博士論文
診療データベースに基づく
降圧薬の使用実態に関する研究
平成 31 年 3 月
石田 貴之
参 考 論 文
1) Ishida T, Oh A, Hiroi S, Shimasaki Y, Tsuchihashi T
Current prescription status of antihypertensive drugs in Japanese patients with hypertension; Analysis by type of comorbidities
Clin Exp Hypertens. 2018 May21:1-8. doi:10.1080/10641963.2018.1465074.
2) Ishida T, Oh A, Hiroi S, Shimasaki Y, Tsuchihashi T.
Current use of antihypertensive drugs in Japanese patients with hypertension: Analysis by age group.
Geriatr Gerontol Int. 2018;18(6):899-906.
3) Ishida T, Oh A, Hiroi S, Shimasaki Y, Nishigaki N, Tsuchihashi T
Treatment patterns and adherence of antihypertensive combination therapies using a Japanese claims data base
目 次 略 語 表 ... 3 要 約 ... 4 序 章 ... 6 第 1 章 降 圧 薬 の 使 用 実 態 : 併 存 疾 患 別 の 分 析 ... 11 第 2 章 降 圧 薬 の 使 用 実 態 : 年 齢 層 別 の 分 析 ...34 第 3 章 降 圧 薬 に よ る 併 用 治 療 の 実 態 と 治 療 ア ド ヒ ア ラ ン ス ...51 終 章 ...68 引 用 論 文 ...70 謝 辞 ...79
略 語 表
略 語 正 式 名 称 日 本 語
ACE Angiotensin-Converting Enzyme ア ン ジ オ テ ン シ ン 変 換 酵 素
ARB Angiotensin II Receptor Blocker ア ン ジ オ テ ン シ ン II 受 容 体 拮 抗 薬 ATC Anatomical Therapeutic Chemical
Classification System
解 剖 治 療 化 学 分 類 法
CCB Calcium Channel Blocker カ ル シ ウ ム チ ャ ネ ル 拮 抗 薬 CKD Chronic Kidney Disease 慢 性 腎 臓 病
DPC Diagnostic Procedure Combination 包 括 医 療 費 支 払 い 制 度 DBP Diastolic Blood Pressure 拡 張 期 血 圧
ICD International Classification of Disease and Related Health Problems
国 際 疾 病 分 類
JSH The Japanese Society of Hypertension
日 本 高 血 圧 学 会
MDV Medical Data Vision メ デ ィ カ ル ・ デ ー タ ・ ビ ジ ョ ン NICE The National Institute for Health
and Care Excellence
英 国 国 立 医 療 技 術 評 価 機 構
PDC Proportion of Days Covered -
RAS Renin Angiotensin System レ ニ ン ・ ア ン ジ オ テ ン シ ン 系 SAS Statistical Analysis System 統 計 分 析 シ ス テ ム
要 約 高 血 圧 治 療 の 目 的 は 、 高 血 圧 の 持 続 に よ る 心 血 管 病 の 発 症 ・ 進 展 ・ 再 発 を 抑 制 し 、 死 亡 を 減 少 さ せ る こ と で あ る 。 治 療 薬 に は 多 く の 種 類 が あ り 、 病 態 に 応 じ て 適 切 な 降 圧 薬 を 選 択 し な け れ ば な ら な い 。 日 本 高 血 圧 治 療 ガ イ ド ラ イ ン お よ び 高 齢 者 の 安 全 な 薬 物 療 法 ガ イ ド ラ イ ン で は 、 第 一 選 択 薬 、 併 存 疾 患 に 応 じ た 降 圧 薬 の 選 択 お よ び 高 齢 者 高 血 圧 の 治 療 に つ い て 記 述 さ れ て お り 、 配 合 剤 の 使 用 が 処 方 の 単 純 化 や ア ド ヒ ア ラ ン ス の 改 善 等 の 面 で 有 用 で あ る こ と が 示 さ れ て い る 。 し か し 、 本 邦 に お け る 高 血 圧 の 治 療 実 態 に つ い て は 十 分 な 検 討 が お こ な わ れ て お ら ず 、 ガ イ ド ラ イ ン で の 薬 剤 選 択 に 関 す る 記 述 と 治 療 実 態 と の 関 係 は 明 ら か に さ れ て い な い 。 そ こ で 、 本 研 究 で は 、 国 内 の 匿 名 診 療 デ ー タ ベ ー ス を 用 い て 、 降 圧 薬 の 使 用 実 態 を 検 討 し た 。 第 一 章 で は 、 高 血 圧 の 薬 物 治 療 の 全 体 像 を は じ め て 明 ら か に し 、Ca 拮 抗 薬(CCB)およびアンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬(ARB)が処方 の 中 心 で あ る 一 方 で 、利 尿 薬 や ア ン ジ オ テ ン シ ン 変 換 酵 素(ACE)阻害 薬 の 使 用 は 限 定 的 で あ る こ と を 示 し た 。 糖 尿 病 を 合 併 す る 患 者 に お い て 推 奨 さ れ て い る 降 圧 薬 ( 積 極 的 適 応 ) は 、ARB および ACE 阻害薬であ る が 、CCB の処方も多く存在することが示され、腎疾患を有する患者で は 、 他 疾 患 を 合 併 す る 患 者 群 と 比 べ て 、 推 奨 さ れ て い な い ル ー プ 利 尿 薬 お よ び β 遮 断 薬 の 使 用 率 が 高 い こ と が 明 ら か に な っ た 。 第 二 章 で は 、 年 齢 層 別 の 検 討 を お こ な い 、75 歳以上の 高齢者 では、 非高齢 者と比 べて CCB およびループ利尿薬の使用率が高く、ARB の使用率が低いことを 明 ら か に し た 。第 三 章 で は 、治 療 ア ド ヒ ア ラ ン ス を 検 討 す る こ と に よ り 、 利 尿 薬 を 含 む 併 用 治 療 を 受 け て い る 患 者 で は 、 利 尿 薬 を 含 ま な い 同 剤 数 の 併 用 と 比 べ て ア ド ヒ ア ラ ン ス が 低 い こ と を 明 ら か に し た 。 さ ら に 、 利 尿 薬 を 含 む 併 用 や 3 剤併用では、配合剤を含む治療を受けている群と単
剤 併 用 で 治 療 を 受 け て い る 群 の 間 に ア ド ヒ ア ラ ン ス の 明 確 な 違 い は 認 め ら れ な い こ と を 明 ら か に し た 。 以 上 の 結 果 よ り 、第 一 選 択 薬 と さ れ て い る 降 圧 薬 の う ち 利 尿 薬 の 使 用 は 十 分 に 浸 透 し て い な い こ と 、 糖 尿 病 や 腎 疾 患 を 有 す る 患 者 で は 、 ガ イ ド ラ イ ン で の 薬 剤 の 推 奨 や 慎 重 投 与 が 、 実 臨 床 に お け る 治 療 実 態 と は 一 致 し て い な い こ と が 示 唆 さ れ た 。 実 臨 床 に お け る 降 圧 薬 の 使 用 実 態 は 多 様 で あ り 、 配 合 剤 の 使 用 が 治 療 ア ド ヒ ア ラ ン ス 向 上 に 貢 献 で き て い な い ケ ー ス が 明 ら か に な っ た 。 今 後 、 病 態 や 患 者 の 特 性 に 応 じ て 適 切 な 降 圧 薬 お よ び 配 合 剤 を 選 択 し 、 ア ド ヒ ア ラ ン ス の 向 上 を 意 識 し た 医 療 を 提 供 す る こ と が 必 要 で あ る と 考 え ら れ た 。
序 章 現 在 、 本 邦 の 高 血 圧 人 口 は 、 約 4,300 万 人 と 推 定 さ れ て お り 、 高 血 圧 は 脳 卒 中 、心 臓 病 、腎 臓 病 な ど の 強 力 な 原 因 疾 患 で あ る (1)。高 齢 者 に お け る 高 血 圧 の 有 病 率 は 非 常 に 高 く 、 今 後 、 急 速 な 高 齢 化 の 進 行 、 生 活 習 慣 の 欧 米 化 を 考 慮 す る と 、 疾 患 構 造 の 変 化 に あ わ せ た 最 新 の 高 血 圧 治 療 対 策 と 予 防 が ま す ま す 重 要 な 課 題 と な っ て い る 。 本 邦 で は 、 標 準 的 な 治 療 指 針 を 提 供 す る こ と を 目 的 と し て 種 々 の ガ イ ド ラ イ ン が 作 成 さ れ て い る 。2000 年 に は じ め て「 高 血 圧 治 療 ガ イ ド ラ イ ン 」 が 発 行 さ れ 、 そ の 後 、 複 数 回 に わ た っ て 改 訂 が お こ な わ れ て い る 。 当 ガ イ ド ラ イ ン は 、 疫 学 、 降 圧 薬 治 療 、 臓 器 障 害 お よ び 他 疾 患 を 合 併 す る 高 血 圧 、 高 齢 者 高 血 圧 等 に よ っ て 構 成 さ れ て お り (2) 、 Medical Information Network Distribution Service (Minds)の 「 診 療 ガ イ ド ラ イ ン 作 成 の 手 引 き 」 に 沿 っ て 作 成 さ れ て い る 。 ガ イ ド ラ イ ン は あ く ま で 標 準 的 な 治 療 法 を 提 示 し た も の で あ り 、 医 師 の 処 方 裁 量 権 を 拘 束 す る も の で は な い 。 高 血 圧 治 療 の 目 的 は 、 高 血 圧 の 持 続 に よ る 心 血 管 病 の 発 症 ・ 進 展 ・ 再 発 を 抑 制 し 、死 亡 を 減 少 さ せ る こ と で あ る 。高 血 圧 の 治 療 率 は 、過 去 30 年 間 で 上 昇 を 続 け て お り 、 60 歳 代 で 50%以 上 、 70 歳 代 で は 60%以 上 で あ る 。ま た 、管 理 率( 降 圧 薬 服 用 者 の う ち 降 圧 目 標 を 達 成 し て い る 比 率 ) も 過 去 30 年 間 に 上 昇 し た が 、 男 性 で は 約 30%、 女 性 で は 約 40%に と ど ま っ て い る (3)。 本 態 性 高 血 圧 の 治 療 に は 環 境 因 子 の 多 く の 部 分 を 占 め る 生 活 習 慣 の 是 正 ( 非 薬 物 療 法 ) が 含 ま れ る が 、 生 活 習 慣 だ け で 目 標 血 圧 を 達 成 で き る 患 者 は 少 な く 、 大 部 分 の 患 者 に は 薬 物 療 法 が 必 要 と な る 。 高 血 圧 の 罹 病 歴 が 長 く な る と 、 腎 疾 患 や 心 疾 患 等 を 併 発 し 、 そ の 病 態 は 複 雑 で 治 療 が 困 難 と な る こ と か ら 、 個 々 の 患 者 に お い て 、 血 圧 の レ ベ ル と 心 血 管 病
