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DSpace at My University: WHO たばこ規制枠組条約におけるシステム的特徴

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浦  川  紘  子

Systematic Features of WHO Framework Convention on Tobacco Control

Hiroko Urakawa

抄    録

 本稿は、2003 年に採択された「WHO たばこ規制枠組条約」がいかなるシステムを構築 しているのかに焦点を当て、FCTC それ自体のもつ法的特徴や、同条約が構築しようとす る法的枠組の分析を試みるものである。特に、「枠組条約」としていかなる性質を有して いるのかについて、枠組条約の典型とされる多数国間地球環境諸条約との比較検討を通じ て明らかにしたい。かかる論点は、FCTC がグローバル・ヘルスにおける最初の多数国間 条約として、また WHO が作成した唯一の条約として存在することに鑑みれば、重要な意 義を持つと考えられる。 キーワード:WHO、WHO たばこ規制枠組条約、グローバル・ヘルス、地球環境条約 (2011 年 10 月 1 日受理)

Abstract

This article focuses on the systems created by the WHO Framework Convention on Tobacco Control (FCTC) adopted by the WHO in 2003. Until the Convention was adopted, “framework convention” seems to be particular to the Global Environmental Conventions. FCTC is the first Convention adopted by the WHO with global public health goals. I consider the distinction between the FCTC and the Multilateral Environmental Agreements (MEAs) and I will make the systematic features of FCTC clear.

Keyword: WHO, FCTC, Global Health, MEAs

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はじめに

 2003 年 5 月、世界保健機関(World Health Organization; WHO)において「WHO たば

こ規制枠組条約(WHO Framework Convention on Tobacco Control; FCTC)」1が採択された。

2005 年 2 月に同条約は発効し、今日 174 ヶ国が加盟する。FCTC は、グローバル・ヘルス2 の分野における最初の多数国間条約として、また WHO が採択した唯一の条約として、注 目に値する。  FCTC に対する研究は、すでに社会科学および医学的な見地の両面から蓄積されてきて いるが、法的側面においては、たばこの規制と経済活動との関係に関する議論が目立つ3 他方で、FCTC それ自体のもつ法的特徴や、FCTC が構築しようとする法的枠組の分析は必 ずしも十分とは言えない。そもそも「枠組条約」は、「気候変動枠組条約(United Nations Framework Convention on Climate Change; UNFCCC)」に典型的にみられるように、多数 国間地球環境諸条約(multilateral environmental agreements; MEAs)の条約制度として発 展してきたものである。本論で見るように FCTC は当初から MEAs をモデルとして起草さ れ、締約国会議をはじめ、一見したところ MEAs と極めてよく似たシステムを有している。 しかしながら、なぜたばこの規制のために枠組条約方式が採用され、枠組条約としていか に機能しているのかは、十分な検討はなされていない。そこで本稿では、MEAs との比較 を通じて、FCTC が枠組条約としていかなるシステム的な特徴を有しているかを明らかに したい。そして本研究を通じて、グローバル・ヘルスという分野における国際法の役割を 考える一つの手がかりとしたい。

1. 条約によるたばこ規制の意義

1. 1 WHO におけるたばこ規制のはじまり-決議の蓄積- 1. 1. 1 WHO における規範形成の権限と特徴  WHO は、1948 年 4 月 7 日の WHO 憲章の発効にともない、国連憲章第 57 条の協定に 基づく専門機関として、ジュネーブに設立された。同機関は、「すべての人民が可能な最 高の健康水準に到達すること」を目的とし(WHO 憲章第 1 条)、「国際保健任務における 指導的かつ整合的機関」としての役割を担い(同第 2 条(a))、世界保健総会((World

Health Assembly; WHA)4、執行理事会(Executive Board; EB) 5および事務局(Secretariat)

によって運営される(同第 9 条)。  最高意思決定機関である WHA には、WHO 憲章第 19 条により「権限内の事項に関して 条約(conventions)又は協定(agreements)を採択する権限」が、また WHO 憲章第 21 条により、特定の事項に関する「規則(regulations)を採択する権限」が与えられている。 第 19 条に基づく条約又は協定は、三分の二の多数決により採択された後、各国の受諾を 要する一般的な国際条約の手続を定めたものであり、第 21 条に基づく規則はコントラク ティング・アウト方式によるものである6

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 本稿が検討対象とする FCTC は、第 19 条の下で採択された唯一の条約である。言い換 えれば、第 19 条に基づく権限は、WHO 設立以降約 50 年間一度も行使されることがなかっ た。また、第 21 条に基づく規則についても、国際保健規則および学術用語に関する規則 が僅かに存在するに過ぎない7。他方で、勧告(recommendation)および指針(guideline) は多数採択されてきた。  WHO のこうした拘束力ある規範形成への消極的態度は、批判の対象ともなってきた8 確かに、例えば専門機関として同様の立場にある国際労働機関(ILO)が、189 もの条約9 を採択しているのとは対照的である。概して、WHO は「規範(norm)の形成よりも法的 拘束力のない基準(standard)の形成を好む」10と評価される。 1. 1. 2 たばこ規制への取組み  WHO がたばこ問題に着手したのは 1970 年代に遡る。規範形成における上述の傾向は、 たばこ規制についても同様であり、WHA 決議が蓄積されてきた(表 1)。  WHA は、1970 年、喫煙が健康に重大な影響を与える−すなわち、気管支癌などの肺疾 患及び心臓疾患の深刻な要因となりうる−として、各国への喫煙対策への呼びかけを事 務局長に要請し(WHA.23.32)11、1978 年には、増税などの経済的措置を盛り込んだ決議 を採択した(WHA.31.56)12。1970 年代に、WHO がこうしたたばこ対策に着手した背景に は、当時におけるプライマリーヘルスケア(PHC)への関心の高まりがあったと考えられ る13。PHC の考え方に基づき、特定の製品が、健康の強化あるいは悪化に繋がるというこ とが 1970 年代に認識され、その一つに「たばこ」が挙げられた14。喫煙関連死は、喫煙 への個人的決定のみならず、たばこ製品の供給やマーケティングが関係していると考えら れるようになったのである15  1988 年、WHO 創設 40 周年を記念して「世界禁煙デー」が設定され(WHA40.38)16 1990 年には具体的な死亡者数に言及して注意が喚起された(WHA43.16)17。これによる と、喫煙率が減少しない場合には、1990 年代には毎年 300 万人がたばこに起因して死亡し、 その数は 2020 年には毎年 1 千万人に上ることが予測される。  1970 年以降、WHO は度重なる決議によりたばこ規制を訴えてきたが、こうした規制措置 の実施はあくまで加盟国の裁量であり、必ずしも多くの国家が従ったわけではなかった18 そして WHO において、伝統的な非拘束的アプローチは失敗であったという認識に至った と考えられる19  そこで 1995 年の WHA において初めて、条約作成の可能性が示された。すなわち、「た ばこ規制に関して、指針(guidelines)、宣言(declaration)または国際条約(international

