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時事問題を教室で学ぶためのメディア・リテラシー教材

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Academic year: 2021

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時事問題を教室で学ぶためのメディア・リテラシー教材 第18号

グローバル・エクスプレス 第18号 2014年4月23日発行

東京五輪 2020

2020 年に日本・東京でオリンピック・パラリンピックが開催されることが決定しました。

歓迎する声もある一方、被災地の復興への影響や再開発などに対する懸念の声も聞こえて

きます。五輪をめぐる社会のあり方について、さまざまな側面から考えてみましょう。

※この教材は「教材体験フェスタ 2014」(DEAR 主催/2014 年 3 月 29 日)で実施したものです。 アクティビティ1:

部屋の五輪

◆目的:学習の導入のアイスブレーキングとして行い、学習への意欲を高める。 ◆対象:小学校高学年以上 ◆所要時間:15 分程度 ◆資料・備品: 五輪の色(黒・黄・赤・緑・青)のロープやリボンで、数人が入れる大きな輪をつくっておく ◆すすめ方 教室全体を使って「部屋の四隅」形式で参加者に 3 つの質問(次頁掲載)を投げかける。 参加者は、該当する答えが示された 5 つの「輪」のいずれかに移動して入る。移動後、全体で共有する。 ※「部屋の四隅」のすすめ方は http://dear.or.jp/activity/menu01.html(DEAR)をご参照ください。 この教材の版権は(特活)開発教育協会に所属し、 本誌の全部または一部を無断で複写・転載・引用・ 要約することは禁じます。本誌の「生徒用ワークシ ート」の複写による利用は、学問的な利用、教室・ 研究会等での利用に限ります。

Global Express

vol. 18

2014 March, Tokyo Olympic Game

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◆質問例 質問 1:ソチ五輪、見てました? ①ソチで見た ②テレビ「生(LIVE)」で見た ③録画してみた(再放送を見た) ④見てない ⑤その他 質問 2:東京五輪が開催される 2020 年の 7/24(金)~8/9(日)は予定ありますか?何してますか? ①競技場に出かけて「生」で見る ②テレビで見る ③見ない ④日本にいない ⑤その他 質問 3:東京五輪誘致・成功!…どうして?何で?日本だったの?東京だったの?どう思う? ①滝川クリステルさん、猪瀬直樹さん(元東京都知事)…他、招致委員の力 ②日本の力(経済・治安など) ③国民の支持 ④東京の魅力・日本の魅力 ⑤その他 アクティビティ2:

「五輪検定」 受験!

◆目的: ①そもそも、オリンピック・パラリンピックとは何か?五輪憲章などから、理念や目的を知る。 ②五輪の理念や目的と現実に起こっていることのギャップについて考える。 ◆対象:中学生以上 ◆所要時間:30 分程度 ◆資料・備品:ワークシート(3 頁に掲載/人数分)、解説資料(4 頁に掲載) ◆すすめ方 1.1 人に 1 枚「五輪検定」ワークシートを配布し、個人 で問題に答える。(5 分) ※わざと厳格に「試験」あるいは「テスト」風に制限時間を設 け、話をしてはいけないなどのルールを設けて実施するのがお すすめです。 2.進行役は答えを伝えつつ、解説資料を使い解説する。 (10 分) 3.参加者は自己採点後、グループ・全体で共有する。 (15 分) 「教材体験フェスタ2014」参加者の声 ・ 五輪のアイスブレーキング、ナイスアイデアでした。子どもたちも喜んでやりそうです。 ・ 部屋の四隅ならぬ部屋の五輪。ふたつの輪に両足入れるなど、部屋の四隅ではできないようなこと もできてその違いが面白かったです。 ・ 質問 2 で、たくさんの方が「ボランティアとして参加したい」と言うのを聞いて、そういう関わり 方もあるのか!と思った。 「教材体験フェスタ 2014」の様子。真剣に検定に取り組む参加者。

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ワークシート

五 輪 検 定

次の質問に答えなさい。

1.

夏季五輪・メダル獲得数が最も多い都道府県はどこですか、次の中から選びなさい。 北海道と愛知 山口と東京 愛媛と大阪 秋田と茨城

2.

先日、JOC(日本オリンピック委員会)・リオデジャネイロ五輪※対策プロジェクト委員長 が目標に掲げた金メダルの数はいくつか、次の中から選びなさい。 14 個 16 個 18 個 20 個 22 個 24 個

3.

