* 岡山県立大学 保健福祉学部 〒719-1197 岡山県総社市窪木111 ** 吉備国際大学 保健医療福祉学部 〒716-8508 岡山県高梁市伊賀町8 *** 姫路大学 看護学部 〒671-0101 兵庫県姫路市大塩町2042-2 **** 岡山大学病院 看護部 〒700-8558 岡山県岡山市鹿田町2-5-1 Ⅰ.緒言 1981 年から現在に至るまで、わが国の死因の第 一位は悪性新生物である。がん対策推進基本計画で は、がんの予防や早期発見を目標にすると同時に、 外来化学療法の普及など治療の充実を図るための対 策を掲げ、がんによる死亡率の減少や患者と家族の 苦痛の軽減・療養生活の質の向上を目指している1)。 また、国民医療費の高騰による在院日数の短縮化や 外来化学療法加算が加わったことにより、臨床現場 においても長期的な化学療法を行う場を外来に移行 するメリットは大きい。 また、外来化学療法は、入院に伴う弊害を避ける ことができ、患者の Quality of Life(QOL) の維持・ 向上が期待できる。そのため、今後も外来化学療法 はがん患者にとって主流の治療として普及し、より 身近なものとなり得ることが予測される。 しかし、通院負担や疾患・副作用症状出現への対 応など、患者にとって負担になることもある2)3)4)。 このような問題を抱えながら、患者が治療を継続し ていくためには家族のサポートが必要だといわれて いる5)6)7)。大橋は、外来化学療法を受ける患者の 家族は、「患者が病気になり生活が変わった」こと や「通院が大変」などの困難を抱えていることを明 らかにしている8)。そのため、外来化学療法の導入 後、患者をはじめ、家族の生活スタイルは大きく変 化し、患者と共に生きる家族の負担は増大し、家族 自身の自己健康管理が疎かになる可能性がある。し かし、患者を支えていくためにも、家族の生活を充 実させ、健康を維持することは重要である。 これまでの外来化学療法を受ける患者の家族を対 象にした研究は、外来化学療法を受けているがん患 者の家族の体験9)や家族の困難と対処8)から患者 につながる看護支援を検討したものであり、患者の 家族の自己健康管理に視点を置いた研究は見当たら ない。そこで、本研究では、患者の外来化学療法に よって、最も生活への影響を受けやすい患者のキー パーソンである患者の配偶者に焦点を当て、外来化 学療法を受ける患者の家族(配偶者)の自己健康管 理についての現状を明らかにし、患者の家族(配偶 者)の健康管理に視点を置いた看護介入を検討する ことを目的とした。
外来化学療法を受ける患者の家族(配偶者)の自己健康管理の現状と
看護支援の検討
伊丹古都絵 * 柘野浩子 ** 尾黒正子 *** 高橋恵美子 **** 實金由香利 ****
要旨 外来化学療法は、患者の QOL の維持・向上が期待できる一方、疾患・副作用症状出現への対応など、 患者と共に生きる家族の負担は増大し、家族の自己健康管理が疎かになる可能性がある。本研究では、外来化 学療法を受ける患者の家族(配偶者)の自己健康管理の現状を明らかにし、その看護介入を検討することを目 的とした。半構成的面接により得られた語りをコード化し、質的帰納的分析を行った。その結果、【体調を管 理している】【他者に協力を得ている】【患者から離れて自分の時間を作っている】【患者を健康な人と捉えようと している】【患者と外出している】の 5 個に分類された。家族の意向や生活状況、患者の状態を考慮した看護支 援が必要である。 キーワード:外来化学療法、家族、自己健康管理Ⅱ.研究方法 1.研究デザイン 質的記述的研究デザイン 2.用語の定義 自己健康管理: 肉体的にも、精神的にも、そして 社会的にも、すべてが満たされた 状態(WHO の健康の定義)を自 身で維持しようとすることとする。 外来化学療法: 主に生存期間の延長、症状緩和・ QOL の向上を目的とした化学療 法を外来通院して行う治療とす る。そのため、術前の化学療法を 除外している。 3.研究対象 A 病院で患者の外来化学療法に同行しているキー パーソン(配偶者)を対象とする。対象は、事前に 主治医と該当部署責任者間で話し合ったうえで 6 名 を選定し同意を得た。 4.データ収集期間 2018 年 3 月に実施した。 5.データ収集の手順 データ収集は 30 分程度の半構成的面接とし、イ ンタビューガイドを用いて実施した。 インタビューは患者の外来化学療法日に合わせ、 患者の治療開始後、対象者にはプライバシーの守れ る病院の一室に移動したうえで、自由に語っても らった。インタビューの際、対象者の許可を得て会 話のすべてを IC レコーダーに録音した。対象者の 希望や体調に配慮しながら、研究者が疑問に思うこ とや関心のある点について質問し、さらに詳しく具 体的に語ってもらった。 