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オーストラリアにおける地上波デジタル放送政策と視聴者の反応

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(1)

視聴者の反応

The Policies of Digital Terrestrial Broadcasting

and Reactions of the People in Australia

Atsuko KATORI

l)は

じめに 地上波デジタル放送はイギ リス

BBC(98年

9月 )を皮切 りに

,ア

メリカ (98年11月

),ス

ウェー デン (99年 4月

),ス

ペ イン (00年 5月

)な

どが先行 し

,01年

はオース トラ リア

,

/ツ

,フ

ィ ンラン ド

,ノ

ルウェー

,韓

,そ

して

,03年

はフランス

,同

年末には 日本 といった具合に多数の 国々が次 々と導入に踏み切 っている。地上波のデジタル化はいまや国際的な流れになっているが, それは一方で

,イ

ンターネ ットの高度化に伴い放送の高度化が不可避になって きたことを意味す る (香取,2002a)。 もっとも

,だ

か らといってデジタル化への移行がスムーズに展開されている わけではない。先行するイギ リスやアメリカではデジタルテレビの普及率の低 さに悩み

,さ

まざ まな普及促進策が試み られてきたが

,必

ず しも成功 しているとはいいがたいのである。 た とえば

,有

料で放送 してきた

/ギ

リスの ITVDigitalは 経営破綻 し

,02年

5月 1日 に放送サー ビスを停止 した。直接的な原因は高額のスポーツ放送権料の負担 に耐 えられなかったか らとされ ているが

,STB(セ

ッ ト・ トップ・ボ ックス

)の

無料配布の コス ト負担 が きつかった こと

,デ

ジタル周波数の全国カバー率が

65%程

度で しかなかったこと

,ス

クランブル解除の偽造カー ドが 出回った こと

,有

料放送市場では後発であったこと

(BskyBが

先行

)な

ども経営破綻の原因だ と指摘 されている (中村,2002)。 また

,普

及が遅れているアメリカでは06年のデジタルヘの完 全移行が可能か どうかが疑問視 されは じめてお り

,FCCは

02年8月 8日

,家

電業界に対 しすべ てのテレビ受像機 に

DTVチ

ューナーの内蔵を義務づけたはどだ

(FCC NEWS,August 8,2002)。

地上波のデジタル化は各国で急がれているが

,実

際にはなかなか普及 しそうにない というのが ど うや ら現状のようである。地上波をデジタル化 した とはいえ

,そ

のビジネスモデルがまだ構築で きていないか らであろう。 そこで

,本

稿では01年 1月 1日に地上波デジタル放送を開始 したオース トラ リアを取 り上げ, なぜ地上波デジタル化の導入に踏み切 ったのか

,

どのような展望の もとに豪政府は放送のデジタ ル化を推進 しようとしているのか。地上波デジタル化に至 る初期プランを把握 した うえで視聴者 に対する調査を実施 し

,視

聴者の側か ら地上波デジタル放送政策のあ り方を検証 してみることに したい。

2)デ

ジタル化にいたる政策過程 2001年 1月 1日

,オ

ース トラリアはシ ドニー

,メ

ルボルン

,ブ

リスベン

,パ

ース

,ア

デレー ド 子 淳 取 香

(2)

-31-の

5都

市 で地上波 デジタル放送 を開始 した。 いずれ もオース トラ リアの中では人 口集中度の高い 大都市 であ る。豪政府 は これ らの都市 を中心 にデジタル放送 を充実 させてい く一方

,周

辺地域の デジ タル化 を漸次

,推

進 す る。オース トラ リア全域で一挙 にデジタル放送 を開始す るのではな く , 可能 な地域

,購

買能 力のあ る視聴者 か ら普及の促進 を図 ろう とい う戦略なのである。 もちろん , アナ ログテ レビを見 て い る視聴者 の元 にい きな リデ ジ タル放送 だけを送信す るわけにはいかな い。したが って

,先

行の

5都

市 については当面

,サ

イマル放送 (アナ ログ とデジタル両方 で放送) を実施 し

,8年

間の猶予期間を設 けた後

,09年

にはアナ ログを停波 す る とい う段取 りで取 り組む。 まず はォース トラ リアの地上放送 の デジ タル化 を方 向づけた

ABA(Australian Broadcasting

Authority)の見解 を概観 す ることに しよう。 (1)Australian Broadcasting Authorhyの 見解

オース トラ リアでは欧米の動 向に合 わせ

,す

で に97年 7月 半ば に専門家グループに よる地上波 デ ジ タル放送 の導入 に側 す る報告書 が 出 されてい る。

DTTB(Digital Terrestrial Tele

siOn

Broadcasting)専 門家 グルー プは

,ア

メ リカや イギ リスがまだデジタル放送 を開始 す る前の1997 年 1月30日に報告書 を出 し

,ABAの

放送 デジ タル化 の推進 を奨励 してい る。彼 らが重要課題だ と認識 していた事項 を大別す る と以下の

3つ

にな る。すなわち

,①

放送方式

,②

システムお よび 関連法案

,③

実施 スケジ ュール

,等

々。 これ らについて

ABAは

以下 の ような見解 を持 つ。 ① 放送方式

DTTBの

実 施 は放送界 が この計画 に どの程度

,継

統 的 に関与 で きるか とい うこ と

,政

府 が ど の よ うな政策 を展開す るか とい うこ とに大 き く依存す る。詳細な電波計画の施行 には

DTTBに

対 す る政府 の長期 目標 に も とづ く明確 な指導 が不可欠 だか らである。 さらに

,DTTBは

二 つの 方式

(HDTVと

SDTV)で

伝 送 され るが

,ど

ち らの方式 がオース トラ リアのニーズ に もっ とも 合致 してい るのかを考 えるこ とも重要であ り,政府の指導が要求 される局面は以下の通 りである。

DTTBは

どの方式 によ って実施 されるべ きか?

