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Cover Story 特集 巨大市場が見えてきた新型メモリー PRAM(phase change RAM) や MRAM(magnetoresistive RAM) で巨大市場を獲る こうしたシナリオが現実味を帯びてきた メモリー大手各社が, 製品ロードマップにこれらの新型不揮発性メモリーを含める

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Academic year: 2021

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特集

Large market is emerging for new types of memories

Every player dreams of gaining a giant share of the market. By taking advantage of phase change RAM (PRAM) and magnetoresistive RAM (MRAM) , that dream is becoming a real possibility. These new types of nonvolatile memories are now being specified in product road maps presented by each major memory maker. They already are aiming to bring the nonvolatile memories to market in 2007 or by 2010 at the latest. Their new memory strategies are focused on a giant market. Specifically, it is the market filled with cellular phones, home appliances, PCs, and cars that offers the chance to enjoy sales topping 100 billion yen. by Junichi Ohshita

巨大市場が見えてきた

新型メモリー

PRAM(phase change RAM)や MRAM(magnetoresistive RAM)で巨

大市場を獲る。こうしたシナリオが現実味を帯びてきた。メモリー大手各社が,製 品ロードマップにこれらの新型不揮発性メモリーを含めるようになり,2007 〜 2010 年の市場投入に向けて動き始めている。各社が新型不揮発性メモリーで狙う のは,携帯電話機,家電,パソコン,自動車に向けた売上高 1000 億円以上の規 模を狙える巨大市場である。

Cover Story

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狙うは1000億円規模の売り上げ ケータイ,家電,自動車に搭載 市場動向 Part1 書き込み電流とチップ面積を削減 65nm以降に微細化へ 技術動向 Part2

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Part1

 PRAM(phase change

RAM),MRAM(mag-netoresistive RAM),FeRAM(ferroelectric RAM)。これまで研究開発段階か,製品化され

てもニッチ市場向けにとどまっていた新型不揮 発性メモリーが,今後 3 ∼ 4 年で大化けする可 能性が出てきた(図 1)。米 Intel Corp. や韓国

Samsung Electronics Co., Ltd.,東芝といった

大手 LSIメーカーが,1 社で 1000 億円以上を売 り上げられる用途を狙い始めたからである。  各社が狙う新型不揮発性メモリーの市場規模 は,潜在的には数兆円ある。この市場は,現在 はマイクロプロセサのコード(プログラム)格納 用 NOR 型フラッシュ・メモリーや,DRAMなど の既存メモリーがカバーしている注 1)。新型不揮 発性メモリーは,これら既存メモリーの代替に 加えて,既存メモリーにはない機能や性能で新 しい巨大市場を築く可能性が高い。  このように巨大市場を狙えるようになったの は,メモリー各社の10 年以上にわたる開発成果 の蓄積により,新型不揮発性メモリーが技術的 に実用レベルに達したことが大きい。それに加 えて,その特徴を生かせる用途が拡大している ことがある(図 2)。さらに,既存メモリーに対す るコスト競争力もついてきた。 大手LSIメーカーが相次ぎ事業化に動く   新 型 不 揮 発 性 メモリー のうち,PRAM と MRAMに関してはメモリー大手が 2007 ∼ 2008 年に市場をゼロから立ち上げていく。FeRAM では,概してセキュリティ用途向けに数十億円 規 模に 育 てた富 士 通 が,2010 年 頃までに数 百億円以上の規模へと拡大させる計画である。  PRAMを製品化する主なメーカーは,Intel, Samsung,ルネサス テクノロジ,伊仏STMicro-electronics 社,独 Qimonda AG,米 IBM Corp.,

台湾 Macronix International Co.,Ltd. である注 2)

(図 3,図 4)。このうち,量産で先陣を切るのが IntelとSamsung である。いずれも2007 年下期 ∼ 2008 年上期に量産を始める。MRAMの製品 図1●新型不揮発性メモリーの巨大市場が見えてきた 大手 LSI メーカー各社が,新型不揮発性メモリーを製品ロードマップに入れ,2007 〜 2010年の事業化に向けて動き始めた。1000億円を超える売り上げを狙う。本誌が作成。

