• 検索結果がありません。

幼児期における主体的・対話的で深い学びに関する一考察 ー幼児期の教育における見方・考え方との関連性からー

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "幼児期における主体的・対話的で深い学びに関する一考察 ー幼児期の教育における見方・考え方との関連性からー"

Copied!
22
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

ࢺзఙȾȝȤɞ˿ͶᄑˁߦᝈᄑȺ຅ȗޙɆȾᩜȬɞˢᐎߔ

──幼児期の教育における見方・考え方との関連性から──

伊 藤 茂 美  嶋 守 さやか  上 村   晶

A Study of Proactive and Dialogic Deep Learning in Early Childhood Education

—With the Relation to Viewpoints and Approaches Regarding Early Childhood Education—

Shigemi I

TO

, Sayaka S

HIMAMORI

and Aki U

EMURA

ቼᴮቛǽץᭉȻᄻᄑ  2017年に文部科学省から改訂された小学校学習指導要領(1)、及び幼稚園教育要領(2)におい て、「主体的・対話的で深い学び」の重要性について提言された。まず第㧝章では、主体的・ 対話的で深い学びとは何を意味するかを吟味するために、教育方法学におけるアクティブラー ニングの定義や、小学校学習指導要領及び幼稚園教育要領で提言されている内容を整理しつつ、 課題の所在を明らかにしていく。 ቼᴮኮǽɬɹʐɭʠʳ˂ʕʽɺȾᩜȬɞകॡ୥ျ  学習者の能動的な学習への参加を取り入れた教授・学習法として、文部科学省(2012)はア クティブラーニング(Active Learning)の推進を提言した(3)。このアクティブラーニングとは、 学習者の能動的な学習を促すことであり、認知的・倫理的・社会的能力・教養・知識・経験を 含めた汎用的能力の育成を目指したものとして捉えられている。

 このアクティブラーニングの概念に関して、Bonwell & Eison(1991)は、「学習者にある物 事を行わせ、行っている物事について考えさせること」と定義づけると同時に、①学習者が授 業を聴く以上の関わりをしていること、②情報の伝達より学習者のスキルの育成に重点が置か れていること、③学習者は高次の思考(分析・総合・評価)に関わっていること、④学習者は 活動(読む・議論する・書く)に関与していること、⑤学習者が自分自身の態度や価値観を探 究することに重点が置かれていること、などの一般的特徴を挙げている(4)。上記の特徴は、主 に大学等の高等教育機関における学生を学習者と捉えた知見ではあるが、知識を上位下達的に 教授する学び方から、学習者の内発的な学習活動を通じて多様な思考力・判断力などを培いな がら自身の意識の涵養や価値変容を促すような学習者主体をした能動的な学び方へと、パラダ イムシフトが図られていることが窺われる。  また、溝上(2012)は、「一方的な知識伝達型の講義を聴くという(受動的)学習を乗り越

(2)

える意味での、あらゆる能動的な学習のことであり、多様な活動への関与とそこで生じる認知 プロセスの外化を伴う」と定義づけている(5)。よって、単なる能動的学習ではなく、「体得し

た学びをどのようにアウトプットするか」という視点も重視していると言えよう。

 このような学びに対する能動的な活動が、学習者にもたらす学びに資することが提言されて いる中、どのように「深い学び」を生み出していくかが重要になると考えられる。この点に関 し、松下(2015)は、「ディープ・アクティブラーニング(Deep Active Learning)」の重要性を 指摘すると同時に、その深さの系譜として、①学習の深さ(求められることをこなすのではな く、概念を自分で理解すること)、②理解の深さ(事実的知識や個別的スキルに留まらず、転 移可能な概念や複雑なプロセス、原理と一般化などを通じて、永続的理解を構成すること)、 ③関与の深さ(学習者がその活動に熱中・没入すること)の㧟点を提言している。また、外的 活動における能動性(身体的に活発な学習活動に対する能動性)と、内的活動の能動性(頭や マインドがアクティブに作用するような知的に活発な学習活動に対する能動性)の㧞つの能動 性に着目しながら、双方の学習活動の能動性の高さを重視した学習がディープ・アクティブ ラーニングであると述べている(6)  これらの知見を整理すると、学習者にとって深い学びをもたらしていくためには、外的情報 のインプット・アウトプットや、学習者の関与や能動性(動機付け)が必要であると考えられ る。すなわち、教師は学習者が存分に没頭できるような外的環境を整えると同時に、学習者自 身が自ら外的環境に働きかけ、環境との相互作用を通じて成功体験や自己充実感が味わえるよ うな学習支援が重要であると言えよう。この点に関し、松下(2015)も、「動機付けとアクティ ブラーニングは相乗的に協働し、両者の相互作用によって関与が高められる」という見解を示 すと共に、深い関与を促す㧟つの条件として、①課題は適度にチャレンジングなものであるよ うに努め、学習者が最適のチャレンジレベルで取り組めるように配慮すること、②学習者間が、 学習コミュニティのメンバーとして互いに相互交渉できるように配慮すると同時に、教師もま た学習プロセスにおけるパートナーである認識を持つこと、③学習者が認知領域と情動領域を 統合しながらホリスティックに学べるように配慮すること、などを指摘している(7)。よって、 教師側は単なる学習環境の整備や教育アプローチを転換することだけに留まらず、学習者の学 びのプロセスに並走しつつ、内発的動機付けや能動性を喚起するような働きかけを意識してい くことが必要であると言えよう。  このような学習方法の潮流から、2017年に小学校学習指導要領ならびに幼稚園教育要領が 改訂された。次節では、幼児・児童の学びを深めていくために、どのような事項が重視されて いるのかを整理していく。 ቼᴯኮǽߴޙಇȾȝȤɞ˿ͶᄑˁߦᝈᄑȺ຅ȗޙɆȻɂ  小学校学習指導要領総則第㧟の㧝⑴には、「児童の主体的・対話的で深い学びの実現に向け た授業改善」を規定している。それは、「児童・生徒に目指す資質・能力を育むために、『主体 的な学び』『対話的な学び』『深い学び』の視点を明確にすることである」と言われている。小

(3)

川ら(2018)は、「学習活動の質の向上を主眼とし、見通しと振り返る場、対話する場、生徒 が考える場、教師が教える場等をどう組み立てるか授業実践力(設計・実践・改善)を問うも の」だとする。特に、「『深い学び』の鍵として『見方・考え方』を働かせることが重要で、そ のための視点形成及び思考形成が重要となる」という(8)  「主体的・対話的で深い学び」の実現を目指すための授業改善の視点として、平成28(2016) 年㧤月の「中央教育審議会のまとめ」では、次の㧟点が示されている。  ① 学ぶことに興味や関心を持ち、自己のキャリア形成の方向性と関連づけながら、見通し を持って粘り強く取り組み、自己の学習活動を振り返って、次につなげる「主体的な学 び」が実現できているか。  ② 子供同士の協働、教職員や地域の人との対話、先哲の考え方を手掛かりに考えること等 を通じ、自己の考えを広げ深める「対話的な学び」が実現できているか。  ③ 各教科等で習得した概念や考え方を活用した「見方・考え方」を働かせ、問いを見いだ して解決したり、自己の考えを形成し表したり、思いを基に構想・想像したりすること に向かう「深い学び」が実現できているか(9)  貴志ら(2018)は、子どもたちの個々の深い学びのための「授業の中で、子ども同士が互い の考えや思いを出し合い、つなぎ合い、練り合う学習活動」の手立てについて示している。「子 どもが つなぐ つくる つながる たのしい授業」をテーマに展開される授業のなかで、 子どもたちは、「学習中、常に互いの考えや思いをつなごうとしている。友達の発言と自分の 考えを比較し、ある時は共感的にある時は違う観点から㧝つの考えを広げたり深めたりするこ とができるようになってきている」という。そこで「一貫しているのは、『発言はつなぐもの』 という子どもたちの意識が明確に感じられることである」(10)  「一方向的な知識伝達型講義を聴くという(受動的)学修を乗り越える意味での、あらゆる 能動的な学習」をアクティブラーニングとする鎌田(2016)は、「能動的な学習には、書く・ 話す・発表するなどの活動への関与と、そこで生じる認知的プロセスの外化」を伴うものだと している。その「最大のポイント」は、「学習を個人的なものから他者や集団を組み込み、社 会的なものへと拡張していくこと」である。その鍵は、「活動への関与と認知プロセスの外化 の十分な協奏」にあるとされている(11) ቼᴰኮǽࢺሓٛȾȝȤɞ˿ͶᄑˁߦᝈᄑȺ຅ȗޙɆȻɂ  また、幼児期からのアクティブラーニングも注目されるようになり、文部科学省中央教育審 議会の「幼児教育部会における審議の取りまとめ」の報告書(2016)の中では、幼児教育にお ける重要な学習としての遊びは、環境の中で様々な形態により行われていることを踏まえ、主 体的な学び・対話的な学び・深い学びの㧟つの視点から、絶えず指導の改善を図っていく必要 があることを提言した(12)。このように、アクティブラーニングの視点に立って学びを深めて いく具体的方法を、幼児教育の実践現場でさらに明確にしていく必要性が提唱された背景を踏 まえて、2017年㧟月に幼稚園教育要領の改訂へと至った。