1964 年、東京五輪における日本の金メダル獲得数を次の中から選びなさい。 4 個 6 個 8 個 10 個 14 個 16 個

4.

①~⑦について、オリンピック憲章やJOC が発信している(HP 上で確認できる)ことと 思われる文章に○をつけなさい。 ① スポーツを通じて永遠の世界平和をめざし、人権、宗教、政治、性別などの差別は認め ない。 ② 国同士で競争することはよくないので国別のランキング表などはつくらない。 ③ オリンピック成功のためには環境整備、情報科学、医科学、道具の研究などが大切だと 訴えている。 ④ 交流の場としてオリンピック村をつくらなければいけない。 ⑤ 環境保護の立場から、オリンピック開催について持続可能な開発を求めている。 ⑥ 開催国にフェアプレーを求め、フェアトレードを奨励している。 ⑦ 勝つためにはお金が必要だと訴えている。 ※リオデジャネイロ五輪は2016 年にブラジルのリオデジャネイロで開催される。 得点 1 問 1 点/問 4 は正解毎に 1 点/10 点満点

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◆解説「五輪検定」 ①夏季オリンピック・メダル獲得数が最も多い都道府県はどこ? 答:北海道と愛知 北海道と愛知が9 個。3 位=東京(8 個)、4 位=秋田・茨城(7 個)。ちなみに、山口・東京は日本で最も多 くの首相を出している。愛媛・大阪は高校野球甲子園における勝率ナンバーワン。 ②先日、JOC(日本オリンピック委員会)・リオデジャネイロ五輪対策プロジェクト委員長が目標に掲 げた金メダルの数はいくつか? 答:14 個 JOC・リオデジャネイロ五輪対策プロジェクト委員長は、2014 年 3 月、リオの金メダル獲得目標をロンドン オリンピックの倍「14 個」と発言した。 ③1964 年、東京五輪における日本の金メダル獲得数は? 答:16 個 1964 年東京オリンピックにおける日本のメダル獲得数は、金 16、銀 5、銅 8 の合計 29 個。金メダルの数で は、アメリカ、ソ連についで第3 位! ④JOC の HP を読むと‥ 総括記者会見・橋本団長「チームジャパンとして一丸となって戦えたことに誇り」から 「世界最高の監督・コーチを育てていかなければ世界最高の選手は生まれていかないので、コーチやスタッ フのレベルアップ、そして強化、指導者の育成といったものをやっていきたいと思います」 「日本は、スポーツ先進国と比べると、国がスポーツにかける予算が非常に少ない部分があります。予算の 獲得に向けて、これからあらゆる強化対策をしっかりと打ち出しながら、また予算を獲得することがどれだ け国として意味があるのかということを、私たちスポーツ界がしっかりと発信していきたいと思っています」 オリンピズムやオリンピックのあり方についての解説から 「その目的は、人間の尊厳保持に重きを置く、平和な社会を推進することにある。スポーツを行うことは人 権の一つである。すべての個人はいかなる種類の差別もなく、オリンピック精神によりスポーツを行う機会を 与えられなければならず、それには、友情、連帯そしてフェアプレーの精神に基づく相互理解が求められる」 「人権、宗教、政治、性別、その他の理由に基づく国や個人に対する差別はいかなる形であれオリンピック・ ムーブメントに属する事とは相容れない」 「オリンピック競技大会は、個人種目または団体種目での選手間の競争であり、国家間の競争ではない」 「環境問題に関心を持ち、啓発・実践を通してその責任を果たすとともに、スポーツ界において、特にオリ ンピック競技大会開催について持続可能な開発を促進する」 「オリンピックで勝利をおさめた栄誉は、あくまでも選手たちのものだとオリンピック憲章では定めていて、 国別のメダルランキング表の作成を禁じている」 つまり‥ ①スポーツを通じて永遠の世界平和をめざし、人権、宗教、政治、性別などの差別は認めない。→ ○ ②国同士で競争することはよくないので国別のランキング表などはつくらない。→ ○ ③オリンピック成功のためには環境整備、情報科学、医科学、道具の研究などが大切だと訴えている。→ ○ ④交流の場としてオリンピック村をつくらなければいけない。→ ○ ⑤環境保護の立場から、オリンピック開催について持続可能な開発を求めている。→ × ⑥開催国にフェアプレーを求め、フェアトレードを奨励している。→ × ⑦勝つためにはお金が必要だと訴えている。→ ○

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アクティビティ3:

期待!心配!ありえる?ありえない?

