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共通教育課程における「国際共修ゼミ」の開設 : 留学生クラスとの合同による多文化理解教育の試み

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(1)

共通教育課程における「国際共修ゼミ」の開設 :

留学生クラスとの合同による多文化理解教育の試み

著者

佐藤 勢紀子, 末松 和子, 曽根原 理, 桐原 健

真, 上原 聡, 福島 悦子, 虫明 美喜, 押谷 祐

雑誌名

東北大学高等教育開発推進センター紀要

6

ページ

143-156

発行年

2011-03

URL

http://hdl.handle.net/10097/57549

(2)

1 .はじめに

キャンパスの国際化の必要性が唱えられて久しい が,留学生の受入数が増えている割には日本人学生と 留学生の接触・交流の場が十分に設けられていない大 学が少なくない.特に学生が専門教育課程に進む前の 一般教養教育の段階――共通教育課程において,その 傾向は著しく,東北大学も例外ではない. 本稿では,2009年度に東北大学の「全学教育」1) 程の中のカレントトピックス科目2)として開設した 「国際共修ゼミ」というサブタイトルを持つ一群の授 業科目を取り上げてその開設の経緯と概要を報告し, 日本人学生と留学生がともに参加して交流しつつ学ぶ この授業の成果と改善を要する点について検討する.

2 .「国際共修ゼミ」開設の経緯

2.1 全学教育課程側のニーズ 東北大学全学教育においては,2004年度まで留学生 対象科目の中に「日本語」と並んで「日本事情」とい う授業科目があり,日本の歴史,文学,社会などに関 する内容の授業が行われていた.その中で,日本人学 生がボランティアで授業に参加していたケースもあ り,非公式ながら日本人学生も参加できる国際共修の クラスが存在していたと言える.しかし,「日本事情」 が廃止されてからはそのような授業はなくなった. その一方で,近年,留学生,特に交流協定校からの 交換留学生(特別聴講学生)が増えるにつれ,単位取 得可能な全学教育「日本語」科目の受講者が増加し, クラス定員を大幅に超える状況が出てきた.「日本語」 科目の本来の対象である正規学部留学生の学習環境の 保持のために何らかの措置が必要となってきた. さらに,東北大学の専門課程進学前の学生において は,外国人留学生との接触・交流の機会が必ずしも多 くないことが報告されている.2007年度に実施された 東北大学学生生活実態調査3)では,学部生は大学院学 生に比べて留学生と関わる機会が少なく,国際交流の 機会が「十分ある」「ある」と回答した学部生は全体 の41%で,「あまりない」「ほとんどない」の58%を下 回っている(大学院生では,それぞれ55%,44%).「授 業内で交流」した経験を持つ学部生は全体の27.5%に とどまり,「友人として交流」したことのある学部生 も17%に過ぎない.一方,今後「授業内で交流してみ たい」学生は21.3%,「友人として交流してみたい」 学生は45.8%に上っている.授業での出会いが友人と しての交流のきっかけにもなりうることを考えると, 国際共修の授業,しかも受講者が相互に面識を持つこ とができる少人数の授業が必要とされていると言えよ う. 以上のことから,全学教育課程の中に日本人学生と 留学生が交流しながら学ぶことのできる授業科目を開 設し,アカデミックな場面での国際交流を促進し,同 時に交換留学生の受け皿を作ることで正規学部留学生 の学習環境を改善することが望ましいと考えられた.

報  告

共通教育課程における「国際共修ゼミ」の開設

―留学生クラスとの合同による多文化理解教育の試み―

佐 藤 勢 紀 子

1)*

,末 松 和 子

2)

,曽 根 原 理

3)

,桐 原 健 真

4)

,上 原   聡

1)

, 

福 島 悦 子

1)

,虫 明 美 喜

5)

,押 谷 祐 子

5) 1 )東北大学高等教育開発推進センター, 2 )東北大学経済学研究科, 3 )東北大学学術資源研究公開センター 4 )東北大学文学研究科, 5 )東北大学国際交流センター *)連絡先:〒980-8576 宮城県仙台市青葉区川内41 高等教育開発推進センター [email protected]

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2.2 日本語教育課程側のニーズ 一方,全学の留学生の日本語補習を目的とする非正 規課程「外国人留学生等特別課程」4)(以下,特別課程) でも,日本人学生との共修授業の実現が長年の懸案と なっていた. 特別課程でも,一部の授業科目で,日本人学生のボ ランティア参加を募り,共修授業を行った実績がある. 特に全学教育「日本事情」廃止後は,「中級後期日本 語応用」(略称P 4 ),「上級後期日本文化演習(多文 化コミュニケーション)」(MC 6 )の授業において日 本人学生に呼びかけ,留学生の日本語運用トレーニン グ,また多文化間でのプロジェクト達成への参加協力 を求めた.それらの授業の実施を通じて,留学生のコ ミュニケーション力向上に日本人学生の参加がプラス にはたらき,また日本人学生にとっても学ぶところが 予想をはるかに超えて大きいことがわかり,日本人学 生の継続的受講を促す意味でも日本人が単位取得可能 な形での共修を実現したいという要望が出てきた. また,前項でも触れたが,東北大学では近年海外の 協定校からの短期受け入れ( 6 ヶ月〜 1 年)の交換留 学生が急増しつつあり,その中の日本語既習者も増加 傾向にあるという事情がある.たとえば,1996年度に 始まった短期留学生受入プログラムJYPE(Junior  Year Program in English)では,ここ数年,50名の 定員を大幅に超える状況が続いている.JYPEの中の 日本語授業も最初は中級前期までの 3 段階を設けてい たのが,その後既習者の増加に応じて中級後期レベル のコースも開設された.近年では,さらに来日時に上 級レベルの日本語能力を持つ学生も出てきており,中 上級レベルの交換留学生の間で日本語・日本文化関係 の単位が取れる授業の増設への要望が高まっている. 特別課程では多数の中上級の日本語・日本文化演習科 目を提供しているが,上記のJYPE学生対応のクラス を除いては学生が単位を取得することができず, JYPEに属していない部局直接配置の交換留学生は特 別課程の授業を受けても単位取得はできない仕組みに なっている.このような状況から,年々増加している 交換留学生(特別聴講学生)の学習環境改善のために も,特別課程の中上級の授業を単位取得可能な形にす ることが強く求められていた. 2.3 基礎ゼミ・特別課程の合同開講の実現 上記の状況をふまえて,特別課程の運営を担当する 高等教育開発推進センター日本語研修室では,全学教 育を統括する学務審議会の委員に対し,共修授業実現 に向けて働きかけを行ってきた.その結果,2008年度 に,特別課程の上級後期日本文化演習の授業のうち 3 科目を全学教育基礎ゼミ5)と同時開講とし,それぞれ 合同で行うという形で,全学教育クラスと特別課程ク ラスの合同開講が実現した6).具体的には,下記の 3 科目である. ・基礎ゼミ(030)  演習:「日本文化」を知る(担当:桐原健真)   特別課程MH 6 (上級後期日本文化演習   (近代思想史))と合同開講 ・基礎ゼミ(165)  『源氏物語』読み比べ(担当:佐藤勢紀子)   特別課程CL 6 (上級後期日本文化演習   (古典文学入門))と合同開講 ・基礎ゼミ(167 )   古典資料の調べ方(担当:曽根原理)    特別課程PH 6 (上級後期日本文化演習   (前近代思想史))と合同開講 これらの合同開講の試みは,国際理解教育,多文化 理解教育の推進という意味では意義があったと考えら れるが,その一方で,次のような問題もあった. 1 )基礎ゼミは初年次学生のみを対象とする転換教 育を趣旨とした授業であるため,特別聴講学生は 単位取得ができない. 2 )基礎ゼミは 1 セメスターの月曜日 3 , 4 , 5 講 時,木曜日 5 講時のいずれかに開講することに なっており,開講セメスター,開講時間帯が限定 される. 3 )基礎ゼミを受講する学生は大学入学直後の 1 年 次学生に限られる.一方,特別課程の受講者は, 特別聴講学生,学部・大学院研究生,大学院生な ど,学部 3 年生以上であることから,日本人学生 と留学生の間の世代間ギャップが大きい.

