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日本語の授受補助動詞の習得に関する研究
ーロシア語を第一言語とする学習者を対象としてー
教科・領域教育専攻
言語系コース(国語)
吉 川 巧 也
1
.
研究の目的
日本語の授受補助動詞に関しては,これまで
「人称」や「方向性Jに関する文法規則やその
用法が明らかにされてきた。(山田2004など)。
また,多くの言語において,授受本動詞は補助
動調として使われないことから, 日本語学習者
にとって授受補助動詞の習得は困難であること
が指摘されてきた。その中でも特に f'"'-'てくれ
る」の習得が困難であるとされている。(坂本・
岡田 1996など)。
しかしながら,ロシア語を第一言語とする日
本語学習者を対象とした授受補助動詞の習得研
究は管見の限り見当たらなしLまた,授受補助
動詞の習得を用法別に調査した研究もほとんど
見られない。そこで,本研究では,上記の問題
点を解決するとともに,授受補助動調をロシア
語を第一言語とする学習者に習得させるために,
どのような指導が必要であるかを考察した。
2
.
論文の構成
第l章 は じ め に
第2章授受動詞に関する基礎的事項
第3章 先 行 研 究
第
4
章学習者を対象としたインタビ、ュー調査
第5章 日本語耕市を対象としたアンケート調査
第6章学習者を対象としたアンケート調査
第7章 日本語教育への提言と今後の課題
指導教員 田 中 大 輝
3. 論文の概要
第 1章では,研究の背景と目的を述べた。
第2章では,授受動調の分類と使用規則,お
よひ洛授受補助動詞の用法をまとめた。また,
ロシア語の物・行為の移動を表す動詞の使用規
則,および日本語の授受補助動詞の各用法に対
応するロシア語の各表現もまとめた。加えて,
日本語新ヰ書における授受動詞の言己主にっし、て
も取り上げた。
第3章では,授受補助動詞に関する先行研究
を整理し,残された課題を指摘した。
第4章では,ロシア語を第一言語とする日本
語学習者を対象としたインタビュー調査の結果
をまとめ,考察を行った。その結果,授受補助
動調の習得,特に f'"'-'てくれるJの習得が困難
であることが石鶴忍で、き
t
e
o
第5章では,キルギス共和国の大学で指導し
ている日本語教師を対象としたアンケート調査
の結果をまとめ,考察を行った。その結果,授
受補助動詞は,繍市にとっても教えるのが難し
い項目であることが分かった。また,「 てくれ
る」は,郡市自身も使用するのが難しいと感じ
ていることが分かった。
第6章では,ロシア語を第一言語とする日本
語学習者を対象としたアンケート調査の結果を
まとめ,考察を行った。その結果,先行研究で
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習得が困難とされていた f...てくれるJよりも
f""'-'てもらう」の方が正答率が低く,習得が困
難であることが分かった。 f...てくれる」は,
正答率は比較的高かったものの,誤答ノミター
ンから f賦与J f依頼」といった,特に重
要とされる用法で
r
",てあげるJ との誤りを
起こしやすいことが分かった。ロシア語では
「あげるJ と「くれる Jを区別しないので,
その性質が習得に影響を与えていると考え
られる。また,正答率が低かった
r
",てもら
うJの中でも
r
依 頼J
r
指示Jの正答率の
低さが顕著で、あった。これは,ロシア語では
「依頼」と「指示」を言語表現上は区別しな
いことが原因であると考えられる。
第 7章では,前章までの調査結果を踏まえて,
日本語の授受補助動詞を,ロシア語を第一言苦
とする日本語学習者に習得させるためには,ど
のような指導が必要で、あるか提言を行った。ま
ず,授受補助動調の用法の中でも中心的なもの
である「賦与」に関して f""てあげるJとf""'-'
てもらう」を指導する際には,授受補助動詞が
持つ「方向性」を重点的に指導する必要がある。
f""'-'てくれるjを指導する際には,日本語とロ
シア語の違いを明示し,主語の違いを理解させ
る必要がある。「依頼
J
を指導する際には行為決
定権が聞き手にあることを明示するために,疑
問文や f""'-'たいJ文にすることを重点的に指導
する。「指示」を指導する際には,行為の決定権
が話し手にあることを明示するために,命令形
にしたり断定表現を用いることを亘点的に指導
する。加えて,ロシア語は「依頼」と「指示」
の表現方法が同じであるため,特に注意する必
要がある。「勧め」を指導する際には,受益者は
聞き手であることや,「 てくれる」にしかない
用法である点に注意する必要がある。「許可jを
指導する際には,使役表現と同時に扱うことで,
授受補助動詞文のみならず,使役文の習得も促
進されることが期待される。学習者用アンケー
ト調査(第6章)から,複数の用法を持つ f,...,..,
てくれるJf...てもらう」が正答となる問題に,
「賦与」しか持たなし、 f...てあげるjを過剰に
当てはめていたことから, 5つの用法を指導し
た後,各授受補助動調がどの用法を持つのかを
確認する必要がある。「迷惑Jに関しては,授受
補助動詞の用法の中では重要度が低いため,例
文や使用方法の紹介に留めておいてよい。
4.まとめと今後の課題
本研究では,ロシア語を第一言語とする日本
語学習者による授受補助動詞の習得およ
U
湾姐市
の指導実態について調査し,授受補助動詞が持
つ用法に着目して習得上の問題点およ
U
湾姐市の
指導実態と問題点を明らかにした。また,それ
らを踏まえて,どのような指導が必要であるか
としづ提言を行った。今後の課題としては,ま
ず,多肢選択式アンケート調査の方法に関して,
対象とする学校および学習者数を増やすことが
必要であると思われる。加えて,各学校のカリ
キュラムなども調査し,それが習得にどのよう
な影響を与えるかということも調べる必要があ
る。また,本研究で明らかになった習得上の問
題点がどの程度一般化できるのかについて,他
の言語を第一言吾とする日本語学習者について
も調査を行う必要がある。結論の一般化に関し
ては,各用法の習得度をより正確に測るために,
調査での問題数を増やすことが必要だと思われ
る。また,授受補助動調の習得に関して網羅す
るのであれば,基本形だけでなく丁寧形やぞん
ざい形に関しても調査を行う必要がある。いず
れも今後の課題としたい。