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自然免疫応答活性化作用を有する微生物由来新規ビスクロマノンに関する研究

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(1)

自然免疫応答活性化作用を有する微生物由来新規ビ

スクロマノンに関する研究

著者

礒辺 真人

学位授与機関

Tohoku University

(2)

平成 21 年度修士論文

自然免疫応答活性化作用を有する微生物由来

新規ビスクロマノンに関する研究

東北大学大学院薬学研究科

創薬化学専攻 分子解析化学講座

医薬資源化学分野

学籍番号 A8YM1003 礒辺 真人 

(3)

本論文中において以下の略記を用いた.

Ac : acetyl

br. : broad

calcd. : calculated

c. c. : column chromatography

BORSM : based on recovered starting material

BSA : bovine serum albumin

COSY : correlation spectroscopy

DAP : diaminopimelic acid

DIPEA : N,N-diisopropylethylamine

DMAP : 4-(N,N-dimethylamino)pyridine

DMF : N,N-dimethylformamide

DMP : Dess-Martin periodinane

DMSO : dimethyl sulfoxide

Dpt : diptericin

EI : electron ionization

Et : ethyl

FAB : fast atom bombardment

FBS : fatal bovine serum

Fr. : fraction

GPC : gel permeation chromatography

HMBC : heteronuclear multiple bond correlation

HMQC : heteronuclear multiple quantum coherence

HPLC : high performance liquid chromatography

(4)

IL : interleukin

LPS : lipopolysaccharide

LR : low resolution

Me : methyl

MOM : methoxymethyl

MPA : !-methoxyphenylacetic acid

MS : mass spectrometry

MTT : methyl thiazolyl tetrazorium

NMO : N-methylmorpholine N-oxide

NMR : nuclear magnetic resonance

ODS : octadecyl silyl silica gel

PDC : pyridinium dichromate PG : protecting group Ph : phenyl PMB : p-methoxybenzyl Rf : rate of flow rt : room temperature SEM : 2-(trimethylsilyl)ethoxymethyl TBS : tert-butyldimethylsilyl THF : tetrahydrofuran

TLC : thin layer chromatography

TLR : toll-like receptor

TMS : tetramethylsilane or trimethylsilyl

TNF : tumor necrosis factor

Troc : 2,2,2-trichloroethoxycarbonyl

UV : ultraviolet

(5)

WSC : water soluble carbodiimide

(6)

目次

序論

1

本論

第 1 章 自然免疫賦活化作用を示す Gonytrichum sp. 抽出物の成分探索

 第 1 節 糸状菌 Gonytrichum sp. 抽出物からの gonytolide A-G (11-17) の単離 9

  第 1 項 Gonytolide A (11) の単離 10   第 2 項 Gonytolide B-G (12-17) の単離 11  第 2 節 Gonytolide A (11) の構造解析   第 1 項 平面構造の解析 14   第 2 項 立体配置の解析 17   第 3 項 軸不斉の解析 19  第 3 節 Gonytolide B-G (12-17) の構造決定   第 1 項 Gonytolide B (12) の構造解析 21   第 2 項 Gonytolide C (13) の構造解析 24   第 3 項 Gonytolide D (14) の構造解析 27   第 4 項 Gonytolide E (15) の構造解析 29   第 5 項 Gonytolide F (16) の構造解析 32   第 6 項 Gonytolide G (17) の構造解析 34  第 4 節 Gonytolide 類の自然免疫制御作用   第 1 項 Gonytolide A (11) の自然免疫制御作用 36   第 2 項 Gonytolide B-G (12-17) の生物活性 37  第 5 節 天然由来化合物を利用した構造活性相関研究 39  第 6 節 考察 42

(7)

第 2 章 自然免疫賦活化物質 gonytolide A の合成研究 47  第 1 節 合成戦略 48  第 2 節 合成研究 50  第 3 節 考察 55

結語

57

実験の部

59  自然免疫活性試験 60  第 1 章第 1 節の実験 64  第 1 章第 2 節の実験 69  第 1 章第 3 節の実験 71  第 1 章第 5 節の実験 72  第 2 章第 2 節の実験 74

参考文献

81

謝辞

83

(8)

序論

 自然免疫は近年注目を浴びている重要な生体反応の一つである.一般的に免疫として広 く知られている特異的な抗原抗体反応を中心とする獲得免疫とは異なり,自然免疫は微生 物に共通する分子パターン (pathogen-associated molecular patterns: PAMPs) を認識すること

で幅広い免疫応答を示す.1 獲得免疫とは異なり自然免疫は,遺伝子の再編成を必要とせず 有限の因子を用いて病原微生物に迅速に対応し,大部分の異物を数時間のうちに生体から 排除する.また,自然免疫は感染初期における即時的な免疫応答以外にも,獲得免疫成立 に不可欠な補助刺激分子の発現を行うことが明らかとなり,哺乳類における自然免疫の重 要性は極めて高いといえる.2  自然免疫の破綻は,重篤な疾患につながる.自然免疫の異常な活性化は,敗血症を引き 起こす.敗血症は,体内に侵入した異物を局所的な免疫応答で排除しきれず,全身で炎症 性サイトカイン産生などの免疫応答が誘導され,その結果多臓器不全やエンドトキシン ショックが引き起こされる重篤な疾患である.3 一方,自然免疫が異常に低下すると,通常 では感染しない細菌やウイルスなどの感染に対する抵抗性が低下し日和見感染を引き起こ しやすくなる.さらに,近年獲得免疫の成立に必要である自然免疫の活性化が,アレル ギー疾患,ガン免疫に関与していることが明らかになり,自然免疫応答の重要性が非常に 注目されている.4 敗血症治療薬として現在臨床試験中の eritran (1),5 あるいは 2009 年に開発 が中止されたものの臨床試験段階まで進んだ TAK242 (2)6 の例のように (Figure 1),自然免 疫を制御する化合物は新規医薬品となりうる.

(9)

 ところで,ヒトなどの脊椎動物以外にも昆虫や植物などすべての多細胞生物が自然免疫

を有しており,7 自然免疫は進化の過程で高度に保存されていることからも重要な生体防御

機構であることが伺える.特にショウジョウバエと哺乳類の自然免疫応答シグナル伝達経

路の間には高い相同性が認められ,8 哺乳類の TLR 経路と TNF 経路はそれぞれショウジョ

ウバエの Toll 経路と Imd 経路に相当している (Figure 2).9 また,ショウジョウバエは獲得

免疫を持たず高度に発達した自然免疫のみで感染防御を行っていることから,自然免疫へ の遺伝学的アプローチには有用なモデル生物の一つとして用いられている.

TAK242 (2) Eritran (1)

(10)

 当研究室では,昆虫と哺乳類の自然免疫活性化機構の相同性が極めて高いことに着目し て,ショウジョウバエを用いた自然免疫応答に作用する化合物のスクリーニングを開発し た.1 0 このスクリーニングは,ショウジョウバエが産生する抗菌ペプチドの 1 つである diptericinの転写制御領域 (プロモーター) にレポーター遺伝子 lacZ をつないだ外来遺伝子 を導入したショウジョウバエ (Dpt-lacZ 系) を用いる.この遺伝子導入ショウジョウバエに グラム陰性菌の細胞壁構成成分であるリポ多糖 (LPS) 画分による刺激を与え自然免疫を活 性化させると,11 deptericin 産生遺伝子のプロモーターからの転写が促進されるとともに,レ ポーター遺伝子 lacZ が発現して !-galactosidase が産生される.従って自然免疫応答を制御 する物質は !-galactosidase 産生量を変化させることとなり !-galactosidase 産生量を測定す ることで自然免疫制御物質の探索が可能である (Figure 3). Figure 3.自然免疫に対する活性評価系 (Dpt-lacZ 系) ・自然免疫活性は !-galactosidase 活性  を指標に評価する. ・LPS 画分によって活性化された自然  免疫に対するサンプルの制御作用を  検出する. 自然免疫の活性化 (LPS 画分) 抗菌ペプチドの 転写制御領域 (Diptericin) レポーター遺伝子 lacZ !-galactosidase 転写・翻訳 転写促進 LPS 画分 試料 ! -Galactosidase LPS 画分に よる活性化 賦活化 or 抑制 サンプルによる

(11)

 ところで,細胞毒性を持つ化合物,あるいは転写・翻訳に影響を及ぼす物質によっても !-galactosidase の産生量には変化が生じる.そこで,ショウジョウバエ由来の培養細胞で ある S2 細胞に対する細胞毒性を MTT 法により評価した.  一方,hs-lacZ 系において,hs-GAL4/UAS-lacZ 系統のショウジョウバエを用いて転写・ 翻訳制御作用を検出した.hs-GAL4/UAS-lacZ 系統のショウジョウバエでは熱刺激によ り,熱刺激プロモーター下流の酵母由来転写因子 GAL4 タンパク質の発現が誘導される. 次いで GAL4 タンパク質が標的配列である UAS に結合することにより,下流の lac Z の転 写が促進され,!-galactosidase が産生される.すなわち,産生される !-galactosidase を測定 することにより,熱刺激プロモーターに由来する転写・翻訳を制御する化合物の検出が可 能である (Figure 4).  その結果,Dpt-lacZ 系,S2 細胞系を用いた MTT 試験と hs-lacZ 系との 3 種の生物試験 により自然免疫選択的に作用する化合物を探索することが可能となる! Figure 4.hs-lacZ 系 の概要 GAL4 GAL4 熱刺激 (35 ºC"#20 min)

heat shock promotor

UAS レポーター遺伝子 lacZ !-Galactosidase 転写促進 産生誘導 結合 + Sample 25 ºC 18 h !-Galactosidase 検出 幼虫 GAL4