convention)のような国際文書(international instrument)で展開する可能性」について、

次期総会における報告を事務局長に要請した(WHA48.11)20。ただし、本決議は法的拘束

力の無い指針や宣言の可能性も残されており、この時点における議論は「条約」作成に集 約されたものではない。

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1. 2 WHA 決議から条約へ 1. 2. 1 「枠組条約」の作成へ向けて  規範形成の可能性を事務局長に諮問する決議 WHA.48.11 に基づき、事務局長は報告書 「たばこ規制のための国際文書の発展可能性」21(以下、「事務局長報告書」)を提出した。 本報告書によると、たばこ規制のための方式は「非拘束的文書」と「拘束的文書」に大別 される。前者には、(a)決議(resolutions)及び(b)行為基準(codes of conduct)の 2 つのカテゴリーが、後者には(a)条約(treaties or conventions)、(b)条約−議定書方式 (convention-protocol approach)、及び(c)国際規則(international regulations)の 3 つの カテゴリーがあるとする。そして、各カテゴリーにおける利点と欠点を指摘する。拘束的 文書については、(a)の包括的な条約を採用した場合、明確な義務を国家に課すことはで きるが、その交渉には長時間を要し、発効には 10 年以上がかかると見込まれ、(b)の条 約−議定書方式は、条約には明確な義務を含まないため、非拘束的決議と条約の間に位置 するもので、政治的に受け入れ易いというメリットがある、とされる。このような方式は、 国連環境計画(UNEP)で用いられてきたものであり、オゾン層保護において広くコンセ ンサスを得たものであると言及される。

 本報告書を受けた翌 1996 年の WHA において、「枠組条約(framework convention)」

の発展を促す決議が採択された(WHA49.17)22。本決議をもって、たばこ規制のために、 WHO憲章 19 条に基づき、「枠組条約」を作成することが決定した23 1. 2. 2 ブルントラント事務局長の就任  1996 年に条約作成の決定がなされたものの、条約交渉がすぐに開始されたわけではな かった。1999 年に始まる本格的な条約交渉の実現を導いたのは、1998 年に WHO 事務局 長に就任したブルントラント氏24の手腕と評価される25。ブルントラント氏はかつて、通 称「ブルントラント報告書」26において「持続可能な発展」を提唱し、環境分野において 強力なリーダーシップを発揮した人物である。  ブルントラント氏は、WHO 事務局長の就任にあたり、たばこ対策を重要課題に挙げ、 特別プロジェクトとして「たばこフリーイニシアティブ(Tobacco Free Initiative; TFI)」 を立ち上げた。以後、条約作成への動きが加速し、具体的な条約交渉のプランを提示する

決議 WHA52.18(1999)27の採択へと至った。

1. 2. 3 WG 及び INB の創設と起草過程

 決議 WHA52.18(1999)により、専門家ワーキンググループ(WG)及び政府間交渉機 関(Intergovernmental Negotiating Body; INB)が創設され、条約起草に向けた本格的な交 渉が開始した。INB に先立って 2 回の WG 会合が開かれた後、第 6 回 INB において合意が

成立した28。本稿の検討に必要な次の 2 点を確認しておきたい。

(1)「枠組条約」の理解

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れ、その好例が「国際環境法」の分野であるとされた29。その中でも特に、「オゾン層を 破壊する物質に関するモントリオール議定書」(以下、「モントリオール議定書」)30、ワシ ントン条約(CITES)附属書(1989 年)及び MARPOL 条約が成功例とみなされている31 そして、「枠組条約」として次の 5 つの特徴を備えることが、条約の有効性に資するとさ れた。すなわち、(1)明確で正確な規則(rule)を含むこと、(2)検証しやすい規則を含 むこと、(3)途上国への支援を提供すること、(4)国家に報告書の提出を求め、国際的な 再検討メカニズムを確立すること、(5)締約国による定期的な会合を規定すること、であ る32  また、WG 第 2 回会合が採択した暫定草案において、当該草案が依拠した条約リストが 付属書として付けられた33。ここでは、バーゼル条約、生物多様性条約、京都議定書をは じめとする 17 の MEAs、海洋に関する 2 条約、特定通常兵器使用禁止制限条約、国際人 権規約及び国連麻薬新条約が挙げられている。  事務局長報告書においては、特にモントリオール議定書に言及され、条約交渉過程にお いては、多くの MEAs を参照しながら FCTC の起草が行われたと言える。 (2)議定書の可能性  WG 第 2 回会合において、3 つの議定書作成の可能性が提示された34。1 つは、広告と

支援(advertising and sponsorship)、2 つ目はたばこ依存症の治療(treatment of tobacco dependence)、3 つ目がたばこの密輸の撲滅(elimination of tobacco smuggling)である。  その後の INB においても、議定書の可能性について議論が重ねられ、INB 第 6 回会議に おいて「将来の議定書」としてまとめられた。これによると、(1)広告、販売促進、後援、 (2)たばこ製品の規制、(3)不法貿易、(4)責任について、4 種の議定書の可能性が挙げ られた35 1. 3 FCTC の成立と現状  6 回にわたる INB を経て、2003 年 5 月 21 日、WHA において FCTC がコンセンサスで 採択された。その後、2003 年 6 月 16 日から 22 日まではジュネーブの WHO 本部におい て、2003 年 6 月 30 日から翌年 6 月 29 日までニューヨークの国連本部において、同条約 は署名のために開放され、初日に 28 カ国36及び EC が署名した。40 カ国目の批准により、 2005 年 2 月 27 日、FCTC は発効した。2011 年 9 月現在、締約国は 174 カ国37に上る。

