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為替相場変動と内外価格差*
有 馬
敏 貝U 1.はじめに 1971年8月15日の金とドルの交換停止(ニクソン・ショック)以来,円・ド ル為替相場はスミソニアン’合意による1ドル=308円の一時的な釘付けの期間 はあったものの実質的な変動相場制に移行したといえる。 長期的観点からすれば,円は持続的に強くなってきたわけではなく,循環的 に階段状に大きな水準改訂を行って今日に至っている。すなわち第1図のよう 第1図 円・ドルレートの推移(インター (円/ドル) バンク中心相場,月中平均) 90 110 130 150 170 190 210 230 250 270 290 310 330 350 360 7172737475767778798081828384858687888990919293(年) (注)各月のインターバンク中心相場の平均 値で算出。 〈出所〉 『平成5年度経済白書』p.271を修正。 *本研究は伊勢丹奨学会商業経済研究助成による研究成果の一部である,,120 彦根論叢 第283・284号 に①1971年のニクソン・ショック,②1978年のカーター・ショック,③1985年 のプラザ合意,④92年夏らスタートした円高と,約7年毎に繰返し水準改訂が 発生し,今回が第4回目である。 円高はそのたび毎に日本経済に大きな影響を与えてきたが,1985年以降の急 激な円高と今回の1ドル=100円に迫った円高局面では,「内外価格差」問題を 大きくクローズ・アップさせている。内外価格差は一般に日本と外国の物価水 準の差とされているが,日本が世界最大の債権国になったにもかかわらず,消 費者が豊かさを実感できない大きな要因であるといえる。 本稿においては,今回の円高の要因分析とその問題点,内外価格差の概念と, 円相場変動との関係,内外価格差の実態とその原因分析,その解消策について 検討していきたい。 2.第4次円高の要因 1) (1)経常収支黒字と貿易不均衡 為替相=場はキャピタルゲインを得ようとする投機や国内外投資家の証券投資, 政府要人の発言,金利差,インフレ率等々種々の原因により変動するが,今回 の第4次円高の最大の要因は第2図に示されるように,年間1000億ドルを超え る日本の貿易収支黒字と経常収支黒字にあるといえるだろう。しかも1993年度 は両者ともさらに拡大すると予想されている。 これに対しアメリカの貿易収支は93年に再び1000億ドルの赤字に近づきつつ ある。91年は654億ドルの赤字とそれまでの1000億ドル超の赤字よりも急減した ものの,92年は843億ドルの赤字に増大し,貿易収支は悪化傾向にある。その中 でも第3図のようにアメリカの対日貿易赤字は91年以降増加傾向にあり,93年 には550億ドルを超えると予想されている。またアメリカの貿易収支赤字に占め る対日シェアも近年は60%を超えている。 このような日米間の貿易不均衡を背景に,93年2月9日のブレッド・バーグ ステン国際経済研究所所長の京都講演での大幅な円高要求に伴う円の急騰,そ 1) 「経常収支=貿易収支+貿易外収支+移転収支」の関係にある。
10億ドル 350 300 200 100 o 一100 一200 為替相場変動と内外価格差 121 第2図 日本の国際収支(ドル・ベース) 貿易収支 , . 一 ■ , . . ・ . 経常収支 一 . 一 ■ 一 長期資本収支 輸出 ’ ’ ρ ρ . り髄 @、 @噛, ’ら 印 噂 , の 、 ρ , ・ 虚 ・ 、 ’ 、, り 幽 輸入 1970 72 74 76 78 80 82 84 86 88 〈出所〉 日本銀行『国際収支統計月報』。 90 92年 第3図 アメリカの対日貿易赤字 600 億㌦ 500 400 0 1988年 89 90 91 92 93 (注)通関ベース。93年は1月∼4月の実績を年率換算したもの。 〈出所〉 日本銀行『国際収支統計月報』。 貿易赤字額全体に
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対日貿易赤字額 (左目盛) ζ灘 ’A く ノ 、 冤 、 、 A 丼 く ℃ 70唐U0
