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小説読者の感情変化パターンに基づいた登場人物の感情設定支援

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Academic year: 2021

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小説読者の感情変化パターンに基づいた登場人物の感情設定支援

Support System for Designing Character’s Emotional Events in

Writing Novels Based on Expected Emotional Changes of Readers

芦田淳

1

小尻智子

2

Atsushi ASHIDA

1

, Tomoko KOJIRI

2

1

関西大学大学院理工学研究科

1

Graduate School of Science and Engineering, Kansai University

2

関西大学システム理工学部

2

Faculty of Engineering Science, Kansai University

Abstract: In writing novels, to create stories a novel that satisfy readers is important. In order to derive such stories, authors need to estimate types of novels that readers prefer and derive composition of scenes, such as events or scenes, according to the types. However, some authors are not able to catch preferences or are not able to create events and scenes according to the recognized reader’s preferences. The objective of this research is to develop the system that supports authors to derive composition of novels based on the expected readers. Our system gives six types of the story arcs that expresses emotional changes through the story. It also provides 32 possible emotions as for hints of imagination. By considering the emotional changes of the characters in the novel that can induce the emotional changes of readers expressed by the story arcs. Authors are able to derive components that can satisfy expected readers.

1

はじめに

近年、21 世紀を生き抜くために必要な能力の総称で ある「21 世紀型スキル」が提唱され、それらのスキル を養うための教育・学習方法が提案されている [1]。21 世紀型スキルのカテゴリの一つとして、他者とのコミュ ニケーション能力がある。この能力のうち、伝えたい内 容を伝える力のトレーニングの一環として、我々は小 説執筆活動に着目している。特に、小説の設定やシー ン、そしてそれらを読者に提示する順番などすべてを 執筆者が想像するフィクション小説の執筆に焦点を当 てる。 小説の執筆時には、執筆者はあらかじめ小説の骨組 みとなる記述であるプロットを作成する事が多い。伝 えたい人に伝えたいことが伝わるような小説を執筆す るためには、最後まで読んで貰った上で、読者を満足 させることができるようなプロットが必要となる。プ ロットに関して、これまでにプロット作成を支援する 手法がいくつか研究されている。Nishihara らは、登場 人物の行動やそれによる小説世界の変化を選択肢から 選択していくことによって、プロットの作成を簡易化す 連絡先:関西大学大学院理工学研究科       〒 564-8680 大阪府 吹田市山手町3丁目3−35        E-mail: [email protected] るシステムを提案している [2]。佐久間らはロシアの魔 法昔話の構造分析より導出されたプロップ理論に基づ いて、登場人物とその役割からプロットを自動生成す るシステムを提案している [3]。これらの研究は物語を 通して展開の一貫性を持った小説の構成を可能にして いる。一方で、読者を満足させる小説の展開を作成す るには、想定する読者が満足する展開がどのようなも のであるかを考え、それを表現する必要があるが、そ れらを支援している研究はあまり見られない。 読者に応じたプロットを構成する際の問題点として、 どのように読者像を捉えれば良いか分からないことや、 捉えた読者像に応じた小説の展開の構成方法がわから ないことが挙げられる。本研究では、読者を満足させ る要素として、小説を読むことで得られる読者の感情 に着目する。物語の大まかな展開に沿った感情の変化 を表現する感情曲線を導入し、どのような感情曲線を 好むのかという観点から読者を捉える手法を提案する。 また、読者は登場人物のいずれかに感情移入すること から、感情曲線に沿った感情を読者にもたらすような 登場人物の感情をシーンに設定するための支援手法を 提案する。 人工知能学会研究会資料 SIG-ALST-B803-15 - 76 -

(2)

2

アプローチ

アプローチの全体像を図 1 に示す。読者が最終的に 満足するような展開を構成するためには、細かなシー ンから全体を形作るプロセスでは全体の流れの把握が 難しい。したがって、読者が好むような小説の大まか な展開を考え、その後細かなシーンに具体化していく プロセスが適していると考えられる。本研究では、読 者が「ハッピーエンドやドキドキする展開」などのよ うに得られる感情で小説を選ぶという側面に着目し、 大まかな展開を感情の変化で表現したものを読者モデ ルと定義する。読者モデルの候補となる感情変化のパ ターンをいくつか用意し、そこから選択させることに よって読者モデルを考慮した小説の大まかな展開の決 定を支援する。 読者の感情変化は具体的なシーンの流れによっても たらされる。読者は登場人物に感情を移入しながら読 む事が多いため、大まかな展開に沿った登場人物の感 情の設定を支援する。具体的には、登場人物の感情の候 補を提示すると共に、読者モデルで表現された大まか な展開と、登場人物の感情が矛盾している場合にフィー ドバックを与える。本研究では感情の設定の支援まで しか行わないが、感情を決定することで、設定された 感情を引き起こすシーンの発想を刺激できると考える。 図 1: アプローチの全体像

