• 検索結果がありません。

次世代の文書記述言語アーキテクチャー「DITA」導入によるコンテンツ制作の効率化について

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "次世代の文書記述言語アーキテクチャー「DITA」導入によるコンテンツ制作の効率化について"

Copied!
8
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

「DITA」導入によるコンテンツ制作の効率化について

Efficient Content Creation Through Implementation of DITA

- Next Generation Document Description Language Architecture

吉田 茂 * Shigeru Yoshida 佐藤千秋 * Chiaki Satou 竹森昭一 * Shoichi Takemori * PFU ソフトウェア株式会社 テクニカルコンテンツ統括部 第一開発部 マニュアル制作を取り巻く環境の変化に伴い,制作コストの圧縮や制作期間の短縮が求められている.また,製 品のグローバル化の進展に伴い,翻訳をいかに効率よく進めるかといった点が課題になっている.PFU ソフト ウェアではこうした課題を解決するために,技術文書記述の世界標準仕様である DITA(Darwin Information Typing Architecture)を導入し,適用を開始した.本稿では,DITA 導入の背景に加え,DITA による制作環境, 制作プロセスを紹介するとともに,今後の課題・取り組みについて紹介する.

Requests to reduce the cost and production time by changing conditions that are related to manual creation have been made. In addition, making translations more efficient has become a topic in relation to the increasing need for multi-language products. To find a solution to these pressing issues, PFU Software Limited started implementation of DITA (Darwin Information Typing Architecture), a global standard for technical document descriptions. This paper introduces the background for implementing DITA, the manual creation environment and creation process using DITA, as well as how current issues are being dealt with.

1

まえがき

マニュアル制作を取り巻く環境が大きく変化してい る.製品の開発サイクルの短期化に伴い,マニュアル制 作期間の短縮が求められている.また,製品のグローバ ル化が進展し,多言語への翻訳をより効率的に行うこと も要求されている. 一方で,マニュアルに対するユーザーのニーズも変 わってきている.ユーザーは製品を活用するために,「必 要な情報を,必要な時に,最適な形式」で入手すること を望んでいる.とりわけ「最適な形式」については,こ れまでの紙媒体や PDF 形式に加えて,タブレット端末 やスマートフォンといったデバイスでマニュアルを閲覧 することのニーズが高まっている.こうした要求に応え るためには,マニュアル制作環境の対応だけではなく, 制作手法も含めた見直しが必要である. PFU ソフトウェア(以降,PSW)では,これまで, マニュアル制作の効率化を狙いとして専用の DTP注1) フトウェアや SGML参1)による制作を実践し,一定の 成果を挙げてきた.しかし,DTP ソフトウェアは文章 や表の文字入力という「コンテンツ制作」と,章,節ほ かのスタイルをどのようなフォントで表現するかや,図, 表ほかをどのようにレイアウトするかという「スタイル 設計」を並行して行えるという利点がある一方で,レイ アウトを確認しながら執筆するために全体効率の点で課 題があった.また,SGML は,コンテンツ制作とスタ イル設計工程を分離することで DTP ソフトウェアの課 題は解決できたものの,例えば,節単位に文書ファイル を分割した場合,個々の文書ファイルに記載される情報 が概念的な意味を持つのか,操作手順を示しているかと いった情報の種類が厳格に規定されておらず,その結果, 注1) DeskTop Publishing の略.文章や写真,図,表などを組み 合わせ,マニュアルなどの原稿を作成すること.

(2)

情報の部品化・再利用が効果的に行われなかったという 課題が残った. こうした状況を踏まえ,PSW では,ユーザーのニー ズに対応し,前記 SGML による制作の課題を解決する 手法として次世代の文書記述言語のアーキテクチャー (規格)である DITA と,トピック指向ライティング手 法をマニュアル制作に導入し,マニュアル制作の効率化 を実現してきた. 本稿では,DITA 導入の背景に加え,DITA による制 作環境,制作プロセスを紹介するとともに,今後の課題・ 取り組みについてまとめる.

