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職業地位達成の問題構成 : 芸術系・人文系のキャリア教育に着目して

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(1)職業地位達成の問題構成. ―芸術系・人文系のキャリア教育に着目して―. 教育学研究科. 新谷 康浩 職業地位達成の場合、「標準的モデル」という価値観の. 1 .はじめに 本稿は、芸術系・人文系のキャリア教育に内在してい. もとで「加熱」や「冷却」を想定することができた。. る職業の序列構造とそれに対するまなざしに着目するこ とで、職業地位達成の研究が用いてきた指標に含意され ていた序列構造を浮き彫りにし、それを問題構成という 観点から捉えなおすことをねらいとしている。 これまで、教育社会学の研究では、事実論に基づいて. 3.問題構成からの捉え直し 本稿で扱う問題構成という観点は、社会学の中でもさ まざまな分野で採りあげられていた。薬師院 (1992) は デュルケームの議論を受けて、「分析が用いる概念も、. 行われる研究のみならず、何を問題視するかという点が. 分析が依拠する思考様式もすべて社会的事実」であるこ. 社会的に構築されてくるという構築主義の観点からの研. とを指摘することで、問題構成自体が社会学の研究対象. 究も行われてきた。これらの両方向からのアプローチは、. となることを指摘している。とはいえ、社会学自体が常. 教育問題の研究などでは見られたが、職業地位達成の研. 識的理解から自由であったというわけではない。デュル. 究では職業地位の指標自体を当然視していた。このよう. ケーム自身は『自殺論』で常識を社会学的諸議論から切. な価値観は「標準的モデル. (1). 」に依拠したものである。. り離すことでわれわれの思考様式に緊縛されない理論の. 戦後日本社会が「標準的モデル」をもとに社会システム. 構築を目指したにもかかわらず、彼の解釈研究では常識. を作り上げていった価値観をこれらの研究でも共有して. 的な観点から行われてしまった(薬師院 1998)。. いたのである。 ただし、この「標準的モデル」を当然視する観点は、 4節で示すように、問い直しを余儀なくされているケー. また家族社会学でも、山田(2000)は家族形態の多様 化のみならず「どのような家族を問題があるとみなすか」 という問題構成の認識に変化があると捉えている(3)。. スが出てきている。このように既存の価値観では説明で. これらの議論にあるように、社会学のアプローチが内. きない事実が見出された場合、社会学では問題構成とい. 在している所与の問題の捉え方が、問題構成という観点. う観点から検討が行われてきた。本稿では職業地位達成. から再検討されてきたのに対して、職業地位達成の研究. の研究でこの問題構成に着目する。. では、これらの問題設定自体を捉えなおすことはほとん ど見られなかったといってよい。そのため眞鍋(2013). 2.職業の序列構造 職業の序列構造については、実際には多元的な価値観. のように、「標準的モデル」を相対化させるために芸術 系のキャリア教育を対象としたとしても、それは「例外」. によって作られている。しかし、ある程度の合意を持っ. として扱われかねない。しかし問題構成という観点から. て上下を位置づける価値観があり、それが共有されてい. 検討することによって、どちらが普遍的でどちらが特殊. る。また、評価を伴ってみるまなざしも存在する。その. であるかという問いは後退する。. 観点に立脚した場合、その序列構造は既成事実化され、 既成事実を社会的事実と捉えて研究が行われる。 たとえば「専門的技術的職業」になれなかった人に対 (2). して「冷却. 」という働きかけがあると想定されてきた。. 本稿のねらいは、既存の職業地位達成の観点を組み込 んだとされるキャリア教育にこの問題構成がいかに内在 しているのか、それは教育社会学に内在しているものと どの点に異動があるのかを明らかにすることによって、. しかしこれらの職業地位が高い地位にあるものとして受. 教育社会学に内在している職業の序列構造に対する問題. け入れられているからこそ「冷却」とみなせる。つまり. 構成がようやく浮き彫りになるのだということを示すこ 教育デザイン研究 第7号(2016年1月) 33.

