〈研究ノート〉
小売食料品店の広告・販売慣行の規制
取引規制規則の修正内 田 耕 作
1 はじめに 1971年5月13日に取引規制規則として制定された「小売食料品店の広告・販 売慣行」(Retail Food Store Advertising and Marketing Practices)は,お 1) よそ次のことをその実質的な内容とするものであった。 すなわち,小売食料品店が,食料品類またはその他の商品の販売等に関連し て,次の行為を行うのは,不公正な競争方法および不公正または欺隔的な行為 または慣行となる。 ・ 第1は,広告物の有効期間中,製品のストックをもたないにもかかわらず, また,顧客が製品を容易に入手できるようにしないにもかかわらず,広告物に よって当該の製品を掲載価格で販売に供することである(容易に入手できない 場合には,その商品はストックされており,要求すれば手に入れることができ るという明確で適切な通知がなされなければならない)。ただし,合理的に予測 される需要を満たすのに充分な量の広告製品が配送のために適時に注文され, かつ店舗に配送されたということを立証するのに充分な記録を小売店がもって いるなら,それは抗弁となる。 第2は,広告価格以下で販売するために,広告商品を目立つところで,また 容易に入手できるようにしないことである。 1)See 36 FR 8777(1971). See also 34 FR 18252(1969).なお,拙著・広告規制の課題 (1990年)81−83頁,拙著・広告規制の研究(1982年)90−9頂をも参照。もっとも,いずれの場合にあっても,店舗,製品または価格にかかるすべて の例外および(または)限定もしくは制限に関して,明確で目立つ開示が当該 の広告物すべてにおいて行われておれば,その限りではない。 ただ,次の3点に留意しなければならない。すなわち,第1は,この規則を 適用するかどうかを決定するにあたり,委員会が次の点を考慮するということ である。①合理的に予測される需要を満たすのに充分な量が実際に注文された が,広告主のコントロールを超える事情のために配送されなかった広告製品の 無配送をとりまくすべての事情。②広告価格以下での販売のために目立つとこ ろで,また容易に入手できるようにされたが,広告主のコントロールを超える 事情のためにその価格で入手可能とはならなかったことにかかわるすべての事 情。 そのような場合には,「引換券」(raincheck)の利用可能性もまた,関連ある ものとして委員会によって考慮される。しかし,「引換券」政策の存在は,それ だけでは,この規則を遵守しているものとは考えられない。 第2は,製晶の入手可能性に関する,広告物での一般的なことわりは,規則 の開示規定を遵守しているとは考えられないということである。①「すべての 商品がすべての店舗で入手できるとは限りません」,②特定の商品が「ほとんど の店舗で入手できます」という陳述,がそのような一般的なことわりの例であ る。 第3は,特別の設備をもつ店舗においてのみ入手可能である製品についての, 広告における明確で目立つ特別のことわりは,規則の開示規定を遵守している ものと考えられるということである。「デリカテセン部門をもつ店舗でのみ入手 可能です」ということわりが,その例である。 実際にも,その後,1970年代の後半には,広告製品の入手不可能を問題とし て9つの差止命令が,またミスプライシングだけを問題として2つの差止命令 2) が,小売食料品店に対して治せられた。 しかし,1980年代に入ると,主として費用・便益分析に基づいて,規則の本 2)この点については,See 54 FR at 35456
格的な見直しが開始されるに到った。それは,9年の長きにも及んだが,1989 3) 年8月28日,規則を修正することでその幕を閉じた。 そこで,本稿において,もともとの規則に関してどういつだ費用・便益分析 が行われたのか,入手不可能の現状に対してどういつだ法的評価が下されたの か,その結果どういつだ修正が行われたのか,はたまた,修正規則はどういつ だ効果を及ぼすと考えられているのかといったことに焦点を絞って,規則修正 4) の紹介を行うことにする。なお,それに先立ち,修正の経緯について簡単にふ れておくことが有益である。 II 修正の経緯 5) 規則修正の経緯は,次のようである。 1980年9月10日,委貝会は,当該規則から消費者はほとんど便益を受けてい ないということを示唆する報告書(独立の調査機関が委員会のために行ったも 6) の)を公表するとともに,それに関する公衆のコメントを求めた。それに応じ て種々の小売食料品店がコメントを提出したが,それらは,当該規則を遵守す る費用の方が便益をはるかに上回っていると指摘した。 1984年12月10日,委貝会は,規則制定案の予告を行い,当該規則は廃止され るべきであるのか,修正されるべきであるのか,あるいは変更なしに維持され るべきであるのかということに関して公衆のコメントを求めるとともに,当該 7) 規則の費用・便益に関する追加的な情報を求めた。この規則制定案の予告は, 当該規則の費用の方が便益を上回っている可能性があるとの疑問を提起する, 委員会スタッフの報告書に基づくものであった。 規則制定案の予告およびスタッフの経済分析に応じて提出されたコメントは, 3) See 54 FR 35456 (1989). 4)なお,本規則修正については,もう1っ,代替案に焦点を絞った紹介を別途行う予定で ある。 5)本章の叙述は,ほぼ,54FR at 35457に依拠している。 6) See also 45 FR 59634 (1980). 7) See also 49 FR 48059 (1984).