2

DITA について

PSW における DITA の取り組みを述べるまえに, DITA の特長と導入のメリットについて紹介する. 2.1 DITA の特長とメリット

DITA は,XML(Extensible Markup Language) ベースの文書記述言語のアーキテクチャーである. DITA では記述する文書の型があらかじめ定義されてい る.例えば,概念(製品のコンセプトなど)に関する情 報,タスク(操作手順)に関する情報,参照(リファレ ンス)に関する情報といった,それぞれに適した文書の 型が用意されている.コンテンツ制作者は,型に準拠し て必要な情報を記述することになる. こうして記述された一つ一つのかたまりを「トピック」 と呼んでいる.トピックは DITA における基本となる 情報の構成単位である.トピックの特長は,情報の単位 が小さいことと,それ自身で情報が完結している点にあ る.こうしたルールを厳格に順守して記述(執筆)する ことで,情報の再利用が高まるのである.そのため,ト ピックの特長を最大限に発揮するには,執筆手法(トピッ ク指向ライティング手法)の習得が必要となる. DITA のもう一つの特長は,成果物を作成するための 構成情報をトピックの内部ではなく,別の XML ファイ ルで制御している点である.このファイルを「マップ」 と呼んでいる.つまり,マップの中にトピックを配置す ることで目的(対象読者,使用するオペレーティングシ ステムに限定した情報など)に応じた成果物を作り上げ ることが可能である.さらには,コンテンツ制作とスタ イル設計が独立しているので表示形式を変更する点で柔 軟性があるという特長がある.DITA ではスタイル情報 を css注2)や自動組版を行うための規格である xsl-fo注3) で制御している. DITA によるマニュアル制作の全体イメージを図 - 1 に示す. なお,DITA では,あらかじめ用意されている文書の 型をカスタマイズすることも可能である.例えば,記載 対象の製品情報に合わせて,参照情報(リファレンス型) の要素を追加したり順番を変更したりすることができ る.「特殊化」と呼ばれるこの方法によって,あらゆる 製品情報の記述に対応することが可能になるのである. 2.2 マニュアル制作における DITA の活用 ここでは,上述した DITA を,マニュアル制作にど のように導入し,活用すべきかを従来の課題と対応づけ て説明する. (1) 製品の開発サイクルの短期化 マニュアル制作の対象となる製品の開発サイクルが短 期化していることで,必然的にマニュアルの制作期間も 短縮を余儀なくされている. 製品のエンハンスに伴ってマニュアルを改版する場 合,通常は旧版から流用可能な情報を極力再利用するこ とで効率化を図っている.しかし,従来のマニュアルは, 読み物としての構成を重視し,順番にしかも網羅的に読 むことを想定して制作されているため,製品に関する情 報(仕様,使い方,概念,注意事項)が渾然一体となっ

注2) Cascading Style Sheets の略.Web ページを記述するマー クアップ言語の HTML にスタイルを指定するためのスタイル シート言語. 注3) XSL Formatting Objects の略.XSL による組版をするため のマークアップ言語. ◆図 - 1 DITA によるマニュアル制作の全体イメージ◆ (Fig.1-Overview of manual creation using DITA) ≪トピック≫ ≪マップ≫ ≪スタイル≫ ≪マニュアル≫ はじめに 概要 開発環境 インストール 退避・復元 xx コマンド A社向けマニュアル はじめに 概要 PDF用 HTML用 PDF用 RTF用 A社向け (PDF) xx コマンド B社向けマニュアル はじめに 概要 yy コマンド aa コマンド yy コマンド 概念 概念 概念 タスク タスク 参照 参照 参照 A社向け (HTML) B社向け (PDF) B社向け (RTF) ・・ ・・ ・・

(3)

