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第8分科会(分科会報告,大会報告 会務報告)

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Academic year: 2021

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174 シンポジウム 論 考 投稿原稿 会務報告 大会報告 開発された「金融に関する倫理性調査」を実施し,教 育学部の学生(947 名)と経済学部の学生(673 名) の間に,何らかの差異があるかどうかを調査した。そ の結果,米国の大学生とは異なり,日本の両学部の間 には,金融倫理の考え方に関して有意差は見られない ことが判明した。また,グローバル化した現状では, 経済学のみのリテラシーやコンピテンシーを検討対象 とするのではなく,社会・心理・文化・倫理を勘案し た普遍化・一般化したリテラシーの尺度の開発が必要 であるというのが最終的な結論であった。  フィリピン大学ロスバニョス校のホセ・カマチョ会 員は,フィリピンの成人 613 名に対して高校レベルの テスト問題を実施し,そのテスト結果から,どのよう な要因(経済学の受講,所得水準,性別,年齢,教員 のタイプ,学校での成績,学校の種類,遠隔教育の休 講の有無など)が経済理解力に影響を及ぼしているか どうかを分析した。このデータによれば,所得水準, 性別,年齢,高校における経済の受講の有無,経済学 に対する関心,職場での地位に有意な関係が認められ, 学校での成績,学校の種類,大学での経済学の受講は, 有意性が認められなかった。このことから,カマチョ 会員は,フィリピンの成人は,経済学を教室ではなく, 日常生活からより多く学んでいるという結論を引き出 した。  韓国の国立慶尚大学の金景模会員と京仁教育大学の 朴英錫教授は,「韓国の学校における金融教育の現況 と課題」というテーマで,韓国におけるパーソナル・ ファイナンス教育に関して報告した。彼らが実施した 生徒・教員・両親に対する金融教育のアンケート調査 によれば,彼らはその重要性を理解はしているが,学 校現場では,体系的な取組みがなされていないことが 判明した。そこで,彼らの研究グループは,韓国にお ける金融教育のスタンダード(共通教育基準:学習指 導要領)を作成した。それらは,小学生から高校生ま でをカバーするもので,5 つの項目,すなわち①金融 と意思決定,②所得と支出の管理,③貯蓄と投資,④ クレジットと負債の管理,⑤リスク管理と保険─ 分かれている。今後の課題として,これをどのように 国の教科課程に組み入れるかが,本報告の結論とされ た。  最後の報告は,韓国の順天郷大学の文承來会員と韓 国 開 発 研 究 院(KDI) 経 済 情 報 セ ン タ ー の Chun Qsyng 研究員により,「韓国の高校生に対するファイ ナンシャル・トライアル・テストに関する研究」とい うテーマで,韓国における金融教育の改善に向けての 現状分析と政策提案についてなされた。同テストは, 韓国の現状を踏まえた上で,韓国開発研究院経済情報 センターが開発したもので,テスト問題は,30 問が 経済に関する4択問題,残りの10問は,個人の特性に 関する質問項目であり,363 名の高校生に対して実施 された。その結果,①現在の金融教育は不十分なので, 改善の余地が多くあること,②「所得と支出の管理」 「貯蓄と投資」「リスク管理と保険」の領域で,金融教 育を強化しなければならないこと,③職業高校で金融 教育の理解を特に強化しなければならないこと─ 政策提言として浮かび上がったことが報告された。  以上の4つの報告に続いてそれぞれ質疑応答が行わ れ,日本・フィリピン・韓国における経済教育と金融 教育の現状と課題が明らかとなり,非常に有意義な分 科会であった。 (文責:山岡道男,淺野忠克) 第 8 分科会  第 8 分科会のテーマは「中学校・高等学校における 経済教育」であり,次の 3 つの報告と質疑が行われた。  第 1 報告は,松井克行会員(大阪府立旭高等学校) の「日本金融システム史に基づく公民科経済学習の授 業開発」である。  松井報告は,昨年の学会報告を発展させて,金融学 習に日本金融システム史の観点をとりいれて,より深 い生徒の金融認識を持たせる授業開発をこころみたも のである。松井によると,従来,高等学校の公民科で は,政治学習では明治以来の政治制度を概観するのに 対して,経済学習,特に金融の学習では第二次世界大 戦後,もっと言えば 1990 年以降の金融環境の変化の みが強調されている。それを克服するために,松井は, 星岳雄,A・カシャプ『日本金融システム進化論』を 手がかりに,「間接金融,直接金融」の変化や動向を 学習できるような授業が必要であると主張した。  報告では,星・カシャプの内容を紹介したうえで, 日本が伝統的に銀行中心の間接金融が主流だったのは 神話であるとの見解が出され,それを踏まえての 4 時 間配当の授業構想が紹介された。  質疑では,松井報告の内容に関する疑問や,教材化 するときの視点,発展学習と言うがどのような時間的 保障があるのか,松井流に授業構想を行うことは単な る事実の年表風の紹介に終わらないか等が出され,報 告者からそれぞれ回答がなされた。  第 2 報告は,鍛冶直紀会員(大阪府立和泉高等学 校)の「経済計算で規範意識を育てる─定時制高校で The Japan Society for Economic Education

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175 の「現代社会」での試み─」である。  鍛冶報告は,現代高校生の規範意識の醸成を生活指 導や道徳ではなく,「現代社会」の授業でできないか という問題意識から実践された授業報告である。報告 者の勤務する定時制高校での生活指導事例の多さに対 して,経済計算でその拡大が阻止できないかという興 味深い授業実践である。まず,全定生徒の規範意識の 調査を行い,定時制の生徒は,内的な規範意識は弱い が金銭感覚など外的な規範意識は強いことが紹介され た。  授業では,新聞記事を使い,万引き,いたずら書き, ホームレス殺害の三つの事例で,その時の費用(機会 費用)を実際に計算させる中で,行為のコストを自覚 させるという構成をとって実践が行われた。結果とし て,直接的な問題行動が減ったわけではないが,授業 のなかでの生徒とのコミュニケーションが深まり,生 徒への働きかけが格段にしやすくなった,生徒が他者 の痛みや思いを感じるようになったと報告された。  質疑では,経済計算と同時に,権利の学習も必要で ないかとの意見や,計算の実際はどうだったのか,倫 理観は所得階層別にとらえる方が有効ではないかとの 意見などがだされ,活発な意見交流が行われた。  第 3 報告は,箕輪京四郎会員(元横浜商業高等学 校)の「長野県阿智村の経済─その歩みと日本経済」 である。  箕輪会員は,横浜での阿智村村長の岡庭一雄氏の講 演を聞き,住民自治を尊重する阿智村の姿に感動した ことが本報告の契機となったとして,現地への調査や データ,村史などの文献調査を踏まえた阿智村の変貌 とその背景となった日本経済の変化を紹介された。農 業と林業と養蚕の村が過疎化対策で工場誘致,リゾー ト開発などをこころみたが,現在は全村博物館構想の もとで住民参加の地域づくりを行っている阿智村のあ ゆみは,地域を生徒と共に考えさせる素材となろうと 結論づけられた。  質疑では,現地調査の様子や教材化するときのポイ ントなどが質問され,回答がなされた。新しい学習指 導要領では,政治・経済の課題学習で,地域社会の変 貌と住民生活の項目が新しく導入されているなかで, タイムリーな発表であるとともに,教育現場からリタ イアされても教材開発の情熱を継続されている箕輪会 員の努力に頭が下がる発表であった。 (文責:新井明,炭谷英一)

The Japan Society for Economic Education

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