(12)

 新規医薬品を開発するにあたり,天然物化学が果たす役割は大きい.中でも微生物を利 用した成分探索は古くから盛んに行われており,非常に有用であるといえる.実際に penicillin G (3) や cyclosporine A (4), tacrolimus (5) など多くの微生物由来成分が現在でも医薬 品として使用されている (Figure 5).  微生物の二次代謝産物に期待される生物活性の一つとして,前述の自然免疫制御作用が 挙げられる.微生物は自然免疫により排除される立場にあることから,微生物は自然免疫 を制御する二次代謝産物を産生している可能性が考えられる.  当研究室では,現在までにショウジョウバエを使用したアッセイ系によって,膨大な種 類の微生物から自然免疫制御物質の探索を行ってきた.その結果,放線菌 Streptmyces sp. より celastramycin A (6)12,糸状菌 Aspergillus sp. より TP-1 (7)13,糸状菌 Talaromyces sp. よ

り TP-76 (8)14 等を自然免疫抑制物質として単離した.また,インドネシアの土壌から分離

された放線菌 Streptomyces sp. より,chartreusin (9)15 や setamycin (10)16 も抑制物質として単

離・同定した (Figure 7).17 このように自然免疫を抑制する化合物は種々の微生物より単離

されているものの,賦活化する化合物については全く単離されていない.よって新規自然 Cyclosporine A (4)

from Tolypocladium inflatum

Tacrolimus (5)

from Streptomyces tsukubaensis Penicillin G (3)

from Penicillium notatum

(13)

免疫医薬品のリード化合物や自然免疫応答機構解析のバイオプローブとしての活用を目指 して,本研究では微性物に含まれる自然免疫賦活化物質の探索研究を行った. Figure 6!当研究室にて自然免疫抑制作用を有すると判明した微生物由来成分 TP-1 (7) TP-76 (8) Chartreusin (9) Setamycin (10) Celastramycin A (6)

(14)

 本研究では,スクリーニングにより見出された自然免疫賦活化作用を示す糸状菌 Gonytrichum sp. 抽出物の活性成分の探索を行った.その結果,ビスクロマノン骨格を有 する新規化合物 gonytolide A (11) が活性本体として単離・構造決定された (Figure 7).さら に網羅的に成分探索を行った結果,その類縁体として新規化合物 gonytolide B-G (12-17) を 得た (Figure 8).また,gonytolide A (11) の構造活性相関研究として天然より得られた化合 物を用いて誘導体を合成し,活性評価を行った.第一章では,以上の過程について述べ る.また,前述のように gonytolide A (11) は薬学にとって非常に有用であるといえるが, 天然より得られる gonytolide A (11) には量的な制限があり,更なる研究の為には合成によ る安定供給が望ましい.第二章では gonytolide A (11) の全合成を目的とし,そのモデル化 合物として単量体にあたる gonytolide F (16) の合成研究を行ったのでその詳細について述 べる. 4 Gonytolide A (11) Figure 7.Gonitolide A (11) の構造と自然免疫制御作用 ■ 自然免疫制御作用 ● 細胞毒性 ▲ 転写・翻訳活性 H H H H 0 0.1 0.3 1 3 10 30 100 0 100 200 300 400 500 600 A ctivity (% of control) Concentration (µg/mL)

(15)

Gonytolide B (12)

Gonytolide D (14) Gonytolide E (15)

Gonytolide C (13)

Gonytolide F (16) Gonytolide G (17)

(16)

本論

第 1 章 自然免疫賦活化作用を示す Gonytrichum sp. 抽出物

の成分探索

第 1 節 糸状菌 Gonytrichum sp. 抽出物からの gonytolide A-G (11-17) の単離

 当研究室では序論で述べたアッセイ系を用いてこれまで約 27,000 種の微生物抽出物の 自然免疫に対する作用を検討した.その結果,糸状菌 Gonytrichum sp. 菌体及び培養液の ブタノール抽出物に自然免疫を選択的に賦活化させる作用が見出された (Table 1).そこで 本研究では,この糸状菌抽出物から活性成分の単離・構造決定を行った. Table 1 Gonytrichum sp. ブタノール抽出物の自然免疫活性と S2 細胞生存率 自然免疫活性 (%) 細胞生存率 (%) [Sample conc. 100 µg/mL] [Sample conc. 100 µg/mL] Extract 176.3 ± 9.7 98.2 ± 1.3

(17)

第 1 項 Gonytolide A (11) の単離  Gonytrichum sp. ブタノール抽出物 21.12 g をシリカゲルカラムクロマトグラフィーに よって分画し,Fr. 1~9 を得た.そのうち自然免疫賦活化作用を示した Fr. 5 には TLC にお いて 254 nm の UV を吸収し,アニスアルデヒド発色試薬にて黄色に呈色するスポットが 確認された.そこで各種カラムクロマトグラフィーを用いて Fr. 5 の分画を進めたとこ ろ,新規化合物 gonytolide A (11) を 87.4 mg 得た (Figure 9). Fr. 1 106.1 mg MeOH Fr. 2 41.0 mg Fr. 3 421.4 mg Fr. 4 83.8 mg Fr. 5 164.9 mg Fr. 6 802.7 mg Fr. 7 17219.3 mg Fr. 8 2339.4 mg n-hexane-EtOAc (1:0-9:1) n-hexane-EtOAc (9:1-3:1) n-hexane-EtOAc (3:1-1:1) n-hexane-EtOAc (1:1-1:4) n-hexane-EtOAc (1:4-0:1) EtOAc-MeOH (1:0-4:1) EtOAc-MeOH (4:1-1:1) EtOAc-MeOH (1:1) SiO2 c. c.

n-hexane, n-hexane-EtOAc (1:0-1:4), EtOAc,

EtOAc-MeOH (4:1-1:1), MeOH

SiO2 c. c.

CHCl3-MeOH (49:1) Gonytrichum sp. n-BuOH extract 21.12 g

Fr. 9 553.7 mg GPC HPLC (JAIGEL-1H; CHCl3) Gonytolide A (11) Figure 9 Gonytolide A (11) の単離

(18)

第 2 項 Gonytolide B-G (12-17) の単離  Fr. 5 以外のフラクションには目立った自然免疫制御活性は見られなかったものの,Fr. 6 には TLC 上に gonytolide A (11) に類似したスポットが複数見られた.従って,この抽出 物にはいくつかの gonytolide 類縁体が含まれている可能性が示唆され,さらに詳しく分画 を進めることとした.Fr. 6 を TLC を指標にシリカゲルカラムクロマトグラフィー,ODS カラムクロマトグラフィー,GPC HPLC を用いて精製した結果,Fr. 6-3 からは gonytolide A (11) の類縁体である新規化合物 gonytolide B (12) 3.1 mg,gonytolide C (13) 1.6 mg, gonytolide D (14) 8.3 mg を得た (Figure 10).また Fr. 6-6 を分画・精製した結果,類縁体 gonytolide E (15) 4.0 mg を得た (Figure 11) Fr. 6 802.7 mg SiO2 c. c. n-hexane-EtOAc-MeOH n-hexane-EtOAc (1:0-1:1) n-hexane-EtOAc (1:1-1:2) n-hexane-EtOAc (1:4) n-hexane-EtOAc (1:4-0:1) n-hexane-EtOAc (1:1) EtOAc-MeOH (1:0-0:1) SiO2 c. c. n-hexane-EtOAc (2:3-0:1) H2O-MeCN (1:1) SiO2 c. c. n-hexane-EtOAc (1:1) GPC HPLC (JAIGEL1H;CHCl3) Gonytolide B (12) 3.1 mg H2O-MeCN (1:1-2:3) ODS c. c. H2O-MeCN (49:1-9:1) GPC HPLC (1H;CHCl3) SiO2 c. c. n-hexane-EtOAc (1:1) Gonytolide C (13) 1.6 mg ODS c. c. SiO2 c. c. CHCl3-MeOH (1:0-49:1) Fr. 6-1 17.1 mg Fr. 6-2 38.7 mg Fr. 6-5 87.2 mg Fr. 6-4 117.0 mg Fr. 6-3 301.8 mg Fr. 6-6 255.4 mg Gonytolide D (14) 8.3 mg CHCl3-MeOH (49:1) SiO2 c. c. n-hexane-EtOAc (1:2)-MeOH ODS c. c. H2O-MeCN (1:1) SiO2 c. c. CHCl3-MeOH (99:1-49:1)

(19)

