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神経内科学の卒前・卒後教育について

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〔 総 説 〕

( 東 女 医 大 誌 第54巻 第10

号)

頁 897-910 昭和59年10月)

神経内科学の卒前・卒後教育について

東 京 女 子 医 科 大 学 脳 神 経 セ ン タ ー 神経内科学教室〔主任.丸山勝一教授〉 マル ヤマ ショウ イチ 丸 山 勝 ( 受 付 昭 和59年8月 2日〉

Graduate and Post-graduate Training in Neurology Shoichi MARUYAMA

M.D.

Prof. and Director, Department of Neurology, Neurologicallnstitute Tokyo Women's Medical College

We presented the graduate and post-graduate training systems in Department of Neurology, Neurological Institute

Tokyo Women's Medical College and discussed several important points of these systems.

In graduate training system for neurology, we lay emphasis to the methods to examine the patients and pick up the neurological findings exactly and selectively. These courses are most important to make the medical students have a remarkable interest to neurology and learn the neurological diseases in good oriented condition.

At the time of instluct each neurological diseases

we are trying to show the key-words to the students for convenience to understand each diseases. In our department, the numbers of newly coming outpatients was over 3,000 cases last year and inc1uded very valuable cases which could be reported to the scientific meeting of neurology. These circumstances are very favourable not only for graduat巴but

also for post-graduate training courses in neurology.

Post-graduate training system in the Department of Neurology is almostly well established recently and the training related to the other departments, that is Nerousurgery, Medicine, or other Neurological Sciences, are also well equiped. In this paper, the author presented all these systems, inc1uding rotator system, grand round, c1inical conference, medical neurologyc1inic, c1inical and basic neurological research activities and so on, and discussed the significance of the training systems.

目 次 I . 緒 百 II.卒前〔学部〉教育について A.神経内科学総論について B. “神経病の診断"について 1.病巣の局在について 2. 神経症候学について 3. 多様な疾患を与え得ること 4. “神経病の種類"について 5.発病の機序〔病因〉に関する事項

-897-C

.

各論(系統講義〉について 1.疾患分類について 2.各論講義の11買序について 3.疾患のkeyword的な理解 4. 神経学的特殊検査について 5. Medical neurologyについて 6. 臨床講義・外来実習 III. 卒後教育について 1.研修方式と内容 2. 当教室週間行事の研修教育上の役割

(2)

3.学会への症例報告について 4.退院報告病歴概略について 5.学外講師によるセミナーについて 6. Senior courseについて 7.研究活動について 8. 研究生について 9.基礎医学教室との連繋 10. 関連病院について 11.認定医試験について 12.実地医家コースとの関連 13. 卒後研修のまとめ

I

V

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おわりに 1 . 緒 言 日本神経学会が独立してから,すでに4半世紀 にならんとし,神経学の領域では多数の優れた人 材が育って国際的にも多くの優れた業績が発表さ れ,また1981年には国際神経学会議が我が国で、開 催されて成功をおさめる等,その発展にはまさに 睦目すべきものがある.しかしながら,神経内科 学の教育という見地から,全国の大学を見るとき, その組織が必ずしも充分に整っているとは言えな いようである.なかには,神経内科が現在なお, 内科学講座あるいは脳神経外科学講座の一部門と して運営され,教育が行なわれている所もある. 幸いにして本学の神経内科は,すでに昭和49年に 総合内科のDivisionの一つ,そして診療科として 発 足 し さ ら に10年後の今年 5月,正式に神経内 科学の講座として認められるに到って,その教育 上極めて有利な環境が作られつつある. 今回,東京女子医大学会のご好意により,神経 内科開設10周年記念の特集が組まれることになっ たが,この機会に現在本教室において行なわれて いる神経内科学の卒前〔学部〉・卒後教育について 紹介しその在り方について考えてみたいと思う. 11.卒前(学部)教育について 本学は,吉岡弥生先生が創立され,終戦後の医 科大学昇格に際しても,男女の共学とすることな く,学生は総て女子に限られるという原則を堅持 され今日に至っているが,女子学生のみというこ とは本邦は勿論のこと,世界的にも類まれな医科 大学である.私が本学に赴任してから10年を経た が,その聞の経験から見ると,医学教育を受ける ものとして,あるいは勉学の態度について,本学 学 生 の 幾 つ か の 特 徴 に 気 付 か さ れ る . 凡 帳 面 に ノートをとり,優れた記憶力によって細部に亘る 事 項 を 掴 ん で 忘 れ な い と い っ た 長 所 を 有 す る 反 面,論理的な推論や,また全体像を瞬時にして正 しく把握するといったことは余り得意ではないよ うな印象がある(勿論,総ての学生がという訳で はなく,平均的な女子医学生像の一面を示したに 過ぎなし、). しからば,神経内科学は女子にとって不適当な 学聞かといえば,決してそうではない.例えば論 理的積上げにしても,そのパターンの数には自ら 限りがあり,常に無限のノ4ターンについて検討す る必要がある訳ではない.推論と臨床的結果とを 断えず対比する訓練を行ない.正しかった推論の パターンのみを正確に記憶することを繰返し,そ の後の診断に際して応用するならば,龍床の実力 は極めて大きく育ち得る.即ち,症例の一つ一つ を症候を整理しつつ記憶にとどめていれば,当面 の症例と,そのmemoryとを対比することによ り,論理的診断が容易となる.従って神経内科学 の修得には,女性においても,立派な臨床神経医 になり得る可能性があると考えている.しかし乍 ら,学部教育においては,このような症例につい ての学生自身による memory(経験〉はない訳で あるので,学生にこのダイゴ味を味わわせること は容易ではないが,総論,各論の教育の中に,一 部症例を中心とした勉強方法を導入することによ り,かなりそれに近い成果を期待し得るのではな いかと考えている.現在,各論講義の冒頭に症例 を呈示して,その後に説明を行なうといった形式 を考慮中である.