の 危 険 因 子 お よ び 心 血 管 病 の 合 併 な ど の 病 態 を 総 合 的 に 評 価 し て リ ス ク を 層 別 化 し 、 そ れ に 応 じ た 治 療 計 画 を 設 定 し な け れ ば な ら な い 。 現 在 使 用 さ れ る 主 要 な 降 圧 薬 は 、 Ca 拮 抗 薬 ( CCB)、 レ ニ ン ・ ア ン ジ オ テ ン シ ン 系( RAS)阻 害 薬( ACE 阻 害 薬 、ARB、直 接 的 レ ニ ン 阻 害 薬 )、 利 尿 薬 ( サ イ ア ザ イ ド 系 お よ び 類 似 薬 、 ル ー プ 利 尿 薬 、 ア ル ド ス テ ロ ン 拮 抗 薬 )、 β 遮 断 薬 、 α 遮 断 薬 で あ る 。 高 血 圧 治 療 ガ イ ド ラ イ ン で は 、 CCB、ACE 阻 害 薬 、ARB お よ び サ イ ア ザ イ ド 系 利 尿 薬 が 第 一 選 択 薬( 積 極 的 適 応 が な い 場 合 に 最 初 に 投 与 す べ き 降 圧 薬 )と さ れ て い る 。さ ら に 、 病 態 に 応 じ て 、積 極 適 応( Table 1a)、禁 忌 お よ び 慎 重 投 与( Table 1b)が 定 め ら れ て お り 、 病 態 に 合 致 し た 降 圧 薬 を 選 択 す る こ と が 推 奨 さ れ る 。 他 疾 患 を 合 併 す る 場 合 の 高 血 圧 治 療 に 関 し て は 高 血 圧 治 療 ガ イ ド ラ イ ン だ け で な く 、 糖 尿 病 診 療 ガ イ ド ラ イ ン 、 急 性 ・ 慢 性 心 不 全 ガ イ ド ラ イ ン 、慢 性 腎 臓 病(CKD)診療ガイドライン、高尿酸血症・痛風の治療ガ イ ド ラ イ ン 等 に も 記 述 さ れ て お り 、 高 齢 者 の 治 療 に 関 し て は 高 齢 者 高 血 圧 診 療 ガ イ ド ラ イ ン に 纏 め ら れ て い る が 、 い ず れ も 高 血 圧 治 療 ガ イ ド ラ イ ン に 沿 っ た 内 容 と な っ て い る 。 ま た 、 高 齢 者 薬 物 療 法 の 安 全 性 を 高 め る 目 的 で 、「 高 齢 者 の 安 全 な 薬 物 療 法 ガ イ ド ラ イ ン 」 が 策 定 さ れ て お り 、 高 血 圧 を 含 む 種 々 の 疾 患 に 対 す る 治 療 薬 の 使 用 指 針 が 纏 め ら れ て い る(4)。高血圧治療に関しては、高 齢 者 に 対 し て 特 に 慎 重 な 使 用 が 求 め ら れ る 薬 物 と し て 、 ル ー プ 利 尿 薬 、 ア ル ド ス テ ロ ン 拮 抗 薬 、 非 選 択 的 β 遮 断 薬 、 受 容 体 サ ブ タ イ プ 非 選 択 的 α 1 遮 断 薬 が 定 め ら れ て い る ( Table 1c)。 し か し 、 こ れ ら の ガ イ ド ラ イ ン で 定 め ら れ た 薬 剤 選 択 と 、 治 療 実 態 の 関 係 は 十 分 に 検 討 さ れ て い な い 。 高 血 圧 症 を は じ め と す る 慢 性 疾 患 を 有 す る 患 者 で は 、 服 用 し て い る 薬 剤 数 が 多 い こ と が 知 ら れ て い る 。 降 圧 薬 の 服 薬 ア ド ヒ ア ラ ン ス は 、 心 血 管 イ ベ ン ト と 負 の 相 関 を 示 す こ と が 知 ら れ て お り (5, 6)、服 薬 ア ド ヒ ア ラ ン ス を 向 上 さ せ る こ と は 重 要 で あ る 。 特 定 の 降 圧 薬 を 対 象 と し た 臨 床 研
究 や 観 察 研 究 に よ り 、 配 合 剤 を 使 用 す る こ と は 単 剤 併 用 に 比 べ て 服 薬 ア ド ヒ ア ラ ン ス が 良 好 で あ る こ と が 報 告 さ れ て い る (7, 8)。し か し 、臨 床 研 究 は 実 臨 床 を 反 映 し た も の で は な く 、 リ ア ル ワ ー ル ド に お け る 降 圧 配 合 剤 の 使 用 実 態 お よ び ア ド ヒ ア ラ ン ス に 対 す る 影 響 は 十 分 に 検 討 さ れ て い な い 。 本 邦 に は 、 約 18 万 件 ( 約 160 万 床 ) の 医 療 施 設 が 存 在 す る ( 医 療 施 設 動 態 調 査 、 2018 年 3 月 末 )。 近 年 、 医 療 に お け る 様 々 な 大 規 模 デ ー タ ベ ー ス が 発 展 し つ つ あ り 、 匿 名 化 さ れ た 診 療 報 酬 明 細 ( レ セ プ ト ) を 取 り 扱 う 主 要 な デ ー タ ベ ー ス に は 、 ① 特 定 健 診 ( National Database)、 ② 健 康 保 険 組 合 、③ Diagnostic Procedure Combination( DPC)対 象 病 院 か ら の 情 報 を も と に 構 築 さ れ た も の が 存 在 す る 。 こ れ ら の デ ー タ ベ ー ス に は 診 療 情 報 、 医 薬 品 の 処 方 、 外 科 的 処 置 、 医 療 費 、 血 液 検 査 結 果 の 一 部 が 含 ま れ 、 疫 学 研 究 に 活 用 さ れ て い る 。 National Database は 活 用 で き る デ ー タ が 限 ら れ て お り 、 健 康 保 険 組 合 の デ ー タ ベ ー ス は 60 歳 以 上 の 高 齢 者 の デ ー タ が 少 な い こ と か ら 、 高 血 圧 症 の 解 析 に 適 し た デ ー タ ベ ー ス と し て 、DPC 対 象 病 院 の デ ー タ ベ ー ス を 用 い た 。DPC 対 象 病 院 は 、全 国 で 約 1700 件 ( 約 50 万 床 ) 存 在 し 、 本 研 究 で 用 い た デ ー タ ベ ー ス は 、 そ の う ち 約 11%を カ バ ー し て い る 。 本 論 文 で は 、 本 邦 に お け る 高 血 圧 の 治 療 実 態 に つ い て 、 匿 名 診 療 デ ー タ ベ ー ス を 後 ろ 向 き に 解 析 し 、 得 ら れ た 知 見 を 記 述 す る 。 第 一 章 お よ び 第 二 章 で は 、 そ れ ぞ れ 併 存 疾 患 別 、 年 齢 層 別 に お け る 降 圧 薬 の 使 用 実 態 に つ い て 述 べ 、 第 三 章 で は 、 主 に 併 用 治 療 の ア ド ヒ ア ラ ン ス を 検 討 し た 結 果 に つ い て 論 じ る 。
Table 1 降 圧 薬 の 選 択 に 関 す る ガ イ ド ラ イ ン (a) 主 要 降 圧 薬 の 積 極 的 適 応 ( 高 血 圧 治 療 ガ イ ド ラ イ ン ) Ca 拮 抗 薬 ARB/ACE 阻 害 薬 サ イ ア ザ イ ド 系 利 尿 薬 β 遮 断 薬 左 室 肥 大 ● ● 心 不 全 ●* 1 ● ●* 1 頻 脈 ● ( 非 シ ゙ ヒ ト ゙ ロ ヒ ゚ リ シ ゙ ン 系 ) ● 狭 心 症 ● ●* 2 心 筋 梗 塞 後 ● ● CKD ( 蛋 白 尿 - ) ( 蛋 白 尿 + ) ● ● ● ● 脳 血 管 障 害 慢 性 期 ● ● ● 糖 尿 病 / メ タ ボ リ ッ ク シ ン ド ロ ー ム ● 骨 粗 鬆 症 ● 誤 嚥 性 肺 炎 ● (ACE 阻 害 薬 ) *1 少 量 か ら 開 始 し 、 注 意 深 く 漸 増 す る 。 *2 冠 攣 縮 性 狭 心 症 に は 注 意 。 (b) 主 要 降 圧 薬 の 禁 忌 や 慎 重 投 与 と な る 病 態( 高 血 圧 治 療 ガ イ ド ラ イ ン ) 禁 忌 慎 重 使 用 例 Ca 拮 抗 薬 徐 脈 (非 ジヒドロピリジン系 ) 心 不 全 ARB 妊 娠 高 カ リ ウ ム 血 症 腎 動 脈 狭 窄 症* 1 ACE 阻 害 薬 妊 娠 、 血 管 神 経 性 浮 腫 高 カ リ ウ ム 血 症* 2 腎 動 脈 狭 窄 症* 1 サ イ ア ザ イ ド 系 利 尿 薬 低 カ リ ウ ム 血 症 痛 風 、 妊 娠 耐 糖 能 異 常 β 遮 断 薬 喘 息 、 高 度 徐 脈 耐 糖 能 異 常 、 閉 塞 性 肺 疾 患 末 梢 動 脈 疾 患 *1 両 側 性 腎 細 動 脈 狭 窄 の 場 合 は 原 則 禁 忌 。 *2 4 節 3 項 ACE 阻 害 薬 を 参 照 。
(c) 特 に 慎 重 な 投 与 を 要 す る 高 血 圧 治 療 薬 の リ ス ト ( 高 齢 者 の 安 全 な 薬 物 療 法 ガ イ ド ラ イ ン ) 薬 物 ク ラ ス 推 奨 さ れ る 使 用 法 ル ー プ 利 尿 薬 必 要 最 小 限 の 使 用 に と ど め 、 循 環 血 漿 量 の 減 少 が 疑 わ れ る 場 合 、 中 止 ま た は 減 量 を 考 慮 す る 。 適 宜 電 解 質 ・ 腎 機 能 の モ ニ タ リ ン グ を 行 う 。 ア ル ド ス テ ロ ン 拮 抗 薬 適 宜 電 解 質 ・ 腎 機 能 の モ ニ タ リ ン グ を 行 う 。 特 に K 高 値 、 腎 機 能 低 下 の 症 例 で は 少 量 の 使 用 に と ど め る 。 非 選 択 的 β 遮 断 薬 気 管 支 喘 息 や COPD で は β1選 択 的 遮 断 薬 に 限 る が 、 そ の 場 合 で も 適 応 自 体 を 慎 重 に 検 討 す る 。 カ ル ベ ジ ロ ー ル は 、 心 不 全 合 併 COPD 例 で の 使 用 可 ( COPD の 増 悪 の 報 告 が 少 な く 心 不 全 へ の 有 用 性 が 上 回 る 。 気 管 支 喘 息 で は 禁 忌 。) 受 容 体 サ ブ タ イ プ 非 選 択 的 α 1 遮 断 薬 可 能 な 限 り 使 用 を 控 え る 。
