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北海道商業の変化 : 1992年から2011年の20年間の変化を中心にして

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〔論  文〕 (北海学園大学経営学部)佐 藤 芳 彰

北海道商業の変化

1.はじめに

商業は小売業と卸売業に大別され,卸売業 者の先には製造業者(メーカー)が存在する。 これが,流通チャネルのイメージになる。戦 後しばらくは,メーカーが中心となって,流 通チャネルを統制する仕組みが作られた。し かし,小売業の大規模化によるパワーシフト によって,メーカーによるチャネル統制が 徐々に変化していく(1)。卸売業は,メーカー の代理店・特約店としての役割から,より自 立的な高度な機能を要求されるようになる。 業種によっては,道内へ本州から全国卸が進 出して統合・再編が加速された。一方で,最 寄品販売が中心のスーパーでは,道内企業を 中心に統合されていくことになる。また,専 門量販店の中には,道内から全国に進出して 急成長する企業も現れる。 本稿は,2013年7月6日経営史学会北海道部 会ワークショップにおいてコメントテーター として報告した内容(北海道の卸・小売業に ついて)に基づき,大幅に加筆したものであ る。しかし,基本的な分析期間は報告時の時 と同じままで,その前後については,現況も 含めて部分的に言及することとした。本来な らば,分析期間を最近まで拡張すべきところ であるが,更なる分析は,紙面の制限もあり 別の機会に,稿をあらためたい。 20年とはいえ決して短い間ではなく,これ から見るように,道内商業界は激変してい る。今後も変化し続けるであろうことは間違 いないが,この20年間の変化を見ることに よって,将来の変化に対する方向性が見えて くるものと思われる。また,分析対象は北海 道本社の企業を中心にしているが,道外本社 の企業についても,道内企業や道内市場に関 連する限り部分的に取り上げている。

2.1992年から2011年までの道内主

要小売企業の変化

表1には1992年度,北海道本社の小売業売 上高10位までの企業と,2011年度に10位以内 となる企業あるいは関連した企業をあげてい る。日経新聞調査の全国順位を示している。 表2は,北海道本社の小売業で,2011年度持 ち株会社などの親会社(連結子会社の売上が 含められている)と単体で,道内10位までの ランキングである。1997年の法改正で純粋持 ち株会社が解禁されて以降,流通業界では 持ち株会社が増加した。親会社が道外の場 合は,親会社の名前が備考に書かれている。 また,全国順位としては親会社に順位が付け られるため,子会社の場合は全国順位が付け られていない。道内本社の親会社10位以内に 入っている場合は,その子会社は表2の道内 10位以内リストにあげていない。親会社が道 外の場合は,その北海道本社の子会社は道内 10位以内リストにあげている。2011年に10位 以内に入っている場合は1992年に10位外で あっても表1に示した。アークスの子会社は 多数で有力企業が多いので,道内順位とは別 に参考までに表2に示している。 1992年度の道内小売1位はコープさっぽろ (全国39位)で約1640億3000万円,以下順に, 丸井今井,北海道ニチイ,西武北海道,石黒 ホーマ,ラルズ,札幌そごう,札幌東急スト ア,札幌フードセンター,北雄ラッキーまで