A

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神経内科学総論について 総論の講義では,まず内科学における神経内科 学の位置づけについて示すことが必要である.更 に,これは医学全体のL、かなる位置を占めるかに ついても触れることになろう.他の臨床専門領域, 即ち脳神経外科学,精神医学,内科学等,また基 礎医学における神経関連領域,即ち神経解剖学, 神経生理学,神経病理学,神経生化学,神経薬理 学など,またその他の臨床医学領域として,小児

(3)

898-神経学,神経耳科学,神経眼科学,神経放射線学 などとの関連について示し,それらについての基 本的知識も併行して身につける必要のあることを 理解さぜる. この際指導者側では,専門領域の羅列に止まっ てはならないと思う.神経内科学の歴史的な流れ や事実について,充分理解し,直接講義はしない にせよ,それをふまえて説明する必要がある.卒 後教育, ことに研究活動における方向と方法を決 定する場合,その成否に多少とも関連があるので, 学生時代にその片鱗に触れさせる必要のあること を銘記すべきである.

B

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“神経病の診断"について 神経疾患の診断では,病歴,発病時の状況,検 査所見,経過などにより“病変の種類"を,神経 学的所見あるいは症候の組み合わせから“病変の 局在"を,それぞれ診断することを理解させる. そして,検査所見,動物実験や文献の検索・収集 などによる“病因(発症の機序〉の究明(診断)" についても併せて説明し,神経病の診断の方法と その意義についてp 基本的な理解を得るよう教示 する必要がある. 1.病巣の局在について 解剖学的な知識を基礎に幾っかの症候を的確に 把握し,そのいかなる組合わせから成るか,ある いは,最も重要なものは何かなどを検討して取捨 選択して決定するが,この際には種々の論理的推 論能力が要求されることになり,平均的女子医学 生のいささか苦手とするところであろう. ここでは,病巣のレベル(高さ〉と同一平面上 での二次元的な位置とが求められるが,病巣に対 応する症候について,各レベノレごとに総論的知識 を得さしめる必要がある.

2

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神経症候学について 主たる症候,即ち筋萎縮,知覚障害,筋トーヌ スの異常,不随意運動,反射の異常,自律神経障 害,歩行異常,知的機能の障害などについて指導 する.この際,それぞれの症候に関連のある解剖 学的基礎知識とを併行して教える必要があるが, この場合,我々のみで講義を行なうか,あるいは 基礎医学系の先生方の御出席を願って行なわれる -899 べきか,議論の分かれるところである.医学教育 体系全体の問題として検討されるべきことであろ 症候の観察,即ち所見のとり方を学生に教示す るには,指導者が神経専門医であることが望まし い.所見のとり方については,専門医に一日の長 があることが多い,本学では,これらは

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年生時 の内科診断学実習のなかで教示されているが,従 来,神経内科の助教授2名のみでは,全学生数を カバー出来ないので,内科学各科,助教授,講師 に依頼して補足実習されていた.しかし最近では, 5年生時の各科実習の際に種々工夫することに よって,殆んど全員が神経内科でその手ほどきを うけられるようになった. しかし乍ら,学生数の 多いため,完全にはcoverしきれず,一部の学生 は当科の直接の実習がないまま 6年生に進級し ていることもあった.近い将来,この点は改めら れる警である. 学部教育では,神経所見のとり方についての修 練が最も大切なものの一つで,また教え方によっ ては,学生が最も興味をもち,力をつけることが 出来るので,大変重要な部分といえよう.またそ れだけに, man to manの指導が必要で,指導者 の層が厚い程,より理想に近づけることになる. 本教室のスタッフも,年長者からすべて神経学 会認定医となって,その総計は1

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名を超え, これ らを教育に参加せしめているので,実質的な訓練 がし易くなっている. 3.多様な疾患を与え得ること 尚,神経症候学を教える場合,もう一つの望ま しい条件とLて,外来,入院を問わず,多種多様 な神経疾患が身近にあって,学生の実習に役立つ という状況を挙げなければならない.例えば,最 も基本的な錐体路症状としての“Babinski徴候陽 性"一つを挙げてみても,実際の症例で観察され なければ,実のある実習とはなり得ない.殊に athetosis, choreaなどの不随意運動については まさに,“百聞は一見にしかず"であり,症例を直 接経験させることが最も近道である.幸にして, 本学の場合,卒業生からの御紹介も少なくないた め,貴重な症例が多く,多岐に亘る実習教育上の

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要望に応え得る状況にあり,先輩の力の大きさと 御好意に常々感謝している次第である.それでも, 稀な不随意運動を有する症例は,常時見られる訳 ではないので, ビデオや

1

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ミリ映画フィルムで記 録し,教育に利用している.この点,本学では神 経内科シリーズとして,何種類かのビデオカセッ トが作製され,中央校舎視聴覚室に常備され,学 生の要望に酬え得る状態にあるが,定期的に改訂 する必要があり,現在のものも近々新しいシリー ズに改訂される予定である. 4. “神経病の種類"について その詳細は各論で教えることになるが,序論で も大まかな分類と各々 1,2の代表的疾患名を説 明することは必要である. 場合によっては, この項を“神経内科学の位置 づけ"や“局在診断"の講義に先立って教える方 が神経病についての知識が全くない医学生にとっ ては,より身近なものとして理解しやすいかもし れない. 病気の種類おのおのについて勉強するには,病 気の種類だけでなく,それぞれの特徴を正確に憶 え,かっ鑑別診断をも含めて修得しなくてはなら ないが,これは多くの女子学生が得意とするとこ ろであろう.しかしながら,なかには細部に拘泥 して大綱を忘れるものもない訳ではない. 種類については,発症のしかた(突然の発症な のか,徐々に出現したのかなど),経過の如何(急 性発症後不変,緩徐進行性など),などによって推 定診断されることが多いが,その他,年齢や高血 圧など,他の一般症状なども参考になる.このた めには,病歴の聴取が重要となる.病歴は一度聴 取して満足するのではなく,繰返しチェックする 必要があることを教える.その聞に,患者が新た に思い出す場合があったり,また医師側も時期を 変えて聴取することで,別の観点からの患者への アプローチが得られる利点のあることも経験させ る必要がある.これらの重要性を理解させるには, 各論の講義前では白ら限界があるが,少なくとも 発症,経過には診断に役立つ一定のパターンがあ ることを,初歩の段階において知らしめておくこ とが必要で、ある. 900