3

感情曲線による読者モデルの選択

物語の概形を表す手法に感情曲線がある。感情曲線 は横軸に物語の進行、縦軸にその時点で物語が表現し ている幸福度をとり、図 2 の様に与えられる。本研究 では、読者モデルを読者の好む感情曲線として捉える。 Reagan らは英語の物語を対象に、単語の持つ幸福度か ら感情曲線を生成し、生成した感情曲線を機械学習手 法を用いてクラスタリングした結果、6 種類に分類でき ることを報告した [4]。本研究でも感情曲線をこの 6 種 類と捉え、小説の起承転結間の感情の遷移を表 1 と定 義したものを読者モデルの候補とした。これらから執 筆者が想定する読者の感情曲線を選択させる事によっ て、小説の概形の決定を支援する。 図 2: 感情曲線 表 1: 選択させる小説のパターン 名称 感情曲線の幸福度の遷移 起承 承転 転結 上昇型 上昇 上昇 上昇 下降型 下降 下降 下降 上昇下降型 上昇 変化なし 下降 下降上昇型 下降 変化なし 上昇 上昇下降上昇型 上昇 下降 上昇 下降上昇下降型 下降 上昇 下降

4

感情曲線に沿った登場人物の感情

の決定

4.1

プルチックの感情モデルによる感情選択

本研究では、感情曲線に沿った登場人物の感情をい くつかの感情の候補の中から選択させることで、支援 する。プルチックは人の持つ感情のモデルを提案して いる [5]。このモデルでは、人の感情は基本感情と、基 本感情の混合によって生起する混合感情によって表現 できるとしている。8 種類の基本感情は図 3 のように 円上に配置され、対極に位置する感情は同時には生起 しにくいと言われている。また、対極にあるもの以外 の 2 種類の基本感情の混合によって dyads と呼ばれる 複雑な感情が生起するとしている。本研究では、8 種 類の基本感情と、24 種類の dyads を感情の候補として 提供する。執筆者は、起承転結ごとの登場人物の感情 を候補から選択することにより、選択した感情曲線に 沿った感情変化を設定する事ができる。

4.2

選択した感情と感情曲線によるフィード

バック

読者を満足させるためには、感情移入した登場人物 の感情変化が、感情曲線を表現できるようなものであ る必要がある。そこで、感情曲線と感情変化の幸福度変 化を比較し、相違が発見された場合に執筆者にフィー - 77 -

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喜び 信頼 恐れ 驚き 悲しみ 嫌悪 怒り 期待 図 3: プルチックの感情の輪 [5] ドバックする。感情曲線と比較するためには、感情の 変化によって幸福度がどの様に変化するのかを定義す る必要がある。そのために 2 つの調査を実施した。 1 つめの調査では、10 名の協力者に協力してもらい、 本研究で採用した 32 の感情語について、幸福度の高い 順に並び替えてもらった。その結果、感情は幸福度が 高い群と低い群の 2 つに分けることができることが明 らかになった。 2 つめの調査では、同一群内で、幸福度に差異があ る感情が存在するのかを調査した。協力者は 11 名であ る。それぞれの協力者に各感情語を提示し、それぞれ の感情群について、幸福度の大小に応じて 2 つないし は 3 つのグループに別けてもらった。幸福度が高い群、 幸福度が低い群のそれぞれの群内の任意の 2 つの感情 に対して、幸福度の上下関係の存在を協力者ごとに調 査し、過半数である 6 名以上の一致があったものを幸 福度の差のある組み合わせとした。抽出された組み合 わせは、幸福度が高い群の中では 35 種となり、幸福度 が低い群の中では 102 種となった。 4.2.1 フィードバックの生成 2 つの調査より定義した感情語間の幸福度変化を用 いて「起承」「承転」「転結」の各区間において、感情 曲線と登場人物の感情変化による幸福度変化を比較す る。感情曲線と感情変化による幸福度変化が逆の場合、 幸福度変化が一致していない旨をフィードバックする。 図 4 にフィードバックの例を示す。選択している感情 曲線は上昇下降型の感情曲線である。また、登場人物 の感情は起承転結において、喜び、罪悪感、軽蔑、絶 望の順で遷移している。感情曲線の幸福度変化と登場 人物の感情を各区間ごとに比較する。その結果、転結 間に矛盾がある事をフィードバックしている。 図 4: フィードバック例