(4)

 改訂幼稚園教育要領に着目すると、第㧝章総則には、以下のように記されている。 第㧝 幼稚園教育の基本  幼児期の教育は、生涯にわたる人格形成の基礎を培う重要なものであり、幼稚園教育は、 学校教育法に規定する目的及び目標を達成するため、幼児期の特性を踏まえ、環境を通して 行うものであることを基本とする。  このため教師は、幼児との信頼関係を十分に築き、幼児が身近な環境に主体的に関わり、 環境との関わり方や意味に気付き、これらを取り込もうとして、試行錯誤したり、考えたり するようになる幼児期の教育における見方・考え方を生かし、幼児と共によりよい教育環境 を創造するように努めるものとする(13) 第㧟 教育課程の役割と編成等 㧟 指導計画の作成上の留意事項 ⑵ 幼児が様々な人やものとの関わりを通して、多様な体験をし、心身の調和のとれた発達 を促すようにしていくこと。その際、幼児の発達に即して主体的・対話的で深い学びが実現 するようにするとともに、心を動かされる体験が次の活動を生み出すことを考慮し、一つ一 つの体験が相互に結び付き、幼稚園生活が充実するようにすること(14)  上記の文言を踏まえ、幼稚園教育における学びの深まりに関して、以下の㧞点に着目したい。  まず、㧝点目としては、「幼児期の教育における見方・考え方」の捉え方である。この点に 関して、幼稚園教育要領解説(文科省,2018)では、小学校以降の発達を見通した上で、幼稚 園教育において育みたい資質・能力(知識及び技能の基礎、思考力・判断力・表現力等の基礎、 学びに向かう力、人間性等)を幼児期にふさわしい生活を通して育む重要性を提言した上で、 幼児が生活を通して身近なあらゆる環境からの刺激を受け止め、自分から興味をもって環境に 主体的に関わりながら、様々な活動を展開し、充実感や満足感を味わうという体験を重ねてい くことを重視する必要性や、幼児が環境との関わり方や意味に気付き、これらを取り込もうと して、試行錯誤したり、考えたりするようになることの重要性が記されている(15)。すなわち、 幼児自身が自ら環境と対話し、環境との面白い関わり方を発見したり、意味づけや関連性を見 出したりしながら、自らの中に取り込もうと試行錯誤を通して環境との関わり方を深めていく ことは、第㧝節で提言されていたアクティブラーニングの定義と相通ずるものがあると言えよ う。  㧞点目として、「主体的・対話的で深い学びが実現と心を動かされる体験の重視」が挙げら れる。幼稚園教育要領解説(文科省,2018)では、教師は幼児の活動を精選しながら、幼児が 周囲の環境とどのように関わるか体験の質を重視しつつ、主体的・対話的で深い学びが実現す るように、一人一人の発達の実情に応じた柔軟に対応したり、集団生活の中で幼児同士の関わ りが深まるよう配慮したりしながら、指導の改善を図る必要性を提言している。また、幼児に

(5)

とって、様々な情動や心情を伴う体験は、環境との関わりに没頭し、内発的に動機づけること を意識しながら、体験のつながりや深まりや広がりを重視する必要性が記されている。そのた めに教師は、①一人一人の幼児の体験を理解しようと努めること、②幼児の体験を教師も共有 し共感すること、③体験から生じた興味や関心を理解し、追究できるような環境構成に配慮す ること、④体験から得た幼児の学びを理解しながら、学びの深まりや発展を意識した環境構成 に配慮すること、⑤継続的な体験のつながりや関連性を捉え、幼児の学びをより豊かに理解す ること、の㧡点を念頭に置いて指導する必要があると提言している(16)。これらのことから、 幼児期における 学び とは、概念的な認識や理解のみを意味するのではなく、五感を使って 感じ取ったり味わったりするような心が動かされる体験にも着目しながら、その体験の質を高 めていくような環境を整えていくことが重要であると言えよう。したがって、主体的・対話的 で深い学びを生み出されるためには、教師の細やかな配慮に基づき、子どもの内面活動の能動 性を高めたり、友達との対話や協働的な取組を助長したりしていく必要があると考えられる。 ቼᴱኮǽᝥᭉɁ੔٣ȻటᆅሱɁᄻᄑ  第㧞節と第㧟節を比較すると、今回の指導要領改訂の際に、小学校教育及び幼稚園教育にお いて、同じように「主体的・対話的な深い学び」が重視されていることが窺える。小学校教育 では学習指導要領の教育内容に沿って教科書を主教材として学習を深め、幼児教育では環境を 主教材とした遊びを中核に据えて直接体験を重視する。各々の発達過程に即した「学び」の捉 え方があり、幼児・児童はそれぞれの「見方・考え方」を働かせていく。両過程に根幹的に通 底するのは、仲間と問題解決に取り組んでいく学びの深め方であると言えよう。  以上の点を踏まえ、本稿において幼児期の教育における「主体的・対話的で深い学び」を考 究していく上で、幼稚園教育における「主体的・対話的で深い学び」の定義に関する課題が挙 げられる。前節で示した通り、幼稚園教育要領並びに解説を概観する限り、本用語の明確な定 義については言及されていない。しかし、前述の中央教育審議会「幼児教育部会における審議 の取りまとめ」においては、議論のプロセスの中で「主体的な学び」「対話的な学び」「深い学 び」の㧟つの視点の具体的な視点が明示化されている(17)  ① 「主体的な学び」の視点:周囲の環境に興味や関心をもって積極的に働き掛け、見通し をもって粘り強く取り組み、自らの遊びを振り返って、期待をもちながら、次につなげ る「主体的な学び」が実現できているか。  ② 「対話的な学び」の視点:他者との関わりを深める中で、自分の思いや考えを表現し、 伝え合ったり、考えを出し合ったり、協力したりして自らの考えを広げ深める「対話的 な学び」が実現できているか。  ③ 「深い学び」の視点:直接的・具体的な体験の中で、「見方・考え方」を働かせて対象と 関わって心を動かし、幼児なりのやり方やペースで試行錯誤を繰り返し、生活を意味あ るものとして捉える「深い学び」が実現できているか。  上記の㧟つの視点と本章第㧝節で見出された知見を比較すると、内的活動の能動性や内発的

(6)