ABAは

地上波放送 に高解像度方式

(HDTV)で

放送 可能 な電波 が割 り当て られ

,ア

ナ ログか らデ ジ タル ヘの変換 が実現 すれば

,莫

大 な公共 の利益 が期待 で きる とい う。 だ か ら

,ABAは

ABC,SBSと

3つ

の商業放送局各個 に

7 MHzの

チ ャンネル が割 り当て られ ることを要求す るの で あ る。 もし

,地

上放 送局 に

7 MHzの

チ ャン ネル が割 り当て られなければ

,標

準解 像 度方式

(SDTV)よ

りもは るかに優 れたサー ビスを提供 で きる

HDTVを

視聴者 は受信 す るこ とがで き な いか らだ。 さ らに

,DTTBは

有料 で はな く無料 で提供 すべ きだ し

,既

存 の放 送事業者 は最終 的 にはすべてデジタル技術 で放送 を継続すべ きだ とい う。そ して

,そ

のためには都市圏か ら地方 圏へ とい った具合 にデジタル化 を段階的 に実施す るこ とが肝要だ とい うのである。放送のデジタ ル化の推進 は豪政府 に とって インフラ整備の一環 と考 え られていた節がある。 どんな条件 な ら既存の放送事業者の参入が認め られるのか?

ABAは ,USモ

デル に倣 ってサ イマル放送 をデジタル化 の必要条件 にすべ きだ とする。

USで

DTTBが

始 まる と地上波放送事業者 はすべてアナ ログのサ イマル放送を進めなければな らず , しか も

,HDTV方

式 で放送 しなければな らない。 さ らに環境 が整 えば

,sDTVで

同時 に一 つ以 上 の番組 を放送 す るマルチプ ログ ラムモー ドも実施すべ きだ とす る。

HDTVを

基本方式 とし,

SDTVで

放送 す る場 合 はデジ タル技術 の多様 な側面 を活用す るものでなければな らない。 もち ろん

,す

べ ての受像機 は

HDTV放

送 の映像 を十分 に表示 で き

,デ

ジ タル技術 を駆使 した多様 な 番組 に対応で きなければな らない。ォース トラ リアは この ような

USモ

デル を採用 したのである。

(3)

-32-② システムおよび関連法案

US方

式であれ ヨー ロッパ方式であれ

,オ

ース トラ リアで採用 される

DTTBシ

ステムは高解 像度の多様な番組に対応できるものでなければな らなかった。結果 として

USモ

デルが採用され たが

,DTTBを

施行 しようとすれば

,法

的な枠組み もまたそれに対応 して整備 されなければな らない。放送サービス条例はアナログ技術を使 ったサービス内容に基づ き

,草

案が書かれている。 だから

,い

ずれそれは再考 されなければな らず

,デ

ジタル施行のためには別途

,対

策が立て られ なければな らなかった。結果 として,「The Television Broadcasting Services(Digital Conver‐ sion)Act 1998」 が制定 され

,1998年

7月 か ら施行された。 この条例の制定によって1992年に制 定された「The Broadcasting Services Act 1992(he Act)」 に新たにアナログか らデジタルヘの 移行スケジュールが付加されたのである。 ③ 実施スケジ ュール 公式の実施スケジュールが公表 されれば

DTTBの

推進は豪政府の関与するもの として認識 さ れる。そ うすれば市場がデジタル化を必至 と判断するから好都合だ と

ABAは

考 えた。 この よう な観点から1997年の時点で

ABAが

策定 した実施スケジュールは以下の通 りである (表 1)。 表

1

オース トラ リアにおける

DTTB実

施 スケジ ュール 年

日 内

1 1997年 7月 半ば

ABAに

よる報告 書 (ABA paper on DTTB to the Mintster

for Communication and the Arts and DoCA)

2 1997寄i8月 ―-1998:子 3月 産業界 と

ABA合

同の電波帯域計画の再検討 3 1997年 10月

/■

月 政府か らの政策説明 :導 入方法 と既存放送局の権利 4 1997年 11月 30日 評価テス トの完了 5 1998年 3月

/4月

法的原則の公表 6 1998年 6月 システム決定の公表 7 1998年 10月 改訂条例の一覧 8 1998年末 試験放送の有効性 1998よ =雰 ミ 大都市 中心部での最初の放送 10 1999後 半

-2000年

後半 1999年 終わ りか らオース トラリア市場で受像機

Digital Terrestrial Television Broadcasting(by ABA.」 uly 1997)よ り作成

以上の ような実施予定表 を立てていなが ら

,実

ABA自

,75%の

世帯が

DTTBの

採用 に 踏み切 るのは楽観的に見て6-8年

,現

実的に見積 もると

,10-15年

はかかると予測 している。計画 を推進 しようとしている側です ら

,デ

ジタルテレビの普及ははかばかしく進展 しないことを承知 していたのである。それでは何故

,オ

ース トラ リアは地上波のデジタル化 に踏み切 ったのか。

ABAや DBAの

資料 を読む と

,二

つの大 きな要因

,す

なわち

,①

国際的な流れへの同調

,②

地 上波デジタル化による社会的 メリットの重視

,が

作用 していたのではないか と考 えられる。

(2)国

際的な流れへの同調 98年

H月

からデジタル放送を開始する予定であった米国は当時

,ア

ナログテレビの段階的廃止 ―-33-―

(4)

を決定 してお り

,デ

ジ タル テ レビの施行 に向けた基準 と実行 スケジ ュールを承認 していた。 しか も

,デ

ジ タル テ レビをは じめ関連設備 も生産 されは じめていた。98年9月か らデジタル放送の開 始 を予定 していた イギ リス も同様

,さ

まざまな制度整備 を推進 していた。一方

,オ

ース トラ リア は先行 す る米国 とヨー ロ ッパのシステムを検証 しなが ら

,自

国の発展 とい う観点か らどのモデル を採用 す るのが望 ま しいのか模索 してい る段階であ った。

ABAに

よれば

,

と くに以下の諸点 に ついては政府 の勧告が必要 となる。 それだけに

,地

上波のデジタル化 には豪政府 が深 く関与せざ るをえない こ とがわかる。 ・

HDTVは

オー ス トラ リアに とって最善の方式 なのか どうか。・ 完全 な

7 MHzデ

ジ タルチ ャン ネル はアナ ログチ ャンネルが規定 日に返還 され る とい う条件 の もとで

,既

存 の放送局 (商業放送 局 や公共放送局

)に

貸与 され るべ きなの か どうか。・ アナ ログの電波使用や返還 に姑 して政府の 目標 を設定 すべ きか どうか。・

DTTBの

実施段 階で新規 に競争的なサー ビスを許可すべ きか ど うか。 以上 の諸点 にみ られ るように

,放

送方式の決定 か ら放送局のあ り方

,電

波使用 にいた るまで国 家 の管理 に よる推進 が企 図 されてお り

,地

上波のデジタル化はまさに国家プ ロジ ェク トとして認 識 されてい る こ とが推察 され る。ただ,自 国での普及 について決 して楽観的ではなかった ように,