5

プロトタイプ・システム

感情曲線の選択と登場人物の感情設定ができるシス テムを開発した。開発したシステムは、プロット作成 支援システム [6] の新たなモジュールとして実装されて いる。実装は HTML および JavaScript を用いている。 システムのインターフェースを図 5 に示す。 システムは大きく分けて、感情曲線選択部と登場人 物の感情選択部から構成されている。感情曲線選択部 では、感情曲線の 6 つのパターンから読者が好むと思 われる感情曲線を感情曲線リストで 1 つ選択できるよ うになっている。登場人物の感情選択部では、起承転 結の各段階における登場人物の感情を感情選択リスト から入力可能となっている。登場人物はキャラ追加ボ タンを押すことに追加でき、複数の登場人物の感情を 選択する事ができる。また、各登場人物に対して、感 情曲線の「起承」「承転」「転結」のうち、どの部分に おいて同じ幸福度変化をするのかを感情曲線対応部で 選択できるようになっている。入力した感情を基にプ ロットの元となるようなアイデアを整理できるように、 各登場人物の起承転結ごとにメモ欄が用意されている。 インターフェースの最下部には、診断ボタンが用意さ れており、クリックすることによって、感情曲線と登 場人物の感情変化が比較される。幸福度変化に相違が 検出された場合に、図 6 のようなフィードバックを図 5 の診断結果表示部に提示する。

6

おわりに

本稿では、読者に応じた小説執筆を支援するために、 読者がどのような感情曲線のパターンを好むかという 観点から読者像を捉える手法を提案した。また、選択 した感情曲線に沿った登場人物の感情設定を支援する ために、感情の候補の提供、及び感情曲線と入力され た感情変化の矛盾に対してフィードバックを与える手 法を提案した。また、提案手法に則って、感情曲線の 選択、登場人物の感情設定ができるプロトタイプ・シ ステムを開発した。 - 78 -

(4)

図 5: システムのインターフェース 図 6: フィードバック例 提案手法では、登場人物間の依存関係のなどの設定 は考慮していない。登場人物の関係性によっては同時 に起こりえない感情が存在することも考えられる。こ れらの感情を選択してしまうと具体的なシーンを生成 することができない。今後は人物間の関係を加味した 感情設定を支援することで、具体的なシーンの導出支 援へつなげていきたい。

謝辞

本研究の一部は JSPS 科研費(18H03345)の助成に よる。

参考文献

[1] Griffin, P., Care, E.: Assessment and teaching of

21st century skills: Methods and approach, Springer

(2014)

[2] Nishihara, S., Miura, M.: A web-based application for writing novels, Procedia Computer Science, Vol. 60, No. 1, pp. 1014-1020 (2015)

[3] 佐久間友子,小方孝: プロップの物語内容論を利用した ストーリー生成支援システムとその考察,人工知能学会 全国大会論文集, Vol. JSAI05, p. 250 (2005)

[4] Reagan, A., J., Mitchell, L., Kiley, D., Danforth, M., C., Dodds, S., P.: The emotional arcs of stories are dominated by six basic shapes. EPJ Data Science, Vol. 5, No. 1 (2016)

[5] Plutchik, R.: The nature of emotions: Human emo-tions have deep evolutionary roots, American

Scien-tist, Vol. 89, No. 4, pp. 344-350 (2001)

[6] Ashida, A., Kojiri, T.: Plot-creation support with plot-construction model for writing novels, Journal

of Information and Telecommunication, Vol. 3, No.

1, pp. 57-73 (2019)

図 5: システムのインターフェース 図 6: フィードバック例 提案手法では、登場人物間の依存関係のなどの設定 は考慮していない。登場人物の関係性によっては同時 に起こりえない感情が存在することも考えられる。こ れらの感情を選択してしまうと具体的なシーンを生成 することができない。今後は人物間の関係を加味した 感情設定を支援することで、具体的なシーンの導出支 援へつなげていきたい。 謝辞 本研究の一部は JSPS 科研費( 18H03345 )の助成に よる。 参考文献

参照

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