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(1)

歯学部歯学科

5年生 統合科目I

口腔腫瘍の基礎と臨床

口腔がんの画像診断

2017年4月6日(木)3限

顎顔面放射線学分野

孝文

http://www.dent.niigata-u.ac.jp/radiology/handout/

画像診断について

電離放射線や超音波、核磁気共鳴現象、放射

線同位元素などを利用して、生体の内部構造

を画像として視覚的に表現し、疾患の診断を

行う医療技術

モダリティ:

 単純エックス線(パノラマエックス線など)  超音波検査(US、エコー)  CT、歯科用コーンビームCT(CBCT)  磁気共鳴画像法(MRI)  陽電子放射断層撮影法(PET)、PET/CT

PET (positron emission tomography)

PETは、陽電子を放出する放射性薬剤を体内

に投与して検査する撮影法である。

陽電子は陰電子と結合して消滅し、電子対の全

質量に相当するエネルギーが互いに反対方向

に放射される2個の光子に変わる。この一対の

消滅放射線を同時計測して、RIの取り込み部位

を断層像として描出するものである。

最も多く使われている臨床検査薬は

18

F-FDG(

18

F-フルオロデオキシグルコース、2-fluoro

[

18

F]-2-deoxyglucose)である。

PETの原理

原子核 p→n+β++ν • 陽電子を放出する放射性同位元素(positron核種)か ら放出された陽電子が、近くの電子と結合して消滅し、 180度正反対の方向に放出されたガンマ線を検出する e- 消滅放射線511keV 消滅放射線511keV

PET(続き)

 細胞は増殖速度が速いものほどより多くのエネルギー を必要とするため、癌細胞はより多くのFDGを取り込 む。  取り込まれたFDGは糖代謝を受けず細胞内にとどまり (メタボリックトラッピングといわれる)、その集積の程度 はブドウ糖代謝を反映することとなる。 PETの口腔癌における有用性としては、病期診断(リ ンパ節転移・遠隔転移など)、悪性度診断、治療効果 判定、再発診断などが挙げられる。特にCTやMRIでの 検出が困難な再発やリンパ節転移、遠隔転移や重複 癌の有無などの全身検索にきわめて有効である。

FDGのメタボリックトラッピング

Glucose Glucose Glucose Glucose-6リン酸

18F-FDG 18F-FDG-6リン酸 解糖系 血管内皮 細胞膜 ヘキソキナーゼ フォスファターゼ

×

18F-FDG 18F-FDG グルコーストランス ポーター過剰発現

(2)

PET(続き)

 非癌組織においても集積が見られる点は読影の際 に要注意であり、大唾液腺や扁桃などのリンパ組織 の生理的集積や、骨髄炎などの炎症性病変は偽陽 性となる。  検出可能な容積の癌組織が存在しても組織型や、 癌の生物学的特性によって集積が有意でなく偽陰性 となる場合もある。  このため、特に原発巣と頸部所属リンパ節における PETの読影のポイントとしては、より空間分解能の 高いCTやMRI、エコーをあくまで基本として詳細に 読影し、判断に迷う場合にPETによる付加的な情報 で確認するという手順が望ましい。

PET(続き)

SUV(Standardized uptake value)は、投与したRIが 全身に均一に分布したと想定した場合の値を1として、 目的とする領域の放射能濃度がその何倍であるかを 半定量的に数値化したものである。  悪性度の高い病変がより大きい値を示す場合が多く、 SUV値が良悪性の鑑別や治療効果の評価に役立つ 場合があるが、異なる装置や施設間の相互比較は厳 密には困難とされている。 PET/CTはPETとCTを同一装置で撮影する手法であ り、解剖学的な位置の同定が容易となる。今後は FDG以外のイメージング製剤の利用による診断精度 の向上も期待される。

MRI (Magnetic Resonance Imaging)

MRIは軟組織コントラストに優れた任意の断面画像 を得られることから、口腔癌の画像診断の中核とし ての位置にあり、主として原発巣の進展範囲と頸部 所属リンパ節転移の評価に用いられる。 T1強調像、T2強調像をはじめとする多様なシークエ ンスを用いることによって情報量を増やすことができ るが、同時に様々なアーチファクトにも精通して誤診 に注意する必要がある。  最近では、水分子拡散を画像化する拡散強調画像 が日常的に利用されるようになった。腫瘍の診断で は原則として経静脈的造影が必要となる。

MRI(続き)