◆目的: ①東京五輪をめぐる様々な期待や課題、立場、議論があることを知る。 ②東京五輪開催について、自分自身の価値観や意見を整理すると共に、他の人の考え方に触れる。 ◆対象:中学生以上 ◆所要時間:45 分程度 ◆資料・備品:カード(6 頁/グループに 1 セット/グループ数分印刷し切り分ける)、 5 つのカテゴリーシート(7 頁/グループに 1 枚/カードが置けるように A3 サイズに拡大コピー)、 解説資料(8 頁に掲載) ◆すすめ方 1. グループにカードを 1 セットと、5 つのカテゴリーが描かれた五輪のシートを 1 枚配布する。 2. カードに記載されている内容を読み、グループ内で意見交換、討議、共有を行いながら 5 つのカテゴリ ーに分けて、該当する箇所にカードを置く。(30 分) ※裏返しにしたカードの山を 1 枚ずつめくりながら、あまり考えすぎずにワークを行うのがポイント。 ※カードの言葉は広い意味で解釈ができるよう「日本が」「町が」「キレイになる」「忘れる」「元気になる」「みんな」 等のあいまいな表現にしてあります。それぞれの言葉からイメージすることや解釈の違いなども意見交換のポイン トとしてください。 3. 意見が分かれたカードや、作業を通して気が付いたことをグループ・全体で共有する。(15 分) ◆参考資料 DVD『検証!オリンピック―華やかな舞台の裏で』(NPO 法人アジア太平洋資料センター、2014 年 2 月) 25 分、定価 本体 8,000 円+税(図書館価格:本体 16,000 円+税) 2020 年夏の東京オリンピック開催が決まった。「平和の祭典」の名の下に、巨大施設の建設と街の再開発計画、巨額の放映権料、スポ ンサー契約をめぐる動きがすでに始まっている。喧伝される経済効果の背後からは、立ち退きや環境破壊に関連して疑問の声も聞こえ てくる。オリンピックの商業性と政治性を検証し、スポーツの持つ本来の意味を考える。 「教材体験フェスタ2014」参加者の声 ・ オリンピックを通じて身近な「開発」について考えられる要素がたくさんあって、面白い。 ・ 華やかな舞台の裏では、様々なことが起きている現状がよく理解できた。 ・ 誘致が決まって浮かれ気分でいましたが、どんな問題があり、それをどのように捉えるか?みなさ ん違う考え、捉え方があり非常に興味深かった。 ・ カードの言葉の定義があいまいにしてあるのがいいと思いました。自分なりの解釈で「元気」とか 「忘れる」とかを捉えて、他の人との解釈の違いに驚くのも新鮮だと思います。 ・ 「東京」だけが元気になるの?景気がよくなるの?町がキレイになるの?‥もやもやした。 ・ 日本のこれから、原発問題、国際化について話し合い、意見交換ができてよかったです。 ・ 6 年後どうなっているのか、いろいろ考えるきっかけになりました。開催自体はすでに決定していま すので、今後考えていくべきは、いかに負のインパクトを最小限に抑えていくかだと思いました。 ・ 震災、原発、人種、平和等、オリンピックに関わる多角的な視点に触れることができました。 ・ 中学生でも親しみやすく、考えやすいワークだったので学校現場で使えそうです。楽しかった! ・ 「東京五輪は東京のもの」とせずに自分がどうコミットしていくかで意識が変わるというのは改め て考えさせられた。 ・ 2020 年には、今の流れのままなら沖縄の米軍基地(辺野古)の建設が開始される頃です。大きなイ ベントに流されて、ますます関心の低いテーマになるんだろうなと感じました。

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カード(18 枚に切り分けて準備)

①フクシマ・震災を忘れる

②景気がよくなる

③道路・鉄道が

整備される

④外国人が増える

⑤町がキレイになる

⑥スポーツ施設が整備

され優秀な選手が育つ

⑦暴動・紛争・テロ

がおこる

⑧原発が増える

⑨ボランティア活動が

盛んになる

⑩日本が元気になる

⑪愛国心が育つ

⑫日本国籍をとる人が

増える

⑬同性婚が認められる

⑭子どもが増える

⑮スポーツ番組が増える

⑯国際理解がすすむ

⑰みんな英語が

できるようになる

⑱無事に何ごともなく

終わる

「教材体験フェスタ 2014」での実施例。

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5 つのカテゴリーシート 1. 「それはないでしょ」…そんなことは起こらない 2. 「正直わからん」…いきなり言われても困る 3. 「いいね」…期待してる 4. 「まずいでしょ」…そうなりそうでヤダな(困ったことが起こりそうだ) 5.「どっちかな」…いいとも悪いとも言えず(迷)