第 1 章 降 圧 薬 の 使 用 実 態 : 併 存 疾 患 別 の 分 析 【 要 約 】 2014 年 に 日 本 高 血 圧 学 会 よ り 高 血 圧 治 療 ガ イ ド ラ イ ン の 改 訂 版 ( JSH2014) が 発 行 さ れ た 。 薬 物 治 療 に 関 す る ガ イ ド ラ イ ン の 遵 守 率 を 検 討 す る た め に 、 糖 尿 病 、 脂 質 異 常 症 、 痛 風 ・ 高 尿 酸 血 症 、 腎 疾 患 と い う 4 つ の 併 存 疾 患 に 着 目 し 、 後 ろ 向 き に 降 圧 薬 の 使 用 実 態 を 検 討 し た 。 包 括 医 療 費 支 払 い 制 度 を 採 用 し て い る 病 院 の 匿 名 レ セ プ ト デ ー タ ベ ー ス を 用 い て 、2014 年 4 月 か ら 2015 年 3 月 ま で の 59,867 名 の 高 血 圧 症 患 者 の 処 方 デ ー タ を 使 用 し た 。 最 も 繁 用 さ れ て い た 降 圧 薬 は 、 い ず れ の 併 存 疾 患 に 関 し て も CCB と ARB で 、 60~ 70%の 患 者 に 処 方 さ れ て い た 。 JSH2014 の 推 奨 と 異 な り 、利 尿 薬 や ACE 阻 害 薬 は 、推 奨 さ れ て い な い β 遮 断 薬 よ り も 使 用 率 が 低 か っ た 。 糖 尿 病 を 合 併 す る 患 者 に 対 し て 推 奨 さ れ て い る 降 圧 薬 は ARB お よ び ACE 阻 害 薬 で あ る が 、CCB の 使 用 率 も 高 か っ た 。 脂 質 異 常 症 を 合 併 す る 患 者 に お け る 降 圧 薬 の 治 療 パ タ ー ン は 、 全 体 集 団 と 同 様 で あ っ た 。 ル ー プ 利 尿 薬 は 、 糖 尿 病 や 脂 質 異 常 症 を 合 併 す る 患 者 に 比 べ て 、 腎 疾 患 お よ び 痛 風 ・ 高 尿 酸 血 症 を 合 併 す る 患 者 に 対 し て 、 高 い 使 用 率 で あ っ た 。 降 圧 薬 の 選 択 は 併 存 疾 患 の 種 類 に よ っ て 異 な る こ と が 明 ら か に な り 、 JSH2014 に お け る 併 存 疾 患 毎 の 降 圧 薬 の 推 奨 は 、 実 臨 床 に お い て 十 分 に 浸 透 し て い な い こ と が 示 唆 さ れ た 。
【 緒 言 】 高 血 圧 は 、 冠 動 脈 疾 患 と 死 亡 の 主 な リ ス ク フ ァ ク タ ー で あ る 。 本 邦 に お い て 、 高 血 圧 治 療 お よ び 血 圧 の 管 理 は 過 去 30 年 間 に 渡 っ て 改 善 し て き た が 、 2010 年 の 調 査 結 果 に よ る と 、 高 血 圧 患 者 の う ち 140/90mmHg(SBP/DBP) を 達 成 し て い る の は 僅 か 15 ~ 30% で あ る (1) 。 JSH2014 に は 、 併 存 疾 患 を 有 す る 患 者 に お け る 血 圧 値 の 治 療 目 標 と 降 圧 薬 の 選 択 に つ い て 記 載 さ れ て い る (2)。そ れ ま で の ガ イ ド ラ イ ン か ら の 主 な 変 更 点 は 、 積 極 的 治 療 を 有 し な い 患 者 に 対 す る 第 一 選 択 薬 は 、 CCB、 ARB、ACE 阻 害 薬 お よ び サ イ ア ザ イ ド 系 利 尿 薬 に 限 定 さ れ た こ と で あ る 。 JSH2014 で は 、 併 存 疾 患 を 有 す る 高 血 圧 患 者 の 治 療 選 択 が 明 確 に さ れ た 。 糖 尿 病 を 合 併 す る 患 者 に は 、 ARB と ACE 阻 害 薬 が 第 一 選 択 薬 と さ れ て い る 。脂 質 異 常 症 を 合 併 す る 患 者 に は 、RAS 阻 害 薬 、CCB、α 遮 断 薬 が 脂 質 代 謝 の 障 害 を 改 善 ま た は 増 悪 し な い 薬 剤 と し て 推 奨 さ れ て い る 。 痛 風 ・ 高 尿 酸 血 症 を 合 併 す る 患 者 に 対 し て は 、 サ イ ア ザ イ ド 系 利 尿 薬 お よ び ル ー プ 利 尿 薬 が 高 尿 酸 血 症 を 惹 起 す る こ と が 記 さ れ る 一 方 で 、 RAS 阻 害 薬 、CCB、α 遮 断 薬 が 尿 酸 代 謝 に 影 響 を 与 え な い 薬 剤 と し て 推 奨 さ れ て い る 。CKD を 合 併 す る 患 者 に 対 し て は 、蛋 白 尿 と 糖 尿 病 合 併 の 有 無 が 考 慮 に 入 れ ら れ 、 糖 尿 病 を 合 併 す る CKD 患 者 に 対 し て は 、 蛋 白 尿 の 有 無 に 関 わ ら ず 、 RAS 阻 害 薬 が 第 一 選 択 薬 と し て 推 奨 さ れ て い る 。 糖 尿 病 を 合 併 し な い CKD 患 者 に 対 し て は 、 尿 蛋 白 陽 性 の 場 合 に 、 RAS 阻 害 薬 、 CCB、 利 尿 薬 が 推 奨 さ れ て い る (2)。 こ れ ま で に 国 内 の レ セ プ ト デ ー タ ベ ー ス を 用 い た 研 究 で は 、ARB を 最 初 に 処 方 さ れ た 患 者 に お い て 、 第 二 選 択 、 第 三 選 択 薬 の 治 療 パ タ ー ン が 報 告 さ れ て い る (9)。ま た 、内 科 医 に 対 し て 、オ ン ラ イ ン を 用 い た ア ン ケ ー ト 調 査 を お こ な っ た 結 果 が 報 告 さ れ て お り 、 JSH2014 で 推 奨 さ れ て い る 高 血 圧 治 療 に 関 す る 内 容 が 日 常 診 療 に 反 映 さ れ て い る と い う 結 果 が 示 さ れ て い る (10)。 し か し 、 こ の 調 査 の 対 象 と な っ た の は 、 JSH2014 が
発 行 さ れ て か ら 6 ヶ 月 以 内 に ガ イ ド ラ イ ン を ダ ウ ン ロ ー ド し た 医 師 で あ っ た 。 高 血 圧 の 治 療 に あ た る の は 、 専 門 医 だ け で な く 、 多 く の 非 専 門 医 も 含 ま れ る こ と か ら 、 ガ イ ド ラ イ ン は 必 ず し も 治 療 に 当 た る す べ て の 医 師 に 浸 透 し て い る と は 限 ら な い こ と が 考 え ら れ る 。 本 研 究 で は 、JSH2014 で 併 存 疾 患 の 種 類 別 に 推 奨 さ れ て い る 降 圧 薬 が 、 日 常 臨 床 に 反 映 さ れ て い る の か 否 か に 注 目 し た 。 JSH2014 が 発 行 後 の 最 初 の 1 年 間 ( 2014 年 4 月 ~ 2015 年 3 月 ) に お い て 、 本 邦 に お け る 降 圧 薬 の 使 用 実 態 を 、 併 存 疾 患 の 種 類 別 に 検 討 し た 。
【 方 法 】 1) 研 究 デ ザ イ ン と デ ー タ ソ ー ス
本 研 究 に は 、メ デ ィ カ ル・デ ー タ・ビ ジ ョ ン( MDV)株 式 会 社 が 保 有 し て い る 診 療 デ ー タ ベ ー ス を 利 用 し た 。 デ ー タ ベ ー ス に は 、 日 本 の 174 病 院 に お け る 約 1500 万 人 以 上 の 入 院 お よ び 外 来 患 者 の 処 方 デ ー タ が 含 ま れ て い る 。 デ ー タ ベ ー ス は 、 Diagnostic Procedure Combination( DPC) デ ー タ・レ セ プ ト デ ー タ( す べ て の DPC 病 院 の 約 11%を カ バ ー し て い る ) を 基 に 構 築 さ れ て お り 、 病 院 か ら デ ー タ の 二 次 利 用 許 諾 が 得 ら れ た も の で 、 全 て の デ ー タ は 個 人 情 報 保 護 の 観 点 か ら 匿 名 化 処 理 が さ れ て い る 。 デ ー タ ベ ー ス に は 、 診 断 、 医 療 費 、 処 方 お よ び 一 部 の 血 液 検 査 デ ー タ が 含 ま れ て い る 。 本 研 究 は 、 2014 年 4 月 か ら 2015 年 3 月 に お け る 降 圧 薬 の 使 用 率 ( 対 象 期 間 に お け る 最 初 の 処 方 に 基 づ く ) に つ い て 、 併 存 疾 患 ご と に 横 断 解 析 し た も の で あ る 。 2) 対 象 集 団 主 な 組 み 入 れ 基 準 は 、 2014 年 4 月 か ら 2015 年 3 月 に お い て 、 外 来 で 降 圧 薬 を 処 方 さ れ て お り 、 高 血 圧 と 診 断 さ れ て い る 20 歳 以 上 の 患 者 で あ る こ と と し た ( Fig.1)。 ま た 、 選 択 基 準 と し て 、 最 初 の 処 方 以 前 の 前 観 察 期 間 で あ る 1 年 間 に お い て 、外 来 で の 通 院 歴 ま た は 入 院 歴 が 存 在 す る こ と を 条 件 と し た 。 ル ー プ 利 尿 薬 お よ び ア ル ド ス テ ロ ン 拮 抗 薬 は 、 高 血 圧 症 以 外 に 心 性 浮 腫 ま た は 慢 性 心 不 全 の 適 応 を 有 し て い る 。 本 研 究 で は 心 疾 患 の 有 病 率 が 高 い こ と か ら 、 こ れ ら が 単 剤 ま た は 2 剤 併 用 ( ル ー プ 利 尿 薬 + ア ル ド ス テ ロ ン 拮 抗 薬 ) で 使 用 さ れ て い る 場 合 は 、 心 不 全 ま た は 浮 腫 の 治 療 目 的 と し て 使 用 さ れ て い る 可 能 性 が 高 い こ と か ら 除 外 し た 。 尚 、 ル ー プ 利 尿 薬 お よ び ア ル ド ス テ ロ ン 拮 抗 薬 が 、 他 の 降 圧 薬 を 含 む 併 用 で 用 い ら れ て い る 場 合 は 除 外 し て い な い 。 β 遮 断 薬 も 心 疾 患 の 適 応 を 有 す る が 、 過 去 の 高 血 圧 治 療 ガ イ ド ラ イ ン で は 第 一 選 択 薬 と さ れ
て お り 、 降 圧 薬 と し て の 位 置 づ け が 高 い こ と か ら 除 外 し な か っ た 。 高 血 圧 症 の 診 断 は 、International Classification of Disease (ICD)-10 code の う ち I10( 本 態 性 高 血 圧 )を 用 い て 定 義 し た 。併 存 疾 患 は 、前 観 察 期 間 で あ る 1 年 間 を 対 象 と し て 、 ICD-10 お よ び Anatomical Therapeutic Chemical (ATC) Classification System codes を 用 い る こ と で 定 義 し た ( Table 2)。 本 研 究 で 着 目 し た 併 存 疾 患 は 、 JSH2014 に お い て 降 圧 薬 の 選 択 に 影 響 を 及 ぼ す と 考 え ら れ て い る 糖 尿 病 、 脂 質 異 常 症 、 痛 風 ・ 高 尿 酸 血 症 、 腎 疾 患 で あ る 。 3) ア ウ ト カ ム 患 者 の 年 齢 、 性 別 、 併 存 疾 患 、 降 圧 薬 の 使 用 率 を 算 出 し た 。 エ ン ド ポ イ ン ト は 、 対 象 期 間 に お け る 最 初 の 処 方 に 基 づ く 使 用 率 で あ る 。 4) 研 究 倫 理 本 研 究 は 、 匿 名 化 さ れ た デ ー タ を 用 い た ( つ ま り 、 匿 名 化 さ れ た 状 態 で MDV の デ ー タ ベ ー ス に 保 存 さ れ て い る デ ー タ を 利 用 し た )。研 究 計 画 段 階 で 、 MDV と 武 田 薬 品 工 業 株 式 会 社 は 、 デ ー タ 使 用 と 機 密 保 持 に 関 す る 契 約 を 締 結 し て い る 。研 究 デ ー タ の 分 析 は 、IQVIA ソ リ ュ ー シ ョ ン ズ ジ ャ パ ン 株 式 会 社 が 実 施 し 、 解 析 し た デ ー タ は 厳 重 に 管 理 し た 。 厚 生 労 働 省 か ら 発 行 さ れ た 疫 学 研 究 に 関 す る 倫 理 指 針 に 基 づ き 、 本 研 究 の 倫 理 委 員 会 に よ る 承 認 と イ ン フ ォ ー ム ド コ ン セ ン ト は 適 応 さ れ な い 。 5) 統 計 解 析 患 者 背 景 、併 存 疾 患 、降 圧 薬 の 剤 数 に つ い て 記 述 統 計 に よ り 要 約 し た 。 連 続 す る 数 値 は 平 均 と 標 準 偏 差 に よ っ て 示 し 、 カ テ ゴ リ ー デ ー タ は 、 患 者 数 と 率 に よ っ て 示 し た 。 全 集 団 お よ び サ ブ グ ル ー プ の 併 存 疾 患 ご と に 、 降 圧 薬 の 使 用 率 を パ ー セ ン ト で 示 し た 。 統 計 解 析 は 、 SASⓇ version 9.2 ( SAS Institute Inc, Cary, NC, USA) を 用 い た 。