─1992年から2011年の20年間の変化を中心にして─

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が道内10位以内の小売業者であった。この中 で,2011年まで会社名もそのままで存続して いるのが,コープさっぽろ全国45位(道内4 位),北雄ラッキー全国204位(道内10位)の 2つ,ラルズを入れれば3つのみである。ラ ルズは親会社のアークスとして2011年のラン キング入りになり道内1位となっている。ま た,1992年道内7位の札幌東急ストアは,アー クスに経営譲渡されて東光ストアと名称変更 されている。アークスを抜かして順位を数え れば,ラルズ単体では2011年においても道内 7位となり,東光ストアは2011年においては 道内10位となる。ラルズ,東光ストアを含め たアークスグループ全体に関しては,次章に 詳述する。 1992年で道内2位の丸井今井は,2011年で は札幌丸井三越として道内9位となってい る。丸井今井は,2009年に経営破たんし三越 伊勢丹ホールディングスの子会社として札幌 丸井今井としてスタートし,さらに,2011年 から札幌丸井三越となった。函館店は一時函 館丸井今井として別会社となっていたが,現 在,札幌丸井三越が,丸井今井札幌本店と函 館店,札幌三越の3店を経営している。1992 年では百貨店として他に道内7位の札幌そご うがあるが,親会社そごうの経営破たんに連 動して2001年に破産宣告を行っている。丸井 今井と札幌そごう2社の破たんは,百貨店不 況など外部環境もさることながら,親会社に よるものも含めて急激な多角化や不動産投資 などの内部的な経営問題によるところが大き い。 他の大手百貨店は,都市百貨店同士の合併 による経営統合や,経営の効率化などによっ て,百貨店不況を乗り切っている。例えば, 大丸は売り場運営の見直しによる正規従業員 の削減を柱とする営業改革を行っている。こ の効果がはっきりと表れたのが2003年開業の 大丸札幌店である。当初の見通しを覆して初 年度から黒字を達成している。 1992年道内3位の北海道ニチイは,2011年 では,道内6位のイオン北海道の一部となっ ている。北海道ニチイは,親会社マイカルの 経営破たんによって,紆余曲折を経た結果で ある。1992年道内9位の札幌フードセンター はイオングループに経営譲渡され,2011年道 全国順位 道内本社小売企業 売上(百万) 2011年での変更 39 コープさっぽろ 164030 59 丸井今井 117530 札幌丸井三越 103 北海道ニチイ 78449 イオン北海道 116 西武北海道 71234 そごう・西武 178 石黒ホーマ 47375 ホーマック 181 ラルズ 46769 アークス 187 札幌そごう 44901 2001年破産宣告 220 札幌東急ストア 37426 アークス 248 札幌フードセンター 34174 マックスバリュ北海道 261 北雄ラッキー 32523 表2で10位以内と関連する企業 330 道央市民生協 24778 コープさっぽろ 368 三島 21200 道東ラルズ 394 ツルハ 19664 428 ニトリ 17733 表1 1992年度小売業売上 *日経流通新聞編(1993)より作成

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内8位のマックスバリュ北海道の母体となっ ている。道内のイオングループについては次 章で詳述する。 1992年4位の西武北海道が運営していた百 貨店は,現在は,東京本社の「そごう・西武」 の旭川店として1店のみが残っている。1992 年当時は,西武北海道の店舗としては,五番 館西武(後の西武札幌店,2009年閉店),西 武函館店(2003年閉店)を含めて3店舗存在 していた。北海道本社の企業としては2011年 のランキングからは消滅している。西武百貨 店はセゾングループの中核会社であったが経 営破綻し,現在は「そごう・西武」として, セブン&アイ・ホールディングスの子会社と なっている。セブン&アイ・ホールディング スは,イトーヨーカ堂やセブン-イレブンジャ パンなどを子会社として持つ,イオンに次ぐ 規模の我が国の代表的小売企業グループであ る。 1992年で道内5位の石黒ホーマは,経営主 体はそのままにホーマックと名称変更してし (2015年DCMホーマックと名称変更),2011 年道内5位と同じ順位である。現在はDCM ホールディングスのグループの一社であり, この経緯は後の3章で詳細を記す。

3 主要小売企業の動向

(3) 3.1 主要スーパーの動向(アークス,コー プさっぽろ,イオン) (1) アークス 北海道本社の小売業で2011年度売上1位は アークスで3481億9800億円(全国29位)となっ ている。アークスは持ち株会社で,1992年時 点では存在していない。親会社として傘下に 道内と東北の有力小売会社とを子会社として 有している。売上100億以上の主な会社は表2 に示したが,2011年時点では,スーパーの子 会社は,ラルズ,東光ストア,福原,ふじ, 道東ラルズ,道南ラルズ,篠原商店(以上北 海道),ユニバース(青森)の8社である。 2015年時点では子会社は,道北ラルズがふじ と合併し道北アークスになり,ジョイス(岩 表2 2011年度小売業売上高 *日経MJ(流通新聞)2012年6月27日より作成 全国順位 道内本社小売企業 売上(百万) 備考(親会社) 29 アークス 348198 31 ニトリホールディングス 331016 40 ツルハホールディングス 299579 45 コープさっぽろ 261863 ホーマック 191417 (DCMホールディングス) イオン北海道 167273 (イオン) 81 アインファーマシーズ 142790 マックスバリュ北海道 80739 (イオン) 札幌丸井三越 65945 (三越伊勢丹HD) 204 北雄ラッキー 44568 アークスの主な子会社 ラルズ 118422 (ユニバース・本社青森) 92577 東光ストア 47563 福原 45784 ふじ 30928 道東ラルズ 16060