ABAは

ア メ リカのデ ジ タル放送政策 を指 して きわめて楽観 的 なスケ ジ ュール だ と言及 してい る。 この ときア メ リカは

,1998年

末 まで に主 な放送局がデジタル放送 サー ビスを放送す るように な り2006年 まで にアナ ログのチ ャンネル を

FCCに

返還 で きるようにな るだ ろ う と予測 していた ので あ る。 また

,ア

メ リカの場合

,HDTV方

式 を基盤 とす るが

,放

送事業者 は無料 のマルチチ ャンネルサー ビスをす るこ とも許 されてお り

,

と くに初期の段階では 自由にデジタルサー ビスが 可能 であ った。 もち ろん

,FCCは

放送事業者 に2006年 まではサ イマル放送 を しなければな らな い ことを義務づけていた。 国家政策 として地上波デジタル化 を推進するには

,そ

れな りの視聴者 朱護 を考 えておかなければな らなか ったか らであ る。 さて

,ABAは ,DTTBは

有料放送 ではな く無料 の地上波サー ビス として実施すべ きであ る と の見解 を示 す。 とい うの もオース トラ リアでは地上波デジタル化 が国家政策の一環 として展開 さ れて い るか らだが

,社

会 的 イン フ ラ としての側面 を重視 すれば

,USモ

デル を採用せ ざるをえな い。地上放送 がデジタル化 すれば

,や

がて人 々はケープルや衛星

,コ

ンパ ク トビデオデ ィスクか ら得ていたデジタル映像 をテ レビか ら得 るこ とがで きるようにな る し

,/ン

ターネ ッ ト利用 も可 能 にな る。技術的可能性 か らいえばまさに社会の インフラ として多面的 に機能 しうるだけに

,デ

ジ タル受像機 が普及 し幅広 く利用 され るようになれば

,さ

まざまな社会的利益 が得 られ るこ とは 確 かだ。 それだけに

,オ

ー ス トラ リアがデジタル化 に向けた国際的な動 向に敏感になるの も当然

,早

期導入の背後 に同調への圧力が強 く働 いていた こ とは容易 に推察 され る。 興味深いことに

,ABAは

地上波デジタル化については早すぎもせず遅すぎもしないペースで 粒処 していこうとする姿勢を表明する (ABA,1997)。 一般に開拓者は苦労が多いわ りには見返 りが期待できないか らだ と思われるが

,オ

ース トラリア としてはある程度の基盤整備ができてか ら参入 しようとしていた形跡がみ られる。つま り,地上波デジタルのマーケ ットの形成や受像機の 価格な ど

,後

発な らではの優位な条件の中で地上波デジタル化を推進 していこうとする節が見え るのである。それがおそ らくオース トラリアの国情を顧慮 して ということになるのだろうが

,肝

心の地上波デジタルのメリットを

ABAや

オース トラ リアの指導層はどのように捉えていたのか。 ―-34-―

(5)

(3)

地上波デ ジタルに よる社会的 メ リッ ト

ABAは DTTBの

メリットを電波の有効利用がで きる点にあるとする。アナログ放送では利用 できない帯域での電波利用が可能で,20bit/sで データを送信することができることを重視する。 つま り

,大

容量のデータを高速で送信できるというメリットがさまざまビジネスチャンスを作 り 出す という見解なのである。国家的観点か らすれば

,だ

か らこそ放送のデジタル化は是非 とも推 進 しなければな らない ということになる。それでは

,産

業界は どういう見解を抱いていたのか。 先述 した「The Television Broadcasting Services(Digital Conversion)Bill 1998」 は「the Datacasting(Charge lmposition)Bin 1998」 とともに1998年7月 15日に議会を通過 し

,1998年

7

月27日には承認 され

,そ

の 日付で施行された。施行以降6ヶ月以内に放送行政を司る通信 ・情報 技術 ・芸術大臣は

,産

業 ・科学資源大臣 と協議の上

,オ

ース トラ リアの放送電子産業の発展を支 援する産業行動綱領を策定 しなければな らない とされている。現在では DBIAA(Digital Broad‐ casting lndustry Action Agenda)と 呼ばれている機関はこの ような政策 目標を達成するために 以下の協議事項を設定 した (Digit』 Business Consulting Pty Limited,Nov.1999)。

① 放送電子産業が効率的で競争力をもち

,オ

ース トラリア社会のエーズに対応 していること ② 放送電子産業での新規事業や価値付与事業への投資を奨励すること ③ デジタル市場への参入を促進 し

,放

送電子技術のオース トラリアヘの移入を支援すること ④ 放送電子産業界全体で技術移転を奨励すること ⑤ 教育制度 と放送電子産業 との蜜な関係を構築すること ⑥ オース トラ リアの放送電子産業 と国際的なテレコミュニケーシ ョン産業 との間に戦略的な営 業関係を促進すること 以上を推進するための準備 を

DBIAAは

1999年 1月 26日までに展開 しなければな らなかった (Digital Business Consulting Pty Limited,Nov.1999)。 このワーキンググループのメンバーは 産業界の代表

,産

業団体

,通

信 ・イ情報技術・芸術省

(DoCITA),情

報産業

,オ

ンライン事業者, 等 々で

,ま

さに国を挙げての取 り組みであったことがわかる。 この段階で各国政府はデジタル車 命によって推進 される技術的必然 とい う認識で地上波デジタルを捉 え

,放

送政策を考 えていた。 そ して

,オ

ース トラリアはこの ような世界的潮流に沿 って地上波デジタル放送の導入を最初に決 定 した国々の一つだったのである。オース トラ リアは比較的早期にデジタル化の決定を下 したこ との意義を重視 していたが

