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愛媛県における個別的労使紛争処理の現状 利用統計を見る

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愛媛県における個別的労使紛争処理の現状

は じ め に

我が国では,長期的に見ると,集団的労使紛争が減少し,個別的労使紛争が 多発する傾向があり,このような傾向はしばらく続くものと考えられる。この ような状況に対応して,近年,労使紛争処理機関の創設・改革が進み,その最 後のメニューとも言うことのできる労働審判制度も2006年4月1日に運用が 開始されている。労使紛争処理制度を検討する場合,国全体という視点から捉 えることにより,東京都や大阪府など大都市を抱える地域の実情に目を向けが ちであるが,主たるテーマを労使紛争処理制度に置き,東京都と神奈川県で 10年ほど,そして,愛媛県に移り住んできて6年ほど労使紛争処理の現場に 関わる仕事に従事してきて感じることは,我が国の多数を占める愛媛県のよう な地域の労使紛争処理の現状は,国全体という視点から捉えるものとはかなり 異なるということである。個別的労使紛争に関しては,基本的には,「複線的 なシステム」で対応するという方向になり,紛争当事者が選択できる制度も複 数となっているが,その選択肢も,愛媛県では,東京都や大阪府などと必ずし も同一ではない。そこで,本稿は,我が国においては比較的平均的な県という ことのできる愛媛県における個別的労使紛争処理の現状を,公的制度を中心に 検討することにより,我が国の労使紛争処理制度を改めて考え直す機会とする ものである。

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Ⅰ 愛媛県における個別的労使紛争処理制度

第1章 愛媛県勢 愛媛県は四国の北西部に位置し,総面積は全国第26位の約5,676平方 km,2005年1月1日 現 在 の 推 計 人 口 は 全 国 第27位 の1,475,497人(男 性 695,722人,女性779,775人),平方 km 当たりの人口密度は全国第26位の 259.99人である。 人口は全国の1.15% に当たるが,経済規模も全国のおよそ1% を占め, 「1% 経済」と呼ばれている。地理的に東予,中予,南予の地域に3分され, 産業もそれらの地域ごとに特色を有している。最も東側にある四国中央市から 今治市,西条市にかけての東予においては,四国中央市の大王製紙やユニ・チャ ームに代表される紙関係,新居浜市や西条市の住友グループや日新製鋼に代表 される化学工業,非鉄金属,産業機械,電気関係,今治市の今治造船に代表さ れる造船関係やタオルなどの繊維関係といった製造業が中心である。愛媛県の 人口の3分の1を占める松山市を中心とする中予は,政治・経済,商業活動等 の第3次産業を中心とするも,臨海部には帝人や東レに代表される化学工業も 盛んである。南西部を占める南予は,柑橘類の栽培や鯛・ハマチ,真珠の養殖 等第1次産業が中心である。 第2章 愛媛県の労働組合 2005年6月30日現在の愛媛県内の労働組合数は672組合で,前年に比べ20 組合(2.9%)の減少,労働組合員数も87,232人で,前年に比べ2,107人(2.4%) の減少となった。推定組織率は15.7% となり,前年に比べ0.5% の低下となっ ている。ここ数年,全国の推定組織率(2005年は18.7%)の3ポイント程度 低い数字で推移している。産業別の状況では,組合数では,卸売・小売業が 18組合増加し83組合となっているが,製造業では8組合減少し121組合,公 務では19組合減少し80組合となっている。組合員数では,製造業が最も多く 202 松山大学論集 第18巻 第4号

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20,593人(全体の23.6%)で,次いでサービス業15,955人(同18.3%),公 務10,025人(同11.5%),建設業9,966人(同11.4%),の順となっている。 卸売・小売業(430人増)のほか3業種で増加しているが,その他の業種では 減少しており,製造業(1,529人減)や公務(784人減)では大幅に減少して いる。労働組合規模別の労働組合員数は,1,000人以上規模が22,330人(全 体の25.6%),次いで300∼499人規模が16,380人(同18.8%),100∼199人 規模13,721人(同15.7%),の順となっている。1) 第3章 愛媛県の個別的労使紛争処理制度の概要 愛媛県においても,個別的労使紛争を処理する機能を有する制度が様々存在 しているが,本稿では,司法型の制度として,松山地方裁判所と簡易裁判所, 行政型の制度として,愛媛県労働委員会,愛媛県中小企業労働相談所,愛媛労 働局,松山労働条件相談センター,21世紀職業財団愛媛事務所,日本司法支 援センター(法テラス),民間型の制度として,愛媛県社会保険労務士会総合 労働相談所,NPO 法人個別労使紛争処理センター愛媛支部,愛媛弁護士会法 律相談センター,愛媛県司法書士総合相談センターを検討する。これらのほか にも,行政型の制度としては,セクシャルハラスメントなどの労働相談が寄せ られることのある「愛媛県男女共同参画推進委員男女参画苦情処理」(愛媛県 女性総合センター内)や「松山市男女共同参画推進センター・コムズ相談室」, 民間型の制度としては,民事法律扶助事業として弁護士や司法書士による無料 法律相談を行っている「法律扶助協会愛媛県支部」,無料の労働相談を活発に 行っている「連合愛媛なんでも労働相談」や「愛媛労連労働相談センター」な どもあるが,本稿では取り上げなかった。2) 愛媛県における個別的労使紛争処理の現状 203

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Ⅱ 司法型個別的労使紛争処理制度

第1章 松山地方裁判所 1 労働関係民事訴訟 個別的労使紛争に関して,最終的解決を強制的に導いてくれる唯一の制度で あり,個別的労使紛争処理制度の要となるのは,民事訴訟である。労働関係事 件の民事訴訟3)の現状は,民事訴訟全体からみると,まだごくわずかな部分を 占めるに過ぎないが,全国レベルでは増大傾向にあり,2004年度の全国の地 裁の労働関係民事訴訟事件の通常訴訟の新受事件数は2,519件と最近10年間 で最高の件数になっている。また,仮処分命令事件は最近10年間で最少の件 数ではあるが,649件となっている。4) 松山地方裁判所は,松山市にある本庁のほか,大洲,西条,今治,宇和島に 支部があり,県内では5か所でアクセスすることができる。東京や大阪の地方 裁判所のように,労働に関する事件のみを担当する労働部といったものはな く,労働事件に習熟した裁判官が配置されているということも期待できない。5) 愛媛県内において,労働関係民事訴訟事件がどの程度提起されているかは明 らかではないが,2005年1月1日から2006年6月30日までの1年6か月の 間に,地元紙である愛媛新聞に掲載された労働関係民事訴訟事件は,!北宇和 郡三間町の自動車部品工場の元社員3人が従業員の地位確認と解雇後の給与支 払いを求め,認められた事件,6)"松山市の私立保育園を懲戒解雇されたのは無 効であるとして,元臨時職員女性が保育園を運営する社会福祉法人に対して, 職員としての地位保全などを求めた仮処分申請が却下され,さらに通常訴訟を 提起した事件,7)#愛媛県内で週刊経済紙を発行する「愛媛経済リポート」が, その元代表取締役に対して,社員の引き抜き行為や新会社で同種雑誌を発刊し たのは競業避止義務などに違反するとして,雑誌の出版差し止めや損害賠償を 求め,その請求が棄却された事件,8)$港湾運送会社松山支店の元従業員5人 が,関連会社への転籍命令を拒否したことを理由に解雇されたのは無効とし 204 松山大学論集 第18巻 第4号