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手),ベルプラス(岩手)が新たに傘下に入 りスーパーの子会社は10社となり,2014年度 の売上は4703億1000万円で道内1位(全国22 位)となっている。グループとして食品スー パーでは,全国一のライフに迫る売上となる。 アークスは,水産商社(野原産業)が, 1961年に別会社ダイマルスーパーを設立し, 小規模ながら札幌市南13条西9丁目にスー パーを開店させたことに始まる。現アークス 社長の横山清氏はこの開店時に商社から出向 して現在に至っている。1969年に(株)大丸 スーパーとなっている。1989年には,衣料品 専門店金市館を道内主要都市に出店していた 丸友産業と合併してラルズを設立する。その 後,ラルズは,旧金市館各店を,札幌狸小路 店(2015年閉店)以外は早い時期に閉店させ ている。ラルズは,95年北見市のイチワを子 会社化する(現道東ラルズ)。97年には,士 別市の三島の子会社に出資し道北ラルズを設 立し,後に三島や芦別市の角幡商店の店舗を 買収し,2012年にふじと合併し道北アークス となる。2000年には,富士製鉄(現新日鉄住 金)の購買部門として出発した室蘭市ホーム ストアを子会社化した。道南では,1998年函 館のユニークショップつしまと共同出資で北 海道流通企画を設立した(2004年子会社化し 道南ラルズ)。 この間,2002年に,ラルズと帯広市の福原 が持ち株会社アークスを設立し,両社がその 子会社となることで経営統合する。アークス のその後の発展は,2004年に,既述のふじ(現 道北アークス)の子会社化,道南ラルズの設 立,2009年札幌東急ストア(現東光ストア), 2011年ユニバース(青森),2012年ジョイス(岩 手)の買収・子会社化を行い成長してきた。 このように,アークス設立以前からラルズ として地方のスーパーを吸収合併や子会社化 して成長してきた。アークス設立後は,これ までの成功をみて,アークスの経営方針に共 鳴する,道内有力企業やさらには青森・岩手 の有力スーパーが,子会社としてアークスに 参加することとなる。勝ち組の取り組みとも 言われた,その経営方針は横山氏が命名した 八ケ岳連峰経営である。これは,グループ内 の会社が一方的に支配されるのではなく,当 初は特に,社名や店名はできるだけそのまま 残し,情報システムなどを共通化し,小売業 にとって最大の課題である効率性の向上に取 り組むことを標榜したものである。結果とし て,商品の約8割の仕入を一本化した。もと もとアークスに参加した企業は,日本最大 のVCであるCGCに入っていた経緯がある。 CGC本部の活動は新商品の開発や共同仕入 れである。 アークスは,同時に,多業態化や事業多角 化にも乗り出している。2007年にはカインズ ホームのフランチャイジーとして北広島市に ホームセンターを開業している。新小売業態 としては,ビッグハウスと呼ばれる食料品 ディスカウントストアがある。1992年に札幌 市北区太平に1号店が開店している。一物三 価をキャッチフレーズとしている。標準的食 品スーパーで14000から15000品目ある商品を 三分の一に絞り込み,顧客にもまとめ買いを 促し,粗利も経費も20%以下(例えば,粗利 16.5%で販管費13%)に抑えて,薄利多売で 利益を出す業態であった。ビックハウスの生 みの親はCGC加盟の盛岡のベルプラスであ るが,アークスで成長し本格化した。 (2) コープさっぽろ コープさっぽろは,道内本社の小売業で 2011年度売上道内4位(全国45位)売上高 2618億6300億円,1992年度では売上道内1位 (全国39位)売上高1640億3000億円であっ た。ちなみに2014年時点の売上は2682億5900 万円で道内4位(全国47位)となっている。 1965年に札幌市民生協として設立され,その 後,生活協同組合市民生協,生活協同組合市 民生協コープさっぽろの名称変更を経て, 2000年に現在の名称「生活協同組合コープ さっぽろ」となっている。この間,1978年に は北海道中央市民生協(旧空知市民生協), 函館市民生協と統合している。 1995年から96年にかけて経営破たん寸前の 危機が表面化する。現理事長の大見英明氏に