 一方 Fr. 4 および Fr. 6 の TLC には,254 nm で UV を吸収し,アニスアルデヒド発色試 薬で赤色に呈色する gonytolide A-E (11-15) とは異なるスポットが確認された.そこで,各 種カラムクロマトグラフィーを用いてこれらのスポットを精製した結果,gonytolide A (11) の単量体にあたる gonytolide F (16) 1.8 mg 及びその類縁体 gonytolide G (17) 7.0 mg を得た (Figure 12). SiO2 c. c. CHCl3-MeOH (9:1-1:1) ODS c. c. H2O-MeOH (49:1-9:1) GPC HPLC (JAIGEL-1H;CHCl3) Gonytolide E (15) 4.0 mg Fr. 6-6 255.4 mg Figure 11.Gonytolide E (15) の単離

(20)

ODS c. c. H2O-MeCN (7:3) Gonytolide G (17) 7.0 mg Fr. 4 83.8 mg SiO2 c. c. CHCl3-MeOH (1:0) SiO2 c. c. n-hexane-EtOAc (1:1) Gonytolide F (16) 1.8 mg Figure 12.Gonytolide F (16) 及び G (17) の単離 Fr. 6-3 301.8 mg SiO2 c. c. CHCl3-MeOH (49:1)

(21)

第 2 節 Gonytolide A (11) の構造解析

第 1 項 平面構造の解析  Gonytolide A (11) は,無色の不定形固体として得られ,HREIMS より m/z 638.1616,分 子式 C32H30O14 と判明した.また,1H NMR から 1 個の分子内水素結合をしたフェノール 性水酸基 (! 11.45 (1H, s)) の存在が判明した.13C NMR,HMQC スペクトルより,1 個のケ トカルボニル炭素 (! 193.4),2 個のエステルカルボニル炭素 (! 175.1, 168.0),5 個の 4 級 sp2 炭素 (! 161.1, 156.1, 150.2, 113.7, 105.9),1 個の 3 級 sp2 炭素 (! 111.0),1 個の酸素原子と 結合した 4 級炭素 (! 83.7),1 個のオキシメチン炭素 (! 80.6),1 個のメトキシ炭素 (! 53.4),3 個のメチレン炭素 (! 39.1, 27.0, 22.0),sp2 炭素と結合した 1 個のメチル炭素 (! 21.1) の存在が判明した.このように 13C NMR から 16 本のシグナルしか検出されなかっ たこと,分子式が C32H30O14 であることを併せて考えると gonytolide A (11) は C16H15O7 の 分子式を有する部分構造のホモ二量体であることが示唆された (Table 2).  続いて平面構造決定のために HMBC スペクトルを解析した結果,フェノール性水酸基 プロトンから 4a 位,5 位,6 位炭素へ,6 位プロトンから 5 位,8 位,14 位炭素へ,14 位 メチル基プロトンから 6 位,7 位,8 位炭素への相関が観測された.8a 位 sp2 炭素の存在 と,他に sp2 炭素が 5 個あることからベンゼン環の存在が考えられ,芳香環部分構造 I が 明らかとなった (Figure 13).一方,1H-1H COSY より,9 位,10 位炭素間の結合が明らか になった.また HMBC スペクトル解析の結果,9 位プロトンから 12 位炭素へ,11 位プロ トンから 10 位,12 位炭素への相関が見られ "-ラクトンの存在が,15 位メチル基プロトン から 13 位カルボニル炭素へ相関が見られメチルエステルの存在が判明した.また 3 位メ チレンプロトンから 4 位カルボニル,2 位,9 位,13 位への相関が見られ部分構造 II が判 明した (Figure 13).

(22)

 最後に,HMBC スペクトルの 3 位プロトンから 4a 位炭素への相関から,部分構造 I と 部分構造 II が 4 位ケトン炭素を介して結合していることが判明した.ここで,分子式は (C16H15O7)2 であり,未決定の元素は残っていないことから,8a 位と 2 位はエーテル結合 となり,部分構造 I および II はクロマノン骨格を形成していることが明らかとなった.こ の化合物はホモ二量体なので,結合している元素のない 8,8' 位炭素間で二量化していると 考えられ,新規化合物 gonytolide A (11) の平面構造が決定された (Figure 14). 部分構造 II 4 3 2 15 12 9 10 11 13 1H-1H COSY HMBC Figure 13.Gonytolide A (11) の部分構造 8 8' 8a 2 3 4a 結合している元素が ない 8 位炭素で二量化 分子式よりエーテル 結合していると判明 9 10 11 12 13 14 5 6 Figure 14.Gonytolide A (11) の平面構造 部分構造 I 4a 5 6 7 8 8a 14

(23)

Table 2.Gonytolide A (11) の NMR データ Position 13C (ppm)a 1H (ppm)a 2/2' 83.7 3/3' 39.1 3.02 (1H, d, J = 16.7 Hz) 2.97 (1H, d, J = 16.7 Hz) 4/4' 193.4 4a/4a' 105.9 5/5' 161.1 6/6' 110.0 6.52 (1H, s) 7/7' 150.2 8/8' 113.7 8a/8a' 156.1 9/9' 80.6 4.80 (1H, dd, J = 8.3, 5.1 Hz) 10/10' 22.0 2.27-2.35 (1H, m) 2.15-2.27 (1H, m) 11/11' 27.0 2.35-2.47 (2H, m) 12/12' 175.1 13/13' 168.0 14/14' 21.1 2.03 (3H, s) 13-OMe/13'-OMe 53.4 3.70 (3H, s) 5-OH/5'-OH 11.45 (1H, s)

a600 MHz for 1H and 150 MHz for 13C in CDCl

(24)

第 2 項 立体配置の解析  相対配置を決定するために NOESY のスペクトル解析を行ったが,いずれのプロトン間 にも有用な情報を提供する相関が得られず相対構造の決定には至らなかった.そこで gonytolide A (11) の X 線結晶構造解析を行い,相対配置を 2/2'R*, 9/9'S* と決定した (Figure 15).  続いて gonytolide A (11) の絶対構造の解析のために,9/9' 位二級水酸基を (R)- または (S)-メトキシフェニル酢酸と縮合させ,それぞれの 1H NMR の化学シフト値の差 !"(R-S) を算 出することによる絶対配置の決定法を試みた.18 すなわち,gonytolide A (11) に室温条件 下,1% 塩酸メタノールを作用させ,#-ラクトンを開環して 18 へと誘導した.さらに 18 の 9 位の二級水酸基に (R)- または (S)-メトキシフェニル酢酸を縮合させて 19 および 20を 得た(Scheme 1).

Figure 15.Gonytolide A (11) の ORTEP 図と相対配置

S*

S* R* R*

(25)

 得られた 19 と 20 の1H NMR の化学シフト値の差 !"(R-S) を算出すると,クロマノン環 側は正の値,メチルエステルを含む側鎖側は負の値となり,9/9' 位の絶対配置は S 配置と 判明した.その結果 gonytolide A (11) の絶対配置は 2/2'R,9/9'S であることが明らかになっ た (Figure 17). 1% HCl-MeOH, rt 35% (72% BORSM) (R) or (S)-MPA, WSC, DMAP, Et3N, CH2Cl2, rt 11 18 19: R= (R)-MPA (40%) 20: R= (S)-MPA (37%) 9S 2R Gonytolide A (11) Figure 17.化合物 19,20 および gonytolide A (11) の絶対配置 Scheme 1.Gonytolide A (11) から MPA エステル 19, 20 への誘導

19, 20 9 位の絶対配置を !"(R-S) の 値を用いて決定した 2R 9S 9 9

(26)

第 3 項 軸不斉の解析  結合軸のオルト位に嵩高い置換基を有するビアリール化合物は,その回転に制限がかか り軸不斉を生じさせることが知られている.これまでに天然資源より単離・構造決定され たビスクロマノン骨格を有する化合物に noduliprevenone (21)19 があるが,この化合物は不 斉軸を有する化合物として報告されている.また軸不斉選択的に合成された化合物 22 に おいては,結合軸のオルト位に結合している置換基は比較的小さなヒドロキシル基である にも関わらず,その立体障害によって軸不斉を生じさせる.20 従って gonytolide A (11) も 8,8' 位間の結合軸のオルト位にメチル基と酸素原子を持っていることから,22 と同様に不 斉軸を有していると考えられる (Figure 17).  始めに,gonytolide A (11) における軸不斉の有無を確認するため,加熱による不斉軸の ラセミ化を検討した.加熱により不斉軸がラセミ化すると,CD スペクトルにおいてビア リール構造に由来する波長である 265 nm において,変化が生じると考えられる. Gonytolide A を o-ジクロロベンゼン (bp = 180-183 ˚C) を溶媒として加熱還流を行い,得ら れた化合物の CD スペクトルを測定した (Figure 18).しかしながら CD スペクトルに変化 は見られず,また 265 nm 付近で負のコットン効果を示しているものの絶対値が非常に小 さいことから,軸不斉に関して正確な判断をすることが困難であった. (aR)-Noduliprevenone (21) Figure 17.不斉軸を有する化合物 (aR)-22

(27)

 そこで,gonytolide A (11) 絶対配置が既に決定されていることを考慮し,X 線結晶構造 解析の結果をさらに詳細に解析することにより 8,8' 位間の不斉軸は S 配置であると結論づ けた (Figure 19). 14 aS Figure 19.Gonytolide A (11) の軸不斉の解析 14 aS Figure 18!Gonytolide A (11) の CD スペクトル !" /cm 2 mol -1 wavelength[nm] 50 0 -50 -100 215 250 300 350 400 265 nm 付近に負のコットン効果が観測 されたが,絶対値が非常に小さく正確 な判断が難しい