5

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発病の機序(病因)に関する事項 これはいわば“研究"の領域に属し,検査所見 や動物実験,文献の検索等により,その究明が行 なわれることになるが,比較的狭く,かつ深い研 究が行われるので,むしろ女子にも向いていると 言ってよいであろう. しかし,卒前教育の中では,知識として知って おくにとどめた方がよいと思う.神経病学の全体 像を把握せぬまま,狭い範囲を深く学ぶことは必 ずしも望ましいことではない.早くから専門の研 究者を目指す場合には, この限りではないが,学 生時代には深く追究するよりも, base lineを出来 るだけ広くとって広範な勉強をした方が,将来の 大成を期待出来るように思う.女子学生の場合, ともすれば,狭い範囲にとらわれる傾向が少なく ないため,教示に際して充分な注意を払う必要が あろう.

C

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各論(系統講義)について 1.疾患分類について 通論の初めに一応の説明をすることは既述した が,系統講義のすすめ方としては,一応この分類 の順序に従って進めている.内容については,教 室独自に編集したプリントを用いている.プリン トは要点,即ち,いわば教科書のエッセンスが列 記されており,大方の評判は悪くないので,その まま年度毎に改訂しつつ用いることにしている. 医師国家試験の直前になって,本プリント集の有 用性が初めて理解出来たとする学生も少なくな L 、

2

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各論講義の順序について 神経内科学学習に対する学生の勉学態度には, 種々の型がある.かなり明確な理解と早くからの 興味をもって勉強する学生群,理解しにくく,強 い興味がある訳ではなし、が理解しようと努力して 勉強する学生群,神経学は苦手として始めから勉 強を放棄する傾向のある学生群などがある. 第3群の学生は,不勉強によるものも少なくな いにせよ,恐らくその多くは,局在診断を中心と した論理的推論の不得手な者であろうかと思う. 勿論,これは第2群の学生にも一部共通して言え ることである.これらの学生に対しては,初めに

(5)

むしろ各論,即ち疾患の理解(特徴の記述〉を中 心に教育を進めた方がよい場合もあるかと思われ る 3.疾患のkeyword的な理解 この各論の教育に際して,我々が心懸けている ことの一つに,“疾患のkeyword的な理解"を学 生にもすすめていることである.これは卒後研修 において必要なことと考えているものであるが, これを卒後の教育(病棟実習〉にも応用しようと している.卒後研修においては,病棟医として患 者を受持つことになるが, この際にその病歴を聴 取し,神経所見をとって疾患を診断するという場 合,多数の情報がし、わば洪水のように集まってく る.確実に正しいものから,極めて確度の低い情 報までが雑多に存在する.診断に当っては,その 中から確度が高く,重要なものを選び出す必要が あるが,初心者にはなかなか容易ではない.これ にも正しい訓練が必要である.その際,我々はkey word的に,例えば,“男性“中年発症"“徐々に 悪 化 す る “ 主 た る 病 巣 は 脳 幹 部 “

2-3

年で 死亡"といった各重要事項をとりあげ,症例の全 体像を理解,把握せしめる必要がある.これを各 論の講義の際,各々の疾思に応用させ,その成果 を見ているところである.このkeywordは各自 に選別せしめてみたが,一部には“何がkeyword たり得るか解らぬので,選定して欲しし、"という 学生もいる.少し勉強すれば,何が重要項目とし てkeyになるか,おのずから解る筈であるが,今 後 , テ キ ス ト の 作 製 時 に 添 付 を 試 み て み た い と 思ってL、る 4.神経学的特殊検査について ハンマーによる神経学的所見のとり方について は,すでに既述した.それらの情報によって,局 在診断,種類の診断が行なわれるが,そのあと, もしくはそれに併行して,補助的諸検査を施行し て診断を確実にする.髄液検査,筋電図,脳波,

CT

をはじめとする神経放射線学的な諸検査など のほか,最近では誘発脳波など,神経生理学的な 検査方法が多く開発され,診断に役立っている. 学生に対してこれらの細部にまでわたって講義す ることは不必要であり,また混乱を招くことも 901 あって好ましくないが,神経生理学的検査の発展, あるいは応用の可能性について,全体の傾向を実 例を挙げて理解さぜることは必要である.我々が 育った環境では,臨床的観察を丹念に行ない.そ れを剖検による神経病理学的な事実(所見〉と対 比することが多く行なわれ,臨床の実力を育てる 重要な方式のーっとなっていた.しかし,次の年 代ではこれらのほかに,所見をinsituの所見とし て対比出来ることになり,次いで