インタビューガイドは「ご家族(患者)ががん化 学療法を行うことになり、どのような気持ちになり ましたか。」「外来化学療法が始まってからご自身の 生活がどのように変化しましたか。」「自身の健康管 理について気を付けていることはありますか。」な どを基本とした。 6.データ分析方法 IC ㇾコーダーに録音した内容を逐語録にし、1 事 例ごとに対象の抱いている患者の疾患・治療に対す る思いや日常生活の変化、自己健康管理に反映させ る文脈から意味や内容が損なわれないように文章を 抽出した。自己健康管理の現状について比較検討し ながら意味内容ごとに抽出した文章を、記述デー タ、サブカテゴリー、カテゴリーへと抽象度を上げ てネーミングを行った。分析過程においてはスー パーバイザーを置いて記述データからカテゴリー分 類の妥当性を検討し修正などを行った。 7.倫理的配慮 研究協力者に研究の目的・趣旨を伝え、研究参加 は自由意思により決定し、拒否できることを保証す ること、途中で同意を撤回できること、プライバ シーや個人情報保護に十分配慮することなどについ て書面をもって説明した。本研究は山陽学園大学・ 山陽学園短期大学研究倫理審査委員会の承認を得て 実施した(受付番号:平 29 大 027)。 Ⅲ.結果 1.対象者の概要 研究を依頼した 6 名全員から協力が得られた。年 齢は 40 〜 80 歳代で、性別は女性 5 名、男性 1 名で あった。インタビューに要した時間は平均 38.3 分で あった。対象の患者の疾患は肺がん 3 名、胃がん 1 名、胆管がん 1 名、多発性骨髄腫 1 名であった。対 象者の仕事の有無、持病の有無、同居・別居家族、 患者の化学療法歴、副作用の有無、治療効果などに 対象 対象 (患者との続柄) 対象の 年齢 対象の 仕事 対象の 持病 同居家族 別居家族 患者の 病名 化学療法歴 患者の 日常生活 患者の 副作用 治療効果 A 夫 70代 無 リウマチ 腰痛 夫婦 息子1人 なし 管内胆管がん 3か月 一部介助 食欲不振 評価未 B 妻 80代 有 甲状腺がん 高血圧 夫婦 息子・娘 肺がん 3年10か月 一部介助 下痢、鼻水 あり C 妻 70代 無 高血圧 夫婦 息子・娘 多発性骨髄腫 3年 自立 下腿の浮腫・冷え あり D 妻 60代 有 高脂血症 夫婦 娘 胃がん 1年11か月 一部介助 食欲不振・下痢 あり E 妻 40代 有 なし 夫婦 息子2人 娘1人 なし 肺がん 7ヶ月 自立 鼻水 あり F 妻 80代 無 なし 夫婦 息子2人 肺がん 11カ月 自立 なし あり 表1:対象の概要 表1:対象の概要
ついての対象の概要を表 1 に示した。 2.がん告知から外来化学療法移行前(入院中)ま での対象の体調の変化 以下、対象の語りを『 』で示す。また、言葉が 不足している部分は( )で補う。 1)受診のきっかけと告知の際の心情 疾患に付随した症状が出現してから受診した患者 が 3 名、健康診断の結果で受診した患者が 3 名で あった。 告知された際、『先生が何や説明して下っていた のも頭に入らなかった(C)』、『ガーンってなった よ。両親ともがんだったんだけど、母は放射線と化 学療法で何にも食べられない、食べられるように なったと思ったらまた点滴ってね(D)』、『二人と もえーって感じですよね。(中略)身内が、がんが 分かって 7 か月後に亡くなったんです。(F)』など 告知の際には衝撃が走り、身近な者との死別の経験 から患者の死を予感した語りがあった。 2)外来化学療法移行前(入院中)の体調の変化 外来化学療法に至るまでに、『入院して 3 か月が 一番しんどかった。毎日毎日。(面会に)少し遅れ ようものなら(患者から)連絡がくるし(C)』、『抗 がん剤で(患者の)食欲が落ちて下痢がひどくて。 (患者)一人じゃなにもできないし、最初の方はつ らかった。毎日(患者から)電話かかってくるか らね。(D)』、『最初のころ1回だけね。何もないと ころで隠れてぽろぽろ泣いたことがある。(E)』な ど、対象全員が、外来化学療法に移行する前に心身 に何らかの影響を来たしており、内1名がうつ病を 発症していた。 うつ病を発症した対象は、『入院して点滴(化学 療法)はものすごい副作用で食欲もないし下痢もす るし、天井も動くって生かされてるって感じ…(中 略)…そのうち髪も抜け始めて、私は病院に通うだ けで精一杯。初めてなことばかりで、そうしている と私の食欲がなくなって、夜も眠れないし、元気出 そうと思っても体がいうことをきかない…(中略) …病院受診したら鬱ですよって言われました(F)』 『ずっと私、自分を責めてた。私が健診で体調が悪 くなってしまって夫と健診に行くのを数年前にやめ たんです(F)』と患者の体調や副作用への戸惑い、 病気の発見の遅れに自責を感じる語りがあった。 3.