動機付けが「主体的な学び」の視点と、また認知プロセスの外化や情報のアウトプットなどが 「対話的な学び」の視点と相通ずると捉えることができよう。しかし、「深い学び」の視点は、 瞬時の単発な出来事や体験のみで実現するものではなく、情動的な感動や発見などに幼児が心 を動かされながら、体験が継続的につながり発展していく保育プロセスの中にこそ価値を見出 すと捉えることができ、幼児期における学びの深さとは、第㧝章第㧝節で示した松下(2015) が提言する深さの㧟つの系譜とは質が異なることが推測される。よって、幼児期における「深 い学び」を考究していく上では、継続的な実践や観察を通して、保育プロセスが充実する中で 学びの深まりを捉えていく必要があるのではないだろうか。  以上のような課題を踏まえ、本研究では、幼児教育における主体的・対話的で深い学びに着 目し、年長㧡歳児が協同的な遊びを自ら発展させていく実践事例を通じて、遊びにおける学び の深まりを明らかにすることを目的とする。なお、本研究では、上述の中教審「幼児教育部会 における議論の取りまとめ」(2016)で明示化された見解に依拠し、主体的な学びの視点、対 話的な学びの視点、深い学びの視点から、幼児の長期に及ぶ継続的な活動に関する実践事例を 読み解く中で、学びの深まりについて検討を重ねていくこととする。  実際、幼児教育現場において、主体的・対話的で深い学びが重視され始めている中で、長期 的な遊びの展開に焦点を当てながら、主体性及び対話性の軸から「遊びにおける学びの深まり」 を捉えるという視座に立つことにより、学びの深さの捉え方の一端を示唆すると同時に、養成 教育や現職研修等にも生かすことが期待できると考える。 ቼᴯቛǽᆅሱ஁ศ ቼᴮኮǽᆅሱԦӌᐐɁകᛵ  研究協力者は、2017年度に α 市立 β 幼稚園の年長もみじ組(㧡歳児16名)に在籍する㧡名 の幼児(男児、㧭∼㧱児:以下本児)である。本児らは、年少㧟歳児として β 園に入園し、前 年度の年中時より全員が同じクラスで生活した上で進級したことから、互いの存在を既に認知 している関係であった。また、観察時の担任教諭は、年長時点で新しく担任した教諭(保育経 験㧠年目、女性)であり、これから本児らと関係を築いていく間柄であった。  本児らは、それぞれにこれまでの育ちと今後の課題があった。具体的には、㧭児は、自分の 思いを主張するが、友達と思いが違ったときにはどうするといいか考えようとする姿が見られ た。また、㧮児は、自分の思いを表すが、自分の思うように遊びを進めようとし、友達と思い が違うと受け入れることができないことが多く見受けられた。さらに㧯児は、自分なりの思い はあるが友達にうまく表せないことがあった。また、㧰児・㧱児は、自分の思いは表すが、思 いが違って遊びが進まず行き詰ることがあった。そして、本児らは、互いに近くで遊ぶことが 多く、特に㧭児・㧮児・㧯児と、㧰児・㧱児が仲の良いことが窺われた。以上のことから、今 後、本児らが互いに影響し合いながらどのような友達関係を築き育っていくかを探ることで、 遊びにおける学びの深まり捉えたいと考え、本研究の視点児として選定した。

(7)

ቼᴯኮǽᝩ౼஁ศˁґ౏஁ศ  2017年㧠月から11月までにおける年長もみじ組(仮称)の実践について、第一筆者が幼児 の遊び場面における縦断的な参与観察を行った。その際、主体的・対話的で深い学びに類する と想定される保育実践の概要や遊びの様子を抽出した。本稿では、主に「ビー玉転がし」に夢 中になる幼児の姿に焦点を当てて、その後の遊びの発展に着目しながら、継続的観察に伴う場 面を抽出した。  分析の手順としては、①保育実践を遊びの展開に配慮しながら事例として書き起こす(逸話 記録法)、②事例にみられる「子どもの姿の読み取り」「保育者の援助」に関して、保育を観察・ 実践した当事者性を意識しながら考察する、③当該事例において、「主体的な姿」と「対話的 な姿」を検討し、幼児のどのような側面に育ちが現れているかを検討する、④前述の検討を踏 まえた上で、「本事例で見出された学び」を検討する、⑤全ての事例から見出された学びを概 観する中で、「学びの深まり」に関する考察をする、という手続きで実施した。  また、①∼⑤に関しては、実際に参与観察を行った第一筆者が主に書き起こす中で、実践者 の担当教諭に提示・確認をしながら、実践者の当事者性を最大限重視した記述になるよう配慮 した。さらに、③∼⑤に関しては、共同研究者間で十分な協議をすると同時に、多様な見とり が顕在化した場合には、㧟者の筆者間で納得する適切な見解を抽出するよう配慮しながら、協 議と合意を主として検討した。 ቼᴰኮǽϕျᄑᥓਁ  日本保育学会倫理綱領に則り、上記事例を研究として掲載・論文化するにあたり、α 市教育 委員会の指導主事、β 幼稚園の園長及び担当教諭へ、第一筆者から研究趣旨を口頭で詳細に説 明した。その際、観察を通じて収集した事例の公表に際し、市町や園名・幼児の名前などは仮 称で取り扱うなど、個人情報保護法を順守することを確約した上で、研究協力の承諾を得た。  なお、事例や考察に関しては、執筆段階から第一筆者が担当教諭に提示・確認することを通 じて、実践者の担当教諭に不利益が生じないよう留意した。また、本学における研究倫理審査 を受審し、実施許可を得た(2019年度桜大倫審 ID:09)。 ቼᴰቛǽᆅሱፀ౓  㧡歳もみじ組の2017年㧠月から11月までの遊びの様子や発展過程に関して、以下、実践事 例を枠内に記すと同時に、㧝)子どもの姿の読み取り、㧞)保育者の援助、㧟)主体的な姿、㧠) 対話的な姿、㧡)本事例から見出される学び、の㧡点に関する考察を記す。 ቼᴮኮǽρȁɁɮʫ˂ʂɥढȾȪɛșȻȬɞᤅɆɁܿɑɝ  年度当初の4‒5月には、保育室内で㧭児∼㧱児が、自分のイメージを形にしながら、ビー玉 転がしのコースや大型積み木を用いた家や基地を作ろうとする姿が見られた。

(8)

【事例㧝:4‒5月】「憧れの遊具を使って」  㧭児・㧮児・㧯児・㧰児・㧱児は、憧れだった、坂や道をつなげてコースを作って遊ぶビー 玉転がしの遊具や大型積み木を使って、自分なりに考えたビー玉転がしのコースを作ったり、 大型積み木を運んで囲ったり積んだりなどして毎日保育室で遊ぶ姿が見られた。その中で、 隣の友達のコースをやらせてもらったり、友達と大型積み木を一緒に運んで積んだりなど、 近くの友達と話をしながら遊んでいた。保育者は、それぞれが考えたことを試しながら十分 に楽しめるよう遊ぶ場を確保し、それぞれが毎日違うコースを考え転がり方の予想をしなが ら作ったり、大型積み木の運び方・積み方に気を付けながら家や基地を作ったりして遊ぶ一 人一人の様子を見守っていた。 ᴥᐎߔᴦ 㧝)子どもの姿の読み取り   進級したばかりであり、慣れない保育室・担任に不安を感じながらも、年長組になったこ とを喜び、進級したことによって使用できることに期待を寄せていた遊具や場を使って、思 い思いに遊び始めている。そして、年中時からの気心が知れた本児らは、近くで遊び安心し て遊んでいる。 㧞)保育者の援助   進級したばかりの幼児の不安な気持ちを分かり、一人一人が担任に親しみをもってほしい、 新しい保育室の場や遊具を使って遊び、安心して一人一人が自分で試しながら十分に思いを 表してほしいと考え、一人一人の見つけた遊びが十分にできるように場を確保したり、試し ていることを認めたり、一緒に遊んだりしながら、幼児が自分なりに考えていることが形に なっていくうれしさを感じられるようにしている。また、安全に気を付けて遊べるように、 新しい遊具の使い方を一緒に遊びながら知らせたり、重くて大きな遊具は友達と一緒に運ぶ ことに気付かせたりしている。   そして、本児らを始めクラスの幼児一人一人の育ちと課題を捉え、それぞれが自分を発揮 したり、自分で乗り越えたりしていってほしいと考えている。 㧟)主体的な姿   自分のしたいこと見つけて遊び、新しい場や担任の中でも、安心して自分の考えたことを 自分なりに試そうとしている。そして、毎日同じ場や遊具で遊ぶ中で、それぞれの考えてい ることや試していることは毎日違う。 㧠)対話的な姿   いつも近くで遊ぶことの多い本児らは、自分のしたいことをしながら近くにいる友達に声  をかけながら、また友達のしていることも分かりながら遊んでいる姿が見られる。また、㧭 児・㧮児・㧯児は、大型積み木を運ぶ際、友達に助けを求めたり、一人で運ぼうとしている 友達に気付いて助けたり、運びながら置き場所を伝えたり一緒に考えたりしている。一方、

(9)