(28)

第 3 節 Gonytolide B-G (12-17) の構造決定

第 1 項 Gonytolide B (12) の構造解析

 Gonytolide B (12) は無色不定形固体として得られた.Gonytolide B (12) は HREIMS によ

り分子量 m/z 638.1613,分子式 C32H30O14 と明らかになり,これは gonytolide A (11) と同一

である.Gonytolide B (12) の 13C NMR スペクトルにおいては,gonytolide A (11) と異なり

32 本のシグナルが観測されたが,化学シフトの類似した 2 本ずつのシグナルが対をなし

ていた.また HMQC スペクトルの解析から,これらのシグナルはそれぞれほぼ同一のシ

フト値のプロトンとの相関が確認された.1H NMR, 13C NMR スペクトルのいずれのシグナ

ルも gonytolide A (11) と類似していることから,gonytolide B (12) は gonytolide A (11) と同 じクロマノン構造のホモ二量体で,クロマノン環が非対称に結合していることが示唆され た (Table 3).  芳香環周辺の HMBC スペクトルを解析したところ,5 位と結合したフェノール性水酸 基プロトン (! 11.42 (1H, s)) から 4a, 5, 6 位炭素へ,6 位プロトンから 4a, 5, 8 位炭素へ,14 位プロトンから 6, 7, 8 位炭素へ相関が見られたことから,一方のクロマノン構造 (部分構 造 A) は gonytolide A (11) と同様に 8 位で他方のクロマノン構造 (部分構造 B ) と結合して いることが明らかとなった.また,5' 位に結合したフェノール性水酸基プロトン (! 11.72 (1H, s)) から 4a', 5', 6' 位炭素へ,8' 位プロトンから 6', 8a' 位炭素へ,14' 位プロトンから 6', 7', 8' 位炭素へ相関が見られたことから,部分構造 B は 6' 位で部分構造 A と結合している ことが判明し,gonytolide B (12) の平面構造を決定した (Figure 20).

(29)

Figure 20.Gonytolide B (12) の構造解析 4a 5 6 7 8 8a 4a' 5' 6' 7' 8' 8a' 14' 14 部分構造 B HMBC 部分構造 A 2 9 13 3 4 10 11 12

(30)

Table 3.Gonytolide B (12) の NMR データ Position 13C (ppm)a 1H (ppm)a 2 85.0 3 39.6 3.12 (1H, d, J =16.9 Hz) 2.91 (1H, d, J =16.9 Hz) 4 193.6 4a 106.0 5 161.2 6 111.7 6.54 (1H, s) 7 151.3 8 114.3 8a 156.1 9 80.6 4.68 (1H, dd, J = 8.4, 3.8 Hz) 10 22.1 2.17-2.20 (1H, m) 2.03-2.10 (1H, m) 11 26.6 2.30-2.40 (1H, m) 1.90-2.00 (1H, m) 12 175.1 13 168.7 14 20.8 1.99 (3H, s) 13-OMe 53.5 3.67 (3H, s) 5-OH 11.42 (1H, s) 2' 84.5 3' 40.1 3.50 (1H, d, J = 17.3 Hz) 3.17 (1H, d, J = 17.3 Hz) 4' 194.1 4a' 105.8 5' 159.7 6' 116.4 7' 149.3 8' 108.4 6.52 (1H, s) 8a' 158.4 9' 79.9 4.79 (1H, dd, J = 8.6, 4.0 Hz) 10' 21.7 2.50-2.60 (1H, m) 2.20-2.40 (1H, m) 11' 27.8 2.78-2.88 (1H, m) 2.55-2.60 (1H, m) 12' 176.1 13' 168.8 14' 20.9 2.02 (3H, s) 13-OMe 53.8 3.81 (3H, s) 5'-OH 11.72 (1H, s)

(31)

第 2 項 Gonytolide C (13) の構造解析  Gonytolide C (13) (無色不定形固体,HREIMS m/z 638.1824 [M+],分子式 C 32H30O14 ) は gonytolide A (11) や gonytolide B (12) と同一の分子式を有しており,これらの化合物の類縁 体であることが推測された.Gonytolide C (13) の 13C NMR においては 32 本のシグナルが 観測され,そのうちの 16 本のシグナルは gonytolide A (11) とほぼ一致していたことから gonytolide A (11) と共通のクロマノン構造 (部分構造 A ) を有することが示唆された.残る 16 本のシグナルは gonytolide A (11) とは異なっていた (Table 4).  HMQC,HMBC スペクトルの詳細な解析を行ったところ,ビアリール部分構造につい ては部分構造 A のフェノール性水酸基 (! 11.64 (1H, s)) から 4a, 5, 6 位炭素へ,6 位プロト ンから 5, 6, 7 位炭素へ,14 位プロトンから 6, 7, 8 位炭素へ相関が見られ,8 位で部分構造 B と結合していると判明した.また,部分構造 B のフェノール性水酸基 (! 11.21 (1H, s)) から 4a', 5', 6' 位炭素へ,6' 位プロトンから 5', 6', 7' 位炭素へ,14' 位プロトンから 6', 7', 8' 位 炭素へ相関が見られ 8' 位で部分構造 A と結合していることが明らかになった.よって部 分構造 A と部分構造 B は 8, 8' 位間で結合しているビアリール構造であると判明した (Figure 21).  次に,部分構造 B のベンゼン環以外の部分については前述の通り部分構造 A と異なっ ており,1H NMR スペクトルよりエノール性水酸基 (! H 14.04 (1H, s)) を有する構造である と判明した.1H-1H COSY より 9',10',11' 位炭素の結合が判明した.また,HMBC スペ クトルより 10' 位プロトンから 2', 12' 炭素へ,エノール性水酸基のプロトンから 3', 12' 炭 素へ,13'-OMe 位プロトンから 13 位炭素へ相関が見られた.以上から,2'-9'-10'-11'-12'-3' 位の結合とメチルエステルの存在が判明したが,ベンゼン環部分との結合様式は判明しな かった.そこで,この部分構造とクロマノン環を有する天然物 rugulotrosin A (23)21 と 13C NMR スペクトルを比較したところ,ほぼ一致したことから部分構造 B と同一のクロマノ ン構造を有していると考えられた (Figure 22) (Table 4).以上のことから部分構造 A と B が 明らかとなり,gonytolide C (13) の平面構造を決定した (Figure 21).

(32)

Figure 21.Gonytolide C (13) の平面構造 Figure 22.Rugulotrosin A (23) の構造 部分構造 B 2' 3' 9' 10' 11' 12' 13' 4a' 5' 6' 7' 8' 4a 5 6 7 8 部分構造 A 4' 8a' 14

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Table 4.Gonytolide C (13) の NMR データ Gonytolide C Regulotrosin A21  Position  13C (ppm)a 1H (ppm)a 13C (ppm)b 2 85.3 3 39.7 2.90 (2H, s) 4 192.7 4a 105.1 5 161.5 6 111.1 6.46 (1H, s) 7 148.4 8 113.5 8a 156.6 9 80.2 4.76 (1H, dd, J = 8.9, 1.4 Hz) 10 22.1 2.20-2.35 (1H, m) 2.05-2.20 (1H, m) 11 26.2 2.05-2.20 (1H, m) 1.50-1.65 (1H, m) 12 175.1 13 167.8 14 20.7 1.87 (3H, s) 13-OMe 53.6 3.76 (3H, s) 5-OH 11.64 (1H, s) 2' 84.3 84.3 3' 101.1 101.1 4' 186.7 186.6 4a' 105.9 104.8 5' 160.6 159.3 6' 111.3 6.52 (1H, s) 116.7 7' 151.8 150.2 8' 114.7 109.2 8a' 156.4 157.9 9' 71.4 4.11 (1H, ddd, J = 12.7, 5.7, 4.3 Hz) 71.9 10' 23.2 2.05-2.30 (1H, m) 23.8 1.95 (1H, ddd, J = 13.6, 8.0, 5.7 Hz) 11' 27.6 2.82 (1H, ddd, J = 19.8, 10.2, 8.0 Hz) 27.5 2.61 (1H, dd, J = 19.8, 7.0 Hz) 12' 178.4 177.7 13' 167.8 170.2 14' 20.9 2.17 (3H, s) 20.9 13-OMe 52.8 3.66 (3H, s) 53.1 5'-OH 11.21 (1H, s)