外来化学療法移行後に出現した対象の体調の変 化と現在の健康状態 外来化学療法移行後の体調の変化と現在の健康状 態について表 2 に示す。 1)外来化学療法移行後の体調の変化 外来化学療法を開始してから体調に変化のあった ものは 2 名いた。 『今まで何もしなかったから、料理とかもやって る。苗ものとかの外の仕事が増えるからどうなるか という感じです。腰は痛くなるし、筋肉痛にもなっ た(A)』や『これから骨の方の放射線を考えて下 さるようで、そんなことを考えてるとあんまり良く ないのかなって思って。ごめんなさい。(A)』、『去 年メニエールで 1 か月往生した。たまに眠れないと きがあって、考え出すとだめなんよ。その時は睡眠 薬半分飲みます(B)。』などであった。 2)現在の健康状態 現在の健康状態については、4 名のものが自身を 概ね健康と捉え、1 名が健康でない、残りの 1 名が 表2:対象の外来化学療法移行後の体調の変化と現在の健康状態 対象者 体調の変化 現在の健康状態 A 疲労感 腰痛の増強 『健康状態は変わりないよ。作業の質によって疲れはあるけどね。』 B メニエール病 (現在消失) 不眠 『健康とは思えないけど、何とか耐えていかないといけない。』 C なし 『健康かなと思います。でも夫ではなく自分の問題として 社会的なつながりが必要だと思います。』 D なし 『夫が15年前に脳梗塞して介護が当たり前になってて、今はよくわからない。 でも強くはなったと思う。』 E なし 『仕事も融通利いて社会的なつながりに苦はないし、今は病気を忘れるくらい だし、体は加齢とともに下っていくのは仕方ないからベストではないけど 普通に健康かな。』 F うつ病 『今は社会的にも精神的にも健康です。ただ、病気ばかりは向こうから来ますから ね。』 表2:対象の外来化学療法移行後の体調の変化と現在の健康状態
分からないと答えていた。また、自身の健康と患者 の健康のどちらを重視しているかの質問に対し、す べての対象が自身の健康よりも患者の健康を重視し ていると答えた。 4.患者の家族(配偶者)の自己健康管理の現状 カテゴリーを【 】サブカテゴリーを《 》、 データ数を( )で示す。 対象の自己健康管理についての内容をコード化し た結果、データ数は 103 個であった。コードから 13 個のサブカテゴリーが抽出され、さらに 5 個の カテゴリー【体調を管理している】、【他者に協力を 得ている】、【患者から離れて自分の時間を作ってい る】、【患者を健康な人と捉えようとしている】、【患 者と外出している】に分類された(表 3)。 1)【体調を管理している】 このカテゴリーは 33 個のコード、5 個のサブカテ ゴリーから構成された。 ≪食事の栄養バランスなどに気を付けている≫で は、『この病気になる前に、主人が糖尿病予備軍っ て言われていたので、食事だけは前から気を付けて いました。血糖値の上がりやすい食材を避けたり、 野菜を先に食べたりとかね(C)』や『主人の食べ る量ばかり気にしていましたけど、自分も食べない といけないということがわかりました。倒れて初め て自分を可愛がっていなかったことに気付いて、そ れからしっかり食べるようになりました。(F)』と 患者の体調を考え、患者と一緒に食事に気を使って いるものもいれば、自身の体調不良を経験し、自分 の健康につながる食事について考えるようになって いたものもいた。≪医療機関を受診している≫で は『退職後はかかりつけ医と 1 年に 1 回、胃と腸な どのがんを調べています。母方がみんながんで亡く なっているので。(C)』と持病の管理と病気の早期 発見を目的とした受診をしていた。≪薬やサプリメ ントを服用している≫では『リウマチは 20 年以上 カテゴリー サブカテゴリー(コード数) 内容例 食事の栄養バランスなどに気をつけてい る(11) 塩分を取らないように工夫をしているんですけど難しいですね(C7) 夫と同じ(身体に良い)もの。納豆以外ね(D5) 医療機関を受診している(7) 時々整形で腰が痛いんでブロック注射をしてもらっています(A3) 退職後はかかりつけ医と1年に1回胃と腸などのがんを調べています(C8) 薬やサプリメントを服用している(6) いま私もアミノ酸や核酸のんでるよ(B27) 血圧が高いので薬を飲んでます(C6) 運動する習慣を設けている(6) この前、4000歩あるいた。歩く運動は好きなんよ(B28) 私は健康教室(ヨガ)に行かせてもらっています。(F11) 無理をせず休息の時間をとっている(3) 自分たちの分だけ作ればいいっていうからセーブしてます。(C9 ) 良く寝て。主人がよく休めっていうから甘えてゆっくり休むんです(F18 ) 家族や親せきに相談や協力を得ている (19) 息子が3日に1回くらい見に来てくれる(B21) 上の二人はいろんなことで力になってくれます(E13) 近所や友達に患者の病気のことを伝えて いる(7) 隣の奥さんには病気のことを話しています。