消費者が当該規則の廃止に強く反対していることを示していた。そこで,スタ ッフは,次のように規則の諸規定を修正することで,規則によって課せられる 費用を委員会は減少させるべきであると勧告した。すなわち,広告商品が限ら れた数量しかないときに小売食料品店が広告において一層柔軟に開示するのを 許し,また,入手不可能に対する追加的な抗弁を許すということである。 8) そこで,委員会は,1985年10月24日,規則制定案の告知を行った。それにお いて提案された主要な修正は,次のようなものであった。すなわち,1つは, 小売食料品店が,数量が限定されているという明確かつ適切な開示を広告にお いて行うのを許すということであり,もう1つは,小売食料品店が,「引換 券」,匹敵する価値をもつ商品による代替,または広告された価値に少なくとも 等しいその他の補償を提供しているということを証明することによって,入手 不可能に対する問擬に対抗するのを許すということであった。 その後,当該規則制定案の告知に関してコメントが提出され,引き続き,規 則に関して公聴会が開催された。 1986年12月,スタッフは,その最終報告書を公表し,1つの微調整を伴って 9) はいるが,修正案の採択を勧告した。他方,聴聞官は,1987年1月20日,その 報告書を公表し,委員会が最初に提案し,後にスタッフがそのスタッフ報告書 において勧告した修正とは実質的に異なる修正を勧告した。その後,両報告書 に関してコメントが提出された。 1987年12月1日,消費者保護局は,委員会に対して,当該規則制定案に関す るその最終勧告を行った。規則制定にかかわったスタッフのうちの2人は修正 に賛成し,1人は廃止に賛成した。サービス産業慣行課長補佐もまた,修正に 賛成した。それに対し,消費者保護局長は,経済局と同様に,廃止に賛成した。 1988年4月19日,委員会は,規則制定にかかる記録全体を審査したのち,規 8) See also 50 FR 43224 (1985). 9)なお,消費者保護局長は,規則の廃止に賛成することを摘記した。その理由は,次のと ころにある。すなわち,記録上の証拠によれば,規則が存在しなくとも小売食料品店は, 入手不可能を回避する適切なインセンティブをもっているようにみえるということが証明 されているということである。See 54 FR at 35457.