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第 3 項 Gonytolide D (14) の構造解析  Gonytolide D (14) は無色不定形固体として得られ,HREIMS より分子量 638.1632,分子 式 C32H30O14 と判明した.この分子式は gonytolide A-C (11-13)と共通であり,また 1H NMR 及び 13C NMR は全て gonytolide C (13) と類似したスペクトルを示していたことから,!-ラ クトンを有する部分構造 A とシクロへキセノン環を有する部分構造 B からなる異性体で あることが示唆された (Table 5).そこで,ビアリール周辺の HMQC 及び HMBC スペクト ルを解析した結果,部分構造 A のフェノール性水酸基のプロトン ("# 11.41 (1H, s)) から 4a, 5, 6 位炭素へ,14 位プロトンから 6, 7, 8 位炭素へ,また 3 位プロトンから 4a 炭素へ相 関が確認され部分構造 A は 8 位で部分構造 B と結合していることが判明した.また,部 分構造 B のフェノール性水酸基プロトン ("H 13.97 (1H, s)) からは 4a', 5', 6' 位炭素へ,14' 位 プロトンから 6', 7', 8' 位炭素へ,8' 位プロトンから 8a' 位,4a' 位炭素へ相関が確認され, 部分構造 B は 6' 位で部分構造 A と結合していることが判明した.従って,gonytolide D (14) は二つの部分構造 A,B が 8,6' 位間で結合している平面構造であると決定した (Figure 23). Figure 23.Gonytolide D (14) の平面構造 5 6 7 8 8a 4a 14 5' 6' 7' 8' 8a'4a' 14' HMBC 3 部分構造 A 9 13 9' 12' 14'

(35)

Table 5.Gonytolide D (14) の NMR データ Position 13C (ppm)a 1H (ppm)a 2 85.1 3 39.6 3.11 (1H, d) 2.88 (1H, d) 4 193.1 4a 106.0 5 161.1 6 111.6 6.53 (1H, s) 7 151.1 8 114.6 8a 156.6 9 80.5 4.67 (1H, dd, J = 8.1, 3.4 Hz) 10 22.1 2.26 (1H, m) 2.13 (1H, m) 11 26.5 2.27 (1H, m) 1.98 (1H, m) 12 175.1 13 168.0 14 20.8 2.03 (3H, s) 13-OMe 53.4 3.68 (3H, s) 5-OH 11.41 (1H, s) 2' 84.2 3' 101.1 4' 186.6 4a' 105.2 5' 159.9 6' 116.5 7' 148.7 8' 108.7 6.57 (1H, s) 8a' 159.0 9' 72.2 4.33 (1H, ddd, J = 12.4, 5.1, 2.6 Hz) 10' 23.7 2.10-2.25 (1H, m) 1.90-2.20 (1H, m) 11' 27.5 2.69 (1H, ddd, J = 19.8, 10.2, 8.0 Hz) 2.67 (1H, dd, J = 19.8, 7.0 Hz) 12' 177.7 13' 169.5 14' 20.9 1.97 (3H, s) 13-OMe 53.2 3.78 (3H, s) 5'-OH 11.51 (1H, s) 9-OH 2.84 (1H d, J = 2.6 Hz)

(36)

第 4 項 Gonytolide E (15) の構造解析  Gonytolide E (15) は無色不定形固体として得られ,HRFABMS より m/z 657.1824 [M+H] のピークが観測されたことから分子式 C32H34O15 と判明した.これは,gonytolide A (11) に 水が付加した分子式を示している.また,13C NMR スペクトルにおいて 32 本のシグナル が観測されたが,そのうちの 16 本は gonytolide A (11) とよく一致しており,部分構造 A は !-ラクトンを有するクロマノン構造であることが示唆された.一方,残りの 16 本の ピークは gonytolide A (11) と異なっており,特に 9' 位 ("c 74.6) および 12' 位 ("c 168.2) の化 学シフトが gonytolide A (11) ("c 80.6, "c 175.1) と比べて高磁場シフトしていた.また 1H NMR においても gonytolide A (11) の !-ラクトン構造中のプロトン ("H 4.80 (1H, dd, J = 8.3, 5.1 Hz)) が高磁場シフトしていたことから ("H 3.78 (1H, dd, J = 10.4, 1.7 Hz)),部分構造 B は 部分構造 A の !-ラクトンが加水分解された遊離カルボキシル基を有する構造であると判 断した (Table 6).このことは TLC において,gonytolide E (15) の Rf 値が gonytolide A (11) と比べて小さいことからも支持される.  そこで,gonytolide E (15) の部分構造 A と部分構造 B の結合部位を確認するため,9' 位 水酸基と 12' 位カルボキシル基を分子内脱水縮合させ gonytolide A (11),B (12) と各種デー タを比較することとした (Scheme 2).その結果,得られた化合物の 13C NMR,1H NMR ペクトルは gonytolide A (11) と完全に一致し,gonytolide E (15) は 8,8'-ビスクロマノン骨格 を有する構造であると決定した.また,比旋光度も gonytolide A (11) と一致したことか ら,gonytolide E (15) の絶対配置は軸不斉も含めて aS, 2R, 2'R, 9S, 9'S と決定した.

(37)

WSC, Et3N, DMAP, CH2Cl2, rt 93% Gonytolide E (15) Gonytolide A (11) 合成品: 天然物: [!]D +49.6 (c 0.194, CHCl3) 27 [!]D27 +43.2 (c 0.083, CHCl3)

Scheme 2.Gonytolide E (15) から gonytolide A (11) への変換

9 9' 9' 9 2 2' 2' 2 部分構造 A 部分構造 B

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Table 6. Gonytolide E (15) の NMR データ Position 13C (ppm)a 1H (ppm)a 2 84.1 3 39.6 2.96 (1H, d, J = 12.8 Hz) 2.92 (1H, d, J = 12.8 Hz) 4 193.7 4a 106.1 5 160.7 6 110.4 6.45 (1H, s) 7 149.9 8 113.7 8a 156.3 9 80.9 4.76 (1H, dd, J = 11.2, 4.7 Hz) 10 22.0 2.15-2.37 (2H, m) 11 27.1 2.15-2.37 (2H, m) 12 175.9 13 169.9 14 21.0 1.95 (3H, s) 13-OMe 53.4 3.61 (3H, s) 2' 86.0 3' 39.6 2.99 (2H, s) 4' 195.8 4a' 106.1 5' 156.3 6' 111.2 6.39 (1H, s) 7' 151.4 8' 114.4 8a' 160.7 9' 74.6 3.78 (1H, dd, J = 10.4, 1.7 Hz) 10' 29.7 1.85-2.00 (2H, m) 11' 27.1 2.15-2.37 (2H, m) 12' 168.2 13' 169.9 14' 21.0 1.92 (3H, s) 13-OMe' 53.0 4.58 (3H, s)

(39)

第 5 項 Gonytolide F (16) の構造解析  Gonytolide F (16) は無色不定形固体として得られ,HREIMS より分子量 320.0871,分子 式 C16H16O7,即ち,gonytolide A-D (11-14) の半分の分子式を示した.13C NMR においては gonytolide A (11) と全てのピークにおいてほぼ同一の化学シフト値であり,1H NMR におい て,ベンゼン環のプロトンに由来する !" 6.4 ppm 付近に新たなプロトンが観測された点の み異なっていた (Table 7).このプロトンがクロマノン骨格の 8 位にあたると判断し, gonytolide F (16) は gonytolide A (11) の単量体であると判明した.  また,1H NMR の化学シフト値及びカップリング定数が gonytolide A (11) とほぼ同じこ とから,相対配置については gonytolide A (11) と同一の 2R*, 9S* であると考えられる (Figure 24). Gonytolide F (16) 2R* 9S* Figure 24. Gonytolide F (16) の構造

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Table 7. Gonytolide F (16) の NMR データ Position 13C (ppm)a 1H (ppm)a 2 84.0 3 39.4 3.12 (1H, d, J = 16.7 Hz) 2.95 (1H, d, J = 16.7 Hz) 4 193.0 4a 105.6 5 161.7 6 108.4 6.40 (1H, s) 7 151.6 8 111.0 6.38 (1H, s) 8a 159.0 9 80.9 4.85 (1H, dd, J = 8.0, 5.9 Hz) 10 22.0 2.35-2.50 (2H, m) 11 27.6 2.71 (1H, ddd, J =18.0, 9.8, 7.2 Hz) 2.58 (1H, ddd, J =18.0, 10.2, 6.7 Hz) 12 175.4 13 168.9 14 22.6 2.30 (3H, s) 13-OMe 53.6 3.72 (3H, s) 5-OH 11.38 (1H, s)

a400 MHz for 1H and 100 MHz for 13C in CDCl

(41)

第 6 項 Gonytolide G (17) の構造解析  Gonytolide G (17) は無色不定形固体として得られ,HREIMS より分子量 336.0836,分子 式 C16H16O7 と,gonytolide F (16) に酸素原子が 1 個追加された分子式であると判明した. 1H NMR 及び 13C NMR スペクトルを gonytolide F (16) と比較したところ (Table 7),ほとん どのピークはよく類似していたが,gonytolide F (16) の 14 位メチル基 (!c 21.9,!H 2.29 (3H, s)) のピークが消失した代わりに,オキシメチレン (!c 64.4,!H 4.66 (2H, s)) と思われる

ピークが出現していた (Table 8).以上から,gonytolide G (17) は gonytolide F (16) の 14 位メ チル基がヒドロキシメチル基に変化した構造であると判明した.  さらに立体配置を検討するため,gonytolide G (17) に対し水素雰囲気下,接触還元を行 うことによりベンジル位のヒドロキシメチル基をメチル基とし,gonytolide F (16) へと誘 導した (Scheme 3).得られた化合物の NMR スペクトルは gonytolide F (16) と完全に一致 し,gonytolide G (17) の相対配置は 2R*, 9S* と判明した.また比旋光度においても gonytolide F (17) と一致したことから,gonytolide F (17) と同一の絶対配置を有しているこ とが明らかになった. H2, Pd/C, MeOH, rt 54% Gonytolide F (16) Gonytolide G (17) 14 2R* 9S* 合成品: 天然物: ["]D27 +25.1 (c 0.184, CHCl3) ["]D27 +24.5 (c 0.102, CHCl3)

