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伝統文化「フラ」をめぐる教えと学びに関する実証的研究

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Academic year: 2021

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(1)

伝統文化「フラ」をめぐる教えと学びに関する実証

的研究

著者

安住 陽子

2

学位授与機関

Tohoku University

学位授与番号

教情博第21号

URL

http://hdl.handle.net/10097/59740

(2)

学位の種類 学位記番号

学位授与年月日

学位授与の要件

研究科・専攻 学位論文題目

論文審査委員

あ ずみ よう

安住陽

こ子

博士(教育情報学)

教情博第

21

平成 25 年 3 月 27 日 学位規則第 4 条 1 項該当

東北大学大学院教育情報学教育部(博士課程後期 3 年の課程)

教育情報学専攻

伝統文化「フラ」をめぐる教えと学びに関する実証的研究

(主査)

教授北村勝朗

教授熊井正之

准教授中島

<論文内容の要旨>

本論文は,フラの教え手と学び手の体験に焦点、を当て,教授場面における教え手の「信念」を 解明しつつ,伝統文化の教えと学びの構造を明らかにすることを目的とした研究である。本研究 では,教育基本法の改正による「伝統文化教育」の意味を問い直し,フラに焦点を当てる研究の 枠組みを論じた上で,フラの学びの場を分析対象として伝統文化の教えと学びの構造の解明を試 みている。 本論文は 3 部, 6 章によって構成されている。第 I 部において,伝統文化教育を考察対象とした 本研究の意義を確認し基本概念を整理した上で,先行研究の検討を行い,伝統文化を学ぶ教育的 な意味を問い直す重要性について考察を行っている。第 E 部において, 4 つの事例研究を取り上げ, 教え手,学び手,及び教え学ぶ場の視点、から伝統文化教育の構造として問い直すことで,伝統文 化教育に原理的基盤を位置づけると同時に,伝統文化の学びに内包される教育的意味の提示と, 伝統文化の教育を学校現場において展開する上での実践的な課題の提示を試みている。第 E 部に おいて,本研究のまとめとして文化の意味の視点から聞い直す伝統文化教育研究の課題について 論じている。 まず,第 I 部では第 1 章において教育基本法の改正によって学校教育現場に伝統文化教育が位

(3)

置づけられている現状とそこでの課題性を指摘した上で,伝統文化の教育を教えと学びにおける 教育的な意味を理論的に考究する本研究の意義について論じている。こうした作業をふまえ,第 2 章では,本論文で用いる「場J r信念 J r 暗黙知 J r伝統と文化」の 4 つの基本的概念について整 理を行っている。第 3 章では,前章において再定義された概念を確認しながら伝統と文化に関す る先行研究の整理を行っている。そこでは知識,熟達化,信念,及び経験知を手がかりに,伝統 と文化の教えと学びを学術的に考究する上で,認識論的技能観が重要な理論的枠組みとして有効 である点が示されている。第 4 章では本研究の方法論としての質的研究法の方法論的妥当性と信 頼性について論じている。第 5 章では, 4 つの事例研究を考察対象とし,フラの教え手の信念,教 え学ぶ場の機能,学び手の体験,及び教育現場でのフラの教育のそれぞ、れのテーマについて論じ ている。そこでは,フラの教え手の信念には,家族性,尊厳性,連続性の要素が含まれているこ と,フラの学びの場の機能には,家族性,継承性,指導観,学習観,自己承認といった要素が含 まれている点が明らかにされている。 以上の分析をふまえ,終章の第 E 部第 6 章において次の 3 点を導いている。第 1 に,伝統文化 を学校教育現場に導入する際に強調される郷土愛に関し,フラの教え手の信念の中心に家族性が あり,フラという踊りを学ぶことを通してその関係性を学んでいく点を確認している。また,こ の家族性が教え手と学び手との関係性に限定されるものでなく学び手同士の関係性や学び手の学 習観としての道徳性として形成されていく発展可能性をもった概念である点を明らかにしている。 第 2 に,伝統文化の教え手の信念や学びの場が,教え手と学び手が共有する世界観の中で相互関 係をもちながら創造されるものである点を明らかにしている。これにより,教え手と学び手がフ ラを取り巻く経験や感覚を共有できる時間や空間を構築しているところとしての「場」の再定義 がなされている。第 3 に,フラの学びにおいて教え手は踊りの形そのものを教えているのではな く,踊りを教えるという文化的実践を通してその文化におけるものの見方や考え方,及び関係性 を身体を通して教えている点である。そこから,教育基本法に示されている「伝統文化を尊重」 すること r我が国と郷土を愛する」ことが,学習観,道徳観の変容をもたらす点を視野に入れた 学びの展開が重要である点を明らかにしている。こうした分析から,社会集団に共有される時間 的連続性の中で育まれた家族性が文化的実践を通して学ばれることに伝統文化の学びを位置づけ 体系化している。