,そ

れは後発国に参考 となるような多 くの研究調査結果を持てば

,こ

の領域で リーダーシ ップを発揮 しうると考えていたからである。さらに

,デ

ジタル化を契機に大 量の技術移転が行われるが

,そ

れに伴 う産業機会 としては以下の ものが想定 されていた。 ① デジタル受像機やデ ィスプレー装置のデザイン

,製

,運

搬など ② デジタルヘの移行 に必須の二通 りの放送 インフラおよびデジタルスタジオの拡張 ③ データ放送のための放送内容を合むデジタルソフ トウェア・ソリューシ ョンの供給

,双

方向で高度なテレビ装置 以上

,見

てきたように

,デ

ジタル受像機や放送に関する諸設備

,調

査研究報告な ど

,地

上波デ ジタル放送領域では今後25年間にわたって地球規模の巨大なニーズが発生する と考 え られてい る。 しかも

,地

球規模の変化はいま始まったばか りであ り

,そ

れが現実のもの となるにはまだ相 当の時間がかかる。 したがって

,早

期に導入 したオース トラリアはこの変化に伴 う機器の製造や サービスの需要が発生 した とき

,的

確に対応することができるとい うわけである。 この ような認 識の もと

,豪

政府は比較的早期にデジタル化の実施に踏み切 ったのである。参入する上で技術的 一-35-―

(6)

な障害 は何 もなか った し

,豪

産 業界 は三度 とめ ぐって こない この機会 について詳細で完壁 な分析 を行 う必要 があ る とも指摘 している。 つま り

,地

上波デジタル化 は産業界 に とって もまた とない 発展 の機会であ り

,国

益 を高め る好機 だ と捉 え られていたのであ る。 それでは

,肝

心 の視聴者 は どうなのか。昨年 1月 1日

,オ

ー ス トラ リアの主要

5都

市 で地上波 デジ タル放送 が開始 された。大都市 を中心 にサィ ビスを充実 させ る一方,1原 次

,周

辺地域 のデジ タル化 を進め

,08年

末 にはアナ ログを停波 す るが

,そ

れ まではサ イマル放送 が実施 され るので, 祝聴者 はいまの ところ

STBな

しで アナ ログテ レビを見 るこ とがで きる。 だが

,や

がてはテ レビ がただの箱 にな って しま うのであ る。はた して人 々はデジタル テ レビを どの ように受け とめてい るのか

,聞

き取 り調査 を試 みた。

3)ブ

リスベ ンでの調査結果 か ら ここではまず調査の概要 お よびその結果 を報告 し

,次

いで視聴者 の所得状況

,政

府 の見解 な ど を概説 す るこ とに したい (香取 ,2002b)。

(1)調

査 の概要 調査地 および対象者

!調

査期 間 対 象地 区 として選 んだのが クィーンズラン ド州の州都 プ リスベンの中心部 とその郊外である。 ク ィーンズ ラン ド州の人 口は360万 人 でオース トラ リア全人 口の

18.3%を

占め る。州都 プ リスベ ン は

,シ

ドニー

,メ

ル ボル ンに次 ぐ人 口160万 人の都市 だが

,保

守 的 な気風 が残 ってい る といわ れ る。 とはいえ

,年

平均経済成長率 は過去 10年 間

,4.3%と

他 の州 に比 べて

1%も

高 く,イ ノベ ー シ ョン に関 しては先進性 がみ られ る可能性 もあ る。 つま り

,経

済的側面 か らみれば促進要 因を も つ と考 え られ,「 新 しい もの にはす ぐに飛びつかない」人 々の気風 か らは阻害要因を持つ と思わ れ る。両面 を併せ持 つだけに

,新

しい メデ ィアの導入状況 を見 るには恰好の地区だ と考 え られ る。 さて

,調

査地 に到着 してか ら10日間

(7月

24日か ら8月 4日

),予

備 的調査 を試 みた。 シテ ィ や界外で さまざまな人 にデジタル テ レビは持 っているか と尋ねてみたのである。 ところが

,た

い て いの場合

,誘

しげな表情 で聞 き返 され る始末であ った。慌 てて

,昨

,デ

ジ タル放送 が始 まっ たはずだが と説 明す る と

,そ

うい えば何 ヶ月か前 に話題 にな った ことがあ るが

,い

まではデジタ ル テ レビについて巷で話 され るこ とはない と答える。同様の方法で手当た り次第 に聞いてみたが, 皆

,異

口同音 にデジ タル テ レビな ど関心 もなければ身近 で話題 にする人 もいない とい う。なにし ろ高す ぎる と

,こ

れ また誰 もが一様 の反応 を示 したのである。 当人 は もちろん

,知

り合 いがデジ タル テ レビを持 ってい る とい う人 に も出会 わなかった。調査 を行 ったのは

,デ

ジ タル放送 の開始 後

,1年

数 ヶ月を経 た ときであ った とい うの に

,で

あ る。予備調査 の結果

,プ

リスベ ンでの普及 状 況 は まだ ロジ ャーズのい う「革新的採用段階」

(Rogers,E.M.,1971)に

留 ま ってい る ようだ った。 そ こで

,視

聴者 としての代表性 よ りもメデ ィアに対す る態度の先端性

,革

新性

,あ

るいは確信 性 な どを重視 して対象者 を選定 し

,/ン

タビ ュー を実施す ることに した。聞 き取 り調査 の開始 は 8月 5日 にずれ込 み

,調

査 の枠組み も変更せざるをえな くな った。 ち ょっ とした取材 に応 じて く れた人は10数 人 にのぼ ったが

,ビ

デォ取材

,カ

メラ撮影 に応 じて くれたのは

7人

であ った。 いず れ も購入可能性 の高 い20代後半 か ら40代前半の人 々で

,期

間は8月 5日 か ら24日に及 んだ。 方 法 少数 サン プル に対 し

,生

活 背景 を も視野 に入れなが ら

,個

別面接法 に よ り調査 を実施 した。調 査 の実施場所 は対象者の家庭

,あ

るいは職場であ る。対象者 の生活の一端 がわか るような状況で

(7)