50 40 の後のEC(欧州共同体),アメリカ財務長官や閣僚,政府高官, OECD(経済 協力開発機構)閣僚委員会等が次々に日本の経常収支黒字批判と,円高誘導発 言を繰返したことによる円相場の上昇,さらに4月16日の日米首脳会談でのク リントン大統領の日米間の貿易不均衡是正策としての円高容認が円相場高値更 新を加速させた。122 彦根論叢 第283・284号 またアメリカのみならずG7各国は円高になっても自国経済にあまり影響が ないと判断し,円高を概ね容認する姿勢を保った。そして8月19日のアメリカ を中心とした協調介入までは,積極的に円高を食い止める対策を講じず,円の 高値更新が続いたのである。 しかし今回の円高を貿易収支黒字や経常収支の黒字のみに求めるのは早計で ある。日本の貿易収支黒字は円ベースではそれほど急増している訳ではない。 円高でドル表示の輸出が一時的に増える「Jカーブ効果」が長引きがちで,ド ルベースの貿易収支黒字が減少しにくくなっている点も十分考慮しなければな らない。また不況による輸入減少も貿易収支黒字を拡大させているといえる。 (2)企業の輸出行動 とはいえ貿易収支黒字をもたらしている企業の輸出行動も看過することはで きない。いったん獲得した海外市場の維持や拡大のため関連企業に無理強いし たり,投下資本への適正利潤を犠牲にするなど,貿易収支黒字は必ずしも十分 な輸出競争力に裏打ちされたものとは言い切れないケースも多いのである。 米欧と同じ条件での競争力ではなく,内外価格差の利益を消費者に十分還元 しないで留保した分や国内販売利益を背景に限界的な輸出を継続し,それらに よる円高圧力でまた経営内容を悪化させるという悪循環では日本経済は早晩破 綻をしてしまう。プラザ合意後の円高局面で発表された「前川リポート」でも 指摘されているように,外需依存から内需への転換は早急に行われなければな らない。このような「産業構造の再生」が各企業の自助努力だけで困難な場合 は,政策が後押ししてでも促進されなければ手遅れとなってしまうのである。 (3)過剰ドル マクロ的な観点からすれば第2図の80年代の長期資本収支の膨大な流出超過 にみられるように,第3次のプラザ合意後の円高局面と今回の円高局面ではか なり長期資本収支の動きに変化が生じている。 80年代も日本の経常収支黒字は問題とされたものの,本邦機関投資家を中心 としてアメリカの国債を始めとする対外証券投資や直接投資などの対外投資に より,経常収支黒字を上回る資本収支の赤字が存在し,総合収支では赤字とな
為替相場変動と内外価格差 123 り,資本が世界に還流していた。したがってドルの需給関係でいえば基本的に はドル余剰の状態にはなく,日本の輸出業者などのドルの供給者と,日本の機 関投資家などのドルの需要者間の一時的不均衡やミスマッチをいかに調整する かが問題であり,行き過ぎた円高の自律反転が為替市場に期待できた。 ところが90年代になると日本の経常収支黒字の拡大に加え総合収支でも大き な黒字となっている。この背景には生保や年金がドル債投資で巨額の為替損失 を抱えていること,対外不動産投資で損失を受けたこと,BIS規制による自己 資本比率向上のための対外融資が委縮したことやバブル崩壊に伴う不良債権の 累積で銀行の体力が低下して資本流出にブレーキがかかり,第4図のように日 米金利差の縮小による資本流出の減少も加わって,世界への資本の還流がうま く作動しなくなり,為替市場の価格調整力が円滑に作動しにくくなったことが あげられる。 このような円の抱える構造的なドル余剰は資本収支黒字化で行き先を失い, ドル需要減少によってドル安(=円高)がさらに促進されたのである。資本収 支が再び大幅な赤字になり,総合収支が均衡するか赤字化するためには,これ 以上円高が進まないという合意が必要となる。そのためには前述した輸出減・ 第4図 日米長期金利の推移 (%) 7.0 6.0 5.0 3.0 2,8 2.6 2.4 2.2 2.0 1.8 米国30年目国債利回り 日本10年物国債利回り(注) 日米長期金利差(米国一日本) 1992:6:1 8 9 10 11 12 2 3 4 5 (注) 日本10年物国債利回りは,東証最長期物利回り。 〈出所〉 『東京銀行月報』1993年8月号,p.78。