則制定にかかわったスタッフの多数派が提案したとおりに規則を修正すること IO) を,3対2で可決した。 かくして,1989年8月28日,委員会は,その最終修正を告示した。 III もともとの規則の費用・便益分析 この点に関しては,もともとの規則の便益はいくらであるのか,もともとの 規則の費用はいくらであるのか,便益と費用の比較の結果はどのようであるの か,ということが問題になる。 (1)便益 Il) 規則の便益を決定する方法としては,次の2つのものがある。すなわち,1 っは,規則制定前に存在していた広告特売品の入手不可能の減少に規則が効果 的であったと思われる範囲を測定し,その後,その減少の結果として消費者が 節約することができた実際の金額を算定するというものである。 そして,もう1つは,広告製品の入手不可能が消費者にどういつだ影響を及 ぼすのか,また,小売食料品店の他の属性と対比されるものとしての広告製品 の入手可能性に消費者がどの程度の価値を認めているのかということに関して 消費者調査を行うというものである。 (a)規則制定の前後における入手不可能の測定と節約金額の算定 これは, 次のようにして行われうる。すなわち,まず,規則が宣言される前後の小売食 料品店の入手不可能を調査し,その後,規則制定の前後における入手不可能の 率の差を金銭評価するということである。 まず,規則制定の前後における入手不可能の率を比較すれば,全般的な入手 10)委員の1人は,小売食料品店という高度に競争的な事業においては,現存する市場諸力 が適切に入手不可能を取り締まると述べて,規則の廃止を主張した(Dissenting State・ ment of Commissioner Ca工vani)。それに対し,もう1人の委員は,当該の規則変更が正 味の消費者便益となると結論づけるには不充分な証拠しか記録にはないと述べて,当該の 規則修正を支持しなかった(Statement of Cornmissioner Andrew J. Strenio, Jr., Retail Food Store Advertising and Marketing Practices Rule), See 54 FR at 35468. 11) See 54 FR at 35458−60,
不可能の率は約半分に減り,規則制定前の約10パーセントのレベルから規則制 12) 定後の約5パーセントのレベルになった。 次に,規則制定の前後における入手不可能の率の差を金銭評価すれば,買物 13) 客1人当り,1週間で1セント未満の便益にしかならない。 (b)入手不可能についての消費者の態度および知覚 第1に,消費者は, 14) 一般に,70パーセントの低さの入手可能性にさえ異議を唱えない。そこで,90 パーセントという規則制定前のレベルへの低下でさえ,主要な問題を提起する とは思われない。第2に,ほとんどの消費者が広告商品の入手不可能を経験し てきたが,彼らは,代替の食料品店を利用することが可能であり,もし日頃利 用している小売店があまりにもわずかの広告商品しか入手可能としない場合に は,代替の小売店にスイッチするように思われる。そこで,こういつた事情の もとでは,一般に,規則は,ほとんどの消費者にとって比較的わずかの便益し か提供してこなかった。 (c)小括 以上に基づき,委員会は,規則のもとでの消費者にとっての測 定しうる便益は,買物客1人当り1週聞で1セント未満であり,また総計では, スーパーマーケットのすべての買物客にとって1年間で4,800万ドルを超える 15) ことはないと認定した。 12)なお,コンピュータ化された在庫記録の導入といったその他の要素は,入手不可能の減 少に対していくふんかの寄与をしたにすぎないというのが委員会の認定である。See 54 FR at 35459. 13)なお,この推計は,むだ足を踏むのを避けることを通じて実現される節約のみを考慮に 入れており,広告特売品に関する価格節約は,便益の計算に含まれていない。というのは, 小売食料品店は,他のどこかで価格引上げを行うか,サービスを低下させることによって, 価格引下げによってこうむる損失を補っており,総体としての消費者は,実際には,特売 品の購入から節約を受けることはないからである。See 54 FR at 35459 14>ちなみに,広告商品の入手可能性は,小売店の種々の属性⑳のうちで7番目の重要度が 与えられているにすぎない。広告商品の入手可能性よりも重要であると考えられている属 性は,①農産物の品質,②肉の品質,③全般的な価格④広告商品の節約総額,⑤商品の 多様性,⑥親切かつ有用な店貝,である。See 54 FR at 35459, 15)なお,委員会は,数量化できないけれども追加的な便益を消費者はまた得るかもしれな いといりことを認めている。というのは,規則によって入手が確実なものとなるなら,消 費者は,広告製品か入手不可能とわかったときに憤慨しなくてすむからである。See 54 FR at 35460
(2)費用 もともとの規則の費用としては,直接的な費用と間接的な費用が考えられう 16) る。 (a)直接的な費用 直接的な費用は,4つのカテゴリーに分けてみること ができる。すなわち,①在庫費用(inventory costs),②監視費用(monitoring costs),③記録保持費用(recordkeeping costs),④法務・監査費用(1egal and Survey CoStS)である。 (ア)在庫費用 これは,入手不可能を減らすための在庫の増加に伴う費用 であり,2つのものを含んでいる。すなわち,1つは,過剰の在庫に投資する (またはそれを販売する)費用であり,いわば「在庫投資費用」(inventory investment costs)である。そして,もう1つは,腐敗しやすい物(たとえば肉 や農産物)の過剰在庫が腐るとき,または腐る前に投売のために費用を下回っ て値下げされるときに小売店がこうむる金銭的損失であり,いわば「腐敗・投 売費用」(spo{lage and distress costs)である。 後者の費用は,1店当り,1年間で1,697ドルから6,789ドルの間になる(な お,前者の現実の費用は,規則遵守のために小売食料品店がとるすべての戦略 に依存して決まる)。 (イ)監視費用 これは,広告製品がストックされており,かつ価格が正し くつけられているかどうかを調べるために,内部的に余分のチェックをさせる のに要する費用である。 確かに小売食料品店は,善良な事業慣行の問題として,適当なストックをも っていることを確実にするために在庫レベルを日常的に監視している。しかし, 小売食料品店は,規則の遵守を確実にするために,通常の事業過程において要 求されるよりも一層頻繁にこういつたチェックを行っている。 1店当り,年間の監視費用は2,268ドルから8,830ドルの間になる。 (ウ)記録保持費用 これは,小売食料品店が,規則に違反したという訴追 から自己を防御するために,合理的に予測される需要を満たすのに充分な量の 16) See 54 FR at 35460−61.
