Title
オンシツコナジラミとタバココナジラミの種間関係とタバ
ココナジラミのバイオタイプ変遷に関する生態学的研究( 内
容と審査の要旨(Summary) )
Author(s)
杖田, 浩二
Report No.(Doctoral
Degree)
博士(農学) 乙第150号
Issue Date
2017-09-22
Type
博士論文
Version
ETD
URL
http://hdl.handle.net/20.500.12099/73140
※この資料の著作権は、各資料の著者・学協会・出版社等に帰属します。[2] 氏 名(本(国)籍) 杖田 浩二(大阪府) 学 位 の 種 類 博士(農学) 学 位 記 番 号 農博乙第150号 学 位 授 与 年 月 日 平成29年9月22日 学 位 論 文 題 目 オンシツコナジラミとタバココナジラミの種間関係 とタバココナジラミのバイオタイプ変遷に関する生 態学的研究 審 査 委 員 会 主査 岐阜大学 教 授 土 田 浩 治 副査 岐阜大学 教 授 川 窪 伸 光 副査 静岡大学 教 授 澤 田 均 副査 静岡大学 准教授 笠 井 敦
論 文 の 内 容 の 要 旨
オンシツコナジラミ Trialeurodes vaporariprum とタバココナジラミ Bemisia tabaciは、世界中に分布する重要害虫である。本論文では、これら2種間の生態的差 異と種間相互作用について検討した。また、野外で観察されるタバココナジラミのバ イオタイプがB から Q に変遷する現象の原因を解明するため、室内実験を行って検討 した。 温室内のトマトでは、オンシツコナジラミの個体数が春期~夏期にかけて、タバコ コナジラミは夏期~秋期にかけて多い傾向が認められた。オンシツコナジラミ成虫は 上位葉に、タバココナジラミ成虫は中位葉に多い傾向が認められた。飼育実験の結果、 オンシツコナジラミの羽化率は混在条件下でタバココナジラミより高かった。内的自 然増加率は、オンシツコナジラミは 20℃で、タバココナジラミは 30℃で他種よりも 高かった。異なる葉位の小葉を用いた選択試験では、オンシツコナジラミは上位葉に、 タバココナジラミは中位葉に多く定位した。同一葉位の小葉を用いた非選択試験では、 オンシツコナジラミの産卵数は上位葉で多かったが、タバココナジラミでは葉位間で 差がなかった。Y 字型オルファクトメータ試験では、タバココナジラミは中位葉に多 く誘引された。以上のことから、両種コナジラミの個体数が多い時期の差は、内的自 然増加率が高い温度の種間差によると考えられた。タバココナジラミ成虫の中位葉へ の定位には、葉から放出される揮発性成分を検知する機構が関与すると示唆された。 3種の植物を用いて、タバココナジラミバイオタイプB とバイオタイプ Q を飼育 した結果、トマトとキュウリでは両バイオタイプが発育を完了した。甘長とうがらし では、Q だけが発育を完了した。両バイオタイプの既交尾雌成虫を混在または単独条 件で放飼した結果、混在条件下におけるQ の性比は単独条件下より高かったが、B
では差がなかった。異なる殺虫剤を植穴処理したトマトに、両バイオタイプの成虫を 同比率で放飼し、寄生虫数とB が占める比率(B 比率)の推移を調査した。B によ り高い効果を示すイミダクロプリドを処理した区では、B 比率が低く推移した。一 方、両バイオタイプに同様の効果を示すクロラントラニリプロールを処理した区で は、無処理と同様にB 比率が高く推移した。9 種の殺虫剤に対する両バイオタイプの 死虫率を調査した結果、イミダクロプリドを含む4 剤は、Q よりも B により高い殺 虫効果を示した。以上のことから、バイオタイプの変遷現象には両バイオタイプ間の 増殖率の差や両種間の相互関係の影響は比較的少なく、バイオタイプB に効果が高 い殺虫剤の使用の影響が大きいと考えられた。また、殺虫剤使用などの人為的な影響 がない限り、内的自然増加率が高く繁殖干渉を及ぼすバイオタイプB が個体数の上 で優占的になると考えられた。
審 査 結 果 の 要 旨
オンシツコナジラミ Trialeurodes vaporariprum とタバココナジラミ Bemisia
tabaciは、世界中に広く分布する農業の重要害虫である。本稿では、コナジラミの効 果的な防除に寄与するため、2 つの事象について検討した。はじめに、両種が同所発生 するトマトを用いて、オンシツコナジラミとタバココナジラミの生態的差異と種間相 互作用について検討した。次に、個体数が多く優占的なタバココナジラミのバイオタ イプが、バイオタイプB からバイオタイプ Q に変遷する現象の原因を解明するため、 繁殖力の差、両バイオタイプ間の繁殖干渉、殺虫剤使用が与える影響について検討し た。 1. オンシツコナジラミとタバココナジラミの種間関係 温室内のトマトにおいて、相対的に異なる葉位ごとにオンシツコナジラミとタバココ ナジラミの個体数を調査した結果、オンシツコナジラミの個体数は春期~夏期にかけ て、タバココナジラミは夏期~秋期にかけて多い傾向が認められた。オンシツコナジ ラミ成虫は上位葉に、タバココナジラミ成虫は中位葉に多い傾向が認められた。 コナジラミ成虫の株内分布の差を解析したところ、春期は2 分の 2 の比較で正の相互 作用が、秋期は負または中立の相互作用が示された。異なる2 温度で両種成虫を単独 または混在させて放飼・飼育した結果、オンシツコナジラミの羽化率は混在条件下で 他種より高かった。内的自然増加率は、オンシツコナジラミは20℃で、タバココナジ ラミは30℃で他種より高かった。異なる葉位の小葉を用いた選択試験では、オンシツ コナジラミは上位葉に、タバココナジラミは中位葉に多く定位した。同一葉位の小葉 を用いた非選択試験では、オンシツコナジラミの産卵数は上位葉で多かった。上位葉 と中位葉を誘引源としたY 字型オルファクトメータ試験では、タバココナジラミは中 位葉に多く誘引された。以上のことから、両種コナジラミの個体数が多い時期の差は、 内的自然増加率が高い温度の種間差によると考えられた。タバココナジラミ成虫の中 位葉への定位には、葉から放出される揮発性成分を検知する機構が関与すると示唆さ