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て,従業員としての地位保全の仮処分を申し立てた事件,9)!アカデミックハラ スメントを理由として停職処分を受けた愛媛大学の教授が,大学に慰謝料や処 分中の給与などの支払いを求めて提訴した事件,10)"前田道路の男性社員の自 殺は,上司からの度重なる叱責や過剰なノルマが原因であるとして,松山市の 妻子が慰謝料などを求めて会社を提訴した事件,11)#松山市内の歯科医院の元 女性従業員2名がセクハラを理由として医院経営の歯科医師に慰謝料など損害 賠償を求め,認められた事件,12)$松山市内の会社内に違法に設置されたエレ ベーターで勤務中に死亡した男性の遺族が安全配慮義務違反などを理由として 会社側を提訴した事件13)といったものであり,地元紙の報道を見ると,年間 で数件程度の労働関係民事訴訟事件が提起されているに過ぎないようである。 しかし,労働審判制度が開始されたことにより,地方裁判所の裁判官が労働事 件を担当する機会も増え,また,これまでは直ちに民事訴訟に至らなかった事 案が,労働審判を経て地方裁判所における民事訴訟に移行することも想定され ることから,愛媛県においても個別的労使紛争処理のために地方裁判所を利用 する可能性は高まり,労働事件における裁判官の専門性も高まり,労働関係民 事訴訟の質の向上も期待することができる。 2 労働審判制度 松山地方裁判所(本庁)では,2004年4月に成立した労働審判法により創 設された労働審判制度が,2006年4月1日にその運用を開始した。労働審判 制度は,個別労働関係事件について,裁判官である労働審判官1名と,労・使 としての知識経験を有する労働審判員各1名の合計3名から構成される「労働 審判委員会」が,3回以内の期日(3∼4か月)で,事件を審理し,調停によ る解決の見込みがある場合にはそれを試みつつ,調停により解決しない時に は,合議に基づいて権利義務関係を踏まえて事件の内容に即した解決案を決す ること(労働審判)により,迅速,適正かつ実効的な解決を図ることを目指す ものである。労働審判に対して当事者から異議が出されなければ,裁判上の和 愛媛県における個別的労使紛争処理の現状 205

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解と同一の効力が生じる。異議が出されたときに労働審判は失効するが,地方 裁判所に訴えが提起されたものとみなされて,民事訴訟に移行することにな る。全国50か所の地方裁判所の本庁で行われ,支部や簡易裁判所では行われ ない。14)労働審判員の数は,当該地方裁判所の管轄する労働事件数を考慮して 決定されており,松山地方裁判所は,四国の他の3つの地方裁判所と同数の労 使各5名となっている。15) 労働審判は,松山市にある松山地方裁判所の本庁のみで行われることから, 愛媛県全体で見るとアクセスが必ずしも良くはないことと,弁護士が代理人と して付くことが想定されており,労働者の側には,弁護士費用という経済的負 担が重荷であることからして,労働審判がなければ民事訴訟に行く可能性の高 いような事件でなければ,なかなか申し立てには至らないと予測していたが, 松山地方裁判所に対する2006年6月末現在の申し立て件数は6件であり,こ れまでの労働関係民事訴訟の推定される事件数を大きく上回る勢いで申し立て が行われている。16)松山地方裁判所における最初の労働審判は,2006年4月4 日に,東予の女性が,勤務先に対して未払い賃金の支払いを求めて申し立てた ものである。17)全国では,2006年6月末現在で合計278件の申し立てがあり, 最高裁判所が初年度の件数として想定している1,500件程度よりも少なめの割 合で推移している。 第2章 簡易裁判所 簡易裁判所で行うことができる140万円以下の民事訴訟や60万円以下の金 銭の支払いに関する少額訴訟,民事調停,支払督促も,労働事件の処理に利用 することができる。全国や愛媛県の簡易裁判所のデータはないが,たとえば, 東京簡易裁判所での2002年の少額訴訟において,労働関係事件の占める割合 は,「賃金等」と「解雇予告手当」で13.9% と高い。18)また,東京簡易裁判所 では,民事調停の労働事件への利用が進み,2002年で約110件の労働関連事 件についての民事調停の提起があったということが指摘されている。19) 206 松山大学論集 第18巻 第4号

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愛媛県にある松山地方裁判所管内の簡易裁判所は,松山をはじめ,大洲,八 幡浜,宇和島,愛南,今治,西条,新居浜,四国中央と,9か所にあり,アク セスの面ではたいへん優れている。また,簡易裁判所で行われる民事訴訟や少 額訴訟,民事調停,支払督促の手続きの特徴などを比較した表や分かり易いパ ンフレットが作成,配布され,利用者の便宜に資している。民事訴訟や少額訴 訟により「給料支払請求の訴え」を起こすための訴状作成を分かり易く解説し た用紙や「給料支払請求の訴え」のための定型「訴状」,民事調停で「賃金」 支払いを求めるための定型「調停申立書」も無料で提供されている。さらには, 松山簡易裁判所には「受付センター」という名称の手続きの相談に応じる窓口 も設置され,丁寧に対応するとともに,民事手続き一般に関して電話やファク スにより説明を受けることのできる「簡易裁判所民事手続案内サービス」も行 われている。同じ裁判でも,地方裁判所の手続きと比べると,簡易裁判所で行 えるものは,利用し易くなっており,本人訴訟の可能性も高くなっている。ま た,当事者の依頼を受けて,簡易裁判所で行われる民事訴訟をはじめとする各 種の手続きや和解交渉などを行うことができる認定司法書士が,愛媛県では 2006年4月1日現在108名も存在している。認定司法書士が積極的に,簡易 裁判所の手続きにおいて個別的労使紛争を手掛けるようになる20)と,簡易裁 判所の個別的労使紛争処理機能は,なお一層拡大するものと考えられる。21)

Ⅲ 行政型個別的労使紛争処理制度

第1章 愛媛県労働委員会 都道府県労働委員会は,従来は,集団的労使紛争のみに対応し,不当労働行 為の審査と労働争議の調整を行ってきたが,2001年4月1日から,高知県, 愛知県,福島県の3県を先駆けとして,個別的労使紛争の処理に新たに参入 し,22)現在では,東京都,兵庫県,福岡県を除く44の道府県の労働委員会が, これまでの集団的労使紛争処理機能に加えて,地方自治法180条の2の規定に 愛媛県における個別的労使紛争処理の現状 207