2. WHO たばこ規制枠組条約の内容- MEAs との異同-

 本稿第 1 章の検討から、FCTC はその起草段階から MEAs における枠組条約方式を主た るモデルとして作られたことが明らかとなった。そこで本章では、FCTC それ自体がいか なる点においてどの程度 MEAs との類似性を備え、「枠組条約」としての性質を有してい るかを検討したい38

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2. 1 趣旨および目的  FCTC は、たばこの流行が、公衆の健康に深刻な影響を与える世界的問題であることから、 最大限の国際協力を行うことを目指したものである(前文)。喫煙及び受動喫煙が病気の 原因及び発育上悪影響となることが科学的に立証されていることを認識し、途上国におけ るたばこ消費の拡大や、喫煙の低年齢化を危惧し、たばこ製品の不法取引への協力も必要 であるとする(前文)。  このようなたばこに対する問題意識の下で、FCTC は「たばこの使用及びたばこの煙に さらされることの広がりを継続的かつ実質的に減少させるため、締約国が自国において並 びに地域的及び国際的に実施するたばこの規制のための措置についての枠組を提示するこ とにより、たばこの消費及びたばこの煙にさらされることが健康、社会、環境及び経済に 及ぼす破壊的な影響から現在及び将来の世代を保護すること」を目的として締結された(第 3 条)。  現在及び将来世代の保護という理念は、ストックホルム宣言(1972 年)第 6 項39を淵 源とする。その後、CITES(1973 年)前文、UNFCCC(1992 年)前文、生物多様性条約(1992 年)前文などに引き継がれた。 2. 2 主権の位置づけ  FCTC も、こうした MEAs と理念の上においては類似性がみられるが、FCTC と MEAs に おける主権の位置づけは、必ずしも同じではない。  FCTC の前文は、「この条約の締約国は、公衆の健康を保護する自国の権利を優先させる ことを決意し」という文言から始まる。こうした自国権利を優先させる考え方は、FCTC にきわめて特徴的である。例えば、課税政策においては「締約国の主権的権利を害される ことなく、たばこの規制に関する自国の保健上の目的を考慮すべき」であるとする(第 6 条 2 項)。また、いわゆる受動喫煙からの保護は、「国内法によって決定された既存の国の 権限の範囲内で採択し及び実施」するものである(第 8 条 2 項)。  UNFCCC および生物多様性条約は、前文において自国の主権又は主権的権利を「再確認 する」が、「優先する」ものではない。また、そこで扱われる環境問題は、「人類の共通の 関心事」であり、すべての国が協力して対応にあたる必要がある(同 2 条約前文)一方 で、FCTC には、たばこの規制が「人類の共通の関心事」であるという認識は見られない。 FCTCと MEAs は、現在及び将来世代の保護という同様の理念を表明するが、それが「人 類の共通の関心事」であるという認識においてずれが生じており、そのずれは、国家主権 の位置づけに表れていると考えられる。こうした FCTC の立場は、以下に見るように、条 約上の義務および措置の規定の仕方にも反映されてくる。 2. 3 FCTC における義務と具体的措置  締約国に課される一般的義務としては、包括的計画を策定し、実施し、並びに定期的に 更新し及び検討すること(第 5 条 1 項)、国内に中央連絡先を確立すること(同 2 項)、喫

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煙の習慣又は受動喫煙の防止のための政策を実施し、たばこ産業の利益からその政策を擁 護すること(同 3 項)、実施措置、手続及び指針に関する提案の作成に協力すること(同 4 項)、他の機関と協力すること(同 5 項)、資金調達に協力すること(同 6 項)が課せら れるに過ぎない。さらに、第 4 項から第 6 項はあくまで「協力する」義務であり、一定の 行為を具体的に義務付けるものではない。  また、具体的措置としては、次のような内容が規定される。まず、上述の課税措置(第 6 条)や受動喫煙からの保護(第 8 条)に関する規定は、次のとおりである。    第 6 条 たばこの需要を減少させるための価格及び課税に関する措置  1. 締約国は、価格及び課税に関する措置が、様々な人々、特に年少者のたばこの消費 を減少させることに関する効果的及び重要な手段であることを認識する。  2. 各締約国は、課税政策を決定し及び確立する締約国の主権的権利を害されることな く、たばこの規制に関する自国の保健上の目的を考慮すべきであり、並びに、適当 な場合には、措置を採択し又は維持すべきである。その措置には、次のことを含め ることができる。    (a) たばこの消費の減少を目指す保健上の目的に寄与するため、たばこ製品に対す る課税政策及び適当な場合には価格政策を実施すること。    (b) 適当な場合には、免税のたばこ製品について一つの国から他の国に移動する 者に対する販売又は当該者による輸入を禁止し又は制限すること。  3. (省略)  第 8 条 たばこの煙にさらされることからの保護  1. 締約国は、たばこの煙にさらされることが死亡、疾病及び傷害を引き起こすことが 科学的証拠により明白に証明されていることを認識する。  2. 締約国は、屋内の職場、公共の輸送機関、屋内の公共の場所及び適当な場合には他 の公共の場所におけるたばこの煙にさらされることからの保護を定める効果的な立 法上、執行上、行政上又は他の措置を国内法によって決定された既存の国の権限の 範囲内で採択し及び実施し、並びに権限のある他の当局による当該措置の採択及び 実施を積極的に促進する。  第 6 条 1 項及び第 8 条 1 項は、締約国に対して「認識する」ことを義務付けているのみ である。また、第 6 条 2 項の、「適当な場合には」あるいは「含めることができる」とい う表現は、締約国に広い裁量の余地が残されており、非常に緩やかな義務であるといえる。 「国の権限の範囲内で」という第 8 条 2 項も同様の趣旨である。  また、たばこパッケージについて、第 11 条 1 項(b)(ⅳ)は、警告及び情報は、「主 たる表示面は 50 パーセント以上を占めるべきであり、主たる表示面の 30 パーセントを下 回るものであってはならない」とし、30 パーセント以上の表示を義務付ける。しかし、「写