-36-聞 き取 りを行 った おかげで

,イ

ン タビュー中に電話 がかか って きた り

,同

僚 が入 って きた りして 中断 され るこ ともあ ったが

,結

果 として対象者 の生活状況 を よ く把握 す る こ とがで きた。経済 的 地位

,職

業的地位 は もち ろんの こ と

,メ

デ ィア利用 の背後 にあ る文化的傾 向 も掌握 す るこ とがで きた。少数サンプルではあったが

,実

際の生活現場で聞き取 りを行 う過程で

,参

与観察を行 った の と同様のデータを収集することができた。その結果

,デ

ジタルテレビの導入に視聴者が完全に 無視されていた こと

,デ

ジタルテレビに対する一般視聴者のニーズはまだ発生 していないこと, 今後の展開について視聴者が置 き去 りにされている現実を視聴者 自身が把握 していないこと

,等

,行

政側の 目論見 と視聴者の意向 とのズレを明確に把握することができた。

(2)調

査の結果

HDTVモ

デルヘの反応 と

HD番

組 まず

,デ

ジ タル テレビを知 ってい るか と聞 くと

,対

象者全員 が知 ってい る と答 えた。決 して関 心 がなか ったわけではなか った。新 しい技術 の動 向 に敏 感 な人は と くに強 い関心 を抱 いた ようで, 話題 にな った当初

,実

際 に家電 シ ョップ に出向いて探 しまわ った りした人 もいた。 ところが

,肝

心 の店舗 にデジタル テレビは陳列 されてお らず

,せ

っか く喚起 された人 々の興味 もそのは こ先 を 見失 って しま った ようだ。 ラ ッセル トン プソン (男性

,39歳 ,カ

レ ッジ研究部長

)は

,HDTV方

式 で地上波 の デ ジ タ ル化 を推進 しようとしてい る政府の姿勢 がそ もそ も間違 ってい るのだ と指摘 す る。 た しかに

,政

府側 に非難 され る理 由がないわけではな か った。多 くの人 々が視聴 してい る地上波 テ レビなの に, 国を挙 げての議論 をす る こ ともな く

,は

や ばや とデジ タル化 に移行 す るこ とに決 めて しまったの であ る。 また

,早

急 に実施 スケジ ュール を決定 した とい うの に

,放

送 開始 当初

,デ

ジ タル テ レビ の製造 が間に合わず

,STBで

しのがざ るを えなか った とい う事情 もあ った。 デ ジ タル放送 が開始 された01年 1月

,デ

ジ タル波 の受信装置 としてまず

STBが

用意 された。 デ ジ タル テ レビは間 に合わなか ったのであ る。 同年12月にな って ようや く

SDTVが

登場 し

,02

年 にな る と受像機 の選択肢 も広 が り

,い

く零 ん安価 に もな った。 だが

,02年

8月

,オ

ー ス トラ リ ア政府 は各放送事業者 に

HD(高

解像度

)仕

様 の番組 を広告 も含 めて年 間 1040時 間放 送 す る こ と を義務づけ

,03年

7月 1日 か ら施行す るこ とを決定 した。す こしずつ段階 を踏 んで普及 を推進 し, 最終 的 には

HDTVを

中心 とした放送形 態 を取 ろ う とい う 目論 見 であ った。可能性 に満 ちた デジ タル技術 なのに多様化 よ りも

,画

質 や音声 の高度化 を優先 させた こ とにラ ッセル をは じめ

,ほ

と ん どの調査対象者 は視聴者の意 向を無視 した政策だ と非難 した。利点が少 くないか らであ った。 価 格 ワ

/ド

ス ク リーンで映画 を見 た リプ ロジ ェクターで中継画面 を見 る とき

,高

画 質 の

HDは

威 力 を発揮 す る。チ ラツキ もなければ

,ゴ

ー ス トもない。細部 まで鮮 明な画面 を楽 しめ るこ とはた しかだが

,HDTVに

して も

HD―

STBに

して も

SDTVや

SD―

STBよ

りもは るかに高額 であ る。 人 々が放送 に望 んでい るのは 多チ ャン ネルであ り

,多

様 なサー ビスであ るに もかかわ らず

,高

画 質 の

HDを

優先 させ たため に視聴者 に とっての障壁 が さ らに高 くな った。 この点 につい て ラ ッセル は

,高

画 質 を求 めて新 し く

TVを

買 い換 えた り

,数

百 ドル もす る

STBを

買 わな ければ な らないの は無意 味 だ といい

,誰

もデジ タル テ レビに関心 を持 たな くな っ て しまった理 由はデジタル に した こ との メ リッ トが きわめて少 ないか らだ と指摘 す る。 同様 の意 見 は イン タビ ューを した人 のほぼ全員 か ら聞か された。高 くて も買 いたい とい う動機 づ けがなか な か起 こらない とい うのであ る。高 いだけでそれほ どの魅 力 もない と判断 した結果

,人

々はデジ ―-37-―

(8)

タル テ レビに興味関心 を失 って しまったのだ と彼 はい う。 それ を確 かめ るために

,量

販店 の レ トラヴ ィジ ョンに出かけ

,店

長 にデ ジ タル テ レビの売れ行 きを尋 ねてみた。店長 の リエム ・オ ライ リーは

,デ

ジ タル テ レビは ようゃ く月 に平均

, 3, 4セ

ッ ト売 れ るようにな った ぐらいだ とい う。 そ して

,買

ってい くのは もっぱ らシテ ィの若 いカ ップ ル で

,よ

く売 れ るのは ソニーの製 品だ と教 えて くれた。 ソニー製品が よ く売れ るのは

SDTVだ

か らだ とい う。地上波 デジ タルは

HDと

SDで

放送 されて い るが

,HD仕

様 の番組 はまだ少 ない か ら

,消

費者 は値段が安 い

SDTVを

買 って行 くとい うのであ る。

ちなみに,DBA(Digital Broadcasting Australia)力 ゝ発表 した02年8月21日時′点で購入可能な ワ イ ドス ク リーン

TVの

リス トを見 る と

,安

価 な

1099A$の

もの

(56cm,CRT)か

ら高価 な

39999 Asの

もの

(153cm,プ

ラズマ

)ま

で82種 がオース トラ リアで出まわ っている。 ところが, メー カー15社 が提供す るモデルのほ とん どがまだアナログなのである。わずかに ドイッのグルン デ ィッヒがアナログ