CTとの対比,

そして更には神経生理学的検査による障害部位の 推定が行なわれて,必ずしも臨床的病理学的対比 のみにたよらなくてもよい時代となって来てい る.いわば, black boxとしての中枢神経系に, 人為的に生理学的な刺激をinputして,それに対 する outputとして出てくる結果(諸反応〉と対 比することによって,剖検をまたずにblackbox の内部構造の推測が行なわれ得る時代といえよ う.学生にも,この方法の少くとも片鱗には触れ させる必要があると考えている. 6年生の病棟実習は,神経内科として 1週間与 えられているが,その聞にこれらの検査について 見学,理解せしめる方向に進めている. 5. Medical neurologyについて 本学では,内科が8科の専門分野に分けられて 診療ならびに教育(卒前・卒後を含めて〉が行な われており,神経内科以外の内科各科においても, それぞれ有能な専門スタッフがし、て,各科origi -nalな疾患群が専門医によって診療されており, 本学の著しい特徴となっているので,各科とも多 彩な症候を有する患者が多数受診しているのが実 情である.そして, これらの疾患群の中では,二 次的に神経症状を呈するものが少なくない.例え は僧帽弁狭窄や心房細動に伴った脳塞栓,呼吸 器系,消化器系の癌によるremoteeffectとして の神経症状,甲状腺機能充進症に伴う筋障害,腎 障害に伴った不随意運動や末梢神経障害など,そ の他多種多様な疾患がある.このように症例につ いて専門各科から, consultationの依頼を受ける ことが多く,神経内科としては,これら貴重な症 例を他科のスタッフの御好意によって,豊富に経 験し得ることになる.これも本学の恵まれた特徴

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のーっと考えられる.このような状況は学生に とって,嘗ての“大内科教室"制における利点, 即ち,疾患を縦割りのみで分析的に見るだけでな く,総合的に観察し,診断する方式の研修が可能 となる.この面では本学の学生は,内科各科の狭 い専門分野のみに止まらず,広く他科にわたる症 候にも注目せざるを得ず,従って,各科別の症例 を併せ検討し,内科医としての綜合力を養う訓練 が行なわれる有利な環境にあると考えられる.こ れらは,本学での内科研修中の他大学卒業生も研 修上有利な点として等しく強調する本学内科の著 しい特徴である.

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臨床講義・外来実習 神経内科としての臨床講義(クリニカルカン ファランス〕は,年5回行なわれているが,プラ クチカントによって症例呈示,討論が行なわれて, 一般の臨床講義と変るところはない.ただ,回数 を出来れば10目前後欲しいところであるが,他教 科とのバランス上,この程度の回数であっても致 し方ないと思っている.前述したように各論議義 において実際の症例を呈示したのちに,各疾患の 説明が行なわれるようになれば,これらの難点は 充分に解消し得る問題である. このほか,現在症例経験の不充分なことを補う ために 6年生時の病棟実習に際して,教授,助 教授の外来診療に陪席して症例を多く経験せし め,時宜に応じて討論,試問するようにし,また 総回診の見学中も,入院症例を中心に講座助手よ り種々説明せしめるなど,実質的に臨床的な教育 を行なっている.man-to-manの密度の濃い教育 を目指しており,それなりの効果が挙がっている ように思う.かかる病棟実習が5年生時にも行な われれば,更に効果的であろう. このほか今年からは,一部の講義に他大学の教 授を招聴し,他大学における講義方法などにより, 別の視野,考え方などを中心に教示願って,学生 の意欲を増し,より生々とした勉学を目指するよ うにしたいと考えている.今年度はMayoClinic 神経病理学の岡崎教授の参加を願って,臨床病理 検討会を企画しているが,期待されるところであ る. 以上,学部教育におけるいくつかの重要な点に ついて述べたが,次に卒後教育について述べるこ とにする. III.卒後教育について 1.研修方式と内容 当教室を希望する学卒者は,卒業後国家試験を 経て直ちに,神経内科教室に所属することになる が, これら新入局員の資格は研修医,医療練土研 修生,もしくは大学院学生のいずれかである.現 在,原則として医療練士で採用しているが,一部 研修医の場合もあり,大学院学生も今年より採用 し得るにいたっている.これら3グループの臨床 研修内容については全く同様で,差はないが,新 入医局員の半数は本学出身者で,他の半数は他大 学出身の男性である.初期6カ月は内科医として の基礎教育を所属の神経内科病棟で受け,その後 他の内科各科(循環器,消化器,呼吸器,血液, 内分泌,糖尿病,腎の7科〉を3カ月づっローテ イトし,それぞれ内科専門領域における研修を受 けることになるが, これは本学の他内科各科所属 の教室員と大きく変るところはない.毎年5月末 から11月末までは,新入局員は他内科よりローテ イト中の研修医〈大部分は入局2年目,一部 3年 目〉とともに研修することになる. 研修内容については,別表の如き研修カリキュ ラムを定め,それに沿って研修が行なわれている. このカリキュラムは,本教室所属の新入教室員に とっては,

J

unior courseということになるが,内 科所属の研修医にとっても,神経内科における研 修はこの

J

unior courseに沿って行なわれること になる.ただし,期間については先に述べたごと し 神 経 専 門 医 は6カ月,他科を専門とする研修 医は3カ月と差がある. 神経専門医としてこのカリキュラムで6カ月研 修後, 12月以降は前述の如く,他の内科 7科を 3 カ月づっ廻って,それぞれの専門的な修練を行な うが,その際には形式・内容ともに,その科の研 修方針に従って研修が行なわれる.

