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https://dspace.jaist.ac.jp/ Title 日本の大学等発ベンチャーの現状分析 : 2009年度大 学等発ベンチャーへのアンケート調査より Author(s) 小倉, 都 Citation 年次学術大会講演要旨集, 25: 168-171 Issue Date 2010-10-09Type Conference Paper Text version publisher
URL http://hdl.handle.net/10119/9269
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1F02
日本の大学等発ベンチャーの現状分析:
2009 年度大学等発ベンチャーへのアンケート調査より
小倉 都(文科省 科学技術政策研究所) 1.はじめに 大学等発ベンチャーは、大学(国公私立大学、高専、大学共同利用機関)や公的研究機関で創出され た研究成果を活用し、イノベーションへと効果的につなげていくうえで重要な役割が期待されている。 科学技術政策研究所では、2007 年度より大学等に対してアンケート調査を実施し、大学等発ベンチャ ーの設立状況や支援状況等を調査している(科学技術政策研究所(2008,2009,2010))。最新の調査結 果によれば、わが国で各年度に設立された大学等発ベンチャーの数は 2004-05 年度をピークに以降大幅 に減少する一方、設立されたベンチャーの中から株式公開や企業売却、清算する動きも出ていることか ら、ベンチャーの課題は起業数の増加から設立後のマネジメントに移ってきていることが示唆されてい る(科学技術政策研究所,2010)。 そこで本発表では主に大学等発ベンチャーのアンケート調査結果を用いて、これまでに設立された大 学等発ベンチャーのマネジメントの現状について明らかにする。 2.調査対象と分析方法 科学技術政策研究所はこれまでに大学等発ベンチャーに対して 2 度のアンケート調査を実施した。 第 1 回は 2007 年度末時点で現存するベンチャー1559 社を対象に、2008 年 11 月に実施した郵送アン ケート調査で、回収率は 34.3%(有効回答 543 件)であった。第 2 回は 2008 年度末時点で現存する大 学等発ベンチャー1780 社に対して 2010 年 3 月に実施した WEB アンケート調査で、回収率は 33.5%(有 効回答 597 件)となった。 以下ではこれらのアンケート調査結果を用いて、2008 年度調査と 2009 年度調査でベンチャーの財務 状況や課題がどのように変化したのかを明らかにするとともに、2009 年度末時点でのベンチャーの事業 化状況や資金の充足状況を明らかにする。 3.調査結果 (1) 直近 1 年間の財務状況 大学等発ベンチャーに対して、直近 1 年間(前年度の 3 月末時点もしくは直近の決算日から遡る 1 年 分)の売上高、経常利益、研究開発費を調査した。2009 年度調査(①)と 2008 年度調査結果(②)を、 図 1 から図3では分野別に比較し、図 4 では直近 1 年間の研究開発費額別に経常利益を比較した。 図1で大学等発ベンチャーの直近 1 年間の売上高を見ると、2008 年度調査に比べて 2009 年度調査で は、概ね分野全般に売上高が減少している。 図 2 の直近 1 年間の経常利益も売上高と同様の傾向となっている。2008 年度調査に比べて 2009 年度 調査では分野全般に赤字企業の割合が明らかに増えている。 特にナノテクノロジー・材料分野で売上高の減少や赤字企業の割合の増加が目立つ。 また図 3 で直近 1 年間の研究開発費を見ると、2008 年度調査に比べて 2009 年度調査では「1000 万円 以下(0 円を除く)」の割合が大幅に増え、研究開発費額の小さい企業が増えている。 図 4 で直近 1 年間の研究開発費額別に経常利益の状況を見ると、2008 年度調査でも 2009 年度調査で も研究開発費が多くなるほど赤字企業の割合が多くなっているが、2008 年度調査に比べて 2009 年度調 査では赤字企業の割合が研究開発費額の多寡に関わらず増えている。