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ベクトル電子常磁性共鳴法によるウシ血清アルブミン溶液およびゲル状態におけるSH基微環境の解析

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Academic year: 2021

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Title

ベクトル電子常磁性共鳴法によるウシ血清アルブミン溶液

およびゲル状態におけるSH基微環境の解析( 内容の要旨

(Summary) )

Author(s)

林, 知也

Report No.(Doctoral

Degree)

博士(医学)甲 第332号

Issue Date

1997-03-25

Type

博士論文

Version

URL

http://hdl.handle.net/20.500.12099/14798

※この資料の著作権は、各資料の著者・学協会・出版社等に帰属します。

(2)

氏名 (本籍) 学位の種類 学位授与番号 学位授与日付 学位授与の要件 学位論文題目 審 査 委 員

知 也(長野県) 博 士(医学) 甲第 332

平成 9 年 3 月 25 日

学位規則第4条第1項該当

ベクトル電子常磁性共鳴法によるウシ血清アルブミン溶液およぴゲル状態に

おけるSH基微環境の解析 (主査)教授 恵 良 聖 一 (副査)教授 岡 野

教授

一 論 文 内 容 の 要 旨 血清アルブミンは生体内の主要なタンパク質の一つであり.その分子構造の特徴の一つとして,N末端から34 番目の残基にフリーなSH基をただ一つだけ持っていることが挙げられる。このSH基は深さが約10Aのアルブミ ン分子表面の分子クレバス(分子の裂け目)内に存在し,いくつかの残基によって保護されていることが,現在 明らかにされている。しかし.SH基自身もしくはSⅢ基に結合したガンドの回転運動がどの程度束縛されている

かは明らかではない。、市販のウシ血清アルブミン(bovine serum albumin.BSA)のフラクションⅤには.微

量のタンパク分解酵素が含まれており,その酵素によってBSA(pH3.8,F型)はBSA●と呼ばれる構造に変化 する。さらにこのBSA●は,垂水中においてpD4.0(F型)かつ7%以上のタンパク濃度で,BSA.ゲルと呼ばれ

る透明なゲルになる(BSAの溶液→ゲル変換)ことが見いだされている。しかし,BSA●ゲル自身の詳細な構造 や側鎖の分子運動についてはほとんど知られていない。

そのような分子の徽環境を測定するための有効な手段の一つとして,スピンラベル剤を用いた電子常磁性共鳴 (electron paramagnetic resonance,EPR)法が挙げられる。アルブミンのSH基のように分子運動がかなり制

限されている場合.通常のEPR(第一次高調波EPR)法では測定限界を越えてしまい,正確な分子運動を測定 できない可能性がある。したがって本研究では,遅い回転運動の測定が可能であるベクトルEPR法と第一次高 調波EPR法を用いて,SH基をマレイミドでスピンラベルしたBSA溶液のN型(pH5.7,軽水),BSA溶液のF型 (pD4.1.重水)およびBSA●ゲル(重水)におけるSH基近傍の微環境について比較検討した。さらに,BSA● のゲル化における分子クレバス内でのスピンラベルの分子運動の変化も追跡した。 材料及び方法 1.脱脂BSA溶液(N型,軽水)の作製 結晶BSA(Armour杜)を活性炭処理法により脱脂した後0.20MKCl中でスピンラベル剤である3-maleimido-proxyl(Aldrich社)を用いて,4℃で48時間反応させることにより,SH基と共有結合させた。その後透析もし くはゲル濾過により余分なスピンラベル剤を除去し,測定用試料とした。EPR測定時の誘電損失を防ぐために. 試料をキャビラリー(¢=0.5mm)に封入した。 2.BSA溶液(F型,重水)とBSA●ゲルの作製 結晶BSA(Sigma社)に,0.20MKCl中で上記のスピンラベル剤を加え.その溶液を4℃で48時間反応させ た乱 蒸留水での透析を2週間行った。その後.限外濾過を行い,凍結乾燥した。その試料を10%のタンパク濃 度で垂水中に溶かし,pD4.1に調整後.乾熱滅菌したキャピラリー(¢=0.5mm)に封入した。ゲル化させる ために,そのキャピラリーを35±0.3℃で2週間以上静置した。静置前のサンプルをBSA溶液(F型)とし,2週 間静置後のサンプルをBSA●ゲルとして比較を行った。 3.測定方法 ベクトルEPR測定のために,EPR装置(日本電子データム比JES-FElX)にロックインアップ(NF回路設 計ブロック杜.5610)およびパーソナルコンピュータ,(E]本電気礼 PC-9801DA)を組み込んだシステムを 構築した。第一次高調波EPR測定は,正位相(Vl)のスペクトルを測定した。ベクトルEPR測定は.シグナル

