎にランダムに指定した.そ の他,テスト開始時刻,終了時刻の記入を依頼した. ・保護者による観察調査票 起床直後に保護者による子どもの観察評価を行っ た.評価項目は,起床方法および子の朝の機嫌とし た.起床方法は,「自然に起床」,「アラームで起床」, 「家族が起こして起床」とし,自然に起床以外では その大変さも評価した.子の朝の機嫌は,「良い」, 「やや良い」,「どちらでもない」,「やや悪い」,「悪 い」とした. ・重心動揺テスト 日中のパフォーマンスを評価し,集中感や気分等 との関連を検討するため,重心動揺を評価した.重 心動揺の評価は,平衡機能計(ユニメック社製, UM-BAR)を用いて,開眼状態の「軌跡長」,「実効値 面積」,「横方向軌跡長」,「縦方向軌跡長」,「横方向 最大振幅」,「縦方向最大振幅」をサンプリングレー ト 20Hz で評価した.所要時間は 1 回の計測で 3 分程 度である.

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表 3 起床直後ミニテストの結果 表 4 昼休み重心動揺の計測結果(開眼) 3-4. 保護者による観察評価 保護者による子どもの観察評価結果を表 5 に示す. 子の起き方,子の朝の機嫌項目において,条件間に 有意差がみられ(p=0.002**,0.003**,DS 条件が No-DS 条件と比較して,子の起き方で,家族が起こ した割合が少なく,朝の機嫌項目で,子の機嫌が良 好であった.子を起こす大変さでは,有意ではなか ったがDS条件がNo-DS条件と比較して低い値となり, 子を起こす大変さが減る可能性が示された.特徴的 な結果として,保護者が観察した子の起き方の各回 答値(各被験者毎に算出した中央値)の人数割合を 図 8 に示す.家族が起こした割合が No-DS 条件 64.3 %に対して DS 条件では 38.3 %であり,アラ ームで起こした割合は No-DS 条件 21.4 %に対して DS 条件では 51.7 %であった(図 8). 3-5. 各条件週の開始からの経過日数別の比較 3-2,3-4 に示した主観評価項目について,各条件 の開始からの経過日数別に条件間比較を行った結果 を表 6 に示す. 特徴的な結果として,起床時の気分項目で 1,4,5 日目に有意差(p<0.001**,0.015,0.033)がみら れ,DS 条件でより良好な気分で起床できていた.眠 気項目で,1,4,5 日目に有意差(p=0.018*,0.008**, 0.001**)がみられ,DS 条件で起床時眠気が少なかっ た.その他,午後の集中感では 1 日目および 5 日目 に有意差(p=0.001 **, 0.008**)がみられ,DS 条件 で集中感がより良好であった. 保護者の観察評価では,子の朝の機嫌項目におい て,1,2,4,5 日目に有意差(p<0.001**,0.009**, 0.013*, 0.001**)がみられ,DS 条件で朝の機嫌が 良好であった.子の起き方では,1~4 日目で条件間 に有意差(p=0.010*,0.001**,0.019,0.045)が, 5 日目では有意傾向(p=0.077†)がみられ,DS 条件で 家族が起こした割合が少なく,アラームで起床した 割合が多いことが示された. 表 5 保護者による観察評価結果 子の朝の機嫌・子を起こす大変さは,数値が低いほど 良好な結果であることを示す. 図 8 保護者が観察した子どもの起き方 (被験者毎の中央値) 条件名横の括弧内の数字は n 数を示す. 条件 平均値 SD p値 DS 99.0 1.2 No-DS 98.5 1.7 DS 1.5 0.7 No-DS 1.6 0.7 DS 58.1 18.9 No-DS 60.3 14.7 DS 2.4 1.6 No-DS 2.5 1.1 p=0.099† p=0.347 p=0.599 p=0.785 所要時間[分] 文字探索 テスト 項目 正答率[%] 所要時間[分] 果物テスト 正答率[%] 項目 条件 平均値 SD p値 DS 568.4 130.0 No-DS 563.7 123.9 DS 250.2 149.3 No-DS 251.2 152.2 DS 361.9 73.2 No-DS 357.8 77.6 DS 349.2 101.5 No-DS 350.3 87.2 DS 28.8 6.4 No-DS 29.3 13.4 DS 30.8 9.1 No-DS 31.0 9.8 軌跡長[mm] p=0.695 実効値面積[mm2] p=0.974 横方向軌跡長[mm] p=0.631 縦方向軌跡長[mm] p=0.914 横方向最大振幅[mm] p=0.626 縦方向最大振幅[mm] p=0.911 項目 条件 中央値の 平均値 SD p値 DS 2.3 0.64 No-DS 2.5 0.75 DS 2.0 0.94 No-DS 2.8 1.26 DS 2.5 1.06 No-DS 2.9 1.30 子の起き方 子の朝の機嫌 子を起こす大変さ ※上記に示す通り回答値に数値を割り当て,各被験者毎に中央値を算出し,   その平均値およびSDを算出した. 1:良い - 5:悪い 1:楽 - 5:大変 子を起こす大変さ 子の朝の機嫌 子の起き方 p=0.002** p=0.003** p=0.184 1:自然に起床 2:アラームで起床 3:家族が起こして起床 10.0 14.3 51.7 21.4 38.3 64.3 0% 20% 40% 60% 80% 100% DS(30) No-DS(28) 各回答値の割合(%) ⼦の起き⽅(p=0.001**) ⾃然に起床 アラームで起床 家族が起こして起床 かった(p<0.001**.