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よるとその原因は,①実質25年に及ぶ前理事 長のワンマン体制,②店舗の標準化ができな かったこと,③非食品部門の拡大に伴う非効 率化,④飲食店,ホテル・観光事業などの多 角化,⑤銀行借入金依存体質をあげている。 根本的原因としては,本業である食品部門の 競争優位性の弱さがあった。 再建に向けては1998年に,日本生活協同組 合連合会から新理事長を迎えると同時に217 億円の資金が投入された。不採算部門の撤退 とテナントの導入,採算店の閉店,希望退職 者募集による人件費の削減を行った。この 時,希望退職であっても退職金は半額しか支 払われず,退職金捻出のため職員の給与カッ トが行われた。当時の内館理事長が言う「残 るも地獄,去るも地獄」の状況であった。8 年間の職員採用を停止,週休2日から週休1日 への変更,業績に応じた評価や降格人事の実 施や,即戦力にならない人材の配置換えも行 われた。超過勤務は当たり前で,職員が危機 を共有し懸命の再建がなされた。 一方で,パート教育プログラムの充実を 行っている。食品部門強化のためには,「お いしいお店」をコンセプトにかかげた。鮮度・ 品質のよい食材,こだわった食材・お祝いご とのための食材を揃えることであった。地域 一番店を目指した。米・薬・酒を強化し競合 に備えた。食品スーパーとドラッグストアの コンビネーション型の業態を店舗コンセプト とした。その結果,徐々にV字回復する。 2006年にはそれまであった宅配事業に「ト ドック」のブランディングを行っている。宅 配は毎週一回カタログが組合員に配布され, 翌週配達する仕組みで,他の小売業に真似で きないものである。コープさっぽろの強み であり業績に貢献している。2003年にはPOS データを取引先に料金をとって開示すること を始めている。取引先と情報共有することに よって営業の効率化が飛躍的に進んだ。同業 他社に先駆けた試みであった。コープさっぽ ろの仕入担当者と,多数の取り先がともに POSデータから問題を見つけて,仮説の形で 新しい提案を行い,それをPOSデータで検証 することが行われるようになった。短期間で の業績改善にはこのような取り組みが大き かった。 その後は,組合員の要望,救済的な理由か ら,2003年釧路市民生協,2005年宗谷市民生 協,2006年道央市民・コープどうとう,2007 年コープ十勝,など道内各地の生協を吸収合 併している。また,生協だけでなく,道内の 地方スーパーのへの資本参加・事業継承によ る事実上の合併・買収が行われた。2009年室 蘭のスーパー,志賀綜合食料品店と資本提携 したが,12年に同店の特別清算の後に一部の 店舗を継承している。2009年旭友ストアから 店舗を継承している。また,同年,函館のスー パー「魚長」と資本提携すると同時に,店舗 運営ノウハウを提供しこの再建に成功してい る。 (3) イオングループ イオングループの北海道本社のスーパーと しては,イオン北海道とマックスバリュ北海 道の2社である。イオン北海道のもととなっ た企業は,1978年に北海道ニチイとして設立 されている。1996年にはマイカル北海道に社 名変更している。その後,親会社のマイカル による民事再生法適用申請よって,2001年 8月に同社グループを離脱し自立経営を目指 し,2002年に北海道ポスフールとなる。さら に2003年にイオンと資本提携し2007年にイオ ンの子会社となり社名をイオン北海道に変更 して現在に至っている。道内で,イオンの ショッピングセンターの運営を始め,スー パーセンター,ショッピングセンター内の総 合スーパーや,最近では,小型スーパーの「ま いばすけっと」の運営を行っている。 マックスバリュ北海道は,2000年に札幌 フードセンターと北海道ジャスコが合併し設 立された。札幌フードセンターは,1961年札 幌市北21条西5丁目に食品スーパー 1号店を 出した,地場の食品スーパーチェーンであっ た。一方,北海道ジャスコは合併までに道内 にマックスバリュを数店舗出していた。その 後,2003年に王子サービスセンター,2008年