㧰児・㧱児は、一緒にコースを作り始めると、自分の思い表しながら作っていくが、その思 いが違うといつの間にかコースづくりをやめてしまっていることがある。 㧡)本事例から見出される学び   試したり考えたり、一人一人が自分の中で様々に思いを巡らしながら、木の性質や転がる 仕組みなどに気付いたり、丸や長さ、坂などの形の特徴を意識し遊びに取り入れたりしてい る。また、大型積み木の扱い方を知って、安全に運んだり積んだりしていて、形や重さによっ ては、友達に助けを求めたり、友達の様子を見て助けたりしている。 ቼᴯኮǽߦᝈɥᣮȪȹ̠ȗɁɮʫ˂ʂɥ᥾ɀȽȟɜ  㧢月に入ると、㧭児・㧮児・㧯児が基地作りを、㧰児・㧱児がビー玉転がしのコース作りを していた中で、互いに対話しながらイメージを重ね合わせて、㧡人でビー玉転がしの基地を作 ろうとする姿が見られた。 【事例㧞:㧢月】「ここをビー玉転がしの基地にしようよ」  この日は、㧭児・㧮児・㧯児が大型積み木を積んで、㧞階建ての基地を作っていた。その そばで、㧰児・㧱児は、それぞれビー玉転がしのコースを作っていたが、作り終わると、㧭 児・㧮児・㧯児の基地に加わった。すると、㧮児「ここをビー玉転がしの基地にしようよ」 㧭児「いいね! 基地の階段もコースにすると面白そう」、㧰児・㧱児も笑ってうなずき、 基地の中や壁、周りなどに、㧡人それぞれのコースを作り始めた。ビー玉が転がる細長い道 やジグザグの道、坂、階段、道や坂、階段につなげると落ちて転がる穴の空いた立方体等の 既製の部品が足りなくなると、㧰児・㧱児が、材料置き場からラップの箱や芯など細長い素 材を見つけて持ってきて「トンネルだ」「ここは一本橋にしよう」などとコースにつなげて いく様子に、㧭児・㧮児・㧯児も様々な素材を見つけてきてつなげ、基地の中や壁、周りに 㧡つのコースが出来てきた。また、㧭児「ねえ、㧰ちゃんやらせて。トンネル出たら階段だ」 㧯児「ここどんなふうに転がるの」㧮児「あれっ、ここで落ちちゃうよ」㧭児「壁を作らな いかん」㧯児・㧱児「ぼくもやってみよう」などと、㧰児の作るコースをやらせてもらい、 㧠人は驚いたり気付いたことを言ったり自分のコースに取り入れたりしていた。基地という 場の中で、㧡人はそれぞれが自分のコースを作って楽しんでいた。 ᴥᐎߔᴦ 㧝)子どもの姿の読み取り   㧭児・㧮児・㧯児の大型積み木の基地で㧰児・㧱児のしていたコース作りをすることにな り、今まで別の遊びだったが、同じ遊びとなり一緒に遊んでいる気持ちになっている。また、 遊んでいくうちに既製の部品が足りなくなるが、もっとコースをつなげたいという思いがあ るので、保育室の教材置き場から様々な素材を持ってきてつなげていこうとしている。そし

(10)

て、場は同じであるが、それぞれのしたいコース作りは確保されていて、安心して取り組ん でいる。また、一緒に遊ぶ友達が作るコースに関心をもって声をかけたり刺激を受けたりし ている。 㧞)保育者の援助   基地で本児らがそれぞれコースを作り出すのを見て、部品がなくなってしまうことを予想 し、空き箱や木切れなどコースにつなげられそうな素材を多めに教材置き場に足して置く。   また本児らには、基地という同じ場で一緒に遊んでいるという気持ちをもちつつ、互いに 刺激を受けながら、それぞれの作りたいコース作りにじっくりと取り組んでほしいと考えて いる。 㧟)主体的な姿   自分たちで同じ場で一緒に遊ぶことを決めている。同じ場で遊んでいるが、自分のしたい ことはでき、安心して自分の考えたことを形にしてじっくりと遊んでいる。 㧠)対話的な姿   個々が作ったコースを互いに転がし合って、感じたことを言ったり自分に取り入れたりし ている。 㧡)本事例から見出される学び   自分のやりたいことに向かう中で、物の仕組みや素材の持つ特徴、接着の仕方、転がる速 度や向き、転がり方などに気付き、その予想に適した材料やコースの作り方を考えようとし ている。また、友達のコースを見て、感じたことや考えたことを伝えたり取り入れたりして いる。 ቼᴰኮǽρȁɁ९ȗɥͤțնȗȽȟɜᤅɆɥࢿȥȹ  その後、ビー玉転がしの基地で遊ぶ中で、互いのイメージが異なりいざこざが見られたが、 互いの思いの違いに気づいたり、思いを伝え合ったりしながら、さらに遊びを広げていく様子 が見られた。 【事例㧟:㧢月】「坂を上るようにしないで」  翌日、㧭児・㧮児・㧯児の㧟つのコースのゴールが接近すると、「おお! 㧭ちゃんのコー スに入った」「長いコースだ」「こっちにも行けることね」と㧟人は喜び、長いコースにして 転がしたり作り足したりしていた。すると㧮児が、コースを作り足していた㧭児に向かって、 㧮児「坂を上るようにしないで」と言うと、㧭児「いいじゃん」㧯児「これも面白いよ」と 言われ、㧮児は怒ってその場を抜けた。保育者が㧮児に「上るようにしないでほしいんだね、 どうして」と聞くと、㧮児「ビー玉戻ってきちゃう」。㧮児の声を聞いて㧭児「上るよ!  ほらっ」とやって見せ、坂を下りてくる勢いでビー玉が坂を上った。㧯児「すごい! 㧮ちゃ ん見て見て」と㧮児に声をかけた。その様子を㧮児はじっと見てはいたが、少し離れたとこ

(11)

ろで一人自分のコースを作り始めた。㧰児・㧱児も、㧮児が気になり様子を見ていた。保育 者は㧮児に「みんな待ってるよ」と声をかけたが、何も言わず一人で作り続けた。保育者「一 人でいいの」㧮児「うん」保育者「そうか、分かったよ」と見守ることにした。そんな㧮児 と保育者とのやりとりの様子を見て、㧭児・㧯児・㧰児・㧱児も何も言わずそのまま遊び続 けた。㧮児は、一人で作りながらも、㧭児・㧯児・㧰児・㧱児のコースを時々見に来て、気 にかかっている様子だった。  そして、しばらくすると㧮児が「みんなのコースをもっとつなげてみようよ」と戻ってき て声をかけた。㧭児「いいね! 㧰ちゃん㧱ちゃんのもつなげて長いコースになるね」㧮児 「うん! ねえ、いい」と㧰児・㧱児の顔を見ると、「いいよ! 長くなるね」とはりきって 応えた。保育者も「面白そう」と喜び、「コースが離れているところは、どうやってつなげる」 と投げかけた。㧮児「ラップの芯を長くつなげる」㧭児「でも、ぐらぐらしちゃうよ」保育 者「こんなのがあるよ」と80センチほどの布のロール芯を持ってきた。㧡人「やったあ!」 とさっそく離れたところにつなげ、何とか㧡つのコースがつながり、途中落ちたり上手く転 がらなかったりするが、修理したり作り直したりしながら、繰り返し遊ぶことが続いた。 ᴥᐎߔᴦ 㧝)子どもの姿の読み取り   自分のしたいことができていく中で、㧭児・㧮児・㧯児の作ったコースが接近し、㧮児の ビー玉が㧭児のゴールから㧭児のコースの中へ入って転がるという偶然の出来事からではあ るが、㧭児・㧮児・㧯児の同意の基につなげている。   しかし、㧮児はコースをつなげたものの、自分の思うようになっていかないことから怒っ て抜けるが、周りの様子が気になっている。㧮児は、㧭児に対して、ビー玉が戻ってしまう だろうと予想し、「坂を上るようにしないで」と怒ったものの、実際にはビー玉は上っていっ た様子を見たり、㧭児・㧯児・㧰児・㧱児が続けて楽しそうに遊んだりしている様子を見た りする中で、『怒ったけれど予想したことと違っていた』、『一人はつまらない』、『楽しそう だな。友達のところへ戻りたいな』、『また入れてくれるかな』、『どうやって戻ろうか』など と、心を揺らしていることが伺われる。しばらくして、自分なりに戻り方を考え、友達に受 け入れてもらい、引き続き友達の中で遊んでいく姿から、㧮児は友達と一緒に遊びたい、面 白いコースにしたいという思いで、自分で戻ってきている。   一方、怒る㧮児に対して㧭児・㧯児は、㧮児と保育者のやりとりから㧮児の思いを知って 受け入れながら、この方が面白いことを伝える言葉をかけ、㧰児・㧱児も今は㧮児をそっと しておこうと思っているようである。そして、㧭児・㧯児・㧰児・㧱児は、日ごろから遊ん でいる㧮児の性格を理解していたり、面白いアイディアだと共感できたりしたため、㧮児が 戻ってきたとき、すんなりと㧮児を受け入れ、遊びが進んでいっている。   その後も、長い距離をつなげるためには、どうするといいか考えを出し合い、保育者から のアイディアを借り成功させ、本児らは一緒に喜び合っている。