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真若しくは絵によることができ、又は写真若しくは絵を含めることができる」(同条同項 (ⅴ))など、写真等の使用もまた各国の判断に委ねられている。  概して、FCTC が規定する義務及び措置は極めて緩やかで、各国に広い裁量の余地を残 したものとなっている40 2. 4 FCTC システムの構築  他方で、FCTC は「枠組条約」としての制度的側面においては、MEAs を踏襲するシス テムを構築しているといえる。すなわち以下に見るとおり、締約国会議、議定書、定期報 告、資金メカニズムという、MEAs に共通して見られる制度的要素を備えている。 2. 4. 1 締約国会議の設置

 FCTC は、締約国会議(Conference of the Parties; COP)を設ける(第 23 条)。WHO の 召集により開催される第 1 回締約国会議(COP1)において、その後の定期会合及び COP の手続規則が決定される(第 23 条 1 項・3 項)。COP は、「この条約の実施状況を定期的 に検討」し、「この条約の効果的な実施の促進のため必要な決定」を行い、「この条約の議 定書、附属書及び改正を採択」することができる(第 23 条 5 項)。また、「締約国が提出 する報告を検討」し、この条約の実施状況に関する定期的な報告を採択」することも締約 国会議の任務とされる(第 23 条 5 項(d))。その他、FCTC の目的達成のため「その他の 措置」について検討することができる(第 23 条 5 項(h))。

 今日までに、COP1(2006 年・スイス)、COP2(2007 年・タイ)、COP3(2008 年・南ア フリカ)、COP4(2010 年・ウルグアイ)が開催されている。 2. 4. 2 議定書の策定  FCTC は、COP において議定書を採択することを予定する(第 33 条)。議定書の採択は 原則としてコンセンサスによるが、コンセンサスに至らなかった場合には出席の 4 分の 3 の多数決による議決することができる(同 2 項)。FCTC の締約国のみが議定書に加入する ことができ(同 4 項)、議定書は当事国のみを拘束する(同 5 項)。FCTC 本体からの脱退は、 議定書も脱退したものとみなされる(第 31 条 3 項)。 2. 4. 3 定期報告制度の導入  締約国は、事務局を通じて、FCTC の実施について「定期的な報告」(periodic report) を締約国会議に提出する義務を負う(第 21 条 1 項)。報告の頻度及び形式については、締 約国会議で決定される(第 21 条 2 項)。 2. 4. 4 資金メカニズムの導入  FCTC の目的を達成するために資金が重要な役割を果たすとの認識により(第 26 条 1 項)、 締約国は、「この条約の目的を達成するための国内の活動に関して資金上の支援を提供す

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ること」(同 2 項)、「たばこの生産に代替する経済的に実行可能な活動」について支援す べきこと(同 3 項)が求められる。また、「関連する地域的及び国際的な政府間機関並び に資金供与機関及び開発機関に代表を派遣する締約国」は、開発途上国及び移行経済締約 国が条約義務を果たすことを支援するための資金援助を提供することが奨励される(同 4 項)など、とりわけ、開発途上締約国及び移行経済締約国への支援が特記される(同 3 − 5 項)。また、COP1 において、事務局による研究及び他の関連情報に基づき、援助の提供 元及び制度並びその妥当性について検討することが予定される(同 5 項(c))。

3. FCTC システムの実際

3. 1 FCTC システムの独自性 3. 1. 1 FCTC -議定書アプローチ  条約採択後約 9 年が経過した今日において、議定書の採択には至っていない。FCTC の 起草過程において想定された議定書41のうち、不法取引についてのみ 2007 年に条約交

渉機関(International Negotiating Body on a Protocol on Illicit Trade in Tobacco Products; INB-IT)が創設され、INB-IT の下で「たばこ製品不法取引の排除のための議定書」(以下、 「たばこ不法取引議定書」又は「議定書」)が草案段階にある42。同議定書全 49 条のうち、 20 ヶ条についてコンセンサスが成立している。  たばこ不法取引議定書草案は、「第 1 部:序」(第 1 − 3 条)、「第 2 部:一般的義務」(第 4 条)、「第 3 部:供給の連鎖の規制」(第 5 − 11 条)、「第 4 部:犯罪」(第 12 − 19 条)、「5 部: 国際協力」(第 20 − 33 条)、「第 6 部:報告」(第 34 条)、「第 7 部:国際協定と財政資源」 (第 35 − 38 条)、「第 8 部:紛争解決」(第 39 条)、「第 9 部:議定書の発展」(第 40 − 41 条)、「第 10 部:最終規定」(第 42 − 49 条)から構成される。本議定書草案は、たばこの 不法取引が「犯罪」を構成するものとし(第 12 条)、当該犯罪のための管轄権を確認し(第 26 条)、合同調査(第 27 条)、法執行協力(第 28 条)、司法共助(第 30 条)、犯罪人引渡 し(第 31 − 33 条)を通じ、当該犯罪の取り締まりのための国際協力の枠組の構築を目指 す。すなわち、FCTC 第 15 条に規定される「たばこ製品の不法な取引」を、議定書によっ て国際犯罪と位置づけ、取締の強化を狙ったものである43、44  このように、条約本体の一部を議定書において「国際犯罪」として位置づけ、各国にそ の取締りの義務を課すという方式は、「児童の権利条約」と「児童の売買等に関する児童 の権利条約選択議定書」の関係などにみられる。しかしこの関係は、枠組条約方式を意味 する「条約−議定書アプローチ」とは異なる性質のものである。FCTC は、MEAs と同様に、 議定書による条約の発展を外形上は制度として備えているが、現在起草中のたばこ不法取 引議定書草案に限ってみれば、「FCTC −議定書アプローチ」は、MEAs にいう「条約−議 定書アプローチ」とは、異質のものであるといえよう。