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注1)フラッシュ・メモリーのう ち,メモリー・カードや携帯型 音楽プレーヤ向けなどのスト レージ用途では,2010年前 後においてもNAND型がコ スト競争力で強みを発揮しそ うである。なお,NOR型フラ ッシュとDRAMの市場規模 は2006年にそれぞれ約1兆 円と約3兆円だった。 注2)Qimonda,IBM,Mac-ronixの3社,およびIntelと STはそれぞれ共同開発する。 このほか,DRAMを低電力 化する用途で,エルピーダメ モリがPRAMの記憶素子に 使 う GeSbTe(GST)膜 を DRAMのキャパシタに導入 する。 市場動向

狙うは1000億円規模の売り上げ

ケータイ,家電,自動車に搭載

新型不揮発性メモリーで1社当たり1000億円規模の売り上げを確保することが現実味を帯びて きた。米Intel Corp.や韓国Samsung Electronics Co., Ltd.,東芝,ルネサス テクノロジなど の大手LSIメーカーが,携帯電話機や家電,自動車といった巨大市場に向けた新型不揮発性メ モリーの製品化に動き始めたためである。各社は PRAM(phase change RAM)や MRAM (magnetoresistive RAM)を早ければ 2007 〜 2008 年に量産する。これらの新型不揮発性メモ

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特集 化を計画しているのは,米 Freescale Semicon-ductor,Inc.,東芝,ルネサス,ソニー,NEC, Samsung,IBM,Qimonda である。このうち, Freescaleが 2006 年に量産化しており,2009 年 ごろからそのほかのメーカーが量産化する見通 しである。FeRAMの開発を手掛けるメーカーは, 1999 年から量産中の富士通のほか,Samsung,

米 Texas Instruments Inc.(TI),東芝,松下電 器産業である。 IntelやSamsungがPRAMを量産へ  PRAM が狙う応用分野は,携帯電話機や家 電,パソコン(PC)に搭載されるNOR 型フラッ シュの代替が主体となる。そこに狙いを定める のが,IntelとSamsung である(図 5)。  Samsung は,携帯電話機に搭載されている 「NOR 型フラッシュの代替を目指す」(同社 ,

Vice President of Semiconductor R&D Center, Memor y Business のHongsik Jeong 氏)。携帯

電話機の出荷台数は 2006 年時点で年間10 億台 を超え,搭載されるNOR 型フラッシュの価格は 数百∼1000円程度である。これを置き換えられ れば,PRAMは年間数千億円の巨大市場になる。 Samsung は,2006 年末から複数の大手携帯電 話機メーカーにPRAMの評価用サンプルを出荷 している。90nm 世代の 256M ∼ 512Mビット品 と見られる。2008 年上期の量産に向け,2007 年 4 ∼ 6 月期にエンジニアリング・サンプル, 2007 年末までに商用サンプルの出荷を始める。 p.30 の 注 3)ル ネ サ ス は 2006年度中にフラッシュ混 載マイコンの累計出荷数が 10億個になるとの見通しを, 2006年7月の事業戦略説明 会で示している。 図2●新型不揮発性メモリーの強みを生かせる用途が続々 携帯電話機や家電,パソコン,自動車といった巨大市場が狙える機器で,PRAMやMRAM, FeRAMの特徴を生かせる用途が増えてきた。本誌が作成。 CS1_z3 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 時期(年) 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 時期(年) 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 時期(年) MRAM PRAM FeRAM サンプル出荷 (Samsung,Intel) (Samsung,Intel)小規模量産 ラインの増設300mm化 大規模量産 (Samsung,Intel+ 新規参入メーカー) 小規模量産 (Freescale) 大規模量産 (Freescale+ルネサス+ 新規参入メーカー) サンプル出荷 (ルネサス)市場参入メーカーの増加用途の拡大, 1億個/年規模の量産 (富士通) 市場参入メーカーの増加用途の拡大, (富士通+新規参入メーカー)10億個/年規模の量産 図3●大手メーカーが 製品化に向けて始動 大手メモリー各社が新 型不揮発性メモリーの 市場投入に向けて始動 した。PRAMの量産を 2007 〜 2008 年,M RAMの量産を2010年 ごろに始める。FeRAM で は 市 場 拡 大 を 目 指 す。本誌が作成。

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 携帯電話機に加えて,家電向けの NOR 型フ ラッシュ代替を狙うのが,Intel である。同社は, NOR 型フラッシュとNAND 型フラッシュ,高速 RAMの特性を兼ね備えた「ユニバーサル・メモ リーを視野に入れる」(同社 Chief Technology