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以上のようなことから,基礎ゼミと特別課程との合 同開講ではなく,他の形を考える必要が出てきた. 2.4 展開科目・特別課程の合同開講の実現 そこで,基礎ゼミ以外の全学教育科目と特別課程科 目の合同開講について検討した.その結果,全学教育 科目のうち展開科目に属するカレントトピックス科目 であれば,特別聴講学生の単位取得が可能であり,開 講時間帯枠も基礎ゼミより大きく( 1 セメスター火・ 金の 5 講時, 2 セメスター月・火・木・金の 5 講時), 受講者も学部 1 年生が中心ではあるがそれに限定され ないなど,条件がよいことがわかり,2009年度にはカ レントトピックス科目と特別課程の合同開講を行うこ とになった. カレントトピックス科目としての共修授業開講につ いて,当初懸念されたのは,次の 2 点であった. 1 )カレントトピックス科目は一般に多人数クラス となっており,少人数での意見交換,共同作業を めざす共修ゼミにふさわしいクラス規模が保証さ れるかどうか. 2 )カレントトピックス科目で本格的に特別課程と の合同開講を行うにあたり,特別課程で非常勤講 師が担当している授業も合同開講としたいが,従 来どおり特別課程からの手当によって全学教育の 授業を担当することが可能であるかどうか. これらの問題について検討した結果,当面,授業科 目ごとに定員を示して人数制限を行うとともに,カレ ントトピックス科目の一つの授業について二つ以上の 特別課程の授業を対応させる形で合同開講を行うこと となった.すなわち,カレントトピックスのクラスの 中にさらに二つのクラス(Aクラス,Bクラス)を設け, それぞれを特別課程の別個の授業と合同開講にし,学 生にはそのいずれかを選択させるという方式である. このような方式をとることによって,上記問題点の 1 ) については,(A・Bクラスそれぞれが)共修ゼミに適 切なクラス規模を保ちつつ,合計ではカレントトピッ クス科目として不自然でない受講者数が得られるこ と, 2 )については,常勤の教員が非常勤講師と組ん で代表してカレントトピックス科目を担当できるよう になることで,問題が解消されると考えられた.

3 .開講クラスと受講状況

表 1 および表 2 に,2009年度と2010年度に開講した 「国際共修ゼミ」の授業科目名,開講セメスターおよ び担当教員を示す. 表 1 に示したように,2009年度には全学教育カレン トトピックス科目として 3 科目 5 クラスを開講した. 各クラスはさらにA・Bの 2 クラスに分かれ,特別課 程の 9 科目11クラスと組み合わせる形で授業が行われ 全学教育 授業科目名 セメスター クラス 授業科目名 担当教員特別課程 日本文化を考える ―国際共修ゼミ― 1 A BC 4 末松 和子 B ML 6 虫明 美喜 日本文化を考える ―国際共修ゼミ― 2 A JR 6 佐藤勢紀子 B CE 4 末松 和子 世界の中の日本 ―国際共修ゼミ― 2 A JF 6 福島 悦子 B MC 6P 4 押谷 祐子虫明 美喜 日本の思想と歴史 ―国際共修ゼミ― 1 A PH 6 曽根原 理 B MH 6 桐原 健真 日本の思想と歴史 ―国際共修ゼミ― 2 A PH 6 曽根原 理 B MH 6 桐原 健真 全学教育 授業科目名 セメスター クラス 授業科目名 担当教員特別課程 日本文化を考える ―国際共修ゼミ― 1 A BC 4 末松 和子 B MH 6 桐原 健真 日本文化を考える ―国際共修ゼミ― 2 A JR 6 佐藤勢紀子 B ― 末松 和子 世界の中の日本 ―国際共修ゼミ― 2 A MH 6 桐原 健真 B MC 6P 4 押谷 祐子虫明 美喜 世界の中の日本 ―国際共修ゼミ― 2 A JS 4 上原  聡 B JF 6 福島 悦子 日本文化の伝統と 現代 ―国際共修ゼミ― 1 A PH 6 曽根原 理 B MH 6 虫明 美喜 日本の思想と歴史 ―国際共修ゼミ― 2 PH 6 曽根原 理 BC 4:中級後期日本文化演習(ビジネス・コミュニケーション), CE 4 :中級後期日本文化演習(キャリア支援),JF 6 :上級後 期日本文化演習(映像に見る言葉と文化),JR 6 :上級後期日 本文化演習(日本研究ゼミ),JS 4:中級後期日本文化演習(日 本の歌),MC 6 :上級後期日本文化演習(多文化コミュニケー ション),MH 6 :上級後期日本文化演習(近代思想史), ML 6 :上級後期日本文化演習(近現代文学),P 4 :中級後期 日本語応用, PH 6 :上級後期日本文化演習(前近代思想史) 表 1  2009年度に開講した国際共修ゼミ 表 2  2010年度に開講した国際共修ゼミ

