幼児と「悪」に関する発達論的検討 : 問題に映る行動の事例研究を通して
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(2) 〈者表〉丁児が抱えている悔しさという「悪」を. なかなか消化できずにいる自己の心に戻って来. 引き出し、受け止めるためには心の揺さぶりが. ることを繰り返す。この意識の流れの繰り返し. 必要だった。保育者は、「悪」と出会ったときに. が「⑤意識のループ」であり、この意識の先は、. それを正そうと方法を指し示すことにのみ力を. 発達段階や他者との関係性の中で、次第に自己. 注ぐのではなく、そこに隠されている意味を理. から周囲の他者へと向けられていく。. 解しようとする姿勢が求められると考える。. 幼児がr悪」を表出できた場面には、その幼. 【総合考察】. 児の、また周囲にも育ちにつながる要素が散り. ばめられていた。この育ちは保育者の育ちや気 付きにもっながるものでもあった。であれば、. 周囲が単純にこのr悪」を抑制し正そうと指導 \. するのはおかしい。r悪」は一方向からの視点で. 、/ ・. 表面的に捉えられがちであり、ここに危険性が 潜んでいる。すなわち、周囲にとって受け入れ. げへ. 難い幼児の表出は周囲にとって「悪」であるが、. 幼児からすると自分に対する無理解な周囲こそ 幼児は生活を送る中で、押さえ切れない欲求. が「悪」ということである。幼児にとって他者. や、納得や理解ができないと感じた思い、また. は時に無理解な存在であり、それは保育者も例. 周囲の他者からの強制などを起因とする、思い. 外ではない。. 通りにならないストレスに直面すると自分の内. 保育者は自身の善悪の判断や主観に担われて. 面にr①得体の知れない感情」が沸き起こる。. 幼児に対時するのでなく、どの時点でr悪」は. それが膨らみ、自分の中で抑えきれなくなった. 芽生え、「悪」として表出されたのかを幼児自身. 時に不満や怒り、周囲からは受け入れがたい表. が気付けるように、幼児の言葉に耳を傾けなが. 出という形で外に向けられる。K児の事例では. ら、その「悪」が映し出す心の奥を理解し、受. 初めて経験する別れという不安(①)から、暴言. け止め、一人一人の発達を踏まえた援功を探っ. を吐く、砂をかけるといった目に見える悪r②. ていくことが重要であろう。また、その幼児と. 周囲からは受け入れがたい表出」となって表れ. 「悪」に対する捉えは、保育者と言えど人それ. た。この時に周囲の他者である筆者は、K児の. ぞれである。こうしたズレを保育者自身が認識. 様子がいつもとは少し様子が違うと感じ、母親. できて初めて、より深い幼児理解が可能になる. との話からK児の別れという大きな悲しみを受. と筆者は考える。保育者は自分の無理解に向き. け止める必要があると思った。これが「③直感. 合い、自分が無理解であることをまずは自覚す. 的判断 洞察による理解」であり、K児を抱き. る必要がある。そして「悪」に向き合う際、よ. 寄せ励ますという援助がr④直感的判断や洞察. り幼児の内面を深く理解し、幼児そのものを受. に基づくかかわり」である。そしてK児の意識. け止めようと努力すべきであろう。. の矛先は、不安を心に抱えて(①)、怒り、悪態. 主任指導教員 名須川 知子. をつくという形で表出した自分自身であり(②)、. 指導教員石野秀明. 一4!一.
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