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◆解説資料 ①フクシマ・震災を忘れる 五輪の影響を受け建設技術者が不足するなどの理由から震災復興の遅れを懸念する声が数多く出されている。深刻な状 況が続く被災者を置き去りにして「なぜ東京で五輪なのか」といった根本的な批判もある。震災の記憶に関連して、費 用の面から震災遺構の保存を断念したといった報道がある一方で「震災を思いだすから見たくない」といった声から津 波で打ち上げられた船を解体したという事実もある。「忘れたい」という気持ちとも五輪はどこかでつながっているか もしれない。 ②景気がよくなる 3 兆円、4 兆円…150 兆円?!など、大きな景気刺激、経済効果を予想する報道から「まったく期待できない」「一時 的で、かえってマイナス」などの声まである。五輪特需への期待は五輪招致支持の大きな理由になっている。東京五 輪をきっかけに日本の各自治体も旅行者・物産の販売などに期待を寄せており、ネットでは自治体・企業の広報活動・ 宣伝が早くも花盛りである。 ③道路・鉄道が整備される 成田空港と都心を結ぶ鉄道を筆頭に、旅客輸送のための鉄道・道路網の整備が計画されている。リニアモーターカーの 開業も話題になった(こちらは間に合わないらしい)。また、第一回東京オリンピック開催時期に整備され劣化が深刻 化する首都高速道路など首都圏のインフラ一新を期待する声もある。一方、整備されるのは、東京、しかも港湾地域ば かりで、さらに東京一極集中に拍車がかかる可能性もある。 ④外国人が増える 東京五輪開催を話題にした海外からの観光客誘致が盛り上がっている。また、五輪をきっかけに外国人労働者の導入 が、これまで否定的だった政府からも話題にされ始めている(建築技術者の不足が背景にある)。一方、ネットのア ンケートなどを見ると外国人労働者に反対する声が圧倒的であり「日本人の外国人不信」が見え隠れする。国際理解・ 交流を前面に出す五輪ではあるが、日本の「立ち位置」は明確でない。 ⑤町がキレイになる 五輪を機に、電柱の地中化など「町の美化」をはかる動きが出ている。五輪の選手村は五輪後に分譲あるいは賃貸の宅 地となる予定であり、2020 年の五輪は都市計画と密接に結びついている。一方、これに関連して「新宿・歌舞伎町の 浄化」などが話題になり、北京五輪、その他、大きなイベント開催時に起こったように、路上生活者・住居の強制撤去 などが実施されるのではないかとの声も上がっている。 ⑥スポーツ施設が整備され優秀な選手が育つ トップレベル競技者用トレーニング施設として設置(370 億円)された味の素ナショナルトレーニングセンターは JOC 及びJOC 加盟競技団体に所属する選手・スタッフが専用で利用している(文科省管轄のため、厚労省管轄の障害者ス ポーツではトップレベル競技者であっても原則使用出来ないそうである)。トップアスリートのため多額の税金が投入 されているようにも思えるが、「スポーツ先進国と比べると、国がスポーツにかける予算が非常に少ない」(ソチ・橋 本団長)との声もある。一方で総務省の統計によればスポーツ人口の減少には歯止めがかからず(特に若い層の低下が 目立っている)、五輪開催に期待を寄せている。 ⑦暴動・紛争・テロがおこる ミュンヘン五輪におけるテロ、北京五輪のチベット問題、ソチのウクライナ問題など、世界が注目する五輪を狙って(あ るいは関係があると思われる)様々な事件・問題が発生している。1964 年の東京五輪期間中には中華人民共和国がは じめての原爆実験を行っている。 ⑧原発が増える 東京電力の統計から2013 年の夏、最大電力を記録したのは 8 月 9 日。この日は、まさしく 2020 年東京五輪の最終日 にあたっている…ということは日本中がエアコンをガンガンつけ、テレビを見てるんだから…原発が必要?しかし、招 致のための大会プランによれば「電力供給は震災直後、原子力・火力発電所が停止し落ち込んだが、火力発電所の復旧 や新たな電源設備の設置などにより回復し、2020 年東京大会で発生する追加需要に対しても十分に対応可能な状況に ある」となっているので…原発は不要?…のようにも考えられる。また「東京都内において、東京電力株式会社が所有 している原子力発電所は存在していない」との記載もある。 ⑨ボランティア活動が盛んになる 五輪開催の数年前からボランティアの募集が始まる。大会運営関連だけで 8 万人ものボランティアが必要と言われて いるが、すぐに埋まるそうである。なお、東京都立高校では卒業に必要な授業に「奉仕」があり、五輪関連のボランテ ィアに行くことで単位を修得する生徒もいるかもしれない。ボランティアをスキルアップの手段・チャンスと捉える考