,デ

ジ タル両用のモデル を数種

,ソ

ニーがデジ タルモデル を

1種

発売 してい る程度であ った。 デジ タル地上波の番組 がすでに放送 されているのに

,そ

れで もアナ ログテ レビ の方が優勢なのであ る。 メーカーの生産体制 が整 わないか らだ と思われるが

,そ

れだけにまだ価 格 は高 く

,品

数 も少ない。 この リス トか らはオース トラ リアではいまの ところデジ タル よ りもむ しろワイ ドスク リーンヘの需要 が高 い こ とが示唆 されてい る。これはいったい何を意味するのか。 必要性 アン ジ ェリック・エ ャナプ トラ (女性

,29歳 ,カ

レ ッジ講師

)は ,オ

ー ス トラ リアでは ここ5 年 間 ぐらいはむ しろ

DVDの

方 が先 に普及す るのではないか と指摘 す る。 とい うの も多 くの人は デジタル テ レビが必要 とは思わないが

,映

画 を見たいために

DVDは

普及 しは じめてい る。 レ ト ラビジ ョンやハ ーベ イ ・ノーマンが発行 してい るパ ン フ レ ッ トを見 る と

,ソ

ニーの

WEGAフ

ラ ッ トの もので

1299A$(68cm画

)か

2899A$(80cm画

),い

ずれ もテ レテキス ト ,

DVDコ

ンポ ーネ ッ トのインプ ッ ト端子が付いている。解像度が852× 1024ピクセル

,マ

ルチ メ デ ィアボ ックス

,テ

レテキス ト

,DVDコ

ンポ ーネ ット端子

,PC入

力端子付 きのワイ ドスク リー ン

TVに

なる と

,8999A$(HITACHI)か

10999A$(NEC)は

するが, これにも

DVD端

とテレテキス トが付属 している。つま り

,DVDと

文字多重放送 に対応で きてさえいれば

,消

費 者にアピールで きるのだ。どうや らワイ ドスク リーンヘの需要 もこの文脈で理解できそうである。 現段階ではまだ高価なデジタル

TVを

購入 しようという欲求が喚起 されないのである。 もちろん

,地

上波デジタル化の後はアナログ停波が待ちうけていることを人々が知 らない可能 性 もある。ギ リアン・ファリン トン (40歳

,主

)は ,多

くの人 々はデジタルテレビについて知 らず

,い

ま視聴 しているアナログ波が09年には見 られな くなることも知 らない といい

,政

府はす べての情報を知 らせるべきだ という。地上波のデジタル化は行政主導で進められ

,視

聴者はいま だに蚊帳の外に置かれたままだ という現実を指摘するのである。

HD番

組 もちろん

,デ

ジタルワイ ドスク リーン対応の番組 もまだ少ない。

DBAの

最新資料 (02年 9月 16日

)を

見 ると

,16対

9,HD,

ドルビーデジタル音声 に対応 した番組は

ABCが

アニメーシ ョ ン

(ABC Fly,

毎 日

,夜 ),教

養バラエティ(金上 日

,夜 ),チ

ャンネル

7が

映画 (金上 日

,夜

), スペシャル番組 (金

,夜

),チ

ャンネル

9が

映画 (日

,夜

),チ

ャンネル10が映画 (金上 日

,夜

) といった状況である。チ ャンネル10は来年度か らの

HDレ

ギ ュラー放送 に備 え

,放

送設備の点 検 と

HD対

応設備を構築するため9月は

HD番

組 を放送 しない。チ ャンネル

9は

映画を中心にデ ―-38-―

(9)

ジタル放送を拡充 しているが

, 9月

提供の番組を見 ると

,地

域限定の ものが提供番組の約半数を 占めている。めぼしい動 きといえば,チ ャンネル

7が

ようや くチャンネル77を立ち上げ,ス クリー ン上でプログラムガイ ドを利用できるようにし

,番

組に関する情報や最新ニ ュースをオンライン で提供で きるようにした ぐらいである。 こうしてみると

,デ

ジタル地上波が導入された とはいい なが ら

,そ

の実態はまだお粗末なものであることがわかる。

(3)可

処分所得 とデジタルテ レビ 高画質

,高

音声 というだけでは人 たの購買意欲を喚起 しない。導入初期ではあるが

,価

格が高 い。誰 もが一様 に高い と指摘 したように

,高

すぎる価格が普及を阻害 していることは確かだ。 日 本に比べて諸物価は安いが

,収

入 もそれほど多 くはない。可処分所得は決 して高 くないのである。 ちなみに

,99-00年

度の全世帯の週間平均収入は

726A$だ

,中

央値は

538 ASで

,最

頻値 はそれよりさらに低い。所得格差があるといわざるをえない。所得層別に属性を見ると

,低

所得 層の うち

68.5%が

年金暮 し

,88.4%が

単身であった。つま り

,収

入は年齢階層あるいは居住環境, 世帯動向 と密接に関連 してお り

,可

処分所得 もそれに随伴 しているように思われる。 そこでライフサイクル別に週間平均収入を表 にま とめると

,以

下のようになる (表2)。 表

2

ライフサイクル別特性 と週間総収入の平均

(単

:AS)

特性 1又入 週 間総収 入の平均 ジエ係数 世帯人数 25歳未満の単身

0362

1.0 25‐35歳の単身 600

0348

35歳未満の夫婦のみ 1,327 0.275 5歳未満の子 どものいる夫婦 1,030 0.328 5歳以上の子 どもがいる夫婦 1,202 0.339 子 どもがいる単身 509

0303

55‐64歳の夫婦のみ 840 0.405 2.0 55‐64歳の単身 453 0.523 64歳以上の夫婦のみ 526 0,384 2.0 64歳以上の単身 284

0333

(注)IncOme Distribution,Australia lAustralian Bureau of Statistics)よ り作成

65歳以上の単身高齢者の収入が もっとも低 く

,高

所得層は子 どものいないカップルで

,そ

の差 異は4.6倍にも達する。 ライフサイクル別 に集計 した方が低所得 と高所得 との差異が拡大 してい る。つま り

,収

入源別に見ただけでは把握 しきれなかった消費の側面がライフサイクル別の集計 では掌握 されてお り

,結

果 として

,い

わゆる「 ダブルインカム・ノーキ ッズ」層の収入が高いこ とが明 らかになった。また

,こ

の層は他に比べてジエ係数 も低 く

,比

較的平均 していることがわ かる。おそ らく可処分所得 も高いはずだ。プ リスベンでの主な購買層は実はこの層だったのであ る。 この表か らは高価なデジタルテレビが大多数の人 々に とって手の届 く代物ではないことがわ かる。 となれば