Officer, Flash Memory GroupのEd Doller氏)。

ユニバーサル・メモリーは AV 機器やPCなどす べてのデジタル機器を対象にできる。そこでは, 1兆円を超える市場がターゲットになる。Intelは, PRAM の評価用サンプルの出荷を2007 年 1 ∼ 3 月期に始めた。128Mビット以上の90nm品であ る。早ければ 2007 年下期に量産を始める。  マイコンへの混載を狙うのが,ルネサスであ る。同社はマイコンを主力事業としており,フ ラッシュ混載マイコンを年間 1 億個以上出荷し ている注 3)。この NOR 型フラッシュを置き換えれ ば,PRAMはマイコンを搭載するデジタル機器 を対象にできる。フラッシュ混載マイコンの価 格は数百∼1000円程度と見られるため,すべて を代替すると,ルネサスだけで年間数百億∼ 1000 億円の売り上げになる。同社は,2010 年ご ろにPRAM 混載マイコンの製品化を計画する。 東芝はMRAMで携帯電話機向けに攻勢  MRAM で携帯電話機を狙うのが,東芝であ る。MCP(multi chip package)を 構 成 す る,

NOR 型フラッシュとSRAM のインタフェースを 備えるDRAM(疑似SRAM)の1チップ化を狙う。 携帯電話機に搭載される MCP の価格を平均 1000円とすると,年間1 兆円規模の市場となる。  PRAMと同様に,マイコンに混載するNOR 型フラッシュを置き換える用途もある。すべて のデジタル機器を狙えることから,年間数百億 ∼1000 億円規模を狙える。この市場を狙うのが ルネサスである。同社は,PRAMが開発途上で あることから,先行してMRAMを混載したマイ コンのサンプル出荷を2008 年に始める。家電メ ーカーなど10 社以上に向ける。出荷先は明らか にしていないが,「想定以上に多くの用途で引き 合いがある」(ルネサス テクノロジ 汎用製品統 括本部 マイコン事業部 FlashMCU 開発第二部 部長の日高秀人氏)と言う。  FeRAM は,2007 ∼ 2010 年に市場の拡大局 面を迎える。これまでは産業機器や ICカードな ど,セキュリティ分野のニッチ市場にとどまっ ていたが,家電や携帯電話機,自動車などへと 用途が拡大する(図 6)。その追い風となるのが, 機器のセキュリティ機能への要求が高まってき たことである。例えば,携帯電話機には電子マ ネー機能の搭載が進んでおり,セキュリティ機 能の強化が必要となる。そこでは,書き込まれ たデータを解読しにくい FeRAM の強みを生か せる。これによって,最大手の富士通でさえ年 間売上高が100 億円規模にとどまっている状況 が一変する。同社以外では,Samsung や TI, 東芝,松下電器が FeRAM で巨大市場を狙う。 このうちSamsungは,FeRAMの低消費電力と いう特徴を訴求して「携帯電話機の市場を狙う」 (同社のHongsik Jeong 氏)とする。 携帯電話機や自動車でニーズが高まる  ここに来て,新型不揮発性メモリーで1000 億 注 4)NOR型フラッシュは, 高温ではトンネル酸化膜を 介したリークによって,デー タ保持特性が低下しやすく なる。 p.32 の 注 5)富 士 通 か ら FeRAMチップの供給を受け る米Ramtron International Corp.は,自動車市場を攻め る。同社のFeRAM製品の自 動車向け売上高は,2006年 に対前年比2倍に拡大した。 自動車メーカーと電装機器メ ーカーを合わせて既に20以 上のユーザーを獲得している という。同社は2007年3月 に,TIの製造ラインを利用し て,4Mビットの FeRAMの 製造を開始すると発表した。 p.32の注6)マイコン向けで は,ユーザーの早期採用を促 すために,FeRAMを搭載し た評価用ボードを,組み込み ソフト開発企業に2006年末 に配布した。 p.32の注7)SIMカードを狙 うメモリー・メーカーとして, 富士通以外に米 Spansion Inc.がある。同社のNOR型 フラッシュ技術「MirrorBit」で は,ストレージ・デバイス並 みの容量と動作速度を両立 できることから,メモリー・カ ードの機能を取り込むような 大容量SIMカードを狙える。 CS1_z4 1 チ ッ プ 当 た り の 容量 ( ビ ット ) DRAM MRAM SRAM FeRAM ReRAM デ−タ書き換え時間(秒) 低速 高速 NAND型 フラッシュ NOR型 フラッシュ PRAM プロ−ブ型メモリ−? 1G 10G 100M 10M 10−9 10−8 10−7 10−6 10−5 10−4 10−3 プロ−ブ型メモリ−? 図4●フラッシュからDRAMまでを狙える 新型不揮発性メモリーは,それぞれ異なる特徴を備える。動作速度ではMRAMやFeRAM が優位である。集積度では現状でPRAMがリードしている。本誌が作成。