広告商品を注文し,かつ配送を受けたということを立証する記録を作成し,編 集するのに要する費用である。 記録保持費用は,2つのレベルにおいて発生する。すなわち,1つは,記録 が作成される店舗レベルであり,もう1つは,記録が一般に編集・保存される 中央事務所レベルである。 年間の記録保持費用は,1店当り,52ドルから2,312ドルの間になる。 (i)法務・監査費用 これは,次の2つのものを含んでいる。すなわち, 1つは,規則の遵守または防御に関連して用いられる法的サービスの費用であ り,もう1つは,いくらかの小売店が雇っている独立企業による規則遵守につ いての監査の費用である。 そのような費用は,年間12ドルから249ドルの問になる。 (b)間接的な費用 当該規則の間接的な費用は,主として,ある行為が行 われないことにより機会が失われる結果としての費用,つまり機会費用(oppor− tunity costs)である。こういつた間接的な費用が生じうるのは,次のような理 由による。すなわち,規則に違反すれば制裁が加えられるということをおそれ て,いくらかのタイプの広告が行われなくなるからである。その結果,小売食 料品店は,少ない商品しか広告せず,少ない特売品しか販売せず,あるいは広 ユの 位する製品のタイプを変更することになる。 こういつた機会費用は現実に存在する。しかし,それは容易に数量化しうる ものではない。したがって,それは,費用・便益の計算には含まれない。 (3)費用・便益の比較 17)たとえば,次のようなものが次のような理由によりあまり広告されないかもしれない。 ①新製品 需要予測が困難である,②農産物またはその他の腐敗するおそれのあるもの 販売期間終了時に売残商品が腐敗してしまうか,投売価格で売らざるをえない,③需 要が限られている商品(たとえばエスニック製品)一部分的な需要しかないにもかかわ らず,すべての店舗が当該商品を販売しなければならない,④直接配送の商品(たとえば ビール,ソフト・ドリンク) 多くの独立供給業者からの配送は,小売店の倉庫からの 配送よりも調整しかたい,⑤限られた数量しか入手可能とならない商品(たとえば「裏取 引」により入手される製品) 需要を満たすのに充分な数量を保証することができない。 See 54 FR at 35461.