<論文審査の結果の要旨>

教育基本法の改正によって学校教育現場に伝統文化の教育が位置づけられているものの,何を

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どのように教え,その教育的な意義は何か,といった伝統文化の学びに関する学術的研究の蓄積 は少なく,また教育現場における実践にあっても模索状態が続いている。そうした問題状況の中 で,本論文は,伝統文化の学びの意味を聞い直すことで,学校教育における伝統文化の教育に理 論的基盤を位置づけると同時に,教え手と学び手の関連性の中で、伝統文化の学びの体系化を行っ た。それにより,動きや所作の体験を通した世界観に触れる活動として展開されがちな学校教育 現場の伝統文化の教育を,教え手の信念への関わり方の観点、から検討し,新たな提言を行ったも のである。 論文審査の結果,以下の点が指摘できる。 第 l に,学校教育における危急の課題である伝統文化の教育を,教え手と学び手の信念と学習 観の視点から検討し,伝統文化の学びとして体系化する本論文の視点は独創的であり,先駆的研 究として評価できる。フラの学びにおいて教え手が踊りの形そのものを教えるのではなく,踊り を教えるという文化的実践を通してその文化におけるものの見方や考え方,及び関係性を身体を 通して教えていることを論じた点は今後の伝統文化の教育研究における新たな視点、を提示したも のとして意義がある。 第 2 に,伝統文化の学びを単に理論的に考究するのではなく,実際に教え学ぶ場における実践 を事例として取り上げ,考察対象として論じていることが評価できる。それにより,教え手と学 び手の体験の詳細について深く分析が行われており,今後,伝統文化教育の現場における実践に 対し大きな寄与が期待できる重要な提案が行われた点で評価される。 第 3 に,伝統文化の学びを学校教育現場における教育との関連性の中で論じ,具体的な事例に 基づく学術的な考究を行っている研究の蓄積が極めて少ない現状の中で,フィーノレドに深く入り 込み,具体的な事例に基づき実証的に検討を行っている点が評価される。本論文の成果は,学校 教育現場における伝統文化の教育について,その教育的意味を検討する上で一つの視座を占める ものとして評価される 他方,本論文はいくつかの課題を残している。 第 1 に,伝統文化の学びをフラの教授場面における教え手と学び手の発話に注目し,参与観察 とインタビューを用いた厚みのある質的分析により体系化している点で評価されるが,それを学 校教育現場にどのように具体的に展開していくか,十分に示されてはいない。今後,より具体的 かっ詳細な学校教育現場の実践において考究することが求められる。 第 2 に,本研究では, 4 つの事例を分析対象とし,一人ひとりの体験が考察対象となっているが, その質的分析の方法論については解決すべき課題も残されている。かなり入念に先行研究をふま え研究手法が徴密に設計されているものの,今後の更なる方法論的な検討が求められる。 第 3 に,構築された伝統文化の学びに関する知見がどこまで普遍的な妥当性をもつものか,今

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後,多角的に検討することが重要な課題として残されている。 しかし,本論文を全体としてみれば,個々の対象者の体験を詳細に集め,また実際の伝統文化 の学びの場面におけるフィールド調査と徴密な質的分析作業を重ね, 4 つの事例研究の一つひとつ を着実に展開しており,伝統文化の教育における学びのモデルを構築するという本論文のねらい はほぼ成功していると判断できる。 よって、本論文は博士(教育情報学)の学位論文として合格と認める。

参照

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