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⑩日本が元気になる 「寄付金を上乗せした東京五輪応援ナンバーの販売」「オリンピックイヤーまでに夢をかなえる」など、五輪に関連 の「明るい記事」が数多く見受けられる。衆参両院は「(東京五輪が)元気な日本へ変革する大きなチャンスとして国 民に夢と希望を与える」という決議を可決している(山本太郎議員のみ反対)。「五輪を開催することによって、被災 地の子どもたちに元気と癒しを与えたいと願っている」(招致委員理事)「経済的にも厳しい期間が続き、二年前には 思いも寄らない震災が東北であったが、日本を再び元気づける五輪になると思う」(東京新聞)など、政財界・新聞は、 注文・懸念をつけ加えることはあっても、基本「日本を元気に」の論調である。 ⑪愛国心が育つ 招致用の大会プランには「2011 年に発生した東日本大震災後、2020 年招致は人々に希望を生み出し、励まし、困難に 打ち勝って、明るい未来に向けて前進するよう人々や国家を鼓舞するスポーツとオリンピック・ムーブメントの力を示 している。」とある。一方、オリンピックと愛国心のつながりには批判的な声も多数みられる。 ⑫日本国籍をとる人が増える ロンドン、ソチなど、近年の五輪では、国籍変更を行った選手の存在がクローズアップされている。中東の産油国の中 には、優秀な選手を受け入れることを国策としている国もある。国家を単位に競技を行う五輪の形態が、いわゆる「グ ローバル化」の中で大きく揺らいでいる。 ⑬同性婚が認められる ソチ五輪以前から同性愛者であることを表明している五輪選手を特集しているHP などもあり、欧米では関心の高いテ ーマになっている。この他にも、イスラーム圏の女性参加の問題など、欧米中心の五輪が非欧米諸国家・諸地域に拡大 していく中、人権、宗教・思想・信条などの問題が今後も様々な形で表明化していくかもしれない。 ⑭子どもが増える 「五輪までに結婚して、子どもを生みたい!」 といったツィートがネット上にたくさんあふれたそうである。五輪の イメージには「家族」「子ども」との親近感があるのだろうか。 ⑮スポーツ番組が増える ソチ大会の期間中、新聞・テレビは五輪一色。午前4 時!?羽生選手の金メダル確定直前の瞬間視聴率は 23.1%(関 東地区)・・・実は「日本って、オリンピック好き??」。今後も視聴率が取れる番組として五輪ものは重要視される はずである。一方、ソチ五輪期間中に日本は大雪に見舞われた。多くの死者を出し、各地で被害が広がり孤立集落の救 済が難航する状況にあったのにもかかわらず、こちらは大きく報道されなかった(事態が深刻だった日のNHK 9 時の ニュースは時間を延長して五輪特集)。報道の一面化に対する批判もわずかながらあった。 ⑯国際理解がすすむ 文科省は、スポーツを通じた国際交流が国際理解と国際平和に貢献して日本の国際的地位の向上につながり、五輪招 致・開催は、国際的交流の機会を拡充させ国際的なスポーツ界で活躍できる人的ネットワークを築く、としている。 ⑰みんな英語ができるようになる ソチから帰国した舛添都知事は「(現地では)ロシア語以外、通じなかった」「言葉のバリアーをどうするか、片言 でいいから全東京都民が英語をしゃべれるようになればいいと思う」と述べ、森組織委員長は「英語は、かつては敵 国語で、外国とはつきあいもなかった」と述べるなど、「五輪と英語」はけっこう話題になっている。一方、「オリン ピックは英語力上達に絶好の機会!」といった英語学習の宣伝がサイトでは数多くヒットする。 ⑱無事に何ごともなく終わる 大きく取り上げられていないが、心配なこともある。一つ目、天気‥運動や外出を控えるようにと警報が出される近年、 日本の猛暑。選手観客への影響が懸念されるが、招致プランでは「この時期は晴れる日が多く、かつ温暖で、アスリー トに理想的な気候」としている。二つ目、自然災害‥招致用プランでは「地震への備え」について「(長年の研究によ って導入・遵守されてきた)基準の効力と価値は、兵庫県南部地震や2011 年の東北地方太平洋沖地震などの大地震に おいて、倒壊を免れ軽微な損傷にとどまった建築物によって証明された」としている。津波については、東京湾の形状 から湾内では小さくなり、防潮堤・護岸の整備などの対策によって、「建造物・住民の安全が確保されている」とも述 べている。最近の政府・官公庁・メディアの広報・報道の厳しい評価とはだいぶ違っているようだ。 ‥とはいえ、この資料は 2014 年 3 月現在のものです。マスメディアやウェブサイトには、公式な発表のほ か、一般の市民の率直な気持ちや思いがたくさん掲載されています。授業を実施される前に、東京五輪をめ ぐる最新の話題や情報を調べて、適宜アレンジして実施しましょう!