れた。 2. タバココナジラミの優占バイオタイプが変遷する現象に影響する要因 3 種の植物を用いて、タバココナジラミバイオタイプ B とバイオタイプ Q を飼育し た結果、トマトとキュウリでは両バイオタイプが発育を完了した。甘長とうがらしで は、Q だけが発育を完了した。トマトとキュウリにおける B の内的自然増加率は、Q より高かった。両バイオタイプの既交尾雌成虫を混在または単独条件で放飼し、子孫 を飼育した結果、混在条件下におけるQ の性比は単独条件下より高かったが、B の では差がなかった。異なる殺虫剤を植穴処理した結果、イミダクロプリドを処理した 区では、B 比率が低く推移した。一方、クロラントラニリプロールを処理した区で は、無処理と同様にB 比率が高く推移した。9 種の殺虫剤に対する両バイオタイプの 死虫率を調査した結果、イミダクロプリドを含む4 剤は、Q よりも B により高い殺 虫効果を示した。以上のことから、バイオタイプの変遷現象には両バイオタイプ間の 増殖率の差や両種間の相互関係の影響は比較的少なく、バイオタイプB により効果 が高い殺虫剤の使用の影響が大きいと考えられた。また、殺虫剤使用などの人為的な 影響がない限り、内的自然増加率が高く繁殖干渉を及ぼすバイオタイプB が個体数 の上で優占的になると考えられた。 以上について,審査委員全員一致で本論文が岐阜大学大学院連合農学研究科の 学位論文として十分価値あるものと認めた。 基礎となる学術論文
1. Tsueda, H. and K. Tsuchida. 1998. Differences in spatial distribution and life history parameters of two sympatric whiteflies, the greenhouse whitefly (Trialeurodes vaporariorum Westwood) and the silverleaf whitefly (Bemisia argentifolii Bellows & Perring), under greenhouse and laborator conditions. Applied Entomology and Zoology 33:379-383.
2. Tsueda, H. and K. Tsuchida. 2011. Reproductive differences between Q and B whiteflies, Bemisia
tabaci, on three host plants and negative interactions in mixed cohorts. Entomologia
Experimentalis et Applicata 141:197-207.
3. Tsueda, H., T. Tsuduki, and K. Tsuchida. 2014. Factors that affect the selection of tomato leaflets by two whiteflies, Trialeurodes vaporariorum and Bemisia tabaci (Homoptera: Aleyrodidae). Applied Entomology and Zoology 49:561-570.
4. 杖田浩二・妙楽崇. 殺虫剤の土壌処理がタバココナジラミ(カメムシ目:コナジラミ
科)バイオタイプB および Q の個体群比率に与える影響. 2015. 日本応用動物昆虫学会
誌 59: 133-137.
既発表学術論文
1. 田口義弘・百町満朗・杖田浩二・山根太. 2003. Bacillus subtilis IK-1080 のマルハナバチへ
2. 杖田浩二・田口義弘・勝山直樹. 2007. タバココナジラミバイオタイプ B の致死高温度お よび太陽熱を利用した施設密閉処理の防除効果について. 日本応用動物昆虫学会誌 51: 197-204.
3. 杖田浩二. 2014. フジコナカイガラムシ性フェロモンの2種寄生蜂に対する誘引性. 日本
応用動物昆虫学会誌. 58: 147-152.
4. Zidon, R., H. Tsueda, E. Morin and S. Morin. 2016. Projecting pest population dynamics under global warming: the combined effect of inter- and intra- annual variations. Ecological
Applications 26: 1198-1210.
5. 新井朋徳・杖田浩二・奈良井祐隆・澤村信生・外山晶敏・土田聡. 2016.‘富有’の満期
日およびフェロモントラップを利用したカキノヘタムシガ(チョウ目:ニセマイコガ