バスケットボール授業におけるスキル学習と自己評価に関する研究
教科・領域教育専攻 生活・健康系コース(保健体育) 真 鍋 昇 司I
はじめに 中学校では教師主導の種目設定の授業が急激 に減少し選択制の授業が導入されてきた。その 結果,生徒は自分の好む種目を選択することで 興味,関心や自発性を伸ばし,主体的にそして 楽しく運動活動に取り組んで、いるようにうかが われる。しかし,実際にそのような種目選択や 運動技術の学習によって基礎的な動きや基本的 な運動スキルが習得できるかどうかは疑問であ る。なぜなら,自分の得意な種目を選択するこ とによって,生徒の関心・意欲は高まるかもし れないが学習過程において基本的な動作や運動 スキルの習得をみると,生徒聞の能力差がます ます広がっているのが現状であるO 本研究では中学校1年生のバスケットボール 授業を対象として,生徒が運動スキルの習得過 程において,動作遂行の結果やスキル習得のレ ベルをどのように評価したり,意識しているか, また目標達成のためにどのような手続き的な知 識を使用しているかなどについて明らかにする ことを目的とする。 E研究方法 1 対象者 中学校1年生男子 2クラス (34名) 2 実験期間 2002年 1月'""'-'3月 (3ヶ月間) 3 実験の手続き 1 )学習過程の構成 学習前スキルテスト→学習 (8回)→学習後 スキルテスト,さらに学習終了 3週間後のスキ ルテストで構成された。 (1)単元の行動目標 学習者は対応事態において,パス→ドリブル →シュート等の系列的な動きやプレイができる ようになるO (2)教授一学習計画の概要 教授一学習計画は主に目標,運動課題および 指導教官 坂 本 和 丈 教 授 学習活動で構成されている。 2)スキルテストの実施 スキルテストは系列スキルテスト及び対応事 態でのスキルテストをそれぞれ事前・事後・最 終の 3回実施した。 (1)系列スキルテスト 学習者は,パス, ドリブル,ランニング,シ ュートなどの異なる運動技術(要素)をスムー ズに結合して,できる限り速くシュートまでの 系列行動を遂行する。 (2)対応事態 (3対3)でのスキルテスト 学習者は 3対 3の場面から 1 : 0の場面を つくってシュートを行うO 3)方略の調査 4) 自己評価の実施 E 結果と考察 1 系列的行動における課題遂行時間とシュー ト確率について 課題遂行時間の平均が 事前では 17.7秒, 事後は 16.9秒,最終は 16.9秒であった。この ことから,遂行時間の全体平均が事前→最終に かけて短縮した結果から,個々の運動スキルを 個別に学習するよりも,運動スキルの系列的な つながりを意識した学習を行う方が効果的であ ることが明らかである。また シュート確率の 平均をみると,事前では, 8.7%,事後が 27.3 %,最終が 23.7%であった。このことから, 学習初期の段階においては,学習者は異なる運 動技術を個別動作として捉えていたが,学習過 程が進むに従って,個々の動作から 2'""'-'3つの 動作結合へ意識が向けられ 運動要素が比較的 うまく系列化(要素の結合)されていたものと 考えられる。 2 系列行動における運動要素の結合について 運動要素の結合部分に焦点をあて,事前→最-442-終にかけての結果や遂行時間との関係からみて みると,教授一学習活動が8時間という短い学 習活動であることから,短時間で個々の運動ス キルが上達したとは考えられない。したがって, 異なる運動要素を系列的に学習することによっ て,個々の動作が一連の系列行動として捉えら れるようになり,系列全体が学習過程において 秩序化されたものと考えられるO 3 対応事態 (3対3)における相互関係の成 立について 事前→最終にかけて有効な組織的な行動 (3 者関係の成立)の増加が認められた。これは, 教 授 - 学 習 過 程 の 目 標 が け 対Oをつくってシ ュートを行うことができる」を各学習時間の目 標として設定したことから,学習者がゲームの 中で 1対 O場面のシュートチャンスをつくる ためにはどのようにすればよし、かを絶えず意識 し,そのことがゲームを有利に運ぶ有効な手段 であることを理解できるようになったと考えら れるO 4 対応事態 (3対3) におけるシュート場面 の出現頻数とシュート確率について 出現頻数では,事前が 33.5%,事後23.3%, 最終 68.7%あり,一方シュート確率は,事前 が 15.2%,事後23.2%,最終28.3%であった。 これらの結果から,出現頻数に対してのシュー ト確率が低かったことが分かるO これは1対 O 場 面 を 安 定 し て 作 り 出 す こ と が で き な か っ た り,防御されていたり,無理な体勢でシュート を打っていることが考えられるO また 1対 O のシュート場面の出現率が事前が 17.2%,事 後 28.3%,最終 30.3%であり 1対 Oのシュ ート場面が多いほどシュート成功率が高くなっ ていることが明らかであるO 5 スキル習得過程における学習者の自己評価 について 自己評価に関する認知的内容では,学習初期 の段階では見たり,聞いたりする感覚・知覚レ ベルの使用頻度が高いがj学習過程が進むにし たがって運動系列の秩序化やパターン化が形成 され,スムーズにスキルが遂行されるようにな ると考えられるO また,パフォーマンスの内容 では,学習初期において,個々の動作と自分の 動作を比較することが多くみられたが,スキル が上達するにしたがって 2つあるいは3つの 動作結合を意識できるようになっていることが 明らかとなった。 次に,上位グループ。と下位グループの比較で は,上位グループ。は感覚・知覚レベルが事前で、 46.8%,事後で 43.1%,最終では 22.9010で学 習が進むに従って減少しているO 一方,中枢レ ベルは,事前で 40.4%,事後で 52.9%,最終 では 60.4%で増加しているO 学習初期では感 覚・知覚レベルの使用傾向が高いが,学習が進 むに従って中枢レベルの使用頻度が高くなって いた。下位グループでは,感覚・知覚レベルの 使用傾向が強く,中枢レベルで、は顕著な変化は 認められなかった。 6 学習過程における方略選択の変化について 土 位 方 略 で は