(2) 職業地位達成の問題構成. とにある。. 成にはその点を想定していないため、個人の能力・努力 不足に還元するまなざしが強まっている(4)。これは全. 4.問題構成からみる理由 まず、職業地位達成を問題構成から検討すべき理由を 以下に列挙する。 第一に、「標準的モデル」が標準とは言えなくなって きた。職業地位達成や学校から職業への移行研究が前提. ての若者に「標準的モデル」を追求する機会が開かれて いるという前提に立っているが、実際にその機会は属性 による差があるということである。このことから、キャ リア教育や職業能力育成によって不利な立場を解消でき るという視点には限界がある(5)。. としていた背景自体にゆらぎがあることを確認してお く。 それは正社員と非正社員の間にある境界のゆらぎであ. 5.キャリア教育への着目 このように「働いていない」ことをどのように問題視. る。これまで正社員と非正社員の間に明確な境界がある. しているのか、またどのような状態を「働いていない」. と考えられていたが、何を正社員と非正社員の境界とす. と提えているのか、ということを捉えなおそうとする場. るかについては、明確な基準がない。久本(2003)は、. 合、キャリア教育は格好の対象となる。. 概念としての正社員を捉えるにあたり、個人と企業双方. キャリア教育は岩木(2006)が「教育訓練政策パラ. の包括的な労働力の取引であることに着目した。また濱. ダイム」であると指摘したように、正社員を「標準的モ. 口(2009)は、労働法を検討することで、正社員をメ. デル」とした既存の労働市場の在り方に依拠した教育訓. ンバーシップの観点から捉えている。小倉(2013)の. 練である(新谷 2010)。そのためキャリア教育は「標. ように、正社員を定義づけるには、統計調査に見る「い. 準的モデル」を当然視し、それ以外の「働いていない」. わゆる正社員」のような呼称として定義づけせざるを得. とみなした人に対して「非就労」というスティグマを付. ないという主張もある。このように正社員と非正社員の. 与することで社会的に排除する可能性があると考えるこ. 間に明確な違いがあるとしても、正規/非正規雇用の境. とができる。では「働いていない」とみなされたものの. 界をどこに置くかは論者によって異なっている。また. うち、どの部分が「非就労」としてスティグマ化される. パートタイムの質的基幹化について、本田(2007)は、. のか。単純に正社員以外を「非就労」としてみなすので. インタビューやアンケートをてがかりにその実態を探っ. あれば、芸術系のように正社員になることが特殊な分野. ている。このことから現実に非正社員であっても、正社. では、卒業者の進路のほとんどが問題視されることに. 員並みの仕事をするものも存在していることが示されて. なってしまう。. いる。これに対して、正社員並みの仕事をする非正社員. このように一般的にキャリア教育は正社員以外を問題. と正社員の処遇を均衡させる動きもある(西本・今野. 視する立場にあるとみなされがちであるが、分野によっ. 2003 など)。また採用時点での境界の問題は、非正社. て標準的な働き方が異なる以上、どのような進路を問題. 員の正社員登用(林 2009)などの研究が行われている。. 視するかという点も分野によって異なっていることが予. このように何を正社員・非正社員とするかということが. 想される。. 問い直されてきている。 第二に、「標準的モデル」から排除された人々をどう 捉えるかという問題である。無業者などの残余カテゴ リーを対象とした研究は就職できないことを機能不全の. このようなキャリア教育に対して批判が行われたが、 その論者であっても、それが想定しているものが「標準 的モデル」にとどまっている。 たとえば児美川 (2007) は「望ましい勤労観、職業観」. 問題として捉えている(山口 2007)が、どのような「働. が曖昧であり、むしろ現行の労働市場や実際の職場の働. いていない状態」をなぜ問題視したのかという「まなざ. き方について学ぶことが望ましいと指摘した上で「キャ. し」に着目した研究は、新谷(2005)(2006)など数. リア権」を提案している。しかし労働の法的側面につい. 少ない。. て学校で採り上げようとしても、パート労働法には欠点. 第三に、「標準的モデル」を標準であるとみなすこと. があるため、結果的に非正規雇用問題を扱うことが難し. の問題である。属性による「標準的モデル」からの排除(新. くなってしまう。また本田 (2010) の「柔軟な専門性」も、. 谷 2005)があるにもかかわらず、実際の移行モデル作. 現在の労働市場に迎合する対処策にとどまっている。そ. 34.

(3) のため本田の提案も非正規雇用を忌避したものになって (6). しまっている. でまず芸術系や人文系に近年どのような就職圧力がか かっているのか、聞き取り調査内容から確認する。. 。. A 大では親子ともに就職に対する関心が強まったとい う。I 氏は 3 年ぶりに入試の説明会に応援で行った際、. 6.使用データ 本稿は平成 23 年〜 25 年度科研費基盤研究(C) 「キャ. 高校生から就職のことを聞かれ、入口も結構変わってき. リア教育における『非就労』の位置づけに関する研究」. ていると思ったという。以前は、就職のことを尋ねるの. の知見をもとに検討したものである。そのため、ここで. は主に保護者であり、生徒から尋ねられることはなかっ. 用いているデータは、そこで行ったキャリア教育実施担. たという。I 氏は、A 大学の就職希望者が 1200 名に対. 当者への聞き取り調査である。. して、1500 件、1 社あたり 2 名としても 3000 名は求. 対象校と対象者の属性は表のとおりである。聞き取り 調査は 2012 年から 13 年に行った。. 人があるため、1 人で何社も選べることを伝えている。 もともと教員と保護者の懇談の場であった父母の会総 会でも、「就職のための保護者説明会」を始めた。2012. H 先生 キャリア教育科目担当教員 大学. A. 人文系. I氏. 私立. 就職・キャリア支援課課長. J 先生 教員(就職委員担当) 大学. B. 大学. C. 大学. D. 人文系 公立 芸術系 私立. K 先生. キャリアセンター専任教員 (民間出身). L 先生 教員(マンガ家). 年に初めて行った「就職のための保護者説明会」は参 加者が多かった(7)。以前は大学の現状説明と就職の話 と半々だったが、今は大学の現状説明が 5 分ぐらいで、 あとは全部就職の話となっている。「本当は、3 年生の 頭からではなく、しっかり大学で学んで遊んでもらい、 結果として就職できれば一番よいと思っているが、社会 的な現実はやはり認めざるを得ず、大学側の就職支援も 必要なものではあるのかなとも考えている。 (A 大 I 氏)」 また D 大学では、当初から就職が大事という意識が あったというより、近年になって学生や親が就職を意識 するようになってきたという。. M 先生 教員(人文・初年次教育担当) N氏. 芸術系 私立. O氏. キャリアプロジェクトセン ター職員 就職担当職員. 「つまりですね、世の中の流れにもれず、本学の学生 も昔に比べると就活をしないといけない、ようするに大 学を出て就職をするっていうルートに乗っからないと何 かとてつもなくいけないっていうようなプレッシャーが 最近すごく高まっていまして、なので、多分、数年前な らば、まあ秋くらいになったらば自分の欲しい求人が出. P 先生 教員(作家 美術) 大学. E. 芸術系. Q氏. 公立. R氏 大学. F. 芸術系 私立. S 先生. 学生支援室職員 アドバイザー(非常勤)、. てくるから、それまで制作をやっておこう、という学生 がもう怖くて就職せずにおられない。(D 大 O 氏)」 E 大ではこのような就職圧力が女子学生の増加に反映 されていると受け取られている。 「美術系の大学は、国内でも海外でも P 先生が学生だっ. 作家. た 30 年前は大体男女比が半々だった。しかし、現在こ. サステナブルプロジェクト. の学校では 25(男性):75(女性)であり、私学だと. 担当教員(民間出身). さらに女性の比率が高くなり 10:90 くらいだと思う。 アメリカでも大体 3:7 ではないだろうか。それは学生. 7-1 就職圧力. の親が美術系の大学は就職できないのではないかという. 就職すべきという考え方は、大学内部から自発的に出. ことを心配しているからだと思う。デザインだけは、4:. てきたものではなく、外部から大学に対して求められる. 6 の比率。要するに、社会的な基準からキャリアの圧力. ようになってきた一種の圧力と見ることができる。そこ. (E 大 P 先生)」 は大学入学前に既にあると思う。(8). 教育デザイン研究 第7号(2016年1月) 35.

(4) 職業地位達成の問題構成. また E 大の保護者も、取れる資格の種類や就職先な. なものを描いている方が良いという。(C 大 L 先生)」. ど出口を気にしているという。「本人の思いと保護者の. 「マンガ家になれたらベストだけど、でもこのへんも. 思いが違う場合、トラブルがあるような印象がある。芸. あるよねっていうイメージを学生はどういうふうにとら. 大に行かせたのだから、そのまま芸の道を進めるよう応. えているのか」という問いに対しては、 「それ(マンガ家). 援してくれれば一番幸せだと思うが、世の中全体に就職. 以外はあまり考えてない子が多いと思う」とのことだっ. しないとダメなのではないか、という雰囲気があるため、. た。また実際にマンガ家になれる子は稀であり、いろい. 保護者も心配されている。(E 大 Q 氏)」. ろと悩んでいる子は結構いるのだと思うという。. ただし就職の心配が全て教員に伝わっているわけでは. (C 大 L 先生). ない。C 大のマンガ学科の教員によると、保護者からも 高校からも就職率についてはあまり問われないという。. もともと芸術系は就職意識が高いかどうかという次元. また大学側からも教員に対して就職率を上げることを求. で語られるより、もとは「自由であった」という側面が. められていないという。保護者は、「この子はマンガや. 変化してきたと認識されている。その場合の自由は、人. りたいっていうんだから仕方ない」という様子だという。. とコンタクトを取らないことも許容されていたが、近年. ただ同じマンガ学部でもアニメーションは、集団作業の. ではそれが(部分的にであれ)許されなくなっていると. ため就活をもう少し真面目にやっていると捉えられてい. 語られている。. る。洋画や日本画についても作家になることが厳しいこ. 「もっと芸術大学って自由だったと思うんですよ。よ. とが周知の事実となっているため、マンガコースよりは. うするに家でほとんど絵を描いていて家からでないと. 就活をしている。マンガ家は、クリエーターの中ではな. か、誰とも口をきかないとか。友達を作らない、先生と. りやすい職種ということもあり、進路が決まっていない. 話をしないっていう学生が卒業出来た環境があったので. 形で卒業することが割と普通になっているとのことだっ. はないかなと。ちょっと上の世代の東京芸大を出たとか. た。(C 大 L 先生). いう人とか先生とかと喋っても、そんなに社会性があっ たとはとても思えない…。アウトサイダーみたいに、あ. 7-2 学生の就職観 ではこれらの学部の学生の就職に対する意識を確認し てみよう。A 大では、当初はマスコミ志望の学生が非常. るルールからも外れてしまってるところの受け皿になっ てるところがあったと思うんですよね。今もまさにそう ではあるんですけれども…。(D 大 O 氏)」. に多かったが、地元の一般企業を希望する学生が増加し たという。(A 大 J 先生)B 大も、地元で事務職を希望 する学生が多いという。(B 大 K 先生)このように人文. このように就職が一般的ではなかった大学では、就職 活動を行うこと自体が特別視されていた。. 系の大学では日本的雇用が前提としていた就職を想定し. 「今はあまりなくなったが、以前は就職の相談に来て. ている学生が多い。その一方で芸術系の学生はその分野. いるのを先生にも他の学生にも見られたくないという意. の仕事をすることを考えているが、それは学生自身が想. 識が学生側にあったようだ。そもそも就職する雰囲気が. 像しているイメージとしての専門職である。. なかった。音楽学部も就職する学生はほとんどおらず、. たとえば C 大では、就職するにしても、ある程度自. 留学するか演奏家になるかという選択肢だった。就職に. 分の時間がとれてマンガを描く時間があることを優先す. 相談に来るのは年に 1 人か 2 人くるような感じだった。. るため、バリバリ働くような企業はみんな行きたがらな. 音楽をやらなければ場合によっては音楽の企業に就職す. い。「マンガを使う仕事はいろいろあっても、学生は雑. ることもあるが、練習時間などがあるため、就職活動が. 誌に載りたがり、学生の方が頭が固い。それは自分が読. しづらい状況にはある。また教員の勧めで、ここにちょっ. んで面白かったマンガのイメージがあり、実用マンガと. と行っておいでというケースもある。しかし、一般企業. は異なるということがあると思う。卒業して何年か経つ. の就職は、面接が何度かあるため、練習時間や先生の個. と、何でもやりますという子が結構増えてくるが、卒業. 人レッスンと合わない場合がある。先生の理解が得られ. する時点ではまだそこまでの切迫感はなく、それだった. ればよいが、それがないと厳しい。(E 大 Q 氏)」. ら好きな同人誌を描いている方が良い、お金よりも好き. 36.

