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白質脳症を伴ったT細胞型急性リンパ性白血病の1剖検例

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Academic year: 2021

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臨床報告 〔書女生華65野57講和難論〕

白質脳症を伴ったT細胞型急性リンパ性白血病の1剖検例

東京女子医科大学 小児科学教室(主任:福山幸夫教授) スギタ キ ヨ コ ヒラサワ キヨウコ タグチ ノブユキ フクヤマ ユキオ

杉田記代子・平澤 恭子・田口 信行・福山 幸夫

同 第1病理学教室(主任:今井三喜教授) イマ イ ミ キ

今 井 三 喜

(受付 昭和62年2月23日) はじめに 近年,小児急性リンパ性白血病(以下,ALL) の予後は化学療法の進歩と中枢神経系への放射線 の予防照射によって著しく改善された1).しかし ながら,治療継続中に白質脳症がしばしぼ合併し 重篤となることが報告されている.今回私達は ALLの治療継続中に,突然の視力障害で発症した 白質脳症を経験し剖検する機会を得たのでここに 報告する. 症 例 症例:10歳7ヵ月男児(OPD. No.47625, Hosp. No.84669,剖検番号10187). 主訴:点状出血斑,微熱. 家族歴:父方祖母,胃癌で死亡. 既往歴:昭和57年3月(8歳10ヵ月)てんかん (全汎性強直間代性発作)を発症.他院にてアレビ アチン,フェノバルビタール,チグレトールが投 与されていた.57年6月の頭部CT像では異常を 認めなかった.58年4月に当科を初診し1∼2カ 月に一度外来通院中であった. 現病歴:昭和58年夏頃に紫斑が一時的に出現し たが,全身状態はよく,放置していた.同年12月 下旬,点状出血斑が全身に出現するとともに,37℃ 台の微熱と口区吐があり,12月20日精査治療のため 入院した. 入院時現症:身長!44.5cm(137.0±5.7cm), 体重35(32.2±6。Okg),体温37.4℃.眼球結膜に貧 血,黄疸無し.全身に点状出1血斑が見られた. 歯肉出血は無し.呼吸音正常.胸骨左縁下部に Levine II度の収縮期心雑音聴取.心音充進ばな かった.肝は右乳腺上季肋下6Cm,脾は左季肋下に 7cm触知した.表在リンパ節は頚部両側で大豆大 のもの3個,右前径部で大豆大のもの2個触知し た.神経学的所見は異常なかった. 入院時検査成績(表1,2):末梢血では貧血な く,血小板の著明な減少と,白血球数の高度増加 と,82%の芽球細胞を認めた.骨髄所見は有言立 表1 Laboratory data Periph. blood RBC 499×104/cmm Hb 15,0g/dl Ht 45.7% Reticulo 3% WBC 13×104/cmm hemogram Blast Neutro Pl Eosino Lympho 1.4×104/cmm 82% 9% Promyelocyte l Myelocyte l Meta l Seg 6 1% 8% Bone marrow N.C.C,18.7x104/cmm Blast 84% Myelocyte 1.0% Metamyelocyte L 5% Stab, 2.0% Segment, 1.5% erythrocyte 10% 表面マーカー T−cell B−cell la TdT陽性 68.5% 9.5% 12,2% 90%

Kiyoko SUGITA, Kyoko HIRASAWA, Nobuyuki TAGUCHI and Yukio FUKUYAMA〔Department

of Pediatrics, Tokyo Women’s Medical College〕Miki IMAI〔Department of Pathology, Tokyo Women’s Medical College〕:Acase report of the acute T−cell leukemia associated with leukoencephalopathy

(2)

表2 Laboratory data Blood chemistry T.P CRP A/G

GOT

GPT

LDH

ALP 7.7g/d1 2十 1.35 397mIU/ml l38 mIU/m1 142,800mIU/m1 295mlU/mI

BUN

Uric acid Creatinine Na

K

Cl Ca P 10.9mg/d1 9,6mg/d1 0,8 138mEq〃 4.2mEq〃 96mEq〃 10.Omg/d1 3,lmg/d1 Coagulation

PT

APTT

丘brinogen

FDP

10.1sec 22,0sec 250mg/d1 10μ9〃〉 写真1 初診時骨髄像(×1,000) 胞数18.7×104/cmm。核が大きく辺縁不整の芽球 が84%であり(写真1),peroxydase反応陰性, PAS陰性であった.骨髄穿刺吸引液での芽球表面 マーカー検索で,T・ce1168.5%, B−cell 9.5%で あった. 血清化学ではGOT, GPT, LDHの上昇を認め た.胸部X線写真(写真2)で,左第1弓から第 2弓への突出を認め,縦隔腫瘤陰影と思われた. 血液培養結果は陰性であった.