図1直近 1 年間の売上高 ①2009 年度調査 ②2008 年度調査 0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 80% 90% 100% 全体 (N=4 60) ライフサイエンス (N=13 9) 情報通信 (N=8 3) ものづくり (N=7 0) ナノテク・材料 (N=49) 環境・エネルギー (N=56) 社会基盤・フロンティア (N=24) その他 (N= 39) 0円 1000万円以下 3000万円以下 1億円以下 1億円超 0% 10% 20% 30% 40% 50% 60 % 70% 80% 90% 100% 全体 (N=446) ライフサイエンス ( N=14 8) 情報通信 (N=9 8) ものづくり (N=6 2) ナノテク・材料 (N=45) 環境・ エネルギー (N=52) 社会基盤・フロンティア (N= 15) その他 ( N=26 ) 0円 ~1 000万円 ~3 000万円 ~1億円 1億円超 図 2 直近 1 年間の経常利益 ①2009 年度調査 ②2008 年度調査 0% 10 % 20 % 30% 40% 50% 60% 70% 80 % 90 % 100% 全体 (N=4 43) ライフサイエンス (N=1 33) 情報通信 (N=8 2) ものづくり (N=6 7) ナノテク・材料 (N=4 8) 環境・エネルギー (N=53) 社会基盤・ フロンティア (N=23) その他 (N= 37) 赤字 0円 ~1000万円 ~3000万円 ~1億円 1億円超 0% 10% 2 0% 30% 40% 50 % 60% 70% 80% 90% 100 % 全体 (N=43 4) ライフサイエンス (N=142 ) 情報通信 (N=99 ) ものづくり (N=60 ) ナノテク・ 材料 (N=44 ) 環境・エネルギー (N=50) 社会基盤・フロンティア (N=15) その他 (N=2 4) 赤字 0円 ~1 000万円 ~3 000万円 ~1億円 1億円超 図 3 直近 1 年間の研究開発費 ①2009 年度調査 ②2008 年度調査 0% 10 % 20% 30% 40% 50% 60% 70% 80% 90% 100% 全体 (N=42 6) ライフサイエンス (N=1 30) 情報通信 (N= 78) ものづくり (N= 66) ナノテク・ 材料 (N= 49) 環境・エネルギー ( N=48) 社会基盤・フロンティア ( N=22) その他 (N=3 3) 0円 ~10 00万円 ~3000万円 ~1億円 1億円超 0% 10% 20% 30 % 40% 50% 60 % 70% 80% 90 % 100 % 全体 (N=429) ライフサイエンス (N=142) 情報通信 (N=97) ものづくり (N=58) ナノテク・材料 (N=44) 環境・エネルギー (N= 49) 社会基盤・フロンティア (N= 15) その他 (N=24) 0円 ~1000万円 ~3000万円 ~1億円 1億円超 図 4 直近 1 年間の研究開発費額別経常利益 ①2009 年度調査 ②2008 年度調査 0% 10% 20 % 30 % 40% 5 0% 60% 7 0% 8 0% 90% 100% 0円 (N=43) ~1 000万円 (N=233) ~3 000万円 (N=7 7) ~1億円 (N=43) 1億円超 (N=25) 研 究 開 発 費 経常 利益 赤字 0円 ~1000万円 ~3000 万円 ~1億円 1億円超 0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 80% 90 % 100 % 0円 (N=57 ) ~1000 万円 ( N=196) ~3000 万円 (N=70) ~1 億円 (N=50) 1億円超 (N=40) 研 究 開 発 費 経常利 益 赤字 0円 ~1000万円 ~300 0万円 ~1億円 1億円超