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た.また,2010年度にはカレントトピックス科目とし て 4 科目 6 クラスを開講し,特別課程 9 科目11クラス との組み合わせで授業が行われた(表 2 ). 2010年度後期開講「日本文化を考える」の中のBク ラスは英語で授業を行っているため,特別課程のクラ スと合同にはなっていないが,特別聴講学生が多数参 加しており,国際共修のクラスとなっている. また,「世界の中の日本」の授業のBクラスが特別 課程の二つのクラス(P 4 ,MC 6 )と合同開講になっ ている例が各年度に一つずつある.これらは本来別個 の授業のクラスであるが,共修ゼミ開設以前からほと んどの部分を合同で行っていたため,ともにBクラス と合同開講ということにしたものである. 次に,各クラスの受講者数および「国際共修ゼミ」 受講者数の総計(のべ受講者数)を表 3 と表 4 に示す. 全学教育カレントトピックス科目の受講者について は,日本人学生と留学生の内訳を示す.カレントトピッ クス科目受講者の留学生には正規の学部生と特別聴講 学生が含まれる.一方,特別課程の受講者は留学生も しくは外国人研究者で,主に研究生,大学院生,日本 語研修コース研修生などで構成されている.表 3 ・表 4 より,2009年度,2010年度ともに「国際共修ゼミ」 ののべ受講者数が250名を超えていることがわかる. 日 本 人 学 生 の 全 体 に 占 め る 比 率 は,2009年 度 は 37.5%,2010年度は33.9%となっている. なお,2010年度には,宮城県の高大連携事業7)によ り,「国際共修ゼミ」全体で仙台市内の高校から10名 の高校生を受け入れた.高校生については成績評価は しないが,受講者の一部と考え,日本人学生の数に含 め,括弧書きで人数を示した.

4 .授業の概要

本節では,「国際共修ゼミ」の授業の概要を示す. 紙幅の関係ですべての授業について報告することがで きないため,2010年度前期に開講した二つの授業科目 ――「日本文化を考える―国際共修ゼミ―」(BC 4 , MH 6 に対応,末松・桐原担当)および「日本文化の 伝統と現代―国際共修ゼミ―」(PH 6 ,ML 6 に対応, 曽根原・虫明担当)をとりあげ,その概要を紹介する. 「全学教育シラバス」にあらかじめ掲載した当該授 業のシラバスは,表 5 ・表 6 のとおりである. 他の国際共修ゼミでも同様であるが,シラバスの中 の「 1 .授業科目」から「 3 .学習の到達目標」の部 分は,それぞれ二つの性格を異にするクラスの内容を 反映させて書くのに苦慮した.結果として,やや曖昧 な書き方にならざるをえない面もあったが,「国際共 全学教育 特別課程 計 科目名 受講者数 科目名 受講者数 日本人 学生 留学生 留学生等 日本文化を考える ―国際共修ゼミ― 17 10 BC4 21 53  ML6 5 日本文化を考える ―国際共修ゼミ― 11 11 JR6 8 58 CE4 28 世界の中の日本 ―国際共修ゼミ― 37 12 JF6 13 91 P4 22 MC6 7 日本の思想と歴史 ―国際共修ゼミ― 21 1 PH6 3 29 MH6 4 日本の思想と歴史 ―国際共修ゼミ― 9 5 PH6 3 22 MH6 5 総  計 95 39 119 253 全学教育 特別課程 計 科目名 受講者数 科目名 受講者数 日本人 学生 留学生 留学生等 日本文化を考える ―国際共修ゼミ― 11 6 BC4 14 32 MH6 1 日本文化を考える ―国際共修ゼミ― (5)25 19 JR6 8 52 ― ― 世界の中の日本 ―国際共修ゼミ― 14 6 JS4 21 63 JF6 22 世界の中の日本 ―国際共修ゼミ― 13 1 MH6 9 69 P4 27 MC6 19 日本文化の伝統と現代 ―国際共修ゼミ― (5)16 4 PH6 2 25 ML6 3 日本の思想と歴史 ―国際共修ゼミ― 8 2 PH6 6 16 総  計 (10)87 38 132 (10)257 表 3  2009年度開講国際共修ゼミの受講者数 表 4  2010年度開講国際共修ゼミの受講者数