写真2 胸部X線像.左縦隔腫瘤を認める. 嚢 S.58年 S.59年 楚院1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 治療 VCR Pred

WBC

’㎜ 1×105 1×104 1×103 1×102 縦隔腫瘤

髄膜白血病 ぐ一■■■騨■■一レ ぐ■■■レ 右顔面神経麻痺 畢丸浸潤 ぐ■■■■■一レ 仁レ CPM ↓ (「レ200mg/m2) DNR▼▼ (25mg’m2) ↓↓↓↓(1.5mg/m・) 30mg 20m L「r.〔MτX15mg十Hydr.30mg〕 ①②③④⑤ 24Gy14w

頭蓋照射 帯状筋 十 ■ 視力障害

懇懇障害

↓ ▼ 1・・Asp・ ↓↓る↓↓↓↓↓ 3,000Ulm2 ‘↓↓↓↓↓ ↓ ↓↓ ↓↓↓↓ ↓↓↓ ⑥⑦⑧

唖w

畢丸照射

蓋血

図1 治療および臨床経過 ⑨ ⑩

(3)

治療と臨床経過(図1):末梢血と骨髄標本で見 られた芽球細胞形態と,芽球表面マーカーの検索 でT−cell 68.5%と有意に上昇していたことより, T・ce11型急性リンパ性白血病と診断し,化学療法 を開始した.抗痙剤は漸減し,6ヵ月後に中止し た. 初回寛解導入はprednisolone(pred。), vincris・

tine(VCR), daunomycin(DNR), cyclophos・ phamide(CPM)の4剤併用で行なった.1クー ル終了した1月末には,末血・骨髄とも芽球が消 失し,完全寛解となった.縦隔腫瘤は化学治療開 始後1週間でX線上は消失した. 2月上旬より全頭蓋照射2,400radとMeth− otrexate(MTX), hydrocortisone(Hydr.)の髄 注を開始した.第1回目の髄離離に採取した髄液 所見で細胞数75/3cmm,全てリンパ球であり,細 胞診断では白血病細胞であった.この時点で髄膜 白血病を発症していた.同時に右顔面神経麻痺も 出現していた.3月末,頭蓋照射と5回目の髄注 を終了した時点で髄液細胞数2/3cmmと正常化 し,白血病細胞も消失した.また顔面神経麻痺症 状も消失した. 4月上旬,睾丸腫大が出現.生検によりリンパ 芽球浸潤が認められたため,同部位へ2,400radの 照射を行なった.またこの時期に,末梢血有核細 胞の85%を芽球が占め,第1回目の血液学上の再 発を認めた.再度初回と同様に4剤併用で寛解再 導入をした.5月下旬,2回目の血液学上の再発 に対し,VCR, L−asparaginaseで再導入を行な い,末梢血の芽球は消失した.7月中旬,Herpes Zorterを発症し, acyclovirによる治療を行なっ た.この時点では知能退行,知覚異常,運動障害 .籍. .島.密. 無

墜.響.

A髪』墜璽

写真3 治療前の頭部CT(S.59.1.24.)

ii藍■

写真4 頭部CT(S.59.8.6.).両側後頭葉に拡がる低吸収域

(4)

は認められなかった. 末梢1日中の芽球が1∼2%に減少していた8月 4日,突然両側視力障害が出現し,5日には不穏 状態となり,6日には痛覚反応もほとんど認めら れない意識障害と上下肢の痙性麻痺が出現した. 8月6日の頭部CT(写真3,4)では,両側後頭 葉優位に拡がる白質の低吸収域が認められた.こ