(12)

㧞)保育者の援助   㧭児・㧮児・㧯児のコースをつなげることになり、㧟人個々の様子を気にかけている。保 育者は、㧮児が怒って抜けたとき、『㧮児は㧭児・㧯児の声を聞いている』と同時に、『保育 者に怒った理由を言えている』と捉え、この場面を㧮児が自分で振り返る機会と考え、㧮児 自身がどう動くかを見守っている。その後、㧮児は自分で考え戻ってきて、㧭児・㧯児・㧰 児・㧱児が㧮児を普通に受け入れている様子から、保育者は、本児ら個々の心の揺らぎを感 じ取っている。また、そのような本児らの様子を受けて、保育者も仲間の一人として受け入 れ、本児らの遊びがうまく続いていくようアイディアを出している。 㧟)主体的な姿   㧭児・㧮児・㧯児のコースをつなげることを自分たちで合意し決めている。しかし、遊ん でいく中で、㧮児は自分の思い通りにいかなくなり怒り遊びを抜けた。㧮児は、その理由を 保育者に伝えると、それを聞いていた㧭児・㧯児が㧮児の思いを受けて自分の考えを㧮児に 伝えている。㧮児は、㧭児・㧯児の考えを聞いてどうするのか、自分でしばらく考えた後、 㧮児は、自分のアイディアを伝えながら㧭児・㧯児のところへ戻っている。この遊びを一緒 に続けたいという㧮児の思いが表れている。   一方㧭児・㧯児は、自分たちの面白いと思う考えが㧮児には嫌なことと感じていることを 知って、その面白さを知ってもらおうと㧮児に伝え、実際にやって見せ、この遊びをもっと 面白くしようとしている。   㧰児・㧱児は、友達とつなげることで、もっと面白くなることを期待している。㧮児が戻っ た後、本児らは、コースをつなげるために、その方法を考えビー玉が落ちると何回も修理し て、続けて遊ぼうとしている。 㧠)対話的な姿   㧮児は、自分の考えと違うことを㧭児にされ怒りが沸き上がり遊びを抜け、その気持ちを 保育者に伝える。㧭児・㧯児がそれを聞いていて、㧮児の思いを分かりながらも、こうする ともっとこの遊びが面白くなるという思いをもって㧮児に伝えている。そして㧮児は、その 㧭児・㧯児の考えを聞いてどうするのか、自分で心を揺らしながら考える。   㧭児・㧯児も、自分が言ったことに対して㧮児がどうするのかを伺っている。思いを伝え 合う中で㧭児・㧮児・㧯児も個々に心を揺らし葛藤している。   その結果、㧮児は戻ってくる。そのときの㧮児の言葉から、㧮児ももっと遊びを面白くし たいという思いをもっていることが窺われる。そして、㧭児・㧯児・㧰児・㧱児も、そんな 㧮児のアイディアを受け入れる。そして、みんなで一緒にこの遊びをもっと面白くしようと いう思いを本児らは共有し、動き出している。   友達のことが分かり、友達に受け入れられていることを互いに感じて安心し、思いや考え を活発に出し合うようになり広げている。 㧡)本事例から見出される学び   㧭児・㧮児・㧯児はコースをつなげることで、いろいろなコースができることを予想し期

(13)

待している。また、ビー玉の転がり方も予測しているからこそ、㧮児の考えが出てくるし、 㧮児の考えを分かった上で、意外な転がり方をすることを発見していた㧭児・㧯児の考えで あることが理解できる。㧭児・㧮児・㧯児は繰り返し遊んできたことで、個々で様々に気付 いたり発見したり予測したりしている。   そして、㧮児は、自分が気付かなかったことを㧭児・㧯児から新たに発見し、一人で考え るより友達と一緒に考え遊ぶ方がもっと楽しくなることを期待して戻ってきたのではないか と考える。   本児らは、個々に自分の言動を振り返りながら友達の思いや考えに気付き、もっと面白く したいという思いをもって㧰児・㧱児ともつなげることになり、積極的にまた根気よく取り 組んでいる。成功させたい思いや、共通の目的に向けて達成させたい願いが互いに生まれる 中で、本児らの関係が、これまでの「友達」から、ビー玉転がしで一緒に遊ぶ「仲間」になっ てきているのではないだろうか。 ቼᴱኮǽࡾ܁ɥѼɜȪȹᤅɆɥᄉࠕȪȽȟɜ  㧥月の㧞学期に入ると、それぞれがコースに仕掛けを作ろうとするなど、自分のイメージを 伝え合いながら試行錯誤を繰り返していく姿が見られた。 【事例㧠:㧥月】「ピタゴラスイッチみたいに仕掛けも作ろう」  夏休み後も、大型積み木の基地にコースを作って遊ぶことが続き、そのうちに「ピタゴラ スイッチみたいに仕掛けも作ろう」と、それぞれが仕掛けを考えるようになった。  㧰児「ミニカーを走らせて、ビー玉に当たったら転がるようにしたいんだけど、ビー玉が すぐに動いちゃうんだ」と保育者に言った。保育者「仲間に相談してみる」と声をかけると、 自分で㧰児「ねえ、どうやったらビー玉が動かないようできると思う」と仲間に聞き、㧯児 「ビー玉を止めるといいんじゃない」。すると㧱児「これはどう」と探しにいって小さな木切 れを持ってきた。㧰児「やってみる」とビー玉の転がっていく方向に木切れを置いて試して みると、「本当だ、ビー玉動かない(木切れが遮っている)」と喜び、ミニカーを走らせてみ るが、「ビー玉転がらない」。㧮児「木は前だよ(ビー玉のすぐ横に木切れを置いて走ってき たミニカーが木切れに当たるとビー玉が転がるように)」と木切れを置く位置を変えた。㧰 児「やってみる」とミニカーを走らせると、「あっ、ビー玉転がった、やった!」と㧡人が 顔を見合わせて、ハイタッチをして喜んだ。  その後も、それぞれがコースの途中にいろいろな仕掛けを考えていた。長い木切れのシー ソーの一端にビー玉が落ちるとはずみで、他方の端の紙を丸めたボールが飛び上がったり、 OHP シートを筒状に丸めて長くつなげて長い透明のトンネルを作ったりなど、大きなもの から小さなものまで適当な材料を見つけて来て切ったり折ったり貼ったりしてそれぞれが考 えていることに近づけ、困ると仲間に相談しながら実現していくことを楽しみ、それが大き

(14)

な広い仲間とのコースになっていることもうれしそうだった。 ᴥᐎߔᴦ 㧝)子どもの姿の読み取り   コース作りだけではなく、仕掛けを作ることも面白くなってきている。   㧰児が自分の考えた仕掛けがうまくできず、何とかしたいと思い、保育者の投げかけを受 けて、仲間に自ら相談している。結果、仲間が考えてくれて自分の仕掛けができ、そして仲 間みんなが、自分のことのように喜んでくれていることがうれしい。   㧯児は、仲間が困っていることを聞いて考え、方法を提案している。㧱児は、㧯児の提案 を聞いて、すぐに動いて適当と思われるものを探し出し㧰児に渡している。㧮児は、仲間が 試してもできない様子から、自分なりに考えた方法を伝えている。   一人の困りごとを仲間で考えたことが上手くいき、仲間みんなで喜び合い、個々がもっと 面白いことを考えようと張り切っている。 㧞)保育者の援助   㧰児は困っていることを保育者には伝えることができているが、仲間にそれを伝えると仲 間が一緒に考えてくれることには気付いていないと捉え、㧰児には、思いや考えを伝え合い ながら仲間と相談して進めていくことに気付いてほしいと願い、仲間に自分で伝えられるよ う促している。   仕掛けなど、自分たちで考えたことをやってみたり仲間と相談し合ったりして実現できて いくよう、適当な素材を出したり一緒に園内を探したりして支えている。 㧟)主体的な姿   自分たちの遊びをもっと面白くしたいという思いで、個々が仕掛けを作ることを考え付き 自分の考えた仕掛けを実現させようと様々な素材を使って何回も試したり修正したりしてや り遂げようとしている。   また、仲間の悩みを、自分のことのように一緒に考え、提案したり、動いたり、解決する と一緒に喜んだりしている。 㧠)対話的な姿   仲間の言葉に耳を傾けて聞き、その言葉の意味、思いや考えを理解して一緒に考え合い、 伝え合い、応答しながら遊びを進め、互いの思いや考えを共有している。 㧡)本事例から見出される学び   自分の考えた仕掛けや仲間の考えた仕掛けを実現させるために、予想や予測を立てたり、 「〇〇だから△△になるかな」「△△すると〇〇になりそう」などと関連性を考えたりするな ど、物事を深く考えようとしている。 ቼᴲኮǽЇɜɁᤅɆȾߴȨȗފɥગȠоɟȹ  10月に入ると、ビー玉転がしへ年中・年少児を招き入れたいという思いが芽生え、どうし