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アクティビティ4:

決定!五輪開催地

◆目的: 五輪の理念や目的、東京五輪をめぐる様々な議論を知ったうえで、五輪を開催する意義や期待することにつ いて議論する。 ◆対象:中学生以上 ◆所要時間:30 分程度 ◆資料・備品:ワークシート(本頁に掲載/グループに 1 枚)、日本地図、世界地図 ◆すすめ方 1. グループにワークシートを 1 枚配布する。 2. グループで話し合い「五輪を開催するならここ!」と思う場所を選出するよ う説明し、ワークシートに国・地域名と理由を書くよう説明する。 3. グループ毎に全体に発表する。 ※発表の際に B5~A4 サイズの白紙に「TOKYO2020」のように書き、裏返しながら 発表すると、選考会のようになって盛り上がります。 ワークシート

TOKYO2020

決定!五輪開催地

五輪開催地を選出しましょう。 国・都市・地域、選び方は自由です。 共催という形や「やっぱり東京」という提案、日本の中の都市・地域でも OK です。

【候補地】

【理由】

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Global Express

ニュース

■ グローバル・エクスプレス日本版 第1号~5号 好評領布中! 教育の現場で活用できるアクティビティが詰まったグローバル・エクスプレス。 ぜひセットでお求めください。 セット:会員価格(本体)1,600 円+税、一般販売価格(本体)2,000 円+税 ■第1号 ニュースに耳を傾ける(基本編) ■第2号 攻撃を超えて(9.11 同時多発テロとイスラム) ■第3号 難民(難民、日本における難民政策) ■第4号 イラク(イラク問題、紛争の解決) ■第5号 戦争報道(イラク戦争と報道)  「グローバル・エクスプレス サンプル版」 について ・グローバル・エクスプレス・タスクチームが時事問題をテーマにした教材を速報アクティビティとして提案します。 ・速報アクティビティへのご意見・ご提案・実践報告は大歓迎です。 ・今年度、グローバル・エクスプレス・タスクチームには、ほとんど活動予算がありません。ご寄付も歓迎します.........。 (ご寄付は、セミナー開催費用、冊子印刷費用、HP維持費、資料購入費などに利用いたします)  この教材のご利用について この教材の版権は(特活)開発教育協会に所属し、本誌の全部または一部を無断で複写・転載・引用・要約する ことは禁じます。本誌の「生徒用ワークシート」の複写による利用は、学問的な利用、教室・研究会等での利用に 限ります。 製作:グローバル・エクスプレス・タスクチーム 井手将夫・石川一喜・八木亜紀子 発行:特定非営利活動法人 開発教育協会(DEAR) 〒112-0002 東京都文京区小石川 2-17-41 富坂キリスト教センター2 号館 3 階

■レポート、感想をお寄せください

http://www.dear.or.jp/ge/

ウェブサイトからの教材ダウンロードも、とても多くの方にご利用い ただいています。タスクチームでは、教材をご覧になった感想や、 レポートを募集しています。「こう使った」「ここが使いにくかった」 「こんな風に応用させた」等々、どんなことでも結構です。 実践報告をウェブサイトの「実践レポート」コーナーに掲載すること もできますので、ご希望の方は下記 DEAR 事務局(担当:八木)ま でご連絡ください。  03-5844-3630  main@dear.or.jp

参照

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