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3. 1. 2 FCTC -ガイドラインアプローチ  締約国会議において、議定書の策定が滞る一方で、「ガイドライン」の作成が積極的に 行われてきた。FCTC ガイドラインは、枠組条約の各条項の実施について詳細を定めるも ので、第 2 回締約国会議において、第 8 条、第 3 回締約国会議において、第 5 条 3 項、第 11 条及び第 13 条、第 4 回締約国会議において、第 9 条及び第 10 条、第 12 条ならびに第 14 条に対してガイドラインが採択された。  しかしながら FCTC 上、締約国会議における「ガイドライン」の作成について、その根 拠は不明確である。確かに、締約国は、一般的義務の中で条約及び議定書の実施のために ガイドラインに関する提案の作成に協力する義務を負っている(第 5 条 4 項)。そして、 第 7 条、第 8 条、第 14 条においてガイドラインの作成が示唆される。他方で、締約国会 議について定める第 23 条の中に、ガイドラインの作成は明示されていない。条約の目的 達成のための「その他の措置」(第 23 条 5 項(h))に含まれると考えられるが、この点 についての明確な説明は得られていない。この点、第 23 条 5 項で明示規定のある「議定書」 とは、明らかに異なる。  ガイドラインは、「締約国が、条約の各条項の下での義務を果たすことを促進すること」 (8 条ガイドライン「ガイドラインの目的」)を目的とする。具体的には、各条項において さらに細かい原則を提示し、当該条文中の用語の詳細な定義を行い、中には罰則(penalty) や制裁(sanction)を置くなど、厳しい内容となっているが、議定書のような法的拘束力 はない。したがって、ガイドラインを採用するか否かも、結局は国家の裁量によることに なる。  このような、「FCTC −ガイドラインアプローチ」は、MEAs には存在せず、MEAs と比 較する限りにおいて、FCTC に独自のシステムといえる。そして、議定書よりもガイドラ インの方がはるかに先行して蓄積されているところに、FCTC の特徴、ひいては WHO に おける従来の非拘束的アプローチの偏重が反映されているようにみえる。  他方で、国際人権規約の各条項に対して、条約履行機関である人権委員会が発している 一般的意見との類似性がみられる。一般的意見は、それ自体に法的拘束力はないが、「条 約運営機関の条約目的促進的」な解釈として、法的拘束力はなくとも加盟国を条約目的の 達成へ誘導する働きをもったものと考えられる45。FCTC ガイドラインが、法的拘束力は なくとも、それが国家によって尊重され、条約目的の達成に一定の誘導的役割を果たすな らば、同様の趣旨をもつ制度として捉えることもできるだろう。 3. 1. 3 定期報告のデータベース化  定期報告の具体的な方式は、FCTC/COP1 で採択された(FCTC 第 21 条 2 項、FCTC/ COP1(14))。ここで決定された FCTC における定期報告制度は、予め設定された質問に 対して、Yes 又は NO で応えるという方法を採用している。質問項目は非常に多く、例えば、 FCTC第 8 条の「たばこの煙にさらされることからの保護」に関する報告事項は、政府機

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facilities)等、個々の施設において包括的な受動喫煙対策がとられているかどうかについ て回答しなければならない。公共交通機関も同様に、交通手段別に回答する必要がある。  こうした定期報告の方法は、国家にとっては負担が少ない。2010 年までに第 1 回報告 書の提出締切りが来ている 160 カ国のうち、未提出は 17 カ国のみで、提出状況は概ね良 いといえる。報告内容はデータベース化されて WHO のホームページに公開され、各国の たばこ対策を容易に把握できるシステムとなっている。  FCTC における定期報告制度は、各国からの詳細なデータ収集により、各国の状況を細 かに把握できるところに特徴がある。 3. 2 「枠組条約」概念の揺らぎ  以上に見てきたとおり、MEAs をモデルとして出発し、同様のシステムを備えた FCTC ではあるが、実質的には異なっている面が多い46。なぜこうした状況が生まれているのか、 本稿から明らかになった点を手がかりとして、最後に検討を加えたい。  すでに見たとおり、たばこ規制の規範作成に当たり「条約−議定書方式」に最初に触れ た事務局長報告書は、同方式が、条約には明確な義務を含まないため、非拘束的決議と条 約の間に位置するもので、政治的に受け入れ易いというメリットがあり、UNEP で採用さ れ、オゾン層保護において広くコンセンサスを得たと説明された(本稿 1. 2. 1)。  そして、それに続く WG の議論の中で、「枠組条約」の特徴が、(1)明確で正確な規則、 (2)検証しやすい規則、(3)途上国への支援の提供、(4)国家報告書の提出、国際的な再 検討メカニズムの確立、(5)締約国による定期的な会合の提供、であるとされた(本稿 1. 2. 3(1))。  「枠組条約方式」の理解として、このような捉え方はどこまで普遍性をもちうるであろ うか。  一般国際法上、「枠組条約(framework convention)」に対する一致した理論的定義は確 立しておらず、どこまでを枠組条約に含めるかも論者によって少しずつ異なる。  枠組条約は従来の多数国間条約とは異なり、「協力義務に関する一般原則を定めるとと もに、その義務の内容を厳格にし随時定期的に補完して一般的な適用を確保するため、新 しい法制度の創設についての枠組となるものである」と説明される47。それと同時に、枠 組条約が地球環境保護の分野に特徴的な方式であることも、共通した認識である48。1987 年のモントリオール議定書は、環境保護に関する多数国間条約の成功例とみなされ、こう した方式に倣って UNFCCC が作成された49。ウィーン条約及びモントリオール議定書が、 枠組条約方式あるいは条約−議定書アプローチとして新しい多数国間条約のモデルとして 注目されるようになったのである。  それではなぜ、オゾン層保護において、このような方式が必要とされたのであろうか。  オゾン層の破壊や気候変動などに対して、いかなる物質がいかなる影響を与え、どの程 度規制すればどれだけの成果が得られるのか、それを見極めるには「科学的知見」が必要 とされる。しかしながら、ウィーン条約が採択された 1985 年、また UNFCCC が採択され