いざ何かあったときに娘や息子はど うにもならないし(C17) 会社の人が知っているのと、近所の人にも治療してると言いました。小さい部落 なんで、なんかあったときに助けてくれるから。(F13) 仕事や外出をして気分転換している(8) 家にいるとお父さんの小言ばかり言われるから逃げるんよ(B5) やっぱり4時間でも仕事をする言うたら気分が違う。1時間でも3時間でも違うよ (D8) 人と話をしてストレスを発散させている (4) 前の職場の人に電話したり職場にいって話をして気分を晴らします(C12) わあわあ職場の人と話をして近所の人ともわあわあいうてストレス発散させてま す(D9) 治療効果や副作用がないことに感謝する (14) 今使っている薬の次の薬がすでに治験薬で始まってるから、すごいな思ってね。 そういう意味では心強いですね(E8) ほんと調子良いんです。ほんとお陰様です。(F15) 病気のことを考えないようにしている (6) 今は普通の元気な人と一緒言う感じのつもりでおります(C5) 主人とは日常的には病気のことはお互い話をしないんで、もう3週間来たわ、嫌 な薬うちに行かないといけないねって話をする程度です(E15) 患者のことは患者にしてもらっている (7) 主人がインスリンを朝昼晩打っています(C2) 最近は遠くから見よります。なんぼ言うてもいけんと思ってね(D1) 毎日ウォーキングに私も時々ついて一緒に歩くんです(C1) 二人で散歩するのが日課になりました。商店街見て回るんです(F3) 表3:対象の自己健康管理の現状 患者と外出している(5) 体調を管理している 他者に相談や協力を 得ている 患者から離れて 自分の時間を 作っている 患者を健康な人と 捉えようとしている 表3:対象の自己健康管理の現状
の付き合いだから、薬を飲んだり注射したりは習慣 化してるから忘れることはないよ(A)』と持病の あるものはきちんと服薬管理を行っていた。 ≪運動する習慣をつけている≫では『日頃から歩 いています。この前、(患者の治療を待っている間 に)4000 歩あるいたんよ。歩く運動は好きなんよ (B)』や『親の介護を経験してしっかり体を動かさ ないといけないんだなっていうことに気付いて 20 年くらいヨガに通っています(F)』と患者ががんに なる前から、自身への必要性を感じて運動していた。 ≪無理せず休息の時間をとっている≫では『夫が 病気になって百姓の仕事が増えました。でも主人か ら無理するな。自分たちの分だけ作ればいいってい うからセーブしています。(C)』や『主人がよく休 めっていうから、お言葉に甘えてゆっくり休むんで す。(F)』と患者に勧められて休んでいた。 2)【他者に相談や協力を得ている】 このカテゴリーは 26 個のコード、2 個のサブカテ ゴリーから構成された。 ≪家族や親せきに相談や協力を得ている≫では 『息子が 3 日に 1 回来てくれて洗濯機を掃除してく れたり、いろいろしてくれるんよ。(B)』や『本人 のいないところで、治療のことを上の子 2 人と相談 しました。(E)』、『親戚にはいろいろ相談できる関 係で、病院にもついて来てくれたこともあります。 (D)』など、家族や親族が身体的にも精神的にも対 象の支えになっていた。 ≪近所や友達に病気のことを伝えている≫では 『隣の奥さんは若いうちにご主人をがんで亡くされ ていて、いろいろ教えてくれるんです。だから隣の 奥さんには病気のこと話しています。いざ何かあっ たとき娘や息子はどうにもならないし。(C)』や 『会社の人が知っているのと、近所の人にも治療し てるといいました。小さい集落なんで何かあったと きに助けてくれるから。(E)』、と近所や友達に患者 が病気であることを伝えていた。 3)【患者から離れて自分の時間を作っている】 このカテゴリーは 12 個のコード、2 個のサブカテ ゴリーから構成された。 ≪仕事や外出をして気分転換をしている≫では 『仕事もしてるし家があまりきれいじゃないんよ。 お父さん(患者)に小言を言われるから逃げるん よ。でも外出しても 1 時間か 1 時間半したら帰って くるん。お父さん(患者)のご飯をしとかないとい けないから。(B)』や『仕事で評価してもらえてう れしくてたまらなかった。(B)』、『やっぱり 4 時間 でも仕事するって言ったら気分が全然違う。1 時間 でも 3 時間でも違うよ。(D)』など限られた時間の 中でも家の外に出て仕事や外出をして気分転換をし ていた。また、このサブカテゴリーの全てのコード は、患者に一部介助を必要とする対象のものであっ た。 ≪人と話をしてストレスを発散させている≫で は『物寂しさを感じたときは、前の職場の人に電話 したり職場にいって話をしたりして気分を晴らしま す。