,い

ったい

,誰

のためのデジタルテレビなのか。

(10)

-39-(4)政

府 の説 明 による視聴者 にとってのデジタル化の メ リッ ト

プ リスベンでの聞 き取 り調査の結果からデジタルテレビが普及 しない原因は

,①

価格が高い,

②視聴者に とってのメリットが少ない

,③

対応番組が少ない

,④

告知が十分ではない

,等

々が考 えられる。いずれ も視聴者不在の放送政策であることを示唆するものだ。それでは

,オ

ース トラ リア政府は消費者に とってのメリットをどの ように考 えているのか。関連のホームページで以下 のように利点を列記する

(httptil螂

.dCa.gov.au/nsapi―graphics/)。

①地上波デジタルテレビの視聴者への恩恵は多い

,②

ワイ ドスクリーンで映画 レベルの画質

,サ

ラウン ド音声の番組の放送がで きる。多様な情報の提供

,よ

り豊かで対話的なテレビ体験がで き る

,③

どんな地域にいて もチラツキ もな くゴース トもない鮮明な映像が得 られる

,④

デジタルヘ の移行は他国の動 きに連動 したもので不可避、等 々。 いずれ も技術的可能性に言及 した ものにすぎない。一方

,DBAは

質問に答 える恰好で

,デ

ジ タルテレビの特性を以下のように列記する (02年4月 5日)。 ① ゴース トがない

,②

16:9のワイ ドスク リーン

,③

SD,④HD,⑤

高音声 とサラウン ド音声す⑥

ABCと

SBSに

関 してはマルチチャンネル番組

,②

聴覚障害者のためのクローズ ドキャプシ ョン 番組

,①

電子番組案内

,③

当 日の番組情報に関する番組案内チャンネル

,⑩

選択 された番組につ いてマルチアングルで提供

,①

スポーッイベン トか ら定時ニュースヘの切 り替えなど視聴者が選 択できる「番組オーバーラップ」

,等

々。 これ もまた技術的側面を示す もので しかないが

,や

がて対話型のサービスやデータ放送サービ ス

,イ

ンターネ ットサービス

,ホ

ームシ ョッピング

,コ

ンピュータゲーム

,な

どが提供 されるよ うになるだろうと結んでいる。 こうして見 ると

,政

府 も放送業界 も視聴者には大 きな愚恵があるとうたいなが ら

,そ

の実

,技

術志向的なスタンスか ら地上波デジタル政策を展開 しているにすぎないことがわかる。技術的可 能性か らいえば

,HDを

重視するの も当然の成 り行 きだが

,そ

れでは普及が進 まないの も事実で ある。 メルボルンを中心にマーケティング業務を展開するジェフェリー・バウルは普及が進まな い原因を既存放送局がそれを望んでいるからだ と皮肉 り

,マ

ーケティング業界 として も対応に苦 慮 している様を見せる (『

MARKETING&eBUSINESS』

March,2002)。 視聴者か らも広告業界か らも批判の多い地上波デジタル化政策についてオース トラリア政府は 以下の ように説明する (httpW、w、、ぃv.dca.gov.au/nsapi―graphics/)。

,

2, 3年

の うちにデジタルテレビが普及するよう推進策を策定 し

,資

本投下する

,②

普及が遅 れれば

,放

送事業者 にも視聴者にも重大な結果をもた らすだけではな く

,ォ

ース トラ リアがデジ タル放送移行に向けた世界的な動 きに遅れを取 りかねない

,③

米国や英国な どの主要な放送市場 がすでにデジタルテレビの実施を宣告 している

,等

々。 以上の文言か らは地上波デジタル化が視聴者のためのものではな く

,国

家の威信をかけたプロ ジェク トであることが推察される。デジタル技術を視聴者の豊かなコミュニケーシ ョン手段 とし て活用するために何をすべ きか

,こ

の観点からの放送政策 こそ必要なのだが

,も

っぱ ら産業政策 の一環 として位置付け られているのが現状である。

4)考

察と結論 勢い込んで地上波デジタル放送に踏み切 ったわ りにはオース トラリアでは受像機がほ とんど普 及 していない。デジタル放送が企図通 りに社会インフラとして機能するにはまず機器の普及が前 提 となる。ブ リスベン郊外 に住む主婦が指摘 していたように

,人

々はデジタルテレビについては とん ど何 も知 らないに等 しい。デジタルテレビによって何ができるようになるのか

,デ

ジタルテ ―-40-―

(11)

レビで しかで きない ものは何なのか。購入意欲 を嘆起す る利点 も定 かではない。だか ら

,き

め こ まかい広報活動 を展開すれば

,あ

るいは普及 が促進 され るか もしれない。

『Digital Broadcasting and Datacasting 21 December 1999』 を見 ると, 政府のデジタル放送 政策の 目的 として