(15)

たら小さい子たちが楽しめるかを考えると同時に、招待して遊びに寄り添う中で、年長児とし て小さい子を思いやる優しさや充実感を味わう姿が見られた。 【事例㧡:10月】「小さい組にもやらせてあげようか」  毎日見ていたクラスの友達が、時々㧡人のコースを転がせてもらうことを喜んでいた。あ る日、㧭児「小さい組にもやらせてあげようか」㧮児「お客さんだ」㧯児・㧰児・㧱児「そ うだね」と年中年少児を招待することになった。保育者「喜ぶよね。その準備しないとね」 と声をかけると、㧭児「受付がいるね」㧯児「受付でビー玉を渡すことにするのはどう?」 㧰児「いいね。じゃあ受付の看板を作ろうよ」㧱児「どんなコースか、看板に書こうよ」㧮 児「どこが簡単か、難しいか看板に書こうよ」㧭児「どこが簡単か、難しいか分からないよ」 㧯児「じゃあ試して決めよ」他児「そうしよう」と試してみることになった。そして、「こ この赤コースは簡単だと思う」「紫コースは長いから難しいよ」「ぼくもそう思う」などと自 分の考えを言ったり友達の考えを聞いたりして、コースを色別にして難しさの順番を決め、 看板に書いた。「よおし、呼びにいこう」とはりきったが、保育者「すごいね、みんなで考 えて決めたんだね」と認め、「誰が受付するの」と聞いてみた。㧱児「あっ、誰がするか決 めてなかった」、「ぼく受付やりたい」「案内係がいい」「受付でビー玉渡す役がいい」などや りたいことを言って、それぞれ役割を決め、さっそく年中年少児を呼びにいった。  手をつないで保育室まで案内したり、「こちらが受付です」「ビー玉をここであげます」「こ こがスタートです」「赤コースは簡単です」「積み木にはそっと上がって、転がしてください」 「壊れたら言ってください」「気を付けて転がしてください」「終わった人は、こちらでお待 ちください」など、お店の人になったつもりで思い思いに声をかけたりやさしくしたりする 姿が見られた。お客さんが帰った後、「忙しかったけど面白かった」「超忙しかったもんね」「小 さい組、びっくりしてた」「楽しかったって言ってた」など、やりきった気持ちを表し誇ら しそうだった。 ᴥᐎߔᴦ 㧝)子どもの姿の捉え   年中年少児を招待することを仲間同士で決め、招待するために準備することがあることに 気付き、個々が自分の考えを伝え合い準備している。そして当日は、小さい組だから分かる ように教えてあげたいという思いや、お店屋さんになった気分で、いつもとは違う言葉や動 きを考え表している。招待後には、大変だったが、個々が達成感や充実感を味わい、大きく なった自分を感じている。 㧞)保育者の関わり   お客さんを呼ぶことを決めた本児らの考えに共感し、そのためには準備することがあるこ とに気付かせ、準備から招待し終わるまで、個々の役割ができているかを確認しながら、本

(16)

児らが自分たちで進めていることを実感できるよう支えている。 㧟)主体的な姿   年中年少児を招待しようと仲間と決め、そのための役割を考え、必要感をもって自分の役 割を果たそうとしている。 㧠)対話的な姿   年中年少児を招待するという目的を共有し準備していく中で、仲間の考えを聞いて理解し て返事をしたり、新しい考えを言ったり、質問したり、良く分かるように動こうとしたりな どして、仲間とのやりとりを仲間同士でしている。   当日は、年中年少児に自分たちの考えた遊びを分かって楽しんでもらえるように、お店屋 のように分かりやすく表示することに気付いたり、丁寧な言葉を使ったり、不安な思いをし ないよう優しく関わったり、危険のないように配慮した言葉をかけたりして進めている。 㧡)本事例から見出された学び   共通の目的の実現に向けて、見通しをもち年中年少児のことを思いながら個々が考えを出 し合い動こうとしている。   当日は、年中年少児の立場に立って気持ちを予想しながら、声をかけ行動し、そのことが 年中年少児に伝わり喜んでくれていることを実感し、自分たちのしたことが役に立っている ことを味わっている。 ቼᴳኮǽЇɜɁᤅɆɥȝ޿Ɂ̷ȾɕഒȪɦȺɕɜȝș  11月になり、保護者の方を招待した『もみじ組ランド』を開催する中で、㧡人は「ビー玉 転がし」を準備し、自分たちや小さい子たちだけでなくお家の人たちにも楽しんでほしいとい う願いを抱きながら、遊びを広げていく様子が見られた。 【事例㧢:11月】「『もみじ組ランド』の開催」  その後、クラスの他児が進めているお店やさんも㧟つほど加えて、クラス全員で、保育参 加で保護者の方を招待したいということになり、総称『もみじ組ランド』とみんなで決め、 それに向けてもはりきって準備をした。各お店に回ってもらう順番、『もみじ組ランド』始 め他の遊びの看板作り、各お店の説明、誰がその説明をするかなど、クラスみんなで相談す ること、各お店で相談することがあるが、それぞれ自分たちで考えたことが進んでいくうれ しさを感じながら準備を進め、当日を迎えた。  本児らのお店は「ビー玉転がし」。㧭児は、照れくさそうではあるが、母親を受付で迎え、 「このビー玉で転がしてください。コースがいっぱいあるからね、全部やってよ」と母親に 伝え、他の保護者にも一人ずつ「このビー玉で転がしてください」と大きな声で伝えてはり きっていた。㧭児とくっつきあっていた㧮児は、母親に「友達と、こんな大きなコース作っ たんだね」と言われ、㧮児「そうだよ、みんなのコースをつなげたんだ、ね、㧭ちゃん」と

(17)

得意げに応え、母親に「スタートはここだよ」と伝えていた。㧯児は「ここ壊れそうだから 気を付けてください、難しいですよ」と案内をしたり、㧰児は、「ちょっと待ってください」 と壊れかかっているところを直したり、㧱児は、お店の前で「いらっしゃい、いらっしゃい、 ビー玉転がしです」と呼び込みをしたりしていた。また、㧱児「〇ちゃんのおかあさんだ」、 㧭児「ほんとだ、こっちこっち」と招き入れたり、㧮児「△ちゃんのおかあさん、全部コー スクリアだ」㧰児「うん、すごいね」と、クラスの友達の保護者の様子を一緒に喜んだり、 㧱児「人形劇が終わった、きっと次にこっちに来るよ」と知らせると、㧭児・㧮児・㧯児・ 㧰児「うん、準備準備」など、他のお店を意識しながら進めたりする姿も見られた。  当日は、はりきって進めていく子どもたちの様子を見て、保護者の方も我が子だけでなく クラスの子どもたちの成長ぶりを感じ、楽しんでくださった。子どもたちは「すごいねって 笑ってた」「本物みたいだって」「恥ずかしかったけど、やれたよね」「うん、一緒にやった もんね」など伝え合っていた。クラスの友達や、仲間と一緒にやれたことなど、うれしさを いっぱい味わっていた。 ᴥᐎߔᴦ 㧝)子どもの姿の読み取り   㧡人の仲間からクラスの友達へと広がり、クラスの友達と同じ目的をもって進めようとし ている。その中で、仲間と相談、クラスの友達と相談、そして仲間と動く、クラスで動く、 自分が動くことも分かってきている。   当日、保護者の前では、㧡人以外の子どもたちや㧭児・㧮児などが恥ずかしがる様子も見 られたが、隣に仲間がいることを支えに頑張っていることが窺える。   保育参加が終わると、仲間やクラスの友達と一緒に喜び合い、つながりを感じ、自分たち がしたことで家族や周りの人が喜んでくれることを実感している。 㧞)保育者の援助   幼児が意欲的に次の目的をもとうとしていることを捉え、それが実現していくよう、保護 者に協力を得ながら支えている。 㧟)主体的な姿   次の目的に向かい、考えたり協力したりして、自信をもって準備し行動している。また、 恥ずかしい気持ちを調整し、自分なりに頑張ろうとしている。 㧠)対話的な姿   共通の目的が分かって、みんなでその目的に向かって上手くいくように、何をどうしたら よいかを考えて動いたり伝えたりして協力しながら進めている。 㧡)本事例から見出された学び   仲間と充実感を味わったことから、一人一人の力と、仲間の力、さらにクラスの友達との 力を合わせて行う『もみじ組ランド』という新たな目的が生まれ、その実現に向けて今まで 経験してきたことを活かし、協力しやり遂げ達成しようとしている。継続的に遊びを進めて