(42)

Table 8.Gonytolide G (17) の NMR データ Position 13C (ppm)a 1H (ppm)a 2 84.1 3 39.5 3.13 (1H, d, J = 17.0 Hz) 2.98 (1H, d, J = 17.0 Hz) 4 193.3 4a 106.6 5 162.1 6 107.7 6.56 (1H, s) 7 153.8 8 105.1 6.59 (1H, s) 8a 159.4 9 80.9 4.87 (1H, dd, J = 7.8, 6.1 Hz) 10 22.0 2.40-2.50 (2H, m) 11 27.6 2.71 (1H, ddd, J = 17.4, 9.5, 7.3 Hz) 2.58 (1H, ddd, J = 17.4, 9.9, 6.8 Hz) 12 175.5 13 168.9 14 66.4 4.66 (2H, s) 13-OMe 53.7 3.74 (3H, s) 5-OH 11.42 (1H, s)

a400 MHz for 1H and 100 MHz for 13C in CDCl

(43)

第 4 節 Gonytolide 類の自然免疫制御作用

第 1 項 Gonytolide A (11) の自然免疫制御作用  前節において,Gonytrichum sp. ブタノール抽出物の活性フラクションから,新規化合物 gonytolide A (11) を自然免疫賦活化物質として単離・構造決定した.そこで,序論で述べ た Dpt-lacZ 系,S2 細胞系,hs-lacZ 系の 3 種のアッセイ系を用いて,自然免疫活性,細胞 毒性,転写翻訳活性についてそれぞれ検討した.その結果,gonytolide A (11) は Dpt-lacZ 系において 10 µg/mL で約 5 倍に賦活化する作用を示し,抽出物に含まれる活性本体であ ることが示された.さらに,細胞毒性,転写翻訳活性について活性試験を行ったところ, それぞれ賦活化作用を示す 10 µg/mL において活性を示さないことから,gonytolide A (11) の自然免疫賦活化作用は自然免疫選択的であると判明した (Figure 25). Gonytolide A (11) Figure 25.Gonytolide A (11) の自然免疫制御作用  化合物の自然免疫活性(Dpt-lacZ 系, n=4,■),転写・翻訳活性(hs-lac 系,▲),細胞生存率(S2 細胞 系,●)に対する作用を測定した.縦軸は化合物非処理時における値に対する相対値.横軸は化合物の濃度. Concentration (µg/mL) A ctivity (% of control) H H H H 0 0.1 0.3 1 3 10 30 100 0 100 200 300 400 500 600

(44)

第 2 項 Gonytolide B-G (12-17) の生物活性  新規化合物 gonytolide B-G (12-17) は活性フラクション由来ではないが,gonytolide A (11) と同様のクロマノン骨格を有していることから,これらの化合物についても自然免疫制御 作用および細胞毒性について活性試験を行った.その結果,いずれの化合物も 10 µg/mL において自然免疫に対する制御作用を示さなかった (Figure 26).また,S2 細胞系ではシク ロヘキセン環を有する gonytolide C (13),D (14) のみに 100 µg/mL で毒性が認められたが, 他の化合物は毒性を示さなかった.以上の結果から,自然免疫活性の発現には gonytolide A (11) の !-ラクトンを有する 8,8'-ビスクロマノン環が必要であることが示唆された.

(45)

Figure 26.Gonytoride B-G (12-17) の自然免疫制御作用

 化合物の自然免疫活性(Dpt-lacZ 系, n=4,■),細胞生存率(S2 細胞系,●)に対する作用を測定した. 縦軸は化合物非処理時における値に対する相対値.横軸は化合物の濃度.

Gonytolide B (12) Gonytolide C (13) Gonytolide D (14)

Gonytolide E (15) Gonytolide F (16) Gonytolide G (17)

Concentration (µg/mL) Concentration (µg/mL) Concentration (µg/mL)

A ctivity (% of contr ol) A ctivity (% of contr ol) A ctivity (% of contr ol) A ctivity (% of contr ol) A ctivity (% of contr ol) A ctivity (% of contr ol)

Concentration (µg/mL) Concentration (µg/mL) Concentration (µg/mL)

0 0.1 0.3 1 3 10 30 100 0 100 200 300 400 500 600 0 0.1 0.3 1 3 10 30 100 0 100 200 300 400 500 600 0 0.1 0.3 1 3 10 30 100 0 100 200 300 400 500 600 0 0.1 0.3 1 3 10 30 100 0 100 200 300 400 500 600 0 0.1 0.3 1 3 10 30 100 0 100 200 300 400 500 600 0 0.1 0.3 1 3 10 30 100 0 100 200 300 400 500 600

(46)

0 0.1 0.3 1 3 10 30 100 0 100 200 300 400 500 600

第 5 節 天然由来化合物を利用した構造活性相関研究

 Gonytolide A (11) は自然免疫選択的賦活化作用を示す一方,他の類縁体は活性を示さ ず,活性発現には gonytolide A (11) の 8, 8'-ビスクロマノン骨格が重要であることが示唆さ れた.そこで更なる詳細な構造活性相関研究を目的として,天然より得られた gonytolide A (11) を用いて誘導体の合成を行った.  まず,ベンゼン環置換基の活性への影響を検討するために,6/6' 位の塩素化を行った (Scheme 4).得られた化合物 24 について自然免疫活性試験を行ったところ,S2 細胞系で は 30 µg/mL 以上の濃度で細胞毒性を示すものの,Dpt-lacZ 系では 10 µg/mL で賦活化作用 が約 4.5 倍となり,gonytolide A (11) と同等の自然免疫活性が認められた (Figure 27). Figure 27.化合物 24 の自然免疫活性 Scheme 4.化合物 24 の合成  化合物の自然免疫活性(Dpt-lacZ 系, n=4,■),細胞生存率(S2 細胞系,●)に対する作用を測定し た.縦軸は化合物非処理時における値に対する相対値.横軸は化合物の濃度. Concentration (µg/mL) A ctiv ity (% of co n tr o l) SO2Cl2, Et2O-THF (1:1), rt 65% Gonytolide A (11) 24 6 6' 6 6'

(47)

0 0.1 0.3 1 3 10 30 100 0 100 200 300 400 500 600  続いて,フェノール性水酸基の活性への影響を調べるため,gonytolide A (11) の 5/5' 位 のフェノール性水酸基をメチル化した化合物を合成した (Scheme 5).フェノール性水酸基 は 4/4' 位カルボニル基と分子内水素結合しており,メチル化により水素結合を切断するこ とは化合物の性質に大きく影響を与えると考えられる.しかし,得られた化合物 25 は Dpt-lacZ 系において 10 µg/mL で約 3 倍の値を示し,gonytolide A (11) に比べるとやや弱い ものの自然免疫賦活化作用を維持していると明らかになった.また,S2 細胞系において も 100 µg/mL まで毒性を示さなかった (Figure 28). TMSCHN2, DIPEA, MeOH-MeCN (9:1), rt 46% Gonytolide A (11) 25 Figure 28.化合物 25 の自然免疫活性 Scheme 5.化合物 25 の合成  化合物の自然免疫活性(Dpt-lacZ 系, n=4,■),細胞生存率(S2 細胞系,●)に対する作用を測定し た.縦軸は化合物非処理時における値に対する相対値.横軸は化合物の濃度. Concentration (µg/mL) A ctiv ity (% of co n tr o l) 5 5' 5' 5 4 4 4' 4'

(48)

0 0.1 0.3 1 3 10 30 100 0 100 200 300 400 500 600  !-ラクトン部分の活性に対する影響を調べるため,gonytolide A (11) の絶対構造決定の際 に得たラクトン開環体 18 の自然免疫評価を行った (Scheme 6).その結果,18 は gonytolide A (11) と同様に Dpt-lacZ 系において 10 µg/mL で約 5 倍の自然免疫賦活化を示し,かつ 100 µg/mL まで細胞毒性を示さなかった.従って !-ラクトン構造は活性の発現に必要でないこ とが明らかとなった (Figure 29)! Figure 29.化合物 18 の自然免疫活性 HCl-MeOH, rt 35% Gonytolide A (11) 18 Scheme 6.化合物 18 の合成  化合物の自然免疫活性(Dpt-lacZ 系, n=4,■),細胞生存率(S2 細胞系,●)に対する作用を測定した.縦 軸は化合物非処理時における値に対する相対値.横軸は化合物の濃度. Concentration (µg/mL) A ctivity (% of contr ol)

(49)

第 6 節 考察

 本章では,自然免疫制御物質の探索を目的として当研究室で開発したアッセイ系を用い たスクリーニングを行い,賦活化作用を有する Gonytorichum sp. ブタノール抽出物の成分 探索を行った.その結果,新規化合物 gonytolide A-G (11-17) を単離・構造決定した (Figure 30). Gonytolide B (12) Gonytolide D (14) Gonytolide C (13)

Gonytolide E (15) Gonytolide F (16) Gonytolide G (17)

