Title
看護学科における第1回海外スタディ・ツアー報告
Author(s)
横川, 裕美子; 広本, 充恵(シェア); 佐和田, 重信; 八木澤, 良
子
Citation
名桜大学紀要 = THE MEIO UNIVERSITY BULLETIN(19):
201-203
Issue Date
2014-03
URL
http://hdl.handle.net/20.500.12001/12386
Ⅰ はじめに 看護基礎教育カリキュラムでは,平成9年度から国際 貢献できる看護職の育成が謳われており,平成21年度か らは「看護の統合と実践分野」に国際看護学が位置づけ られた。 本学の看護学科では,看護専門分野において将来的に 国際貢献ができる学生を育成するため,その素養を身に つける教育の一環として海外スタディ・ツアーを実施す ることになった。また保健医療NGOのシェア=国際保 健協力市民の会(以下,シェア)の理解と協力を得て実 現した。研修は,開発途上国・地域の人々やNGOスタッ フとの交流をとおして異文化を理解するとともに国際保 健協力活動の実際を学ぶことを目的とした。 Ⅱ 研修での達成目標 1 現地の人々との生活や交流をとおして,文化背景が 異なる人々の生活様式や価値観・考え方を理解する ことができる 2 共通言語が異なる人々とのコミュニケーションにつ いて,考えながら実施することができる 3 HIV/AIDS陽性者や家族の生活や健康課題を学ぶ 4 現地の保健医療事情を知り,国際保健活動の実際を 理解することができる 5 文化背景が異なる人々に対する保健や看護のありか たについて考えることができる Ⅲ 研修国・地域 タイ王国の東北部(ウボンラーチャターニー県)及び バンコク Ⅳ 研修の日程 1 期間:2013年9月7日(土)~9月16日(月) 2 具体的なスケジュール ・1~2日目 沖縄からタイ国の研修地に移動,ケマ ラート市内見学 ・3日目 HIV陽性者グループの定例会に参加,ケマ ラート郡病院の見学 ・4日目 ナータン地区病院の見学,HIV陽性者リー ダー(以下,リーダー)によるHIV陽性者 自助グループメンバーの家庭訪問 ・5日目 HIV陽性者を含む地域の中で脆弱なの子ど もたちや保護者のための年齢別グループの アクティビティを実施 夕刻よりタイ日文化交流会に参加 ・6日目 ウボンラーチャターニー県看護学校訪問と 在学生との交流,県病院の見学 ・7日目 ウボンラーチャターニー県保健事務局訪問 ・8日目 私立病院見学,バンコク市内見学 ・9~10日目 帰国のため移動(タイ国から沖縄へ) 3 研修3日目から6日目の朝までは,地域の村集落に ホームスティ ─ 201 ─ 横川・広本・佐和田・八木澤:名桜大学看護学科における第1回海外スタディ・ツアー報告
看護学科における第1回海外スタディ・ツアー報告
Report of the First Study Abroad Tour
in the Department of Nursing
横川裕美子,広本 充恵(シェア),佐和田重信,八木澤良子
要旨 人間健康学部では,専門分野で国際貢献ができる学生を育成するために,昨年度から海外スタディ・ツアーを検討 してきた。看護学科では平成25年度から海外スタディ・ツアーを開始した。参加した学生は,現地の人々と触れ合い ながら研修を行い,異文化や保健医療について学びを得たので報告する。 キーワード:海外スタディ・ツアー,異文化理解,国際保健医療 名桜大学紀要,(19):201-203(2014)【報告】
Ⅴ 事前学習・ミーティング ・5月30日 参加者説明会 ・6月29日 シェアの活動やHIV/AIDSに関する事前 学習,タイ語による自己紹介の練習 ・7月~8月 現地でのアクティビティの企画・計画立 案・練習など全9回のミーティング ・8月26~27日 タイ語の基礎講座 Ⅵ 研修の実際と学び 1 タイの地域保健医療システム 学生は,タイ東北部のウボンラーチャターニー県で村 レベルのヘルスボランティアシステムから地区・郡・県 レベルの保健医療機関を段階的に見学することによって タイの保健医療システムおよび各施設の役割と連携のあ りかたについて理解していた。また医療機関における宗 教に基づく文化面への配慮について考えることができて いた。 2 HIV/AIDSとともに生きる人々
