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母親の子どもに対する心理的距離からみた子育て不安とSense of Coherence

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Academic year: 2021

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(1)母親の子どもに対する心理的距離からみた子育て不安とSense ofCoherence  学校教育学専攻 学校心理学コース.  M08032E   鎌田 美由紀  等学校に子どもが在籍する917名の保護者を対. 1.問題と目的.  家として留置き調査を実施し,回収された有効.  子育てとは胎児期から青年期まで続く営みであ り(武内,2004),育児期以降の子育てにおいても母.  回答数743(回収率81,8%,有効回答率99.9%). 親が不安や悩みを抱くのは当然である。しかしな.  のうち母親が回答した687を分析対象とした。. がら子育てに関する従来の研究のほとんどが,就. ②調査内容:i)デモグラフィック要因 i)子. 学前の子どもを育てる母親に焦点をあてたもので.  育て環境 血)心理的距離尺度 柵)子育て不. ある。そこで本研究では,幼児期から成人初期ま.  安尺度 v)SOC尺度 (2)面接調査. での子どもを育てる母親の,子どもに対する心理 的距離に注目して,子育て不安との関連について. ①調査協力者:質問紙調査で測定したSOC得点が. 研究を進める。.  平均値より1SD∼2SD高い母親に協力を依頼.  心理的距離は山根(1987.2005)の定義を採用.  し,承諾の得られた5名を対象とした。. し,①能動表出②能動表象③受動表出の心理的距. ②調査時期:2009年4月∼5月. 離が第一子の年齢によってどのように変化し,母. ③調査方法:1対1の半構造化面接. 子相互の心理的距離の不一致が子育て不安とどの. ④調査内容:i)汎抵抗資源とその活用方法 五). ように関連しているのか検討することを本研究の.  子育てへの意味づけ. 3.結果及び考察. 第1の目的とする。.  また母親は,子育てで出合う悩みや出来事を乗. (1)質問紙調査. り越える経験を通して成長していく可能性がある. ①心理的距離:能動表出,能動表象,受動表出の. と考えられる。これに関連して本研究ではSense. 心理的距離尺度は一因子構造と判断した。心理的. of Coherence(以下SOCと略す)に注目する。SOC. 距離は第一子の年齢によって差異が認められ,子. はストレッサーを対処していく能力であり(山崎,. どもの成長とともに距離が広がっていた。母子相. 2008),ストレス対処のためには豊富な汎抵抗資源. 互の心理的距離の不一致は就学前,小学生高学年. を保有するとともに,SOCが育まれ鍛えられてい. から中学生,別居の学生社会人という従来から母. なければならないが,一方こうした対処を通して. 親が心理的な危機に遭遇すると指摘される時期に. SOC能力が強化されていく(Antonovsky,1987)。そ. 生じていることが示され,こうした母親の危機に. こで第一子の年齢によってSOCがどのように変化. 子どもとの心理的距離が関与している可能性があ. し,子育て不安とどのように関連をしているのか,. ることが示唆された。. またどのような要因が汎抵抗資源として機能して. ②SOC:第一子の年齢との関連は認められず,有. いるのか明らかにすることを第2の目的とする。. 意な関連を示したのは就学年数(学歴)と職業,. 2.方法. そしてソーシャルサポートとの関係であった。. (1)質問紙による調査. ③子育て不安:因子分析の結果「子育て自信喪失. ①調査の概要 2009年3月に保・幼・小・中・高. 感」「疲労抑うつ感」「子育て不満感」の3因子が. 一72一.

(2) 抽出された。母親年齢と子育て不安との関連は「子. r学び」r課題」r気づき」r成果」r成長」r感謝」r楽し. 育て自信喪失感」のみに認められ,就学前から中. み」「幸せ」といった,自分にとって重要な糧をも. 学生の母親は子育てに対する自信喪失感が高く,. たらすとともに,「怒り」や「腹立ち」をももたらす. 特に小学生高学年の母親は,高校生以上の母親よ. というアンヒバレントな存在であった。そして意. り子育ての自信を失っていた。. 味づけられた母親の成長とはr自分自身の姿を通. ④子育て環境,心理的距離,SOC,ソーシャルサ. して気づく親の成長」と「子どもの姿から気づか. ポートとの関係が子育て不安に及ぼす影響:r子. される親の成長」であった。そして母親は子育て. 育て相談の対象者」が多いことは同居の学生社会. で体験する様々な出来事を,汎抵抗資源に支えら. 人の,r子育て以外の時間や場所の確保」は就学前,. れながら対処しており,子どもの現状に応じた適. 同居の高校生の母親の子育て不安を軽減していた。. 切なかかわり方ができるよう自己を変容させてい. 心理的距離は就学前から学生社会人までの母親に. た。こうした出来事への対処は,子どもとの適切. 強く影響していたが,その影響の仕方は子どもの. な心理的距離を獲得していくプロセスともなって. 年代によって異なっていた。就学前には子どもが. いる可能性が示され,母親はそうした中で他者と. 母親に近いほど,子どもが思春期になると子ども. の関係を広げ,子どもの姿や自分自身の姿の中に. が離れるほど,また母親が子どもに接近している. 親として成長を見出していた。そして子どもの危. ほど,また接近したいと思うほど子育て不安を高. 機体験を成功的に対処することが,SOC能力を高. めていた。そしてSOCは同居の学生社会人を除く. めていくとも考えられた。. すべての段階の母親に強い負の影響を与え,SOC. 4.総合考察. が高いほど子育て不安が軽減されていた。またソ.  質問紙調査及び面接調査双方から幅広い子育て. ーシャルサポートとの良好な関係は,子育て不安. 期の母親には,ソーシャルサポートと良好な関係. を軽減していた。. を育める環境づくりや子育て相談の対象者,子育 て以外の時間や場所を確保することが重要である. (2)面接調査. ①母親が保有する汎抵抗資源:幼児期から青年期. ことが示された。また心理的距離の不一致は母親. までの子どもを育てる母親の汎抵抗資源は,r育児. の子育て不安に強い影響を及ぼしていたが,母親. 書・図書館」「相談機関」「子育てクラブ」「子ども. が子育てで経験する子どもの危機体験は,こうし. から離れる時間」,「配偶者」「友人・知人」「先生」. た母子相互の心理的距離の不一致を調整し,子ど. r自分の親やきょうだい」「近所の人」r自己の生. もに応じた心理的距離を獲得していくプロセスと. 育歴」「楽観主義」r子どもの危機体験」「子どもの. もなっていることが示された。こうした心理的距. 存在」の13カテゴリーにまとめられ,どの資源. 離の不一致は,子どもとの摩擦を招き母親の悩み. を保有し,その保有数や活用方法は母親によって. や葛藤を引き起こし母親にとっても大きなストレ. 違いがあったが,r子どもの危機体験」はすべての. ッサーともなるが,これらの出来事を成功的対処. 母親が保有,活用していた。母親は子どもの危機. することでSOC能力を高めていくとも考えられる. 体験への対処を通して,子どもへのかかわり方を. ことから,心理的距離の不一致が起こる時期には. 変容させ,子どもの状態に応じた適切なかかわり. 母親が子どもと適切な距離がとっていけるよう子. 方を見出していた。つまり子どもの危機体験は,. 育て環境を整備し,支援していくことが重要であ. 母親にとって子どもとの新たな心理的距離を獲得. ると考えられる。. していく過程ともなっている可能性が示された。.            主任指導教員 浅川潔司. ②子育ての意味:子育ては「仕事」「趣味」「勉強」.              指導教員 秋光恵子. 一73一.

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参照

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