(C)』や『仕事した後にわあわあ人と話して、 近所の人ともわあわあってストレス発散させてま す。(D)』など、患者とは別のつながりの中で近所 の人や友人と話をしてストレスを発散させていた。 4)【患者を健康な人と捉えようとしている】 このカテゴリーは 27 個のコード、3 個のサブカテ ゴリーから構成された。 ≪治療効果や副作用がないことに感謝している≫ では、『今の薬がそんなに身体に負担がなくてね。 ・・・(中略)先生もトップクラスで効いてるねって 言われるので、効く限りは続けていこうと。余命宣 告をいつされるんかなっていうような最初の時期に 比べたら、まあ、前の日常生活とあまり変わらない 生活が送れてるって感じです。(E)』や『1 月から 薬を変えたんです。素人目にも肺がんがぼーっと白 かったのが小さくなってきているし、いつの間にか 着替えやトイレがスムーズになって ・・・(中略)・・・ 副作用もなくて、いい薬が出来て元気に過ごさせて もらってます。(F)』と治療効果があり、副作用が ないことで平常な生活を保っていることに感謝して いた。 ≪患者の病気のことを考えないようにしている≫ では『最初は大事にしていたけど、今は普通の元気 な人と一緒いう感じのつもりでいます。外見から見 たら普通のおじいちゃんです。(C)』や『最初に比 べたら落ち着きました。主人とは日常的には病気の ことはお互い話をしないんで、もう 3 週間来たわ、 嫌な薬打ちに行かないといけないねって話をする程 度です。(E)』と日常生活の中で患者の病気のこと を考えないようにしていた。 ≪患者のことは患者にしてもらう≫では、『抗が ん剤の関係で血糖値が上がることがあるようなんで す。自分で血糖値を測って、100 以上だったらイン
スリンを自分で打っています。・・・(中略)・・・(自 分でなんでもする人)だから私も最近は気にしない んです。あんまり言うとストレスになるかなっと 思って言わないようにしています。(C)』や『だん だん病気が人間の性格を変えていくでしょう。最初 は(イライラをおこさないよう)言ってたけど ・・・ (中略)・・・ 最近は遠くから見守ってます。自分で 外の方ごそごそしたり。本人がリハビリ好きなんで す。(D)』と、患者の性格を考慮し、夫婦間の良好 な関係を保つためにも患者のことを患者にしてもら うようにしていた。 5)【患者と外出している】 このカテゴリーは 5 個のコードと 1 個のサブカテ ゴリーから構成された。 《 患 者 と 外 出 し て い る 》 で は『 主 人 の 毎 日 の ウォーキングについて時々ついて一緒に歩くんで す。・・・(中略)・・・3 泊 4 日で主人の実家の方を旅 行したんです。(旅行の際、インスリン注射をする のに場所を選んだ経験から)主人はインスリンが ネックになっているみたいですけど、外に出るのも いいことですよね。いつまでもこの薬が効くわけで はないでしょう。先生も今の体調なら旅行に行って もいいって言われてるんです。(C)』や『(息子の自 宅にお世話になったときから)、二人で散歩するの が日課になりました。主人がお店を見るのが好きで ね。・・・(中略)・・・ 昔から旅行が好きで、今はチラ シや冊子を見てはここ行きたいねって話をするんで す。桜が咲いたら見に行こうって言ってます。(F)』 と、患者の体調や趣味を考えながら、夫婦で外出す る時間を設けていた。また、このサブカテゴリーの 全てのコードは、患者が自立している対象のもので あった。 Ⅳ.考察 がん告知から外来化学療法移行後の対象の体調の 変化と外来化学療法を受ける患者の家族(配偶者) の自己健康管理の現状から看護支援について検討す る。 1.がん告知から外来化学療法移行前(入院中)の 対象の体調の変化と看護支援 がん告知は、患者や家族に死を考えさせるもので あり、恐怖に至らしめる。今回の対象も患者の関連 した症状の有無に関係なく、同様の反応であった。 また、外来化学療法移行前(入院中)に全ての対 象に心身の疲労を来していた。その理由として、対 象の語りから、予後への不安を抱えたまま治療が始 まり、副作用に苦しむ患者を目の当りにすること や、新たな副作用が出現する可能性があることで、 頻回に面会に訪れざるを得ない状況にあるからだと 考える。また、対象の中には、この時期が一番つら かったと振り返っているものもおり、外来化学療法 に移行する前の病棟での家族援助は必要不可欠とな る。また、在院日数が短縮化されていることから、 治療評価の時期や自宅での副作用への対応方法など 家族を含めて検討しておくことで退院後の生活の質 が損なわれないよう援助することが重要である。 2.外来化学療法移行後の対象の体調の変化と看護 支援 外来化学療法を開始してから疾患や何らかの症状 を発症した 2 名のうち、1 名は化学療法を開始して 3 ヶ月と期間が短かった。