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特集 円規模の売り上げを狙えるようになったのは, (1)携帯電話機,(2)自動車といった巨大市場で, 新型不揮発性メモリーの特徴を生かせる用途が 拡大しているためである。  (1)携帯電話機では,データ書き換え速度が 高い特徴を強みにできる。例えば,「大手携帯 電話機メーカーからPRAM の引き合いが強い」 (日本サムスン,Device Solution 事業部 技術品 質Group 主任の吉竹晃志氏)との声が聞かれる。 既存の NOR 型フラッシュでは書き込み時間が 遅く,プログラムの書き込みに時間がかかって 「端末の出荷に要する時間を短縮する際のボト ル・ネックになっている」(同氏)ためである。携 帯電話機に搭載するプログラム容量の増大を背 景に,NOR 型フラッシュへのプログラム書き込 みには端末 1台当たり20 分程度を要していると いう。NOR 型フラッシュに比べて書き込み速度 を10 倍以上に高められるPRAMを使えば,こ れを1∼2 分以内に短縮できる。  さらに,携 帯 電 話 機 向けで 使 われ ている SRAMが,「45nm以降に危機的な状況を迎える」 (ルネサス テクノロジの日高秀人氏)ことも新型 不 揮 発 性 メモリー にとっ て 追 い 風 とな る。 SRAMは,リーク電流の増大によって消費電力 の要求を満たすことが難しくなる。そこで,ス タンバイ電力をゼロにできる「不揮発性のSRAM として機能する新型メモリーが切望されている」 (東芝 研究開発センター フロンティアリサーチ ラボラトリーの安部恵子氏)。実際,45nm 以降 の携帯電話機向けデジタルLSIの開発において, SRAMを新型不揮発性メモリーに置き換える検 討が始まっているもようである。  (2)自動車では,動作温度が高いために,新 型不揮発性メモリーが既存メモリーより優位に 立てる。車載メモリーでも多くは動作温度の上 限が 85 ℃だが,排気管の周囲といった高温部 で使われると「125∼150 ℃が求められる」(電装 機器大手のデンソー IC 技術 1 部 部長の越田信 吾氏)と言う。そこで,高温でもほとんど性能が 劣化しない新型不揮発性メモリーのニーズが高 まる注 4)。例えば,MRAM では記憶素子の磁化 の向きが温度の影響では反転しにくいために 「150 ℃でも性能劣化はほとんどない」(東芝 セ CS1_z5 Samsung Intel 東芝 富士通 Freescale ルネサス テクノロジ ▶携帯電話機,家電 NOR型フラッシュ   →PRAM ▶パソコン NOR型/NAND型/RAM   →PRAM ▶携帯電話機 NOR型フラッシュ   →PRAM ▶携帯電話機 NOR型フラッシュ+擬似SRAM   →MRAM ▶家電 NOR型フラッシュ   →PRAM/MRAM ▶自動車 NOR型フラッシュ   →PRAM/MRAM ▶家電 NOR型フラッシュ   →MRAM ▶家電 NOR型フラッシュ   →FeRAM ▶セキュリティ NOR型フラッシュ   →FeRAM ▶自動車 NOR型フラッシュ   →MRAM 図5●NOR型の代替やMCPの1チップ化を狙う 各社は,新型不揮発性メモリーでNOR型フラッシュの代替やMCPの1チップ化を狙う。 狙う市場は,携帯電話機やパソコン,家電,自動車と多岐にわたる。本誌が作成。 CS1_z6 富士通が評価用ボードの 出荷を2006年末に開始 用途を拡大 用途を拡大 容量(ビット) スマート・ カード 1015 ∞ 64K∼1M 1M∼16M 8M以上 1012 1010 書 き 換 え 回 数 コピー機 カーナビ 携帯電話機 プリンタ サーバー マイコン ルーター PDA スイッチング・ ハブ ゲーム機 タグ メーター (電力計測用など) 図6●広がり始めたFeRAMの用途 従来はニッチ市場に限られてきたFeRAMの用途が広がり始めた。セキュリティ機能を強み に,家電や携帯電話機,自動車へと拡大する。富士通のデータを基に本誌が作成。