2

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当教室週間行事の研修教育上の役割 教室の

1

週間の行事には,教授回診,助教授回 診,症例検討会,抄読会,手術報告,剖検報告と -902ー

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退院報告とがある. (i)教授,助教授の総回診 上級医師,研修医のベアで、受持つ3-4症例の 入院患者につき,診療内容即ち症例の

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,神 経所見,診断,治療方針などにつき,回診が行な われ,ベッドサイドで討議が行なわれる. (i

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症例検討会など 毎週

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例,問題のある症例,神経学的に重要な 症例を選び,症例検討を行なうが,その症例受持 の研修医が直接

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を,またその上級指 導医師が司会を行なうことに決められている.そ の症例の診断,その疾患に関するトピックス,治 療方針などについて討論されるが,それは,その 症例の疾患名についての現在の動向など広く文献 を調査して,その結果をまとめ,研修医を含めた 教室員全員に発表する場でもあり,卒業年度の新 旧に拘わらず,自由な雰囲気のなかで討論され, 自己の正しい判断力が函養されることになる.ま た,受持医は簡潔明瞭な表現によって,症例を呈 示する訓練を受けることになり,また上級医師は この際にも受持研修医に対して,問題点を的確に 示して,文献等の渉りょうを助け,それにつづく 討論を容易にするなど,高い指導能力が要請され ることになり,上級医師にとっても大切な訓練の 場でもある. このほか,剖検例については

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P

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が,また,脳 神経外科に転科して手術的治療を受けた症例に対 しては手術報告が,それぞれの受持研修医または その上級医師によって行なわれ,全員の経験とし て記録が残されるように配慮されているが,いず れもこの時間内に行なわれている.抄読会は最近 の外国雑誌から指導医が選択して研修医に抄読さ せ,発表させる.回数は

3

カ月の研修期間中

1-2

回に止まるものであるが,主として,現在実際に 受持つている疾患に関連した内容の文献を読ませ ることが多く,臨床の力を育てるのに大いに役 立っている.

3

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学会への症例報告について これらの症例検討会に出された症例から,選別 された症例 (これは稀有な症例ばかりでなく,よ く

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されたもの,あるいは教育上特に重要 なものが含まれるが〉は,その多くは日本神経学 会関東地方会,女子医大学会例会,あるいは日本 内科学会関東地方会に演題として提出されてい る.通常,神経学会地方会に適する演題は, 神経 内科医が,また女子医大学会例会,内科学会地方 会に適当と思われるものは出来るだけローテイト 中の他内科所属の研修医に講演せしめるように配 慮されている.地方会報告後は,症例報告の論文 として執筆するようにすすめており,投稿受理さ れれば,研修期間中の業績として記録され,

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され得ることになる. これらの症例報告は,豊富な外来患者数 (年間 の新患は3,000名,外来総数は30,000名をそれぞれ 超えているが (図

1

2

)

,これは全国的に他施設 神経内科と比較して,最も多い方に属する〉が, 多数あることから,興味ある症例を多く含んでい るため,年間の開催回数のきまっている地方会で, 消化しきれない状態である. 新患が年間3-400例に過ぎなかった創立当初 には,症例報告として報告し得る症例が極めて少 なかったことを思い,まさに今昔の感にたえない 人 3,000 35, 30, 25

2

却 数l凶5 10 図 l 神経内科外来の新来患者数推移 1980 1981 1982 1983年 図2 神経内科外来患者総数年次推移 -903ー

(8)

ところである. 4. 退院報告:病歴概略について 以上のほかに抄読会終了後,前1週間に退院し た症例を呈示し,診断,経過,治療,今後の方針 などにつき,受持医より全員に報告ぜしめること が行なわれて,受持以外の医員にも概略を知らし め,経験の一部とするように配慮される.そして 受持医は「入院病歴概略」を数頁にまとめ,上級 医の検聞をうけたあと,助教授に提出することに なっている.これは簡潔にまとめる必要があって, 小型ながら将来,症例報告にまとめる場合,また 症例報告が行なわれなくても,少なくも論文を執 筆する場合の修練にもなり得るため,厳格に行 なっているが,研修医を評価する上で,また上級 医師の指導力を評価する上で良き資料になってい る 5. 学外講師によるセミナーについて 前述の如く,教室内ではグルズスを行なって研 修効果を挙げているが,そのほか学外の著名な学 者を講師に招いて,それぞれ専門とされる分野に ついてセミナーをお開兵いしている.内容によって, それへの参加聴講を学外にもオープンとする場合 もある.現在まで,すでに第2回を終えた岡崎春 雄教授による神経病理学セミナー,平野朝雄教授 による神経内科開設10周年記念講演“グリアにつ いて"などがあり,いずれも研修生にとっては臨 床的能力養成に役立つのみならず,それら講師の 真撃なる学究的態度,学問的スケーノレから学び得 るものが多大であり,内外の好評を得ているので, 今後もテーマを選んで継続したいと考えている. 6. Senior courseについて 前述した他内科7科各3カ月づつの研修(計l 年9カ月〉は 2年後の8月一杯で終了 9月か ら神経内科学教室に帰って,その後は神経内科医 としてseniorの教育研修が開始される.約6カ月 は上級医師(神経内科医〕の直接指導下で主とし て病棟を担当,その後は独立して

3-4

床を担当 し,入院診療に従事する. 帰局後ほぼ

1

年で,普通は助手もしくは助手待 遇となり,その後はハウプト(オーベン〕として 研修医を監督指導しつつ, ともに入院患者の診療 に従事するが,同時に外来診療2単位を担当する. そのほか,神経学的特殊検査をカリキュラムの一 部として,修得する.内容は別表

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.

1

(

3

)

)

に示 すごとくで,それぞれを3カ月づっ担当,当番制 でその所見を読み, reportを記載,上級医師の検 闘をうけて必要部署に返送するなど,極めて多忙 であるが, これにより専門医としての実力が著し く向上する時期でもある.

