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幼児と「悪」に関する発達論的検討 : 問題に映る行動の事例研究を通して

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Academic year: 2021

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(1)幼児と「悪」に関する発達論的検討 一間題に映る行動の事例研究を通して一               学校教育学専攻               幼年教育コース.               M09023A               久保田 智裕 【間風と日的】. かる幼児」数人の観察を行った。なお、筆者は.  r友達に迷惑をかけない」rけんかをしない」、. 2009年度は4歳児クラス担任であり、2010年. いわゆる「よい子」を大人は求めがちである。. 度は副園長という立場である。. しかし、それは本来の幼児の姿なのであろうか。.  そして、友達とのかかわりの中でトラブルに. また、我々大人は必要以上に幼児に「よい子」. なった、またなりかけたエピソードを記述し、. を求めすぎていないだろうか。大人の目が行き. 考察を行った。記録の取り方については、筆者. 届きやすい現代において、時には嘘をついたり、. が実際に保育をしたり、他の教師の保育を見た. 意地悪をしたりといった一見、「悪」とも言える. りして後に筆記した場面がある。また、ビデオ. 幼児らしい一面を素直に表せる機会が過度に抑. に記録した映像を基に書き起こしたものもある。. え込まれてはいないだろうか。幼児の成長には. なお、エピソード記述を基に事例研究を行うの. 必要なr悪」もきっとあるはずだと筆者は感じ. は、幼児のr悪」は日々の生活場面で、周囲の. ている。保育者は幼児のもつ「悪」と思える一. 教師や友達等とのかかわりの中で芽生え、表出. 面に出会ったときに、そこにどのような意味合. されるものであると捉えるからである。. いがあるのかを探らなければならないだろう。. 【描果と考寛】.  しかし、「よい子」にかかる先行研究や、幼児. ■側刷れという言い知れぬ不安(1〈児). 期の「悪」を正面から取り上げた先行研究は少.  年度末に幼稚園職員の退職の挨拶が園庭で行. ない。またそれに伴う事例研究も極めて少なく、. われている最中、K児は騒ぎ続ける。K児の悲. 通常、保育者が対応や制御をすべきr気になる. しみを感じた筆者はK児を抱き寄せる。. 行動」として扱われることが多い。いわば、「必. 〈考量〉初めて経験するr別れ」に、不安という. 要悪」として、その意味を検言立したものは少な. 感情が、K児の内にr悪」として沸き起こった。. い。そこで本研究では、幼児が「悪」を経験し. それを消化できず、騒ぎ暴言を吐き続けるとい. た時、どのような心の動きがあり、それが幼児. う周囲にとってのr悪」という形で表出したと. の育ちにどのようにつながっているのか、また. 考える。この際に保育者の役割で重要なことは、. 保育者はその「悪」をどのように受け止め、保. まず不安を受け止めるというかかわりであった。. 育を展開していけばよいのかを、事例を基に考. ■例 相手の物を課して困らせる(丁児). 察し探っていきたい。.  A児の靴を隠した丁児。丁児の心を揺さぶっ. 【方法】. たところ、丁児は自らA児に真相を話し謝る。.  筆者が勤務するH県丁市内の公立幼稚園にお. その後丁児の話に耳を傾けると、事前にA児と. いて、2009年度・2010年度にr筆者が気にか. トラブルになった時の悔しい思いを話しだす。. 一40一.

(2) 〈者表〉丁児が抱えている悔しさという「悪」を. なかなか消化できずにいる自己の心に戻って来. 引き出し、受け止めるためには心の揺さぶりが. ることを繰り返す。この意識の流れの繰り返し. 必要だった。保育者は、「悪」と出会ったときに. が「⑤意識のループ」であり、この意識の先は、. それを正そうと方法を指し示すことにのみ力を. 発達段階や他者との関係性の中で、次第に自己. 注ぐのではなく、そこに隠されている意味を理. から周囲の他者へと向けられていく。. 解しようとする姿勢が求められると考える。.  幼児がr悪」を表出できた場面には、その幼. 【総合考察】. 児の、また周囲にも育ちにつながる要素が散り. ばめられていた。この育ちは保育者の育ちや気 付きにもっながるものでもあった。であれば、. 周囲が単純にこのr悪」を抑制し正そうと指導    \. するのはおかしい。r悪」は一方向からの視点で.    、/  ・. 表面的に捉えられがちであり、ここに危険性が 潜んでいる。すなわち、周囲にとって受け入れ.   げへ. 難い幼児の表出は周囲にとって「悪」であるが、. 幼児からすると自分に対する無理解な周囲こそ  幼児は生活を送る中で、押さえ切れない欲求. が「悪」ということである。幼児にとって他者. や、納得や理解ができないと感じた思い、また. は時に無理解な存在であり、それは保育者も例. 周囲の他者からの強制などを起因とする、思い. 外ではない。. 通りにならないストレスに直面すると自分の内.  保育者は自身の善悪の判断や主観に担われて. 面にr①得体の知れない感情」が沸き起こる。. 幼児に対時するのでなく、どの時点でr悪」は. それが膨らみ、自分の中で抑えきれなくなった. 芽生え、「悪」として表出されたのかを幼児自身. 時に不満や怒り、周囲からは受け入れがたい表. が気付けるように、幼児の言葉に耳を傾けなが. 出という形で外に向けられる。K児の事例では. ら、その「悪」が映し出す心の奥を理解し、受. 初めて経験する別れという不安(①)から、暴言. け止め、一人一人の発達を踏まえた援功を探っ. を吐く、砂をかけるといった目に見える悪r②. ていくことが重要であろう。また、その幼児と. 周囲からは受け入れがたい表出」となって表れ. 「悪」に対する捉えは、保育者と言えど人それ. た。この時に周囲の他者である筆者は、K児の. ぞれである。こうしたズレを保育者自身が認識. 様子がいつもとは少し様子が違うと感じ、母親. できて初めて、より深い幼児理解が可能になる. との話からK児の別れという大きな悲しみを受. と筆者は考える。保育者は自分の無理解に向き. け止める必要があると思った。これが「③直感. 合い、自分が無理解であることをまずは自覚す. 的判断 洞察による理解」であり、K児を抱き. る必要がある。そして「悪」に向き合う際、よ. 寄せ励ますという援助がr④直感的判断や洞察. り幼児の内面を深く理解し、幼児そのものを受. に基づくかかわり」である。そしてK児の意識. け止めようと努力すべきであろう。. の矛先は、不安を心に抱えて(①)、怒り、悪態.         主任指導教員 名須川 知子. をつくという形で表出した自分自身であり(②)、.         指導教員石野秀明. 一4!一.

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