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ミコンダクター社 半導体研究開発センター 先 端メモリデバイス技術開発部 主幹の與田博明 氏)と言う。実際,MRAMの自動車向け応用を 狙うFreescale は,「− 40 ∼ 150 ℃での MRAM の動作検証が,2007年中に完了する」(同社 Man-

ager, MRAM Magnetic Device Physics R&D, Technology Solutions Organization のBrad N. Engel 氏)としている。 システム・レベルで既存メモリーを攻める  新型不揮発性メモリーの事業化に乗り出した LSIメーカーの戦略は,二つに分かれる。(a)シ ステム主導型,(b)デバイス主導型である。  (a)システム主導型は,チップを搭載するシス テムの付加価値を重視する。この戦略を取るの が,富士通やルネサス,Freescaleである注 5)。  富士通は,「FeRAMをマイコンや携帯電話機 に搭載するためのプロジェクトを始動させた」 (同社 電子デバイス事業本部 システムマイクロ 事業部長代理の井上あまね氏)注 6)。携帯電話機

のSIM(subscriber identification module)カー ドに,同社の FeRAM 混載 LSIを搭載すること などを狙う注 7)。ここで同社は,FeRAM 混載 LSI で強化してきたセキュリティ機能を活用する(図 7)。例えば,コンテンツのダウンロード料金や 交通費など複数の課金機能をSIMカードで扱う 場合,システム内のデータを暗号化する必要が ある。同社の FeRAM 搭載 LSI は,こうした暗 号化処理に対応しやすいシステム構成にしてい ると見られる。同社は FeRAM の製品化当初か ら,セキュリティ機能を生かせる混載用途に力 を入れ,実績を積んできた注 8)。  ルネサスは,売上高の 30%を占めるマイコン 事業を基盤に,PRAM や MRAM の事業を立ち 上げる(図 8)。同社は,マイコンに混 載する NOR 型フラッシュを,2009 ∼ 2010 年をメドに 一部 MRAM で代替する。当初は家電向けで, システムの起動時にプログラムや設定データを RAMに転送する時間を,NOR 型フラッシュよ り短くできる特徴を訴求する。その次に,「自動 車向けを狙う」(ルネサスの日高秀人氏)。自動 車でも,電源投入時にシステムの立ち上げ時間 を短縮できる特徴を強みにする。同社は 2010 年 頃に PRAM の製品化を計画しており,MRAM と同じようにマイコンに混載する用途に向ける。 その際,上位機種は性能で優位な MRAM,下 位機種はコストで優位なPRAMといった使い分 けをしていく可能性があるという(図 9,図10)。 注8)富士通は,FeRAM搭載 LSIの採用を促すためのシス テム構築に取り組んできた。 例えば,データ読み出しが高 速なFeRAMを使わなければ セキュリティを保証できない システムを作り,FeRAMの 採用を促すといった手法を取 っていると見られる。 CS1_z7 EAL3; 一般民生 EAL4; 一般民生 EAL5; 一般民生/軍事用途 EAL6; 軍事用途 EAL4+: 一般民製品(ICカード) 「Felica」方式のICカード(左の 写真)に採用されたFeRAM 搭載LSIのセキュリティ・レベル EAL7; 軍事用途 EAL2; 一般民生 EAL1; 一般民生 外部からデータ解読などの攻撃を受ける可能性 ゼロ 低 中 高 E A L( 評 価 保 証 レ ベ ル ) 図7●民生向けで最高レベルのセキュリティを保証 富士通は,FeRAM混載LSIで国際標準ISO/IEC 15408の「EAL4+」認証を得た。このLSIは, 「FeliCa」方式の非接触ICカードに採用された。富士通のデータ。写真はソニーのデータ。 CS1_z8 時期(年) 動作周波数(設計ルール) 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 第2世代 (∼2009年): フラッシュ 混載マイコン ▶混載フラッシュあるいはROMレス ▶高速,高信頼性 ▶不揮発性RAM ▶統合型の混載不揮発 ▶セキュリティ,使いやすさ 第3世代 (2010年∼): MRAM/PRAM 混載マイコン 100MHz (130nm) (90nm)133MHz (65nm)166MHz 図8●マイコンにMRAMやPRAMを搭載へ ルネサス テクノロジは,マイコンに混載するNOR型フラッシュを,2010年頃からMRAM やPRAMで置き換える。ルネサス テクノロジのデータを基に本誌が作成。