Figure 1 研 究 デ ザ イ ン
対 象 期 間 、 選 択 基 準 お よ び 除 外 基 準 と 、 そ れ ら を 満 た し た 患 者 数 を 示 す 。 起 点 日 と は 、 対 象 選 択 期 間 に お け る 最 初 の 処 方 が 存 在 す る 日 の こ と で あ る 。
Table 2 降 圧 薬 お よ び 疾 患 の 定 義 (a)降 圧 薬 薬 剤 ク ラ ス ATC codes # ACE 阻 害 薬 C09A0 α 遮 断 薬 C02A2, G04C2 ARB C09C0 Ca 拮 抗 薬 C08A0 β 遮 断 薬 C07A0 直 接 レ ニ ン 阻 害 薬 C09X0 ア ル ド ス テ ロ ン 拮 抗 薬 C03A1 サ イ ア ザ イ ド 系 利 尿 薬 C03A3 ル ー プ 利 尿 薬 C03A2 配 合 剤 : ARB+Ca 拮 抗 薬 C09D3 配 合 剤 : ARB+サ イ ア ザ イ ド 系 利 尿 薬 C09D1
経 口 糖 尿 病 治 療 薬 A10C, A10D, A10H0, A10J, A10K, A10L, A10N1, A10N3, A10N9, A10M1, A10M9, A10P1, A10S0, A10X9
脂 質 異 常 症 治 療 薬 C10A1, C10A2, C10A3, C10A9, C10B0, C11A1
痛 風 ・ 高 尿 酸 血 症 治 療 薬 M04A0
抗 血 栓 ( 抗 凝 固 、 抗 血 小 板 ) 薬 B01A, B01C, B01E, B01F
各 薬 剤 に 対 応 す る ATC code の 一 覧 を 示 し た 。
(b)疾 患
各 疾 患 に 対 応 す る ICD-10 の 一 覧 を 示 し た 。糖 尿 病 に 関 し て は 、ICD-10 と ATC code の 両 方 が 存 在 す る 場 合 を 、 糖 尿 病 と 定 義 し た 。
* International Classification of Diseases (ICD)-10
傷 病 名 ICD-10 codes * ATC codes #
糖 尿 病 E10, E11 A10C, A10D, A10H0, A10J,
A10K, A10L, A10N1, A10N3, A10N9, A10M1, A10M9, A10P1, A10S0, A10X9
脂 質 異 常 症 E78
痛 風 及 び 高 尿 酸 血 症 E79, M10
腎 疾 患 I12, N08, N18–19, N26, N28
心 疾 患 I11, I20-25, I47-50, I51.7
【 結 果 】 1) 対 象 者 の 背 景 情 報 お よ び 臨 床 的 特 徴 組 み 入 れ 基 準 を 満 た し た 患 者 数 は 59,867 人 で あ り 、糖 尿 病 を 有 す る 患 者 は 14,548 人 、 脂 質 異 常 症 を 有 す る 患 者 は 34,001 人 、 痛 風 ・ 高 尿 酸 血 症 を 有 す る 患 者 は 10,886 人 、 腎 疾 患 を 有 す る 患 者 は 5,966 人 で あ っ た 。 平 均 年 齢 は 70.0±11.9 歳 で あ り 、 男 性 は 56.9%で あ っ た 。 多 い 併 存 疾 患 は 、脂 質 異 常 症( 56.8%)お よ び 心 疾 患( 52.0%)で あ っ た 。降 圧 薬 は 平 均 で 1.9±1.0 剤 が 処 方 さ れ て お り 、 痛 風 ・ 高 尿 酸 血 症 や 腎 疾 患 を 有 す る 患 者 で は 、 比 較 的 、 併 用 治 療 が 多 か っ た ( Table 3)。 2) 降 圧 薬 の 使 用 率 本 研 究 で 対 象 と な っ た 患 者 に お け る 降 圧 薬 の 使 用 率 の 全 体 像 を Fig.2 に 示 し た 。単 剤 は 41.1%で あ り 、2 剤( 34.2%)、3 剤( 16.5%)、4 剤( 6.1%) お よ び 5 剤 以 上 ( 1.7%) と 続 い た 。 併 存 疾 患 別 に 算 出 し た 降 圧 薬 の 使 用 率 を Fig.3 に 示 し た 。CCB( 65.3% ~ 68.2%) と ARB( 59.9%~ 69.7%) が 総 集 団 お よ び 各 併 存 疾 患 別 サ ブ グ ル ー プ の い ず れ に お い て も 処 方 の 中 心 と な っ て い た 。 β 遮 断 薬 に 次 い で 、 利 尿 薬( サ イ ア ザ イ ド 系 お よ び ル ー プ )お よ び ACE 阻 害 薬 の 使 用 率 が 高 か っ た 。 ARB は 、糖 尿 病 を 有 す る 患 者 に お い て 、使 用 率 が 高 い 傾 向 が 認 め ら れ た 。 ル ー プ 利 尿 薬 は 、 糖 尿 病 や 脂 質 異 常 症 を 有 す る 患 者 よ り も 、 痛 風 ・ 高 尿 酸 血 症 お よ び 腎 疾 患 に お い て 使 用 率 が 高 か っ た 。 α 遮 断 薬 は 、 腎 疾 患 を 有 す る 患 者 で 使 用 率 が 最 も 高 か っ た 。 脂 質 異 常 症 を 有 す る 患 者 に お け る 治 療 パ タ ー ン は 、 総 集 団 の そ れ と 類 似 し て い た 。 β 遮 断 薬 ( 39.9% vs 10.9%)、 ル ー プ 利 尿 薬 ( 17.7% vs 3.0%)、 ACE 阻 害 薬( 11.8% vs 6.2%)お よ び ア ル ド ス テ ロ ン 拮 抗 薬( 8.8% vs 1.7%)は 、 心 疾 患 を 有 さ な い 患 者 よ り も 、 心 疾 患 を 有 す る 患 者 で 使 用 率 が 高 か っ た ( Table 4)。
3) 単 剤 治 療 単 剤 の 降 圧 薬 を 処 方 さ れ て い る 患 者 24,786 人( 41.1%)で は 、CCB お よ び ARB が 処 方 の 中 心 で あ っ た 。 唯 一 、 糖 尿 病 の サ ブ グ ル ー プ で は 、 ARB の 方 が CCB の 使 用 率 よ り 高 か っ た 。 β 遮 断 薬 は JSH2014 に お い て 第 一 選 択 薬 か ら 除 外 さ れ て い る が 、 総 集 団 お よ び す べ て の サ ブ グ ル ー プ に お い て 、β 遮 断 薬 の 使 用 率 は 、ACE 阻 害 薬 お よ び サ イ ア ザ イ ド 系 利 尿 薬 の そ れ よ り も 高 か っ た ( Fig.4a)。 4) 2 剤 併 用 治 療 2 剤 の 降 圧 薬 を 処 方 さ れ て い る 患 者 20,499 人( 34.2%)で は 、CCB+ARB の 処 方 が 最 も 多 く 、47.0%( 腎 疾 患 )か ら 63.1%( 糖 尿 病 )で あ っ た 。そ の 他 の 2 剤 併 用 は 、CCB+β 遮 断 薬 、ARB+β 遮 断 薬 、CCB+ACE 阻 害 薬 、 ARB+サ イ ア ザ イ ド 系 利 尿 薬 で あ り 、い ず れ も 10%未 満 で あ っ た 。痛 風 ・ 高 尿 酸 血 症 お よ び 腎 疾 患 で は 、 糖 尿 病 や 脂 質 異 常 症 に 比 べ て 、 上 位 5 種 類 以 外 の 2 剤 併 用 で 治 療 さ れ て い る 患 者 の 割 合 が 高 か っ た ( Fig.4b)。 5) 3 剤 併 用 治 療 3 剤 の 降 圧 薬 を 処 方 さ れ て い る 患 者 9,879 人( 16.6%)で は 、CCB+ARB+ β 遮 断 薬( 20.1%~ 30.6%)の 使 用 率 が 最 も 高 か っ た 。次 い で 、CCB+ARB+ サ イ ア ザ イ ド 系 利 尿 薬 ( 腎 疾 患 サ ブ グ ル ー プ 以 外 ) ま た は CCB+ARB+ ル ー プ 利 尿 薬 ( 腎 疾 患 サ ブ グ ル ー プ の み ) の 使 用 率 が 高 か っ た 。 3 剤 併 用 に お い て は 、 そ の 他 と 定 義 し た 上 位 5 種 類 以 外 の 併 用 の 割 合 が 高 く ( 33.1%~ 43.6%)、 特 に 痛 風 ・ 高 尿 酸 血 症 お よ び 腎 疾 患 の サ ブ グ ル ー プ で 高 か っ た ( Fig.4c)。