7

.研究活動について

研究活動はいわゆる卒後研修には含めないこと が多いが,当科では併行して行なわれているので 触れておきたい. 他内科の研修を終えて帰局, Seniorコースを開 始して約一年後に,各自に研究テーマが与えられ る 研究室のDivision(研究グループ〉の担当する 研究は以下の如くである. (1)脳血管障害に関する研究 血 小 板 凝 集 能 な ど 血 液 性 状 に 関 す る 研 究 を 含 む. (2)神経生理学的研究

SEP

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,聴性脳幹反応など. (3)自律神経機能,特に指尖容積脈波,徴小循 環に関する研究 (4)神経筋の病理学的研究 中枢ならびに末梢,筋. (5) 神経眼科学的研究 (6) 神経疾患の免疫学的研究 (7)神経疾患の生化学的研究 (8) 言語機能・特に失語症に開する研究 医員はそれぞれの研究テーマの如何によって, これらのうちどれかに,あるいは複数のグループ に所属して研究活動を行なうことになるが,神経 内科医としては研究活動を,外来,病棟における 臨床活動と併行して行なうことが重要で,臨床と 研究とを分け,別々の人員によって分担し合うこ とは,神経学の臨床を目指すものとしては望まし くない.従って,研究活動が加わってくると,各 自は極めて多忙であり,またその上,学生の実習 指導など教育面にも時間を割当てなくてはならな いこともあって,研究に費し得る時間がともすれ 904ー

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ばなくなりがちである.しかしこのような情況で

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研究活動のため,臨床をおろそかにすること のないよう厳に戒めている.従って比処では,出 来れば各部門に充分な研究補助員を付けて,研究 医師側の時間の不足を補うことが望ましいが,こ れは経済的な問題もあって,必ずしも充分に実現 し得ていない.将来の問題として検討されるべき ものと考えている. 研究グループでの研究結果は,多くは神経学会 その他の年次総会で発表され,かくて各々の学術 研究のステップが積上げられることになる. 我々の教室では, これらの研究はあくまで臨床 上の問題点からスタートしているので,研究成果 は 直 ち に 診 療 内 容 を 向 上 ぜ し め る に 役 立 っ て お り,従ってそれによって各人の臨床的実力も大き く育成されていると見受けられ,臨床の教室とし ては望ましい形態であると考えている.

8

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研究生について 本学学生が女子のみに限られていることから, 入局者のほぼ半数が女子である.これら本学卒業 者の場合弘男子と全く同様の研修が行なわれタ また研修後期からは研究活動も男子と全く異なる ところなく行なわれて成果をあげているが,大き な問題として,結婚と出産,育児の問題がある. 結婚については,配偶者の理解が得らわしても,そ の後必ずしも同じ状態で勉学が維持されにくいこ ともあり,妊娠と出産,更にその後の育児の必要 性のある場合,外来診療のみであれば問題はない が,重症者のある可能性を伴う入院患者の診療を も含める場合には, どうしても制約を受けざるを 得ない.その場合には,多くは“研究生"として, 週

2-3

回の診療,そして研究室での活動を継続 することになるが,その後時間的余裕の生じた時, 改めて研修が再開される例もあり,中にはその後, 実に目をみはる程の立派な業績を挙げている場合 も少なくない.育児等による中断の場合にも,決 して放棄してしまうことなく,余裕の出たときに 必ず再開する決意を維持するようにすすめている が,本学卒業生の場合には教育上のシステムにこ のようなbypathをきちんと用意しておくことが 必要である. 研究生は男女を問わず,希望者があればその都 度面接し,本学研究生規約を満足する場合には, 積極的に採用している. 9.基礎医学教室との連繋 我々の教室の研究はあくまで臨床研究であるの で,精徽なdata(狭く深い研究内容について〉が 要請されるとき,あるいは大規模な検査器機を必 要とするとき,どうしても基礎の教室の御援助を 仰がなければならない このように当教室の研究者の研究テーマが基礎 的な部分を多く含むときときには,協力を依頼す ることがあって,現在まで,基礎教室の御協力で 大きな成果をあげ、得た事例も少なくない. しかし乍ら,この場合あくまで協同研究である ことを銘記し,基礎の教室の分担部分が単なる検 査データーを出していただくためだけの立場にな ることのないよう留意し,初めに両者で研究上の コンセンサスを充分に得ておくことが大変重要で ある.また,基礎側の研究ペースと我々臨床側の 研究ペースとに余りに落差があると, これもまた 大きな問題となる.今後,神経内科学の将来の発 展を考えるとき,単に臨床教室内のみの研究で は,限界に達することは明らかである.Neuro scienceとして組織的な協同研究が必要な時代と なっている現在,協同研究の在り方は特に大学院 学生の教育との関連で,当教室としても検討すべ き重要な問題と考えている.

1

0

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関連病院について 本学でも関連病院規定が制定され,医局員の出 張する病院の規準が定められたことは,当病院の 若い医員の教育上極めて意義の深いことである. 当教室でも

1-2

の 病 院 に 関 連 病 院 指 定 を 依 頼 し,部長級への医師派遣を行なっているが,それ には,その部が独立した神経内科で、あること,病 院長,理事長の理解, とくに大学の卒後研修の一 環としての意義に理解があること,症例の豊富な こと,設備の充実していること,そして部長級の 医師にとって,そこへの派遣が肩書きとして震歴 に残り得る病院であることなどを,一応の規準な いし理想目標として選択し,依頼している.幸い に当科の関連病院はよく運営されて,それぞれ実

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-905-績をあげており,その下に出張させる研修生に とっても,臨床神経学の教育上,良き修練の場と なっている.専門医養成を目指している場合,関 連病院への出張が,専門医としての修練を中断せ しめることのないように,即ち教育という直線上 に順次配列されるよう,充分に配慮される必要が ある.