124 彦根論叢第283・284号 輸入増をもたらす内需転換による貿易収支の均衡化が図られるべきである。 (4)ERMの動揺 また国際資本取引と為替取引の構造的変化も今回の円高に大きく影響してい る。OECDの調査ではアメリカで年金基金や生保の家計保有金融資産に占める 比率が80年の17.8%から90年の23.5%へ,日本で13.8%から20。8%へ,ドイツ でも19.4%から27.1%へ拡大するなど家計の貯蓄が機関投資家によって運用さ れる割合が高まっている。さらに為替取引・資本市場の自由化,国際決済シス テムの向上,会計や開示基準の国際的統一化傾向を背景に各国の機関投資家の 外国証券への運用比率が高まり,国境を越えた資本取引規模が増大し,それが 為替市場にも大きな影響を与えるようになったのである。 また「集中取引(コンバージェンス・トレーディング)」も最近の特徴であ る。例えばアメリカのグローバル・インカム・ファンドという一種の投資組合 は,最初はドル資金で投資をするが,それをEMS(欧州通貨制度)のERM(為 替相場メカニズム)の最も高金利の通貨(例えばイタリア・リラ)の金融資産 に投資し,これを最も低金利のドイツ・マルクの先物売りと,ドル買いでカバ ーし,結果としてリラとドイツ・マルクの金利差とドルの利回りを得るという 取引を行ってきた。この規模は92年夏には250億ドルから300億ドルに達したと いわれている。 ところが第5図のようにEMSの安定性と将来単一通貨になるという前提で 実績を挙げてきた金融取引が,92年6月のデンマークのマーストリヒト条約批 准国民投票の否決と7月のドイツの公定歩合引上げや8月頃フランスの世論調 査で条約反対派が過半数に達したことから,9月20日のフランスの国民投票に 向けて資金が逆流し,その圧力でEMSの通貨調整とポンド,リラのERMから の離脱が生じた。 このような通貨不安を国際的な投機筋が収益機会としてとらえ,EMS内の 弱い通貨を売り浴びせることにより92年からのヨーロッパ通貨危機が続発した。 その後一時的な安定はあったものの93年夏になって再び大きく動揺し,ERM の変動幅が8月2日より2.25%から15%へ拡大され,事実上ERMの機能は停
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115i:! 100 為替相場変動と内外価格差 125 第5図 欧州為替相場の動向(対ドイツマルク) スペイン・ 伊リラみ録γ
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92/6 7 8 9 10 11 1293/1 2 3 4 5 6 (注) 92年6月1日を100とする指数表示。 〈出所〉 『金融財政事情』1993年6月28日号,p. 28。 止に追い込まれている。 また東西ドイツ統一コストを賄うための資金需要,それに伴うインフレ圧力 がドイツの高金利政策採用を不可避とし,ERMへの圧力となった面も看過で きない。 このようなERMの動揺から投機筋が,資金の避難先としてバブル崩壊によ り割安感の出てきた日本の金融資本市場に投資し,そのための円需要が円高を 促進させ,資本の国際的還流にも影響を与えている。 このように種々の要因が複雑に絡み合って今回の円高は発生したが,その最 も大きな要因は膨大な貿易収支黒字や経常収支の黒字であり,内需拡大策や規 制緩和,市場のより一層の開放,行き過ぎた輸出至上主義の是正等々の諸政策 が必要とされる。また円高のデメリットの面だけを強調するのではなく,円高 差益還元による消費者へのメリット面も充分発揮できるような経済構造への転 換が,早急に必要とされているのである。 3.内外価格差とは (1)内外価格差の概念 内外価格差問題が重要な政策課題として注目されるようになったのは,1985 年9月のプラザ合意以降の急激な円高局面においてであった。内外価格差は通126 彦根論叢 第283・284号 常,日本と欧米との物価の格差,とくに日本の物価が欧米よりも割高であるこ とを示す用語として使われている。 