(2) 資金の充足状況 2009 年度調査として大学等発ベンチャーでの資金の充足状況に対する意識を、研究開発費(①)、設 備投資資金(②)、日常的な運転資金(③)に分けて調査した。図 5 に調査結果を示す。分野の違いに 関らずベンチャー全般に①から③のいずれの資金も「確保できていない」との認識が強い。分野別では 売上高の減少、赤字企業の増加が目立つ、「ナノテクノロジー・材料」で運転資金や研究開発費、特に 設備投資資金が「全く確保できていない」との回答が多い。 図 5 資金の充足状況 ①研究開発費 ②設備投資資金 0 % 10% 20 % 30% 40% 50% 60 % 70 % 80% 90% 100% 全体 (N=470 ) ライフサイエンス (N=161 ) 情報通信 (N= 104) ものづくり (N=62) ナノテク・ 材料 (N=48) 環境・エネルギー (N=50) 社会基盤・フロンティア (N=15) その他 (N=30 ) 全く確保で きていな い あま り確保で きていな い 普通 やや確保で きてい る 十分確保で きてい る 0% 10% 20% 30% 4 0% 5 0% 60 % 70% 80% 90% 1 00% 全体 ( N=438 ) ライフサイエンス (N=152) 情報通信 (N= 105) ものづくり (N=64) ナノテク・材料 (N=48) 環境・エネルギー (N=51) 社会基盤・フロンティア (N=16) その他 (N=27 ) 全く確保できて いない あま り確保で きてい ない 普通 やや確保できて いる 十分確保できて いる ③日常的な運転資金 0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 80% 90% 100% 全体 (N=472) ライフサイエンス (N=162) 情報通信 (N= 103) ものづくり (N=65) ナノテク・材料 (N=48) 環境・エネルギー (N=48) 社会基盤・フロンティア (N=16) その他 (N=30) 全く確保できていない あま り確保で きていな い 普通 やや確保できて いる 十分確保できてい る (3) 事業化状況 2009 年度調査で大学等発ベンチャーの事業化状況を調査したところ、回答企業の 85.5%で既に「なんらか の製品、サービスが事業化(販売)済み」の状況であることがわかった。また事業化の際に基となる特許が あったか(①)、また事業化までに補助金の利用があったか(②)を調査したところ、事業化までに補助金を 利用したことのある企業の 71.3%で事業化の際に基となる特許があることがわかった。また、図 6 に示すよ うに、分野別で見ても、①で事業化の際に基となる特許がある企業が多い分野では、②の補助金の利用企業 が多いという傾向が見られ、ナノテクノロジー・材料分野もこの傾向が当てはまる。 図 6 事業化の際の特許の有無/事業化までの補助金の利用の有無 ①特許の有無 ②補助金の利用の有無 0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 80% 90% 100% 全体 (N=556) ライフサイエンス (N=1 81) 情報通信 ( N=129) ものづくり ( N=69) ナノテク・材料 ( N=52) 環境・エネルギー (N=56) 社会基盤・フロンティア (N=2 6) その他 (N=43) 特許あ り 特許なし 0% 10% 2 0% 30% 40% 50% 60% 70% 80% 90% 100% 全体 (N=55 3) ライフサイエンス (N= 180) 情報通信 (N=128) ものづくり (N=69) ナノテク・材料 (N=51) 環境・ エネル ギー (N=56) 社会基盤・フロン ティア (N=26) その他 (N=43) 補助金の利用あり 補助金の利用なし