1

1.認定医試験について 日本神経学会では,神経内科の専門医としての 認定のため,認定医試験制度を設け,今年ですで に第10回を数えるに至っている. 当教室では,学会の規定により受験資格の得ら れる卒後

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年以降,原則として全員が受験するよ うにすすめているが,今年まですでに研究生を含 め,

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2

名が合格している.認定医試験を受けるこ とは,本人にとっては卒後の研修成果のチェック と,学習のまとめといった意義があるが,また一 方,その結果がフィードパックして,研修システ ム側の反省(システム改変の要否チェック〉とし て有用であることも事実である.よって従来受験 のために特別扱いすることなく,前日まで全く平 常とかわらぬまま日常業務に従事して,受験せし めているが,各人は卒後研修の一里塚としての意 義を認めて準備し合格し得ている.

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実地医家コースとの関連 以上,本教室における神経内科医としての修練 は,直ちに教育職,または病院の神経内科の管理 職に備えての場合に通用し得るものであると考え るが,一方,教室員の中には,大学とはなれて独 立した実地医家として活躍する者もある.殊に本 学出身者はすべて女子であり,結婚,育児の問題 もあって,卒後

3-4

年で退職,実地医家として の道を歩む場合も少なくない. この際には通常, 教室の研究生として,週

1-2

回,外来もしくは 研究室での研究に従事することはすでに述べた. このように中途で実地医家に転ずる場合,大学病 院での勉学が余りに狭い専門領域に限られている と,その後の実地診療に支障をきたすことが少な くない.当科においては,あくまで臨床研究が中 心であること,また他内科に属する疾息について も,合併する神経症状によっておのずから経験す 906 ることが多く

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の範囲に入る ことになろう入比較的広い範囲の内科疾息を経験 し得ていること,またすでに卒後 2年間で,他内 科のローテイトを済ませていることなどによっ て,一般内科診療についてもかなり高度の診療能 力を備えているので,実地医家への転向も同じく 円滑に行われ,またその立場でも成果を挙げてい る.勿論,本人の自覚と能力の如何で,その成果 には多少の幅があると思うが,我々の研修システ ムは,かかる医師群に対しても,不都合のない弾 力性のあるものと考えている. 13.卒後研修のまとめ 以上当神経内科における卒後研修について紹介 し,その特徴について述べたが, これらは診療科 としての神経内科が設立された当初から, きちん と整った型で、運営されていたのではなく,多くは 直接の必要に迫られて作られ,のちに組織化され たものにすぎず,その後,徐々に改善を重ねて現 在の形態をとるに至ったものである.そして特に 強調したいことは,本学においては,内科の専門 各科の連繋が極めて良好であること,“縦割総合 制"の内科一教室制を経て,徐々に各科縦割りが 完成しつつあったこと,そして神経内科設立当初 すでに内科全科のローテーションシステムが発足 していて,神経内科卒後研修はそれにならって組 織化され得たとしづ幸運に恵まれたこと,そして 更に大きなことは,本学病院の全体が有機的にか なりよく運営されており,神経内科もそれに所属 しているからこそ,多数の患者数,多彩な症例に 恵まれていることなどである.先にも述べた通り, 大学の先輩スタッフの断えざる御努力,卒業生諸 姉による貴重な症例の御紹介など,その他多数の 支持があってのことで,我々教室員一同,感謝に たえないところである. 以上のごとき本学神経内科,卒後研修の組織に ついてはこれを他大学のシステム,最近他誌に紹 介されている卒後研修についての理想案などと比 較するとき,決して遜色のないもので,いささか 誇とするところであるが, この組織が効果的な研 修を可能にするか否かは,それぞれのpostに居る 者の能力と意欲の如何にかかっていると考える.

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神経内科臨床研修カリキュラム(ポケット版・現寸大〉 (5)グノレズス.神経内科所属の専門医によるクノレズスが別表 2のスケジユ ノレて、行なわれ,これに出席することが義務 付けられる. (6) medical neurologyに関連するものについては,他領域 専門医(内科各科,脳神経外科,神経放射線科,精神科な ど〉に対する正しいコンサノレテーションのノレーんについて 修得するものとする. III 研修についての評価 (1)入院症例については,退院時にその症例の病歴概略をま とめ. 1週間以内に提出して教授または助教授の校閲を受 けるものとする. (2) 3ヶ月の研修期間中,各研修医は記録用紙(iiU表3-1. 2. 3.)に所要事項を記入し. 3ヶ月の研修終了時,教授 に提出して検閲をうけるものとする. 1 . 序 論 当神経内科では以下の如き研修指針を定めるが,本続内科 研修が各3ヶ月計 2年で終了するので,従って,神経内科と して3ヶ月間の研修が行なわれることになる. II. 研修内容 (1)病棟 a.上級神経内科医の直接指導のもと,ベットの受持医と Lて 3- 4症例を受け持って診療を行ない,疾患について の理解を深めつつ研修を行なう. b また各研修医は受け持ち症例を医学的に充分把握し, 毎週行なわれる教授回診,助教授回診に於いて症例の呈 示,経過報告を簡潔正確に行ない討論することが要求され る. (2) 外来。週 1回,教授または助教授診察に陪席し, カノレテ 記入を行ない,外来診療症例について理解を深める. (3)神経学的特殊検査:受持つている入院症例について,神 経内科上級医員〔専門医〉の監督のもとに施行し,その実 際について具体的に学ぶものとする. これには脳波,誘発筋電図,表面筋電図,神経電導速度, 筋生検,髄液検査のほか,脳血管写,骨断層撮影,脊髄造 影.CT scanなどが含まれる. (4) 具体的研修の範囲については別表 1の研修指針を参考と する. 表l 2 一 1ー 各 論 1.脳血管障害 Aa 2 腫蕩性疾患 Aa 3.感染性疾患 Aa 4. Neuropathy(神経炎,神経痛など Ab 5. Myelopathy(脊髄炎.SMONなど Ab 6. Myopathy (進行性筋萎縮症,重症筋無力症など) Ab 7 脱髄疾患(多発性硬化症,祝神経脊髄炎など Bc 8 遺伝性疾患 Bc 9 変性疾患 Bc 10.代読性疾患(含欠乏性疾患 Bc 11.中毒性疾患 Bc 12 錐体外路性疾患 Ab 13機能性(発作性〉疾患 Ab 14.医原性疾患(アレピアチン,フェノチアジン,ヒドラジッ ド,副腎皮質ステロイド他 Ac 15.先天性および発育異常 Cc 16.自律神経疾患 Bb 17. 神経症 Bb 18 心 身 症 Bb 別表 l 総論 1.脳の構造と機能 2.脳神経の種類,走行,機能 3.脊髄の構造と機能 4. 上下肢主要末梢神経の構造と機能 5 運動系の構造と機能 6.知覚系の構造と機能 7.自律神経系の構造と機能 8.脳脊髄の血管支配 9 脳脊髄腔の構造と髄液の潅流 10血液脳関門 11 主要躯幹筋,四肢筋の名称と機能 12 大脳,脳幹,小脳,脊髄の局所診断的知識 13.主要症状 a.意識障害,頭痛,めまい,耳鳴,運動麻薄,歩行障害, 運動失調,不随意運動.A李,知覚障害,神経痛, 視カ障害,根振,筋萎縮,球麻痔,言語障害 A b.精神症状,失語症,失認,失行症 B B A A B A A B B B C B A 研修指針 - 4 -907 3