また、治療評価に至って おらず、予後への不安を語っていた。さらに、料理 や畑など家庭内での役割が増大したことが加わり、 身体症状となって現れたと考える。これは、他の対 象者が入院期間中に体験した心身の疲労に共通して いる部分がある。一方、外来化学療法移行後、暫く してストレスが要因となって現れ、体調を崩すもの もいた。そのため、外来化学療法に移行した後も、 看護師は、家族がストレスにさらされていることを 知った上で、家族と関わり、特に外来化学療法初め て数か月は家族の体調に配慮する必要があると考え る。 3.患者の家族(配偶者)の自己健康管理の現状と 看護支援 患者の家族(配偶者)の自己健康管理の現状に ついて、【体調を管理している】、【他者に協力を得 ている】、【患者から離れて自分の時間を作ってい る】、【患者を健康な人と捉えようとしている】、【患 者と外出している】5 個のカテゴリーすべてに患者 に関連する要素があった。また、自身の健康と患者 の健康のどちらを重視しているかの質問に対し、す べての対象が自身の健康よりも患者の健康を重視し ていると答えている。そのため、患者の家族(配偶 者)の自己健康管理には、自ずと患者の健康が基盤 となっていることが示唆された。
1)【体調を管理している】 ≪食事の栄養バランスなどに気を付けている≫で は、対象が患者の体調を考え、それに付随した形で 食事に気を付けている傾向を認めた。一方、≪医療 機関を受診している≫や≪薬やサプリメントを服用 している≫、≪運動する習慣をつけている≫は、身 近な人をがんで亡くしたり、体力の必要性を感じた りするなど、自身の経験から必要性を感じて実施し ていた。一方、竹内は、患者の家族が介護する家族 の健康が損なわれると患者の治療も生活もなりゆか なくなると考え、家族が、自分自身の健康管理に留 意している9)と述べている。今回の語りにはなかっ たが、体調管理は対象自身のためである反面、患者 を支えていくためという理由もあると考える。 ≪無理せず休息の時間をとっている≫では、対象 は患者に勧められて休息していた。齋藤は、外来化 学療法を受けている高齢患者の生活の中での思いに ついて「家族に気兼ねをする」、「家族に負担をかけ ている」などを抽出していた10)。そのため家族(配 偶者)が患者の勧めに応じで休息の時間をとること は、患者の精神的安寧にもつながると考える。その 視点から、家族に休息の必要性を伝えることも一つ の方法だと考える。 2)【他者に相談や協力を得ている】 ≪家族や親せきに相談や協力を得ている≫では、 コード数が最も多く、家族や親族が、身体的にも精 神的にも対象者の大きな支えになっていることが窺 えた。キーパーソンである配偶者は、他の家族や親 族よりも患者とともに時間を過ごすことが多く、通 院や日常生活の世話など、患者に関する役割負担は 大きい。他の家族もそれを理解しているが故に、対 象を気遣って手を差し伸べたり心配したりしている と考える。また、≪近所や友達に病気のことを伝え ている≫では、万が一の時を考え、協力を得られる 近所や友達に患者が病気であることを伝えていた。 今回の語りの中でも、告知の際に死を覚悟したこと や “ 今のところ ” 治療効果があると認識していたこ とから、対象をはじめ、他の家族の精神的な安寧を 保つためにも、他者とのつながりは必要である。し かし、最近は、近所づきあいの希薄化や少子化など 身近に頼れる人が誰しも存在するとは限らない。あ る病院では、患者や家族を対象としたがんサロンに がんの相談の出来る一般の方の配置を試みたとこ ろ、自然な感情を表出や、孤独感の緩和、安心感の 提供、がんサロンに利用促進効果が得られた11)と の報告がある。そのようなサロンを開設することも 精神的な安寧につながると考える。 3)【患者から離れて自分の時間を作っている】 ≪仕事や外出をして気分転換をしている≫では、 限られた時間の中でも家の外に出て、仕事や外出を して気分転換していた。また、このサブカテゴリー の全てのコードは、患者に一部介助を必要とする 対象のものであった。『やっぱり 4 時間でも仕事す るって言ったら気分が全然違う。(D)』という語り から介護中の家族には介護から解放する時間が必要 であることが分かった。また、小谷らは、看護師は 患者の状態に視点が向きやすいので、見守らなけれ ばいけないと思っている家族の時間的な拘束感につ いて意識することは少ない12)と述べていることか ら、看護師はそのことを念頭に、家族に患者から離 れた時間を促すことも大切である。 ≪人と話をしてストレスを発散させている≫で は、患者とは別のつながりの中で近所の人や友人と 話をしてストレスを発散させていた。