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にジョイを吸収合併し拡大してきた。した がって,当初は,マックスバリュ,札幌フー ドセンター,ジョイなど8つの店名があった が,マックスバリュとザ・ビッグ(格安店) の2つの店名に集約されてきている。 3.2 その他の主要企業(専門店,コンビニ エンスストアの動向)(4) 上述した3グループは,最寄品販売を中心 に食品スーパーなどを展開し道内を基盤にし ている企業であるが,これらの企業以外の北 海道本社の主な小売企業には,ニトリ,ツル ハ,ホーマック,アインファーマシーズ,セ イコーマートなどがある。 ニ ト リ は1992年 の177億3300万 円( 全 国 428位)から2011年ではニトリホールディン グスとして,道内2位の3310億1600万円(全 国31位)となっている。ツルハは1992年196 億6400万円(全国394位)から,2011年では ツルハホールディングスとして,道内3位の 2995億7900万円(全国40位)となっている。 石黒ホーマは1992年473億7500万円(全国178 位)から,2011年ではホーマックとして1914 億1700万円(全国63位)となっている。アイ ンファーマシーズは,1992年では社名は第一 臨床検査センターで小売業売上としては全国 の500社ランキングに入っていない。2011年 では道内7位の1427億9000万円(全国81位) となっている。これらの企業は専門店であ り,地元の限られた商圏を有する食品スー パーと相違し,道外に積極的に進出し売上を 伸ばした。 これらの全国に進出した企業で,最も飛躍 的に成長したのが,札幌で家具店として創業 したニトリである。HFS(ホームファニシン グストア)と自らが呼ぶ,日本国内には存在 しなかった新しい小売業態を創造した。登記 上の本社は札幌であるが,東京本部を持つ全 国企業であり,さらに,台湾・中国・アメリ カにも店舗を有するグローバル企業の道を進 みつつある。個人経営の家具店から出発し, メーカーからの直接仕入,海外輸入,日本で 初めての家具専用の自動倉庫の建設,家具 メーカーの買収,インドネシア,ベトナムに 自社工場を所有しての海外生産など,常に新 しい道を切り開いてきた。製造から物流・販 売まで垂直統合した製造物流小売業を確立し 急成長した。 ツルハは第2次大戦以前に旭川で薬局とし て創業し,1991年に本社を札幌に移転して現 社名となっている。1995年にはイオン(当時 ジャスコ)と資本・業務提携している。持ち 株会社を設立し,くすりの福太郎(千葉県) など,全国各地の薬局・薬店・ドラッグスト アを買収・子会社化して傘下におさめて成長 した。 ホーマックは,釧路市の金物店として創 業し,石黒ホーマと社名変更しホームセン ターとして札幌に進出する。その後,東北・ 関東のホームセンターを合併・買収によっ て本州に進出し,2007年カーマ,ダイキと DCMJapanホールディングス(現DCMホー ルディングス)設立し日本最大のホームセン ターグループとなっている。2011年には,ツ ルヤを完全子会社し小型店舗をニコットとい う店名で展開している。 アインファーマシーズは,1969年に受託臨 床検査事業を行う第一臨床検査センターとし て札幌に設立され,1998年に現社名に変え, 現在は調剤薬局とドラッグストアを経営の柱 としている。2006年には,後発医薬品卸を主 な事業とするホールセールスターズ(本社東 京)を設立し卸事業に進出している。2008年 にセブン&アイと資本・業務提携している。 セイコーマートは,2011年の売上は103億 3500万円(全国468位)で道内10位以内には 入らない。これは,フランチャイズ加盟店の 売上は入らないためである。しかし,2011年 度で加盟店が1134店で道内コンビニ最大で全 店舗の売上は1819億8700万円となり,この数 字を当てはめれば,道内8位となる。関連会 社に卸や製造会社を持ち,これらがPB商品 の供給を支えて,全国チェーンに負けない強 みとなっている。