内外価格差の事例として①食料費や住居費,レジャー費といった生計費すな わち物価水準が他の先進国より高い,②牛肉やウイスキー,ブランド品など輸 入できる特定の品目が外国より高すぎる,③日本から輪出されるカメラやフィ ルム,テレビなど特定商品の国内価格が輪出先での価格に比べて高すぎる(と くに円高進行時),④国際航空運賃や国際郵便,国際電話といった国内発の料金 が外国発に比べ高すぎる,⑤電気・ガス料金などの公共料金や家賃のような輸 入できないサービス価格が外国より高い等々が挙げられている。 (2)購買力平価と内外価格差 ①の物価水準の格差比較は個々の財・サービスの価格ではなく,財・サービ スの集合体(バスケット)を作り,そのバスケットにかかわる物価の格差を比 較する方法が使われている。この方式で算定されたのが購買力平価で,一国の 通貨と他国の通貨の換算比率の一種であり,各々の通貨の購買力(購入できる 財やサービスの量)が等価となるように計算して求められる。 例えば生計に必要な一定の量の財・サービスが入った「買物カゴ(マーケッ ト・バスケット)」で考えると,生計費の購買力平価が算出される,「買物カゴ」 の値段が日本で12万円,アメリカでは1000ドルとすれば,1000ドル=12万円, つまり1ドル=120円が生計費の購買力平価となる。 購買力平価は基準年をいつにするか,どのような物価指数を使うかによって 算出結果が異なってくる。第6図はH本とアメリカの経常収支がほぼ均衡して いた1973年を基準年とし,両国の消費者物価,卸売物価,輸出物価を基礎に算 出したものである。現実の為替相場は第6図から消費者物価ベースで算出され た理論値から輸出物価ベースの理論値の間で上下している。 円とドルが購買力平価で交換可能であれば,日本とアメリカの物価水準は同 じであるといえる。しかし実際の円とドルの交換は現実の為替相場で換算され るため,購買力平価と現実の為替相場が異なっている場合,同じ「買物カゴ」 を購入しても日本とアメリカでは支払わなければならない金額が異なってくる。
円/ドル 50 100 150 200 250 300 350 為替相場変動と内外価格差 127 第6図 購買力平価による為替相場 一実際の為替相場 ……… チ費者物価ベース ・卸売物価ベース r・V 一一・・一・一 A出物価ベース 戸._.ノ ♂’層ノ’ .,.ノ .一 / 1XL A・・…一・” .ノ’ .r / l .” ‘ / 内外価格差 ’・一.}・’■一一 1973 74 75 76 77 78 79 80 81 82 83 84 85 86 87 88 89 90 91 92 年 (注)購買力平価によるX年の為替相場。
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(日米の経常収支がほぼ均衝していた73年を基準年とする) 〈出所〉 日本銀行『経済統計月報』『物価統計月報』,米労働省, 米商務省『物価統計』, IMF, “lnternational Financial Statistics.” したがって日本とアメリカでは物価水準が異なり,これが内外価格差というこ とになる。この場合 内外価格差=購買力平価÷現実の為替相場 という関係があるといえる。 しかし物価水準の国際比較では,財・サービスの内容,生活習慣,各々の財 ・サービスの生活の中での位置づけ,税制等々が国毎に異なるため,厳密な推 計は困難iであることに注意しなければならない。 (3)円相場変動と内外価格差 円相場変動と内外価格差の関係についてまず円相場上昇局面から検討しよう。 円高になると内外価格差は自動的に拡大することになる。これは日本国内の物 価が上昇しなくても,外国の物価水準を現実の為替相場で円建てに換算すると, 外国の物価水準が低下するからである。購買力平価が1ドル;120円の時アメリ カで1000ドルの商品は円換算すると12万円であるが,1ドル;100円の円高にな れば1000ドルのアメリカの商品は10万円に低下する。このように両者に物価水128 彦根論叢 第283・284号 準の変化がなくても円高になると,国産品価格が相対的に上昇し,輸入品価格 が相対的に下落するのである。 逆に円安になった場合はどうであろうか。購買力平価がユドル=120円の時の アメリカで1000ドルの商品は円換算すると12万円であるが,1ドル=150円の円 安になれば,1000ドルのアメリカの商品は15万円に上昇する。