 一般的に扁平上皮癌は、T1強調像で隣接する筋組 織と同等の比較的低い信号強度を呈し、脂肪抑制 T2強調像ではリンパ組織と同等からやや低い程度 の不均一な比較的高信号を呈する。腫瘍内部の壊 死や嚢胞状化を生じた部分は高信号を呈し、線維化 や角化など水分に乏しい部分は低信号となる。  造影後には腫瘍は新生血管と造影剤の血管外細胞 外腔への移行などにより周囲組織よりも信号強度が 上昇しその範囲が明瞭化するが、内部構造が複雑 である場合が多いため、造影のされ方は一般に不均 一である。

MRI(続き)

 ダイナミックMRIは造影剤投与後の信号強度の経時 的変化を追跡する手法であり、血行動態や進展範囲 の把握に有効である。  拡散強調画像では、得られる生体の拡散係数は、水 分子の真の拡散にボクセル内の毛細血管による微 小灌流の影響が加わるため、見かけの拡散係数( Apparent diffusion coefficient, ADC)と呼ばれる。 ADC 値が高い場合は水分子の拡散が大きいことを 意味し、拡散強調画像では低信号を示す。一方、低 ADC値は、水分子の拡散が小さいことを意味し、拡 散強調画像では高信号を示す。

MRI(続き)

一般に悪性腫瘍は細胞径が大きく細胞密度が

高いため、細胞外腔が狭小化し水分子の拡散

が制限され、ADC値は低下し、拡散強調画像

で高信号を呈するとされている。

MRIは一般にCTよりも歯科用金属による影響

は少ないといえるが、磁性体金属により顕著な

アーチファクトで画像化できない場合もある。ま

た撮影時間が長いため

CTよりも患者の動きに

よるアーチファクトを受けやすい。

(3)

CT (Computed Tomography)

CTは生体のエックス線吸収係数を画像化したもの であり、多方向からの収集データにより断層画像を 得る手法である。最近の装置では検出器の64列、 128列、320列などの多列化が進み、体軸方向の データが緻密となり等方ボクセルによる撮影が日 常的に可能となっている。  単純CTでは軟組織コントラストが不足するため、 造影剤非適応の症例を除いて口腔癌の診断には 経静脈的造影が必須となる。MRIと同様に造影後 には腫瘍は周囲組織よりも濃度が上昇しその範囲 が明瞭化するが、内部の造影のされ方は一般に 不均一である。

CT(続き)

特に転移リンパ節では、中心壊死に伴いリン

パ節辺縁部が造影され(rim enhancement)

、内部に造影されない低濃度の領域(focal

defect)がみられるのが典型的であるが、転

移巣の占拠範囲や組織型により多彩であり、

明確な所見を呈さない場合も少なくない。

口腔癌では、手術に際し顎骨浸潤や歯と歯

周組織に関する高精細な画像が必要となる

ため、骨関数アルゴリズムによる多断面再構

成(MPR)画像などのボリュームデータ処理

が必須である。

CT(続き)

歯科用コーンビームCT(CBCT)は撮影範囲

を限定し患者被曝線量を低減させ硬組織に

特化した

CTであり、一般的なCTよりも高分

解能であるが、軟組織コントラストが更に不

足するため口腔癌の診断には向かない。

また一般にCTは、MRIと比較し歯科用金属

によるアーチファクトにより原発巣を評価でき

ない場合が多い。

CT灌流画像(CT perfusion, CTP)

• 造影剤を急速静注しながら連続撮影し、濃度

の経時的変化から毛細血管レベルでの組織

血流(灌流)を解析・画像化する手法。

• 口腔癌や頭頸部癌において、血行動態を介し

て腫瘍活性や治療抵抗性などの生物学的情

報が得られる可能性が報告され、最近の研究

では、頭頸部癌では良悪性の判別において

PET/CT を凌ぐとの研究もみられる。

超音波検査

(Ultrasonography, US)

口腔癌診療において、超音波検査は頸部リンパ

節転移診断に利用される場合が多い。原発巣の

局在部位によってはその深達度や範囲の評価に

も利用される。

1)原発巣の深達度評価

 舌や口底、頬粘膜などに生じた比較的小さな癌では、 術中用の小型プローブを使用した口腔内走査により、 原発巣の深達度や範囲の評価が可能である。  癌が大きく舌根部や咽頭などの周囲組織に進展した

超音波検査(続き)

一般に粘膜に生じた扁平上皮癌は、粘膜上

皮層と連続性を有する低エコー域として描出

され、ドプラでは深部辺縁を中心として腫瘍

内部に広がる樹枝状の血流が認められる。

適切な厚み(3mm程度)の高分子音響カップ

リング材を介在させて走査を行うと、粘膜上

皮層、粘膜下層、固有筋層を区別して描出

することが可能であるため、腫瘍の深達度

の正確な評価には、音響カップリング材の利

(4)