集中感項目では,午後の集中 感が DS 条件で有意に良好(p=0.036*)であった. 起床時刻は DS 条件で有意に早かった(p=0.026* 特徴的な結果として,起床時気分および午後の集中 感の各回答値(被験者毎に算出した中央値)の人数 割合を図 6,図 7 に示す.DS 条件は No-DS 条件と比較 して,起床時の気分において「気持ち良い」,「やや 良い」の回答値割合が多く(図 6),午後の集中感に おいて「とても集中できた」の回答値割合が多かっ た(図 7). 3-3. ミニテスト・重心動揺テスト パフォーマンスを評価するために実施した起床直 後のミニテスト(果物テスト・文字探索テスト)お よび昼休みの重心動揺テストの結果を表 3,表 4 に 示す.果物テストの正答率で,DS 条件が No-DS 条件 と比較して高い傾向(t(29)=1.70, p=0.099†)がみ られ,正答率の値は DS 条件で 0.5 %高かった.所 要時間では,DS 条件でより短い時間であった (DS:1.5 分,No-DS:1.6 分)が,統計的に有意では なかった.文字探索テストおよび重心動揺テストの 結果では,いずれの項目においても条件間に有意差 はみられなかった. 表 1 睡眠・疲労に関する実験参加前調査の結果 表 2 起床直後・登校前・就寝前調査の結果 気分,眠気,集中感は数値が低いほど良好であることを示す. 図 6 起床時の気分(被験者毎の中央値) 条件名横の括弧内の数字は n 数を示す. 図 7 午後の集中感(被験者毎の中央値) 条件名横の括弧内の数字は n 数を示す. 男 女 度数 (%) 17 (56.7) 13 (43.3) 3年生 4年生 5年生 6年生 度数 (%) 4 (13.3) 12 (40.0) 8 (26.7) 6 (20.0) 規則的 だいたい 規則的 不規則 度数 (%) 2 (6.9) 24 (82.8) 3 (10.3) ~21:30 ~22:00 ~22:30 ~23:00 ~23:30 23:00~ 度数 (%) 5 (17.2) 12 (41.4) 8 (27.6) 2 (6.9) 1 (3.4) 1 (3.4) ~6:00 ~6:30 ~7:00 ~7:30 ~8:30 8:30~ 度数 (%) 6 (20.7) 13 (44.8) 6 (20.7) 3 (10.3) 0 (0.0) 1 (3.4) 7~7.5 7.5~8 8~8.5 8.5~9 9~9.5 9.5~10 度数 (%) 3 (10.3) 4 (13.8) 4 (13.8) 5 (17.2) 11 (37.9) 2 (6.9) 1 2 3 4 5 度数 (%) 1 (3.4) 13 (44.8) 5 (17.2) 9 (31.0) 1 (3.4) 目覚めの気分 目覚めの気分の評価値 1:いつも爽快に目が覚める 2:爽快に目が覚めることが多い 3:どちらともいえない 4:不快なことが多い 5:いつも不快である ※数値が低いほど目覚めの気分が良好となるように、使用した睡眠・疲労調査票(図2)の回 答番号からは順序を入れ替えて,上記のように評価値を設定した. 性別 学年 睡眠の規則性 就寝時刻 起床時刻 睡眠時間(h) 条件 中央値の 平均値 SD p値 気分 起床時 DS 2.1 0.94 p=0 .00 1 ** No-DS 2.7 1.02 朝 DS 1.9 0.94 p=0 .02 1 * No-DS 2.2 0.91 午前 DS 1.8 1.01 p=0.404 No-DS 1.9 0.87 午後 DS 1.7 0.98 p=0 .01 4 * No-DS 2.0 1.01 眠気 起床時 DS 2.3 1.11 p<0 .00 1 ** No-DS 3.0 1.03 集中感 午前 DS 1.7 0.84 p=0.458 No-DS 1.8 0.78 午後 DS 1.6 0.81 p=0 .03 6 * No-DS 1.9 0.81 DS 2.8 0.83 p=0 .02 6 * No-DS 3.0 0.92 DS 2.5 1.10 p=0.963 No-DS 2.6 1.04 ※上記に示す通り回答値に数値を割り当て,各被験者毎に中央値を算出し,   その平均値およびSDを算出した. 項目 起床時刻 就寝時刻 1:~5:30 2:~6:00 3:~6:30 4:~7:00 5:7:00~ 1:~21:30 2:~22:00 3:~22:30 4:~23:00 5:23:00~ 気分 就寝時刻 起床時刻 集中感 眠気 1:気持ち良い-5:悪い 1:すっきり-5:非常にねむい 1:とても集中できた-5:全く集中できなかった 28.3 15.0 40.0 23.3 26.7 48.3 1.7 6.7 3.3 6.7 0% 20% 40% 60% 80% 100% DS(30) No-DS(30) 各回答値の割合(%) 起床時の気分(p=0.001**) 気持ち良い やや良い ふつう やや悪い 悪い 58.3 35.0 28.3 43.3 10.0 18.3 3.3 3.3 0% 20% 40% 60% 80% 100% DS(30) No-DS(30) 各回答値の割合(%) 午後の集中感(p=0.036*) とても集中できた まあまあ集中できた どちらでもない あまり集中できなかった 全く集中できなかった