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基づき,知事から事務の委任を受ける形で,個別的労使紛争のあっせんや労働 相談を行っている。多くの労働委員会は,独自に労働相談に対応することに困 難を感じて,労政主管事務所の行う労働相談と連携する形であっせんのみを行 うという態勢をとっており,労働相談をも行っているのは,7県のみである。23) 愛媛県労働委員会も,不当労働行為の審査や労働争議の調整のほか,労政主管 事務所に相当する中小企業労働相談所の行う労働相談と連携するかたち で,2002年4月から個別的労使紛争のあっせんを行っている。労働委員会に おける個別的労使紛争のあっせんは,個々の労働者と使用者との間の労働条件 その他の労働関係に関する紛争を,公・労・使三者構成のあっせん委員が公平 な立場で当事者の話し合いによる任意の解決に導く制度である。 愛媛県労働委員会は,各13名の東京都,各11名の大阪府,各7名の北海道, 神奈川県,愛知県,兵庫県及び福岡県を除く,他の39府県と同様,公益委員, 労働者委員,使用者委員各5名の,合計15名で構成されている独立の行政委 員会である。委員の任期は2年である。2005年8月26日任命の第37期の公 益委員は,弁護士2名,大学教員2名,社会保険労務士1名からなる。女性は, 公益委員に2名(大学教員1名,社会保険労務士1名),労働者委員に1名, 使用者委員に1名任命されている。 愛媛県労働委員会が,あっせんの申出を前提とする「事前相談」に対して情 報提供,助言,あるいは適切な機関の紹介を行ったものは,2005年中におい ては,25件(対前年18件減)である。そのうち,あっせんの申出に至ったも のは3件(対前年4件減)で,前年からの繰越し2件を含め,2005年中の事 件取扱件数は,5件(対前年3件減)と多くはない。24)制度がスタートした2002 年4月から2005年12月までの45か月の申出総数は23件で,1か月当たりの 平均は0.51件となっており,ほぼ全国平均と同程度の実績となっている。25) れまでの申出は,すべて労働者からのものである。その紛争内容は多岐にわたっ ており,2002年4月から2005年12月までの45か月の紛争内容別件数は,賃 金等(賃金・一時金・退職金・その他の賃金)15件,労働条件等(労働時間・ 208 松山大学論集 第18巻 第4号

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休日・休暇・福利厚生・社会保険・労働保険・その他)3件,経営人事(解雇・ 配置転換・その他)13件,セクハラ・嫌がらせ3件,その他4件となってい る。26)あっせんの申出は,労働委員会が直接受け付けるが,愛媛県内5か所の 地方局商工労政課内に設置されている後述の中小企業労働相談所でも受付をし ている。中小企業労働相談所では,2004年4月1日から,労働相談員(地方 局商工労政課商工労政係長)が労働委員会事務局職員(担当係長)を兼務し, 個別的労使紛争のあっせんに関する相談・助言を行っている。 愛媛県労働委員会が,2005年中に取扱った事件5件の終結状況は,解決1 件,取下げ1件,不開始3件である。解決した事件は,1回の調整により所用 日数14日と迅速に処理されている。なお,取下げの1件は,未払賃金の支払 いを求めたものであるが,労働基準監督署が対応することになったので申出者 が取下げたものである。不開始の3件は,相手方である使用者からあっせんに は応じないとの回答があったことにより,不開始となったものである。2002 年4月から2005年12月までの23件の終局事件のうち11件が不開始となって おり,27)全国平均と比べると高い割合になっている。28) 愛媛県労働委員会に限ったことではないが,道府県労働委員会の行う個別的 労使紛争のあっせんの特長は,三者構成で行うことである。三者構成は,委員 を3名揃えるのに苦労する点で機動性では劣るが,労調法のあっせんに倣って 3部屋を使ってじっくり行うことから,強い調整力を発揮できる。そこで,労 働局の紛争調整委員会によるあっせんや労働審判制度では対応しにくい就業規 則の不利益変更のような会社全体にかかわる利益紛争や差別問題などのような 事案に関しては,迅速さにこだわらない対応をすることで,その紛争調整機能 の独自性を発揮して,その存在意義を示すべきであろう。29) 第2章 愛媛県中小企業労働相談所 都道府県により実績の差は大いにあるものの,とくに,東京都,神奈川県, 大阪府,福岡県などで,従来より個別的労使紛争の処理に活躍してきている30) 愛媛県における個別的労使紛争処理の現状 209

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のが,労政主管事務所である。31)労政主管事務所が行うのは労働相談32)である が,6都府県では労働相談のみならず,いわゆる「あっせん」まで行っている。 あっせんとは,労働相談における情報提供や助言等で問題が解決しないとき に,労使双方の求めに応じて,労使の間に入って話し合いによる解決を援助す ることを意味している。2003年度において,全国の労政主管事務所が行った 労働相談件数は,約13万件,あっせん件数は約1,400件である。33) 労政主管事務所の名称は都道府県により様々34)で,愛媛県では中小企業労 働相談所という名称で,県内5か所,西条,今治,松山,八幡浜,宇和島の地 方局商工労政課内に常設されている。あっせんは行わず,労働相談のみに対応 し,労働問題について労使関係者の相談に応じるとともに,必要に応じて関係 機関への連絡及び照会をすることにより,労使関係の安定を図っている。ま た,愛媛県労働委員会の行う個別的労使紛争のあっせんの受付窓口にもなって おり,個別的労使紛争のあっせんに関する相談・助言も行っている。さらに は,松山地方局の松山中小企業労働相談所には,毎週金曜日の10時から15時 まで,特別労働相談員(木村五郎愛媛大学名誉教授,弁護士)を配置して,労 働問題全般について専門的な助言・指導を行っている。木村五郎相談員による と,最近の労働相談の特徴としては,解雇に関するものが一番多く,その中で も直接的な解雇通告ではなく,専門外の部署への配置転換をすることにより辞 めざるを得ない場合のような間接的な解雇が増えているという。相談者の内訳 では,労働者からの相談が多く,身分の不安定な非正規雇用の増加を反映する ように,パートや女性からの相談が目立っているという。労働基準法などの労 働法規に関する基本的な知識がない人が増加していることを痛感するとい う。35) 愛媛県中小企業労働相談所全体の相談件数は,2001年度は239件,2002年 度は210件,2003年度は202件,2004年度は201件であった。2005年 度 は 225件であり,この数年200件程度で推移している。2005年度の相談の内容 は,「労働組合及び労使関係」124件,「労働条件」83件,「雇用」9件,「職業 210 松山大学論集 第18巻 第4号