(18)

いくうちに、本児らは、自分に自信をもち、仲間とのつながりを深め、クラスの友達との生 活にも充実感をもっている。 ቼᴱቛǽ፱նᐎߔȻ̾ऻɁᝥᭉ ቼᴮኮǽ፱նᐎߔ ᴮᴫп̜΍Ȟɜ᛻ҋȨɟȲޙɆɁᢀᡀ  以上の考察を踏まえ、本節では、㧡)本事例から見出された学びに着目し、前述の全㧢事例 にみられた学びの軌跡を、時系列に沿って整理した。その際、本研究の主目的である主体的・ 対話的で深い学びを明らかにするために、主体性の軸と対話性の軸から、この「ビー玉転がし」 の遊びがこの㧡人の幼児の中でどのように展開したかに焦点を当てながら、学びのプロセスを 検討した。 表㧝 全事例を通じた学びの概要 時期 主体性 対話性 学び 事例㧝 〔㧠・㧡月〕 ・自分のしたいことを見つけ、繰 り返し遊ぶ。 ・自分のしたいことをしながら近 くにいる友達に声をかけ、また友 達のしていることも分かりながら 遊んでいる。 ・試す・考えるなどを通して木の 性質や転がる仕組み、丸や長さ、 坂などの形の特徴に気付く。 ・大型積み木の安全な扱い方や重 い時は友達と一緒に運ぶことに気 付く。 事例㧞 〔㧢月〕 ・同じ場で遊ぶが、個々が、自分 の考えたことを形にしてじっくり 遊ぶ。 ・個々が作ったコースを互いに転 がし合い、感じたことを言ったり 取り入れたりしている。 ・素材の持つ特徴、接着の仕方、 転がる速度や向き、転がり方など に気付き、その予想に適した材料 やコースの作り方を考える。 ・友達のコースを自分に取り入れ る。 事例㧟 〔㧢月〕 ・㧮児は自分の言動を振り返り、 しばらく考えた末、一緒に遊びた い、面白くしたいという思いで、 自分で遊びに戻る。 ・㧭児・㧯児は、この遊びを面白 くしようとしている。 ・㧮児が戻った後、本児らはつな げるための方法やビー玉が落ちな い方法を考え続けて遊ぶ。 ・㧮児の言葉を聞いて、㧭児・㧯 児は、㧮児の思いを分かったもの の、遊びを面白くしたいという思 いで、㧮児に伝えている。㧮児は、 㧭児・㧯児の言葉を聞いて心を揺 らしている。㧭児・㧯児も、㧮児 の様子を窺っている。㧭児・㧮 児・㧯児も個々に心を揺らし葛藤 している。 ・㧮児は一緒に遊びたい、遊びを 面白くしたいという思いで戻り提 案している。㧭児・㧯児・㧰児・ 㧱児も、㧮児の提案を受け入れる。 本児らはこの遊びをもっと面白く しようという思いを共有し動き出 す。 ・受け入れられていることを互い に感じ、思いや考えを活発に出し 合い広げている。 ・㧭児・㧮児・㧯児は3人のコー スをつなげることで、いろいろな コースができることを予想し期待 している。また、ビー玉の転がり 方を予測した㧮児の考えや、意外 な転がり方を発見した㧭児・㧯児 の考えが出てきている。㧭児・㧮 児・㧯児は、様々な気付きや発見 をしている。 ・個々に自分の言動を振り返り、 友達の思いや考えに気付き、もっ と面白くしたいという思いから、 積極的に、また根気よく取り組む。 事例㧠 〔㧥月〕 ・自分の考えた仕掛けを実現させ ようと個々で何回も試し修正しや り遂げようとしている。 ・仲間の悩みを、一緒に考え提案 したり、実際に動いたり、解決す ると一緒に喜んだりしている。 ・仲間の言葉に耳を傾け、その言 葉の意味を理解して一緒に考え合 い、伝え合い、互いに応答しなが ら進め、互いの思いや考えを共有 している。 ・自分や仲間の考えた仕掛けを実 現させるために、予想や予測を立 てたり、関連性を考えたりするな ど、物事を深く考えようとしてい る。

(19)

事例㧡 〔10月〕 ・年中年少児を招待しようと仲間 と決め、そのための役割を考え、 必要感をもって自分の役割を果た そうとしている。 ・年中年少児を招待するという目 的を共有し仲間の考えに返事をし たり、新しい考えを言ったり、質 問したり動こうとしたりして、仲 間同士でやりとりをしている。 ・楽しんでもらえるように、表示 することに気付いたり、丁寧な言 葉を使ったり、優しく関わったり、 配慮した言葉をかけたりして進め ている。 ・共通の目的の実現に向けて、見 通 し を も ち 年 中 年 少 児 を 思 い、 個々が考えを出し合い認め合い動 こうとしている。 ・年中年少児の気持ちを予想しな がら、優しく声をかけて動き、年 中年少児が喜んでくれていること を実感し、晴れがましさや役に 立っている自分を感じ充実感を味 わっている。 事例㧢 〔11月〕 ・次の目的に向かい、考えたり協 力したりして、自信をもって準備 し行動している。また、恥ずかし い気持ちを調整し、自分なりに頑 張ろうとしている。 ・クラスの共通の目的に向かって 上手くいくように、何をどうした らよいかを考えたり動いたり伝た りして協力しながら進めている。 ・仲間と充実感を味わったこと で、クラスの友達と行う新たな目 的を見つけ、今までの経験を活か して、達成しようとしている。継 続的な遊びの中で本児らは、自分 に自信をもち、仲間とのつながり を深め、クラスの友達との生活に 充実感を味わっている。  表㧝に示した通り、主体性の軸では、自分のしたいことを実現していく中で、もっと面白く したいという思いが強くなり、試す・工夫する・修正する・やり遂げようとする・友達の中で 提案する・協力する・一緒に解決する・友達と決めた目的に向け役割を考え必要感をもって果 たそうとする・自信をもって行動するなどの姿が見られ、この遊びに対してさらに主体性を発 揮していく様子が見出された。また、対話性の軸では、近くにいる友達に声を掛け感じたこと を言う・友達の考えを取り入れる・互いの思いを伝え合う・受け入れ合う・葛藤する・思いが 通い合う・活発に考えを出し合う・互いの思いや考えを共有する・仲間同士で進める・相手に 合わせて言動を考えて進めるなどの姿から、対話を深めながら、近くで遊ぶ友達から共通の目 的に向けて協同し合う仲間へと深まっていることが明らかになった。  これらの姿を踏まえ、遊びの中の学びのプロセスに着目すると、試す・工夫するなどを通し て気付きや発見をする・予想や予測し期待する・見通しや関連性を考える・共通の目的をもち 実現しようとする・互いの考えを認め合う・自分の言動を振り返り友達の思いや考えに気付 く・仲間に受け入れられているうれしさを感じる・仲間と創る遊びのおもしろさを味わう・積 極的に根気よく取り組む・達成感や充実感、役立つ自分を感じる・次の目的を見つけ経験を活 かし達成しようとするなどの姿へと、各事例の学びが徐々に深まりを帯びていくことが示唆さ れた。また、遊びの充実と友達関係の深まりが、主体性・対話性・学びに関連し合っているこ とも捉えられる。 ᴯᴫࢺзఙȾȝȤɞޙɆɁ຅ɑɝȻɂ  以上の整理を踏まえ、本研究から導き出された知見として、幼児期における学びの深まりに ついて、以下のような特徴が示唆された。  一人一人の力から一緒に遊ぶ仲間との力へ、仲間の力からクラスの友達との力へと広がって いくとき、そこには様々な対話や共通の目的が生まれている。そして、その共通の目的に向け て一人一人が思いや考えを出し、互いに認め合いながら協力しやり遂げたとき、幼児は、充実 感と達成感を味わう。また、その過程で、幼児は多くの学びを獲得しながら次に向かっていく。