て記載されている.いわゆる「Book 型」である.「Book 型」で記載されたマニュアルの場合,文章全体の文脈や 関係性が強いことから,部分的な情報の流用には細心の 注意を必要とし,実質的な再利用がなされていないのが 実情である. DITA は,トピックの型が明確に分離しており,一つ のトピックの情報量も少なく,しかも完結しているとい う点で部品化が容易であるという特長がある.最初から 再利用を前提とした作りを想定している.そのため,改 版時の流用率が高く,結果的にマニュアルの制作期間の 短縮につながる. (2) 製品のグローバル化 製品のグローバル化に伴い,当然ながらマニュアルも 多言語対応が求められる.言語数に応じて,翻訳と編集 が発生するため,これらの工程をいかに効率良く進める かが重要になる.しかし,旧版との差分を翻訳する際, 差分が生じたファイル単位で翻訳する必要があるため, 1 冊のマニュアルを 1 ファイルで作ることが多い制作 形態では翻訳効率が阻害されていた.編集についても, DTP ソフトウェアの場合,言語数に応じた編集が必要 になっていた. DITA は,コンテンツ制作とスタイル設計が独立して おり,翻訳者はレイアウトを意識する必要がなくなるた め,翻訳効率が向上する.また,言語数に応じた編集が 不要になるため,編集効率も確実に向上する. (3) マニュアル情報の参照環境の変化 タブレット端末やスマートフォンなど,コンテンツを 参照するデバイスの多様化が進んでいる.従来のマニュ アル制作環境は,出力形態に適した制作ツールを使用し ており,特定のデバイスで閲覧する場合に最適になるよ うに配慮されている.そのため,PDF 形式での提供を 前提としたマニュアルを HTML 形式で提供する場合, レイアウト変更や,場合によっては目次構成の見直しが 必要になる. DITA は,同一のソースファイルで,異なる提供媒体・ 提供形式への変換が比較的容易に行える.css や xsl-fo でのレイアウト定義が別途必要になるが,コンテンツへ の影響はない.この点で,多様なデバイスへの対応が可 能な「ワンソースマルチデバイス」を実現している. (4) マニュアル情報の読み方の変化 先述したとおり,マニュアル情報に対するユーザー のアクセスの仕方が大きく変わってきている.マニュア ルを熟読してから製品の仕様や使い方を理解するという ユーザーは稀であり,状況に依存した情報をタイムリー に調べるケースが多くなっている.しかし,従来のマニュ アルは,情報が順序立てて配置されており,目的に合っ た情報をピンポイントに検索することに適していない. 元々,順序性を重視した読み物を想定しており,途中か ら読むことを想定していないためである. DITA では,情報がトピックというそれ自体で完結し たかたまりになっていることから,マップ次第で,ユー ザーの読み方の変化に対応した作りにすることが可能で ある.

3

取り組み・効果

PSW では,DITA についての知識の底上げを行いな がら,DITA の効果が発揮できるマニュアルを選んで順 次適用してきた.ここでは,具体的な取り組みと効果に ついて説明する. 3.1 取り組み 3.1.1 マニュアル制作関係者の知識の底上げ (1) 外部講師の招聘,外部セミナーの受講 取り組み当初は,DITA について情報が少なかった. このため,外部講師を招聘し,社内セミナーを開催した り,外部セミナーを積極的に受講したりした.外部セミ ナーを受講する前には,疑問点や課題などをまとめて, 参加者とコミュニケーションを図ることで解決を図り, 情報の収集に努めてきた. (2) 部内システムのマニュアルへの適用 まずは,部内システムのマニュアルに適用し,DITA のいろいろな仕様を使って試行することで,具体的な 制作方法などのノウハウの蓄積を行ってきた.また, DITA での成果物について部員からの評価をフィード バックし,改善を繰り返すことで,DITA について理解 を深めてきた. (3) 勉強会の実施 これまでに得た知識をもとに,マニュアル制作部門の 全員を対象にした勉強会を実施した.勉強会ではこれま でに業務で DITA に取り組んだ部員を講師とし,率直 な意見交換を行った.また DITA によるマニュアル制 作のためのガイドラインを作成し,勉強会で説明した. ガイドラインではトピック指向ライティングなどでの守 るべきポイントや,これまでのマニュアル制作のプロセ スとの相違点を明確にすることで,理解を深めた. 以上,これらの取り組みにより知識の底上げを行うこ とで,マニュアル制作部門内に DITA を浸透させてきた.