(5) 「昔はそれで成立していたところもある。高度成長期 なら大学を卒業してフリーでやっても、どこかの組織に 途中から入ることができた。あるいは 1、2 年海外に行っ. 在しているといえよう。 それに対し、芸術系では、専門性を何らかの形で活か す職種への就職する方向性を残している。. ていて、ふらっと日本に戻ってきても受け皿があった。. 「どういうふうに自分の能力を生かしていくかという. ところが今は、逆の状況になって、そういう指導が今の. 点では、教育のあり方とも絡んでくると思う。そういう. 実態に合っておらず齟齬(そご)が生まれてきたと思う。. ことも含めて、M 先生の立場はどうですか?」と M 先. そういう中で、就職していきたい学生層も増えてきてい. 生の考えを聞くと、「クールダウン / クールアウトとい. る。就職に対する意識が高まってきたときに支援体制が. うと言葉は悪いが、今やっていることを転換させられて. 完全でないと、入ってくる学生たちは不安を感じている. いないのがもったいないとは思っている」とのこと。転. 人が出てきている。」(F 大 S 先生). 換したり広げたり、発展させたりする方法を提案できる. このように芸術系ならかつては見られなかった就職を 想定した学生が散見されるようになってきている。. ところがあるといいという。M 先生は、だからこそキャ リア教育科目でのインタビューはマンガ家は 1 名で、 あとは美術教師やゲーム会社に就職した人を対象として. 7-3 働きかけ、折り合い このような就職圧力と学生の就職意識は相対立するも のでない。教員の働きかけをみることでその両者の関係 を明らかにしてみよう。. 実施した。また進路変更した学生を追いかけようと思っ ているが、大学に入る前と後で進路を変えた学生はあま りいなかったという。(C 大 M 先生) 「個人的には、『いくらなんでもフリーター 8 割か』. A 大学の社会学系の学科は、入試広報でマスコミを想. というのは少し思うところがあり、マンガと仕事と結び. 定進路としていると言っているが、現実にマスコミに. 付けられないかということを思っている。別に就職を勧. 就職することは難しい。マスコミの教員も「なれない. めるということではなく、マンガを使ってできる仕事が. よ」と言っており、企業の中の広報など大学で学んだこ. 実はいろいろあるのではないかと思っている。(C 大 L. とを企業で活かせるように視野をずらしていく。H 先生. 先生)」. のキャリアデザインという授業でも、マスコミやアスレ. C 大学は、マンガ家になれる率や困難さをあまり見せ. チックトレーナー、図書館司書など夢を抱いて大学に. ない。本人があまりダメだなと思っていても、それで他. 入ってくる子が多いが、理想と現実の学力のギャップが. の方向に誘導することも特にない。L 先生は「教員側も. 大きいので、その中で「こういう仕事はどうですか」な. そこまでの判断はできない。こいつダメだなと思っても. どだんだん現実味を帯びてくるように落として、折り合. 長く頑張っていればということもある。」と考えている。. いをつける作業を 3 年生でやっていく。学生には自分. M 先生によれば、他の大学の方が、クールアウトを行っ. と話すと「現実が落ちてくるから嫌だ」と言われる。自. ているという。. 分と話すと現実が落ちてくる、つまり夢を毎回砕かれる. このように芸術系の場合、学歴に見合った職種という. ということ。1 年生のときは放っておくが、やはり 3 年. 学歴の水準については考慮されておらず、専門性という. 生で夢を見ても仕方がないので、「目標にしなさい」と. 教育内容のキャリアへの活用が大事だと考えられてい. 言ってそうした作業を始める。(A 大 H 先生). る。. また、A 大や B 大では、もともと事務職希望であった. ところで、間断なき移行を普遍的なものとみる教育社. 学生に対し、現実に事務職の求人がないということで、. 会学の捉え方では、このような専門性を活かした就職と. 求人のある営業職を「大卒に見合った職種である」といっ. いうことはあまり想定されていない。それが以下の聞き. た説明で勧めている。このように、人文系では教員が一. 取り内容にも反映されている。聞き手の新谷(教育社会. 定の職種に水路づけを行っている。この水路づけは、専. 学者)は、教育社会学の捉え方「就職=正社員就職」と. 門性が活かせることではなく、現実に就職しやすい求人. 捉えて尋ねているが、D 大学の N 氏や O 氏は、正社員. のある職種への水路づけである。大卒に見合った仕事と. になることだけが就職であるとは捉えておらず、雇用形. して営業職を勧めているというのは、専門性はともかく. 態が何であれ「専門職」であることも重要な就職である. 大卒者の能力に見合った仕事に就くべきという考えが内. と語っている。つまり、正社員就職が優先順位として高. 教育デザイン研究 第7号(2016年1月) 37.