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表 3 起床直後ミニテストの結果 表 4 昼休み重心動揺の計測結果(開眼) 3-4. 保護者による観察評価 保護者による子どもの観察評価結果を表 5 に示す. 子の起き方,子の朝の機嫌項目において,条件間に 有意差がみられ(p=0.002**,0.003**,DS 条件が No-DS 条件と比較して,子の起き方で,家族が起こ した割合が少なく,朝の機嫌項目で,子の機嫌が良 好であった.子を起こす大変さでは,有意ではなか ったがDS条件がNo-DS条件と比較して低い値となり, 子を起こす大変さが減る可能性が示された.特徴的 な結果として,保護者が観察した子の起き方の各回 答値(各被験者毎に算出した中央値)の人数割合を 図 8 に示す.家族が起こした割合が No-DS 条件 64.3 %に対して DS 条件では 38.3 %であり,アラ ームで起こした割合は No-DS 条件 21.4 %に対して DS 条件では 51.7 %であった(図 8). 3-5. 各条件週の開始からの経過日数別の比較 3-2,3-4 に示した主観評価項目について,各条件 の開始からの経過日数別に条件間比較を行った結果 を表 6 に示す. 特徴的な結果として,起床時の気分項目で 1,4,5 日目に有意差(p<0.001**,0.015,0.033)がみら れ,DS 条件でより良好な気分で起床できていた.眠 気項目で,1,4,5 日目に有意差(p=0.018*,0.008**, 0.001**)がみられ,DS 条件で起床時眠気が少なかっ た.その他,午後の集中感では 1 日目および 5 日目 に有意差(p=0.001 **, 0.008**)がみられ,DS 条件 で集中感がより良好であった. 保護者の観察評価では,子の朝の機嫌項目におい て,1,2,4,5 日目に有意差(p<0.001**,0.009**, 0.013*, 0.001**)がみられ,DS 条件で朝の機嫌が 良好であった.子の起き方では,1~4 日目で条件間 に有意差(p=0.010*,0.001**,0.019,0.045)が, 5 日目では有意傾向(p=0.077†)がみられ,DS 条件で 家族が起こした割合が少なく,アラームで起床した 割合が多いことが示された. 表 5 保護者による観察評価結果 子の朝の機嫌・子を起こす大変さは,数値が低いほど 良好な結果であることを示す. 図 8 保護者が観察した子どもの起き方 (被験者毎の中央値) 条件名横の括弧内の数字は n 数を示す. 条件 平均値 SD p値 DS 99.0 1.2 No-DS 98.5 1.7 DS 1.5 0.7 No-DS 1.6 0.7 DS 58.1 18.9 No-DS 60.3 14.7 DS 2.4 1.6 No-DS 2.5 1.1 p=0.099† p=0.347 p=0.599 p=0.785 所要時間[分] 文字探索 テスト 項目 正答率[%] 所要時間[分] 果物テスト 正答率[%] 項目 条件 平均値 SD p値 DS 568.4 130.0 No-DS 563.7 123.9 DS 250.2 149.3 No-DS 251.2 152.2 DS 361.9 73.2 No-DS 357.8 77.6 DS 349.2 101.5 No-DS 350.3 87.2 DS 28.8 6.4 No-DS 29.3 13.4 DS 30.8 9.1 No-DS 31.0 9.8 軌跡長[mm] p=0.695 実効値面積[mm2] p=0.974 横方向軌跡長[mm] p=0.631 縦方向軌跡長[mm] p=0.914 横方向最大振幅[mm] p=0.626 縦方向最大振幅[mm] p=0.911 項目 条件 中央値の 平均値 SD p値 DS 2.3 0.64 No-DS 2.5 0.75 DS 2.0 0.94 No-DS 2.8 1.26 DS 2.5 1.06 No-DS 2.9 1.30 子の起き方 子の朝の機嫌 子を起こす大変さ ※上記に示す通り回答値に数値を割り当て,各被験者毎に中央値を算出し,   その平均値およびSDを算出した. 1:良い - 5:悪い 1:楽 - 5:大変 子を起こす大変さ 子の朝の機嫌 子の起き方 p=0.002** p=0.003** p=0.184 1:自然に起床 2:アラームで起床 3:家族が起こして起床 10.0 14.3 51.7 21.4 38.3 64.3 0% 20% 40% 60% 80% 100% DS(30) No-DS(28) 各回答値の割合(%) ⼦の起き⽅(p=0.001**) ⾃然に起床 アラームで起床 家族が起こして起床 かった(p<0.001**.集中感項目では,午後の集中 感が DS 条件で有意に良好(p=0.036*)であった. 