患者から離 れ、人と話をすることでストレスを吐露し、楽しい 時間を過ごすことで自身をコントロールしているよ うであった。 4)【患者を健康な人と捉えようとしている】 ≪治療効果や副作用がないことに感謝している≫ は、コード数が全体の 2 番目に多く、考察の冒頭で 示唆されたように、家族(配偶者)の自己健康管理 には、自ずと患者の体調が基盤となることが窺え る。そのため、治療が効果的に進められることは、 患者(配偶者)の自己健康管理において重要な鍵と なるといえよう。≪患者の病気のことを考えないよ うにしている≫や≪患者のことは患者にしてもらう ≫では、対象は患者を健康な人として捉えようと し、治療前と同様の生活を心がけていた。しかし、 平原は外来化学療法中の患者の療養生活への思いに ついての語りの中で、「身体のつらさが家族に解り にくいことでの苛立ち」や「家族の不十分な介護に よる困難な思い」を抽出していた13)。そのため、 【患者を健康な人と捉えようとしている】が過度に なると、患者と家族の間に矛盾を生じてしまう可能 性がある。両者の関係性を良好に保つためにも、患 者と家族それぞれから話を聞き、お互いが満足して 生活できる看護援助につなげていくことが必要と考 える。
5)【患者と外出している】 対象は、【患者を健康な人と捉えようとしている】 一方で治療効果のある現在の状態がいつまでも続く とは考えておらず、現在の夫婦の時間を大切にして いた。また、このサブカテゴリーの全てのコード は、患者が自立している対象のものであった。患者 が動ける間に家の外へ足を伸ばすことは、対象自身 のためでもあり、患者のためでもある。しかし、 【患者を健康な人と捉えようとしている】ことが障 害となって、全ての患者や家族が冷静に先を見据え ているとも言い切れない。患者の体調が安定してい る間に、医療者から患者との外出について提案して みることもよいのではないかと考える。 6)まとめ 以上より、外来化学療法を受ける患者の家族(配 偶者)の自己健康管理には、家族の意向や個々の生 活状況、患者の状態を考慮した看護支援が必要であ る。そのためには、多忙な業務の中で看護師は患者 との関わりに加え、家族との関わりも要することに なる。大出は慌ただしい臨床において、会話する時 間を割くことは困難な時もあるだろう。しかし、た とえ 1 分であったとしても、しっかりと向き合って 会話することで患者の生活の質を向上させることが 可能であるならば、私たちは是非ともその機会を捉 えたい14)と述べている。それは患者の家族も同様 であり、観察力があれば、来院のたびに少し声をか けるだけで家族の体調は察知できる。そこから得た 情報に問題があれば、看護スタッフや多職種と共有 して最善の解決策を考えていくことが大切である。 Ⅴ.結論 本研究は、外来化学療法を受ける患者の家族(配 偶者)の自己健康管理についての現状を明らかにし た。 その結果、【体調を管理している】、【他者に協力 を得ている】、【患者から離れて自分の時間を作って いる】、【患者を健康な人と捉えようとしている】、 【患者と外出している】の 5 個のカテゴリーが抽出 された。 また、外来化学療法を受ける患者の家族(配偶 者)の看護支援については、以下のことが必要と考 えた。 1. 特に入院中から外来化学療法移行後の数か月 は家族の体調の変化に配慮する。 2. 家族と患者との関係性から、患者から離れる 時間や患者と外出する時間を作るよう促す。 3. 他者に相談や協力を得られるような場所を提 供する。 4. 患者の副作用を最小限にし、治療効果が最大 に得られるよう援助する。 付記 本研究にご協力くださいました対象者の皆様、病 院スタッフの皆様に心より感謝申し上げます。 なお、本研究は 2017 年度山陽学園大学学内研究 補助金を得て実施した。 文献 1 )厚生労働省ホームページ(2019/8/20)https:// www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000181704.html 2 )保田初恵他(2007).外来化学療法を受ける高 齢がん患者の在宅での生活上の問題点.第 38 回 地域看護:139-141 3 )河野友昭他(2018).外来化学療法施行中の患 者を対象とした「薬剤師外来」の継続的な関わり に向けた運用の検討および有用性評価.日本臨床 主要薬学会雑誌.7:8-15 4 )庄司麻美他(2015).外来化学療法を受けるが ん患者の治療・療養生活の認識と実態.高知女子 大学看護学会誌.41(1):86-96 5 )藤塚未奈子他(2016).外来化学療法を受ける 患者のセルフケア能力に関連する要因の検討 . 共 立女子大学看護学雑誌.3:29-37 6 )布川真記他(2009).外来化学療法患者の治療 継続過程におけるセルフケア行動.日本看護研究 学会雑誌.32(2):93-100