Table 3 対 象 者 の 背 景 情 報 お よ び 臨 床 的 特 徴 全 体 (n = 59,867) 糖 尿 病 (n = 14,548) 脂 質 異 常 症 (n = 34,001) 痛 風 ・ 高 尿 酸 血 症 (n = 10,886) 腎 疾 患 (n = 5,966) 年 齢 (歳 ) 70.0 ± 11.9 69.7 ± 10.8 70.4 ± 11.2 70.0 ± 12.2 71.6 ± 12.5 性 別 ( 男 性 ) 34,044(56.9) 9,127(62.7) 19,094(56.2) 8,669(79.6) 3,881(65.1) 併 存 疾 患 糖 尿 病 14,548(24.3) 14,548(100.0) 10,993(32.3) 3,067(28.2) 1,872(31.4) 脂 質 異 常 症 34,001(56.8) 10,993(75.6) 34,001(100.0) 7,312(67.2) 3,763(63.1) 痛 風 ・ 高 尿 酸 血 症 10,886(18.2) 3,067(21.1) 7,312(21.5) 10,886(100.0) 3,000(50.3) 腎 疾 患 5,966(10.0) 1,872(12.9) 3,763(11.1) 3,000(27.6) 5,966(100.0) 心 疾 患 (入 院 )* 31,106(52.0) 7,939(54.6) 20,668(60.8) 7,181(66.0) 4,042(67.8) 脳 血 管 疾 患 (入 院 )* 11,596(19.4) 3,159(21.7) 7,406(21.8) 2,145(19.7) 1,243(20.8) 入 院 経 験 11,403(19.1) 3,273(22.5) 6,229(18.3) 2,624(24.1) 2,083(34.9) 降 圧 薬 の 剤 数 1.9 ± 1.0 2.1 ± 1.1 2.0 ± 1.0 2.4 ± 1.2 2.4 ± 1.2 分 布 1 剤 24,786(41.4) 4,983(34.3) 12,701(37.4) 2,978(27.4) 1,721(28.9) 2 剤 20,499(34.2) 5,081(34.9) 12,021(35.4) 3,486(32.0) 1,781(29.9) 3 剤 9,879(16.5) 2,900(19.9) 6,213(18.3) 2,591(23.8) 1,391(23.3) 4 剤 3,662(6.1) 1,187(8.2) 2,371(7.0) 1,354(12.4) 749(12.6) 5 剤 以 上 1,041(1.7) 397(2.7) 695(2.0) 477(4.4) 324(5.4) 対 象 者 の 背 景 情 報 、併 存 疾 患 、入 院 経 験 、使 用 さ れ て い る 降 圧 薬 の 剤 数 お よ び そ の 分 布 を 示 す 。併 存 疾 患 の サ ブ グ ル ー プ は 、糖 尿 病 、脂 質 異 常 症 、痛 風 ・ 高 尿 酸 血 症 、腎 疾 患 の 4 カ テ ゴ リ ー に 分 類 し た 。併 存 疾 患 お よ び 入 院 経 験 は 、前 観 察 期 間 に 該 当 の 傷 病 名 ま た は 入 院 の 履 歴 が 存 在 す る 比 率 を 示 す 。 * 心 疾 患 お よ び 脳 血 管 疾 患 で は 、傷 病 名 に 加 え て 、前 観 察 期 間 に 入 院 の 履 歴 が 存 在 す る こ と を 条 件 と し た 。 結 果 は 、 n( %) ま た は 、 平 均 ±標 準 偏 差 で 示 す 。
Ca拮抗薬 19.6% ARB 14.9% β遮断薬 4.5% ACE阻害薬 1.6% その他(1剤) 0.8% Ca拮抗薬+ARB 20.4% Ca拮抗薬+β遮断薬 3.0% ARB+β遮断薬 2.3% Ca拮抗薬+ACE阻害薬 1.9% サイアザイド系利尿薬 +ARB 1.5% その他(2剤) 5.1% Ca拮抗薬+ARB+ β遮断薬 4.7% Ca拮抗薬+ARB+ サイアザイド系利尿薬 3.5% その他(3剤) 8.4% 4剤 6.1% 5剤以上 1.7% 1剤 41.4% 2剤 34.2% 3剤 16.5% Figure 2 降 圧 薬 の 使 用 実 態 の 全 体 像 起 点 日 に お い て 、 全 患 者 数 に 占 め る 各 降 圧 薬 の 使 用 率 を 剤 数 毎 に 示 す 。 使 用 率 が 1.5%未 満 の 薬 剤 お よ び 併 用 は 、 剤 数 毎 に 「 そ の 他 」 と し て 示 す 。
0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 80% 全体(n=59,867) 糖尿病(n=14,548) 脂質異常症(n=34,001) 痛風・高尿酸血症(n=10,886) 腎疾患(n=5,966) 使用率 Figure 3 併 存 疾 患 別 の 降 圧 薬 の 使 用 率 糖 尿 病 、 脂 質 異 常 症 、 痛 風 ・ 高 尿 酸 血 症 ま た は 腎 疾 患 を 併 存 疾 患 と し て 有 す る 患 者 に お け る 降 圧 薬 の 使 用 率 を 示 す 。 各 群 の 患 者 数 を 分 母 と し 、 単 剤 ・ 併 用 を 問 わ ず 各 薬 剤 が 使 用 さ れ て い る 割 合 を 示 す 。
Table 4 心 疾 患 の 有 無 で の 降 圧 薬 の 使 用 率 降 圧 薬 心 疾 患 (入 院 )* 有 り (n = 31,106) 無 し (n = 28,761) Ca 拮 抗 薬 65.3% 68.5% ARB 57.5% 62.4% β遮 断 薬 39.9% 10.9% ル ー プ 利 尿 薬 17.7% 3.0% サ イ ア ザ イ ド 系 利 尿 薬 10.2% 9.5% ACE 阻 害 薬 11.8% 6.2% ア ル ド ス テ ロ ン 拮 抗 薬 8.8% 1.7% α遮 断 薬 4.8% 4.4% 直 接 レ ニ ン 阻 害 薬 0.5% 0.3% 併 存 疾 患 と し て の 心 疾 患 の 有 無 で 層 別 化 し 、 降 圧 薬 の 使 用 率 を 示 す 。 対 象 と な る 患 者 数 を 分 母 と し 、 単 剤 ・ 併 用 を 問 わ ず 各 薬 剤 が 使 用 さ れ て い る 割 合 を 示 す 。 * 入 院 と は 、 前 観 察 期 間 に 入 院 の 履 歴 が 存 在 す る こ と を 条 件 と し た 。
0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 全体(n=20,499) 糖尿病(n=5,081) 脂質異常症(n=12,021) 痛風・高尿酸血症(n=3,486) 腎疾患(n=1,781) 使用率 0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 全体(n=24,786) 糖尿病(n=4,983) 脂質異常症(n=12,701) 痛風・高尿酸血症(n=2,978) 腎疾患(n=1,721) 使用率 (a) 単 剤 (b) 2 剤 併 用
0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 全体(n=9,879) 糖尿病(n=2,900) 脂質異常症(n=6,213) 痛風・高尿酸血症(n=2,591) 腎疾患(n=1,391) 使用率 (c) 3 剤 併 用 Figure 4 併 存 疾 患 別 の 降 圧 薬 の 使 用 実 態 ( 剤 数 毎 の 内 訳 ) (a) 降 圧 薬 の 使 用 率 ( 単 剤 ) 単 剤 で 治 療 さ れ て い る 患 者 数 を 分 母 と し 、 各 降 圧 薬 の 使 用 率 を 示 す 。 (b) 降 圧 薬 の 使 用 率 ( 2 剤 併 用 ) 2 剤 で 治 療 さ れ て い る 患 者 数 を 分 母 と し 、 各 併 用 の 使 用 率 を 示 す 。 上 位 5 種 類 の 併 用 以 外 は 、「 そ の 他 」 と し て 纏 め た 。 (c) 降 圧 薬 の 使 用 率 ( 3 剤 併 用 ) 3 剤 で 治 療 さ れ て い る 患 者 数 を 分 母 と し 、 各 併 用 の 使 用 率 を 示 す 。 上 位 5 種 類 の 併 用 以 外 は 、「 そ の 他 」 と し て 纏 め た 。
【 考 察 】 本 邦 の DPC を 採 用 し て い る 病 院 の レ セ プ ト デ ー タ ベ ー ス を 用 い て 、降 圧 薬 の 使 用 実 態 を 、併 存 疾 患 の 種 類 別 に 分 析 し た 。本 研 究 で は 、JSH2014 に お い て 降 圧 薬 の 治 療 選 択 に 影 響 を 及 ぼ す と 考 え ら れ て い る 糖 尿 病 、脂 質 異 常 症 、 痛 風 ・ 高 尿 酸 血 症 、 腎 疾 患 に 着 目 し た 。 JSH2014 で は 、 厳 格 な 血 圧 コ ン ト ロ ー ル が 心 血 管 イ ベ ン ト の 予 防 に 重 要 で あ り 、 低 用 量 の 利 尿 薬 を 含 む 2~ 3 剤 の 降 圧 薬 を 用 い て 降 圧 目 標 を 達 成 す る こ と が 必 要 で あ る こ と を 言 及 し て い る 。 本 研 究 で 使 用 さ れ て い た 降 圧 薬 は 平 均 1.9 剤 で あ り 、 単 剤 で の 治 療 が 41.4%を 占 め た 。 痛 風 ・ 高 尿 酸 血 症 お よ び 腎 疾 患 を 有 す る 患 者 で は 、 よ り 多 く の 降 圧 薬 が 使 用 さ れ て い た が 、 そ れ で も 単 剤 は 25%以 上 を 占 め た 。 本 邦 の 2010 年 に お け る 140/90mmHg( SBP/DBP) の 降 圧 目 標 達 成 率 は 、 15~ 30%で あ る こ と が 報 告 さ れ て お り (1)、 降 圧 目 標 未 達 成 は 、 若 年 お よ び 中 年 、 糖 尿 病 ・ CKD・ 心 筋 梗 塞 を 有 す る 患 者 で 多 い こ と が 知 ら れ て い る (11)。 最 近 の 厳 格 な 降 圧 目 標 を 設 定 し た 2 つ の 大 規 模 な 臨 床 研 究 で は 、降 圧 薬 の 平 均 剤 数 は 、 そ れ ぞ れ 3.4 剤 お よ び 2.8 剤 で あ り 、 本 研 究 で 使 用 さ れ て い た 降 圧 薬 の 平 均 剤 数 ( 1.9 剤 ) よ り も 多 か っ た (12, 13)。 降 圧 薬 は 増 量 す る よ り も 、 種 類 の 異 な る 降 圧 薬 を 併 用 す る 方 が 大 き い 降 圧 効 果 が 得 ら れ る こ と が 報 告 さ れ て お り (14)、 血 圧 値 や 薬 剤 の 用 量 情 報 を 解 析 す る こ と で 、 降 圧 目 標 を 達 成 す る た め の 課 題 を 明 ら か に で き る 可 能 性 が 考 え ら れ る 。 本 研 究 で 対 象 と し た 集 団 で は 、 CCB と ARB が 処 方 の 中 心 で あ り 、 そ れ ぞ れ 66.8%お よ び 59.9%の 使 用 率 で あ っ た 。 JSH2014 で 第 一 選 択 薬 と さ れ て い る サ イ ア ザ イ ド 系 利 尿 薬 お よ び ACE 阻 害 薬 は 10%程 度 し か 使 用 さ れ て お ら ず 、 第 一 選 択 薬 か ら 除 外 さ れ て い る β 遮 断 薬 の 使 用 率 よ り も 低 か っ た 。 β 遮 断 薬 は 、 改 定 前 の ガ イ ド ラ イ ン で は 第 一 選 択 薬 と さ れ て お り 、 改 訂 さ れ た ガ イ ド ラ イ ン で 定 め ら れ た 第 一 選 択 薬 の 内 容 が 、 実 臨 床 の 治 療 に 十 分 に 反 映 さ れ て い な い こ と が 示 唆 さ れ た 。 本 研 究 に お け