起床時刻は DS 条件で有意に早かった(p=0.026* 特徴的な結果として,起床時気分および午後の集中 感の各回答値(被験者毎に算出した中央値)の人数 割合を図 6,図 7 に示す.DS 条件は No-DS 条件と比較 して,起床時の気分において「気持ち良い」,「やや 良い」の回答値割合が多く(図 6),午後の集中感に おいて「とても集中できた」の回答値割合が多かっ た(図 7). 3-3. ミニテスト・重心動揺テスト パフォーマンスを評価するために実施した起床直 後のミニテスト(果物テスト・文字探索テスト)お よび昼休みの重心動揺テストの結果を表 3,表 4 に 示す.果物テストの正答率で,DS 条件が No-DS 条件 と比較して高い傾向(t(29)=1.70, p=0.099†)がみ られ,正答率の値は DS 条件で 0.5 %高かった.所 要時間では,DS 条件でより短い時間であった (DS:1.5 分,No-DS:1.6 分)が,統計的に有意では なかった.文字探索テストおよび重心動揺テストの 結果では,いずれの項目においても条件間に有意差 はみられなかった. 表 1 睡眠・疲労に関する実験参加前調査の結果 表 2 起床直後・登校前・就寝前調査の結果 気分,眠気,集中感は数値が低いほど良好であることを示す. 図 6 起床時の気分(被験者毎の中央値) 条件名横の括弧内の数字は n 数を示す. 図 7 午後の集中感(被験者毎の中央値) 条件名横の括弧内の数字は n 数を示す. 男 女 度数 (%) 17 (56.7) 13 (43.3) 3年生 4年生 5年生 6年生 度数 (%) 4 (13.3) 12 (40.0) 8 (26.7) 6 (20.0) 規則的 だいたい 規則的 不規則 度数 (%) 2 (6.9) 24 (82.8) 3 (10.3) ~21:30 ~22:00 ~22:30 ~23:00 ~23:30 23:00~ 度数 (%) 5 (17.2) 12 (41.4) 8 (27.6) 2 (6.9) 1 (3.4) 1 (3.4) ~6:00 ~6:30 ~7:00 ~7:30 ~8:30 8:30~ 度数 (%) 6 (20.7) 13 (44.8) 6 (20.7) 3 (10.3) 0 (0.0) 1 (3.4) 7~7.5 7.5~8 8~8.5 8.5~9 9~9.5 9.5~10 度数 (%) 3 (10.3) 4 (13.8) 4 (13.8) 5 (17.2) 11 (37.9) 2 (6.9) 1 2 3 4 5 度数 (%) 1 (3.4) 13 (44.8) 5 (17.2) 9 (31.0) 1 (3.4) 目覚めの気分 目覚めの気分の評価値 1:いつも爽快に目が覚める 2:爽快に目が覚めることが多い 3:どちらともいえない 4:不快なことが多い 5:いつも不快である ※数値が低いほど目覚めの気分が良好となるように、使用した睡眠・疲労調査票(図2)の回 答番号からは順序を入れ替えて,上記のように評価値を設定した. 性別 学年 睡眠の規則性 就寝時刻 起床時刻 睡眠時間(h) 条件 中央値の 平均値 SD p値 気分 起床時 DS 2.1 0.94 p=0 .00 1 ** No-DS 2.7 1.02 朝 DS 1.9 0.94 p=0 .02 1 * No-DS 2.2 0.91 午前 DS 1.8 1.01 p=0.404 No-DS 1.9 0.87 午後 DS 1.7 0.98 p=0 .01 4 * No-DS 2.0 1.01 眠気 起床時 DS 2.3 1.11 p<0 .00 1 ** No-DS 3.0 1.03 集中感 午前 DS 1.7 0.84 p=0.458 No-DS 1.8 0.78 午後 DS 1.6 0.81 p=0 .03 6 * No-DS 1.9 0.81 DS 2.8 0.83 p=0 .02 6 * No-DS 3.0 0.92 DS 2.5 1.10 p=0.963 No-DS 2.6 1.04 ※上記に示す通り回答値に数値を割り当て,各被験者毎に中央値を算出し,   その平均値およびSDを算出した. 項目 起床時刻 就寝時刻 1:~5:30 2:~6:00 3:~6:30 4:~7:00 5:7:00~ 1:~21:30 2:~22:00 3:~22:30 4:~23:00 5:23:00~ 気分 就寝時刻 起床時刻 集中感 眠気 1:気持ち良い-5:悪い 1:すっきり-5:非常にねむい 1:とても集中できた-5:全く集中できなかった 28.3 15.0 40.0 23.3 26.7 48.3 1.7 6.7 3.3 6.7 0% 20% 40% 60% 80% 100% DS(30) No-DS(30) 各回答値の割合(%) 起床時の気分(p=0.001**) 気持ち良い やや良い ふつう やや悪い 悪い 58.3 35.0 28.3 43.3 10.0 18.3 3.3 3.3 0% 20% 40% 60% 80% 100% DS(30) No-DS(30) 各回答値の割合(%) 午後の集中感(p=0.036*) とても集中できた まあまあ集中できた どちらでもない あまり集中できなかった 全く集中できなかった