規則遵守費用の種々の見積と規則のもとでの便益の最大限の見積とを比較す 18) ることによって,委員会は,次のような結論を下した。すなわち,この規則を 遵守する費用は,便益を大きく上回っている。当該規則によって課せられる費 用は,およそ,2.5対1から8対1の範囲の割合でその便益を上回っている。各 々の費用カテゴリーのために平均額が用いられるなら,費用の便益に対する割 合は5対1を超える。さらに,過剰在庫に投資することによって入手不可能の 率を減らそうとすれば,費用の方が圧倒的に便益を超えることになる。 ところで,便益および費用の中には,性質上間接的であり,かつ数量化しが たいものが存在する。しかし,それらは,費用・便益の計算には含まれていな い。方程式の便益側には,数量化できない「取引費用」(transactional costs),すなわち,広告商品が入手不可能であるときに生じる時間の浪費および 不満という形での費用が存在する。他方,費用の側には,一定のカテゴリーの 製品の広告を小売食料品店が避ける結果,情報が失われることの「間接的な費 用」が存在する。 しかし,取引費用を回避することから生じる節約は微小である。というのは, 消費者の圧倒的多数(ある調査によれば83パーセント,別の調査によれば74パ ーセント)は,入手不可能に遭遇してもほとんど全く不都合を感じていないか らである。 他方,特売価格商品についての情報が限られることの間接的な費用も,また, 重要ではない。確かに,特売品が広告されないならば,消費者は,その特売品 について知っており,かつ値引価格で購入する場合に利用可能である節約を得 ることができなくなる。しかしながら,これらの節約利益は,小売食料品店が, これらの値引を埋め合せるために他の価格を引き上げるか,サービスを低下さ せなければならない限りで,費用・便益の計算に影響を与えない。したがって, 18)See 54 FR at 3546!−62.なお,費用は,1年当り1億2,6QO万ドルないし1億3,200万ド ルから3億7,000万ドルの問(平均額は3億1,900万ドル)になると見積もられている。そ れに対し,便益は,1年当り最大限4,800万ドルと見積もられている。See 54 FR at 35461 n. 49 and 50.
この点での現実の損失は,情報それ自体に限られ,それを知ることから得られ る節約ではない。 IV 入手不可能の現状の法的評価 19) ここでは,次のことが問題にされている。すなわち,合理的に予測される需 要を満たすのに充分な量を手元にもった上で広告商品を供給しないことが,委 員会の「欺隔」基準のもとで四四的であるということができるかどうかである。 この点,委員会の「欺隔」基準は,次のことを要求している。すなわち,重 大であり,かつ,その状況のもとで合理的に行為する消費者をミスリードする 蓋然性がある表示,不表示または慣行が存在するということである。 まず,特別価格で売り出す商品を掲載する小売食料品店の広告が,重大な表 示であるということには,ほとんど争いはない。問題は,広告において目玉と された商品を買いに行ったが,それが入手不可能であることがわかった消費者 は,ミスリードされているといってもよいという実質的な証拠が記録に含まれ ているかどうかである。 この点,委員会は,広告商品の入手不可能が欺隔的な慣行となるという実質 的な証拠が現在の記録に存在するという結論を下した。それに際しては,委員 会は,独立の調査機関が行った消費者調査の次の結果に依拠した。すなわち, ①相当の割合の公衆(34パーセント)は,広告において述べられる入手可能性 に関して限定が行われないなら,小売食料品店が広告商品の手持ちを切らすこ とはないであろうと期待している,②消費者の30パーセントは,セールの最終 日に広告商品のすべてを見つけ出すことができるということが非常に重要であ ると考えており,加えて48パーセントの消費者は,そのことがいくぶん重要で あると思っている,③規則制定以後,入手不可能のレベルが10パーセントから 5パーセントに減ったと信じられている近年においてさえ,消費者の87パーセ ントが実際に入手不可能を経験している,④規則制定以後の入手不可能のレベ ルのもとでさえ,消費者の56パーセントは,入手不可能のレベルが自分の考え 19) See 54 FR at 35462.
ではあまりにも高いと判断する小売店を1つ知っている,ということである。 V 主たる修正点 規則遵守の費用がその便益を大きく上回っているということ,および,入手 不可能の現状はなお欺隔的な慣行となるということを前提として,委員会は, 規則の現状維持または廃止という選択肢ではなく,次の方向で修正を行うとい う道を選んだ。すなわち,高められた入手可能性が消費者にもたらす便益を維 持する一方で,小売食料品店に課せられる費用を減少させるという方向である。 かくして当該の規則は,およそ次のことをその実質的な内容とするよう修正 された。すなわち,第1は,小売食料品店が,食料品類またはその他の商品の 消費者への販売等に関連して,次の行為を行うのは,不公正または多層的な行 為または慣行となる。すなわち,広告物の有効期間中,製品のストックをもた ないにもかかわらず,また,顧客が製品を容易に入手できるようにしないにも かかわらず,広告物によって当該の製品を掲載価格で販売に供することである。 ただし,広告製品の供給は限られているとか,広告製品はいくらかの店舗での み入手可能であるということを,広告物が明確にかつ適切に開示している場合 には,その限りではない。 第2は,次の各々の場合には,いかなる規則違反も認定されるべきではない ということである。すなわち,①合理的に予測される需要を満たすのに充分な 量の広告製品が,配送のために適時に注文された,②小売食料品店が広告製品 の代りに「引換券」を申し出ている,③小売食料品店が,価値の上で広告製品 に少なくとも匹敵する類似製品を,広告価格で,または匹敵する値引でもって 申し出ている,④小売食料品店が,広告された価値に少なくとも等しいその他 の補償を申し出ている,場合である。 以下では,本稿にとってとりわけかかわりがある次の2っの主要な修正点を 20) 取り上げ,修正のポイントを際立たせることにする。すなわち,1つは,限定 的な入手可能性にかかる開示の許容範囲の拡大であり,もう1つは,入手不可 20)その他の修正点の詳細は,See 50 FR at 43225−26.