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た 1992 年当時、十分な科学的知見が確立していたわけではない。ウィーン条約の締約国 会議が、「科学上の情報を検討すること」を任務の一つとし(第 6 条 4 項(b))、UNFCCC の締約国会議も、「科学上及び技術上の知識の進展に照らして」条約制度を定期的に検討 することを規定している(第 7 条 2 項(a))のも、こうした背景によるものであろう。モ ントリオール議定書が、「環境に関する知見と設定された規制実施の経験に照らして、時 を経るに従って、対策の強化と締約国の義務の加重が講じられるのが本議定書における国 際協力の特徴」50と位置づけられるのも、同様の趣旨によると考えられる。すなわち、地 球環境分野において枠組条約方式が採用されるのは、「科学的不確実性」への対応のため という理由が大きかったといえる51。枠組条約の利点が、「一般的な拘束的指針(some

general binding guidelines)を定めた後に、徐々に、特定の法的義務を持つ合意を徐々に

形成できる点にある」52とされるのは、まさに科学的不確実性への対応のために長期的視野 に立った規範形成に有用であるからであろう。そして、後の合意形成のために、締約国会 議が設けられ、締約国会議における議定書の採択、資金メカニズムの構築、定期報告の検 討など制度的基盤が、枠組条約の目的達成へのシステムとして確立してきたといえる53 具体的な義務は後の議論に委ねられるため、枠組条約本体の役割は、こうした制度形成の 基盤を構築する点にあると考えられる。そのため厳格な義務規定を持たない枠組条約は、 結果として普遍性の確保にも資するのであるが、普遍性の確保のために枠組条約自体の義 務を緩やかにしたわけではないであろう。  こうした「枠組条約」の概念の揺らぎは、他の分野においても見られるようになって きている。「枠組条約」という名称は、UNFCCC 及び FCTC 以外に、「少数民族保護のため の枠組条約」54(以下、「少数民族保護枠組条約」)(1998 年採択)、「市民防衛協力に関す る枠組条約」55(2001 年採択)及び「社会文化遺産の価値に関する欧州審議会枠組条約」56 (2011 年採択)において用いられている57。少数民族保護枠組条約を採択した欧州審議会 の説明は、同条約の目的を「法原則(legal principal)を明確にすること」と述べる58。同 条約には締約国会議が設けられておらず、閣僚委員会が履行監視を行うこととなっており (24 条 1 項)、事務総長に対して自国でとった措置に関する「情報(information)」を定期 的に伝える制度となっている(25 条)。少数民族保護枠組条約は、MEAs における枠組条 約のような、長期的な条約発展を形成するシステムとは言い難い。  こうした状況をみる限りにおいて、枠組条約方式は、科学的知見に基づく長期的な視野 にたった合意の構築に資するものとして発達したものでありながら、次第に枠組条約自体 の義務の希薄性のみが着目されるようになってきていると考えられる。

おわりに

 FCTC と MEAs は確かに、形の上ではよく似たシステムを有している。しかしながら、 その中身においては異なっており、FCTC 独自のシステムが構築されつつあるといえる。 FCTCは、現在のところ、その条約目的全体の達成を目指すため、議定書により義務の強

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化を図るというシステムではない。FCTC 自体に、措置が詳細に盛り込まれており、その 多くが国家に裁量の余地を残している。本条約の実効性に対して、「たばこの規制のための 基準や準則が整備され着実に実施されていくか否かは、各国の保健当局自身が如何に国内 の他の関係当局との調整・連携を強化することができるかに掛かっていると言える。」59 いう指摘はまさにその通りである。しかし、そもそも条約によるたばこ規制に着手された 背景には、WHO の伝統的な非拘束的アプローチの限界にあったことに鑑みれば、このよ うな状況は、結局その出発点へ回帰しているという批判は免れないだろう。  しかしながら、FCTC がグローバル・ヘルスという分野における最初の多数国間条約と して成立したことには大きな意義がある。今後いかなる発展を遂げるのか、また同分野に おいて条約という方式による規範形成が進むのかどうか、今後の動向に注目したい。 (Endnotes) 1 日本語公定訳は、外務省ウェブサイトを参照〈http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/treaty/pdfs/ treaty159_17a.pdf〉。また、日本語による条約解説に次のものがある;外務省「たばこの規制に 関する世界保健機関枠組条約の説明書」(平成 16 年 3 月)〈http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/ treaty/pdfs/treaty159_17b.pdf〉;長尾成敏 「たばこの規制に関する世界保健機関枠組条約−平成 17 年 2 月 2 日条約第 3 号」法令解説資料総覧 283 号 59-62 頁(2005);中村和彦「たばこの規制に 関する世界保健機関枠組条約」ジュリスト 1274 号 84-90 頁(2004)。

2 WHO において、“International Public Health”から“Global Public Health”へ概念の変化がみられ る。前者が国家間関係を重視するのに対し、後者は国家のみならず様々なステイクホルダーを含 有する(Kelly Lee, The World Health Organization (WHO), Routledge, 2009, p. 99.)。また、“Public Health”は、「公衆衛生」や「保健」と訳されることもあるが、同概念はいずれをも含むより広い ものであると考えられる。したがって本稿では暫定的に「グローバル・ヘルス」とする。 3 例えば、Alyssa Woo, “Health Versus Trade: The Future of the WHO's Framework Convention on

Tobacco Control”, Vanderbilt Journal of Transnational Law, Vol. 35, No. 5, 2002, pp. 1731-1767; Benjamin C. Adams, “(Chapter 5) The WHO Framework Convention on Tobacco Control and Trade Related Protocols”, Reconciling Environment and Trade, Transnational Publishers, 2001, pp. 133-154; Joseph N. Eckhardt, “Balancing Interests in Free Trade and Health: How the WHO's Framework Convention on Tobacco Control Can Withstand WTO Scrutiny”, Duke Journal of Comparative &

International Law, Vol. 12, No. 1, 2002, pp. 197-229、など。

4 WHA は、加盟国の代表で構成される。代表には「保健の分野(in the field of health)における 技術的才能によって最も資格を有し、なるべく加盟国の保健行政官庁を代表する者の中から選定」 することが求められる(WHO 憲章第 11 条)。 5 地理的配分により、アフリカ地域 7 議席、アメリカ地域 6 議席、東地中海地域 5 議席、ヨーロッ パ地域 8 議席、東南アジア 3 議席、西太平洋地域 5 議席が配分される(外務省「世界保健機関憲 章第二十四条及び第二十五条の改正の説明書」)。 6 専門機関におけるコントラクティング・アウト方式による「技術規則」は、条約とは異なる新し いカテゴリーの規範と考えられる。(篠原梓「国際法定立における国家の同意の役割−黙示同意 の推定からコントラクティング・アウトへ−」亜細亜大学国際関係紀要 13 巻 2 号 27-28 頁(2004)。)

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7  D. P. Fidler, International Law and Public Health: Materials on and Analysis of Global Health

Jurisprudence, Transnational Publishers, 2000, p. 119.