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能力開発」2件,「勤労者福祉」2件,「その他」5件となっている。36)なお,労 政主管事務所の労働相談件数が多いところでは,都道府県労働局の紛争調整委 員会によるあっせん申請件数比率(常用労働者1,000人当たり)が少ないよう である。37)愛媛県の場合は,どちらも平均的な数字と見ることができる。38) 愛媛県の中小企業労働相談所は,その実績は平均的なものであるが,特別労 働相談員として,弁護士資格を持つ,労働法のスペシャリストを配置している という点において,他県にない優れた特色を有していると評価することができ る。39) 第3章 愛媛労働局 2001年10月1日施行の個別労働関係紛争解決促進法により,本格的に個別 的労使紛争の処理に乗り出してきているのが,厚生労働省の都道府県労働局で ある。都道府県労働局のもとには,労働基準監督署,公共職業安定所,内部組 織の雇用均等室があり,また,紛争調整委員会も設置されている。2003年4 月からは,個別労働紛争解決業務を担当する専門官職である労働紛争調整官が 各労働局1名以上,全国で50名配置されている。個別労働関係紛争解決促進 法に基づく都道府県労働局の個別労働紛争解決制度は,総合労働相談,労働局 長による助言・指導そして紛争調整委員会によるあっせんからなっており,こ の制度により,全国津津浦浦に個別的労使紛争処理のネットワークが張り巡ら されている。40)都道府県労働局のもとでは,雇用機会均等法に基づく,個別紛 争解決の援助,機会均等調停会議の調停及び雇用機会均等法に関する相談業務 からなる紛争処理制度も整備されており,雇用均等室が制度を統括している。41) 個別労働紛争解決制度の運用を開始してから,2006年3月末で4年半が経 過したが,個別労働紛争の解決を裁判外で簡易・迅速に図る制度として,全国 的にも,また愛媛県においても高い実績を維持している。42) 愛媛県における個別的労使紛争処理の現状 211

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1 総合労働相談コーナーにおける総合労働相談 総合労働相談は,紛争の未然防止・自主的解決の促進のために,全国の労働 局や労働基準監督署,都市圏の主要駅の民間ビルなど,全国約300か所に,総 合労働相談コーナーを設置し,午前9時から午後5時まで,総合労働相談員を 配置して,労働者や事業主に対して,あらゆる労働問題に関する相談,情報提 供のワンストップサービスを実施するものであり,労働基準監督署の監督官が 応対する相談とは別個のものである。愛媛県では,愛媛労働局及び松山,新居 浜,今治の各労働基準監督署内に総合労働相談コーナーを設置し,今治は1名, 他は各2名で総勢7名の総合労働相談員(月15日勤務の非常勤であり,1名 が民間企業労使実務経験者,6名は社会保険労務士ないしは社会保険労務士有 資格者)を配置している。相談内容によっては,抱えている問題にふさわしい 相談機関を紹介することもある。男性には相談しにくいという事柄に対応する ため,愛媛労働局と松山労働基準監督署の総合労働相談コーナーには女性の相 談員を各1名配置している。 愛媛県内の4か所の総合労働相談コーナーに寄せられた相談件数は,2002 年度は6,479件,2003年度は7,423件,2004年度は6,726件であった。2005 年度は7,295件(全国では,907,869件)で,前年度比8.5% の増加となって いる。2005年度の相談内容は,「労働条件」が6,592件(相談内容全体の84.3%) と大半を占め,「募集,採用,定年等」が352件(同4.5%),「女性問題等」 が144件(同1.8%),「その他(いじめ・嫌がらせ,賠償等)」が728件(同9.3%) となっている。雇用均等室に寄せられた雇用機会均等法に関する相談は,172 件(全国では,19,724件)43)で,うち62件が女性労働者からの相談であった。 2 個別労働紛争に係る相談 総合労働相談件数のうち,労働関係法令上の違反を伴わない,いわゆる民事 上の個別労働紛争に係る相談は,2002年度は589件,2003年度は970件, 2004年度は1,301件であった。2005年度は1,477件(全国では,176,429件) 212 松山大学論集 第18巻 第4号

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で,前年度比13.5% の増加で,総合労働相談件数の20.2% に当たる。 その相談内容は,「労働条件」の992件(全体の65.7%)が最も多く,「募 集,採用,定年等」が65件(同4.3%),「女性問題等」が90件(同6.0%), 「その他(いじめ・嫌がらせ,賠償等)」が362件(同24.0%)となっている。 「労働条件」の内訳は,「解雇」が387件(個別労働紛争全体の25.6%)で最 も多く,「労働条件引下げ」が175件(同11.6%),「退職勧奨」が133件(同 8.8%)などとなっている。「女性問題等」の内訳では,育児・介護休業等が 58件(同3.8%),セクシュアルハラスメントが32件(同2.1%)となってい る。「その他」の内訳では,「いじめ・嫌がらせ」が204件(同13.5%),「賠 償」が97件(同6.4%)などとなっている。相談内容では,「解雇」,「退職勧 奨」,「いじめ・嫌がらせ」等についての相談が,年々増加している。 労働者(求職者)からの相談が1,276件(個別労働紛争全体の86.4%)と 大半を占めている。そのうち,正社員からの相談が892件(同60.4%),次い でパート・アルバイトが316件(同21.4%),期間契約社員が74件(同5.0%), 派遣労働者が38件(同2.6%)などとなっている。使用者からの相談は128 件(同8.7%)となっている。 3 労働局長による助言・指導(・勧告) 紛争の解決について,当事者の一方又は双方から援助を求められた場合に は,都道府県労働局長が,両当事者に対し,事情を聞いたり,判例等の関係資 料を示す等により,あるべき姿や問題解決の方向性などについて必要な助言や 指導を行っている。助言は口頭により,指導は文書によるのが原則となってい る。助言又は指導を行うため必要あると認めるときは,広く産業社会の実情に 通じ,かつ労働問題に関し専門的知識を有する者の意見を聞くものとされてい る。男女均等取扱いに関する事案については,均等法13条1項に基づいて, さらに勧告も行う。 助言・指導申出受付件数は,2002年度は33件,2003年度は55件,2004年 愛媛県における個別的労使紛争処理の現状 213

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度は62件であった。2005年度は58件(全国では,6,369件)で,前年度の 62件に比べ4件減少している。申出の内容は,「労働条件」が35件(全体の 60.3%)と多く,その内訳は,「解雇」が16件(同27.6%),退職勧奨が10 件(同17.2%)となっている。また,「いじめ・嫌がらせ」も10件(同17.2%) となっている。助言・指導は労働局内で完結する調整手法であり,処理に要し た期間は,1か月以内が57件(98.3%),2か月以内が1件(1.7%)と,非 常に迅速な処理が行われている。そのうち,取り下げられた2件を除く56件 について口頭による助言が行われ,28件が解決し,26件があっせんに移行し た。均等法13条1項に基づく雇用均等室における個別紛争解決の援助が行わ れた事案はなかった(全国では,141件)。 4 愛媛紛争調整委員会によるあっせん(・調停) 紛争調整委員会によるあっせんとは,労使間の民事紛争について,当事者の 一方又は双方から申請された場合に,労働局が委任した学識経験者からなる委 員が,双方の主張を聞き,互譲によって合意点を探り,和解に導くことにより 解決を図る制度である。当事者双方が求めた場合には,委員の全員一致に基づ くあっせん案を提示して,その受諾を促すことになる。紛争調整委員会は,各 都道府県労働局において6人以上18人以内の委員で組織され,労働局長の指 揮命令を受けず,中立的立場で紛争処理を行う。全国における委員の構成は, 「弁護士」が46% 弱,「大学教員」が27% 強,「社会保険労務士」が15% 弱, 「行政 OB」が8% 弱,残りが「人事労務実務経験者(民間企業 OB)・その他」 である。44)男女均等取扱いに関する事案についても紛争調整委員会で行うが, あっせんではなく均等法14条に基づく機会均等調停会議の調停で処理され る。東京は18人,北海道,神奈川,愛知及び大阪は9人の委員で組織され, 愛媛など,その他の局は6人である。45)委員は3人1チームに分かれて事件を 割り当てられるが,その処理は,個別労働関係紛争解決促進法施行規則第7条 第1項に基づいて,1名の委員により機動的,効率的に行われている。愛媛労 214 松山大学論集 第18巻 第4号