能に対する抗弁の拡大である。 ① 限定的な入手可能性にかかる開示の許容範囲の拡大 小売食料品店が,製品のストックをもたないにもかかわらず,また,顧客が 製品を容易に入手できるようにしないにもかかわらず,広告物を通じて当該の 製品を掲載価格で販売に供することは,修正規則のもとでも,違法とされてい る。しかし,修正規則のもとでは,広告製品の供給は限られているとか,広告 製品はいくらかの店舗でのみ入手可能であるということを,広告物が明確にか 21) つ適切に開示しておれば,違反は成立しないこととされた。 この点,もともとの規則のもとでも,店舗,製品または価格にかかるすべて の例外および(または)限定もしくは制限に関して,明確で目立つ開示が当該 の広告物すべてにおいて行われておれば,違反は成立しないとされていた。し かし,もともとの規則のもとでは,製品の入手可能性に関する,広告物での一 般的なことわりは,規則の開示規定を遵守しているとは考えられないとされて いた。 この点で,限定的な入手可能性にかかる開示の許容範囲は,拡大されたとい 22) うことができる。 なお,当該修正の趣旨は,次のところにある。すなわち,限定された入手可 能性しかない商品を小売食料品店がより自由に広告できるようにすることによ って,供給が限られている商品,一定の地:域においてのみ関心がある製品,販 売費用がとくにかかる商品の広告をもともとの規則が思い止まらせることに関 21)See 54 FR at 35462,35463. 22)もっとも,当該開示は,入手可能性にかかる限定が,数量限定または店舗限定の結果で あるかどうかを明らかにしなければならないように思われる。というのは,次のことが要 請されているからである。すなわち,1つは,小売食料品店がおとり広告を行うのは,修 正規則のもとでも,なお許されないということを強調するということであり,もう1つは, 入手可能性が限定されているとき,広告商品の入手可能性について消費者がだまされない よう確実にするということである。See 54 FR at 35462−63. 23)なお,規則制定案の告知では,次のことが追加的に指摘されている。すなわち,こうい つた開示があれば,広告製品があらゆる店舗で確実に入手可能であると消費者が信じると いうようなことはなくなり,消費者を欺隔から保護することができる,ということである。 See 50 FR at 43226.
連を有する費用を排除することができるということである。換言すれば,小売 食料品店が,消費者および小売食料品店の両者の便益となるように,消費者に 一層の情報を拡心し,また,多様な製品について広告特売品の数を増やすのを 促進することができるということである。 加えて,この修正を通じて実現される費用節約は,価格引下げもしくはサー ビス改善またはその両者において反映されるので,消費者は,修正から追加的 な便益を得ることになるということも勘案されている。 (2)入手不可能に対する抗弁の拡大 24) 修正規則によれば,次のことが抗弁となる。すなわち,①合理的に予測され る需要を満たすのに充分な量の広告製品が配送のために適時に注文されたとい うこと,②入手不可能の商品の代りに「引換券」を申し出ること,③入手不可 能の商品の代りに匹敵する価値をもつ類似商品を申し出ること,④入手不可能 の商品の代りに広告商品と少なくとも価値の上で等しいその他の補償を申し出 ることである。 このうち,①が基本的なものであり,②ないし④は追加的なものである。 (a)適量の広告製品の適時の注文 もともとの規則では,合理的に予測さ れる需要を満たすのに充分な量の広告製品が配送のために適時に注文され,か つ店舗に配送されたということを立証するのに充分な記録を小売店がもってい るなら,それは抗弁となるとされていた。もっとも,この規則を適用するかど うかを決定するにあたっては,委員会が,合理的に予測される需要を満たすの に充分な量が実際に注文されたが,広告主のコントロールを超える事情のため に配送されなかった広告商品の無配送をとりまくすべての事情を考慮するとい うことが注記されていた。 したがって,修正規則のこの抗弁は,もともとの規則に含まれていた入手不 可能に対する抗弁に基づくものということができる。しかし,修正規則は,次 の点で,もともとの規則よりも抗弁の範囲を拡大している。すなわち,1つは, 合理的に予測される需要を満たすのに充分な量の広告製品が実際に店舗に配送 24) See 54 FR at 35463.