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4-2. 起床前漸増光が起床後および日中の パフォーマンスにおよぼす影響について 起床直後に実施したミニテストの結果では,果物 テストの正答率にのみ有意傾向がみられ,成績向上 の可能性が示された.DS による起床時気分の改善や 眠気の低減が,朝のパフォーマンス改善につながる 可能性が考えられる.この結果は,Tonetti らによ る青年期を対象としたフィールド評価における加算 タスクの向上31)や Gabel らによる 20 代を対象とし た実験室での評価におけるモータートラッキングテ ストの成績向上24)と同様の傾向を示している.しか しながら,本研究でみられた DS によるパフォーマン ス向上は限定的であり,瞬時に正誤を判定する瞬発 力を計る果物テストにおいてのみ成績向上傾向がみ られ,一定時間集中して取り組む文字探索テストで は成績向上はみられなかった.先行研究 31)24)で成 績向上が報告されている認知タスクを子ども向けに 改良することで,DS による起床時気分の改善や眠気 の低減と関連するパフォーマンス向上を評価できる 可能性が考えられる. また,昼休みに実施した重心動揺計測において, 条件間に有意差はなく,DS による午後の集中感向上 と関連する影響はみられなかった.睡眠不足や不規 則な生活が重心動揺に影響すると思われるが,本研 究対象者の実験参加前調査結果(表1)をみる限り, 重心動揺に問題が生じるほどの睡眠習慣を有する対 象者が少なかった可能性が考えられる. 4-3. 各条件開始からの経過日数別の比較結果 漸増光の利用を開始してから経過した日数別に, DS の影響を評価した結果(表 6),起床時気分や眠気 は,利用開始 1 日目,4 日目,5 日目で有意に良好で あった.また,保護者の観察評価では,子の朝の機 嫌や起床方法は利用開始 1 日目から全ての利用日で 良好な影響(一部有意傾向)がみられている.しか し,2 週間全体の中央値を用いた評価で条件間に有 意差がみられた午後の集中感については,利用開始 1 日目,5 日目にしか有意差がみられなかった.利用 開始 1 日目は環境変化の影響もあると考えると,起 床時の気分や眠気は漸増光の利用を開始して 4 日目 から,午後の集中感は 5 日目から,改善方向の影響 がみられると考えられる.Leppämäki らは起床時の 眠気への影響は 6 日目からみられる29)と報告してお り,DS の影響が利用開始数日後からみられるという 点で,本研究と同様の結果と考えられる. なお,一部の被験者では,平日 5 日間の DS 条件を 2 回続けて実施したが,土日をウォッシュアウト期 間として条件の評価を行わず,実質的に連続的な条 件実施とはならないため,本研究では 2 回目の DS 条件実施期間を 6 日目以降のデータとはみなさなか った. 4-4. 本研究の限界 本研究の限界として,まず,DS の影響を評価する プラシーボ条件を設定できていない.しかし,調光 の物理的特性上 DS に対するプラシーボ条件の設定 は困難である.次に,フィールド評価における生活 統制に限界がある.本研究では可能な限り生活統制 を依頼したが,実験室評価と比較すると生活統制は 十分とはいえず,それらが結果に影響した可能性を 排除できない.また,普段の生活に支障をきたさな い範囲での実施としたため,本研究では 4 週間の評 価が限界であった. さらに,本研究では生理的評価を実施できなかっ た.主観評価の方法についても,子どもの主観的な 気分を評価する指標が確立されておらず,独自の調 査票で実施するしか方法がないため,先行研究との 直接的な比較ができない.その他,本研究では,子 どもの性格傾向は事前に評価していない.成人用の 性格特性調査票が子供に適用しづらいことに加え, 現状の小学生の生活状況を考慮すると,睡眠習慣の 方がより大きく起床時気分などに影響すると考えた ためである.より不安定な睡眠習慣を有する属性に 対し,DS の影響がより大きい可能性が考えられるが, 睡眠習慣との関係性の検討は今後の課題である. 5.まとめ 本研究では,LED 天井照明による起床前漸増光(DS) の連続的使用が,小学生の主観的な気分やパフォー マンスにおよぼす影響についてフィールド評価を行 った.その結果,評価期間全体では,起床時気分に 加え午後の集中感の向上がみられ,DS の影響が日中 にも及ぶことが示された.また,起床時の客観的な ミニテストの一部で成績向上傾向がみられた.さら に,保護者の観察評価による子の朝の機嫌も良好と なり,子の自立起床が促されることが示された.そ 表 6 各条件週における経過日数別の比較結果 4.考察 4-1. 起床前漸増光が朝や一日の気分 および集中感におよぼす影響について 3-2 で得られた結果をまとめると,起床時・朝(登 校前)・午後の気分は,DS 条件が No-DS 条件と比較 して良好であったので,DS が主観的な気分におよぼ す影響は起床直後のみならず,日中にもみられるこ とが示された.また,DS 条件で,起床時眠気が減少 してすっきりと起床でき,起床時刻が早まり,集中 感は午後に良好であった.これらの結果は,Gabel ら 24)や Evantina ら,神川ら,青木らの結果 32-34) と同様の傾向を示している.Gabel らは,睡眠時間 を 6 時間に固定した成人男性 17 名を対象に,DS に よる起床が一日を通しての主観的気分や活力の向上 をもたらすことを,実験室での評価により報告 24) している.Evantina らは,一週間の継続した DS に よって起床時の覚醒感が向上し起床時刻が早くなる ことを報告 32)している.神川らは,33 名の小学生 を対象に,蛍光ランプの DS によって,起床時気分の 改善に加え,昼間の主観的な集中感の向上がもたら されると報告33)している.同様に青木らは,LED の DS によって小学生の主観的な起床時気分および昼 間の集中感が向上することを報告34)している.さら に,保護者による子どもの観察評価において,DS 条 件で起床時の機嫌が良好となり,家族が起こした割 合が減少し,一人で起床した割合が増加した34).こ の結果は,蛍光ランプの DS によって家族が起こす割 合が減ったという神川らの報告 33)と同様の傾向を 示している. 筆者らの実験室での評価結果では,REM 睡眠 Phasic 期※1から起床すると,起床前漸増光による十 分な受光をした場合でも起床時眠気が低減されない 可能性が示されている27).一般的な健常成人の終夜 睡眠に占める REM 睡眠の割合は 2 割程度43-45),小学 生および 30~50 代も同様に 2 割程度43)であり,就 寝から 6 時間後から 7 時間後の区間における 1 時間 の REM 睡眠割合は,成人男性で 37 %と報告46)されて いる.さらに,健常者における REM 睡眠の REM 密度 (REM 睡眠全体におけるREMs の発生する区間割合48) は 31 %と報告49)されていることから,起床前 1 時 間における REM 睡眠 Phasic 期の割合は睡眠時間を 7 時間とした場合,12 % (37 %×31 %)程度と推算さ れる.筆者らの研究 27)では,20 例×2 夜のうち 9 夜で REM 睡眠 Phasic 期から起床しており,その割合 は約 23 %であった.また,REM 睡眠の出現する時間 帯は日々変動し定められた時刻に出現するとは限ら ない可能性が報告50)されている.それらのことを考 慮すると,本研究では一つの条件期間が計 2 週間(5 日間×2 回)であり,10 日間の中央値を各被験者の 回答値として評価しているので,REM 睡眠 Phasic 期 から起床した日の影響が 50 %を超える可能性は低 く,REM 睡眠 Phasic 期以外の睡眠状態で起床した時 の DS による起床時気分の改善や眠気の低減を評価 できていたと考えられる.