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-診断.検王室 一般検査法 ① 脳 神 経 機 能 ② 反 射 ③ 運 動 機 能 ④ 知 覚 機 能 ⑤ 小 脳 機 能 ⑥ 意 識 お よ び 精 神 状 態 特殊検査法 ① 眼 底 検 査 Aa ② 髄 液 検 査 Aa ③ EEG Bb ④ EMGお よ び 神 経 伝 導 速 度 Bc ⑤ 頭 蓋 単 純x-P撮影 Bc ⑤ 脳 血 管 撮 影 Bc ⑦気脳法および脳室撮影Bc ⑧Myelography Bc ⑨脳シンチスキャンニング Bc⑬ 自 律 神 経 機 能 検 査 ⑬ 平 衡 機 能 検 査 ⑬ 脳 エコーグラム ⑫ 神 経 病 理 組 織 学 ⑬ 免 疫 学 的 検 査 ⑬ 凝 固 ・ 線 溶 系 検 査 Aa Aa Aa Aa Aa Aa ⑪ CT(EMI) Bc ⑫ 筋 神 経 生 検 Bc ⑬ 神 経 化 学 的 検 査 Bb ⑬ 薬 理 学 的 補 助 診 断 Bb n d p し P し v n l v n l u A B B C C 5 表示記号の説明 C i )大文字。知識のレベノレ A=内容を精密に理解している B二 グ 概 略 グ C= グ 一 応 か Cii)小文字 検査や診療の手技と経験についてのレベル ① 検 査 , 診 療 の 手 技

a

=

独立して完全に行なえるだけの技術習得が要求さ れる. b=一応経験をもつことが要求される. c=見学などでその方法について理解していることが 要求される. ① 症 例 の 受 持 ち 経 験

(

a

=

原 則 と 一 こ と b=可能な限り受持つこと(共同でもよいから受持つ ことが望ましい c=できれば見学することが望まれる. G:短期間の研修て寸土, aとする症例でも必ずしも遭遇す るとは限らない.受持ち症例として経験できなかった疾 患については,経験したと同様の治療知識や処置ができ るよう,文,類似疾患によって得られた知識を応用でき るように研修を進めたていただきたい. ①一分野に偏ることなし各分野にわたりできるだけ多 く経験することが望ましく,他の分野での研修中にも神 経内科で習得した知識と技術を絶えず応用していただき 7こし、. 7 治療 1 神経疾患の薬物療法 2 救急処置 a.意識障害,窪李などの処置 b.脳外傷,硬膜上下血腫など c.呼吸麻痔 A 9 U ︽ し p ν A B B 3. リハビリテーション療法 a.概 念 A b.理学療法,作業療法,言語療法 Bc c.リクリエーション療法,心理療法,カウンセリング Cc ~ 6 別表2 神経内科グノレズス 1.神経内科学概論 2. 神経解剖学の基礎 3. 脳血管障害〔診断と治療〉 4.ミオパチー(筋生検〉 5.錐体外路疾患と生化学 6.EOG,撞孔 7脳 波 8 筋電図と不随意運動 9. CTscan 10.単純写, angiography, myelography 11大脳誘発電位CSEP,VEP, ABRなど〉

12.神経病理学の基礎的知識について

13.その他

~ 8ー

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9 別表3-1 内科研修記録 研 修 内 容 備 考 期 問 病 棟 名 (症例検討会提出など〕 年 月 日より 年 月 日まで 10 別表3-2 疾患別入院患者記録 診 断 備 考

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-1 1 別表3-3 学会発表記録 年 発 月 表日 Aて斗子4 ~ 掲巻載号誌頁年 (発演者表にO者印〉 演 題 名 *別表3-1,2, 3は研修医の研修個人記録として記入せしめる. 909

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教室主任以下, 日々研績を惜しまず,神経内科医 として教育・診療・研究について,その実力を養 うことが最も望まれるところで,その努力を続け るならば,更に研修効果は大きくなるものと信じ ている.

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おわりに 以上,神経内科学の卒前,卒後の教育について, 当教室で、の概要を述べたが,所によってはごくあ たりまえのことで,改めてとりあげるに値しない ような内容もあるかと思う. しかし今まで,必要 に迫られて作り出されて来たことを思い起こし, 今後も徐々に改善を重ね,本学独自の優れた神経 内科学研修方式へと完成させたL、と思っている. 今後ともよろしく御支援を賜わりたし、と願うもの である.

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