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ー21-が飽和するマイクロ波強度で,第二次高調波(200kHz)で位相検波し,正位相(V2)と位相遅れ(V2′)の二 っのスペクトルを測定した。第一次高調波EPRでの解析は,スピンラベルのオーダーパラメーター(S),分子 クレバス内での回転軸に対するスピンラベルの主軸の傾き(γ),遅い分子運動の解析方法より求めたスピンラ ベルの回転相関時問(TR)および速い分子運動の解析方法より求めたrRを指標とした。ベクトルEPRでの解析 は,rRに関係するスペクトルの積分値(♪を指標とした。またV2′ピーク比(L′/L,H′/H)から,キャリ ブレーション・カープを用いてTRを求めた。 結 果 第一次高調波EPR(Vl)およびベクトルEPR(V2とV2′)によるスペクトルには,スピンラベルの回転状態 が明らかに異なる2種類のシグナルが認められた。一方は遅い回転運動を示すものでt 他方は速い回転運動を示 すものであった。BSA溶液(N型)での遅い回転運動を示すスピンラベルのTR値は,Vlスペクトルによると1.1 ×10 8秒,V2′スペクトルのL′/LとH′/Hより求めた値はそれぞれ2.3×10 6秒と2.0×10【6秒であった。Sとγ の値はそれぞれ0.85と180であった。BSA●のゲル化によるJ値の経時的変化はt 35±0.3℃に静置後3日目まで は急激な増加を示したが,4日目以降はほぼプラトーになった。V2′ スペクトルのL′/LとH′/Hから求めた遅 い回転運動を示すスピンラベルのTR値は.BSA溶液(F型)でほそれぞれ1・8×10 6秒と4・5×10 ¢秒であり. BSA+ゲルではそれぞれ1.0×10 5秒と1.5×10ヤ抄であった。Vlスペクトルから求めたBSA溶液(F型)とBSA. ゲルでの速い回転運動を示すスピンラベルのTR値は.それぞれ1.2×10 9秒と1.1×10 9秒であった。Sとγの値 は,BSA溶液(F型)とBSA●ゲルともに0.85と180となり.変化を示さなかった。 考 察 VlおよびV2とV2′スペクトルでみられた2種類のシグナルは.スピンラベルが2つの異なった環境に存在して いることを示している。遅い回転運動を示すシグナルは,SH基に結合し分子クレバスによって回転運動が制限 されたスピンラベルに由来するものであると考えられ,速い回転運動を示すシグナルは,おそらくBSA分子表 面のリジン残基に結合したスピンラベルに由来するものであろうと考えられた。SH基に結合したスピンラベル のTR,Sおよびγの値から,スピンラベルは回転軸から180の角度でかなり異方的な回転運動を行っており,い くつかの残基によって回転運動をかなり制限されていることが明らかにされた。 J値によるBSA●のゲル化の経時的変化の結果から.35±0.3℃に静置後3日日頃までにBSA溶液(F型)がほ ぼゲル化することが示唆され,またBSA●の生成とそのゲル化は35±0.3℃ではほとんど同時期であることが示 唆された。BSA溶液(F型)とBSA●ゲルでのSH基に結合したスピンラベルのTR,Sおよびγの値とBSA分子表 面のリジン残基に結合したスピンラベルのrR値とから,SH基に結合したスピンラベルの回転運動の速度はゲル・ ネットワークの形成によってさらに遅くなったが,SH基が存在する分子クレパスの構造および分子表面のリジ ン残基の運動性はゲル化によってはとんど変化していないことが示唆された。球状タンパク質ゲルは.タンパク 質分子のランダムな巨大凝集体によるものと,"Stringofbeads"状ポリマーの集合体によるものとに大別さ れる。BSA■ゲルが透明なゲルであるということと,リジン残基の運動性と分子クレバスの構造がはとんど変化 していないことから,BSA●ゲルは"string ofbeads"状ポリマーの集合体であろうと考えられた。 論文審査の結果の要旨 申請者 林知也は,血清アルブミンの重要な生理機能を司るフリーのSIl基にスピンラベル剤を結合させ.遅 い時間領域での分子運動の測定に優れているベクトルEPR法を用いて,そのSH基の微環境変化を定量的に解析 した。その結果,BSAの溶液→ゲル変換に伴ってSH基のTRは非常に遅くなったが,それに反して,SH基が存 在している分子クレバスの構造にはほとんど変化が認められないことを明らかにした。これらの新知見は.分子 生理学の進歩に少なからず寄与するものと認める。 [主論文公表誌] ベクトル電子常磁性共鳴法によるウシ血清アルブミン溶液およびゲル状態におけるSH基微環境の解析 岐阜大医紀 45(1):42∼53,1997

参照

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