※1 REM 睡眠 Phasic 期:REM 睡眠時において,急速眼球運

動が頻発する時期をPhasic 期,ほとんどみられない時期を

Tonic 期とよぶ.47)

項目 条件 Day1 Day2 Day3 Day4 Day5

気分 起床時 DS 2.1 2.4 2.3 2.1 2.1 No-DS 2.9 2.7 2.7 2.6 2.6 p値 < 0 .0 0 1 * * 0.070† 0.090† 0 .0 1 5 * 0 .0 3 3 * 朝 DS 2.0 2.1 2.0 1.9 1.8 No-DS 2.4 2.4 2.2 2.1 2.2 p値 0 .0 0 8 * * 0.079† 0 .0 2 5 * 0.243 0.265 午前 DS 1.8 1.9 1.7 1.8 1.8 No-DS 2.0 1.9 2.0 1.9 1.9 p値 0.104 0.875 0 .0 4 0 * 0.446 0.323 午後 DS 1.9 1.9 1.8 1.9 1.7 No-DS 2.2 2.0 2.0 2.2 1.9 p値 0 .0 3 9 * 0.277 0.070† 0.142 0.156 眠気 起床時 DS 2.4 2.7 2.5 2.4 2.1 No-DS 3.0 2.8 2.8 2.9 2.8 p値 0 .0 1 8 * 0.750 0.153 0 .0 0 8* * 0 .0 0 1 * * 集中 午前 DS 1.8 1.7 1.6 1.7 1.7 感 No-DS 1.9 1.7 1.9 1.7 1.8 p値 0.445 0.904 0.131 0.680 0.401 午後 DS 1.6 1.7 1.8 1.8 1.5 No-DS 2.1 1.8 1.8 2.0 1.9 p値 0 .0 0 1 * * 0.297 0.621 0.151 0 .0 0 8 * * DS 2.7 2.8 2.9 2.9 2.6 No-DS 2.9 3.0 3.1 3.1 2.9 p値 0.349 0 .0 3 5 * 0.052† 0.099† 0.128 DS 2.6 2.7 2.6 2.4 2.4 No-DS 2.6 2.5 2.9 2.6 2.7 p値 0.755 0.886 0 .0 4 0 * 0 .0 3 3 * 0.413 DS 2.2 2.2 2.3 2.2 2.1 No-DS 2.4 2.6 2.5 2.3 2.3 p値 0 .0 1 0 * 0 .0 0 1 * * 0 .0 1 9 * 0 .0 4 5 * 0.077† DS 2.2 2.3 2.2 2.2 2.0 No-DS 3.0 2.8 2.6 2.9 2.8 p値 < 0 .0 0 1 * * 0 .0 0 9 * * 0.050† 0 .0 1 3 * 0 .0 0 1 * * DS 2.4 2.4 2.7 2.9 2.6 大変さ No-DS 2.9 2.6 2.4 3.4 2.8 p値 0.286 0.347 0.243 0 .0 2 7 * 0.512 平均値 子の朝の機嫌 子を起こす 子の起き方 (保護者) (保護者) ※経過日数別に被験者毎に中央値(実質的には2日分の平均値)を算出 し,その平均値を算出した p値は、DSとNo-DSとの比較における検定結果を示す. 起床時刻 就寝時刻 (保護者)