る 利 尿 薬 の 使 用 率 は 、 健 康 保 険 の レ セ プ ト デ ー タ ベ ー ス を 用 い た 2011 年 の 報 告 (15)に 比 べ る と や や 高 く 、 こ の 結 果 の 違 い は 、 使 用 し て い る デ ー タ ベ ー ス の 違 い が 影 響 し て お り 、 本 研 究 で は 心 疾 患 の 有 病 率 が 高 い こ と が 要 因 の 1 つ か も し れ な い 。 ま た 、 ARB+利 尿 薬 の 配 合 剤 が 上 市 さ れ て か ら 数 年 経 過 し 、 本 邦 に お け る 利 尿 薬 の 使 用 率 上 昇 し て き て い る こ と (15-17)も 理 由 で あ る 。 利 尿 薬 お よ び ACE 阻 害 薬 の 使 用 率 が 低 い こ と は 、欧 米 と は 状 況 が 異 な る 。米 国 で は 、利 尿 薬 は 最 も 使 用 率 が 高 く 、次 い で ACE 阻 害 薬 の 処 方 が 多 い (18, 19)。こ れ ら の 薬 剤 は 、欧 州 で も 日 本 に 比 べ て 使 用 率 が 高 い こ と が 報 告 さ れ て い る (20-23)。国 に よ る 治 療 実 態 の 違 い に は 、各 国 の ガ イ ド ラ イ ン の 影 響 だ け で な く 、 複 数 の 要 因 が 影 響 し う る 。 本 邦 で は 、 内 科 医 は 薬 剤 の 有 害 事 象 に 懸 念 を 示 す 傾 向 が あ り (16)、 利 尿 薬 で は 他 の 降 圧 薬 に 比 べ て 有 害 事 象 が 多 い こ と (24)が 、 利 尿 薬 の 使 用 率 が 低 い 要 因 の 1 つ と 考 え ら れ る 。ACE 阻 害 薬 の 有 害 事 象 と し て の 空 咳 の リ ス ク は 、白 人 に 比 べ て 東 ア ジ ア の 人 種 の 方 が 高 く (25)、そ の こ と が ACE 阻 害 薬 の 使 用 率 が 低 い こ と に 一 部 寄 与 し て い る か も し れ な い 。 こ れ ま で に 糖 尿 病 患 者 に お け る 降 圧 薬 の 使 用 率 を 検 討 し た 報 告 は 存 在 す る (26, 27)。一 方 、種 々 の 併 存 疾 患 別 の サ ブ グ ル ー プ で 降 圧 薬 の 使 用 率 を 検 討 し た 成 績 は 見 当 た ら な い 。 JSH2014 で は 、 糖 尿 病 を 合 併 す る 患 者 に 対 し て ARB ま た は ACE 阻 害 薬 が 第 一 選 択 薬 と さ れ て お り 、 血 圧 コ ン ト ロ ー ル が 不 十 分 な 場 合 に は CCB を 併 用 す る こ と が 推 奨 さ れ る (2)。 本 研 究 で は CCB の 使 用 率 も ARB と 同 等 に 高 い と い う 結 果 で あ っ た 。 こ れ は 、 ARB や ACE 阻 害 薬 が 単 剤 で は 効 果 不 十 分 で 2 剤 目 と し て 併 用 さ れ て い る こ と も 含 ま れ て い る で あ ろ う が 、 糖 尿 病 の サ ブ グ ル ー プ に お け る 単 剤 治 療 で は 、ARB が 50.3%で 、CCB が 34.6%で あ り 、糖 尿 病 を 合 併 す る 場 合 の 薬 剤 選 択 に つ い て ガ イ ド ラ イ ン の 内 容 が 実 臨 床 に 十 分 に 反 映 さ れ て い な い こ と が 示 唆 さ れ た 。 本 研 究 で は 心 疾 患 の 有 病 率 が 高 か っ
た が 、心 疾 患 の 有 無 で は CCB の 使 用 率 は 同 程 度 で あ っ た こ と か ら 、こ の 結 果 は 心 疾 患 の 有 病 率 と は 無 関 係 で あ る と 考 え ら れ 、 医 師 が ガ イ ド ラ イ ン の 内 容 を 十 分 に 把 握 し て い な い こ と が 要 因 か も し れ な い 。 JSH2014 で は 、脂 質 異 常 症 を 合 併 す る 患 者 に 対 し て 、ARB、ACE 阻 害 薬 、CCB お よ び α 遮 断 薬 が 推 奨 さ れ て お り 、こ れ ら の 薬 剤 は 脂 質 代 謝 を 改 善 す る か 悪 影 響 を 及 ぼ さ な い こ と が 知 ら れ て い る 。 脂 質 異 常 症 の サ ブ グ ル ー プ で は 、ACE 阻 害 薬 お よ び α 遮 断 薬 の 使 用 率 は 、他 疾 患 と 同 様 に 低 か っ た こ と か ら 、医 師 が ACE 阻 害 薬 や α 遮 断 薬 の 脂 質 代 謝 に 対 す る 影 響 を 認 識 し て い な い ま た は 、 重 要 視 し て い な い こ と が 考 え ら れ る 。 痛 風・ 高 尿 酸 血 症 を 合 併 す る 患 者 に お い て 、ARB、ACE 阻 害 薬 、CCB お よ び α 遮 断 薬 な ど の 尿 酸 代 謝 に 良 好 な 影 響 が あ る 薬 剤 が 推 奨 さ れ て い る (2)。痛 風・高 尿 酸 血 症 の サ ブ グ ル ー プ で は 、ル ー プ 利 尿 薬 が 約 25% の 患 者 に 使 用 さ れ て お り 、 β 遮 断 薬 は 約 35%の 患 者 に 使 用 さ れ て お り 、 比 較 的 高 い 使 用 率 で あ っ た 。 ル ー プ 利 尿 薬 の 使 用 に よ り 尿 酸 値 が 上 昇 し 、 高 尿 酸 血 症 を 発 症 し た 患 者 も 含 ま れ て い る 可 能 性 も あ り 、 横 断 解 析 だ け で は そ の 因 果 関 係 は 不 明 で あ る 。 ま た 、 本 研 究 で は 心 疾 患 の 有 病 率 が 高 く 、 心 疾 患 で は ル ー プ 利 尿 薬 の 使 用 率 が 高 い こ と が 影 響 を 及 ぼ し て い る こ と も 考 え ら れ る 。 い ず れ に し て も 尿 酸 代 謝 の 面 か ら は 、 こ の 使 用 実 態 は 好 ま し く な い こ と が 考 え ら れ る 。 他 の 併 存 疾 患 を 有 す る 患 者 に 比 べ て 、 腎 疾 患 の サ ブ グ ル ー プ で は ル ー プ 利 尿 薬 お よ び β 遮 断 薬 が 極 め て 多 く 使 用 さ れ て い た 。 一 方 、 推 奨 さ れ て い る サ イ ア ザ イ ド 系 利 尿 薬 の 使 用 率 は 10%程 度 に 止 ま っ て い た 。腎 疾 患 で は 治 療 抵 抗 性 高 血 圧 が 多 い こ と が 知 ら れ て お り 、 血 圧 を 十 分 に コ ン ト ロ ー ル す る た め に は 、 し ば し ば 利 尿 薬 を 含 む 3 剤 以 上 の 降 圧 薬 が 必 要 と さ れ る 。 ル ー プ 利 尿 薬 は 、 サ イ ア ザ イ ド 系 利 尿 薬 に 比 べ て 降 圧 作 用 は 弱 く 、 利 尿 作 用 が 強 い こ と が 知 ら れ て お り 、 浮 腫 の 改 善 に よ る CKD の 進 行 抑 制 の 目 的 で 使 用 さ れ て い る 場 合 も 存 在 す る こ と が 推 測 で き る 。さ
ら に 、 腎 疾 患 を 有 す る 患 者 で は 、 心 疾 患 の 有 病 率 が 特 に 高 く 、 心 疾 患 を 併 発 す る 患 者 に 対 し て ル ー プ 利 尿 薬 は 推 奨 さ れ て お り 、 そ の 使 用 率 が 高 い と い う 結 果 か ら 、 心 不 全 に 対 す る 体 液 貯 留 緩 和 の 目 的 で 使 用 さ れ て い る 可 能 性 も 考 え ら れ る 。 CKD に お け る 血 圧 管 理 は 、 疾 患 の ス テ ー ジ (1 ~ 4)に よ っ て 降 圧 薬 の 剤 数 や 使 用 す る 種 類 が 異 な り (2, 10)、年 齢 な ど の 因 子 も 治 療 選 択 に 影 響 を 与 え る (28)。 腎 疾 患 に お け る 降 圧 薬 選 択 を 理 解 す る に は 、 蛋 白 尿 の 有 無 や CKD の ス テ ー ジ 別 に 解 析 す る な ど の 追 加 の 解 析 が 必 要 で あ る が 、 本 研 究 で 使 用 し た デ ー タ ベ ー ス に は 、 こ れ ら の 情 報 が 十 分 に 含 ま れ て お ら ず 検 討 で き な か っ た 。 心 疾 患 の 有 病 率 ( 52.0%) が 高 か っ た こ と か ら 、 心 疾 患 の 有 無 で 降 圧 薬 の 使 用 率 を 検 討 し た 。 心 疾 患 の 合 併 が 無 い 群 と 比 べ て 、 心 疾 患 を 合 併 し て い る 群 で は 、β 遮 断 薬 、ル ー プ 利 尿 薬 、ACE 阻 害 薬 お よ び ア ル ド ス テ ロ ン 拮 抗 薬 の 使 用 率 が 高 か っ た 。 β 遮 断 薬 は 心 不 全 、 狭 心 症 お よ び 心 筋 梗 塞 後 に 使 用 す る こ と が 推 奨 さ れ て お り 、RAS 阻 害 薬 も 心 不 全 お よ び 心 筋 梗 塞 後 に 推 奨 さ れ て い る (2)。ま た 、こ れ ら の ク ラ ス の 降 圧 薬 の 一 部 は 、 心 不 全 の 適 応 を 有 し て お り 、 そ の 治 療 目 的 で 使 用 さ れ て い る 可 能 性 も あ る 。一 方 、JSH2014 で は CCB は 狭 心 症 に 、サ イ ア ザ イ ド 系 利 尿 薬 は 心 不 全 を 有 す る 場 合 に 推 奨 さ れ て い る が 、 心 疾 患 の 有 無 で は 使 用 率 に ほ と ん ど 差 異 が 認 め ら れ な か っ た 。 心 疾 患 に は 様 々 な 種 類 が あ り 、 治 療 選 択 も 多 岐 に わ た る こ と か ら 、 こ れ に つ い て 詳 細 に 検 討 す る こ と で 新 た な 知 見 が 得 ら れ る 可 能 性 も 考 え ら れ る 。 さ ら に 、 複 数 の 併 存 疾 患 を 有 す る 場 合 の 治 療 は 個 々 の 病 態 に 合 わ せ て 判 断 す る 必 要 が あ り 、 本 研 究 の 対 象 集 団 は 心 疾 患 だ け で な く 複 数 の 併 存 疾 患 を 有 し て い る こ と が 、 降 圧 薬 の 選 択 を 難 し く し て い る こ と も 考 え ら れ る 。 本 研 究 の 結 果 は 、デ ー タ ベ ー ス の コ ホ ー ト が 高 齢( 平 均 70.0 歳 )で あ る こ と も 、 あ る 程 度 影 響 を 及 ぼ し て い る 可 能 性 が あ る 。 JSH2014 で は 、 高 齢 者 と 非 高 齢 者 で は 第 一 選 択 薬 は 同 じ 推 奨 を 示 し て い る が 、75 歳 以 上