(4)

次に制作プロセス,制作環境の取り組みについて説明 する. 3.1.2 制作プロセス (1) 制作プロセスの検討 DITA ではトピック指向で制作することから,制作プ ロセスがこれまでとは大きく変わってくる.DITA で制 作する場合の一般的な体制,プロセスは図 - 2のとおり である. これまでのマニュアル制作と大きく異なる体制は以下 のとおりである. ① コンテンツコーディネータ ② マップ作成者 ③ スタイルシート作成者 ④ 執筆者(複数人) PSW では,これらの役割をそれぞれ,人を変えて行 うのではなく,①,②,③については有識者が兼ねて行 うことにした.④については,これまでのマニュアル制 作では一人で執筆することが多かったが,DITA では同 時に複数人で執筆を行うことになる.このため,トピッ ク執筆の雛型となるサンプルソースファイルおよびト ピックのタグを定義した DITA タグの仕様書を準備し, 執筆者によってタグにばらつきが発生しないようにし た.また,同時に複数人で同じトピックに対し執筆がで きるように,後述のファイル管理ツールを導入した. (2) 制作プロセスに必要な知識の習得 制作プロセスを遂行する上で必要となるトピック指向 ライティング手法,スタイルシートの作成技術の習得に ついて説明する. 1) トピック指向ライティング手法 DITA によるマニュアル制作を行うには,DITA の 本質であるトピック指向ライティング手法を習得する 必要があった.これまでヘルプファイルの開発でト ピック指向ライティングの知識はあった.しかし,文 書の型が「参照型」に限定されるヘルプファイルとは 異なり,マニュアルの場合は,文書を型別に適切に 細かく分けて,トピックとして制作する知識が必要と なった.このため,有識者を招聘してセミナーを開催 したり,加盟している業界団体のワーキンググループ に参加したりして,知識を収集した.更なる知識の習 得を目指し,独自の教育カリキュラムや演習問題を作 成中である. 図 - 3にトピック指向の例を示す. 2) スタイルシート作成技術の習得 DITA の成果物のフォーマット(スタイル・デザイ ン)は,css や xsl-fo というスタイルシート言語で 制作する必要がある. スタイルシートは,データ(=トピックファイル) の内容を変えずに,複数の任意のフォーマットに出力 でき,トピックの再利用が図れる. これまで XSL についての知識はなく,ゼロからの 取り組みであった.このため,スタイルシート制作の 専任者を割り当て,集中的に対応することにした. また個々のマニュアル単位でスタイルを制作してい るが,どのマニュアルでも使用できるスタイルは共通 化を図り,できる限り一部差替えのみで対応可とする ことで,スタイルシートの作成者に依頼することなく, 執筆者だけで変更できるように取り組み中である. 3.1.3 制作環境の構築 PSW で取り組んだ制作環境の概要図を図 - 4に示す. 続いて各々の環境について説明する. (1) トピック管理 これまでは,1 冊のマニュアルには一つのファイル, ①コンテンツコーディネート コンテンツ分析 トピック設計 ④トピック執筆 ②マップ作成 レイアウト設計 ③スタイル  シート作成 出力 ◆図 - 2 DITA によるマニュアル制作プロセス◆ (Fig.2-Manual creation process using DITA) ◆図 - 3 トピック指向ライティングの例◆ (Fig.3-Example of topic-based writing) A 装置は∼のために使用 します. 次に手順について示しま す. 1.XXX 2.YYY 通常の文章 【概念】 A 装置は∼のために使用 します. トピック指向の文章 【タスク】 1.XXX 2.YYY

(5)