8  フ ィ ド ラ ー は、 第 19 条 の 不 使 用 を「 半 世 紀 の 怠 慢(A Half- Century of Neglect)」 と 呼 ぶ (ibid.)。19 条に関連する批判を整理したものとして、Christine P. Bump, “Close But No Cigar:

The WHO Framework Convention on Tobacco Control's Futile Ban on Tobacco Advertising”, Emory

International Law Review, Vol. 17, No. 3, 2003, p. 1264, footnote 89。

9 ILO 条約のリストは〈http://www.ilo.org/ilolex/english/convdisp1.htm〉を参照。

10 Claude-Henri Vignes & Hans J. Schlenzka, “World Health Organization”, Rudolf Bernhardt,

Encyclopedia of Public international Law, Vol. Ⅳ, Elsevier, 2000, p. 1496.

11  “WHA.23.32”, World Health Organization, Handbook of Resolutions and Decisions of the World Health

Assembly and the Executive Board, Vol. Ⅰ, 1973, p. 110.

12  “WHA.31.56”, World Health Organization, Handbook of Resolutions and Decisions of the World Health

Assembly and the Executive Board, Vol. Ⅱ, 1985, pp. 174-175.

13 PHC は、1978 年 9 月に開かれたプライマリーヘルスケアに関する国際会議において、「アルマ・ アタ宣言」(”Declaration of Alma-Ata”)としてまとめられた。

14 Kelly Lee, supra note 2, p. 87. 15 Ibid.

16  “WHA.40.38”, World Health Organization, Handbook of Resolutions and Decisions of the World Health

Assembly and the Executive Board, Vol. Ⅲ, 3rd. ed., 1993, p. 54. 17  “WHA.43.16”, id., pp. 55-56.

18 Allyn L. Taylor, “An International Regulatory Strategy for Global Tobacco Control”, The Yale Journal

of Interniatonal Law, Vol. 21., No. 2, 1996, p. 273-278. 19 D. P. Fidler, supra note 7, p. 184.

20  “WHA.48.11”, WHA48/1995/REC/1, p. 12-13.

21 “the feasibility of developing an international instrument for tobacco control” (EB 97/INF. DOC./4), Allyn h. Taylor and Ruth Roemer, International Strategy for Tobacco Control, WHO/PSA/96.6, 1996, pp. 36-40.

22  “WHA.49.17”, WHA49/1996/REC/1, pp. 16-17. 同決議の前段階にある EB においては、WHO 憲章 第 19 条の単独運用説と、第 19 条と第 21 条の併用運用説の対立があったとされる(臼田・玉城・ 紺野・河野「『たばこ規制枠組み条約』の成立過程と今後の運用方向性」日本公衆衛生雑誌第 50 巻 11 号 1058-1059 頁(平成 15 年)。

23 事務局長報告において枠組条約方式が提示され、WHA においてこれが採用された背景には、 ロエマー及びテイラーによってまとめられた背景文書(background document)の貢献があ る(Judith Mackay, “The Making of a Convention on Tobacco Control”, Bulletin of the World Health

Organization 2003, 81 (8), p. 551.)。

24 ブルントラント氏は、医者からノルウェー環境大臣へ転身し、その後首相に就任した。首相時 代に「環境と開発に関する世界委員会」の議長を務め、同委員会が 1987 年に出版した『人類 共通の未来』の中で「持続可能な発展」という概念を提唱したことで広く知られる。2002 年に 出版された自伝の中にも、たばこ規制への言及がある(Gro Harlem Brundtland, Madam Prime

Minister: a Life in Power and Politics, Farrar, Sstraus and Giroux, 2002, pp. 462-463;(邦訳)竹田ヨハ ネセン裕子『世界で仕事をするということ』240-241 頁(PHP 研究所、2004))。

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25 Christine P. Bump, supra note 8, pp. 1252-1253.

26 World Commission on Environment and Development, Our Common Future, Oxford University Press, 1987.(邦訳)大来佐武郎(監修)『地球の未来を守るために』(福武書店、1987)。

27  “WHA.52.18”, WHA52/1999/REC/1, pp. 21-24.

28 日程は次のとおりである。WG−1(1999 年 10 月 25 日−29 日); WG−2(2000 年 3 月 27 日−29 日); INB−1(2000 年 10 月 16 日−21 日); INB−2(2001 年 4 月 30 日−5 月 5 日); INB−3(2001 年 11 月 22 日−28 日); INB−4(2002 年 3 月 18 日−23 日); INB−5(2002 年 10 月 14 日−25 日); INB−6(2003 年 2 月 17 日−28 日)。

29 A/FCTC/WG1/4 (16 August 1999), para 1. 30 1987 年 9 月 16 日採択、1989 年 1 月 1 日発効。 31 Supra note 29, paras 2-4.

32 Id., para 5.

33 A/FCTC/WG2/3 (29 February 2000), Annex 1. 34 A/FCTC/WG2/4 (15 February 2000). 35 A/FCTC/INB6/INF.DOC./2 (18 January 2003). 36 バングラデシュ、ボツワナ、ブラジル、ブルンジ、チェコ、デンマーク、フィンランド、フラン ス、ガンビア、ギリシャ、ハンガリー、アイスランド、イラン、イタリア、クウェート、ルクセ ンブルク、マルタ、マーシャル諸島、モンゴル、オランダ、ニュージーランド、ノルウェー、パ ラオ、パラグアイ、南アフリカ、スペイン、スウェーデン、英国の 28 カ国である。 37 日本は 2004 年 6 月 8 日に受諾書を寄託し、19 番目の加盟国となった。アルゼンチン、キューバ、 チェコ、エルサルバドル、エチオピア、ハイチ、モロッコ、モザンビーク、スイス、アメリカは、 署名のみで未批准のままである(2011 年 9 月現在)。 38 FCTC の全体像は、表 2 を参照されたい。また、本文中における引用条文中の下線は、筆者によ るものである。 39 ストックホルム宣言第 6 項は次のように述べる。「現在及び将来の世代のために人間環境を保護 し改善することは、人類にとっての至上の目標、すなわち平和及び世界的な規模での経済的、社 会的発展という確立した基本的目標ととともに、またこれらの目標との調和のもとに追求される べき目標となった。」(訳は、松井芳郎(編集代表)『ベーシック条約集 2011 年版』(東信堂)による。) 40 Dresler Carolyn, “The Emerging Human Right to Tobacco Control”, Human Rights Quarterly, vol. 28,

2006, p. 648. 41 Supra note 35.