このように両者 の物価水準の変働がなくても円安になると,国産品価格が相対的に下落し,輸 入品価格が相対的に上昇することになる。 このように購買力平価より現実の為替相場が円安になると,外国との比較で 日本の物価が安くなり,円高になると逆に外国よりも高くなることになる。 4.内外価格差の実態 (1)内外価格差調査の問題点 内外価格差調査にあたっては,①品目ベースの場合,.品質,規格,サービス などの内容が同一の品目を指定するのは困難,②日本のように商品販売時にサ ービスが付加される事が多いときは,同品目でも,価格にサービス料金が含ま れることが多く,日本の方が価格が高くなりがちである,③生鮮食料品や衣料 品は季節的価格変動が大きく比較しにくい,④各国の生活習慣により,同品目 でも効用が異なる,⑤費目ベースの調査では,品目の範囲やウエイトづけをど のように行うかといった問題点がある。その意味で,調査結果は絶対的なもの ではなく,大体のトレンドを示すものと考えるのが妥当である。 (2)OECDの国際物価比較 内外価格差の実態は日本の経済企画庁や通産省,OECD等々から公表されて いる。本稿ではOECDが1985年に続いて90年の加盟国の購買力平価(消費者物 価指数ベース)を“Purchasing Power Parities and Real Expenditures 1990.” で発表しているので,第1表にまとめてみた。これによると1985年当時アメリ カで100円の商品が,日本でも96円と両国とも同水準に近かった(日本国内最終 需要財平均)。これが90年時点では日本の物価水準がアメリカに比較して34%割 高となり,両国に内外価格差が発生している。
為替相場変動と内外価格差 129 第1表 日本の物価水準(OECD調べ,アメリカ=100) 1985年 1990年
日 本国内最終需要財
96 134 個 人 消 費 関 連 91 143 う ち 食 料 品一 一 一一一一 一 一 一 一 一 一 一 一 一 一 一 ■ 一 一一一一一 一 一 一 一 一一一一 一 一一 一一一一一一 一 一一 ゚ 類”蒙…’……一胃”一一’…’一一”一一奄一’ 黶@一 一 一一一 一 一一 一 一 一一 一一一 一 一 一 一 一 一 一一一一一一噌榊ππ一一■ 一一一一一一 一一 一 諱@ 用 車π 旧 一 一一一一一一一一一一一■一 一 一 一 一 一 一 一 一一一一一一一一 一下臼■π冒一一一一一一 一 O 食@ 157
@ 231
(参考)円/ドルレー ト
238.5 144.8 〈出所>OECD, Purchasing Power Parities and Real Expenditures. IMF, International Financial Statistics. このような内外価格差は貿易財よりも非貿易財で発生しやすく,第1表でも 外食では内外価格差が拡大している。また貿易財でも食料品85%,衣類48%, 家電19%の格差がある。 1990年の日本の購買力平価と内外価格差を示したOECDの調査結果は第2 表のとおりである。アメリカと日本の比較では医療・保健以外の全部門で内外 価格差が生じている。これに対しドイツと日本の比較では内外価格差ははそれ ほど大きくなく,衣料・履物,医療・保健等では日本の物価水準が低い。しか し食料・飲料では1.44倍日本の方が高くなっている。 一般的には購買力平価と為替相場は相互に影響しあいながら推移するものと 考えることができ,第6図のように為替相場が円高で推移すると購買力平価も 円高方向に推移している。しかし為替相場変動に比較すると購買力平価変動は 緩やかで,急速な円高局面では内外価格差は拡大し,為替相場が鎮静化するに つれ内外価格差は縮小する傾向にある。 5.内外価格差の要因 内外価格差は多くの要因が複雑に絡みあって形成されているが,その要因と しては次のような諸点を挙げることができる。130 彦根論叢 第283・284号 第2表 OECDによる日本の購買力平価・内外価格比(1990年) 対独 ●
●●●●●●●●●○
○○ ● ● ●○●一 ○○ ○一〇〇 ○● ● ● ● 一 二仏 ●●●●●●●●●●一
○○ ● ● ●○﹂一 ●○ ○一〇●○一●○
●一 ● 較比のと高畠二黒