超音波検査(続き)

2)頸部リンパ節転移診断  口腔癌が転移する可能性のある頸部所属リンパ節の ほとんどはエコーでカバーできる。  通常、正常なリンパ節は境界明瞭で辺縁整な低エコー のソラマメ状の形態を呈し、門と呼ばれる周囲脂肪組 織と連続した高エコーの陥凹を有する場合が多く、ドプ ラでは門を中心としリンパ節実質部分に連続する樹枝 状の血流がみられることが多い。  リンパ節の大きさの評価は、リンパ節全体を楕円体に 模して三次元的な軸径(上下径・前後径・左右径)のう ち最長のものを長径、最短のものを短径と称し、特に 短径がリンパ節の病的変化に対して鋭敏である。

超音波検査(続き)

 エコーでの転移陽性判定基準としては、大きさ・形態 や内部エコーの異常で表現される場合が多い。  前者では短径で6~8mmが目安とされ、長径と短径 の比や門の形態が参考になる。後者では中心壊死に 伴う嚢胞状化による無エコー域と、角化等に伴う高エ コー域があり、通常はこれらが様々な程度で混在し不 均一となる場合が典型的であるが、内部エコーの病 的所見として検出できない場合もある。  また画像分解能に満たない微小転移巣も存在するた め、一定の偽陰性は避けられない。

超音波検査(続き)

 ドプラ法は血流を画像化したものであり、これを併用す ると血管走行の不整や欠損、リンパ節辺縁部の血流信 号の出現などがみられ、診断精度が向上することが報 告されている。  またエラストグラフィを併用すると硬さの情報が得られ るため、診断精度の向上が期待できる。  後発リンパ節転移は、画像で検出不可能な微小転移 巣が潜在的に存在していたものであり、N0症例におけ る画像診断の感度は十分なものではない。この検出の ためのエコーによる経過観察として、原発巣治療後1か 月に1回程度の頻度の検査が推奨されている。

超音波検査(続き)

転移リンパ節の経時的変化としては、リンパ節

の一部が膨大し門が圧排され血流が不整化し、

転移腫瘍巣が大きくなるにつれて特に短径が増

大しリンパ節全体の形態は球形に近づき、腫瘍

内部や辺縁部に不定な血流がみられるようにな

る。

エラストグラフィは組織の硬さを表す弾性係数を

画像化したもので、現在臨床で利用されている

ものは歪みを用いた手法(

Strain elastography)

と、せん断弾性波を用いた手法(Shear wave

elastography)に大別される。

転移リンパ節の経時的変化の概念図

転移腫瘍巣

超音波組織弾性イメージング

(超音波エラストグラフィ)

• 硬さをあらわす組織固有の物理量: 弾性係数(ヤング率) • 目的:弾性係数の定量化・画像化 • 手法: 1. 歪みを用いた手法(Strain elastography)

(5)

Strain elastography

• 探触子の用手圧迫による加圧などの前後にお

ける画像フレームを比較することで、変形により

生じた組織の各部位の変位分布を求める手法

である。

• 探触子の接触面とほぼ垂直方向にごくわずかな

加圧を行うと、超音波パルスの伝搬方向と平行

な成分が大部分となる偏位が生じ、組織変形は

一次元バネモデルで近似可能と判断される。

E=σ/ε

E: 弾性係数(ヤング率) σ: 応力 ε:歪み

• 局所の歪みは変位を軸方向に微分することで得ら れ、生体内の応力分布を一様と仮定すれば、弾性 係数が大きく硬い部分は歪みが小さくなることから 、歪みは相対的な硬さを表すこととなる。 • 各部の変位分布を計測してその空間微分をとるこ とで歪みの分布を得、歪みの平均値を算出して平 均より大きい歪みを赤、平均的な歪みを緑、平均 より小さい歪みを青でマッピングしてBモード画像 上に半透明化して重ねることで、リアルタイムのエ ラストグラフィ画像を得ている。