(6) 職業地位達成の問題構成. いわけではないという事実のみならず、芸術系の捉えて. 「作家にならない大多数はルーザー(失敗者)なのか. いる問題構成が教育社会学のそれとは異なっていること. といえばそれは違うということでないと大学の意味がな. が重要なのである。. い。一方で、就職を目的とするのは、大学は職業訓練校. 新谷「芸術を極めるとか、芸術の分野で働いていくと. ではないのでおかしい、特に芸術系の大学としてはおか. いうのは、それ以外の働きの分野も多分あると思うんで. しい。そうではなくて、別のタイプの自分が納得できる. すね。そういうものをそのキャリア教育や、それ以外の. クリエイティブな方法で生きていく方法を見つけてほし. 教育も含めて大学の中でどういう形で組み込んでいくの. い。それを一生かけて探すのが要するにキャリアなので. かっていうところをうかがわせていただければと思いま. はないかと思っている。自分で自分に課題を出せる、社. して。」. 会の中に自分の居場所をつくれること、そのつくった居. O 氏「かなりなんか議論が進んでいるという感じがし. 場所が社会とどのようにしてつながるかということをク. ます。大学として正社員を勧めるとかいう観点に立った. リエイティブにやっていけることだと思う。そのため、. ことがないですね。~中略~正社員という観点は今この. 職業形態は問わない。たまたまパン屋さんかもしれない. 場で初めて(伺った)。」. し、小学校の先生かもしれないが、そこをベースにして 何か新しい関係性の場ができればよいということを指導. 専門性の追求が結果的に良好な就職につながるという. している。(E 大 P 先生)」. 因果関係を D 大学では以下のように説明している。 「例えば広告の大きな会社であっても『アート職』っ. では美術系にとって何かをしないとはどういうことで. ていう職業があって、入社試験が比較的専門の深さを見. あろうか。専門性を追求する中では進路未定者が意味す. るんです。ようするにその会社が日常的に作ってるよう. るものも通常の大学・学部とも異なる。E 大の場合、進. な商品とか広告とかを作っても受からないんですよ。そ. 路未定者は、就職したいのか、制作活動したいのか、演. んなのを作っても受からなくて、もっと深い専門性を. 奏活動したいのか、留学したいのか、まだわからない人. 持ったアーティスティックな仕事をしている学生を好む. である。また猶予期間と言っても何もしてないわけでは. 傾向が企業側にもあって、そうすると、ようするに会社. ない。卒業後就職していない人たちは、留学したりフラ. の方を向いて作品を作るということを会社が望んでいな. フラしたりしているという。「フラフラと言っても、一. いって言う状況があるんです。むしろ就職活動のための. 方ではクリエイティブなことをしており、何もしていな. 授業を置く事が就職活動にマイナスになる可能性だって. いわけではない。いろいろなところに参加し、プロジェ. ある。. クトを立ち上げたりもしている。その活動を表現する言. 話がちょっと転倒してしまってますけれども、私は企. 葉がないだけであり、猶予期間にいろいろやっている。. 業の立場の言葉で言っても同じ言葉を言うと思います。. しかし、これは大事なことで、その後大学に戻ってくる. つまり、例えば何か新しいアプリケーションソフトの使. 学生も 5 年間で 2 人いた。学部からストレートで院に. い方を教育するみたいなのが就活的な考え方としたら、. 上がるよりリアリティが全く異なるため、その方が良い. それよりも手で大根なら大根を一本完全に描ける方が受. と思う。社会に出たら一緒に話せる場がないということ. かります、企業には。なので、その意味での『専門性か、. を彼らは痛感する。アルバイトに行ったとしても突っ込. 就活か』っていうような二項対立は起らない。(D 大 O. んだ話は出来ず、世間話しか出来ない。大学なら、ある. 氏)」. 共有ができるため、その大事さを分かった上で戻ってく. このように企業は深い専門性を有した学生を好むとい. るのだと思う。また次に卒業するとき、そういった場所. う。就活のための授業、つまり会社の方を向いて作品を. を自分たちでつくっていくことの意味も分かってくるん. つくることがむしろ就活にマイナスになる可能性もあ. じゃないかなと思う。(E 大 P 先生)」. る。 E 大でも専門性を追求することが大切であると考えら れている。ただし作家だけが専門性を追求できるキャリ アではないという。. 38. 芸術系の教育は、人文系で想定しがちな就活のために 会社を向いたキャリア教育が、実際の企業で求められて いるものとは異なる可能性を示唆するものである。 このように、人文系と芸術系を比較してきたが、人文.