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働局の愛媛紛争調整委員会は,弁護士2名(ともに男性)と大学教員1名(女 性)からなるチームと,弁護士1名(男性)と大学教員1名(男性)と労働局 OB1名(女性)からなるチームの2チームに分かれている。機会均等調停会 議は,紛争調整委員会の委員全員の中から予め決められている3人の委員に よって組織されるものとされており,愛媛労働局では,弁護士1名(男性)と 大学教員1名(男性)と大学教員1名(女性)の3名とされている。愛媛労働 局では,これまで機会均等調停会議による調停を行った例はない。 あっせんの申請を受理した件数は,2002年度は40件,2003年度は53件, 2004年度は71件であった。2005年度は64件(全国では,6,888件)で,前 年度に比べ7件減少している。 事案の内容は,「労働条件」が45件(全体の70.3%)を占め,その内訳は, 「解雇」が22件(同34.4%),「退職勧奨」が12件(同18.8%)などとなって いる。また,「いじめ・嫌がらせ」も13件(同20.3%)となっている。受理 した事案64件のうち,合意が成立し解決したものが30件(46.9%),申請人 の都合により申請が取り下げられたものが5件(7.8%),相手方があっせん手 続きに参加しないことにより打ち切ったものが18件(28.1%),参加しても合 意が成立しないことによりあっせんを打ち切ったものが11件(17.2%)となっ ている。あっせんを実施した事案38件の う ち 解 決 に 至 っ た も の は27件 (71.1%)と7割以上の解決率を上げている。処理に要した期間は,1か月以 内が40件(62.5%),2か月以内が18件(28.l%),2か月を超えたものが6 件(9.4%)と,処理件数が増大する中でも,迅速な解決をもたらしている。 紛争調整委員会によるあっせんは,簡易・迅速かつ無料のあっせんを提供する ものであり,当事者双方に解決しようとする姿勢があれば,迅速かつ高い確率 での解決を期待できるものであることからすると,愛媛労働局に限ったことで はないが,さらなる制度の理解・周知に努めて,相手方不参加による打ち切り の割合を減らすことが最重要の課題ということができる。 愛媛県における個別的労使紛争処理の現状 215

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5 個別労働紛争解決制度関係機関連絡協議会 国は,地方公共団体が個別労働関係紛争の予防及び解決のために行う施策を 支援するために,「情報提供その他の必要な措置」を講ずるものと定める個別 労働関係紛争解決促進法第20条第2項の趣旨を受けて,愛媛県では,個別労 働関係紛争解決促進法に基づく個別労働紛争解決制度を統括する愛媛労働局総 務部企画室を庶務として,2002年から,愛媛県経済労働部労政雇用課,愛媛 県労働員会事務局,愛媛労働局総務部の担当責任者または担当者を構成員と し,裁判手続きや調停手続きの情報提供を得るため,松山地方裁判所及び松山 簡易裁判所の担当責任者または担当者を構成員に加えることもある「個別労働 紛争解決制度関係機関連絡協議会」を原則年1回開催し,!各機関で運用して いる労働相談,個別労働紛争解決制度等の運用状況,"紛争当事者に対して他 機関を紹介する場合における連携方法等各機関間の連携の在り方を中心に,情 報や意見の交換を行ってきている。原則年1回の定例会議のほか,構成員の要 望により随時臨時会議を開催することが予定されている。2006年の定例会議 は7月21日に開催予定である。 第4章 松山労働条件相談センター 労働条件相談センターは,1998年4月24日に策定された総合経済対策の 「緊急雇用開発プログラム」で,夜間労働条件相談センターとして盛り込んで, 旧労働省が,外郭団体である社団法人全国労働基準関係団体連合会に委託して 開設したものである。46)賃金,労働時間,解雇問題などについて,助言・説明 を行い,労働者の疑問や不安の解消を図るとともに,労使間のトラブルを未然 に防止することを狙いとするものである。47)1998年7月1日に,東京都千代田 区など,当初は,全国11都市に開設されたが,2006年3月までは20か所に 設置されており,同年4月からは33か所に拡大している。四国では1999年4 月から愛媛県松山市にのみ設置されていたが,2006年4月から香川県高松市 にも開設された。48)都道府県労働局の総合労働相談コーナーの対応時間帯(午 216 松山大学論集 第18巻 第4号

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前9時から午後5時)では,労働者にとっては勤務の都合上相談が困難であろ うということに配慮したものである。労働に関する相談を,祝日及び12月29 日∼1月3日を除く,月曜日から金曜日までは午後2時から8時,土曜日は午 後1時から6時,面談・電話(フリーダイヤル)で受け付け,専門の知識を有 するアドバイザー(相談員)が無料で対応する。 松山労働条件相談センターは,伊予鉄市内電車の「西堀端」電停のすぐそば で,JR 松山駅からも徒歩で7∼8分程度のアクセスの良いところにある松山 市大手町のビルの3階にある。センターの業務の周知を図るために,関係機関 の会員向け会報や自治体広報誌への PR 記事掲載,タウンページへの広告,電 車・バス・駅での広告,労働関係諸機関における広報用ポケットティッシュの 配布やポスターの掲示依頼など,年間を通して,広報活動を行っている。アド バイザーのほとんどが労働関係の専門的国家資格者である社会保険労務士であ る。2人が常駐して相談に当たっている。相談業務のとりまとめを行うのはチ ーフ・アドバイザーで,都道府県労働局 OB が務めることが多い。相談に対し ては,説明や助言,労働条件に関する法令の内容,判例,リーフレット等の情 報・資料の提供,他の労働関係諸機関の教示などを行っているが,事実関係の 調査や「あっせん」は,一切行わない。当事者の間に入り処理するのではなく, 各種の相談に応じたり,その事案を扱うことのできる機関を紹介するという橋 渡しまでのサービスを提供している。49)アドバイザーは,合同で研修を受けた り,定期的に全員の打合せ会を開いて情報の開示・交換,意見交換,互いの相 談事案の検討をしたり,関係機関からの資料収集などを行い,相談業務の充実 に努めている。50) 松山労働条件相談センターの処理実績51)は,1999年度は受付711件,処理 1,058件,2000年度は受付874件,処理1,219件,2001年度は受付1,357件, 処理1,776件,2002年度は受付1,284件,処理1,732件,2003年度は1,385 件,処理1,839件,2004年度は受付1,674件,処理2,164件,2005年度は受 付1,714件,処理2,226件となっている。受付件数は,面談・電話による相談 愛媛県における個別的労使紛争処理の現状 217