研修は,現地 NGO の HEALTH AND SHARE FOUNDATION(以下,HSF)の協力を得て行った。 HIV陽性者自助グループの定例会やHIV陽性者自助 グループのリーダーによるメンバーの家庭訪問に同行し た際には,各メンバーの病状やそれをどのように受け止 めているか,地域・家庭でのサポートの有無や程度,リー ダーがメンバーを心身両面でサポートする有効性を認識 していた。 3 アクティビティの実施 HIV陽性者グループの定例会では,参加者と現地の看 護学生とともにゲームを行った。参加者は,学生たちが 差別なくゲームをしたり触れ合ったりすることを喜んで いた。その様子を見た学生たちは,自分たちにとっては 当然のことが,実はとても大切なことなのだということ を感じていた。 HIV陽性者の子どもたちや保護者のための活動では, 4~17歳まで4つの年齢別グループに分かれてアクティ ビティを実施した。13~17歳グループにはテーマ・ディ スカッション,4~12歳には絵の作成やゲーム・日本の 遊びを行った。学生は,現地スタッフのサポートを受け ながら非言語的コミュニケーションによって交流を行っ ていた。子どもたちの年齢に応じた内容で,自分たちに 言語の不自由さがあることを考慮して,身体を動かす ゲーム等によって補うように努力していた。 ウボンラーチャターニー県看護学校を訪問した際に は,名桜大学看護学科の紹介と日本の健康維持方法の紹 介としてラジオ体操を一緒に行った。交流会では英語で のコミュニケーションの機会があり,共通言語としての 英語を学ぶ必要性を感じたようであった。 4 タイ日文化交流会 スライドショーによる日本・沖縄や大学の紹介,踊り などによって文化交流を行った。学生たちは,現地の人々 による歓迎の儀式に感激していた。 5 ホームスティ 2~4名に分かれてシェアとHSFのスタッフととも にホームスティを行った。言語を補助する小冊子や辞書, ジェスチャーを交えてコミュニケーションの努力をして いた。現地の人々の生活様式を尊重しながら生活習慣や 食文化を知るとともに,日本料理を紹介した。 Ⅶ 学生の終了後レポートより タイ国内での経済格差,医療を受ける機会や病院のシ ステムの格差を強く認識していた学生が多かった。国と して保健システムを充実させる必要性や保健活動を行う 人材の確保が重要であること,NGOの活動や国際協力 活動の必要性を述べていた。 またホームスティやタイ日文化交流会では,言語を超 えた人々との心の交流に感激したこと,文化背景が異な る人々の考え方を理解するためには,生活様式や価値感 を知ることが有用なことについて言及していた。一方で 言語の重要性についても述べられていた。 学生時代に,専門分野において国外の現状を知見する ことや異文化の中で生活する経験は,学生の柔らかい感 受性を刺激して多様な価値観を受容することを可能にす るであろう。 6月からの事前学習やスタディ・ツアー中の学生の様 子,報告会の内容を総合すると,海外スタディ・ツアー の目標は達成できていると考えられる。 反省点として,臨地実習やその他の授業との調整をし ながら事前準備を行ったが,全員での練習時間を確保す ることが難しかったことが挙げられていた。これについ ては来年度も同じ状況が予測されるため,早目に準備を 開始することが望まれる。 Ⅷ 海外スタディ・ツアーを終えて 海外スタディ・ツアーは,看護学科では初めての試み であり,昨年初夏の研修企画から全てが手探りでの準備 だった。本年度は,4月から参加する学生の募集,事前 学習から約3か月の準備期間を経て,第1回海外スタ ディ・ツアーを無事に実施できたことは,学部・学科教 員および教務課担当職員の理解と協力によるものと深く 感謝している。 ─ 202 ─ 名桜大学紀要 第19号
また6月当初は不安そうな表情をしていた学生たち が,事前学習・研修から11月の報告会まで,日を追うご とに逞しく自信に満ちた笑顔を見せるようになったこと が成長の証でもあると考える。今後は参加した学生たち が,自らが学んだことを客観的に評価するとともに,現 地の人々や参加者同士の絆をより深めて将来に繋げてく れることを願っている。 ─ 203 ─ 横川・広本・佐和田・八木澤:名桜大学看護学科における第1回海外スタディ・ツアー報告