(7) 系が全てこのような水路づけをしているわけではない。. す雰囲気にない。みんな何もやってないのでそのままで. 芸術系と同様に専門性という点を示すことによって直接. いいんじゃないのという意識が主流派になっていく。逆. 的な就職圧力から逃れている分野も存在している。たと. に、就職活動をやっているのはマイノリティで特殊な人. えば、心理学科では、入試倍率が高いので、臨床心理士. 間とみられる。(F 大 S 先生)」. になれない人が多くても、就職率がとやかくいわれるこ とはない(A 大 J 先生)。. ビジネス出身の教員と芸術家肌の教員の関係について 尋ねたところ、おたがい自信を持ってそれぞれの道を歩. このように、就職圧力という一見普遍的にみえるもの. んできたことが分かっているので、そういう世界がお互. が、学部や学科の違いによって温度差を伴って降ってき. いあると認識している状況ではないかとのこと。(F 大. ている。これは、就職圧力という「一般解」が普遍的に. S 先生). 存在しているのではなく、優先順位としての就職がどの 位置にあるのかということが学科の事情によって異なる. また B 大の K 先生も、内部の教員との向き合い方の 変化を以下のように語っている。. のだという「特殊解」が現実に「潜在」しているという. 「大学教員のキャリア教育に対する拒否感は、キャリ. ことになるだろう。これは、教育社会学がこれまで想定. アカウンセラー時代の公立大学の時が強かった。本学の. していた間断なき移行モデルの規範性が、専門性を重視. 前に働いていた国立大学の時は、任期付きのキャリア支. する分野ではそれほど重要なものではないことを示すも. 援専門の教員として雇用されていたので、反発はなかっ. のである。. た。もちろん、本学に着任した最初の頃には少しあった。 例えば、文学部の某先生には大学は就職のことを考えさ. 7-4 問題構成のずれへの向き合い方. せる場ではないというクレームを受け、1 時間ほどお叱. このような問題構成のずれがいつ認識されるのかとい. りを受けることもあった。しかし、逆にそういった先生. う点については、プロセスを追った研究ではないので、. こそ、おそらくゼミレベルで学生の面倒をしっかり見て. その点から明らかにすることはできない。ただし、外部. いると思う。単に視点の違い、つまり学部所属の先生は. からキャリア教育担当者として芸術系や人文系に赴任し. 自らの学部やゼミ生を見ているが、センター付採用の私. た時に感じた違和感などを分析することを通して、その. は、全学の学生のキャリア形成および進路の面倒を見て. 一端を垣間見ることは可能である。. いる。よって、お互いがその視点の違いを念頭に、承認. 民間企業出身で F 大に赴任した S 先生はその違和感 を次のように語っている。 「大学にきたときにショックだったのは、4 月に教員. できない部分をつつかないようにコミュニケーションを 深めていくことで、キャリア教育に対する批判は無く なっていった。(B 大 K 先生)」. になって秋の就活開始時期になっても、誰も就職をする 雰囲気とか様子が見えなかったことである。そこで当時. このように民間出身の教員は大学赴任の際に既存の大. の就職の担当のチームの職員に、ここって就職している. 学の就職に対する距離の取り方に違和感を持ちながら. 人はどのぐらいいるのか尋ねたところ非常に少なかった. も、何らかの折り合いを見出そうとしている。以下でそ. のでショックを受けた。. の折り合いの方法として用いられている PBL に目を向. こうした背景には、就職する支援体制が完全にできて. けてみよう。. なかったこともあるが、支援体制ができる以前の話とし て、就職をさせようという意識が大学全体で希薄になっ. 7-5 PBL とその意義・限界. ていたように思えた。これは芸術系大学の長い歴史の文. A 大学では、カリキュラム上で想定進路とされてい. 化の中でそういう形態ができてきたと思うが、会社に. るマスコミについて学ぶために PBL を取り入れている。. 入ってではなく、自分の創作活動の中で表現していくと. 例えば、フリーペーパーを作るような授業や FM ラジオ. いう一つの流れがある。それを考えると、会社に入るほ. を作るような授業を行ってきた。FM ラジオの授業は、. うがたぶん不思議なのだろう。教員自身がそういう歴史. 2 年次 3 年次と 2 年間継続受講できるようにした。ま. の中にいると、それが当たり前だと思う。. た 2 年生のときに社会調査の実習をやり、1 年かけてそ. そういう文化なので、圧倒的に就職に対して興味を示. の成果を合同発表し、ゼミ別対抗のコンテストにつなげ. 教育デザイン研究 第7号(2016年1月) 39.