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科目名 日本文化を考える―国際共修ゼミ― 曜日・講時・教 室 1 セメスタ 火曜日  5 時限 科目群 展開科目 単位数 2 対象学部 全 担当教員・所属 末松 和子,桐原 健真 セメスター 1 セメスタ 1 .授業題目 日本の社会と言語 2 . 授業の目的 と概要  日本人学生と外国人留学生がともに,日本の思想・歴史・コミュニケーションについて学 び,その背景にある日本社会の慣習について 意見交換を行うことを通じて,日本文化を複 眼的に捉え,考察すると同時に,多元的な世 界観を了解していくことを目的とする. 3  .学習の到達 目標 ・日本文化を,歴史やコミュニケーションをふまえつつ比較視野のうちで捉えられるよ うになる. ・異なる言語・文化圏を背景とする者同士が, それぞれのコミュニケーション・スタイル の違いを 認識し互いに配慮しつつ交流で きるようになる. 4 . 授業内容・ 方法と進度 予定 授業の内容・方法と進度予定  初回ガイダンス時に希望をとり,次の 2 つ のクラスに分かれる. A: ビジネス・コミュニケーションを通じて 日本および世界の文化を考えるクラス (約15名)    日本の社会で働くために必要な敬語を中 心とした日本語表現,ビジネス日本語, ビジネスマナー,効果的なプレゼンテー ションの方法を学び,実践に役立つコ ミュニケーション力を身につけると同時 に,日本独特のコミュニケーションと世 界のコミュニケーションの違いについて 考察を深める. B:  近現代(18世紀以降)の日本思想と文化 におけるカレント・トピックを学ぶクラ ス(20名)    1800年以降を10〜20年程度に区切りなが ら文化を中心とした日本の通史を取り扱 う.受講者は,割り当てられた年代に, 自身の出身国や地域で起きた歴史的事件 を紹介し,受講者全体で議論し,また発 表内容をふまえて同時代の日本の歴史に ついて講義する. 5 . 成績評価  方法 平常点は出席,発表,クラス活動への参加,課題提出等の状況によって付ける. 6 . 教科書およ び参考書 7 .その他 ・外国人留学生等を対象とする日本語教育プ ログラムのクラスと合同で行う.使用言語 は日本語.少人数ゼミであるため,カレン ト・トピックス科目としての定員はA・B クラス合わせて35名とする.受講希望者が 多い場合は,初回に行うアンケート調査へ の回答にもとづき受講者を選定する. ・ Bの日本近代の文化と歴史:第 2 回以降の 教室は南キャンパス・文学研究科棟になり ます(詳細は初回に案内します). 科目名 日本文化の伝統と現代―国際共修ゼミ― 曜日・講時・教 室 1 セメスタ 金曜日  5 時限 科目群 展開科目 単位数 2 対象学部 全 担当教員・所属 曽根原 理,虫明 美喜 セメスター 1 セメスタ 1 .授業題目 比較視野からの日本文化理解 2 . 授業の目的 と概要  日本人学生と留学生がともに,あるトピックを中心に日本の思想や文学について学び,ま た意見交換・共同作業を行なうことを通して, 多元的な世界観を了解していくことを目的と する.このことは同時に自らの持つ文化的背 景を再認識することに役立つものとなるだろ う. 3  .学習の到達 目標 ・日本の文化を,思想や文学を学ぶことによって感じ取る. ・日本文化の考察を通じて,自己の出身文化 圏の文化を新しい視点からとらえなおす. ・異なる言語や文化圏を背景とする者同士が, それぞれの違いを認識し,互いに配慮しつ つ交流できるようになる. 4 . 授業内容・ 方法と進度 予定  初回ガイダンス時に希望をとり,次の二つ のクラスに分かれる. A: 前近代(江戸時代まで)の日本思想を学 ぶクラス(約20名)    古代・中世・近世の日本の思想や宗教に ついてテーマを選んで調べ,その内容や, 背景となる歴史について報告し検討す る.また,そこに見られる日本人の意識 や現代日本社会への影響について,意見 交換をしながら考察する. B: 日本の近現代文学を読んで,日本文化を 考えるクラス(20名)    日本の近現代に書かれた文学作品を読み, それに関連した歴史や文化背景について 概説し,参加学生の話し合いなどを通じ て,作品の解釈や時代への考察を行う. それと同時に日本語や日本人,日本文化 などについても考えていく. 5 . 成績評価  方法 平常点および期末レポートにより評価する.平常点は出席,クラス活動への参加,課題提 出等の状況によって付ける. 6 . 教科書およ び参考書 教科書および参考書は教室で指示する. 7 .その他 外国人留学生等を対象とする日本語教育プロ グラムのクラスと合同で行う.使用言語は日 本語.少人数ゼミであるため,カレント・ト ピックス科目としての定員はA・Bクラス合 わせて40名とする.受講希望者が多い場合は, 初回に行うアンケート調査への回答にもとづ き受講者を選定する. 平成21年度に「日本の思想と歴史ー国際共修 ゼミー」を修得し,その際,曽根原クラスで あった者が履修する場合,B(虫明)クラス に配属となります. 表 5  2010年度前期「日本文化を考える」のシラバス 表 6  2010年度前期「日本文化の伝統と現代」のシラバス

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修ゼミ」の「多文化クラス」8)としての特性,すなわ ち,①日本人学生・留学生が共に参加し対等な立場で 交流する授業であること,②異なる言語・文化圏を背 景とする者同士が自他の文化を比較しつつ学ぶ授業で あること,③受講者の意見交換や共同作業を取り入れ た授業であることは明示できていると思われる. 「 4 .授業内容・方法と進度予定」の部分に示した のが,特別課程の二つのクラスとそれぞれ合同で開講 するAクラス,Bクラスのより具体的な概要である. シラバスに字数制限があるため, 2 クラス分の進度予 定まで書き込む余裕がなく,詳細については初回ガイ ダンス,あるいは各クラスに分かれた後に説明するこ とになった.ここでクラスごとに15名から20名という ことで定員を示しているのは,特別課程受講者を中心 に留学生の日本語運用力向上が求められていること, また「国際共修ゼミ」の趣旨として,意見交換や共同 作業を通じて学生同士が交流できることが重要である ことから,十分な学習効果をあげるためには人数制限 が必要と考えられたためである. 「 7 .その他」の欄には,国際共修ゼミの特殊性を ふまえて,留学生の日本語クラスと合同で行うこと, 使用言語は日本語であること9),必要に応じて人数制 限を行うこと,などを記した.これは他の国際共修ゼ ミにも共通する記載事項である.

5 .受講者による評価

5.1 全学教育授業評価 東北大学全学教育課程においては,学期の終わりに クラスごとに受講者による授業評価が実施され,その 結果は後日授業担当教員に通知されるようになってい る.ここでは,前節で授業概要を紹介した2010年度前 期開講「日本文化を考える―国際共修ゼミ―」に対す る受講者の評価を報告する.図 1 は当該授業のA・B 両クラスのうち全学教育での受講者11名による授業評 価の全体的な結果を示したグラフである. 図 1 から明らかなように,出席率に関する回答が他 と変わらない点を除き,すべての評価項目において当 該授業の点数が委員会平均,全体平均の数値を上回っ ており,評価の高さが示されている. 2 クラス合わせ ても32名という小規模なクラスであるため,評価が高 いのは当然かもしれないが,注目すべき結果であると 言える. 5.2 受講者のコメント 次に,授業についての受講者のコメントを紹介し, 国際共修ゼミについて受講者がどのようなことを感 図 1  2010年度前期「日本文化を考える」授業評価集計表グラフ