されたということを小売食料品店が立証しなければならないという要件が削除 されたということであり,もう1つは,立証に充分な記録を小売食料品店がも っていなければならないという要件が削除されたということである。 (b) 「引換券」の申出 もともとの規則のもとでは,「引換券」の利用可能 性は,関連があるものとして委員会によって考慮されるとされているにすぎな かった。しかも,「引換券」政策の存在は,それだけでは,この規則を遵守して いるものとは考えられないとされていた。 この点,「引換券」の申出を抗弁として認めるのは,次のような趣旨による。 すなわち,もともとの規則のもとでの遵守努力に関連する非生産的な費用がす べて,事実上排除されるであろうということである。かくして,小売食料品店 は,過剰の在庫品をストックしたり,何度も棚のチェックをしたりするという 行き過ぎた措置をとることは必要ではなくなり,ほとんどではないにしてもそ の多くが通常の事業過程ですでに提供している「引換券」を提供するという, はるかに費用のかからない措置を選択することができるようになる。 また,低められた遵守費用の便益は,消費者に回ってくると考えられでいる。 (c)匹敵する価値をもつ類似商品の申出 これは,もともとの規則には存 在しなかった抗弁である。これを抗弁として認める趣旨は,「引換券」の場合と 同様である。 (d)同価値のその他の補償の申出 これも,もともとの規則には存在しな かった抗弁である。たとえば,次のようなものが,この抗弁に該当する。すな わち,小売食料品店が,通常価格と広告価格との差額分を全体の請求額から差 し引いたり,償還されるとき類似の節約利得を生む節約クーポンを,匹敵する 製品の購入に対して提供したりするということである。 これを抗弁として認めるのは,次のような趣旨による。すなわち,ショッピ ング選択をするにあたって依拠した安売広告の便益を,消費者が否定されない よう確実にするということである。
VI修正規則の効果
修正規則は,消費者,小売食料品店,小規模事業者,州に対して,次のよう な効果を及ぼすと考えられている。 (1)消費者 消費者は,2つの主要な態様で修正規則から便益を得る。すなわち,1つは, 小売食料品店がこの規則から得る遵守費用の節約が回ってくるということであ る。そして,もう1つは,数量が限られているバーゲン商品を小売店が広告す るのが可能となる結果,もともとの規則のもとで受け取っていたよりも多くの 26) 価格・製品情報を受け取ることができるということである。 他方,より重要なことであるが,修正規則は,消費者の保護を減じない。と いうのは,大多数の消費者は,小売店が一貫して,あまりにも少数の商品しか 入手可能とせず,需要を満足させないなら,当該の小売店をこらしめることが でき,かつ実際にこらしめているからである。このことは,小売店は広告商品 をストックしておかなければならないという規則の従来からの要件と結びつい て,それらの商品を適量ストックする実質的なインセンティブを与える。 したがって,修正規則のもとで入手不可能のレベルが相当高くなるというこ とはありそうにない。 なお,ここでの結論は,修正規則が貧困者および年長者に及ぼす影響を考慮 した上でのことである。この点,これらのグループは,一般公衆とは違って可 動性を欠いているので,他の小売店で買物をすることによって入手不可能のレ ベルが高い小売店をこらしめることはできないということが主張されている。 また,これらのグループは,広告された特売品を捜し求めて購入することで, 限られた家計を有効に活用しなければならないということが主張されている。 しかし,貧困者については,次のような判断が示されている。すなわち,も 25) See 54 FR at 35466. 26)このことは,さらに,買物についやす時闇の費用を低め,競争を促進し, の価格を低めるということもできる。See 50 FR at 43230, これらの商品194 彦根論叢 第272号 ともとの規則は,他のクラスの買物客と同じく,貧困者にも便益を与えるもの ではない。また,貧困者は,食料品類の購入に関しては,実際のところ,平均 的な買物客ほど費用を意識していない。