または章単位でファイルを作成していた.しかし DITA では,トピック単位で制作するため管理するファイルの 数が大量になる.1ページ当り2~3トピック,500ペー ジのマニュアルでは 1,000 トピック以上になる場合が ある. このため,DITA の最大の特長である再利用を活用す るには,大量のトピックについて,マップ間やトピック 間での依存関係を把握する必要がある.また,同時に複 数人で同じトピックを更新することがあるが,その場合, ファイルの整合性を確保する必要がある. これらの課題については,DITA に対応した商用の コンテンツ管理システム(Content Management System.以降,CMS)を導入することで解決できる ものもある.しかし,商用の CMS は非常に高価なこと もあり,まずは,オープンソースなどを用いて取り組む ことにした. 1) ファイル管理ツールの導入 こ れ ま で の マ ニ ュ ル 制 作 で は,Operating System(以降,OS)のファイルシステムを使用し, ファイルを管理していた.今後は,同時に複数人で同 じトピックを執筆することを考え,新たにファイル管 理ツールを導入した.このツールを導入することで, 同時に同じトピックを更新することが可能になり,同 時に同じファイルを変更した場合も,マージ処理や修 正個所が重なった場合のチェックが自動でできるな ど,編集効率を向上できた.また,トピック,画像ファ イルを一元的に管理し,更新履歴を確実に管理できる ようになった. 2) ID での制御 DITA ではトピックから他のトピックの一部を参照 する場合,参照先のトピックのタグに,タグを一意に 識別するための ID を割り振る必要がある.通常,表 などには参照する場合に備えて一意の番号をすべての 表に設定する場合もあるが,再利用されるタグにだけ ID を割り振ることにし,他のトピックから再利用さ れているタグを明確にした.このようにすることで, ID が割り振られたタグを修正する場合は,この ID を使用している個所を検索し,影響範囲を確認するこ とで,整合性をとることができるようになった. 3) バッチ処理ツールでの管理 トピックの管理をバッチ処理ツールで行うことにし た.トピック間の依存関係について前記2)の方法で は,どうしても手動での作業が発生してしまい,依存 関係の確認が漏れてしまう可能性がある.このため, バッチ処理ツールを使用し,依存関係を自動的に判断 する仕組みを作成した. DITA の再利用の仕組みは大きく図 -5 に示す五つ のパターンがある.これらについてマップ間,トピッ ク間の依存関係をバッチ処理ツールの操作画面上で把 握できるようにした. (2) エディタ SGML での執筆経験者はいたが,ほとんどのメンバー がタグを記載する言語(XML)に取り組むのは初めて であり,これまでは主に Adobe®注4) FrameMaker(以

降,FrameMaker)や Microsoft®注5) Word(以降,

Word)といったWYSIWYG注6)形式のDTPソフトウェ アを使用していた.XML のソースデータ入力用に市販 されている専用エディタを使用することにより,これま でどおり WYSIWYG 形式で行うことができるが,新た に専用エディタの操作方法を覚える必要がある上,執筆 者全員分を購入するには高額であった.このため,メン バーが使い慣れている汎用のエディタを用いて,工夫す ることにした. まずは,使用するタグを必要最小限に絞り込み,しか も,トピックの入力サンプルを用意することで,XML のタグに不慣れな執筆者にとって,できるかぎり,タグ に対する抵抗感が軽減されるように努めた. 次にタグを入力し易くするために,汎用のエディタで 注4) Adobe は,Adobe Systems Incorporated(アドビ システ ムズ社)の米国ならびに他の国における商標または登録商標で ある.

注5) Microsoft は,米国 Microsoft Corporation の,米国,日本 およびその他の国における登録商標または商標である. 注6) What You See Is What You Get の略.ディスプレイに表示

されている内容と PDF や HTML などへの出力結果を一致させ る技術. ファイル管理クライアント ソフトウェア トピック マップ ブラウザ エディタ トピック管理表 クライアント PC 管理 生成 トピック マップ PDF HTML 変換ツール サーバ トピック管理 変換サーバ クライアント PC 変換 変換 執筆・編集 執筆・編集 ◆図 - 4 DITA による制作環境◆ (Fig.4-Manual creation environment using DITA)

(6)