(50)

 Gonytolide A (11) 及び E (15) については絶対配置を含めた構造が決定されたが, gonytolide B (12), C (13), D (14), F (16), G (17) については,平面構造の決定のみで相対絶 対配置の決定に至らなかった.しかしながら gonytolide A-G (11-17) は全てクロマノン骨格 からなる部分構造を有しており,同一の生合成経路から産生されていると考えられるた め,全ての化合物の絶対配置を次のように推測することができる.  第 2 節第 4 項で述べたビスクロマノン骨格を有する noduliprevenone (21) の生合成経路の 考察によると,!-ラクトン環,或いはシクロヘキセン環を有するクロマノン骨格は,アン トラキノンより生合成されると提唱されている (Figure 31).20 即ち,アントラキノンを原料 として酸化的にキノン部分が開裂して I となり,再閉環することで gonytolide C (13) や D (14) の部分構造となる III となる.さらに III のシクロヘキセン環が開環して再度 9 位水酸 基と閉環することで !-ラクトン構造を有した gonytolide F (16) が作られる.この gonytolide F (16) 及び III がそれぞれの組み合わせで二量化することで gonytolide A-E (11-15) が生合成 される.この仮説を基に gonytolide B-G (12-17) の相対絶対配置を推測すると,全ての化合 物において gonytolide A (11) の立体配置は保持されると考えられるので,クロマノン環の 2 位の絶対配置は R 配置であり,9 位は S 配置であると考えられる (Scheme 7).

Figure 31.ビスクロマノン骨格を有する noduliprevenone (21) の構造 Noduliprevenone (21)

(51)

Gonytolide A (11), B (12), E (15) 2R 9S 9S 2R Gonytolide G (17) Gonytolide C (13), D (15) Anthraquinone Scheme 7.Gonytolide 類の推定生合成経路 I II III IV V VI Gonytolide F (16)

(52)

 第 4 節では,本章にて構造決定された gonytolide A-G (11-17) の自然免疫制御作用につい て検討した.その結果,gonytolide A (11) はショウジョウバエに対して自然免疫選択的賦 活化作用を示すことが明らかになった.一方,類縁体である gonytolide B-G (12-17) は活性 を示さなかった.第 5 節では,詳細な構造活性相関研究を目的として,自然免疫賦活化作 用を示した gonytolide A (11) の構造変換を行い,誘導体の自然免疫活性を測定した.その 結果,芳香環,フェノール性水酸基,!-ラクトンを変換した化合物 (24, 25, 18) もそれぞれ 自然免疫賦活化作用を示した (Figure 32). 24 25 18 Figure 32.天然物とその誘導体の自然免疫活性 Gonytolide A (11) Gonytolide B (12) Gonytolide C (13) Gonytolide D (14) Gonytolide E (15) Gonytolide F (16) Gonytolide G (17)

自然免疫賦活化作用

活性なし

(53)

 これらの結果から,活性の発現には 8,8'-ビスクロマノン骨格そのものは重要であるが, 芳香環周辺の置換基や !-ラクトンの存在は重要でないと考えられる (Figure 33).ただし遊 離カルボキシル基を構造中に有する gonytolide E (15) において自然免疫活性が消失してい たことから,活性の発現には極性も重要であると示唆された.この結果は,更なる構造活 性相関研究の足がかりとなると考えられる.今後は必須構造の特定,及び軸不斉の自然免 疫活性への影響を検討するために,例えば上記の条件を満たす化合物 26,27 をそれぞれ 選択的に合成して活性試験を行うことも興味深い (Figure 34). Figure 33.Gonytolide A (11) の構造活性相関研究による考察 8, 8'-ビスクロマノン骨格は必要 芳香環の置換基 R, X は変換可能 !-ラクトン構造は必須でない 27 26 aR aS

(54)

第 2 章

自然免疫賦活化物質 gonytolide A の合成研究

 前章にて,糸状菌 Gonytorichum sp. 抽出物より新規自然免疫賦活化物質 gonytolide A (11) が単離・構造決定された.作用機序解析や構造活性相関研究など更なる研究が望まれる が,天然より得られる gonytolide A (11) は量的な制限があるため,全合成による供給が必 要であるといえる.本章では gonytolide A (11) の全合成を目的に,そのモデル化合物とし て gonytolide A (11) の単量体に相当する化合物 gonytolide F (16) の合成研究を行ったので, その詳細について述べる (Figure 35). Gonytolide F (16) Gonytolide A (11) 2 2' 8 8'

(55)

第 1 節 合成戦略

 Gonytolide A (11) は,2/2' 位に !-ラクトン環とメチルエステルを有する 8,8'-ビスクロマ ノン骨格からなる化合物である.この構造の全合成を行うために,まず単量体に相当する 化合物 gonytolide F (16) をモデル化合物として設定した.なお,gonytolide F (16) の構造中 には 2 個の不斉中心が存在しているが,本研究では炭素骨格の構築を目的とし,立体配置 の制御は今後の課題とした.  Gonytolide F (16) はクロマノン骨格の 2 位に !-ラクトンとメチルエステル,5 位にフェ ノール性水酸基,7 位にメチル基が結合した構造である.そこで !-ラクトン及びメチルエ ステルの形成はクロマノン骨格構築後に行う方針とした.メチルエステルは 28 の 13 位水 酸基の酸化および O-メチル化から得られる.!-ラクトンは 29 のカルボキシル基と 9 位水 酸基を脱水縮合させることで形成することができると考えられる.カルボン酸 29 は 30 の二重結合の酸化的開裂により得られると考えられる.クロマノン環 30 はヘプテノン 31 と芳香環部分 33 の環化カップリング反応を用いることとした.22 ヘプテノン部分構造 31 はマンニトールを酸化開裂して生成したアルデヒド 32 に対し,グリニャール試薬による 増炭反応により合成を行う.芳香環部分 33 はオルシノールを原料に Friedel-Crafts アシル 化反応で合成できると考えられる.(Scheme 8).

(56)

Gonytolide F (16) 28 33 1,2:5,6-Di-O-isopropyliden-D-mannitol Orcinol Scheme 8.Gonytolide F (16) の逆合成解析 31 2 5 7 32 30 29 13 9

(57)

第 2 節 合成研究

 前節の逆合成解析に従い,まずヘプテノン 31 の合成を行った.市販の原料に

1,2:5,6-di-O-isopropyliden-D-mannitol を用いてこの vic-ジオールを過ヨウ素酸ナトリウムにより酸化開

裂を行い,さらに得られたアルデヒドに対し 3-butenylmagnesium bromide を作用させ 34 を ジアステレオマー混合物として得た.このジアステレオマー混合物はシリカゲルカラムク ロマトグラフィーでは分離が困難であったことから,混合物のまま以降の反応に用いるこ ととした.化合物 34 に対し p-methoxybenzyl chloride を用いて 3 位水酸基の保護を行っ た.その際,後処理に塩酸を用いるとアセトナイドの脱保護が進行し,1,2-ジオール 35 を 得ることができた.目的のヘプテノン 31 を合成するためにはジオールの 2 級水酸基のみ 酸化する必要があるため,TBSCl を用いて 1 級水酸基のみ選択的に保護し,36 を得た. その後,36 の 2 級水酸基を Swern 酸化によりカルボニル基として 37 を得た.ここで TBS 基は,クロマノン環構築反応における塩基性条件下に対し不安定であると推測されたの で,3 M HCl-MeOH により脱保護した後に,より安定な MOM 基で再度保護し 38 を得た (Scheme 9).

(58)

 続いて,クロマノン環合成のための芳香環側の基質となる 33 の合成を行った.化合物 33 は市販されているオルシノールを原料に,塩化アセチルを用いた Friedel-Crafts アシル 化により合成した.  こうして得られた 2 個の基質 33, 38 を環化させるため,カテコールとピロリジン存在 下,トルエン溶媒中で加熱還流させ,クロマノン環を形成した 39 を得た.22 化合物 39 はジ アステレオマー混合物として得られたが,各種カラムクロマトグラフィーによる分離は困 難であったため混合物の状態のまま以後の反応を進めることとした.化合物 39 の二重結 合に対し四酸化オスミウムによるジヒドロキシル化を行い,続けて過ヨウ素酸ナトリウム による酸化開裂によりアルデヒド 40 を得た (Scheme 10). 1,2:5,6-di-O-isopropyliden-D-mannitol 35 38 34 1) NaIO4, NaHCO3 aq,  CH2Cl2, rt 2)  THF, rt PMBCl, NaH, TBAI, DMF, rt 1) 1% HCl-MeOH, rt 2) MOMCl, DIPEA,  CH2Cl2, rt 24% (2 steps) 78% 87% (2 steps) Scheme 9.化合物 38 の合成 36 37 TBSCl, Et3N, DMAP, CH2Cl2, rt DMSO, (COCl)2, Et3N, CH2Cl2, -80 ˚C→-40 ˚C 98% 95% then HCl

(59)

40 39 33 38 pyrrolidine, catechol, toluene, 130 ˚C 1) OsO4, NMO, H2O,  acetone, MeCN, rt 2) NaIO4, THF-H2O (2:1),  rt H2, Pd/C, MeOH, rt 6M HCl-THF (1:1), rt 24% 21% (3 steps) 70% (2 steps) AcCl, AlCl3 PhCl, 70 ˚C 61% Orcinol 9 45 44 Scheme 10.化合物 28 の合成 28 NaClO2, 1,4-dioxane, 1,3,5-C6H3(OEt)3, NaH2PO4aq, rt 9 41 13

