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Academic year: 2021

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(1)

− 51 − 学 位 研 究 紹 介

【目   的】

 近年,組織工学の手法を用いて培養口腔粘膜上皮が 開発され,口腔外科領域においても粘膜欠損創への臨床 応用により良好な結果が得られたという報告がみられ る。われわれは,feeder layer とウシ胎仔血清を使用せ ず,ヒト他家新鮮屍体真皮である AlloDerm 上に培養 口腔粘膜上皮細胞を播種,重層化させた培養複合口腔粘 膜(ex vivo produced oral mucosa equivalent)を開発 し,その臨床応用を行ってきた。しかしながら,現在行っ ている培養複合口腔粘膜の作製方法では,手術の3∼4 週間前に組織採取を行い上皮細胞の培養をする必要があ り,手術時期が限定されてしまうことや,長期間にわた る培養状態において,培養口腔粘膜上皮細胞の増殖活性 を維持することが困難であり,1回の組織採取では複数 回の手術に応用できないなどの問題点があった。そこで, 培養複合口腔粘膜移植の適応拡大を図ることを目的に, 培養口腔粘膜上皮細胞(培養細胞)の凍結保存を行い解 凍後の細胞増殖活性を検索するとともに,その細胞を用 いて培養複合口腔粘膜(培養粘膜)の作製を行い,凍結 保存を行わなかった培養細胞による培養粘膜と組織学的 および免疫組織化学的に比較し検討した。

【材料と方法】

 材料は同意の得られた患者より抜歯時の余剰歯肉を採 取し,上皮細胞の培養を行い,2回目の継代時に凍結保 存(−80℃,−196℃)した。細胞の増殖活性を検討す るため,3か月および6か月間保存後に解凍した培養細 胞と,対照群として凍結保存を行っていない培養細胞の 増殖曲線を描出し population-doubling time (PDT)を求 め,同時に細胞数の差を統計学的に検討した。さらに, 各実験群の培養細胞を AlloDerm 上に播種し培養粘膜 の作製を行い,細胞播種後4日目,11日目,18日目でパ ラフィン切片を作製した。ヘマトキシリン−エオジン染 色により組織学的検索を行うとともに,細胞増殖マー カーである抗 PCNA 抗体と上皮細胞の分化マーカー である抗 fi laggrin 抗体を用いた免疫組織化学的染色を 行った。対照群として,凍結保存を行っていない細胞を 用いて培養粘膜を作製し,同様に組織学的,免疫組織化 学的検索を行い,実験群と比較した。

【結   果】

⑴ 増殖曲線の分析(図1,図2)  各実験群における増殖曲線の形態はほぼ同様であっ た。−80℃で6か月間凍結保存を行った培養細胞の細胞 数は,対照群と比較して4日から7日まで統計学的に 有意に低い値を示した(*:p<0.05)。さらに,− 80℃, 6M 群では PDT が 48 時間とその他の実験群の 36 時間 と比較して延長していた。 235

学 位 研 究 紹 介

凍結培養細胞を用いた培養複合口腔粘膜

作製に関する基礎的研究

Basic study of an ex vivo produced

oral mucosa equivalent by

cryopreserved oral keratinocytes

新潟大学大学院医歯学総合研究科口腔生命科学専攻 口腔健康科学講座顎顔面口腔外科学分野

小山 貴寛

Division of Oral and Maxilllofacial Surgery, Department of Oral Health Science, Course for Oral Life Science, Niigata University Graduate School of Medical and Dental Sciences

Takahiro Koyama

図1 3M 群の増殖曲線

 − 80°C, − 196°C で保存したものの曲線は対照群の曲線と ほぼ同様であった。

(2)

− 52 − 新潟歯学会誌 35(2):2005 ⑵ 凍結培養細胞を用いた培養粘膜の組織学的観察  各群の凍結培養細胞を用いた培養粘膜は対照群と同様 に,細胞播種後4日目では連続した単層上皮が認められ, 11 日目では4∼6層の上皮の重層化を呈し表層の細胞 はエオジン好性を示した(図3)。さらに 18 日目では8 層以上の上皮の重層化を呈し,表層の細胞はエオジン好 性を示した。 ⑶  凍結培養細胞を用いた培養粘膜の免疫組織化学的観 察  PCNA 陽性反応は,各群の凍結培養細胞を用いた培 養粘膜では対照群と同様に,細胞播種後4日目では,ほ ぼすべての上皮細胞に,11 日目(図4),18 日目では基 底層,傍基底層の細胞に認められた。  fi laggrin 陽性反応は,各群の凍結培養細胞を用いた培 養粘膜では対照群と同じように,細胞播種後4日目,11 日目には認められなかったが,18 日目においては,上 皮層の中央から表層にかけて顆粒状の陽性反応が認めら れた。

【考   察】

 本研究では,− 80℃,6か月間凍結保存を行った培 養細胞において,他の実験群や,対照群と比較して細胞 数が培養8日目まで低い値を示し,PDT が延長してい た。この結果から,− 80℃の保存温度では化学反応が 静止状態に至っておらず,6か月間の保存期間中におい て,細胞の変性や障害が進行した可能性が推察された。 しかしながら,組織学的,免疫組織化学的検索から,6 か月間凍結保存した培養細胞を用いた培養粘膜の上皮に おいても,凍結保存をしない細胞を用いた培養粘膜の上 皮と同様の増殖能,分化能が認められた。このことから, 凍結保存を行った培養細胞を用いて作製した培養粘膜は 凍結保存をしない細胞で作製した培養粘膜と同様の性質 を持つことが示唆され,臨床応用の可能性が拡大したと 考えられた。

【参 考 文 献】

 小山貴寛,飯田明彦,芳澤享子,齊藤 力,高木律男: 凍結培養細胞を用いた培養複合口腔粘膜作製に関する基 礎的研究.日口科誌 54(2):253-263.2005. 236 図2 6M 群の増殖曲線 曲線はほぼ同じだったが , − 80°C で保存したものの細胞数 は対照群と比較し 4 日から 7 日まで統計学的に有意に低い値 を示した(*: p<0.05)。

(3)

− 53 − 小山 貴寛 237 図3  凍結培養細胞を用いた培養粘膜 と培養粘膜(D11E)(HE 染色) (× 200)    a : − 80°C,3M 群      b : − 196°C,3M 群    c : − 80°C,6M 群      d : − 196°C,6M 群     e : 対照群      凍結培養細胞を用いた培養粘 膜は , 培養粘膜と同様に 4 から 6 層の上皮の重層化を呈した。 図4  抗 PCNA 抗体を用いた免疫組 織化学像(D11E)(× 200)    a : − 80°C,3M 群      b : − 196°C,3M 群    c : − 80°C,6M 群    d : − 196°C,6M 群    e : 対照群      凍結培養細胞を用いた培養粘 膜は , 培養粘膜と同様に基底層 , 傍基底層の細胞において陽性反 応が認められた。

参照

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