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を申し込んだ人数を意味し,処理件数は,相談をその内容ごとに分類した件数 の総和である。開設から7年以上経過し,当初の2倍を超える実績を挙げてお り,着実に定着し,労働相談窓口として有効に機能していると評価することが できる。2006年3月まで20か所あった全国のセンターの処理実績は,2003年 度が受付43,555件,処理60,473件,2004年度が受付47,176件,処理63,522 件,2005年度が受付48,323件,処理63,364件となっている。 2005年度の実績を詳細に見ると,相談形態では,電話によるものが1,505 件(88%)と多く,面談によるものが209件(12%)となっている。相談者の 属性では,労働者が1,288件(75%)と多く,使用者が289件(17%),その 他が137件(8%)となっている。四国内からの相談を想定した窓口であり, 愛媛県を中心に四国4県からの相談が多く,愛媛県1,388件,香川県215件, 徳島県28件,高知県43件となっているが,フリーダイヤルや HP の影響によ るものと思われる,中国地方から10件,九州地方から15件,その他15件と, 四国地域外からの相談も見られている。相談内容は,労働条件の明示等,就業 規則,普通解雇,整理解雇,懲戒解雇,普通退職(自己都合退職),勧奨退職 (退職の強要),雇止め,労働条件引き下げ(賃金),労働条件引き下げ(退職 金),労働条件引き下げ(その他),出向・配転,募集・採用,懲戒処分,賃金 制度,退職金制度,昇給・昇格,賃金計算方法,賃金不払い(定期賃金),賃 金不払い(割増賃金),賃金不払い(その他),労働時間,休日・休暇,セクハ ラ,いじめ・嫌がらせ,育児・介護休業等,定年等,雇用管理改善・その他, 労働契約の承継,安全衛生,雇用保険,労災保険,社会保険,損害賠償等,そ の他,まで35に分類されており,総計2,226件のうち,その他を除いて多く 見られる相談は,社会保険223件(10%),休日・休暇175件(8%),雇用保 険150件(7%),労働時間139件(6%),普通解雇119件(5%)となって いる。社会保険や雇用保険に関する相談が多いのは,その分野の専門家である 社会保険労務士がアドバイザーを務めていることの反映かもしれない。 相談ニーズを正確に把握するために,2006年度からは,相談曜日及び相談 218 松山大学論集 第18巻 第4号

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時間ごとの受付件数の統計もとっている。4∼5月の2か月間の実績は282件 あり,相談曜日別では,月曜日から金曜日までが86%,土曜日が14%,月曜 日から金曜日までの相談時間別では,午後2∼5時までの3時間が44%,午 後5時以降の3時間は56% となっている。土曜日の相談が1日当たりの平均 を下回っているが,都道府県労働局の総合労働相談コーナーの対応時間終了後 の午後5時以降の相談が多く見られ,設置の趣旨を肯定する結果が現れている。 第5章 21世紀職業財団愛媛事務所 21世紀職業財団は,企業における良好な雇用関係の確立及び女性労働者等 が,その能力を有効に発揮できる環境づくりに資することを通じ,女性労働者 等の福祉の増進を図るとともに,我が国の産業発展に寄与することを目的とし て,1986年4月の男女雇用機会均等法の施行を機に設立されたものである。 財団の主要事業は大きく分けると3つある。第1は,「女性の能力発揮促進事 業」であり,男女雇用機会均等法を企業に定着させるため,企業がポジティ ブ・アクションを推進するための援助等や,職場におけるセクシャルハラスメ ントを防止するための企業の具体的取組のノウハウを提供している。第2は, 「両立支援事業」であり,育児・介護休業法に基づく指定法人として,育児や 家族の介護を行う労働者の職業生活と家庭生活との両立を支援する各種事業を 推進している。第3の事業は,「短時間労働援助事業」であり,パートタイム 労働法に基づく指定法人として,パートタイム労働者の雇用管理改善等の援助 を行うこと及びその福祉の増進を図ることを目的に各種事業を実施している。 財団の事業を地域で展開するために47都道府県に設置されている地方事務所 の一つが,21世紀職業財団愛媛事務所である。 21世紀職業財団愛媛事務所が行っている事業のなかで労使紛争処理制度と して位置づけることができるのは,財団の第3の事業である「短時間労働援助 事業」の一環として行っている「パートタイマーのための労働相談」である。 パートタイマーのための労働相談では,社会保険労務士などの専門家が非常勤 愛媛県における個別的労使紛争処理の現状 219

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で務める雇用管理アドバイザーが,電話や来所の形態で,パートタイマーとし て働く上での悩みや,法律,社会・労働保険,税金などの疑問に幅広く答えて いる。また,松山市内にあるハローワークプラザ松山では,日時を設定して, 月1回程度,雇用管理アドバイザーが相談に応じる「パートタイム労働相談会」 を行っている。また,愛媛県内の各地域にあるパートバンク等に場所・日時を 設定して,雇用管理アドバイザーが相談に応じる「パートタイム労働相談会」 も不定期に実施している。相談件数は正式には公表されてはいないが,「パー トタイマーのための労働相談」では,1日数件程度の相談が,主に電話によっ て寄せられているようである。 21世紀職業財団愛媛事務所が行っている「パートタイマーのための労働相 談」は,資料や情報の提供にとどまるものであるが,愛媛県においてもパート タイム労働者の数は男女ともに増大傾向にあり,女性労働者に占めるパート・ アルバイト労働者の割合は2002年で4割を超えていること52)や,パートタイ マーは雇用が不安定で,かつ正社員との処遇の格差などから不満を持つことも 多い雇用形態であることからすると,専らパートタイマーに関連した労働相談 に幅広く応じる制度として,その労使紛争処理機能には注目すべきものと思わ れる。 第6章 日本司法支援センター(法テラス) 「日本司法支援センター」(愛称「法テラス」)は,法律が絡むトラブルの種 類に応じて最適な相談機関を無料で紹介する独立行政法人であり,各機関で対 処できるトラブルの情報を集約し,トラブルを抱えた相談者が,法律による紛 争解決手段を利用しやすくするために,一定の法律知識を身につけた職員が, 直接あるいは電話,メールなどで相談を受け付け,無料で,相談者に合った機 関を素早く紹介するものである。総合法律支援法(平成16年法律第74号)に 基づいて2006年4月10日に設立され,業務は,同年10月2日"に全国一斉 にスタートする予定である。その業務の主なものは,!情報提供業務のほか, 220 松山大学論集 第18巻 第4号

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!民事法律扶助業務,"国選弁護関連業務,#司法過疎対策業務,$犯罪被害 者支援業務である。53)労使紛争処理に関連して最も期待されるのが,情報提供 業務である。 愛媛県には,松山地方裁判所の近くの松山市一番町の共栄興産ビル4階に地 方事務所と,大洲市に支部事務所を置く予定である。そのための準備として, 日本司法支援センター愛媛地方準備会(委員長西蔭健弁護士)が設けられ,紹 介先となる自治体や弁護士会,労働局など約120の関係諸機関の担当者などを 招いての,日本司法支援センターに関する意見交換会(プレ愛媛地方協議会) もすでに2回開催されている。54)第1回は,2005年7月5日に,「日本司法支援 センターに期待すること」というテーマで,上野公裕氏(愛媛新聞社報道局次 長兼社会部長)及び小田敬美氏(岡山大学法科大学院助教授)の他,関係する 機関である愛媛弁護士会の会長,愛媛県司法書士会の会長,愛媛県女性総合セ ンターの館長,財団法人21世紀職業財団愛媛事務所の所長,財団法人法律扶 助協会愛媛県支部の支部長をパネリストとして,意見発表ならびに意見交換, 質疑応答が行われている。第2回は,2006年2月17日に,「日本司法支援セ ンターと関係機関・団体との連携・協力関係等について」というテーマで,準 備会委員長や法務省担当者からの説明を受けて,質疑応答が行われている。

