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小学校体育における「古武術あそび」を用いた「体ほぐしの運動」の試み

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Academic year: 2021

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(1)小学校体育におけるr古武術あそび」を用いたr体ほぐしの運動」の試み                             専 政教科・領域教育学                             コース 生活・健康・総合内容系.                             学籍番号 M09216A                             氏  名 福本 真砂埋 I.研究の目的  体ほぐしの運動に期待されている機能は, 「子 どもの心と体をほぐし整える」ごとにある.これ までの研究では,アメリカのチャレンジ運動に代 表されるような仲間づくりの教材が研究され大き な成果を上げている一しかし,日本古来の伝承遊 びを用いた運動についての研究は少ない.また, 東洋的な身体観からみた運動の有効性について研 究あるいは実践が進められつつあるが,それらの 数や種類もすくない.そこで本研究ではr古武術」 に着目した..  元来武術とは,暴力をコントロールするための 技術を指すが,古武術とは,日本で前近代(明治 の前)から伝えられて来た武術を意味する.長野 (2005年)は,r日本の武術には現在の運動理論 では扱われてこなかった身体操作や心理操作によ る身体技法が伝えられている」と述べている.ま た,甲野(!998年)は身体操作について「日本人 はかって,筋力に頼らず,身体に負担をかけない 体の使い方をしていた.しかし,現在の生活の中 では,日本古来の動きは,日常生活から消えてし まった」と述べている.このような考えに従えば, 小学生から古武術の動きを獲得することで,誰も が疲れない,怪我をしない身体の使い方ができる ことになる.また,運動が苦手な子どもや体力の ない子どもも,身体の動きを工夫することで,自 分の身体に眠っていた可能性を発見することがで きる.さらに,心理的操作について原尻(2008年) の言葉を借ると, r自らも活き,相手も活かす」 という精神を有するものであると言える.  これらの古武術の考え方とr体ほぐしの運動」 のねらいを比べると次のようなことが言える.古 武術は,単に相手を倒すだけの技法ではなく,相 手と合わせることによって,互いの力を直接に感 じ取ることができることから他者の存在への気づ きと,仲間との交流も生まれるであろう.体の調 整については,古武術の身のこなしや力の入れ方 などが,体の調整に当てはまる.このようなこと から,「体への気づき,体の調整,仲間との交流」 という「体はぐしの運動」のねらいに応じて,古 武術を活かすことができると考えられた.  次に, r古武術」そのものを授業として導入す ることは,児童にとって無理がある.そこで,古 武術の特性を保ちながら,小学生でも楽しめ,な おかつ安全な運動として教材化する必要がある.. 本研究ではそれを「古武術あそび」と呼ぶ.  以上から,本研究では,小学校の体育授業にお いて「古武術あそび」を用いた「体ほぐしの運動」 を実践し,その効果を探ることとした. 1I.研究方法 1.古武術の検討  これまでの古武術の文献や筆者の体験讐を踏ま え, 「体ほぐしの運動」として利用できるように 運動を整理・検討した.. 2.教材選定と単元計画  古武術の検討において整理した運動の中から, r体ほぐしの運動」として教材選定を行った.そ して,単元計画を作成するために,次の3つの視 点から運動教材を編成した、. ①誰もができる簡単な運動で,体を動かすこと   の楽しさや心地よさが味わえる運動. ②2人組を基にした運動. ③古武術の動きを取り入れた運動.  授業の計画は,古武術あそびを主とした内容を. もとに,表1に示すように,1単元4時間の内容 を行った.1時間目から4時間目のすべての運動 を合わせると30種類である.1・2・3時間目はr相 手に合わせる運動」,「力の出し方・入れ方」,「相. 手の力を利用する」などのカテゴリーの運動,4 時間目は,「道具を使う運動」を行った.授業の始 まりと終わりには,座礼で挨拶を行った.. 表1.単元計画 4. 3. 1. オリエンテーション. 古武術の基本を取り入れた準備運動. 受身につながる運動. 受身. 相手に合わせる運動. 道具を使う運動 i相手に合わせる〕. 力の出し方・入れ方 相手のカを利用する. 心と体を落ち着かせる連動鰹理体操). まとめ. 3.児童の評価に関する調査 3−1.授業評価用紙の作成  授業に対する評価用紙は, 「体ほぐしの運動」 の先行研究を参考に,「気づき」10項目,「交流」 6項目,「楽しさ」4項目,古武術の特性の観点か. らr動き方」6項目, r精神」4項目を加え,30 項目からなる評価用紙を作成した(「とてもそう. ■416一.