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じ,また考えたかを明らかにする. 受講者のコメントは,授業で用いたコメント・シ― ト10),学期中に提出させたミニレポート,学期末に行っ たアンケート調査,授業評価シート,期末レポート, 担当教員へのメールなどに記述されたものである.各 コメントの後に,どのクラスの受講者のコメントであ るかを示すために,特別課程授業科目の略号を括弧に 入れて記載する. 例 1 ) JR:    2009年度・2010年度後期「日本文化を考える ―国際共修ゼミ―」Aクラス=JR 6 例 2 ) BC / CE :    2009年度前期・2010年度前期「日本文化を考 える―国際共修ゼミ―」Aクラス=BC 4 , または,2009年度後期「日本文化を考える― 国際共修ゼミ―」Bクラス=CE 4 なお,コメントに見られた誤字や文法的な間違いに ついて,内容が変わらない範囲で修正した部分がある. 5.2.1 日本人学生と留学生の共修 まず,日本人学生と留学生が学びの場を同じくする 共修授業についての感想,意見として,日本人学生, 留学生の双方から,以下のようなコメントがあった. 【日本人学生】 ・留学生の方々とお話しできて,本当によかった.  やはり,日本人と考え方が違い,文化も違うので, いろんなことがわかった.また,少し仲よくなれた のでよかったと思う.  (PH) ・国際共修ゼミということで中国の方々の価値観に触 れられてとても勉強になった.…私だけの価値観だ けでは深められなかった点について,調べられたり 感じたりすることができて,少しは国際的な感覚を 身につけることが出来た気がする.  (PH) ・普段気づかないような日本語のあいまいさを,留学 生の方からの質問・指摘で気づくことができた.   (JR) ・今まで気にも留めなかったことを留学生の意見から 発見できるのはとても楽しく刺激になります. (JS) ・日本のことについて,留学生,外国の方の話を聞く ということから,新たに学んだこと,感じたことな ど,多くのものを得られたと思う.大変有意義な時 間でした.  (PH) ・考え方が意外な所でイメージとずれていたりして, 面白かった.留学生と直に触れ合う機会は限られて いるので,とても有意義だった.  (PH) ・今までこれほどたくさんの外国の方と一緒に何かを するという機会がないので,大変良い経験になりま す.  (BC / CE) ・最初は日本人が参加してよいのか不安でしたが,ちゃ んと日本人にも役割があって安心しました.   (BC / CE) ・日本人として,少しは留学生の方の疑問を解決する ことができたかと.  (JR) ・留学生と交流を持つことができる場であるので,大 切なゼミだと思う.  (JR) ・留学生の人たちとたくさん交流できて楽しかったで す. 2 セメスターでも同じような授業をとりたいと 思います.  (PH / ML) ・留学生と日本人学生がアカデミックな交流をする舞 台を提供しているので,ぜひ今後とも続けていくべ きだと考える.  (JR) ・すばらしいと思う.留学生はしばしば留学生だけで かたまっているので,日本人が話しかける機会も少 ないし,また緊張したり,恥ずかしかったりして話 しかける勇気がもてなかったりする.この授業を通 して,積極的に留学生と話し,仲良くなることがで きた.  (ML) ・国際共修ゼミを通して,留学生も日本人学生も互い に興味・関心を持っていること,そして関係を持つ ことで様々な経験ができ,新たな能力が得られるこ とを身をもって感じました.しかし,現状では留学 生 との授業を受講しているというだけで『なんで?』 『すごい』という状態です.さらに進むグローバル 化に対応できる人材の育成として,国際共修ゼミの ような授業は今後より重要になるのではないかと考 えています.  (ML) ・とても良い形式だと思う.日本人学生としても留学 生と話せ,知り合えるとても貴重な機会だったし,

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この授業での交流や経験は自分にとってとても大切 なものになると思う.今後も続けていってほしい.   (ML) ・このような形の授業が多様な形で設けられればいい と思う.国際化に対応するために,有効だと思う.   (ML) ・いい試みだが日本人学生の数が少なすぎる.   (BC / CE) ・難しいかもしれないけど,もっと幅広い国籍の学生 さんが集まれば,より興味深い授業になると思いま す.  (JR) ・アジア以外の欧米の留学生がいたらもっと楽しかっ たと思う.討論の時間がもっとあればよかったと思 うが,人数も多かったし,しょうがないかもしれま せん.  (PH) 【留学生】 ・(共修は)いいと思う.なぜなら日本人学生と留学 生の意見やアイディアがちがうからである.だから いろいろなことを学んだ.  (ML) ・留学生だけでなく日本人学生とも交流できて互いに 勉強になりよかった.  (BC / CE) ・日本人学生との交流は日本語の勉強に役に立ち非常 に良かった.  (BC / CE) ・日本人学生たちと一緒に受けることによって,日本 語について新しく勉強することができました.   (JR) ・とてもおもしろいと思います.日本人学生と直接話 せ,自分の口語ものばして,若い日本人の考え方や 生活習慣とかだんだんわかるようになりました.   (JR) ・教科書では学べない日本人が普通に使う言葉や表現 の方法を学ぶことが出来た.  (BC / CE) ・本場の日本語と日本人の考え方を学ぶことが出来て 非常によかった.   (BC / CE) ・日本人学生と一緒に授業を受けて,色々な話をして から,日本文化への理解が深まったと思います.   (JR) ・日本人と一緒に授業を受けるのは本当に楽しかった. 文化・ビジネスマナーの面で日本との違いが良くわ かった.  (BC / CE) ・留学生に特化した授業もいいが,日本の社会を知る という面では限界がある.日本の社会に早く慣れる 必要があるのでこのような形態の授業は理想的だ.   (BC / CE) ・グループ作業のときは,日本人の学生がまとめ役に なってくれたり日本に関する情報を提供してくれる ので助かった.  (BC / CE) ・私は毎回授業前に作品を読んで,辞書をひいてもわ からないところを採記し,日本人とグループで議論 するとき聞く.日本人の協力によって,日本語力が アップすると思います.  (ML) ・このクラスの日本人はとても熱心だと思います.  グループ討論する時,日本人の学生からたくさん学 びました.  (JR) ・今日のテキストの内容はこれまでで一番長くて,疑 問点も一番多いトピックだという気がします.授業 の後はもうちょっと日本人学生に聞いて,本当に勉 強になりました.  (JR) ・日本人の参加により外国人にとっていろんな場面か らすごく助かりました.  (JR) ・日本人の学生達も留学生も楽しそうだったのでよ かったのではないか.  (BC / CE) ・もう少し日本人学生に心を開いて欲しかった.   (BC / CE) ・留学生の“(一段階の)読み”にもう少しサポート が必要.ディスカッションする前に理解度をある程 度そろえた方がディスカッションしやすい.   (ML) 5.2.2 多文化クラスでの学び 国際共修ゼミは,互いに異なる言語や文化を持つ者 が集まる多文化クラスである.本稿の第 4 節で示した シラバスに,学習の到達目標として,「異なる言語・ 文化圏を背景とする者同士がそれぞれのコミュニケー ション・スタイルの違いを認識し互いに配慮しつつ交 流できるようになる」ことが挙げられていたが,その 目標は達成されているだろうか.言語や文化背景の違 う人たちと一緒に学ぶことで何が得られたかについて は,次のようなコメントがあった.