用意されているマクロ機能を使用し,タグが正しく,漏 れなく入力できる仕組みを構築した.また,汎用エディ タに装備されている入力支援機能(辞書に登録した単語 に合致する一覧が表示される)も併せて使用した. 表については DITA の場合は他のタグに比べ複雑に なる.特にセルの結合があるとかなり複雑になるため, この場合に限り,専用エディタを使用した. さらに業務の状況により,執筆者と編集者(タグを付 ける人)を分け,それぞれの作業に専念できるようにす ることで,効率化を図ってきた. (3) 変換サーバの構築 トピックファイルから PDF などの成果物に変換する ため,オープンソースの変換ツールを使用した.成果物 を出力する際には,条件の指定(ログインユーザーや OS により記事を切り分ける場合など)を行う必要があ るが,変換ツールをそのまま使用して出力するには複雑 であった.また,前述したスタイルシートはメンバー間 で共有する必要がある.このため,作成するマニュアル の要件にあった変換用の Web サイトを構築し,スタイ ルシートを共有し,しかも,条件を画面上から指定し変 換できる変換サイトを構築した. また,変換サイトは各条件に合わせて構築し,利便性 を高める工夫をした.図 - 6に変換サイトの画面例を示 すとともに,以下に説明する. 1) トピックファイル名,画像ファイル名の出力 トピックを修正する際,変更対象のトピック名や変 更する画像のファイル名を早く把握できれば,変更作 業の効率を高めることができる.このため,通常の出 力に加え,トピックのファイル名や画像のファイル名 を表示した出力もできるようにした. 2) 章単位,トピック単位での出力 執筆者は,自分が執筆したトピックや章単位で成果 物を確認したい場合がある.また,全体を変換するに は時間がかかる.このため,全体の変換に加え,変換 する範囲を指定できるようにした. 3.2 効果 DITA の特長を活用したマニュアル制作により,以下 の効果を実現できた. (1) 製品開発サイクルの短縮への対応を実現 トピックを複数人で執筆,編集することにより,製品 の開発サイクルの短縮に対応したマニュアル制作期間の 短縮ができた. (2) マニュアル利用者に最適なマニュアルを提供 トピックを再利用することで,ログインするユーザー などの条件により記載内容が異なる複数のマニュアルを 生成することが可能になり,利用者に適したマニュアル を提供することができた. (3) 記事変更時の日数短縮と品質向上 複数のマニュアルに同じ記事がある場合,元となる一 つのソースデータだけ変更すれば,すべてのマニュアル の記事が変更できる.変更に要する日数の短縮とともに, 反映漏れがなくなり,品質が向上した. (4) 既存コンテンツ再利用により制作期間短縮と品質 向上 品質が確認されたコンテンツを再利用することによ り,制作期間の短縮とともに,品質が向上した. a) トピック単位で再利用 マニュアル A トピック マニュアル B マニュアル A トピック マニュアル B b) トピックの一部を再利用 c) 条件で切り分ける マニュアル A トピック 条件 A の場合 条件 B の場合 トピック マニュアル B マニュアル A マニュアル B d) 変数 e) キーの値で切り分ける マニュアル A a.dita マニュアル B AAA $変数 BBB b.dita Key=A Key:A=a.dita Key:A=b.dita Key=A ◆図 - 5 DITA の再利用のパターン◆ (Fig.5-Content reuse patterns for DITA) 出力形式 ●PDF ○HTML ファイル名の出力 ○なし ●あり 出力する章 ○すべて ●第一章 はじめに ○第二章 動作環境   : ○付録 A メッセージ一覧 コマンドリファレンス変換サイト 変換 ◆図 - 6 変換サイトの画面◆ (Fig.6-Manual publisher site)

(7)

4

適用事例

DITA を導入したマニュアルの制作事例について説明 する. (1) コマンドリファレンスマニュアル ネットワーク機器のコマンドの詳細や機能を説明する マニュアルの制作に適用した.これまでは Word で制 作していたが,Word のファイルサイズが大きく,し かも,一つのファイルであるため複数人で同時に執筆す ることが困難などの課題があった. この課題を解決するため,一つのコマンドを一つのト ピックにして制作することにした.こうすることで,ファ イルのサイズを小さくし,複数人同時の執筆を可能にし, 制作効率の向上を実現した. また,マップを変更することで,利用者に適したいろ いろな条件のマニュアルを容易に制作できるようになっ た.たとえば,コマンドをアルファベット順に並べたマ ニュアルや,ネットワーク機器毎のマニュアルなどが考 えられる. (2) ヘルプマニュアル セキュリティ関連のソフトウェア製品のヘルプマニュ アルの制作に適用した.システムにログインするユー ザーにより,ヘルプマニュアルの表示範囲を変える必要 があった. この課題を解決するため,ログインするユーザー毎に マップを作成してトピックを再利用した.また,ワンソー スでログインユーザー毎に記事の表示範囲を変えること で,効率よく制作できた. (3) 操作マニュアル ネットワーク関連のソフトウェア製品の操作マニュア ルの制作に適用した.以下の課題を解決する必要があっ た. 1) すべての機能を記載したマニュアルと最小限の 機能だけを記載したマニュアルの 2 種類が必要 2) 二つの提供先により,内容の一部およびデザイン を変える 3) ログインするユーザーにより,マニュアルの表示 範囲を変える 4) PDF と HTML の 2 種類の形式が必要 これまでは1),2)だけ対応しており,マニュアル 毎に記事を作成していたため,マニュアル間で記事の重 複などが発生していた. 1)~4)を実現するには,8 種類のマニュアルを制 作する必要があった.このため,DITA の再利用の仕組 みを最大限に活用し,しかも,スタイルシートにより出 力内容を変えることで,記事の重複などのない 8 種類 のマニュアル制作をワンソースで実現した. 今回紹介した以外に,DITA の導入効果が高いと判断 したマニュアルについても取り組み中である.