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特集  Freescaleは,ルネサスと同じようにMRAM で車載マイコンを狙う。当面は民生機器や産業 機器向けのニッチ市場を狙うが,2008 年には自 動車への応用を視野に入れて,MRAM の動作 温度範囲を−40 ∼150 ℃に広げる注 9)。 PRAMやMRAM,次はコスト勝負へ  (b)デバイス主導型は,コスト削減によって既 存メモリーの代替を狙う。チップ面積で既存メ モリーより小さくする。この戦略を取るのは, IntelとSamsung,そして東芝である。  IntelとSamsung は,PRAMを65 ∼ 32nm 以 降に微細化したときのセル面積で NOR 型フラッ シュをしのぐ計画である。Intelは,サンプル出 荷を始める90nm 世代の次は「(1∼2 世代飛ばし て)50 ∼ 45nmに微細化してNOR 型フラッシュ とのギャップを埋める」(同社 Director of

Mar-keting,Phase Change Memor y の Greg Komoto 氏)と言う。そして,NOR 型フラッシュ が 45nm 以降へと移るここ 2 年以内をメドに, 「NOR 型フラッシュを全面的にPRAMで置き換 えられるか否かを見極める」(同氏)とする。 Samsungは,90nm 世代で NOR 型フラッシュを しのぐセル面積を実現しており,「65nm 以降に さらに縮小できる」(同社の Hongsik Jeong 氏) としている。  東芝は MRAMを65nm 以降に微細化し,携 帯電話機向け MCP にコストで対抗する。この 戦略を同社が選ぶのは,微細化に向くスピン注 入磁化反転法による書き込みを実用化できると 見るためである。この技術では,記憶素子に流 す電子のトルクで磁化の向きを反転させ,書き 換える。書き込みに必要な電流密度が一定であ るため,微細化して記憶素子の断面積が小さく なるほど書き込み電流が減る。これに対し,磁 界で磁化を反転させる従来方式では,微細化す るほど磁化が反転しにくくなり,書き込み電流 が増大するという致命的な欠点があった。  さらに,スピン注入磁化反転法では磁界発生 用の書き込み線を使わないために,セル面積を 6 ∼ 10F(F は設計ルール)と,DRAM や NOR2 型フラッシュに匹敵する水準まで縮小できると いう。この技術では,これまで書き込みに必要 な電流密度が大きく,微細化に向く特徴を生か せない状況にあったが,東芝やソニー,日立が その解決にメドを立て始めている。(大下 淳一) 注9)Freescaleは,自動車向 けに先駆けて,産業用途に向 けるMRAM製品の第2弾を 2007年上期中に市場投入す る。動作温度範囲を−40 〜 105℃に対応させる。 CS1_z9 主にMRAM で狙う領域 主にPRAM で狙う領域 技術世代(nm) 130 150 180 250 250以前 50MHz以上 20MHz以下 20M∼50MHz 32ビット (自動車,産業機器) ▶高信頼性 16ビット (PC,産業機器, 自動車,民生機器) スマート・ICカード ▶多数回書き換え,データのセキュリティ 8ビット/4ビット (民生機器など) 集 積 度 図9●自動車や民生機器を獲る ルネサス テクノロジは,マイコンの上位機種と下位機種で,混載する新型不揮発性メモリ ーを使い分けることを想定する。ルネサス テクノロジのデータを基に本誌が作成。 CS1_z10 160 140 120 100 80 60 40 0 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 時期(年) 市 場 規 模( 億 米 ド ル ) 実績 予測 世界マイコン市場(2002∼2009年 の平均年間成長率7∼8%) フラッシュ混載マイコン市場 (平均年間成長率20%) 2005年 40億米ドル (マイコン市場の34%) 2010年 100億米ドル (マイコン市場の60%以上) 図10●MRAM混載マイコンを売り上げ1000億円規模へ ルネサス テクノロジは,2010年のフラッシュ搭載マイコンの市場規模を1兆円以上と見 積もる。その市場をMRAMやPRAM搭載品で獲りにいく。ルネサス テクノロジのデータ。

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