Shear wave elastography

• 生体組織内にせん断弾性波を発生させ、その伝搬速度 から弾性値を算出し、組織弾性を評価する手法である。 通常の超音波診断に用いられる疎密波は縦波(進行方 向と振動方向が平行)であり、生体内を1,500[m/s]で 伝搬するが、せん断弾性波は進行方向と振動方向が 垂直な横波であり、生体内を1~10[m/s]で伝搬する。 E≃3G=3ρ・Cs2 • ただし、E:弾性係数、G:剛性率、ρ:組織密度、Cs:せ ん断弾性波伝搬速度 • 生体内の組織密度を一定と仮定すると、弾性係数が大 きく硬い部分は、せん断弾性波伝搬速度が大きくなる。

口腔癌のTN(M)分類・原発巣

T因子

• TX:原発腫瘍評価不能

• T0:原発腫瘍を認めない

• Tis:上皮内癌(扁平上皮内腫瘍)

• T1:最大径が2cm以下

• T2:最大径が2cmを越え4cm以下

• T3:最大径が4cmを越える

• T4:隣接組織浸潤

T4a・bの定義について

(口腔癌取扱い規約

2010年1月第1版)

T4

a

• 舌・口底:下顎骨髄質、顎下隙、外舌筋への浸潤 • 上顎歯肉:上顎洞及び鼻腔、頬隙あるいは皮下脂 肪への浸潤 • 下顎歯肉:下顎管、頬隙あるいは皮下脂肪、顎下 隙、外舌筋への浸潤

T4

b

• 咀嚼筋隙、翼状突起、頭蓋底への浸潤、内頸動脈

口腔癌の

TNM分類・所属リンパ節転移

N因子 • NX:所属リンパ節転移の評価が不可能 • N0:所属リンパ節転移なし • N1:同側の単発性リンパ節転移で最大径が3cm以下 • N2a:同側の単発性リンパ節転移で最大径が3cmを超 えるが6cm以下 • N2b:同側の多発性リンパ節転移で最大径が6cm以下 • N2c:両側あるいは対側のリンパ節転移で最大径が 6cm以下 • N3:最大径が6cmを超えるリンパ節転移

(6)

頸部リンパ節転移の画像診断の意義

1. 口腔癌の治療方法や成績は、

頸部リンパ節

転移の有無に大きく依

存する。

2. リンパ節転移の正確な診断は、

治療方針を決

定する上で極めて重要

である。

3. 触診で検出し得ない転移リンパ節の検出にお

いて、

画像診断の果たす役割は大きい

1.オトガイ下リンパ節 level IA 2.顎下リンパ節 level IB 3.深頸リンパ節-外側群- 1)上内頸静脈リンパ節 level IIA・B 2)中内頸静脈リンパ節 level III 3)下内頸静脈リンパ節 level IV 4)副神経リンパ節 level VA 5)鎖骨上窩リンパ節 level VB 4.その他のリンパ節 1)耳下腺リンパ節 2)浅頸リンパ節 3)深頸リンパ節-正中群-

頸部リンパ節の名称と分類

頸部リンパ節の分布図

頸部リンパ節の名称と分類

(日本癌治療学会リンパ節規約より)

1.

オトガイ下リンパ節

submental nodes

• 広頸筋と顎舌骨筋の間で下顎骨、舌骨、顎二

腹筋前腹に囲まれた部位のリンパ節。

2.

顎下リンパ節

submandibular nodes (

SMLN

)

• 広頸筋と顎舌骨筋との間で下顎骨と顎二腹

筋の前腹と後腹に囲まれた部位のリンパ節。

3.深頸リンパ節 -外側群- 1)上内頸静脈リンパ節(上内深頸リンパ節) superior internal jugular nodes (SIJN) , superior deep cervical nodes,

jugulo-digastric nodes

• 顎二腹筋の後腹の高さで内頸静脈に沿ったリンパ 節(上限は顎二腹筋の後ろにある)。

2)中内頸静脈リンパ節(中内深頸リンパ節) middle internal jugular node (MIJN) , middle deep cervical nodes,

jugulo-omohyoid nodes

• 肩甲舌骨筋上腹の高さで内頸静脈周囲に存在する リンパ節。

3)下内頸静脈リンパ節(下内深頸リンパ節) inferior internal jugular nodes (IIJN) , inferior deep cervical nodes

• 肩甲舌骨筋下腹の高さで内頸静脈周囲に存在する リンパ節(静脈角リンパ節も含まれる)

4)副神経リンパ節spinal accessory nodes

• 副神経に沿ったリンパ節。僧帽筋の前縁より前にあ る。上方では内頸静脈リンパ節と区別できない。 5)鎖骨上窩リンパ節supraclavicular nodes

• 鎖骨上窩にあるあるリンパ節で、内側群は下内頸静 脈リンパ節とし、外側群を鎖骨上窩リンパ節とする。

参照

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