(8) 職業地位達成の問題構成. た。このように学生が共同で行う取り組みを 10 年間く. トの関係を学内という閉ざされた世界ではなくて、外と. らい継続してきた。しかし、教員が頑張りすぎたせいも. 中で体験をして、それを自分なりの言葉できちっと整理. あると思うが、学生が大変すぎるということで受講生が. をしようということと、社会に出て行った時に必要な、. 大幅に減った時期があり、それが教員の気持ちと学生の. それのグループワークの力を身につけましょうという。. 気持ちのギャップを考えるようになった最初の出来事で. 結果として、そのことが身に付く、またはそれなりの気. あるという。. 付きを持っていけば、就職の決定率というのが上がって. またフリーペーパーを作る授業では、実際に雑誌を 作っていた方と会い、編集会議をして、締め切りまでに. いくであろうと、いう仮説の元で、その就職決定率とい うのを一つの指標に使った。(D 大 N 氏)」. 学生が持ってきて、それに基づいて次の方向を決めてい. そのため大学側の「就職率を上げましょう」という掛. くというスタイルの授業をやっていたが、学生にとって. け声は、「また別の観点」であり、学生の方を向いてい. は毎回課題は出るし締め切りはあるし、締め切りが近づ. ない。学生募集や広報的な意味合いではあるが、それは. くと夜遅くまでやらないといけないものだった。また. 「また別のお話」であるという。. ちょうどリーマンショックが起こり、学生が大手志向を. 大学、理事会や文科省が「就職率を上げましょう」と. 強めて、学科でも学生の流れが変わってしまい空回りし. かなり強く言う空気があると思うが、そういうものをど. てしまったという。. のように真面目に受け止めてというか尋ねたところ、O. 最初の頃は学生が熱心で、教員も嬉しいからすごく頑. 氏「ああ、なるほど。それはまた別の観点ですね。そこ. 張っていたが、次第に、学生から課題が増えすぎると困. はもう目の前の学生の方を向いておりません。つまり学. るという訴えがあって教員もがっかりしたり、もしくは. 生募集であったりとか、広報的な意味合いであったり、. 友達と一緒じゃないと嫌だというような子どもっぽい意. 本学は「就職に強い芸術大学」っていうような方針を出. 見が出てくる中でどうしようかという話になった。一方、. していますので、それはまた別のお話としてあります。」. メンタルの部分で配慮しなければならない場合も増え、. とのことであった。. 厳しくするだけでは難しくなってきた。プロジェクト型. D 大にとって「就職に強い」と指標は、正社員就職率. を 6、7 年推してきたが、最近はトーンダウンして、や. や専門職就職率よりも有名な映画監督やアーティストが. り方を考えないといけないと思っている時期である。 (A. 出ることの方が力があり、カリキュラム改革でクリアす. 大 J 先生). る問題ではないという。. このように、A 大学の PBL は、学習への動機づけと. O 氏「まぁ、あの例えば 30 年後くらいのスパンになっ. 広い意味で専門性を仕事に結びつけようとした挑戦的な. たら、今の就職率が何ポイント上がったとかよりも、誰. ものであったが、継続する中で困難な部分も生じている。. もが知っている映画監督とか、あるいはアーティストが. 次に、「質の高い大学推進プログラム」に採択された. 世界で活躍するとかっていうのが一人一人ポンポンポ. D 大学の取り組みをみてみよう。同プログラム申請の際. ンって出る方がよっぽど力があると思いますね。ただそ. には就職決定率に触れているが、それは就職率自体が目. れは今私たちが、こうするっていうような例えばカリ. 的ではないという。. キュラム改革とかでクリアする問題ではないですから。」. 就職希望者に PBL に参加してもらって、それの結果、. このように D 大では、PBL を通して専門性をグルー. 就職決定率が非参加者に比べて高いというデータを拝見. プワークにつなげようとしている。これによって就職圧. すると、就職率を上げなくちゃいけない、と捉えている. 力を直接受けることなく、「就職に強い」という大学独. ように見受けられるが、と尋ねたところ、以下のような. 自の基準を守り抜いているといえよう。. 回答であった。 「指標として就職決定率を使ってるんですけど、そも. 8.まとめ. そもは本学の建学の理念というのがあって、それで、そ. 芸術系・人文系のキャリア教育に内在している職業地. こから組み立てをしていて。でも出口のことは決して意. 位達成の指標を聞き取り調査をもとに分析したところ、. 識していないわけじゃないですけど。その目的としては. 職業地位達成の研究が含意していた「標準的モデル」を. 大きく、まあ簡単に言うと二つあって、一つが芸術とアー. 相対化させる方向が存在していることが明らかになっ. 40.