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4-2. 起床前漸増光が起床後および日中の パフォーマンスにおよぼす影響について 起床直後に実施したミニテストの結果では,果物 テストの正答率にのみ有意傾向がみられ,成績向上 の可能性が示された.DS による起床時気分の改善や 眠気の低減が,朝のパフォーマンス改善につながる 可能性が考えられる.この結果は,Tonetti らによ る青年期を対象としたフィールド評価における加算 タスクの向上31)や Gabel らによる 20 代を対象とし た実験室での評価におけるモータートラッキングテ ストの成績向上24)と同様の傾向を示している.しか しながら,本研究でみられた DS によるパフォーマン ス向上は限定的であり,瞬時に正誤を判定する瞬発 力を計る果物テストにおいてのみ成績向上傾向がみ られ,一定時間集中して取り組む文字探索テストで は成績向上はみられなかった.先行研究 31)24)で成 績向上が報告されている認知タスクを子ども向けに 改良することで,DS による起床時気分の改善や眠気 の低減と関連するパフォーマンス向上を評価できる 可能性が考えられる. また,昼休みに実施した重心動揺計測において, 条件間に有意差はなく,DS による午後の集中感向上 と関連する影響はみられなかった.睡眠不足や不規 則な生活が重心動揺に影響すると思われるが,本研 究対象者の実験参加前調査結果(表1)をみる限り, 重心動揺に問題が生じるほどの睡眠習慣を有する対 象者が少なかった可能性が考えられる. 4-3. 各条件開始からの経過日数別の比較結果 漸増光の利用を開始してから経過した日数別に, DS の影響を評価した結果(表 6),起床時気分や眠気 は,利用開始 1 日目,4 日目,5 日目で有意に良好で あった.また,保護者の観察評価では,子の朝の機 嫌や起床方法は利用開始 1 日目から全ての利用日で 良好な影響(一部有意傾向)がみられている.しか し,2 週間全体の中央値を用いた評価で条件間に有 意差がみられた午後の集中感については,利用開始 1 日目,5 日目にしか有意差がみられなかった.利用 開始 1 日目は環境変化の影響もあると考えると,起 床時の気分や眠気は漸増光の利用を開始して 4 日目 から,午後の集中感は 5 日目から,改善方向の影響 がみられると考えられる.Leppämäki らは起床時の 眠気への影響は 6 日目からみられる29)と報告してお り,DS の影響が利用開始数日後からみられるという 点で,本研究と同様の結果と考えられる. なお,一部の被験者では,平日 5 日間の DS 条件を 2 回続けて実施したが,土日をウォッシュアウト期 間として条件の評価を行わず,実質的に連続的な条 件実施とはならないため,本研究では 2 回目の DS 条件実施期間を 6 日目以降のデータとはみなさなか った. 4-4. 本研究の限界 本研究の限界として,まず,DS の影響を評価する プラシーボ条件を設定できていない.しかし,調光 の物理的特性上 DS に対するプラシーボ条件の設定 は困難である.次に,フィールド評価における生活 統制に限界がある.本研究では可能な限り生活統制 を依頼したが,実験室評価と比較すると生活統制は 十分とはいえず,それらが結果に影響した可能性を 排除できない.また,普段の生活に支障をきたさな い範囲での実施としたため,本研究では 4 週間の評 価が限界であった. さらに,本研究では生理的評価を実施できなかっ た.主観評価の方法についても,子どもの主観的な 気分を評価する指標が確立されておらず,独自の調 査票で実施するしか方法がないため,先行研究との 直接的な比較ができない.その他,本研究では,子 どもの性格傾向は事前に評価していない.成人用の 性格特性調査票が子供に適用しづらいことに加え, 現状の小学生の生活状況を考慮すると,睡眠習慣の 方がより大きく起床時気分などに影響すると考えた ためである.より不安定な睡眠習慣を有する属性に 対し,DS の影響がより大きい可能性が考えられるが, 睡眠習慣との関係性の検討は今後の課題である. 5.まとめ 本研究では,LED 天井照明による起床前漸増光(DS) の連続的使用が,小学生の主観的な気分やパフォー マンスにおよぼす影響についてフィールド評価を行 った.その結果,評価期間全体では,起床時気分に 加え午後の集中感の向上がみられ,DS の影響が日中 にも及ぶことが示された.また,起床時の客観的な ミニテストの一部で成績向上傾向がみられた.さら に,保護者の観察評価による子の朝の機嫌も良好と なり,子の自立起床が促されることが示された.そ 表 6 各条件週における経過日数別の比較結果 4.考察 4-1. 起床前漸増光が朝や一日の気分 および集中感におよぼす影響について 3-2 で得られた結果をまとめると,起床時・朝(登 校前)・午後の気分は,DS 条件が No-DS 条件と比較 して良好であったので,DS が主観的な気分におよぼ す影響は起床直後のみならず,日中にもみられるこ とが示された.また,DS 条件で,起床時眠気が減少 してすっきりと起床でき,起床時刻が早まり,集中 感は午後に良好であった.これらの結果は,Gabel ら 24)や Evantina ら,神川ら,青木らの結果32-34) と同様の傾向を示している.Gabel らは,睡眠時間 を 6 時間に固定した成人男性 17 名を対象に,DS に よる起床が一日を通しての主観的気分や活力の向上 をもたらすことを,実験室での評価により報告 24) している.Evantina らは,一週間の継続した DS に よって起床時の覚醒感が向上し起床時刻が早くなる ことを報告32)している.神川らは,33 名の小学生 を対象に,蛍光ランプの DS によって,起床時気分の 改善に加え,昼間の主観的な集中感の向上がもたら されると報告33)している.同様に青木らは,LED の DS によって小学生の主観的な起床時気分および昼 間の集中感が向上することを報告34)している.さら に,保護者による子どもの観察評価において,DS 条 件で起床時の機嫌が良好となり,家族が起こした割 合が減少し,一人で起床した割合が増加した34).こ の結果は,蛍光ランプの DS によって家族が起こす割 合が減ったという神川らの報告 33)と同様の傾向を 示している. 筆者らの実験室での評価結果では,REM 睡眠 Phasic 期※1から起床すると,起床前漸増光による十 分な受光をした場合でも起床時眠気が低減されない 可能性が示されている27).一般的な健常成人の終夜 睡眠に占める REM 睡眠の割合は 2 割程度43-45),小学 生および 30~50 代も同様に 2 割程度43)であり,就 寝から 6 時間後から 7 時間後の区間における 1 時間 の REM 睡眠割合は,成人男性で 37 %と報告46)されて いる.さらに,健常者における REM 睡眠の REM 密度 (REM 睡眠全体におけるREMs の発生する区間割合48) は 31 %と報告49)されていることから,起床前 1 時 間における REM 睡眠 Phasic 期の割合は睡眠時間を 7 時間とした場合,12 % (37 %×31 %)程度と推算さ れる.筆者らの研究27)では,20 例×2 夜のうち 9 夜で REM 睡眠 Phasic 期から起床しており,その割合 は約 23 %であった.また,REM 睡眠の出現する時間 帯は日々変動し定められた時刻に出現するとは限ら ない可能性が報告50)されている.それらのことを考 慮すると,本研究では一つの条件期間が計 2 週間(5 日間×2 回)であり,10 日間の中央値を各被験者の 回答値として評価しているので,REM 睡眠 Phasic 期 から起床した日の影響が 50 %を超える可能性は低 く,REM 睡眠 Phasic 期以外の睡眠状態で起床した時 の DS による起床時気分の改善や眠気の低減を評価 できていたと考えられる.