(60)

 化合物 40 に対し,亜塩素酸ナトリウムを作用させることでカルボン酸 41 を得ようとし た.亜塩素酸ナトリウムによる酸化では,反応系内に次亜塩素酸が発生し,電子豊富な炭 素原子は塩素化されてしまうことが知られている.23 一般に塩素化を防ぐため 2-methyl-2-butene を捕捉剤として使用するが,23 本反応では全ての次亜塩素酸を捕捉しきれずに 41 の 一部の芳香環炭素が塩素化された 42, 43 が得られた (Scheme 11).そこで,この塩素化を 防ぐため,より電子密度が高いと考えられる 1,3,5-trimethoxybenzene を捕捉剤として使用 した.すると 2-methyl-2-butene を使用したときと比較して 42, 43 の生成を抑えることがで きた.さらに,1,3,5-triethoxybenzene を使用したところ,目的のカルボン酸 41 のみが得ら れた.このような 1,3,5-triethoxybenzene を用いた方法は化合物 40 だけでなく他の電子豊富 な炭素原子を有する化合物の酸化反応に対しても有効であると考えられる.なお,1,3,5-triethoxybenzene 及びその塩素化物は極性が非常に低く,反応後にシリカゲルカラムクロマ トグラフィーを用いて生成物のカルボン酸と容易に分離することが可能である.  続いて !-ラクトンを構築するために 41 の 9 位 PMB 基の脱保護を接触還元反応により 試みたところ,PMB 基が脱保護された 44 と,さらに !-ラクトン化が進行した 45 の混合 物が得られた.この 44 と 45 の混合物を 6M HCl-THF (1:1) 条件に付したところ,!"ラク トンの閉環反応,及び MOM 基の脱保護が収率よく進行し 28 を得た (Scheme 10). 9 41:X1=X2=H 42a:X1=H, X2=Cl 42b:X1=Cl, X2=H 43:X1=X2=Cl 2-Methyl-2-butene 1,3,5-C6H3(OEt)3 1,3,5-C6H3(OMe)3 41:42:43 0:4:1 5:2:1 1:0:0 scavenger NaClO2, 1,4-dioxane, NaH2PO4aq, scavenger, rt 40 Scheme 11.亜塩素酸酸化における捕捉剤の検討

(61)

 最後に 28 の 13 位水酸基の酸化を酸化することでメチルエステルの構築を試みた.しか しながら,種々の酸化条件を検討したが,いずれの酸化反応条件においてもカルボン酸を 得ることができなかった (Scheme 12). Oxidation Decomposition 1) Swern ox. 2) NaClO2 3 4 2 1 Entry Result Decomposition Decomposition 1-MeAZADO+BF4-,24 NaClO2 No Reaction 1) DMP 2) NaClO2 PDC, DMF Condition Scheme 12.化合物 28 の酸化条件検討 13 13 46 28

(62)

第 3 節 考察

 本章では自然免疫賦活化作用を示す gonytolide A (11) の全合成を目的として,その単量 体に相当する化合物 gonytolide F (16) の合成研究を行った.その結果,平面構造のみであ るが,!-ラクトンを持つクロマノン骨格の合成に成功した.しかしながら,13 位メチルエ ステルの構築において,アルコールからカルボン酸への酸化反応が良好に進行せず,モデ ル化合物 gonytolide F (16) の合成は達成できなかった.過去の研究では,25 4 位にカルボニ ル基ではなく MOM 基で保護した水酸基を有する化合物 47 に対して,DMF 溶媒中で PDC を作用させることで 13 位水酸基をカルボキシル基へと酸化することに成功している (Scheme 13).よって 28 の酸化反応が進行しない原因として 4 位カルボニル基の存在が挙 げられる.  これらの結果から,gonytolide F (16) の合成を達成するためには,クロマノン骨格を形 成後,4 位カルボニル基を還元した後に特異的な条件で除去できる保護基 (SEM, Troc 等) を使用する方法が考えられる.4 位水酸基およびフェノール性水酸基を保護した後に,本 研究と同様の手法を用いて !-ラクトン,メチルエステルの構築を行う.その後,保護基 を除去し,MnO2 を用いて 4 位ベンジルアルコールをケトンへと酸化することで gonytolide F (16) が合成できると考えられる (Scheme 14). Scheme 13.過去の研究における酸化反応 PDC, DMF, rt 41% 47 48 4 4 13

(63)

 また,本研究において gonytolide F (16) の合成研究を行ったが,最終的に gonytolide A (11) の全合成を達成するためには,クロマノン環の二量化を行わなければならない.この 二量化については,gonytolide F (16) の 8 位にハロゲン原子を導入し,鈴木-宮浦カップリ ング26 や Ulmann カップリング27 により行うことができると考えられる.ただしこれらの カップリング反応では gonytolide A (11) の不斉軸については制御できないので,カップリ ング後に生じるジアステレオマーを分離することで単一の化合物を得る必要がある (Scheme 15). カルボニルの 還元,保護 脱保護 MnO2 酸化 Scheme 14.推定合成経路 30 49 軸不斉について分離 する必要あり Gonytolide F (16) Gonytolide A (11) 51 16 50 !-ラクトン,メチル エステルの構築 ハロゲン化 8 Scheme 15.Gonytolide F (16) の二量化における考察 52 カップリング

(64)

結語

 自然免疫とは全ての多細胞生物が普遍的に有する免疫機構であり,遺伝子の再編を伴わ ない感染性異物に対する即時的な免疫応答を担っている.ヒトにおいては異物の一次排除 機構の他にガン免疫や敗血症,獲得免疫の成立にも関わっていることが知られており,そ の重要性は極めて高いといえる.しかしながら,自然免疫を直接制御するような化合物は ほとんど同定されておらず,自然免疫制御作用を有する低分子化合物の探索を行うことは 有意義であるといえる.微生物は自然免疫により排除される立場にあり,二次代謝産物に 自然免疫を制御する物質を産生していると考えられるため,自然免疫制御物質の探索源と して非常に有用である.  本研究ではスクリーニングにより見出された自然免疫賦活化作用を有する Gonytrichum sp. 抽出物について,その活性成分の探索を目的とした.その結果,自然免疫選択的賦活 化作用を示すビスクロマノン骨格を有する新規化合物 gonytolide A (11) を単離・構造決定 した.さらに,Gonytorichum sp. 抽出物から gonytolide A (11) の類縁体である gonytolide B-G (12-17) が得られた.また gonytolide A (11) を化学変換することで 3 種の化合物 18, 24, 25 を得た.これらの化合物の自然免疫制御作用を評価した結果,自然免疫賦活化作用を発現 するためには gonytolide A (11) の構造中に含まれる 8,8'-ビスクロマノン骨格が必要である ことが示唆された.  自然免疫賦活化作用を有する Gonytolide A (11) は自然免疫応答機構の解析のための分子 プローブや新規自然免疫医薬品のリード化合物として更なる研究が期待される.しかし天 然より得られる gonytolide A (11) は量的に制限があるため,全合成によって供給をする必 要がある.そこで本研究では gonytolide A (11) の全合成を目標として,まず単量体にあた る gonytolide F (16) の合成研究を行った.その結果,2 位に !-ラクトンを有するクロマノ ン骨格の構築は成功した.しかしメチルエステルへの酸化反応が進行せず,gonytolide F (16) の合成は達成できなかった.今後,4 位カルボニル基を水酸基に変換した化合物で 13

(65)

位水酸基の酸化反応を検討する必要がある.  以上のように本研究では糸状菌 Gonytorichum sp. から自然免疫賦活化作用を有する新規 化合物 gonytolide A (11) を単離・構造決定した.また構造活性相関研究の結果,自然免疫 制御作用発現に必要な構造が推測された.本化合物は,自然免疫作用機序解析のための分 子プローブや新規医薬品のリード化合物として大いに有用であると考えられる.今後さら なる構造活性相関研究や合成研究が進められ,自然免疫をターゲットとした新規医薬品開 発の一助となることを期待する.

Table 6. Gonytolide E (15) の NMR データ Position 13 C (ppm) a 1 H (ppm) a 2 84.1 3 39.6 2.96 (1H, d, J = 12.8 Hz) 2.92 (1H, d, J = 12.8 Hz) 4 193.7 4a 106.1 5 160.7 6 110.4 6.45 (1H, s) 7 149.9 8 113.7 8a 156.3 9 80.9 4.76 (1H, dd, J = 11.2, 4.7 Hz) 10 22.0 2
Table 7. Gonytolide F (16) の NMR データ Position 13 C (ppm) a 1 H (ppm) a 2 84.0 3 39.4 3.12 (1H, d, J = 16.7 Hz) 2.95 (1H, d, J = 16.7 Hz) 4 193.0 4a 105.6 5 161.7 6 108.4 6.40 (1H, s) 7 151.6 8 111.0 6.38 (1H, s) 8a 159.0 9 80.9 4.85 (1H, dd, J = 8.0, 5.9 H

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