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4.1992年から2011年までの道内主

要卸売企業(消費財)の変化

(5) 表3は1992年度,北海道本社の卸売業売上 高ランキングである。最終消費財を扱う卸業 者のみをあげている。産業財や中間財卸を含 んでいない。売上100億円以上の企業のみ取 り上げた。表4は,同じく,2011年度持ち株 会社などの親会社(連結子会社の売上が含め られている)と単体であわせてのランキング である。また,道内卸と関係する道外企業も あげている。すぐわかることは,100億円以 上の売上の道内本社の企業が減少しているこ とである。道内企業同士の合併や本州大手卸 による買収などによる結果である。 1992年度の道内卸売業1位は秋山愛生舘で 約1088億9700万円,以下順に,北海道酒類販 売,北酒連,モロオ,バレオ,ホシ伊藤,大 丸藤井,ダイカ,古谷,杉野商事までが道内 10位以内の卸売者であった。さらに,売上高 100億円以上の企業を見ていくと,日東,丸 ヨ西尾,オグラ,ナシオなどが続く。 この中で,2011年で所有関係と会社名もその ままで,売上100億円以上を維持して存続して いるのが,モロオ,大丸藤井,ナシオである。 所有関係はそのままで,会社名が変わったのが 丸ヨ西尾でセイコーフレッシュフーズに社名変更 している。社名はそのままであるが,本州企業 から出資を受け入れ傘下にはいるかあるいは子 会社になっているケースが,北海道酒類販売や スハラ商事である。本州の大手卸売企業に吸 収合併や買収により社名がなくなったものに,秋 山愛生舘,粧連,古谷,オグラ,北酒連がある。 道内企業同士合併で社名がなくなったものに, バレオ,ホシ伊藤,十勝米穀,杉野商事がある。 また,ダイカは本州企業との対等合併で社名が なくなっている。繊維問屋の東栄(旭川市) は2003年に倒産している。函館米穀などは売 上を減少させて表4にあげられていない。 表3 1992年度卸売業売上高 *日経流通新聞編(1993)より作成 道内本社の卸売企業 売上(百万円) 業種 秋山愛生舘 108897 医薬 北海道酒類販売 94046 食品 北酒連 86728 食品 モロオ 78928 医薬 バレオ 70451 医薬 ホシ伊藤 68151 医薬 大丸藤井 64795 文具・紙 ダイカ 54469 日用雑貨 古谷 43119 食品 杉野商事 32191 食品 日藤 29278 紙 丸ヨ西尾 26107 食品 オグラ 25017 菓子 ナシオ 21686 菓子 十勝米穀 20433 食品 スハラ食品 19570 食品 東栄 15524 繊維 粧連 14565 日用雑貨 函館米穀 10361 食品

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5 道内卸の動向と再編

(6) 医薬品卸業界では,1991年に道内医薬卸5 社が合併し(1社買収)バレオが設立された。 1998年には道内医薬品卸最大手の秋山愛生舘 が,当時売上全国1位のスズケンに吸収合併 される。これによって,本州からの医薬品卸 の進出が本格化する。さらに,1999年には, バレオとホシ伊藤が合併し「ほくやく」とな る。現在,札幌本社の主な医薬品卸は「ほく やく」とモロオの2社になっている。1992年 からの医薬品卸の再編は,この年から医薬品 の取引慣行が変更になったことと大きく関係 している。卸から医薬品卸への医薬品の納入 価格はこの年から卸が医療機関や薬局と交渉 して自ら決めなければならなくなった。それ 以前はメーカーの営業員であるMRが納入価 格を決めていた。卸経営の効率化と交渉力強 化を図る必要がでてきた。 2006年には,ほくやくが持ち株会社である 「ほくやく・竹山ホールディングス」を設立 し,医療機器の竹山と経営統合し,2011年時 点の道内卸の中では最大の売上高となってい る。 1995年には食管法が廃止され食糧法が制定 される。2004年に新食糧法が施行され,コメ 流通に大きく影響を与える。2002年には十勝 米穀と空知米穀が合併し食創が設立される。 100億円未満の売上で言えば,1996年に北海 道中央食糧が,室蘭米穀・小樽米穀を吸収合 併しており。コメの卸でも再編が進んだ。 全国卸が道内の卸を傘下に収めて道内進出 を果たす例が顕著にみられるのは,食品・酒 類業界である。2000年に,三井物産系食品卸 の三友食品(現三井食品)が,古谷を買収し 北海道支社とする。古谷は1899年に札幌で創 業した老舗であったが,酒ディスカウンター のデリーズの倒産に伴い連動して債務超過に 陥った。2000年には杉野商事と北海道雪印販 表4 2011年度度卸売業売上高 *日経MJ(流通新聞)2012年8月1日より作成 道内本社の卸売企業 売上(百万円) 備考 ほくやく・竹山ホールディングス 202402 道内会社の合併で成立 モロオ 116096 セイコーフレッシュフーズ 105765 丸ヨ西尾から発展 日本アクセス北海道 71147 日本アクセスの子会社 北海道酒類販売 79167 日本酒類販売の子会社 シュレン国分 67604 国分の子会社 大丸藤井 48837 ナシオ 36117 食創 22020 道内会社の合併で成立 スハラ食品 16847 伊藤忠食品の子会社 RJオグラ 15211 三菱食品の子会社 道外の卸売企業(親会社など) 三菱食品(東京) 2151941 RJオグラ子の親会社 スズケン(愛知) 1859917 秋山愛生舘を吸収合併 日本アクセス(東京) 1581952 杉野商事吸収合併 国分(東京) 1471384 北酒連の親会社 パルタック(大阪) 765654 粧連吸収合併 あらた(千葉) 620751 ダイカなどと合併で成立 三井食品(東京) 603572 古谷吸収合併