,①

テレビの新サービス

,改

良サービスの提供

,②

異なる解像度の映像

(HD,

SD),③

新 ししW盾報サービス (データ放送

),④

高度化された番組 (例 :多様なアングル

),⑤

地 方の視聴者へのよりよいサービス

,⑥

聴覚障害者への よりよい字幕放送

,等

々があげ られている。 これを見ると

,聴

覚障害者な どにはこれまでのテレビでは不可能なサービスが提供 されるかも しれないが

,一

般の人 々の購入意欲を喚起で きるメリットが どこにあるのか判然 としない。 購買意欲が喚起 され

,受

像機の販売が進めば

,デ

ジタル技術をF」X使した番組制作

,視

聴者エー ズに対応 した放送サービスが提供 されるようにもなるだろう。人 々のエーズが高 くなれば

,デ

ジ タルテレビは もっと普及 し

,や

がて価格低下

,番

組内容の充実 といったプラスの循環が生み出さ れてい く。 ところが

, 1年

数 ヶ月を経ていた とい うのに

,調

査時点ではまだその種のプラスの循 環が生み出されていなかったのである。つま り

,無

料の地上波デジタル放送 という計画 自体に無 理があったのか

,推

進の方法に無理があったのか

,あ

るいは

,導

入時期が尚早だったのか。単独 の理由も考えられるし

,そ

れぞれが複合的に作用 しているとも考 えられる。問題はなぜ 自然発生 的な需要を待たずに地上波デジタル化に踏み切 ったのか

,で

ある。 豪政府は比較的早期に地上波のデジタル化に踏み切 った。先行することの経済効果を企図 して 展開 した政策であっただけに

,行

政側の動 きは早かった。1997年に地上波デジタル化の概要が作 成 され

(ABA,1997),そ

れを受けて1年後 には早 くも地上波デジタル放送を実施するための法 案が議会を通過 している。 テレビ放送サービス法 (デジタル変換

,1998)と

データ放送法 (使用料金

,1998)は

1998年7 月15日のオース トラリア議会を通過 した。 これ らの法は1998年 7月27日に承認を得て同 日付で施 行された。『Digital Broadcasting,Australian Opportunities for the New Mlllennium』 (November,

1998)によれば

,テ

レビ放送サービス法は法の施行の 6ヶ 月以内に通信および情報経済

,芸

術担 当大臣が産業および科学資源担当大臣 と協議の上

,オ

ース トラリアの放送電子産業の発展を促進 するために産業活動協議事項をしなければな らない とされている。つま り

,地

上波デジタルの場 合

,ジ

ャーナ リズム機関である放送局だけではな く

,機

器の製造 メーカーをは じめ とする関連産 業 も巻 き込んだ新規産業 として捉えられていることがわかる。 産業 として展開されるか らには効率が優先 されなければな らず

,国

際競争力も持たなければな らない。 さらには競争力をもつ製品を生み出すための技術の向上が要求されるし

,そ

れを担 う人 材開発 も求め られる。 このような放送政策の展開過程か らは

,放

送がジャーナ リズムの一翼を担 う公的な機関 (た とえ商業放送局で もその使命は公的なもの

)と

いう認識が決定的に欠如 してい ることが示 されている。

さて,Digital Broadcasting Factsheet(http"聯 印w.dca.gpv.au/)を 見 る と

,新

規 の放送事業者 は08年12月31日まで放送市場 に参入で きない こ とにな っているが

,08年

以後 については05年 に参 入 を認可す るか否 かを再考 す る とい うのであ る。地上波 デジ タル化 に関す る一連の政策の中で既 存放送局 は保護 されてい る といわざるをえない。それはい ったいなぜなのか。 デ ジ タル放送 の担 い手 とな るのは

,既

存 テ レビ局 で あ る。公共放送 の

ABCや

SBS以

外 は広 告収 入 を経 営基盤 とした商業放送局であ るが,こ れまでの地上波 テ レビ と同様

,無

料放送 を行 う。 それだけ に商業放送局 に とってはビジネス として成立 す るか否 かが問題 にな る。 ところが

,現

実 には ビジネスモ デル も確定 しないまま

,実

施 に向けた コス ト負担 を強 い られてい る。 これ以上 の 負担 を軽減 す るため に

,地

上波 デジ タル放送 が軌道 に乗 るまで競争 にエネルギーを割 かな くて も

(12)

-41-いい ように配慮 している と考 え られ る。 まさに新規産業を育成する ときの用意周到な姿勢が行政 側 に垣 間見 られ るのであ る。

た とえば,DBIAA(Digital Broadcasting lndustry Action Agenda)は 1999年 1月26日まで に 準備 されなければな らない とされていた。その ワーキンググループの メンバーは

,産

業 の代表者, 協 会

,通

信 省

,情

報技術 と芸術

,情

報産業 とオン ライン作業 な どか ら成 る。産業の代表者 とは, オ ー ス トラ リア電気

,電

子 製 造 業 者 の有 限会社

(AEEMA),オ

ー ス トラ リア情報 産 業協 会

(AIIA),イ

ン ターネ ッ ト産業協会

(HA),等

々であ る。 この ワーキンググループは

,ス

タジォ 装置 とサー ビス

,放

送装置 とサー ビス

,消

費者 向けの作品

,消

費者 サー ビス

,デ

ー タ放送

,等

々 の業務 に関わるオース トラ リアの産業発展の可能性 を明言 した。 先行者 としての利益 を企 図 して放送政策 が展開 されて きただけに

,そ

の効果 についての展望 も きわめて具体的で明快 であ る。 この こ とか らも豪政府 が推進 しようとしてい る地上波デジタル放 送 は

,国

を支 えるジ ャーナ リズム機 関 としてではな く

,単

な る情報産業 の一種 として位置付け ら れてい るこ とがわか る。 となれば

,視

聴者 としては地上波 デジタル放送 が普及す る前 に

,ジ

ャー ナ リズム機 関 としての放送業界のあ り方 を問 う必要 があろ う。放送界がジ ャーナ リズム機関 とし ての冷持 をは っき りと示 す とき

,イ

ン ターネ ッ トに代表 され る情報産業の脅威 に対抗で きる と思 われ る。 イン ターネ ッ トをは じめ とす る情報産業 は効率 よ く情報 を伝達 した り

,加

工 した り

,蓄

積 す るこ とがで きるか もしれないが

,人

々の意識 を形成 し

,意

見 を醸成す るジ ャーナ リズム機関 にはな りえない。 したが って

,放

送産業 はまさにジ ャーナ リズム機関であ ることを堅持す ること に よっては じめて イン ターネ ッ ト時代 にその活路 を見 出す こ とがで きるのである。オース トラ リ アのケースか ら地上波 デジ タル放送の陥穿が見 えただけに

,今

,視

聴者 の側 か ら地上波 デジタ ル放送のあ るべ き姿 を考 えてみる必要 がある と思われ る。 引用 ・参考文献

Australian Broadcasting Authority(1997),Dを

カ′

T,解

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α

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241-272.

◆本稿 は平成 14年度科学研究費 (基盤 研究

(C)(2))の

助成 を得 て実施 した調査研究成果の一 部 であ る。

参照

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