(20)

 本児らは、一連の事例のように友達との継続的な遊びを繰り広げながら、自分を表すことに 自信をもち、友達の思いや考えに気付き、失敗や葛藤を経て、一緒に問題解決をし、互いを受 け入れ合うことで遊びや、一緒に遊ぶ仲間とのつながりを深めている。さらに、この遊びや仲 間とのつながりの深まりは、事例㧢のようにクラスの友達との遊びや生活へも広がり、本児ら はクラスの中にいる自分の存在を実感し、充実感や達成感を味わっていると考える。  また、この継続的な遊びの過程で、本児らは様々に学んでいることがある。遊びの中で物の 性質、特徴、仕組み、事象などに関する多くの気付きや発見をするという学びが生まれ、その 学びから先を想像して予想や予測したり見通しをもったりするという学びへつながり、さらに この学びから物や事、仲間やクラスの友達など周りとの関連性などを考える学びへと広がって いることが分かる。そして、その学びを遊びや生活に活かし取り込もうとしたり、次の目的を 見つけようとしたりしながら学びが深まっていくのではないかと考える。  このように、遊びの中で獲得した様々な学びがつながったり広がったりして、次に活かされ ていくことで、深い学びとなっていくと考える。また、こうした学びは遊びだけでなく、生活 の中でも生まれたりつながったり広がったり深まったりしていくはずであるので、遊びを含め た生活そのものが「深い学び」を実現していく意味あるものとして捉えたい。  本研究から導き出された学びの深まりとして、下記の図㧝のようなプロセスが示されると考 えられる。 共通の目的 第1期:個別的主体期 (‒月:事例1) 共通の 目的 第2期:相互的対話期 (6月:事例2・3) 第3期:協同的展開期 (9月:事例4) 第4期:交流的拡充期 (-月:事例5・6) 高次な 共通の 目的 ◆個々の幼児が自分のしたい ことを見つけ遊ぶ ◆近くの友達のしようとして いることへ意識を向ける ◆基地を作ろうとし、 個々の幼児が自分の 考えを形にしていく ◆互いの意見を相互に 取り入れ、互いが共 鳴しながら対話が芽 生える(取り入れの 共鳴) ◆いざこざや葛藤の中で、 友達のアイデアだけで なく、互いのよさや課 題などありのままをわ かり合っていく関係性 の中で遊ぶ ◆友達と遊ぶ から 仲間 同士で遊びを創る と いう仲間化への発展 ◆コースに仕掛けを作ると いう更に 高次な共通の 目的 に向けて、主体的 にかつ仲間と共に試行錯 誤を繰り返し、互いの考 えを共有する ◆法則性や予測を立てなが ら見通しをもって遊びを 創造する ◆仲間と共に創り出した遊びを、自分た ち以外の他者(年中年少児・保護者) へ拡げることを願い、見通しを持ちな がら工夫や試行錯誤を繰り返す ◆互いの考えを認め合いながら主体的に 動こうとする ◆自信をもって他者へ届けたり、他者の 反応から達成感や喜びを味わったりし、 園生活の充実感をもてるようになる 高次な 共通の 目的 共通の目的 図㧝 本研究から導き出された学びの深まりのステージ  この図㧝を踏まえ、以下、本研究から導き出された学びの深まりについて言及する。  個々が主体的に遊び充実していることを基盤に、友達同士で対話が生まれ、互いのありのま まを受け入れ合い、良さや発見を取り入れたり試したりする中で、「もっと面白くしたい」と いう共通の目的を友達ともつことで『友達と遊ぶ』という段階から『仲間同士で遊ぶ』(同じ 目的に向かっていくことを互いに意識し、自分たちの遊びを創り上げるという強い思いでつな

(21)

がっている)という段階へと変容していく。この中で、互いを出し合い、つながり合いながら、 良いものにしようと練り合い、もっと工夫したい、高度にしてみたいなどと、次々と挑戦的な 活動へと展開し、仲間と共に充実感や達成感を味わっていく。さらには、遊びを他者へと拡げ、 役立つ自分、仲間の中にいる自分、クラスの中にいる自分を感じて、仲間やクラスの友達との つながりや園生活に充実感をもつようになる。  このような姿は、幼児の中に培われたその時々の学びが、長期的・継続的な遊びのプロセス を通して活かされ意味あるものにしながら深まっていると捉え、これが本研究知見から見出さ れた「深い学び」ではないかと考える。 ቼᴯኮǽటᆅሱɁ᪅ႜȻ̾ऻɁᝥᭉ  本研究の限界としては、以下㧞点が挙げられる  まず、本事例の検討では、子どもの学びの深まりに焦点を当てている反面、担任教諭の見と りの変容との関連に関する検討が不十分であることが挙げられる。各事例の㧝)子どもの姿の 読み取り、㧞)保育者の援助の㧞点を時系列に沿って追跡すると、一人一人の幼児が個々のイ メージを実現しようと試み、また、互いのイメージが共鳴し合い遊びが展開されていく中で、 教師の個々に対する見とりや幼児集団に寄せる願いなども変容していたことが見出されてお り、これらの幼児理解に基づいた環境構成やさりげない配慮が、本児らの学びの深まりに大き な影響を与えていることが想定される。しかし本研究では、これらの見とりや保育者の援助が、 子どもの学びの道筋にどのように関連しているかに関して、十分に言及しきれていない点が課 題として残る。  もう㧝点としては、本事例から導き出された知見の一般化に関する課題が挙げられる。本研 究では、年長㧡歳児の「ビー玉転がし」の事例に着目して、学びの深まりを分析・考察したが、 例えば他の遊びの事例や㧡歳児以外の幼児の事例を対象として同様の検討を行った際には、ま た異なる「学びの深まり」が見出される可能性もあるだろう、  よって、今後の課題としては、担任教師の見とりや援助と子どもの学びの往還性に着目した 検討をしたり、様々な事例にも焦点を当てながら比較したりすることを通じて、幼児期におけ る主体的・対話的な深い学びの在り様について、更に考究していく必要があると考えられる。 ऀႊ୫စ ⑴ 文部科学省(2017)小学校学習指導要領(平成29年告示),東洋館出版社. ⑵ 文部科学省(2017)幼稚園教育要領(平成29年告示),フレーベル館. ⑶ 文部科学省中央教育審議会(2012)新たな未来を築くための大学教育の質的転換に向けて ─ 生涯学び続け,主体的に考える力を育成する大学へ─(答申),https://www.mext.go.jp/b_menu/ shingi/chukyo/chukyo0/toushin/1325047.htm(検索日2019/11/20)

⑷ Bonwell, C. C., & Eison, J. A. (1991) Active learning: Creating excitement in the classroom. ASHE-ERIC Higher Education Reports.(松下佳代(2015)ディープ・アクティブラーニング ─大学授

参照

関連したドキュメント

ロボットは「心」を持つことができるのか 、 という問いに対する柴 しば 田 た 先生の考え方を

いずれも深い考察に裏付けられた論考であり、裨益するところ大であるが、一方、広東語

問についてだが︑この間いに直接に答える前に確認しなけれ

このように資本主義経済における競争の作用を二つに分けたうえで, 『資本

式目おいて「清十即ついぜん」は伝統的な流れの中にあり、その ㈲

る、というのが、この時期のアマルフィ交易の基本的な枠組みになっていた(8)。

教育・保育における合理的配慮

ヒュームがこのような表現をとるのは当然の ことながら、「人間は理性によって感情を支配