7 )Eggenberger SK(2004).Family caring strategies in neutropenia. Clinical Journal of Oncology Nursing8(6).617-621 8 )大橋一彰他(2009).外来化学療法を受ける患 者の家族の困難と対処.第 40 回成人看護Ⅱ:200-202 9 )竹内抄與子他(2012).外来化学療法を受けて いるがん患者の家族体験.日本看護学会論文集: 成人看護学Ⅱ.42:17-24 10 )齋藤美華他.(2010).外来化学療法受けている 高齢がん患者の生活への思い.13(1):21-29 11 )上野裕美他(2016).緩和目的に外来化学療
法を受ける患者が自分らしく過ごすために 当 院における地域連携の一例.The Kitakanto Medical Journal66(1):53 12 )小谷真紀子ら(2012).退院後の施設入所を選 択した家族介護者と病棟看護師の介護負担に関す る思いのずれ第 42 回日本看護学会論文集 地域 看護:182-185 13 )平原優美他(2013).外来化学療法中のがん患 者の在宅療養生活と思い.日本保健科学学会誌 15 (4):187-196 14 )大出順(2013).会話することの効果─ナラ ティブアプローチと患者満足─.日本看護倫理学 会誌 5(1):79-80
Status of Self-management among Families (Spouses) of Patients
Receiving Outpatient Chemotherapy and Nursing Support for Them
KOTOE ITAMI*,HIROKO THUGENO**,MASAKO OGURO***,
EMIKO TAKAHASHI****,YUKARI MIKANE****
* Faculty of Health and Welfare Science, Okayama Prefectural University ** Faculty of Health, Medical and Welfare, Kibi International University *** Faculty of Nursing , Himeji University
**** Nursing Department, Okayama University Hospital
Abstract Outpatient chemotherapy is expected to maintain/improve patients’ QOL. On the other hand, as the necessity of managing patients’ symptoms and adverse reactions places an increased burden on their families, there are concerns over insufficient family management. This study examined the status of self-management among families of patients receiving outpatient chemotherapy to provide appropriate nursing interventions for them. Semi-structured interviews we conducted with such families, and their narratives were encoded and classified into 5 categories through qualitative and inductive analysis: [managing my own physical condition], [obtaining cooperation from others], [creating time for myself to spend apart from the patient], [trying to consider the patient as a healthy person], and [going out with the patient]. The results indicate the necessity of providing nursing support while considering families’ intentions and living conditions, in addition to patients’ pathological conditions.