れはMTXによる急性白質脳症による視力障害

と意識障害であると考えられた.その後deep comaが約2週間続き,この間に末梢血白血球数 は6×104/cmmから24×104/cmmに増加,芽球 95%と血液学上の悪化と髄膜白血病が再発した. また抗生剤を使用しても反応しない発熱,降圧剤, 利尿剤に反応しない高血圧1乏尿が続くとともに, 出血傾向,頻脈が加わり,8月22日に死亡した. 剖検所見:全身骨髄,脾臓,肝グリソン鞘,腎 髄質,腎孟周囲,副腎,心膜に白血病細胞浸潤が 認められた.胸腺と睾丸は放射線照射後の線維化 が認められた. 中枢神経系では,脳脊髄髄膜の軽度線維化と脳 髄膜の軽度の白血病細胞浸潤,脊髄実質内小血管 周囲の軽度の白血病細胞浸潤像が認められた.大 脳,小脳の割面で,特に大脳後頭葉優位に脱髄巣 を認め,多くは多少の漏出性出血を伴なっていた (写真5,6). 考』 察 小児ALLの予後に大きく影響するのが中枢神 経系白血病の合併である.寛解導入に引き続いて, MTX, Hydr., Cytosin arabinosideなどの髄注治

療と頭蓋放射線照射を併用した中枢神経系白血病 予防治療が一般化されるようになり,その予後は 著しく向上した1).

一方,MTX二二による中枢神経系への副作用

として,Chemical meningitis, paraplegia, sen・ sory loss, convulsionが報告されている2}.また,

2,000rad以上の頭蓋放射線照射は脳血液関門の 障害をきたし,MTXの脳内への移行を容易にす ると言われている2}. 最近,治療経過中におこる予後不良なleuk・oen・ cephalopathy(白質脳症)の報告が増加しており, MTXの髄注と頭蓋放射線照射の相互作用が発症 ,奪r.

ギ.腰

輿多1潔’

勢 写真5 大脳の割面.黒ずんでみえる所が脱髄巣 (矢印部分) 写真6 後頭部白質の脱髄巣(矢印)(髄梢染色) 要因と考えられている2)3). 本症例では,初回完全寛解導入の終了と同時に 髄膜白血病を発症していたが,2,400radの頭蓋照 射とMTX(15mg/m2), Hydr.(30mg/m2)の髄 注を行ない再寛解を得た.その約2ヵ月後に髄膜 白血病を再発したため,MTXとHydr.の髄注を くり返した. 結局6ヵ月間に週1∼2回の割合で合計10回の MTX(15mg/回)とHydr.(30mg/回)の髄注を 行なった.

(5)

白質脳症の病変部は前頭葉,頭頂葉に優位であ り3),その臨床症状は一般に錯乱,傾眠,歩行障害, 痙性麻痺,痙蛮ではじまり,さらに痴呆,昏睡に 至り死亡する4)5). 本症例では,治療継続中に突然視力障害が出現 し,蓬性麻痺と意識障害が急速に進行して死に 至った.CT所見および剖検所見では,報告例では 障害が稀とされている後頭葉優位に白質脳症所見 である脱髄性変化が認められた.また視神経,脳 実質に白血病細胞の直接浸潤を認めなかったこ と,細胞浸潤やダリヤ細胞の増殖を認めないこと, また神経細胞核の封入体もみられないこと,髄液 のウイルス分離では陰性であったことより,視力 障害で発症した白質脳症と考えた. 白血病治療中のCT検査で,神経症状の発現以 前から大脳白質に低吸収域を認めた場合,白質脳 症のpreclinical lesionとして考えられる6). 今後は早期より白血病児の経時的検査を行な い,白質脳症の早期診断と,その後の治療方針の 決定をしていくことが重要と思われた. 本論文の要旨は第27回日本小児血液研究会(東京, 1985年9月)にて発表した. 文 献

1)Poplack DG:Acute lymphoblastic leukemia in. childhood. Pediatr Clin North Am 32:669 −697, 1985

2)Price RA, Jamieson PA:The central ner− vous system in childhood leukemia, Cancer 35:306−318, 1975

3)Chien LT, Rhomes J:Progression of metho− trexate−induced leukoencephalopathy in chil・ dren with leukemia. Med Pediatr Oncol 9:133 −141, 1981

4)Bleyer WA:The clinical pha㎝acology of methotrexate. New application of an old drug. Cancer 41:36−51, 1978

5)Robin O, Dulac O, Dommergues JP:Ne・

crotising leukoencephalopathy complicating

treatment of childhood leukemia. J Neurol

Neurosurg Psychiatry 47:65−72, 1984 6)Peylan RN, PoPlack DG, Pizzo PA et al: Abnormal CT scans of the brain in

asymptomatic children with acute lymphocytic

leukemia after prophylactic treatment of the

central nervous system with radiation and

intrathecal chemotherapy, N Engl J Med 298: 815−818, 1978

参照

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