Ⅳ 民間型労使紛争処理制度

第1章 愛媛県社会保険労務士会総合労働相談所 総合労働相談所は,各都道府県の社会保険労務士会によって運営されている 無料の労働相談窓口であり,「裁判外紛争解決手続の利用の促進に関する法律」 (平成16年法律第151号。以下「ADR 法」という。)の成立等に合わせて,「ADR 機関」として認証を得るため,その基礎固めと実績作りの場として設置された ものである。55)労働相談への対応は,会により様々である56)が,愛媛県社会保 険労務士会は,解雇,賃金,セクハラなどの労働関係のトラブルに関する相談 愛媛県における個別的労使紛争処理の現状 221

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に,事前の申し込みを受けて面談形式により毎月第2・第4日曜日の13時か ら17時まで,電話相談のみの場合には毎週火,木曜日の9時から13時まで, 社会保険労務士が対応している。なお,相談対応日以外の日においても,専用 電話の留守電機能で対応する体制をとっている。 愛媛県社会保険労務士会が総合労働相談所を開設したのは2002年10月1日 であり,その相談実績は毎年拡大している。57)2003年度は69件,2004年度は 109件,2005年度は270件となっている。2005年度の相談内容は,!年金・ 退職金に関する問題153件,"解雇に関する問題48件,#労務管理に関する 問題35件,$安全衛生・労災に関する問題14件,%その他20件となってい る。 現在すでに,一般に認知され,高い信頼を得ているとまで評価することはで きないが,58)相談件数は,他の都道府県会のものと比較すると,高い実績を挙 げていると見ることができる。明らかになっているデータが多い2004年度の 労働相談実績を比較してみても,愛媛県会が109件であったのに対して,富山 県会は28件,59)鳥取県会は20件,60)岡山県会は82件,61)大分県会は62件,62)鹿児 島県会は33件,63)沖縄県会は37件64)と,必ずしも多くはない。 2007年4月1日施行の社会保険労務士法改正65)により,社会保険労務士が 労使紛争処理能力を高めて「特定」社会保険労務士となり,また同日施行の ADR 法により総合労働相談所が「民間認証 ADR 機関」となり,労働相談のみ ならず紛争の和解あっせんサービスを提供するまでに進化すると,「労働問題 に特化した新たな ADR」として,レベルの高い労使紛争処理機能を期待する ことができる。66)愛媛県会では,2006年度においては2回行われる特定社会保 険労務士になるための特別研修及び認定試験を,第1回は28名が受け,第2 回は49名が受けることになっており,70名を超える特定社会保険労務士が誕 生することが見込まれている。愛媛県会の2006年7月1日現在の会員数は295 名で,うち開業が220名,法人の社員が2名,勤務社労士が53名,登録する も非開業が20名となっている。 222 松山大学論集 第18巻 第4号

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第2章 NPO 法人個別労使紛争処理センター愛媛支部 NPO 法人個別労使紛争処理センター愛媛支部は,労働問題の専門家である 社会保険労務士を中心として,弁護士,司法書士,行政書士,税理士,経営コ ンサルタントなど,職業生活にかかわる専門家が無料の法律相談を行い個別労 使紛争の早期解決を支援するために設立された,特定非営利活動法人(NPO) (内閣府認証1602)個別労使紛争処理センター(以下「センター」という。) の愛媛支部である。67) センターがまず提供する紛争処理サービスは,労働相談であり,個別労使間 で発生した紛争に対して,相談員が,無料で,法令等の情報提供及び法令等に 沿った対処の方法を提供するものである。68)愛媛支部の相談員は総数6名の社 会保険労務士であるが,通常は1名で来所及び電話(フリーダイヤル)による 労働相談に対応している。相談を超えてセンタ−による「調整」を求める場合 には,実費事務手数料(申立費用3,000円,期日開催手数料1回5,000円など) が必要となり,有料となる。調整は,センタ−による30時間以上の実務研修 を修了した経験豊富な社会保険労務士の調整委員2名により,労使に中立的な 立場で行われる。当初相談を受けた相談員は,原則として,その事案について 調整委員にはならないものとされている。相談等は,伊予郡砥部町にある愛媛 支部所在地で行われるが,毎月1回,日を決めての相談会が,松山市(10時 から12時)と新居浜市(13時30分から16時)で行われている。会費,賛助 会費,セミナー等の参加費を運営資金としている。周知・広報のために,地元 紙や地域の情報誌に積極的に広告を載せている。 愛媛支部が個別労使紛争処理サービスの提供を開始したのは,2003年6月 からであり,その実績は,2003年度は,受付件数29件(労から28,使から1) で処理件数は26件,2004年度は,受付件数17件(労から15,使から2)で 処理件数は11件,2005年度は,受付件数15件(労から14,使から1)で処 理件数は13件である。電話を受けた件数が「受付件数」であり,その内容が 労働相談に該当するものとして処理された件数が「処理件数」である。なお, 愛媛県における個別的労使紛争処理の現状 223

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これまで労働者側から調整(あっせん)を求めたが不調に終わり,裁判に移行 したものが1件記録されている。 松山市と新居浜市で相談会を行うなど,積極的に活動を行っていると言うこ とができるが,相談件数は伸びていない。ただ,センターを運営する社会保険 労務士が特定社会保険労務士となり,また,センターも,ADR 法により「民 間認証 ADR 機関」となることが予定されているので,2007年4月1日以降 は,より一層積極的な展開が図られ,「労働問題に特化した ADR」としての活 躍を期待することができる。 第3章 愛媛弁護士会法律相談センター 愛媛弁護士会は,松山市の中心部の三番町4丁目にある弁護士会館では,毎 週月・火・水・金曜日の午後1時から4時,西条市神拝にある「JA はなゆい」 では,毎月第3水曜日の午後1時から3時,労働問題も含まれる,あらゆる法 律相談に弁護士1名が有料(30分5,250円)で応じている。愛媛弁護士会の 会員は,2006年7月1日現在の HP69)によれば,総勢101名で,松山支部が 72名,西条支部が12名,今治支部が9名,大洲支部が3名,宇和島支部が5 名となっている。法律相談は1990年から実施しているが,2006年7月1日現 在の HP で公開されている2001年度の法律相談は1,469件であり,そのうち, 確実に労働相談と思われるものは,「給料・退職金(労働)」21件と「解雇無 効・地位保全」9件の合計で30件(全体の2%)であり,ほかに労働相談も 含まれる可能性のある「損害賠償請求」97件や「慰謝料請求」40件もあるが, 労働相談とみることのできるものは,多くはないようである。 なお,愛媛弁護士会は,松山市の弁護士会館内に,民事上の紛争を解決する サービスを有料で提供する「紛争解決センター」を,四国の弁護士会では初め て,2006年夏に開設する予定である。民事上の紛争であれば,セクハラや賃 金不払い,解雇をめぐる紛争もその対象となり,労働事件の処理にも関わるこ とになる。70)「紛争解決センター」では,法律相談を受けた弁護士が手続き利 224 松山大学論集 第18巻 第4号