●●●一●●●●●●○
●一 ● ● ●○●一 ○一 ○一〇 一●●● ● ● ● 対米 ●●●●●●●●●●一
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●一 ● ● ●○●一 ○○ ○●[● 一●● ● ● ● 靴㎝醐繊 溺1 39866328614905344569, 9 , . . ● . . . ,1 1 112 1 11 1 0 4 41 0﹂● .1 0 2 14 に﹂, P1 1 5 ﹃U8 ρU9 ,0 0 OJ 7 4 08 2 0 2, ・ O OO 1 1 1 りD O 3 ﹁00ゾ 2 9臼 OO 曾 曾 ,0 1 1 1 1 47 4. ●1 1 湘1購
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二項出迎 髭男類卵脂菜料料料コ 飲飲穀 ・ 一食レ ノ レ ノ・二品 他∫バ コ コン 製 物のル アルパ肉魚乳油蝉そ非アタ 習物衣履 料費道水 熱O車賃光 物品旦ハ品敷維器用繊事・ 用家用他具事事の家家家そ 品ス薬ピ 一医サ・健費保 ●療療医医 輝輝ス信器運ビ送旦2輸器サ人還送個馬車通 具ス聞育三新 化ヨ 。 茂シ ン誌一ヨェ↓雑リエ ・ク刎レレ本教 出支総質実 (注)他国との比較は,1980年平均為替レートによる換算。 ●:「10%以上日本のほうが高い」 ○:「10%以上日本のほうが安い」 <出所>OECD“Purchasing Power Parities and Real Expenditures 1990”為替相場変動と内外価格差 131 まず第1に既述のように1985年9月から3年間に対ドル相場で約2倍の円高 となったことである。為替相場を通じて比較する場合,日本の物価水準が一定 でも円高が進展すると,外国の物価水準は円表示では下落するため,内外価格 差は急速に拡大したのである。また為替相;場変動が物価へ反映するのにはタイ ムラグがある。円高による輸入物価の下落や輸入品と競合している品目の国内 卸売物価下落を通じて,円高は最終的に消費者物価の引き下げ圧力を生じる。 しかしそれにはかなりの期間を要し,その間,内外価格差が拡大した状況が続 くことになる。 第2の要因として貿易財の場合,内外価格差が一時的に拡大しても活発な市 場競争があれば,製品輸入増加や輸入原材料価格の下落など種々のルートを通 じて市場メカニズムが作用し,理論的には日本の物価水準が下落するにもかか わらず,実際にはあまり下落しなかったことである。これは①日本が島国で全 世界的な激しい競争にさらされず,外国との価格差を維持しやすい環境にあっ たことである。企業間競争が十分採算のとれる協調的競争であったり,大量生 産の観点から外国で日本国内よりも安く販売しても全体として利益が生ずる価 格政策が可能だったことが指摘できる。また②流通系列化やリベート制,建値 制といった日本の商慣行が競争制限的に作用したり,複雑な流通経路が円高差 益を十分に還元するのを妨げたこと,③第3表と第4表に示されるように価格 支持制度や輸入数量制限,参入制限といった各種の公的規制が市場メカニズム を弱めたり,低生産性部門の温存による内外価格差の要因となっている。これ を第7図で検討してみよう。規制のない品目では輸入物価が円高期には大幅に 第3表 価格に関する規制のタイプ 価格支持 麦,大豆,てんさい,さとうきび,加工原料乳,牛肉,豚肉,生糸
ネど
輸入制限 小麦,ミルクなど 参入規制 酒類,大規模小売店舗など 公共料金 電気料金,都市ガス料金,鉄道運賃,バス運賃,タクシー運賃,航 運賃,郵便料金,電報・電話料金,社会保険診療報酬,国立学校 業料,米の政府売渡価格,たばこ小売価格など132 彦根論叢 第283・284号 第4表 我国の輸入数量制限品目 平成4年6月現在(12品目) ・にしん,ぶり,さば,いわし,あじ,さんま,たら,たらの卵(生鮮,冷蔵, 冷凍) ・にしん,ぶり,さば,いわし,あじ,さんま,たら,たらの卵(塩蔵,乾燥, 塩水漬),煮干し ・帆立貝,貝柱,いか(もんごういかを除く)(生鮮,塩蔵等) ・ミルク,クリーム(生鮮) ・ミルク,クリーム(加工) ・病冠(あずき,そらまめ,えんどう等) ・小麦粉,米粉等 ・ひき割りした小麦,ひき割りした米研 ・澱粉,イヌリン ・落花生(搾油用を除く) ・食用海草,こんにゃくいも ・その他の調整食料品(ミルク,海草,米麦等のもの) (備考) 品目分類はCCCN 4桁分類ベース。 