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高齢者・家族の生きる力、支える力と看護

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(1)

高齢者・家族の生きる力、支える力と看護

著者

太田 喜久子

雑誌名

聖路加看護学会誌

12

1

ページ

33-35

発行年

2008-03-20

URL

http://hdl.handle.net/10285/2684

Creative Commons : 表示 - 非営利 - 改変禁止 http://creativecommons.org/licenses/by-nc-nd/3.0/deed.ja

(2)

聖路加看護学会誌 Vol.12No.1March2008

高齢者 ・家族の生きる力,支える力と看護

太 田 喜 久 子 1) -3

3-会長講演

少子高齢社会の中で,高齢者 と家族の もてる力 とそれ と共にある看護 について, これまで行 って きた活動 を通 して考察す る。

Ⅰ.わが国の動態

2006年わが国の総人口はお よそ1億2,700万人で,そ の うち65歳以 上 の高齢者 人 口は 2,600万 人余 とな り, 総人口に占める割合 は21%になろ うとしている。 団塊 の世代が65歳 に達す る 2012年 には高齢者人口は 3,000 万 人 を超 え,人 口の4人 に 1人が高齢者 とい う超 高齢 社会を迎 えることになる。 一方,出生数が減少 し,2012 年の年少人口(0- 14歳)は8,000万人 と推計 されている。 15- 64歳の生産年齢人口 と高齢者 との比 をみる と,現 在 は高齢者1人に対 して 3.3人であるが,2055年 には 1 人に対 して

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.

3

人になるとされている。 出生数の減少傾 向は続 き,少子高齢化が進みなが ら人口減少局面 に入っ ている。 また,高齢者人口の中で も,75歳以上 の後期高齢者 の増加数が著 しく,健康問題 をもち,介護 を必要 とする 人の割合が上昇 している。 一方,一人暮 らし世帯が増加 していることか ら,介護 を要する高齢者は増 えるが,秦 族 による介護 を期待す ることはで きない とい うことがい える。

Ⅱ.

高齢者の健康課題と看護

高齢者の多 くは,複数の病気 をもちなが ら生活 してい る。 しか も病気の種類 にかかわ らず,健康 問題をもつ こ とで, 日常生活全体 を自立 して送る力 に影響 を受けやす い とい う傾 向がある。 また高齢者 は予備力がないため,健康状態の変化が急 で,昨 日まで元気であった人が,わずかなきっかけによ り身体機能のバ ランスを欠 き健康 レベルを悪化 させ るこ とがよくみ られる。 この ような高齢者に対 して,一人ひとりの生活のあ り 方を含めて健康状態を捉 えてい くことがで きるとい うこ とで,看護の果たす役割 は重要である。 高齢者へ の看護 とは,健康状態をその人の生活全般 (長 い生活史,生活習慣,価値槻, 日々の過 ごし方, 自立 と 1)慶磨義塾大学 依存のバ ラ ンス状態,予測 される健康状態の変化 な ど) か ら捉 え,その人にとっての健康的な生活のあ り方に向 けた援助 を行 うことである。 ここでい う健康 的なとは, その高齢者 な りに健康状態 を増進する可能性 を引 き出 し た り,いまの健康状態 を維持で きるようにした り,病気 か らの回復 を促 した り, さらに,その人な りの人生を全 うで きるよう平安 な死が迎 えられるようにすることを含 んでいる。

Ⅲ.

高齢者看護への取 り組み

1.認知症高齢者への援助

認知症高齢者 を対象 とした研究や活動 を通 して,高齢 者 と身近にいる人 との関係 をみると,認知症高齢者は二 重の困難さを抱 えているといえる (図

1)

0 認知症高齢者は,徐 々に認識力の低下や意思表出力 な どの低下をきたしてい くが,初期 は高齢者 自身 自分の変 化 に戸惑い,嘆 き悲 しむ気持 ちをもっている。 また認知 症が進行 して も,周囲の人の温か さや,道 に自分への冷 た さや非難な どを敏感 に感 じる力 をもっている。 一方, 家族や周囲の者は,認知症高齢者の言動や気持 ちを理解 で きず,その変化 を受 けとめ られないことが多い。 この ように,認知症高齢者は自身の中での認知力 と感 情のズ レをもちなが ら,同時に家族や周囲か ら, 自分 を 理解 してもらえない というズ レもあ り,二重の困難 さを 抱 えて生 きているとい うことがいえるだろう。 この ような認知症高齢者の置かれた状態 を看護者が理 解することで,高齢者 と家族のあ りようを全体 として捉 える視点をもっ ことがで きるようになる。 これを高齢者 図

1

認知症高齢者の二重の困難さ

(3)

と家族への看護援助 に活かす ことで,家族か らの理解 を 増 し,高齢者 と家族の関わ りに変化 をもた らす ことがで きるようになるだろう。

2.