42 “Draft Protocol to Eliminate Illicit Trade in Tobacco Products”(FCTC/COP/4/5)(2010).

43 国連の犯罪防止システムとの関連性について、Boister Neil, “The (UN-) Systematic Nature of the UN Criminal Justice System: the (NON) Relationship between the Draft Illicit Tobacco Trade Protocol and the UN Convention Against Transnational Organised Crime”, Criminal Law Forum, Vol. 21, No. 3-4, 2010, pp. 361-397。

44 たばこ密輸の問題性について、Bositer Neil & Burchill Richard, “Stopping the Smugglers: Proposals for and Additional Protocol to the World Health Organization's framework Convention on Tobacco Control”, Melbourne Journal of International Law, Vol. 3, Issue 1, 2002〈http://www.austlii.edu.au/au/ journals/MelbJlIntLaw/2002/2.html〉。

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46 FCTC と MEAs の違いについて、締約国会議の脆弱性、すなわち下部組織の未発達も指摘され ている(Allyn L Taylor, “Trade, Human Rights, and the WHO Framework Convention on Tobacco Control: Just What the Doctor Ordered?”, at Thomas Cottie, Joost pauwelyn and Elysabeth Burgi Bonanomi (eds.), Human Rights and International Trade, Oxford University Press., 2005, p. 331.)。 47 山本草二「国際環境協力の法的枠組の特質」ジュリスト 1015 号 145 頁(1993)。山本草二『国際

法(新版)』673 頁(有斐閣、1994)。

48  山 本 草 二、 同 書 同 頁。Particia Birnie, Alan Boyle, Catherine Redgwell, International law and the

Environment, 3rd (ed.), Oxford Press, 2009 p. 17. ただし、環境分野に多くみられるという趣旨であ り、環境分野に限らるというわけではない(松井芳郎『国際環境法の基本原則』37 頁(東信堂、 2010)。

49 United Nations Framework Convention on Climate Change (Web site), ”First Step to safer future: the Convention in summary”. 〈http://unfccc.int/essential_background/convention/items/6036.php〉 50 猪又忠徳「オゾン層保護のためのモントリオール議定書における国際協力の枠組」国際協力論集 (神戸大学)第 8 巻 1 号 2 頁(2000)。 51 井上秀典「(第 2 章)気候変動枠組条約の法的意義と今後の展開」環境法研究(有斐閣)第 22 号 17 頁(1995)。大塚直『環境法』118 頁(有斐閣、2002)。松井芳郎、前掲書(注 48)、27-28 頁。 西井正弘「(第 5 章)国連 UNFCCC および京都議定書」西井正弘・臼杵知史(編)『テキスト国 際環境法』93 頁(有信堂、2011)。

52 Antonio Cassese, International law, 2nd. (ed.), Oxford University Press, 2005, p. 493. 53 Christopher C. Joyner, International Law in the 21st

Century: Rules for Global Governance, Rowman & Littlefield Publishers, 2005, p. 210.

54 “Framework Convention for the Protectionn of National Minorities” (CETS, No. 157). 1995 年 2 月 1 日署名開放、1998 年 2 月 1 日発効。

55 “Framework Convention on Civil Defence Assistance”. 2000 年 5 月 22 日採択、2002 年 2 月 19 日 発効。

56 “Council of Europe Framework Convention on the Value of Cultural Heritage for Society” (CETS, No. 199). 2005 年 10 月 27 日署名開放、2011 年 6 月 1 日発効。

57 二国間で締結された枠組条約や、”framework treaty”、”framework agreement”という名称の条約も ある。これらも含めて「枠組条約」をどのように理解するかは、別途検討の余地がある。 58 Council of Europe, “Explanatory Report to the Framework Convention for the Protection of National

Minorities”.〈http://www.conventions.coe.int/Treaty/en Reports/Html/157.htm.〉 59 中村和彦、前掲論文(注 1)、90 頁。

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(表 1)喫煙及びたばこに関する WHA 決議一覧 採択年月 文書記号 備考 1970.5 WHA.23.32 喫煙規制としての最初の決議。喫煙 (smoking) が、気管支癌、慢性 気管支炎、肺気腫、虚血心臓病を含む、肺疾患及び心臓疾患を拡大 させる深刻な要因であることに留意し、各国への喫煙対策を事務局 長に要請する。 1971.5 WHA24.48 1976.5 WHA29.55   1978.5 WHA31.56 喫煙に関する教育プログラムの強化、特に増税による包括的なたばこ販売への規制の履行、非喫煙者の権利の保護、たばこ生産者への 経済的代替方法の模索を、加盟国に促す。 1980.5 WHA33.35   1986.5 WHA39.14   1987.5 WHA40.38   1988.5 WHA41.25 適応可能な立法および管理措置を含むあらゆる適切な方法を通じて、喫煙の流行を低減させるようすべての加盟国に要請する。1988 年 4 月 7 日を「世界禁煙デー」とする。 1989.5 WHA42.19   1990.5 WHA43.16 受動喫煙の危険性に関する証拠の蓄積、及び、今日の喫煙率が減少 しない場合には、1990 年代には毎年 300 万人がたばこに起因して 死亡し、その死亡者数は 2020 年には毎年 1 千万人に上ることを予 測する WHO の最新報告に対して深く危惧する。 1991.5 WHA44.26   1992.5 WHA45.20   1993.5 WHA46.8   1995.5 WHA48.11 た ば こ 規 制 に 関 し て、 指 針(guidelines)、 宣 言(declaration) ま た は 国 際 条 約 (international convention) の よ う な 国 際 文 書 (international instrument)で展開する可能性について、次期総会に おいて報告するよう事務局長に要請する。 1996.5 WHA49.16 1996.5 WHA.49.17 枠組条約の作成の決定

1999.5 WHA52.18 INB の創設、ワーキンググループの創設、(Annex)2003 年の完成を目指す条約起草スケジュール

2000.5 WHA53.16 2000 年 10 月に INB 第 1 回会合を開催するための準備等 2003.5 WHA56.1 条約採択

 World Health Organization, Handbook of Resolutions and Decisions of the World Health

Assembly and the Executive Board, Vol.Ⅰ(1948-1972)、Vol. Ⅱ(1973-1984)、Vol.

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