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【日本人学生】 ・言語や文化背景が異なっても普通にコミュニケー ションも図れるし仲良くなれるということと,国に よって,ある動作が反対の意味を持つことなどを学 んだ.  (BC / CE) ・少しだけ,中国語やスウェーデン語を学びました. 勉強に対する意欲の面でも刺激を受けました.   (BC / CE) ・外国人と接するとき,不快にさせないように気をつ けるなど意識改革につながった.  (BC / CE) ・どの人たちもみんな「受け入れる」「理解する」と いう姿勢で臨んでくれるという素晴らしさを知っ た.  (BC / CE) ・育った国や宗教,文化などを含め,自身のそれまで の環境が異なる人々と共に一つのことについて考え るという過程は非常に新鮮だと感じる.  (JS) ・日本とは全く異なったり,また逆に似通った文化を 知ることで,より一層外国の文化や言語についての 興味が深まった.また,外国の方と触れ合う楽しさ を知った.自国の文化だけにこだわらずに他国の文 化や習慣を認め合うことが大切だということを学べ たことは外国の方と接する機会が多くなるこれから 先,プラスになると思う.  (BC / CE) ・今回は,言語による障害もなく話し合いも盛り上が り仲間のこともよく知ることができました.そして このクラスで××君の言った,“ここは日本なのに まるで自分が外国人のようだ”という言葉がとても よくわかりました.というのも,話し合いの最中に 分からない日本語が登場すると,中国の方たちが辞 書で調べ,他の中国の方たちに中国語で説明し,そ のまま中国語で会議が続行され,私たちが取り残さ れてしまう場面がたびたびありました.そういうこ とも,ここでしか体験できないことなんだなと思い ます.  (P / MC) 【留学生】 ・グループの人と初対面なのに,たくさん異文化のこ とが見つかりました.本当におもしろかったです.   (JR) ・日本のビジネス用語や日本ならではの仕草がわかる ようになりました.そして色々な国の文化を間接だ がたくさん経験するようになりました.  (BC) ・異文化について考えるようになった.(BC / CE) ・他の国の文化を知ることが出来た.欧米人の積極性 など.授業以外の生活でも応用できることをたくさ ん学べた.  (BC / CE) ・世界各国のことを多く学ぶことが出来,知識が増え た.何よりも,毎回の授業がとても楽しかった.   (BC / CE) ・視野が広がった.  (BC / CE) ・何よりも出身国の異なる,母国語の異なる,価値観 の異なる人たちが集まって何かを作り出したことか ら相当な成就感が感じられた課題でした.うちの チームメンバーにありがたかったです. (P / MC) ・今度の作品の中で,四つの言語を使いました.言葉 が分からなくても,その言葉で表した感情が分かっ て,不思議だなあと感じました.そして,国が違っ ても,みんなは同じことに力を入れて,同じ目標を 持っています.みんなと一緒に努力するという感覚 が一番いいです.今回の体験はいい思い出になって, 一生でも忘れられないほどのいいことだと思いま す.   (P / MC) 5.2.3 演習形式 最後に,国際共修ゼミのもう一つの大きな特徴とし て,クラスによって形態は少しずつ異なるが,基本的 にゼミ形式をとって授業担当教員の講義よりは受講者 の発表や討論に重点をおいているということがある. その点についてのコメントを以下に列挙する. 【日本人学生】 ・高校まではこのような形式での授業はなかったた め,うまくまとめられるか心配でした.しかし,自 分の好きなテーマで調べることは面白かったし,図 書館に行って様々な蔵書や古文書を目にするという 貴重な体験ができました.  (PH) ・この授業で初めてゼミに参加した.発表をしてから 質問をいただく事で,自分ひとりで調べている時に は気付かない点がたくさんある事に気付かされた.   (PH)

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・事実をただ集めていくだけでなく,他と関連させた り,発表をして質問してもらう事で,調べた内容を より深く考えることが出来るようになる事を学ん だ.  (PH) ・調べてみると,…ことがわかりました.授業で発表 がなければ自分で調べることはしなかったでしょ う.  (PH) ・(発表を終えて)時代の変化と人の考え方の変化の 関連を考えると,今まで見えなかったことが見える 気がした.このように変容したもの,変容している ものを他にも調べてみたいと思った.  (PH) ・他の授業とは違い何かを強制的に教えられるのでは なく体で学ぶという授業スタイルは新鮮で毎週楽し みにしている授業の一つです.  (JS) ・留学生の受講態度に関しては,あてられなくても自 由に自分の意見や考えたことを発言していて,積極 的だなと思った.日本人は意見や考えたことがあっ たとしても自分からはあまり発言しない人がほとん どだから,教室の雰囲気が今まで私の受けてきた講 義とは違って新鮮で,刺激も受ける.私たち日本人 もどんな講義ももっと積極的に(発言だけにこだわ らず)受けられたらいいと思う.私が受けている第 二外国語の授業は少人数で発言しやすい環境ではあ るが,なんとなく発言するのがためらわれる雰囲気 で,先生が学生全員に問いかけると沈黙が起こる. この講義のように学生の発言が増えたら,もっと楽 しくて無駄のない授業になるだろうに,と思った.   (JS) ・留学生の方が自分の考えを積極的に発言することに 最初は正直驚いた.だが,様々な意見が出るので, 多数意見に流されることなく,自分の意見を言って 良いのだな,という安心感があった.多様な意見を 皆で共有できることは素晴らしいと思った. (JS) 【留学生】 ・この授業で,グループを分けて,お互いの意見を話 すことができて,会話の練習もでき,……とてもい いと思います.  (ML) ・初めて発表をして,皆さんと話し合って,発表って 独りではないと分かりました.これからはいい発表 ができるようにがんばります.  (JR) ・みんなの発表やコメントを聞いたら,いろいろ考え 方や意見があるので,すごく役にたちました.  そして,自分の質問の勇気もくれました.  (JR) ・他の授業と違って自分の意見を述べることができ, 楽しかった.  (JR) ・こんな討論する授業も日本人学生と一緒に受ける授 業も初めてだったのですごくいい経験になりまし た.  (JR) 【日本人学生/留学生】 ・調べるのが満足にできなくて残念でした.ただ,大 人数の前で喋るのは普段あまりない経験だったので よかったです.  (PH / ML) ・大学での研究,発表のやり方を学べた.   (PH / ML) ・ものごとの調べ方や発表の練習となり,面白かった と思います.  (PH / ML)

6 .成果および課題

6.1 「国際共修ゼミ」開設の成果 前節に記したように,2009年度・2010年度の 4 学期 にわたって開講してきた「国際共修ゼミ」に対する受 講者の授業評価の数値は高水準にあり,授業について のコメントもほとんどが肯定的な見方を示している. 授業の性格上,受講者の学習成果を数値で示すことは 困難であるが,少なくとも「国際共修ゼミ」という一 群の授業科目への受講者の満足度の高さが明らかに なったと言える. 第 2 節で触れた学生生活調査についても,最新の調 査結果を見ると,興味深い事実が明らかになっている. 2009年度に実施された第 8 回調査では,国際交流の機 会について,学部生と大学院生それぞれのデータは示 されていないが,全体として「十分ある」「ある」と いう回答が55%と,「あまりない」「ほとんどない」の 45%を上回っている11).2007年度の第 7 回調査では, 国際交流の機会が「十分ある」「ある」と回答した学 部生は全体の41%で,「あまりない」「ほとんどない」 の58%を下回っていた.2009年度の調査結果は,2007 年度の大学院生の調査結果(それぞれ55%,44%)に