高齢者せん妄ケアモデル

実践 と研究の連携や協働か ら看護方法論 を開発 してい くことは重要であ り,せん妄ケアモデルの作成の過程 に たとえることがで きる。 「せ ん妄」 は,手術後 や夜 間,高齢者 に多 く出現 し, 点滴チューブを抜いた り,入院 していることがわか らな くなった り,起 きてはいけないベ ッ ドか ら降 りて興奮 し た りなどの症状がみ られる。高齢者の苦痛や家族の戸惑 いだけでな く,治療が継続で きな くな り,入院が長期化 するなどさまざまな問題 を起 こすため,適切 な看護援助 が求め られるものである。 そのため,図 2にあげたせん妄ケアモデルを開発 して きたが,そのプロセスは,次の ようなものであった。 ・はじめに,病棟でせん妄に直面する看護師たちの何 と か してほ しい という痛切 な声 を聞 き,解決の必要 を感 じた。 ・臨床の看護軌 看護教員 ・研究者,時 には医師 も加 わ るせん妄勉強会 を立ち上げた。 ・文献な どによる学習 を行 った。 ・高齢入院患者の実態調査,看護師へのケアの実態調査 を実施 した。 ・文献や調査結果を踏 まえケアモデルの試案 を作成 した。 ・ケアモデルの妥当性の検討,モデル試行 による有用性 の検討 ・用いている尺度の信頼性,妥当性の検討 というように研究 を継続 している。 -訣■黒x.泣諜■言.'草丈jL袈璽葦 + ∵妻...辞L沢鞄Sく爵 l ・、■◆環.-; 冒 図

2

せん妄ケアモデル ー3

4-Ⅳ.

生きる力と支える力

1

.高齢者の生きる力

高齢者の中には,第一線で働 き続けたい と思い,それ を実行 している人 も多 くみ られる。高齢者大学で勉強 し, ボ ランティア活動 を行 い,「少子高齢社会の問題 は,高 齢者 自らの問題, 自分 たちで も何 とか しなければ」 と, 意欲的に取 り組んでいる人 もいる。 一方,地域 とのつなが りをもちたい と思いなが らそれ を果たせずにいる人や, 自分の将来への不安 な思いばか りが先 にたっている人々 も多 くいる。 高齢者の生 きる力 とは,不安 な思いを抱 えなが らも健 康 レベルにかかわ らず, 自身の もつ生 きる力,あるいは 生 きようとする内発的な力,潜在的な力のことをいう。

2.

支える力

高齢者,家族 を支 える力 には次の3つがある。 自助 :高齢者,家族が, よ り健康的な生活に向けて 自ら をケアす る力 共助 :人 と人 との関係 において互いにケアし,ケアされ る支えあう力 公助 :組織的,制度的に人々をケアする力 これ らをみると,生 きる力 と支 える力は自助 において 合体 していることがわか り,図 3で示す ようにたがいに 相互不可分であるといえる。

3.

高齢者 ・家族の生きる力,支える力と看護

少子高齢社会においては, これ まで以上 に, どのよう な健康状態であって も,高齢者一人ひとりの 「生 きる力

が十分 に発揮で きるようにすることが重要である。 同時 に,家族 ・友人 ・地域社会において資源や制度 を 活用 したインフォーマル, フォーマルな 「支える力」 を 築いてい くことが課題 となる。看護はそれを担 える専 門 職 として,大いに力 を発揮 しなければな らない。 図

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生きる力と支える力

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V.

高齢者看護のこれからの課題

少子高齢社会が進むことで,高齢者看護においてます ます課題になるのは次の ようなことであると考える。 ○高齢者の生活史,生活習慣,生活像 を捉 えている立場 で,健康の変化の状況 を的確 に捉 え判断する。起 こ りや すい変化 に対 しては,その療法の計画を立て,対策を採 る。 医師 との連携の中で,ルティー ンな検査や高齢者 に 適 した薬物療法が実施で きるように働 きかける。 ○施設内や地域 とい う壁 を取 り払 った,高齢者 を中心 と したプライマ リー看護師 としての機能を発揮 してい く必 要がある。 ○長い人生 を送って きた高齢者の人生の締め くくり,可 能な限 り本人が望むあ り方で最期 を迎 え られるよう,坐 か ら死への連続性の中で関わ り,最期 を見届 ける責任 を 明 らかにしてい く。 聖路加看護学会誌 Vol.12No.1March2008

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高齢者 自身の知恵 と力,家族や住民の力,関連職種 の 知 と技,これ らすべてか ら学び, これ らを連携,統合 さ せ,あ らたなネッ トワークをつ くる力 をもつ 。 複雑で多様化 してい く少子高齢社会 において,看護が 高齢者,家族,社会のあ り方に貢献 してい くには,常 に 高齢者看護の専門性 を追求 してい くと同時に,既存の専 門性 を脱す る柔軟性 と強 さを兼ね備 えてい くことが求め られる と考 える。

参考文献

中島紀恵子 責任編集,太田喜久子,他2名編 (2007).

齢者の虜慶 .東京:医歯薬出版. 太 田喜久子 編著 (2006).せん妄ケアはどこまで進んで いるか一 有効 な予 防法 ・対処法 のエ ビデ ンス.イ ー ビーチ- シング ,6(4).

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参照

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