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売が合併し杉野雪印アクセスが設立される。 杉野商事は1914年創業の旭川市本社の食品卸 であるが,最大の仕入先である雪印乳業から の合併提案を受け入れた。2005年に東京本社 の食品卸である雪印アクセスが伊藤忠商事の 子会社となったのを契機に,杉野雪印アクセ スは社名を「日本アクセス北海道」に変更し て今日に至っている。また,2000年には,菱 食(現在の三菱食品)が,千歳鶴ブランドの 日本清酒(札幌市)の酒類卸部門の営業譲渡 を受け,現在は北海道リョーショク(三菱食 品系列)の一部となっている。 2005年には,菓子問屋のオグラが,菱食(現 三菱食品)の子会社となり「RJオグラ」と なる。札幌本社オグラは,1915年サハリン創 業の老舗企業であるが,幾つかの小売業の相 次ぐ破綻による債権焦げ付きよって,他の取 引先とのリスク回避を急ぎすぎる経営判断に 誤りがあったと言われる。コープさっぽろや ダイエーとの取引停止は失敗だったと言われ る。コープさっぽろの驚異的業績回復後に取 引を再開できなかった。 北海道酒類販売は北酒販と略称されるが, 2007年に日本酒類販売(日酒販)からの出資 を受け入れ傘下にはいっている。同じ年2007 年に北酒連が国分の子会社となり,2009年に 北海道国分と統合し「シュレン国分」とな る。2011年には,伊藤忠食品が小樽市のスハ ラ食品を子会社化する。一方,食品業界で独 立して残った企業にセイコーフレッシュフー ズ(旧丸ヨ西尾)がある。セイコーマートな どグループ内企業を顧客に成長した。もとも と,酒・食品卸の丸ヨ西尾が1971年から販売 先の酒店をセイコーマートにしていったのが 始まりであった。コンビニエンスストアへの 多角化が成功のもととなった。 菓子問屋のナシオは独立を維持し単独で全 国に進出していく。これは全国生活協同組合 連合会の指定卸になって,全国の生協とのつ ながりを強めたことによるものである。コー プさっぽろがPOSデータを低料金で公開した ことをきっかけに,ナシオはデータから様々 な提案をする「リテールサポート」を行う, 平社長の言う「運ぶ卸」から「情報を売る卸」 への転換が行われた。配送の大部分はアウト ソーシングが行われた。 ダイカは道内各地の日雑卸が合併して1969 年に設立された企業である。ダイカが全国的 に注目を集めたのは1992年から実施した無返 品政策であった。これは,小売店からの返品 は従来通り受けるが,メーカーへの返品は, 原則しないというものである。主な目的は小 売店頭重視の販売革新にあった。日雑卸業界 の反応には,実現可能性について懐疑的なも のが相当あったが,これ以後,販売員の意識 と実際の行動も大きく変わっていった。その 後,ダイカは,中部,九州のそれぞれを基 盤とする,サンビッグ,伊藤伊の3社は経営 統合のために持ち株会社をつくり,さらに, 2004年に四国の新たな1社を加えてこれら4社 が合併し「あらた」という全国規模の会社に なった。一方,それまで売上1位だった大阪 本社のパルタックが,2004年に札幌本社の粧 連を吸収合併して道内に進出してくる。

6.おわりに

第1の変化は,商業の地域化から全国化で ある。本州からのスーパーや専門量販店の道 内への進出,また,全国卸の道内進出であ る。逆に,道内からも,一部の小売業や卸売 業が本州に進出している。第2の変化は,道 内でのM&A,企業の合併や買収が進んだこ とである。買収に関しては第1の本州企業の 進出と直接関係し,道内企業同士の合併ある いは,持ち株会社となる親会社による経営統 合も,第1の変化に触発されたものであり, 間接的には関係している。 アークスグループやコープさっぽろの例 は,道内企業・組織同士の統合の顕著な例で ある。ニトリ,ツルハ,ホーマック,アイン ファーマシーズの専門店は積極的に道外に進 出し全国企業になった。卸売業では,「ほく やく」が道内企業同士の統合の例にあたる。 ダイカは道内企業同士の統合から本州企業の 吸収合併,さらに全国規模での統合に進んで いく。同業の粧連とは対照的な結果となった。