さらには,貧困者は,他のグループよ りも頻繁に入手不可能に遭遇するわけではない。 他方,年長者については,次のような判断が示されている。すなわち,年長 者は,実際のところ,他の買物客と比べて,費用を意識し,それゆえ,広告さ れた特売品を買い求める傾向にある。また,年長者は,他の買物客と同じく, あまりにもわずかの商品しか入手可能とされていない小売店を発見するが,他 の買物客よりもはるかに他の小売店で買物をしそうにない(もっとも,年長者 は,棚に商品がなくなっておれば入手のため一層の努力をするせいか,他の買 物客ほど入手不可能に遭遇しそうにない)。 それにもかかわらず,ここでは,「引換券」が適切な代替として役立つ。とい うのは,年長者は,当該の小売店で日常的に買物をしており,「引換券」の償還 のためにわざわざ出向く必要がないからである。また,小売食料品店は,一層 可動性のある買物客を競争者に奪われないよう在庫レベルに注意しなければな らないので,年長者は,.そのことからも恩恵を得ることができる。 (2)小売食料品店 27) 修正規則は,正味,小売食料品店にとって相当の利得となる。第1に,修正 は,広告商品の過剰注文を排除するか減少させることができる。したがって, それは,また,過剰の在庫を販売することと結びついた費用を排除するか相当 減少させることができる。第2に,修正は,過剰の記録保持および監視の費用 を排除することができる。第3に,修正は,供給が限られている商品の広告を 控えようとするインセンティブを取り除くことによって,問接的な費用を減少 させることもできる。 なお,小売食料品店は,「引換券」および代替品にかかる政策を実施する費用 をこうむるけれども,多くの小売店は,顧客を満足させ続ける必要性のために, ともあれそうせざるを得ない。実際のところ,小売食料品店の94パーセントは 27) See 54 FR at 35466−67.
「引換券」政策をすでに実施しており,75パーセントは代替品政策をとってい る。 また,小売食料品店は,適切な開示がなされるということを確実にするのに 費用をこうむるけれども,それは,規則が廃止されようが修正されようが同様 にこれらの費用をこうむるといえる。 (3)小規模事業者 修正規則は,有力な小売食料品チェーンと同じように,小規模事業者に及ぼ 28) す負担を減らすということができる。換言すれば,小規模事業者は,修正規則 のもとで,その規模に比例して負担をこうむるということができる。 この点,10人以下の被傭者しかいない小売食料品店は,修正規則の適用を完 全に除外されるべきであるということが提言された。それに際しては,極めて 小さい小売食料品店とそうではないものにとっての遵守費用の較差が,両者の 間で規制を異にすることのすぐれた論拠となると主張された。 確かにこの示唆は,価値があるものであるかもしれないが,除外の効果がど のようなものであるかに関して,記録上ほとんど全く証拠は存在しない。 (4) 少卜1 規則の修正は,入手不可能にかかる法の州による執行にいくらか影響を及ぼ すかもしれない。この点,州の約半分において,連邦取引委員会法5条(aX1)の 解釈は,州法の解釈に際して考慮されている。また,そうではない裁判管轄に おいても,州の裁判所は,それ自身のイニシアティブで連邦取引委員会の解釈 を当てにするかもしれない。さらには,州法を連邦取引委員会の修正規則に合 わせるよう州議会に圧力が加えられるということもありうる。加えて,若干の 裁判管轄においては,州法が,連邦取引委員会またはその他の連邦行政機関に よって執行される規則および規制または制定法に従うか,それらを遵守する行 為または慣行は州による執行を免除されると規定している。 しかし,修正規則に含まれている抗弁が,州または地方の法が要求する範囲 28) See 54 FR at 35467. 29) See 54 FR at 35467.
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で州および地方による執行に及ぶのは,適切である。というのは,修正規則は, 正味,消費者の便益となり,また,もともとの規則下で消費者に転嫁されてい