5

今後の課題・取り組み

今後の課題・取り組みについて説明する. (1) 制作環境の改善 現在の DITA によるマニュアルの制作環境には,成 果物の出力内容などに改善の余地があると考えている. 更なる制作効率向上を目指し,制作環境を改善していく. (2) 上流工程からの取り組み DITA の導入効果を最大限に引き出すため,マニュ アルを記載するための情報源となる製品開発での DITA の導入を,製品開発部門と協議していく.製品に関する 仕様を DITA で作成し,この DITA を製品の仕様書や マニュアル,または,拡販資料などに利用することで, 製品に関連するドキュメント全体の制作の効率向上が図 れる. (3) グローバルコンテンツ制作への活用 グローバル展開する製品の増加に伴い,多言語コンテ ンツの制作期間の短縮は最優先の課題となりつつある. 2.2 節(2)項で述べたとおり,この課題を解決する手 段として DITA は有効であり,DITA の導入を推進し ていく.

6

むすび

以上のように,PSW では,次世代のコンテンツ制作 アーキテクチャーである「DITA」導入によるコンテン ツ制作の効率向上に取り組んできた. これまでの取り組み成果は以下のように要約できる. 1) マニュアル情報の部品化・再利用を実践し,当初 の目的であるマニュアル制作(含む,編集・翻訳) の効率向上を実現できた. 2) 「ワンソースマルチアウトプット」の事例を通じ て,ユーザーが必要とする情報を,必要な媒体(形 式)で提供することができた. このようにマニュアル制作における DITA の導入・活 用を通じて,一定の成果を挙げてきた.しかし,ユーザー や市場のニーズは日々変化しており,また,それを解決 する技術も同様に進化し続けている.

(8)

DITA の取り組みは,その一つのステップに過ぎない. 今後も,製品の付加価値を向上するためのマニュアルの 実現を目指して取り組んでいく. 参考文献 参1) 塀内ほか:マニュアル制作における SGML 技術の利用,PFU Tech.Rev.,8,1,pp.90-97(1997).

参照

関連したドキュメント

・本書は、

「文字詞」の定義というわけにはゆかないとこ ろがあるわけである。いま,仮りに上記の如く

この 文書 はコンピューターによって 英語 から 自動的 に 翻訳 されているため、 言語 が 不明瞭 になる 可能性 があります。.. このドキュメントは、 元 のドキュメントに 比 べて

②立正大学所蔵本のうち、現状で未比定のパーリ語(?)文献については先述の『請来資料目録』に 掲載されているが

第 98 条の6及び第 98 条の7、第 114 条の 65 から第 114 条の 67 まで又は第 137 条の 63

本論文での分析は、叙述関係の Subject であれば、 Predicate に対して分配される ことが可能というものである。そして o

ダウンロードした書類は、 「MSP ゴシック、11ポイント」で記入で きるようになっています。字数制限がある書類は枠を広げず入力してく

図表の記載にあたっては、調査票の選択肢の文言を一部省略している場合がある。省略して いない選択肢は、241 ページからの「第 3