と 未 満 で は 降 圧 目 標 は 異 な り 、 そ の こ と が 高 齢 者 と 非 高 齢 者 で の 降 圧 薬 の 使 用 パ タ ー ン の 違 い に 影 響 を 及 ぼ し て い る か も し れ な い 。 こ の 課 題 を 解 決 す る た め に は 年 齢 層 別 の 解 析 が 必 要 で あ り 、 そ の 検 討 結 果 に つ い て は 第 二 章 で 述 べ る 。 本 研 究 の 限 界 に つ い て は 以 下 の 通 り で あ る 。 JSH2014 の 発 行 前 後 で の 比 較 検 討 は し て お ら ず 、 縦 断 的 な 解 析 は 実 施 し て い な い 。 他 疾 患 の ガ イ ド ラ イ ン は 発 行 さ れ た 時 期 や 内 容 が 異 な る 部 分 が あ り 、 JSH2014 以 外 の ガ イ ド ラ イ ン が 薬 剤 選 択 に 影 響 を 及 ぼ し て い る 可 能 性 も あ る が 、 本 研 究 の 結 果 と す べ て の ガ イ ド ラ イ ン と の 関 係 を 考 察 す る こ と は 困 難 で あ る 。 全 国 に 約 18 万 件 ( 約 160 万 床 ) の 医 療 機 関 が 存 在 す る が 、 本 研 究 で 用 い た デ ー タ ベ ー ス は 約 1700 件( 約 50 万 床 )の DPC 病 院 の う ち の 約 11% を カ バ ー す る も の で あ る こ と か ら 、 日 本 の 高 血 圧 症 患 者 に お け る 降 圧 薬 の 使 用 実 態 と し て 一 般 化 す る こ と は 困 難 で あ る 。特 に 、DPC シ ス テ ム を 導 入 し て い る 病 院 の デ ー タ ベ ー ス で あ る た め 、 患 者 が 転 院 し て い る 場 合 は 追 跡 が で き な い た め に 、 他 の 病 院 で 薬 剤 を 処 方 さ れ て い る 可 能 性 が あ る 。降 圧 薬 の 使 用 率 は 、コ ホ ー ト の 特 徴( 平 均 年 齢 が 70.0 歳 、併 存 疾 患 の 出 現 率 が 高 い 等 ) の 影 響 を 受 け て お り 、 本 デ ー タ ベ ー ス を 使 用 す る こ と は 併 存 疾 患 別 の 解 析 を お こ な う と い う 目 的 に 合 致 し て い る 。 一 方 、 ク リ ニ ッ ク や DPC を 採 用 し て い な い 医 療 機 関 の デ ー タ は 含 ま れ て お ら ず 、 高 血 圧 症 を 新 規 発 症 し た 患 者 は 少 な い 可 能 性 が あ る 。 使 用 し た デ ー タ ベ ー ス に は 血 圧 値 は 含 ま れ て お ら ず 、 降 圧 薬 の 用 量 や 患 者 が 降 圧 目 標 を 達 成 し て い る か 否 か は 検 討 し て い な い 。 同 様 に 、 臨 床 検 査 値 ( HbA1c 等 ) は 本 研 究 の 組 み 入 れ 基 準 を 満 た し た 患 者 の う ち 約 10%程 度 し か 利 用 で き な い 。 高 血 圧 症 以 外 の 適 応 を 有 す る 降 圧 薬 は 、 降 圧 目 的 以 外 で 使 用 さ れ て い る 可 能 性 が あ る 。 最 後 に 、 検 査 の た め の 疑 い 病 名 は 除 外 さ れ て い る が ICD-10 コ ー ド と 実 際 の 診 断 の 乖 離 は 否 定 で き な い 。 前 述 の 限 界 は 存 在 す る が 、本 邦 に お け る DPC 病 院 の デ ー タ ベ ー ス を 用
い て 併 存 疾 患 別 に 降 圧 薬 の 使 用 率 を 分 析 し た 結 果 、 JSH2014 に お け る 併 存 疾 患 別 の 降 圧 薬 の 推 奨 は 、 改 訂 後 の 最 初 の 1 年 間 で は 実 臨 床 に お い て 十 分 に 反 映 さ れ て い な い こ と が 示 唆 さ れ た 。 他 疾 患 で は 医 師 の 専 門 性 が 高 い ほ ど ガ イ ド ラ イ ン の 遵 守 率 が 高 く 、 患 者 の 予 後 も 良 好 で あ る と い う 報 告 が あ り (29)、ガ イ ド ラ イ ン で の 推 奨 と 実 臨 床 に お け る 治 療 の 乖 離 は 、 臨 床 医 ( 特 に 非 専 門 医 ) に 対 す る ガ イ ド ラ イ ン の 浸 透 が 不 十 分 な こ と も 影 響 し て い る か も し れ な い 。 従 っ て 、 併 存 疾 患 を 有 す る 場 合 の 血 圧 管 理 に つ い て 、 臨 床 医 に 対 し て ガ イ ド ラ イ ン を 啓 発 す る こ と が 必 要 と 考 え る 。 高 血 圧 治 療 ガ イ ド ラ イ ン と 治 療 実 態 の 関 係 を 解 明 す る に は 、 血 圧 値 や 臨 床 検 査 値 を 踏 ま え た 更 な る 検 討 が 必 要 で あ る 。
第 2 章 降 圧 薬 の 使 用 実 態 : 年 齢 層 別 の 分 析 【 要 約 】 高 齢 者 と 非 高 齢 者 の 相 違 に 着 目 し 、 降 圧 薬 の 使 用 実 態 を 年 齢 層 別 に 分 析 す る こ と を 目 的 と し た 。 全 国 規 模 の 匿 名 レ セ プ ト デ ー タ ベ ー ス を 用 い て 、 2014 年 4 月 か ら 2015 年 3 月 ま で に 外 来 で 降 圧 薬 の 処 方 を 受 け た 患 者 を 対 象 に 、降 圧 薬 の 使 用 実 態 を 検 討 し た 。対 象 と な っ た 患 者 は 、59,867 名 で 、年 齢 に よ っ て 、65 歳 未 満( 28.7%)、65~ 74 歳( 33.1%)お よ び 75 歳 以 上 ( 38.2%) に 層 別 化 し た 。 対 象 集 団 す べ て に 使 用 さ れ て い た 降 圧 薬 は 、 1.9±1.0 剤 ( 平 均 ±標 準 偏 差 ) で あ り 、 年 齢 層 別 に 明 確 な 違 い は 認 め ら れ な か っ た 。 処 方 の 中 心 と な っ て い る 降 圧 薬 は 、 CCB と ARB で あ り 、 CCB は 65~ 74 歳 ( 66.9% vs 60.5%) お よ び 75 歳 以 上 ( 70.4% vs 56.8%) の 集 団 で ARB よ り も 多 く 使 用 さ れ て い た 。 一 方 、 ARB は 、 65 歳 未 満 ( 53.1% vs 61.9%) の 集 団 で 、 CCB よ り も 多 く 使 用 さ れ て い た 。 β 遮 断 薬 、ACE 阻 害 薬 、サ イ ア ザ イ ド 系 利 尿 薬 の 使 用 率 は 、年 齢 層 別 で の 違 い は ほ と ん ど 認 め ら れ な か っ た 。 さ ら に 、 糖 尿 病 ま た は 腎 疾 患 を 合 併 し て い る 患 者 で は 、 非 高 齢 者 に 比 べ て 75 歳 以 上 で 、 ARB の 使 用 率 が 特 に 低 か っ た 。 腎 疾 患 を 合 併 し て い る 患 者 で は 、 非 高 齢 者 に 比 べ て 75 歳 以 上 で は ル ー プ 利 尿 薬 の 使 用 率 が 特 に 高 か っ た 。 以 上 の 成 績 か ら 、 75 歳 以 上 の 集 団 で は 非 高 齢 者 の 集 団 に 比 べ て 、特 に CCB、ARB、ル ー プ 利 尿 薬 の 選 択 に 違 い が 認 め ら れ る こ と が 明 ら か に な っ た 。
【 緒 言 】 1961 年 ~ 2010 年 の 50 年 間 に 日 本 人 の 平 均 収 縮 期 血 圧 は 年 齢 ・ 性 別 に 関 係 な く 、明 ら か に 低 下 傾 向 を 示 す (1)。こ の 血 圧 値 の 低 下 は 、脳 卒 中 に よ る 死 亡 率 の 低 下 の 主 な 原 因 と し て 考 え ら れ て い る (3)。し か し 、本 邦 に は 2010 年 時 点 で 約 4300 万 人 の 高 血 圧 症 患 者 が 存 在 し 、高 血 圧 症 の 人 口 は 、 今 後 も 社 会 の 高 齢 化 に 沿 っ て 増 加 す る こ と が 予 想 さ れ て い る 。 2011 年 の 国 民 栄 養 調 査 で は 、 65~ 74 歳 の 集 団 で は 66%、 75 以 上 の 集 団 で は 80%が 高 血 圧 に 罹 患 し て い る と 報 告 さ れ て お り 、 高 齢 者 に 対 す る 降 圧 治 療 の 重 要 度 は 増 し て い る 。 JSH2014 に よ る と 、CCB、ARB、ACE 阻 害 薬 、低 用 量 の 利 尿 薬 が 第 一 選 択 薬 と し て 推 奨 さ れ て い る 。 高 齢 者 に 対 し て は 、 降 圧 薬 を 通 常 用 量 の 半 量 か ら 開 始 し 、 不 十 分 で あ れ ば 、 他 の 薬 剤 を 追 加 す る こ と を 推 奨 し て い る (2)。 降 圧 目 標 は 、 75 歳 未 満 で は 140/90mmHg(SBP/DBP)で あ り 、 75 歳 以 上 で は 150/90mmHg に 設 定 さ れ て い る 。 ま た 、 老 年 医 学 会 が 定 め た 高 齢 者 の 安 全 な 薬 物 療 法 ガ イ ド ラ イ ン に よ る と 、高 齢 者 に 対 し て 特 に 慎 重 な 使 用 が 求 め ら れ る 高 血 圧 治 療 薬 は 、 ル ー プ 利 尿 薬 、 ア ル ド ス テ ロ ン 拮 抗 薬 、 非 選 択 的 β 遮 断 薬 、 受 容 体 サ ブ タ イ プ 非 選 択 的 α 1 遮 断 薬 で あ る と 定 め ら れ て い る 。 高 齢 者 に お け る 降 圧 薬 の 治 療 実 態 に 関 し て は 、こ れ ま で に 神 奈 川 県 医 師 会 が 内 科 医 を 対 象 と し て 、 ア ン ケ ー ト 調 査 を 実 施 し て い る (30) 。 JSH2014 で は 、 75 歳 未 満 と 75 歳 以 上 で 降 圧 目 標 が 異 な る よ う に 設 定 さ れ て い る だ け で な く 、 慎 重 な 使 用 が 求 め ら れ る 薬 剤 が 存 在 す る が 、 高 齢 者 と 非 高 齢 者 で の 治 療 選 択 の 違 い に つ い て は 十 分 に 検 討 さ れ て い な い 。 そ こ で 、 本 研 究 で は 、 高 齢 者 と 非 高 齢 者 の 違 い に 注 目 し て 、 レ セ プ ト デ ー タ ベ ー ス を 用 い る こ と で 降 圧 薬 の 使 用 実 態 を 検 討 し た 。 さ ら に 、 年 齢 層 と 代 表 的 な 併 存 疾 患 ( 糖 尿 病 と 腎 疾 患 ) に よ る 層 別 解 析 を お こ な う こ と で 、年 齢 と 併 存 疾 患 の ど ち ら が 治 療 選 択 に 及 ぼ す 影 響 が 大 き い の か を
【 研 究 方 法 】 1) デ ー タ 抽 出 期 間 第 1 章 に 準 ず る 。 2) 対 象 集 団 第 1 章 に 準 ず る 。 3) ア ウ ト カ ム 第 1 章 に 準 ず る 。 4) 研 究 倫 理 第 1 章 に 準 ず る 。 5) 統 計 解 析 第 1 章 に 準 ず る 。