(10)

同業者間での統合は水平的な統合である が,垂直的な統合や垂直的な関係の強化も見 られる。セイコーマートは,卸(丸ヨ西尾) から小売へ統合であり,同時にメーカーへ進 出である。ニトリにおいても小売から製造・ 物流機能の統合が行われた。これらは垂直的 統合になる。垂直的な関係の強化では,ナシ オとコープさっぽろの情報を介した関係強化 がある。ナシオとオグラは同じ菓子問屋であ るが,経営判断に相違した。ナシオと同様に, 医薬品卸ではモロオが地域に密着した企業と して単独で独立を維持してきた。食品・酒類 問屋のほとんどは本州から進出した全国卸や 商社の傘下に入ることになった。 以上,道内に本社を置く企業を中心にまと めたので,小売業に関しても,総合スーパー ではイトーヨーカ堂や西友,現在はイオンに 吸収されているダイエーなどの動向が抜けて いる。ブン-イレブンやローソンなどのコン ビニエンスストア,道外本社の衣料品や家電 の専門量販店に関しても動向も抜けている。 イトーヨーカ堂は総合スーパーでは不振であ るが,帯広のダイイチを傘下にして,食品スー パーでの道内進出を開始しようとしている。 また,ホームセンター売上2位のコメリも道 内進出を本格化しており,今後とも,競合・ 再編が起こることが予想される。

(1) 佐藤(2015) (2) 佐藤(2015),日経MJ(流通新聞)2012 年6月27日,札幌丸井三越のホームページ。 (3) 大見(2008),横山(2014),北海道新聞 朝刊2013年7月24日,アークス・コープさっぽ ろ・マックスバリュ北海道・イオン北海道の ホームページ。 (4) 似 鳥(2015),鈴 木(2005),北 海 学 園 大学経営学部株式会社ニトリ寄附講座運 営委員会(2009),日経MJ(流通新聞) 2012年7月25日,アインファーマシーズ・ツル ハのホームページ (5) 日経流通新聞編(1993),日経MJ(流通 新聞)2012年8月1日。 (6) 高宮城(1997),佐々木(2015),平(2008), 佐藤(2008)。北海道新聞夕刊1999年9 月2日,日本経済新聞地方経済面1999年11 月25日,北 海 道 新 聞 朝 刊2000年12月6日, 2005年1月25日。

参考文献・資料

(本など) 大見英明(2008)「「連」,つながりを生かして, 講座のまとめ」『北海道の将来を展望するⅠ』 (北海学園大学経済学部コープさっぽろ寄 附講座運営委員会)中西出版。 佐々木聡(2015)『地域卸売企業ダイカの展開 ―ナショナル・ホールセラーへの歴史的所産』 ミネルバ書房。 佐藤芳彰(2008)「モロオ-地域密着型の総合 健康・医療企業を目指す医薬品卸」『北 海道の企業2』(佐藤郁夫・森永文彦・小 川正博編著)北海道大学出版会。 佐藤芳彰(2015)『流通システムと小売経営』 千倉書房。 鈴木聡士(2005)「セイコーマート」『北海道の 企業』(小川正博・森永文彦・佐藤郁夫編) 北海道大学出版会。 平公夫(2008)「卸・小売業―地域生き残り戦 略について」『北海道の将来を展望するⅠ』 (北海学園大学経済学部コープさっぽろ寄

(11)

附講座運営委員会)中西出版。 高宮城朝則(1997)「卸売業の経営システムと 内部戦略」『卸売業の経営と戦略』(高宮 城朝則編)同文舘。 似鳥昭雄(2015)『運は創るもの―私の履歴書 ―』日本経済新聞社。 日経流通新聞編(1993)『流通経済の手引き94 年版』日本経済新聞社。 北海学園大学経営学部株式会社ニトリ寄附講 座運営委員会(2009)『株式会社ニトリ寄 附講座シンポジウム報告書(流通・サービ ス業の未来)』北海学園大学経営学部。 横山清(2014)『アリの目から見た経営論』財 界さっぽろ。 (新聞など) 日経MJ(流通新聞)2012年6月27日,2012年7 月25日,2012年8月1日。 北海道新聞朝刊2000年12月6日,2005年1月25日, 2013年7月24日。 北海道新聞夕刊1999年9月2日。 日本経済新聞地方経済面1999年11月25日。

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