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ほぼ等しく,全体として状況が改善されていることが わかる.「国際共修ゼミ」の開設とこの調査結果の因 果関係を証明することは難しいが,「国際共修ゼミ」 での共修の試みが国際交流の機会を持つ学生が増加し た一つの要因として働いているのではないかと推測さ れる. 6.2 検討課題と対応策 一方,開設されたばかりの「国際共修ゼミ」には検 討すべき課題も少なくない.担当教員や受講者の意見 として,次のような問題が示されている. 1 )現在のところ,担当教員の希望による開講となっ ているため,何らかの事情で担当教員が現職を離れ るなどのことがあれば,その授業科目は開講できな くなる.つまり,制度的な裏付けがない状態である ので,将来にわたり「国際共修ゼミ」を存続させら れる保証がない. 2 )「国際共修」と称して開講しているが,カレント トピックス科目,特別課程科目ともに必修ではない ため,日本人学生・留学生の数,また,留学生の中 での出身文化圏相互の適度なバランスが確保できる とは限らず,受講者が日本人学生のみ,あるいは留 学生のみになってしまう可能性もある. 3 )カレントトピックス科目の一つのクラスの中に複 数の特別課程科目に対応するクラスがある.受講者 にわかりにくく,また事務上の連絡や履修管理も煩 雑になっている. 4 )カレントトピックス科目の開講可能時間帯が限定 されているため,対応する特別課程の授業科目の開 講時間帯が重なり,留学生にとって本来二つとも受 講可能な授業科目であってもそのうち一つしか選択 できない状況になっている.このことは留学生の特 別課程履修上のマイナス要因となっており,また, クラスによって留学生の受講者が少ない一つの原因 になっている. 5 )カレントトピックス科目を特別聴講学生が履修し 単位が取れることについての情報が担当事務係や受 講者に十分に周知されていない. 6 )特別課程の日本語・日本文化関連の科目を利用し て開講されている事情から,現在「国際共修ゼミ」 では,日本に関することを中心テーマとして授業が 行われている.留学生と日本人学生の知識の格差に どのように対処するかが難しい. 7 )さらに多様な「国際共修ゼミ」を提供したいが, 現行の特別課程の側で出せる科目は日本語・日本文 化に関する科目のみである. 以上の問題点のうち 1 )〜 4 )は「国際共修ゼミ」 の開講形態に関する問題, 5 )は運営上の問題, 6 ), 7 )は内容上の問題であると言える.それぞれについ て考えられる対応策は,以下のとおりである. 1 ), 2 )については,「国際共修ゼミ」担当者のみ で解決できる問題ではなく,全学教育全体の中で「国 際共修ゼミ」をどのように位置づけるかという視点か らの全学的な検討が必要である.今後「国際共修ゼミ」 が必修科目となる可能性は必ずしも高くないかもしれ ないが,それにふさわしい実績をあげつつ,学内にア ピールしていくことが必要である. 次に,3 )で問題になっているのは,「国際共修ゼミ」 開設に際して取り決めた開講形態であるが,その後 4 学期にわたる開講を通じて「国際共修ゼミ」を少人数 クラスで行うことへの理解が得られるようになり,ま た非常勤講師の全学教育担当についても問題ないとの 解釈が示されたことから,次年度(2011年度)からは 開講の仕方を変えて,特別課程の 1 クラスごとにカレ ントトピックス 1 クラスを開講することとなった.つ まり,カレントトピックス科目の授業をさらに 2 クラ スに分けて行うという変則的な開講方式は廃止され, それにともなう問題は解消されることになった. 4 )については,「国際共修ゼミ」開設時からの検 討課題となっており,全学教育の中でカレントトピッ クス科目よりも開講時間帯の制限が緩い科目での開講 ということも検討したが,適当な科目がなく,カレン トトピックス科目の開講時間帯枠の拡大について全学 教育の企画を行う学務審議会の担当委員会に要望を提 出した.その結果,次年度の実現は不可能であるが, 近い将来,全学教育全体のカリキュラム改編に際して 検討したいとの回答が得られた. 5 )の特別聴講学生の履修に関する問題については, 当初担当教員の間でも情報が共有できていないという

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問題があったが,徐々に改善されつつある.各クラス で履修手続きについての注意喚起を徹底するほか,留 学生課を通じて全学の特別聴講学生に「国際共修ゼミ」 についての情報を周知する必要がある. 最後に,「国際共修ゼミ」の内容上の問題であるが, まず 6 )については,日本に関する日本人学生と留学 生の知識量の格差を補う,もしくは,それを逆手にとっ てコミュニケーションの活性化を図るという方策が考 えられる.前者としては担当教員が補助教材を用意す る,補足説明を行うなどして留学生の知識の不足を補 うことが有効であろう.後者としては,グループワー クやピア活動を通じて,知識量の多い日本人学生が留 学生に情報を提供することが考えられる.また,シラ バスの授業の目的や学習の到達目標にも既に示されて いることであるが,日本文化のみをターゲットとする のではなく,異文化を知ること,異文化から考えるこ とを重視するという視点もさらに重要になってくるで あろう. また, 6 )および 7 )への対応策として,「国際共 修ゼミ」を構成する特別課程の科目自体の見直しとい うことが考えられる.現在のところ,既存の特別課程 科目として,日本文化演習の各科目と日本語(応用) 科目が活用されているが,今後は日本語を用いたイ マージョン教育の視点から,日本文化・日本語以外の 内容の授業科目をたてることを検討すべきではない か.これは,日本人学生と留学生が双方向的に知識を 供与できる授業の実現のためにも必要なことである. そのためには,特別課程に既にある科目を利用するに とどまらず,既存の全学教育科目を「国際共修ゼミ」 とし,特別課程に新たな科目をたてて合同開講すると いう発想の転換が必要である.実際に,2011年度より, 従来カレントトピックス科目で開講していた一授業科 目を「国際共修ゼミ」とし,特別課程の方でそれに対 応する新たな授業科目を設けて留学生の参加を図るこ とになった12).この試みを皮切りとして,今後「国際 共修ゼミ」が質・量ともに一層充実し,学生の国際交 流,異文化理解の推進に寄与していくことが期待され る.