(9) た。たしかに近年の就職圧力はこれまで一般的な就職と. 社会保障のベースになるモデルである。我が国では. は距離を置いてきたこれらの大学・学部にも影響を与え. このような生き方を「標準的」であるとしてきた。. てきている。しかしこれらの学部では、この就職圧力に. (2) 「冷却」や「加熱」の概念は竹内 (1988)(1995) を参照。. 直接応えるのではなく、専門性を高めることや人とかか. (3)山田(2000)p131. わる力を高めることが結果的に良好な就職につながると. (4)たとえば、自己啓発を求める議論は、個人の能力・. いう論理を持っていた。これはキャリア教育が企業の論. 努力不足に還元した議論である。牧野(2012)を. 理に沿うことによって教育の論理を後退させるのではな. 参照。. く、教育側の主導権を維持し続けようとする戦略とみる. (5)この点については、本田(2010)や児美川(2007) などのキャリア教育批判とも共通しているが、これ. ことができるだろう。 これは、「標準的モデル」を前提とした職業地位達成. らの研究も属性による不利を想定したものとは言い. モデルを前提とした場合には、直接就職に効果のある方. 難い。属性による差という点に着目した研究として. 策には見えない。しかし「標準的モデル」自体が特殊な. は、低学歴のものがフリーターになりやすいなどの. 方向性を指向していると捉えるならば、ここで採りあげ. 点を明らかにした日本労働研究の一連の研究などが. た PBL などは、「専門性」追求と「標準的モデル」追求. 挙げられる。たとえば小杉 (2002)(2003)(2010)、. のそれぞれの歪みを調整しつつも両者を結果的に高める. 日本労働研究機構 (2000 a )(2000 b ) など。. 方向性であるといえるだろう. (9). 。図 1 はその概念図で. ある。. (6)これらのキャリア教育の検討内容については、稲 﨑 (2014) を参照。 (7)I 課長によると、当初は 100 人程度を想定してい. 今後の課題 本稿では芸術系・人文系のキャリア教育に内在する職 業地位の指標には「標準的モデル」を相対化させる構造. たが、夫婦で参加している方も多く、500 人規模 の教室に収まりきらないくらいの参加者であったと いう。. があることは把握できたが、それがどのようにできてお. (8)現実に美術系の男女比率をみてみると、たしかに. り、またどのように変化しているのかというダイナミズ. 女子学生の比率が高まっているが、大学全体でも女. ムについてはまだ十分に検討できていない。専門性の追. 子学生の比率が高まっている。女子比率の高まりは. 求は、どこまで就職圧力に抗しうるのか。この事例がど. 美術系以上に大学全体での女子比率の伸びがうわ. こまで汎用性を持つのか、今後検討する必要がある。. まっているため、この P 先生の捉え方は芸術系の 大学を特別視する見方であるということができる。 しかし女子の比率の増加を「芸術系が就職できない から」という理由に回収して解釈がなされていると いう芸術系の教員の主観的な捉え方がこの場合は重 要である。 (9)もちろん、この PBL がどの程度就職に対して効果 があるかは一概には評価できない。A 大のように PBL の限界が出ているところもある。D 大の場合も、 この PBL に巻き込むことができたのは一部の学生 だけであることはインタビューから予想できる。 引用文献 濱口桂一郎 2009『新しい労働社会』岩波新書. (1)「標準的モデル」とはわが国の戦後社会保障を設計 する上で前提としたモデルである。学校卒業後に間 断なく職業生活に移行し、そこでの正規雇用就労が. 林 祐司 2009『正社員就職とマッチング・システム』 法律文化社 久本憲夫 2003『正社員ルネサンス』中公新書. 教育デザイン研究 第7号(2016年1月) 41.

(10) 職業地位達成の問題構成. 本田一成 2007『チェーンストアのパートタイマー』白 桃書房 本田由紀 2010『軋む社会』河出書房新社 稲﨑由依 2014「キャリア教育における『職業観の育成』 をめぐる問題」『キャリア教育における「非就労」 の位置づけに関する研究 最終報告書』22-33 岩木秀夫 2006「非正規就業問題への教育訓練政策パラ. 本労働研究機構報告書 138 号 小倉一哉 2013『「正社員」の研究』日本経済新聞社出 版社 新谷康浩 2005「フリーター問題とモラトリアム青年」 『現代のエスプリ』460 号 77-85 新谷康浩 2006「若年『無業者』の歴史社会学的研究」 『季 刊社会保障研究』42 巻 2 号 115-125. ダイムと雇用労働政策・社会保障政策パラダイム. 新谷康浩 2010「キャリア教育とワークフェアに関する. に関する一考察」『季刊社会保障研究』42 巻 2 号. 一考察」『横浜国立大学教育人間科学部紀要Ⅰ教育. 106-114. 科学』№ 12 97-103. 児美川孝一郎 2007『権利としてのキャリア教育』明石 書店 小杉礼子 2002『自由の代償/フリーター 現代若者の 就業意識と行動』日本労働研究機構 小杉礼子 2003『フリーターという生き方』勁草書房 小杉礼子 2010『若者と初期キャリア』勁草書房 牧野智和 2012『自己啓発の時代』勁草書房 眞鍋倫子 2013「大学教育とキャリアをつなげること― 芸術系の大学へのヒアリングから」『教育学論集』 55 集 153-170 西本万映子・今野浩一郎 2003「パートを中心にした非 正社員の均衡処遇と経営パフォーマンス」『日本労. 竹内洋 1988『選抜社会 試験・昇進をめぐる<加熱> <冷却>』リクルート出版 竹内洋 1995『日本のメリトクラシー 構造と心性』東 京大学出版会 薬師院仁志 1992「社会的事実の問題構成」『京都大学 教育学部紀要』38 号 311-323 薬師院仁志 1998「『自殺論』の問題構成」 『ソシオロジ』 43 巻 1 号 73-90 山田昌弘 2000「『問題家族』の臨床社会学」大村英昭・ 野口裕二編『臨床社会学のすすめ』有斐閣アルマ 山口毅 2007「進路選択と支援」本田由紀編『若者の労 働と生活世界』大月書店. 働研究雑誌』45 巻 5 号 47-55 日本労働研究機構 2000a『フリーターの意識と実態 . 本稿は科研費基盤研究(C)「キャリア教育における. 97 人への調査結果より』日本労働研究機構調査研. 『非就労』の位置づけに関する研究」(課題 番号. 究報告書 136 号 日本労働研究機構 2000b『進路決定をめぐる高校生の 意識と構造―高卒フリーター増加の実態と背景』日. 42. 23531112)および基盤研究(C) 「大学教育のグロー バル化と潜在的キャリア教育に関する研究」(課題 番号 15K04352)の成果の一部である。.

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参照

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