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用の適否を判断し,同弁護士か相談者が申し立てを行い,それを受けて別の弁 護士が「調停人」となり,紛争当事者双方から事情を聴くなど3回程度の期日 を行い,約2か月程度で和解案を提示するなどして,和解による解決をめざす ことになる。申し立て手数料は2万円(税別)で,紛争解決の場合には別途「成 立手数料」が必要となる。71) 第4章 愛媛県司法書士総合相談センター 愛媛県司法書士総合相談センターは,愛媛県司法書士会が運営する無料の法 律相談窓口である。72)毎月第2水曜日の13時から19時まで,JR 松山駅から徒 歩15分程度の松山市南江戸1丁目にある愛媛県司法書士会の会館におい て,4名の担当司法書士(総勢100名)が,事前予約に基づく面談による1回 30分程度の相談に応じている。電話による相談には応じていない。愛媛県司 法書士会の会員は,2006年4月1日現在,個人会員251名(全国で18,060 名),法人会員1法人(同157法人)となっている。うち,認定司法書士は108 名である。現在の名称は,日本司法支援センター(法テラス)のスタートに合 わせて,「司法書士ふれあいセンター」から変更したものである。 「法律無料相談」は,1999年から行われており,その実績は,1999年度が 73件,2000年 度 が165件,2001年 度 が175件,2002年 度 が394件,2003年 度が349件,2004年度が335件,2005年度が281件となっている。なお,こ の「法律無料相談」のほかに,毎年10月の「法の日」にも無料相談が行われ ており,その実績は,2004年が202件,2005年は182件である。これらの相 談の中にどの程度の労働問題が含まれているかは明らかではない。

お わ り に

労使紛争処理を行う諸制度が紛争解決のために有効に機能するためには,各 制度を運用している機関等が相互に連携・協力を図ることが重要であることは 愛媛県における個別的労使紛争処理の現状 225

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繰り返し述べられてきたが,73)Ⅲの第3章の5で述べたように「個別労働紛争 解決制度関係機関連絡協議会」も行われており,また,日本司法支援センター (法テラス)の情報提供業務の開始を契機として,労使紛争処理に関わる機関 等が,より一層緊密な連携・協力関係を結ぶことも期待される。74)加えて,「個 別労働紛争解決制度関係機関連絡協議会」に,さらに多くの制度の担当者等が 参加し,情報や率直な意見の交換を活発に行うようになれば,労使紛争処理制 度における「前向きの制度間競争」75)も進化し,愛媛県における労使紛争処理 レベルも一層高まり,利用者に提供されるサービスも向上することになる。東 京都や大阪府よりも,小規模の組織で労使紛争処理が行われる愛媛県のような 地域の方が,密接な連携・協力関係の構築は容易であろうということをまず指 摘しておきたい。 次に,愛媛県における個別的労使紛争制度を全体としてみた場合には,全国 レベルでは現在最も機能していると言うことのできる都道府県労働局の制 度76)が,愛媛県でも最も大きな処理実績を上げているが,司法型の制度は, 労働審判制度の普及,浸透により,その役割を増大させることが見込まれるも のの,これまでの実績は意外にも大きくはないこと,また,行政型の制度とし ての松山労働条件相談センターの労働相談や,民間型の制度としての愛媛県社 会保険労務士会総合労働相談所,NPO 法人個別労使紛争処理センター愛媛支 部の存在が,同規模の自治体よりも愛媛県における紛争処理レベルを高めてい ると評価することができる,ということを指摘することができる。 制度を支える専門的人材77)という視点で捉えると,愛媛県においては,弁 護士や司法書士が労使紛争に関わる場面はあまり多くは見られない。弁護士に ついては,民事訴訟や労働審判の代理人として,あるいは労働委員会の公益委 員(2名)や労働局の紛争調整委員会の委員(3名)を務める中で,労働事件 に密に取り組むこともあるが,その実数は多くはない。これに対して,社会保 険労務士は,把握できている限りにおいても,愛媛労働局の総合労働相談員(6 名)や松山労働条件相談センターのアドバイザー(12名),21世紀職業財団愛 226 松山大学論集 第18巻 第4号

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媛支部の雇用管理アドバイザー(1名),愛媛県労働委員会の公益委員(1名), 簡易裁判所の民事調停委員(5名),愛媛県社会保険労務士会総合労働相談所 相談員(29名),NPO 法人個別労使紛争処理センター愛媛支部相談員(6名) と,様々な制度で多くの人材が多くの労使紛争に関わっている。こういったこ とが,他の都道府県には見られない特異な状況か否かは明らかではないが,愛 媛県では,社会保険労務士の資質が,個別的労使紛争処理のレベルを大きく左 右すると言っても過言ではない状況ができ上がっているということを,最後に 指摘しておくことにする。 1)愛媛県経済労働部管理局労政雇用課編「平成17年労働組合基礎調査の結果概況につい て」愛媛労働2006年1月号2頁 2)本稿で検討を行うための諸制度の選択にあたり,小田敬美監修松山大学法学部民事訴訟 法ゼミナール編(編集代表:永沼美香・金子吏香)『えひめ ADR ガイド−地域における裁 判外紛争処理の現状と課題−』(松山大学演習共同研究等報告書第32号,2005)を参考に した 3)ごく少数の集団的労使紛争も含まれるが,その大部分は個別的労使紛争であろう。山川 隆一「労働紛争解決システムの新展開と紛争解決のあり方」季刊労働法205号(2004)7頁 4)「平成16年度労働関係民事・行政事件の概況」法曹時報57巻8号(2005)123頁 5)東京や大阪の地方裁判所の労働部については,難波孝一「東京地方裁判所労働部の実情 と課題」NBL824号(2006)22頁及び川畑正文「大阪地方裁判所労働部の実情と課題」NBL 832号(2006)46頁参照。「裁判官の労働事件に対する専門性について不足を感じている」 と述べる使用者側弁護士もある。石嵜信憲『労働審判法−使用者側代理人から見た労働審 判制度』(労働新聞社,2006)19頁 6)2005年2月5日朝刊4面 7)2005年3月11日朝刊4面,2005年3月10日朝刊4面 8)2005年5月27日朝刊4面 9)2005年7月6日朝刊4面 10)2006年1月25日朝刊4面,2005年12月20日朝刊4面 11)2006年3月10日朝刊4面 12)2006年4月22日朝刊4面,2005年6月7日朝刊4面,2005年4月21日朝刊4面 13)2006年5月27日朝刊4面,2006年4月25日朝刊4面 14)労働審判制度に関して詳しくは,鴨田哲郎・君和田伸仁・棗一郎『労働審判制度−その 愛媛県における個別的労使紛争処理の現状 227

参照

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