7 .おわりに

本稿では,大学の共通教育課程の授業と留学生対象 日本語補習プログラムの授業の合同開講による「国際 共修ゼミ」について,その開設に至る経緯,概要を報 告し,実践を通じて得られた成果と検討課題について 論述した. 「国際共修ゼミ」が開講されている東北大学全学教 育では,その目的として「専門的知識を実社会や高次 の研究に生かせる,現代的で広い知見と豊かな人間性, 国際性を身につけさせること」を掲げ,その目的を達 するために養うべき点の第一点として「現代人,国際 人として社会生活を送るうえで基盤となる知識と技能」 を挙げている13).「国際共修ゼミ」はそうした知識・ 技能を養う場としてこの上なくふさわしい舞台を提供 しているのではないか.今後は, 1 , 2 年次学生のみ ならず高年次の学部学生,大学院生も含めた全学の学 生を対象として,国際人の養成を目指す教養科目とし ての「国際共修ゼミ」を開設することも視野に入れな がら,着実に実績を積んでいくこととしたい. 注 1 )「全学教育」は東北大学における共通教育課程の教育 を指す名称である.「専門教育及び大学院教育の基礎 を形成するための基盤教育」として位置づけられ, 全学体制で行われている.東北大学ホームページの 「東北大学全学教育」ページ参照.   http://www2.he.tohoku.ac.jp/zengaku/zengaku.html 2 )東北大学全学教育は「基幹科目類」,「展開科目類」,「共 通科目類」に分類されており,カレントトピックス 科目は「展開科目類」のうち「総合科学」に属する. 各クラスとも全学部対象.複数の教員が交替で担当 している例が多い.2010年度には計17クラスを開講 している. 3 )東北大学学生生活実態調査委員会編『東北大学生の 生活 平成19年度〈東北大学学生生活実態調査〉の まとめ』,2008年,p.10.東北大学学生生活実態調査は, 東北大学の学部と大学院に在籍する学生を対象とし て,1995年度から隔年で実施されている調査である. 2007年度の調査は第 7 回目の調査で,学生の 7 割を 無作為に抽出した上で2007年11月に郵送法で実施さ

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れた.回答者数は3004名で,有効回収率は27.5%であっ た. 4 )1966年に学内に「外国人留学生特別課程」として開 設された外国人留学生の補習を目的とする教育課程. 当初は日本語授業科目のほかに数学,オリエンテー ションの科目も設けられていたが,日本語の授業の みが存続し,近年は主に学内教員の協力による日本 文化演習の授業も開講されている.現在では留学生 のほか外国人研究者も対象としており,2010年度後 期には33科目77クラスを開講,登録者数は545名に達 し,のべ受講者数はその 3 倍程度になっている.なお, 特別課程の開設に至る経緯と歴史については,佐藤 勢紀子「外国人留学生の教育」東北大学百年史編集 委員会編『東北大学百年史三 通史三』(2010年, pp.573-596)に詳しい記述がある. 5 )全学教育の「共通科目」に属し,「転換・少人数科目」 として位置づけられている.新入生を対象に全学体 制で約140クラスを開講し,学部横断の20名程度のク ラスで様々な形式の授業を行っている. 6 )2008年度基礎ゼミにおいては,特別課程のクラスと 合同で開講された授業のほかにも,日本人学生・留 学生がともに参加して異文化間協働プロジェクトを 行う授業が開講された.末松和子「全学教育基礎ゼ ミ実施報告―キャンパス国際化への貢献:異文化間 協働プロジェクト―」『東北大学高等教育開発推進セ ンター紀要』第 4 号,2009年,pp.111-116.この授業 は2009年度からは特別課程のP 4 と合同で開講され, 2010年度にはJYPEプログラムの日本語クラスの一部 (選択必修)としてJYPE学生限定ではあるものの特 別聴講学生にも単位取得可能な授業となっている. なお,異文化間協働プロジェクトの詳細については, 末松和子・阿栄娜「異文化間協働プロジェクトにみ られる教育効果」(『異文化間教育』第28号,2008年, pp.114-121)を参照されたい. 7 )宮城県内の大学において高校生のために公開授業や 公開講座を開設する事業.2010年度には県内の11大 学が参加し,東北大学では36の授業科目を公開して いる.   http://www.pref.miyagi.jp/koukyou/renkei.html 8 )1990年代以降国内の高等教育機関で日本人学生と留 学生の相互作用による学びを目的とする体験型の授 業が実践されるようになり,「多文化クラス」という 呼称が示されている.徳井厚子「異文化理解教育と しての日本事情の可能性―多文化クラスにおける 「ディベカッション」(相互交流型討論)の試み―」『日 本語教育』第92号,1997年,pp.200-211.「多文化ク ラス」の条件として,足立祐子・押谷祐子・土屋千 尋「コミュニケーションの場としての多文化クラス」 (『多文化クラスの大学間および地域相互交流プロ ジェクトの実施と評価に関する研究―平成 9 年度〜 平成11年度科学研究費補助金基盤研究(C)( 1 )研究 成果報告書』,2000年,pp.1-5)では, 1 )留学生と 日本人学生が対等である, 2 )定期的に継続するも のである, 3 )講義ではなく体験授業である, 4 ) 留学生,日本人学生双方に単位が出る,という 4 点 を挙げている.その後,さらに 5 )留学生と日本人 学生との相互作用と学習の双方向性を重視する, 6 ) 授業を通した異文化理解の促進を目指すという条件 も付け加えられた(岩井朝乃「日本人大学生の「文 化的他者」認識の変容過程―多文化クラスでの異文 化接触体験から―」『異文化間教育』第23号,2006年, pp.109-124). 9 )2010年度後期開講「日本文化を考える―国際共修ゼ ミ―」のBクラスについては,使用言語が英語であ ることを明記した. 10)2009年度・2010年度後期開講「日本文化を考える」A クラス(特別課程JR 6 と合同開講)で用いたもの. A 3 判の紙を二つ折りにし,授業日ごとに往信欄・返 信欄を設け,受講者に毎回配布して往信欄にコメン ト(授業についての感想,意見,質問,連絡など) 記入,もしくは署名をしてもらって回収,コメント に対しては担当教員が返信する.随時受講者からの フィードバックが得られ,出席確認にもなり,配布 物がある場合も挟んで渡せるなどのメリットがある. 11)第 8 回東北大学学生生活実態調査委員会編『東北大 学生の生活 平成21年度〈東北大学学生生活調査〉 のまとめ』,2010年,p. 13.第 8 回調査の回答者数は 2820名,有効回収率は23.6%であった. 12)高等教育開発推進センターの串本剛講師による「議 論の仕方を学ぶ」という授業科目.授業題目は「大

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学をめぐる 4 つの論点」で,大学に関連する論点を 具体例に,自分の主張や意見を説得力のある文章に する能力を養うことを目的とする授業である. 13)注 1 )に記載した「東北大学全学教育」ページ参照.

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