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東日本大震災 危機発生時の対応について考える:2.携帯電話の震災対応

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Academic year: 2021

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(1)3.11 大震災. 東日本大震災 危機発生時の対応について考える. 特別企画. 2. 携帯電話の震災対応 南條善明. 初動対応 設備を守るためのトラフィック規制  それはあまりにも突然の出来事だった.3 月 11 日. KDDI(株). 局が多数被災しており,また,アクセス回線障害や 停電も長期化することが想定されたため,地震発生 後の 1 時間 14 分後の 16 時には,名古屋,大阪,金沢,. (金)14 時 46 分,前代未聞の巨大地震と大津波が東. 広島,高松および福岡の西日本にある各テクニカル. 日本を襲った.東京都新宿区西新宿の KDDI 新宿ビ. センタに対し,車載型基地局と移動電源車の出動を. ルにあるモバイルオペレーションセンターはこれま. 指示,50 分後の 16 時 50 分には福岡から仙台に向. でに経験したことのない大きな揺れに包まれ,オペ. けて出発,全 11 台の車載型基地局と 22 台の移動. レーションルーム内に設置されているあらゆる監視. 電源車の出動を開始した.. 端末の警報が鳴り止まなくなった.いったい何が起.  広域にわたる被災の中,台数に限りのある車載型. こったのか.日本全国から東北地方への au 携帯電話,. 基地局をどこに設置するかが課題となった.基本的に. メタルプラス電話や IP 固定電話のトラフィックが急. は避難所や各自治体の災害対策本部をサービスエリ. 増したための警報だった.監視者は交換機システム. アにすることとし,各県庁と連携をとりながら行き先. ダウンを回避するため,すぐさま発着信規制をかけ. を決定,3 月 13 日早朝の 3 時 30 分,金沢から出動し. 設備を守った.日頃から訓練を繰り返し実施してき. た車載型基地局が宮城県岩沼中学校の避難所で最初. た危機対応である.テレビに三陸沖を震源とするマ. の運用を開始した (図 -1 参照) .地震発生から約 36 時. (2 日後にマグニチュード 9.0 グニチュード 7.9 の地震. 間経過し,外部との連絡が一切取れていなかった避. に修正) が発生,東日本の各地で震度 6 強から震度 7. 難住民の方々からは「これでようやく家族や親類と連. の強い揺れが観測されたとのテロップが流れた.. 絡が取れた.友だちからの「大丈夫?」の声に涙が止 まらなかった.電話がつながる,互いの声が聞こえる. いち早い車載型基地局出動判断. ことがどれだけ大切か,本当に有難う」と感謝された..  15 時 10 分飯田橋本社ビルに災害対策本部および. このとき,この仕事の大事さとやりがいを実感した.. 仙台に現地対策本部が設置され,KDDI 新宿ビルに.  車載型基地局の運用は 12 時間勤務の 2 交代制を. も運用対策本部が設置された.au 基地局,交換機,. 採っており,設備障害や定期的な給油の対応,ある. ネットワークの稼働状況の確認やサービス影響状況. いは避難所での携帯電話充電サービスなどの支援. に関する情報収集に全力を挙げた.岩手県,宮城県,. 活動も精力的に実施した.また,津波で自家用車が. および福島県の太平洋沿いの地域を中心に au 基地. 流され,買い物に行きたくてもなかなか遠出もでき ない被災者の方々の足代わりとして送迎したりもし た.利用者のためにやれることは何でもやる,1 分. 1 秒でも早いサービス復旧,それがすべてだった.. 復旧活動 燃料の確保の壁  車載型基地局および移動電源車によるサービス提 供を継続する上での最大の課題は発電機を運転する ためのガソリンや軽油等の燃料確保だった.KDDI は 災害対策基本法に基づく指定公共機関とはいえ,被災 図 - 1 宮城県石巻市鹿妻小学校の設置車載型基地局. 1064 情報処理 Vol.52 No.9 Sep. 2011. 地での燃料確保は容易ではなかった.元々大規模災害.

(2) 暫定対策エリア. 復興後エリア. 既存基地局を利用した大ゾーン化 衛星エントランス基地局の暫定設置 衛星回線を利用した車載型基地局の設置 無線エントランスを利用した小型基地局の暫定設置. 衛星エントランス. 避難所. 基地局新設によるエリア整備. 大ゾーン化. 避難所. 衛星エントランス基地局 新設基地局. 車載型基地局 既存基地局 対策本部. 無線エントランス. 既存基地局 対策本部. 小型基地局 仮設住宅. 新設基地局. 仮設住宅. 図 - 2 au 基地局の復旧・復興イメージ. 発生に備え当社としては燃料供給会社と契約を締結し,. 基地局の早期復旧. 不測の事態でも優先的に燃料入手できる体制を構築.  長期間にわたる停電,基地局へのアクセス回線障. していたが,今回は高速道路を始めとした輸送ルート. 害および津波や地震による基地局倒壊などによりサ. も被災しており,現地へのタンクローリ輸送も時間を. ービスエリアに穴が空いている地域の早期復旧の. 要した.その後,宮城県と岩手県に燃料補給基地を確. ために,衛星回線を利用した車載型基地局をフル. 保し,そこをベースにピストン巡回輸送方式を行った.. 稼働させたのはもちろん,それ以外にも比較的短 期間で構築できる衛星エントランス回線や 5GHz 帯,. 現地作業員への支援. 18GHz および 25GHz 帯の無線エントランス回線を.  仙台市の現地対策本部を中心とした復旧活動にお. 利用した大ゾーン化など,各種暫定復旧対策を採用. いてもう 1 つ重要なのは,過酷な環境で日々復旧活動. することにより,4 月末の段階においては,避難所,. を推進している社員や協力会社の人たちへの食料や. 災害対策本部などの重要拠点を中心とした震災前と. 水,着替え等の生活物資と応援部隊の宿泊場所の確. ほぼ同等の広さのサービスエリアを構築し,復旧フ. 保である.仙台市内は停電が約 1 週間,断水が約 2 週. ェーズを終了することができた(図 -2 参照).その. 間,ガス供給停止にいたっては約 1 カ月間続いており,. 後は,新設基地局を早期に建設し,震災前と同等あ. ある程度の非常食は確保していたとはいえ,ライフラ. るいはそれ以上のエリア品質をカバーできるよう復. インが寸断された被災地での生活物資の確保は難し. 興フェーズとして全社一丸となって取り組んでいる.. く,金沢に物資補給基地を作り応援者と一緒にトラッ. (2011 年 5 月 27 日受付). クで支援物資を何度も輸送した.ピーク時には協力会 社含め約 750 名の応援者の宿泊場所のため市内のホ テル,マンションの手配,あるいは仙台市郊外にある 秋保温泉の部屋の長期確保も行った.. 南條善明 ■ ys-nanjou@kddi.com. 1980 年仙台電波工業高等専門学校卒業,国際電信電話(株)入社, 2000 年 10 月合併し KDDI(株)へ.主に固定・移動体無線分野に従事, 現在は運用本部モバイルオペレーションセンター長.. 情報処理 Vol.52 No.9 Sep. 2011. 1065.

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