【 結 果 】 1) 対 象 者 の 背 景 情 報 と 臨 床 的 特 徴 選 択 基 準 を 満 た し た 患 者 に 関 し て 、 年 齢 毎 の 人 数 分 布 を Fig.5 に 示 し た 。 患 者 を 年 齢 に よ っ て 3 カ テ ゴ リ ー に 分 類 し ( 65 歳 未 満 : n=17,205、 65~ 74 歳 : n=19,810、 75 歳 以 上 : n=22,852)、 患 者 背 景 、 併 存 疾 患 、 降 圧 薬 の 剤 数 を Table 5 に 記 載 し た 。75 歳 以 上 の 集 団( 男 性:49.6%、女 性: 50.4%) を 除 い て 、 男 性 の 比 率 が 高 か っ た 。 腎 疾 患 を 有 す る 患 者 の 比 率 は 、 65 歳 未 満 ( 24.3%) お よ び 65~ 74 歳 ( 30.3%)よ り も 、75 歳 以 上( 45.5%)で 著 明 に 高 か っ た 。心 疾 患 お よ び 脳 血 管 疾 患 の 有 病 率 も 同 様 に 、 65 歳 未 満 ( 40.2%、 13.5%) お よ び 65~ 74 歳 ( 50.8%、 19.2%%) よ り も 、 75 歳 以 上 ( 61.8%、 23.9%) で 高 か っ た 。 各 年 齢 層 で 使 用 さ れ て い た 降 圧 薬 の 剤 数 は 、1.8±1.0 剤( 65 歳 未 満 )、 1.9±1.0 剤 ( 65~ 74 歳 )、 2.0±1.0 剤 ( 75 歳 以 上 ) で あ っ た 。 2) 降 圧 薬 の 使 用 率 年 齢 層 ご と の 降 圧 薬 の 使 用 率 を Fig.6 に 示 し た 。CCB と ARB が 処 方 の 中 心 で あ り 、そ れ ぞ れ 61.8%~ 70.4%、56.8% ~ 63.1%で あ っ た 。CCB は 、 65~ 74 歳 ( 66.9% vs 60.5%) お よ び 75 歳 以 上 ( 70.4% vs 56.8%) の 年 齢 層 で ARB よ り も 使 用 率 が 高 か っ た 。 β 遮 断 薬 は 、 い ず れ の 年 齢 層 で も 約 25%の 使 用 率 で あ っ た 。 ル ー プ 利 尿 薬 は 、 65 歳 未 満 ( 6.4%) お よ び 65~ 74 歳( 8.3%)の 層 よ り も 75 歳 以 上( 15.8%)で 使 用 率 が 著 明 に 高 か っ た 。 サ イ ア ザ イ ド 系 利 尿 薬 お よ び ACE 阻 害 薬 は 、 い ず れ も 10%程 度 の 使 用 率 で あ っ た 。 ま た 、 ア ル ド ス テ ロ ン 拮 抗 薬 、 α 遮 断 薬 、 直 接 レ ニ ン 阻 害 薬 の 使 用 率 は 微 々 た る も の で あ っ た 。 3) 単 剤 治 療 、 併 用 治 療 単 剤 治 療 で は 、75 歳 以 上 で は 他 の 年 齢 層 に 比 べ て 、CCB の 使 用 率 が 高 く 、 ARB の 使 用 率 が 低 か っ た 。 2 剤 併 用 で は 、 CCB+ARB の 併 用 が 最 も
多 く 、3 剤 併 用 で は CCB+ARB+β 遮 断 薬 の 併 用 が 最 も 多 か っ た 。こ の 傾 向 は 、い ず れ の 年 齢 層 で も 同 様 で あ っ た 。し か し 、上 位 5 種 類 以 外 の「 そ の 他 の 併 用 」は 75 歳 以 上 の 年 齢 層 で 多 い 傾 向 が 認 め ら れ た( Fig.7a, b, c)。 4) 併 存 疾 患 を 有 す る 患 者 に お け る 降 圧 薬 の 使 用 実 態 年 齢 層 と 併 存 疾 患( 糖 尿 病 、腎 疾 患 )に よ っ て 区 分 し た 使 用 率 を Fig.8 お よ び 9 に 示 し た 。 い ず れ の 併 存 疾 患 に お い て も 、 CCB と ARB に 次 い で β 遮 断 薬 の 使 用 率 が 高 く 、 年 齢 層 に よ る 使 用 率 の 違 い は 全 体 集 団 の 傾 向 と 変 わ り な か っ た が 、 腎 疾 患 を 伴 う 75 歳 以 上 の 患 者 で は ル ー プ 利 尿 薬 の 使 用 率 は β 遮 断 薬 を 上 回 っ て お り 、 年 齢 層 に よ る 違 い も 顕 著 で あ っ た 。
0 2,000 4,000 6,000 8,000 10,000 12,000 人数 Figure 5 年 齢 層 別 の 患 者 数 の 分 布 本 研 究 の 選 択 基 準 を 満 た し た 患 者 に つ い て 、 年 齢 毎 の 人 数 分 布 を 示 す 。
Table 5 対 象 者 の 背 景 情 報 お よ び 臨 床 的 特 徴 全 体 (n = 59,867) 65 歳 未 満 (n = 17,205) 65~ 74 歳 (n = 19,810) 75 歳 以 上 (n = 22,852) 年 齢 ( 歳 ) 70.0 ± 11.9 55.3 ± 8.0 69.5 ± 2.9 81.5 ± 4.5 性 別 ( 男 性 ) 34,044 (56.9) 10,962 (63.7) 11,741 (59.3) 11,341 (49.6) 併 存 疾 患 糖 尿 病 14,548 (24.3) 4,103 (23.9) 5,403 (27.3) 5,042 (22.1) 脂 質 異 常 症 34,001 (56.8) 9,120 (53.0) 11,847 (59.8) 13,034 (57.0) 痛 風 ・ 高 尿 酸 血 症 10,886 (18.2) 3,162 (18.9) 3,450 (17.4) 4,274 (18.7) 腎 疾 患 5,966 (10.0) 1,447 (8.4) 1,805 (9.1) 2,714 (11.9) 心 疾 患 (入 院 )* 31,106 (52.0) 6,913 (40.2) 10,065 (50.8) 14,128 (61.8) 脳 血 管 疾 患 (入 院 )* 11,596 (19.4) 2,329 (13.5) 3,804 (19.2) 5,463 (23.9) 降 圧 薬 の 剤 数 1.9 ± 1.0 1.8 ± 1.0 1.9 ± 1.0 2.0 ± 1.0 分 布 n % n % n % n % 1 剤 24,786 41.4 7,849 45.6 8,447 42.6 8,490 37.2 2 剤 20,499 34.2 5,704 33.2 6,787 34.3 8,008 35.0 3 剤 9,879 16.5 2,475 14.4 3,152 15.9 4,252 18.6 4 剤 3,662 6.1 905 5.3 1,127 5.7 1,630 7.1 5 剤 以 上 1,041 1.7 272 1.6 297 1.5 472 2.1 対 象 者 の 背 景 情 報 、 併 存 疾 患 、 使 用 さ れ て い る 降 圧 薬 の 剤 数 と そ の 分 布 を 示 す 。 年 齢 の サ ブ グ ル ー プ は 、 年 齢 層 に よ っ て 3 カ テ ゴ リ ー ( 65 歳 未 満 、 65~74 歳 、 75 歳 以 上 ) に 分 類 し た 。 併 存 疾 患 お よ び 入 院 経 験 は 、 前 観 察 期 間 に 該 当 の 傷 病 名 ま た は 入 院 の 履 歴 が 存 在 す る 比 率 を 示 す 。 * 心 疾 患 お よ び 脳 血 管 疾 患 で は 、 傷 病 名 に 加 え て 、 前 観 察 期 間 に 入 院 の 履 歴 が 存 在 す る こ と を 条 件 と し た 。 結 果 は 、 n( %) ま た は 、 平 均 ±標 準 偏 差 で 示 す 。
Figure 6 年 齢 層 別 の 降 圧 薬 の 使 用 率 年 齢 に よ り 65 歳 未 満 、 65~ 74 歳 、 75 歳 以 上 に 分 類 し 、 そ れ ぞ れ の 年 齢 層 に お け る 降 圧 薬 の 使 用 率 を 示 す 。 各 群 の 患 者 数 を 分 母 と し て 、 薬 剤 が 使 用 さ れ て い る 割 合 を 示 す 。 0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 80% 全体(n=59,867) 65歳未満(n=17,205) 65-74歳(n=19,810) 75歳以上(n=22,852) 使用率
0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 全体(n=24,786) 65歳未満(n=7,849) 65-74歳(n=8,447) 75歳以上(n=8,490) 使用率 0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 全体(n=20,499) 65歳未満(n=5,704) 65-74歳(n=6,787) 75歳以上(n=8,008) 使用率 (a) 単 剤 (b) 2 剤 併 用
0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 全体(n=9,879) 65歳未満(n=2,475) 65-74歳(n=3,152) 75歳以上(n=4,252) 使用率 (c) 3 剤 併 用 Figure 7 年 齢 層 別 の 降 圧 薬 の 使 用 率 ( 剤 数 毎 の 内 訳 ) (a)降 圧 薬 の 使 用 率 ( 単 剤 ) 単 剤 で 治 療 さ れ て い る 患 者 数 を 分 母 と し 、 各 降 圧 薬 の 使 用 率 を 示 す 。 (b)降 圧 薬 の 使 用 率 ( 2 剤 併 用 ) 2 剤 で 治 療 さ れ て い る 患 者 数 を 分 母 と し 、 各 併 用 の 使 用 率 を 示 す 。 上 位 5 種 類 の 併 用 以 外 は 、「 そ の 他 」 と し て 纏 め た 。 (c)降 圧 薬 の 使 用 率 ( 3 剤 併 用 ) 3 剤 で 治 療 さ れ て い る 患 者 数 を 分 母 と し 、 各 併 用 の 使 用 率 を 示 す 。 上 位 5 種 類 の 併 用 以 外 は 、「 そ の 他 」 と し て 纏 め た 。
0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 80% 全体(n=14,548) 65歳未満(n=4,103) 65-74歳(n=5,403) 75歳以上(n=5,042) 使用率 Figure 8 糖 尿 病 患 者 に お け る 年 齢 層 別 の 降 圧 薬 の 使 用 率 併 存 疾 患 と し て 糖 尿 病 を 有 す る 患 者 に お け る 降 圧 薬 の 使 用 率 を 、年 齢 層 毎 に 示 す 。 対 象 の 患 者 数 を 分 母 と し 、 単 剤 ・ 併 用 を 問 わ ず 各 薬 剤 が 使 用 さ れ て い る 割 合 を 示 す 。
0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 80% 全体(n=5,966) 65歳未満(n=1,447) 65-74歳(n=1,805) 75歳以上(n=2,714) 使用率 Figure 9 腎 疾 患 を 有 す る 患 者 に お け る 年 齢 層 別 の 降 圧 薬 の 使 用 率 併 存 疾 患 と し て 腎 疾 患 を 有 す る 患 者 に お け る 降 圧 薬 の 使 用 率 を 、年 齢 層 毎 に 示 す 。 対 象 の 患 者 数 を 分 母 と し 、 単 剤 ・ 併 用 を 問 わ ず 各 薬 剤 が 使 用 さ れ て い る 割 合 を 示 す 。