(2) 思う」∼「そう思わない」の4件法). 3−2.毎時の学習カードの作成  1時間毎に実施した各運動に対して,古武術の. えた児童が少ない結果となった.このことから, 古武術あそびの内容を理解できたと思われる.. 特性を理解できたかを「はい」,「どちらでもない」,. 3.実施した運動がrできた」群と因子得点の関係. 「いいえ」の3件法から児童の評価を捉えた.加 えて,各運動の中から印象に残ったものについて, 児童の感想を自由に記述させた. 4.実験授業.  次に,どの運動を行えば, 「体ほぐしの運動」. (1)対象:H県A市S小学校5年生(112人,3 クラス). の3つねらいを感得できるのかを探るために,各 運動に対して「できた」と回答した児童について, 各因子(心身の調節,気づき,交流)における因 子得点から人数の偏りを分析した(λ2検定及び残 差分析).. (2)実施日:平成22年6月7日∼6月28目.  その結果,各運動のうち,rキツネさんの手」,. (3)調査内容  授業は,先に示した単元計画にもとづいて筆者 が行った.なお,S小学校の教諭に補助をお願い した.授業場所は,S小学校近くの武道場で行っ た.授業の最後に毎時の学習カードを配付して, 教室に戻ってから記入してもらった.. 皿.結果ならびに考察 1.児童による授業の評価  授業評価の単純集計の結果,すべての評価項目 に対して肯定的な評価が認められたことから,授. 業全体に対して児童が好感を抱いたことがわか. 「人間シーソー」, 「ペアで回る運動」, 「タオ. ル引き運動」において,有意差が認められた.こ の原因はいずれも, 「交流」の上位群に偏りが多 いことに原因があった.つまり,これら4つの運 動が交流を深めたことになる.そして,これら4 つの運動のうち, 「キツネさんの手」, 「人間シ. ーン1, 「タオル引き運動」は, 「カの出し方 ・入れ方」のカテゴリー運動であることから,「力 の出し方・入れ方」の種類の運動を行うことで,. 交流をより一層深められる可能性を示唆してい る.. 節」, 「気づき」, 「交流」3因子を抽出するこ.  また, 「ペアで回る運動」は,「相手と合わせ る運動」のカテゴリーであったことから, 「相手 と合わせる運動」を行っても「交流」が深められ る可能性が示唆された. 4.自由記述  次に,各時間で印象に残った運動についての自 由記述を,主にテキストマイニングの手法を用い. とができた.. て分析した.. る..  さらに,全回答者の30項目に対する評価にはど のような因子があるのかを確認するため因子分析 を施した(主因子法,斜交プロマックス回転,初 期値!).その結果,表2のように, 「心身の調. 表2.因子分析の結果 項目文章. 因子負荷量. 14.真剣に運一動することができた.. O.56. ユ.気合いを入れることができた、. O.55. 13.相手におうじてうまく動くことができた.. O,51. 16、新しい動き方を発見できた.. O.〃. lo、友達を助けてあげた.. O.蝸. 29.からだの動かし方がわかった.. 〇一45. 23.スムーズに動くことができた.. O.44. 18.体が軽くなったような気がした. 7、一自、が荒くなったり,汗のかき方など自分の 体の変化がわかった.. O.42. 8.自然に笑顔’になった、. o.50. }2.自分の気持ち(喜び,怒り,やさしさなど〕 を感じた、. 21.友達と自分の良いところをお互いに認め 合うことができた、 19.友達の気持ち(喜び,いかり,やさしさな ど)を感じた.. 22.自分の体の様子(かたさ,柔らかさ、力が ある・ないなど〕、. 皿係数. 因子名. 心身の調節. ことが確認された.. o.眉. O.81. O.53. O.53. 気づき. o.48. o,46. 27.友達と仲良く運動できた.. o.92. lL楽しかった.. O,5]. 5、力をうまくかげんすることができた.. o、価. 2.友達と一・一つになったように感じた.. o.何.  その結果,単元全体を通して,どの児童も相手 の体の様子(重い・軽い)や心の変化を感じ取る 「気づき」が深まっていることが確認された.ま た,チャンバラでの一本を取ることや約東稽古の ように,形的な要素を取り入れた運動をすること によって,相手と合わせる喜びを感じていること や相手に合わせるために力の調節がなされている. 交流. 2.毎時の学習カ』ド  毎時の学習カードの結果, 「古武術あそび」に ついて,どの質問に対しても「はい」と答えた児 童が多く, rどちらでもない」, rいいえ」と答. 一417一. lV.総括  以上の結果より, r古武術あそび」は, r体ほ ぐしの運動」の「気づき・交流・調整」というね らいに応じうる運動であることが明らかとなっ た.すなわち,自己と他者の身体への気づき,他 者との交流,そして身体の使い方のそれぞれに有 効であり,なかでも他者との交流については,特 に「力の出し方・入れ方」のカテゴリーにおける 運動が効果的であることが示唆された. 主任指導教員  永木 耕介. 指導教員  永木耕介.

(3)

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