〈出所〉『物価レポート’92』 下落し,国産品の国内卸売物価もこれに追随して大きく下落している。輸入品 と競合している国産品が下落した原因は,円高により生産コストが低下しただ けでなく,競争が激化したためといえるだろう。 他方規制のある品目では輸入物価は円高期には大幅に下落しているにもかか わらず,国産品の国内卸売物価は横ばいのままである。このように規制が存在 している場’合,円高の物価低下圧力は国産品価格に十分に波及せず内外価格差 を発生させているといえる。 第3の要因として非貿易財と貿易財の部門間生産性格差の存在を挙げること ができる。一般に非貿易財(サービスを含む)は貿易財とは異なって,内外価 格差が存在しても輸出入等の裁定取引は生じにくく,国際的競争に会いにくい。 非貿易財部門の生産性が貿易財部門よりも低い場合,貿易財部門と同じ水準の 賃金が支払われると,この賃金上昇が非貿易部門の価格に転嫁されやすい。日 本の場合貿易財部門の生産性や生産性の上昇率が,非貿易財部門に比べて極め て高い。このため非貿易財価格が貿易財価格よりも相対的に高くなっている。
為替相場変動と内外価格差 133 第7図 規制品目と非規制品目の価格動向 1 規制品目 (指数〉 105 0 102 5 100.0 97 5 95.0 92.5 90.0 87.5 85.0 82 5 80.0 77 5 75 0 72 5 70 0 2, (指数) 107 5 工050 ・ 102 5 100 0 97 5 95.0 92,5 90.0 87.5 85.e 82.5 80.0 77 5 75.0 72 5
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× \ k、.へ 輸入物価r∼一s\.一・,._一.ノ 、,’、 rt、ノ ロヘ ノ v 昭和60 非規制品目 61 62 63 平成元 2 3 4 (年) N N s N N 国内卸売物価 \、 輸入物価 /、一’ i !s一、 グ・e、 ’げ「 ,’ L. 、 ノ ノ 、〆、 N l x J ve’ 昭和60 61 62 63 平成元 2 3 4 (年〉 (備考)1. 日本銀行の国内卸売物価指数と輸入物価指数で共通に採 用されている78品目をとりあげた。これらの共通品目は, それぞれ国産品と輸入品であるため競合関係にある。 2. これら78品目のうち価格支持,輸入数量制限及び参入規 制が行われている品目を規制品目,それらが行われてい ない品目を非規制品目とした。規制品目は,粉乳,粗糖, たばこ,ウイスキー,ぶどう酒,ブランデー,生糸,小麦, 牛肉,豚肉の!0品目である。 3.規制品目であっても,行政価格の引下げにより国内卸売 物価が低下している品目もある。 〈出所〉経済企画庁『物価レポート’92』p.81。 第8図は日本の輸入物価と国内物価の推移を示したものである。85年第1四半 期を100として図示したものであるが,非貿易財を含んだ消費者物価よりも貿易 財主体の国内卸売物価の方が,消費老物価の中でもサービスより商品の安定化 の度合が強いといえるだろう。 現実の為替相場は,基本的に貿易財物価により決定されるため,非貿易財価 格の内外価格差は拡大することになる。 第4の要因として消費者のブランド志向と輸入総代理店のブランド・イメー ジ維持のための高価格維持政策の存在も見のがせない。134 彦根論叢 0 2 1 0 1 1 0 0 1
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第283・284号 第8図 輸入物価と国内物価の推移繊塵璽磐ひ