(4) 大学等発ベンチャーの認識する課題 大学等発ベンチャーで認識する課題について、2009 年度調査(①)と 2008 年度調査(②)結果を、 図 6 で比較した。どちらの調査でも「販路・市場の開拓」、「収益確保」、「資金調達」が大きな課題とな っている点は共通している。 ただし、2008 年度調査はライフサイエンス分野で「資金調達」の課題が特に大きかったが、2009 年 度調査では、ナノテクノロジー・材料分野で「資金調達(研究開発資金)」の課題が特に大きくなって いる。 図 6 課題(上位 3 項目) ①2009 年度調査 ②2008 年度調査 0 .0 0 .2 0 .4 0 .6 0 .8 1 .0 1 .2 1 .4 1 .6 販 路 ・ 市 場 の 開 拓 収 益 確 保 資 金 調 達 ( 人 件 費 ) 資 金 調 達 ( 研 究 開 発 資 金 ) 人 材 の 確 保 研 究 開 発 ス ピ ー ド 、 研 究 開 発 能 力 の 向 上 オ フ ィ ス 、 研 究 ス ペ ー ス の 確 保 そ の 他 平 均 点 ライフサイエンス(N=148) 情報通信(N=100) ものづくり(N=60) ナノテク・材料(N=45) 環境・エネルギー(N=52) 0.0 0.2 0.4 0.6 0.8 1.0 1.2 1.4 1.6 収 益 確 保 資 金 調 達 販 路 ・ 市 場 の 開 拓 人 材 の 確 保 研 究 開 発 ス ピ ー ド 、 研 究 開 発 能 力 の 向 上 オ フ ィ ス 、 研 究 ス ペ ー ス の 確 保 新 事 業 立 ち 上 げ 、 事 業 の 転 換 他 企 業 と の 連 携 新 た な 事 業 シ ー ズ の 発 掘 特 許 の 出 願 ・ 取 得 や 活 用 、 知 財 の 保 護 ラ イ バ ル 企 業 と の 差 別 化 大 学 等 と の 連 携 平 均 点 ライフサイエンス(N=163) 情報通信(N=96) ものづくり(N=74) ナノテク・材料(N=60) 環境・エネルギー(N=62) (注)1 位 3 点、2 位 2 点、3 位 1 点として分野別に平均点を求めてグラフ化した。 4.まとめと考察 大学等発ベンチャーの大半は既に製品やサービスの事業化に至っているが、ベンチャー全般に 2008 年度調査よりも 2009 年度調査で財務状況は悪化しており、2009 年度末時点で研究開発や設備投資等の 資金の不足を感じる企業も多い。特にナノテクノロジー・材料分野では売上高の減少や赤字企業の増加 が目立っており、研究開発や設備投資の資金不足を感じる企業も多く、研究開発資金の確保は特に大き な課題となっている。ではナノテクノロジー・材料分野での業績の急激な業績悪化の要因はどこにある のだろうか。ナノテクノロジー・材料分野に区分されるベンチャーの多くは半導体関連企業である。日 本製の半導体装置の受注額、販売額は、2007 年 4 月頃から下がり始め、2009 年 3 月の受注額は過去 5 年間で最低の 13,551 百万円(前年度比-88.1%)となり、販売額は 44,475 百万円(前年度比-71.3%) となった(日本半導体装置協会 HP)。ここから、半導体製品の急激な受注の落ち込み、いわゆる半導体 不況の影響を強く受け、ナノテクノロジー・材料分野のベンチャーでは、業績が悪化し、資金調達の問 題がマネジメントにおいて深刻化していると推察される。またナノテクノロジー・材料分野では事業化 の際に特許が基となっている企業が多く、特許出願や維持費用の問題もあり、研究開発の資金の確保は 特に大きな課題となっていると考えられる。 5.今後の課題 今回は大学等発ベンチャーのアンケート調査結果を用いて主に分野別の分析を行ったが、結果の解釈 については更なる分析が必要である。したがって、今後はわが国の企業全般の動向と大学等発ベンチャ ーの動向がどの程度対応しているのか、より精緻な分析をしていきたい。また大学等発ベンチャーのマ ネジメントの特徴や課題については、定量的なデータだけで解釈するのは限界があるため、今後は定性 的な調査も強化していきたい。 【参考文献】 科学技術政策研究所「平成 19 年度大学等発ベンチャーの現状と課題に関する調査」調査資料 No.157、 2008 年 8 月. 科学技術政策研究所「大学等発ベンチャーの現状と課題に関する調査 2007-08」調査資料 No.173、2009 年 12 月. 科学技術政策研究所「大学等におけるベンチャーの設立状況と産学連携・ベンチャー活動に関する意識」 調査資料 No.189、2010 年 9 月.