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満洲国初期における統治機構をめぐる諸構想

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Academic year: 2021

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塚 瀬   進*

Susumu…TSUKASE

研究実績の概要  平成30年度は「満洲国初期における統治機構をめ ぐる諸構想」というテーマで、満洲事変(1931年9月) から満洲国建国(1932年7月)までの期間について、 どのような統治機構を作ろうとしたのか、統治機構の 構築に関わった人はいかなる人物であったのか、具体 的な統治機構の形成について検討した。こうした研究 テーマを掲げた理由は、以下の研究史に対する疑問 に端を発している。満洲事変史研究は日本と中国の 外交交渉の経緯、関東軍による武力侵攻の拡大過程 に関する経緯については多くの蓄積がある。しかしな がら、満洲国という国家形成の初期段階としての観点 から満洲事変を考察した研究はあまりない。満洲事 変期に起きていた事実が、どのように満洲国の統治機 構の形成につながっていくのか、さらには満洲国建国 後(1932年3月)以降の統治機構といかなる関係性 があるのか、より分析する必要があると考えたからであ る。また、統治機構に関わった人たちは、どのような経 緯から統治機構に参加し、実際にはどのようなことをし ていたかも、これまでの研究では十分に明らかにはさ れてこなかった。この点についても考察を行った。  満洲国の統治機構の形成には、関東軍、外務省や 日本の官庁、在満日本人、満洲国に参加した中国人 がかかわっていた。それぞれの動向について満洲事変 (1931年9月)から満洲国建国(1932年3月)までの 期間について、先行研究が初期の統治機構に状況、 参加した人物についてどのような見解を述べているの かまとめるとともに、いかなる史料のもとに検討してい るのか、関係研究の整理をおこなった。  関東軍および外務省関係の人々の動向について は、これまでの研究の多くが考察している。具体的に は、緒方貞子『満州事変と政策の形成過程』(原書 房、1966年)、兪辛焞『満洲事変期の中日外交史研究』 (東方書店、1986年)を取り上げ、その内容、出典史 料の確認などをおこなった。これらの研究では関東軍 の構想を重視していること、統治機構に参加した人も 関東軍の尽力でそろえられたことなど、総じて関東軍 の役割が協調されている。  これまでの研究の多くは『日本外交文書 満洲事 変』に収録されている関係史料をもとに立論している ので、その史料的な考察をおこなった。また、満洲事変 前後を検討した近年の関係論文の収集、分析も併せ ておこなった。  満洲国にかかわった中国人の動向については、易 顕石著、早川正訳『九・一八事変史 中国側から見た 満洲事変』(新時代社、1986)を取り上げ、その内容、 出典史料の確認などをおこなった。また、浜口裕子『日 本統治と東アジア社会』(勁草書房、1996)を検討し、 満洲国にかかわった中国人について考察をおこなっ た。史料的には、かつて中国で刊行された「文史資料」 を収集、分析することで、日本側の史料では追えない 部分を補うことができた。今後も、中国語で刊行された 満洲事変関係者による史料を発掘していくつもりであ る。  在満日本人の動向の動向については自治指導部の 活動を中心に検討した。これまで満洲事変にかかわっ た在満日本人は満洲青年連盟と大峯雄会に参加した 人が考察されてきた。これらについての先行研究、関 係文献の収集、分析をおこなった。そして、自治指導部 に参加した人を抽出して、どのような経緯、動機から自 治指導部に参加したのか、満洲国建国後にはどのよう な役割を果たす人物になっていたのかを検証した。先 行研究では伝記類に依拠して考察しているが、自治指 導部が刊行した広報、出版物を収集、分析することに

満洲国初期における統治機構をめぐる諸構想

(準備研究)

環境ツーリズム学部教授*  −…81…− 長野大学紀要 第41巻第2号  81—82頁(189−190頁)2019

(2)

より、先行研究の豊富化が可能となった。具体的な論 文については、今後まとめていく予定である。さらに自 治指導部には満洲青年連盟、大峯雄会に参加した以 外の日本人も参加していたので、こうした人物がどのよ うな経歴で、いかなる理由から参加したのか、今後は 探究していく予定である。  「関東軍が満洲国を作った」という見解は、やや歴 史の一面を強調し過ぎている。この研究を通して、多 様な人々が満洲国には関わり、統治機構を形成、運用 していった具体的な様相を明らかにしたい。 長野大学紀要 第41巻第2号    2019 −…82…− 190

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