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国内卸売物価 輸入物価(円ベース) へ/ 、一一・一一:・;・’へ! III皿IVIIIIIIIVIIIHIIVIKHHVIIIKIIVHImlV(期) L1985」L86」L87」L88」L89」L90」(年) 〈出所〉 経済企画庁『平成5年度経済白書』 p. 173e 第5の要因として日本の高地価が高い地代やテナント料となり,新規参入者 の抑制を通じて市場メカニズムを有効に働かせなくしたり,外食や家賃をはじ めあらゆる分野での内外価格差を拡大させていると考えられる。 第6に制度的側面がある。電気,ガスや鉄道については,地域独占的供給体 制のため競争が働きにくく,内外価格差縮小のため生産性向上に配慮した機動 的料金改定を行う必要があるといえる。 6.内外価格差解消策 真の豊かさを実現するため内外価格差の縮小は日本にとって大きな課題であ る。そのためには政府,企業,消費者それぞれの積極的取組みと総合的対策が 必要である。 (1)内外価格差是正への政府の対策 1989年12月,政府・与党内外価格差対策推進本部が設置され,91年3月まで に4回会合を重ね,その過程で94項目の対策をとりまとめてきた。内外価格差 に対する政府の対策の6本柱は,①内外価格差の実態把握,価格情報の提供, ②流通についての競争条件整備,③輸入促進,生産性向上,④公共料金の適正為替相場変動と内外価格差 135 化,⑤適正な地価の形成,⑥消費者への情報提供等となっていた。 94項目の対策には市場の競争条件整備のため,独占禁止法の改正と雇用強化, 大店法の改正,トラック事業の規制緩和,自主流通米の価格形成の場の創設, さらに牛肉・オレンジの輸入自由化といった輸入数量制限緩和や輸入促進政策 が含まれていた。 経済企画庁が公表した前回の円高差益額は88年第4四半期までで約41.8兆円, 還元額36.6兆円,還元率87.6%となっている。とはいえこれらの諸政策はまだ 徹底したものではなく,内外価格差はいぜんとしてなくなっていない。内外価 格差を縮小するためには発生した円高差益を可及的速やかに消費者に還元する ことが必要となる。今回の第4次円高においては政府のより徹底した内外価格 差解消策が必要である。 (2)内外価格差解消の方法 内外価格差を解消する方法として,まず第1に市場メカニズムがより有効に 働くように競争を促進するため,価格支持政策や輸入数量制限といった公的規 制の緩和や,第一次産業やサービス産業など生産性の低い分野の競争促進など の改善が必要となる。 第2に大店法など店舗の出店等に関する規制の一層の簡素化,適正化,酒類 や医薬品の販売規制や事業規制の緩和,トラック運送業などの料金規制緩和な ど,たとえそれが必要な公的規制であっても必要最小限にとどめ,競争条件を 確保することが必要である。 第3に製品輸入比率を高めることである。第9図は製品輸入比率の推移を示 しているが85年の39%から92年の50%台に上昇している。原材料の輸入比率が 高ければ国内物価形成までに多くの投入コストが加わり,輸入価格低下効果が 減殺されやすい。製品輸入比率増大は輸入物価低下がより直接的に国内物価低 下に結びつきやすいといえる。 第4に流通系列化,返品制,リベート制,建値制といった日本的商慣行につ いても,商取引の公平性・透明性を確保するなど,日本経済の国際化に対応し たものに改めていくことが必要になる。
136 彦根論叢 100% 第283・284号 第9図 製品輸入比率の推移 80% 600/o 40% 200/. ∠製踊入比率 原料 その他 機械機器 。%聯騨熱懲灘…欝羅曝撫撒蚕灘繍燃化学製品 83 84 85 86 87 88 89 90 91 92(年) (備考)1. 日本関税協会「外国貿易概況」により 作成。 2. 「製品」は,化学製品,機械機器,そ の他の計。「原料」は,製品以外の輸 入計。 〈出所〉 「平成5年度経済白書』p.262。 第5に輸入総代理店の独占的販売に対し,競争を促進するため,個人で並行 輸入を行うなどの実践も必要となる。 第6に消費者自らが品質と価格を良く見極めて,ブランドイメージに占われ ない賢い消費行動を行うことが大切であり,政府も適正な価格情報を提供する 体制の整備が必要である。 第7に過度な円高が生じないような内需依存体質への転換と輸入促進のため の規制緩和や市場開放が必要である。 このような諸解消策を通じて内外価格差を極力縮小し,真の豊かさを実感で きる経済環境を整えることが,為替相場変動のメリットを消費者に還元するた めの大きな政策課題であるといえるだろう。