※1 REM 睡眠 Phasic 期:REM 睡眠時において,急速眼球運

動が頻発する時期をPhasic 期,ほとんどみられない時期を

Tonic 期とよぶ.47)

項目 条件 Day1 Day2 Day3 Day4 Day5

気分 起床時 DS 2.1 2.4 2.3 2.1 2.1 No-DS 2.9 2.7 2.7 2.6 2.6 p値 < 0 .0 0 1 * * 0.070† 0.090† 0 .0 1 5 * 0 .0 3 3 * 朝 DS 2.0 2.1 2.0 1.9 1.8 No-DS 2.4 2.4 2.2 2.1 2.2 p値 0 .0 0 8 * * 0.079† 0 .0 2 5 * 0.243 0.265 午前 DS 1.8 1.9 1.7 1.8 1.8 No-DS 2.0 1.9 2.0 1.9 1.9 p値 0.104 0.875 0 .0 4 0 * 0.446 0.323 午後 DS 1.9 1.9 1.8 1.9 1.7 No-DS 2.2 2.0 2.0 2.2 1.9 p値 0 .0 3 9 * 0.277 0.070† 0.142 0.156 眠気 起床時 DS 2.4 2.7 2.5 2.4 2.1 No-DS 3.0 2.8 2.8 2.9 2.8 p値 0 .0 1 8 * 0.750 0.153 0 .0 0 8* * 0 .0 0 1 * * 集中 午前 DS 1.8 1.7 1.6 1.7 1.7 感 No-DS 1.9 1.7 1.9 1.7 1.8 p値 0.445 0.904 0.131 0.680 0.401 午後 DS 1.6 1.7 1.8 1.8 1.5 No-DS 2.1 1.8 1.8 2.0 1.9 p値 0 .0 0 1 * * 0.297 0.621 0.151 0 .0 0 8 * * DS 2.7 2.8 2.9 2.9 2.6 No-DS 2.9 3.0 3.1 3.1 2.9 p値 0.349 0 .0 3 5 * 0.052† 0.099† 0.128 DS 2.6 2.7 2.6 2.4 2.4 No-DS 2.6 2.5 2.9 2.6 2.7 p値 0.755 0.886 0 .0 4 0 * 0 .0 3 3 * 0.413 DS 2.2 2.2 2.3 2.2 2.1 No-DS 2.4 2.6 2.5 2.3 2.3 p値 0 .0 1 0 * 0 .0 0 1 * * 0 .0 1 9 * 0 .0 4 5 * 0.077† DS 2.2 2.3 2.2 2.2 2.0 No-DS 3.0 2.8 2.6 2.9 2.8 p値 < 0 .0 0 1 * * 0 .0 0 9 * * 0.050† 0 .0 1 3 * 0 .0 0 1 * * DS 2.4 2.4 2.7 2.9 2.6 大変さ No-DS 2.9 2.6 2.4 3.4 2.8 p値 0.286 0.347 0.243 0 .0 2 7 * 0.512 平均値 子の朝の機嫌 子を起こす 子の起き方 (保護者) (保護者) ※経過日数別に被験者毎に中央値(実質的には2日分の平均値)を算出 し,その平均値を算出した p値は、DSとNo-DSとの比較における検定結果を示す. 起床時刻 就寝時刻 (保護者)

図 2 睡眠・疲労調査票(実験参加前調査)  図 3 起床直後調査票  図 4 果物テストの例  図 5 文字探索テストの例 2-3. 統計解析  各種調査票の評価値を順序尺度として,各条件(5日間×2 週間)の計 10 日間における中央値を被験者毎に算出し,各被験者の中央値を用いて条件間比較を行った.検定にはノンパラメトリックの Wilcoxonの符号付順位検定を用いて有意差を検定した. ミニテスト,重心動揺テストの値は連続尺度として扱い,各被験者の条件毎に平均値を算出し,条件間比較を行った.統計解析には
図 2 睡眠・疲労調査票(実験参加前調査)  図 3 起床直後調査票  図 4 果物テストの例  図 5 文字探索テストの例 2-3. 統計解析  各種調査票の評価値を順序尺度として,各条件(5日間×2 週間)の計 10 日間における中央値を被験者毎に算出し,各被験者の中央値を用いて条件間比較を行った.検定にはノンパラメトリックの Wilcoxonの符号付順位検定を用いて有意差を検定した. ミニテスト,重心動揺テストの値は連続尺度として扱い,各被験者の条件毎に平均値を算出し,条件間比較を行った.統計解析には
表 3 起床直後ミニテストの結果  表 4 昼休み重心動揺の計測結果(開眼) 3-4. 保護者による観察評価  保護者による子どもの観察評価結果を表 5 に示す. 子の起き方,子の朝の機嫌項目において,条件間に 有意差がみられ(p=0.002 ** ,0.003 ** ) ,DS 条件が No-DS 条件と比較して,子の起き方で,家族が起こ した割合が少なく,朝の機嫌項目で,子の機嫌が良 好であった.子を起こす大変さでは,有意ではなか ったがDS条件がNo-DS条件と比較して低い値となり, 子を起こす大変さ

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