IUHWリプロダクションセンター
不妊の原因は男性側にもある
・診断・治療方法もある
・学ぼう不妊症を!
男性諸君、愛するパートナーのために進んで受診を!!
山王病院リプロダクションセンター男性不妊部門
岩 本 晃 明
栃木県男女共同参画センター事業 平成30年1月28日
男性不妊診療の一般的な認識-1
◆ これまで不妊は女性の問題とされ、現在に至っても
いまだ一般通念として世に憚るものと思われる。
一方男性不妊は不妊カップルの約半数に認められる
こ とは男性不妊医療従事者の間では常識である。
◆しかしながら最終診断として男性側に原因があるとする
不妊カップルに対しても主体は女性担当の医師によって
治療が行われている。
◆本邦では人口あたりのARTを行う生殖医療機関は
諸外国に比べて多いのに対し不妊治療に泌尿器科医師
が少ない背景から、男性因子を正確に評価した上で
治療がなされる機会に乏しい。
男性不妊診療の一般的な知識-2
◆挙児希望で1年経っても妊娠の兆候が無いときには
ご主人が不妊症の検査を受けてください。
奥様の検査は身体的な及び精神的な苦痛が
少なからずあります。しかしながら御主人の方は
何の苦痛もありません。
◆不妊治療は御夫婦が力を会わせて行うべき、
すなわち夫婦同時にスタートした方が良い結果が
得られます。
不妊診療の一般的な知識-3
◆女性側に問題があった場合でも精子の質を向上させる
ことによって 女性の治療をより軽いものに出来るかも
しれません
.
◆生まれてくるお子様の先天異常の発生も少なくることにも
繋がります
◆診察時精巣内に腫瘤、すなわち精巣癌が見つかる
事があります。 精液検査にて精子濃度が正常範囲より
低い場合には精巣癌の頻度が高くなります。
不 妊 症 の 頻 度
妊娠希望夫婦の
10~15%が不妊症
41%
11%
女性のみ
男女とも
男性のみ
不明
不妊症(
WHO 調査)
24%
24%
半分は
男性が原因
生殖路の解剖
(1)造精機能障害
特発性造精機能障害 63.2%
精索静脈瘤 25.1%
染色体異常 2.3%
(Kleinefilter症候群) (1.7%)
(2)精路通過障害
閉塞性無精子症(造精機能正常) 4.9%
(3)副性器障害
前立腺炎 0.9%
(4)性機能障害 2.2%
男性不妊症の原因
男性不妊症外来を受診したらどんなことをされるの!
1.問診(現在ご病気は。手術の既往は停留精巣・鼠径ヘルニ
ア術の有無。長期の薬使用は。(発毛剤?)
喫煙暦。夫婦生活はOKか。
2.理学的所見 ;身長、体重(メタボ?)、指極長
視診: 顎ひげ、腋毛、恥毛の状態
外性器の発育度
触診: 精巣サイズ、精巣上体
精管、精索静脈瘤、前立腺
3.精液検査
; 精液量、精子濃度、精子運動率、
4.内分泌検査 ; FSH、LH、テストステロン(男性ホルモン)
造精機能障害のスクリーニングに必要な情報
◇
精巣サイズ
◇
精液検査(最低2回、無精子の場合は
複数回必要)
◇
内分泌検査;特に無精子症の場合には
原因のタイプを決めるのに重要
診断手順
造精機能障害の種類
• 無精子症
精液中に精子を認めないーーー決して諦めてはいけない
• 乏精子症
精液中に精子が1500万/ml未満の状態
• 精子無力症
精子の運動が悪い状態 運動率40 %未満
• 精子奇形症
奇形率が
15%以上
WHOの基準にもとづいて
妊娠は精子側の問題だけでなく卵の性質も重要である。
高度乏精子症であっても妊娠する、精子が沢山あっても妊娠しないこともある。
精液検査の重要なポイント
◆ 禁欲期間が重要です。3日から5日精液を出さずに来院
◆ 検査日に排卵日が近い場合には検査を回避しても良い
◆ 自宅で採取した場合、容器を外気にあてないこと。
運動率に影響。冬場には容器をタオルにくるみ寒さを回避
◆ 採取時こぼれてしまった場合には申告してください。
◆ 1度の検査でがっかりしないこと。変動を伴う検査である。
◆ 市販の検査キットでの結果を信用しないで下さい。
視床下部ー下垂体ー性腺軸による精巣機能のホルモン調節
精巣
視床下部
下垂体
無精子症とは。→
諦めない
◆ 閉塞性無精子症
精子の通過する路(精路)の通過障害を来して無精子となる
代表的疾患;精管結紮術後、先天性両側精管欠損症、
多くの患者様は原因不明の精巣上体管閉塞症
幼少時の両側の鼠径ヘルニア手術後
診断ポイント;精巣サイズ・内分泌環境が正常
◆ 非閉塞性無精子症
代表的疾患;クラインフェルター症候群、
その他多くの症例が精巣原発の無精子症
診断ポイント;多くが精巣サイズが小さめ、
内分泌検査での異常(低・高ゴナドトロピン性類宦官症)
性・常染色体の異常(47XXY,他)
◆ 閉塞性無精子症
精巣内で精子が作られているタイプ
精子の通過する路(精路)の通過障害を来して無精子となる
診断ポイント;精巣サイズが正常で
内分泌検査も正常の無精子症
代表的疾患;精管結紮術後、先天性両側精管欠損症、
幼少時の鼠径ヘルニア術後の影響
多くの患者様は原因不明の精巣上体管閉塞症
精路再建術により精子が出現し自然妊娠も期待される
精管造影
正常像
異常像
日常診療のための泌尿器科診断学:
男性不妊症の検査、インターメディカより引用
◆ 非閉塞性無精子症
(精巣で精子が作られていないタイプ)
両者とも精巣サイズは小さめです
。
ホルモン検査で2種類の病気に分かれます。
① 原発性造精機能障害:
FSH,LH高値
Ⅰ原因不明のタイプで患者様は多い⇒諦めてはいけない
Ⅱ性染色体異常のクラインフェルター症候群(47XXY)
②
続発性造精機能障害:
FSH,LH低値(下垂体の病気)
低ゴナドトロピン性無精子症
嗅覚異常を伴うことがある:コールマン症候群
患者様の数は少ないがホルモン療法により精子が
Y染色体微小欠失とは
◆
Y染色体微小欠失は、クラインフェルター症候群に
次いで
2番目に多い男性不妊症の遺伝学的原因
◆
Y染色体微小欠失の診断により、無精子症の
原因を明らかにしたり、欠失の種類によって
MD-TESEを行なっても精巣内精子が回収出来ない、
手術を断念して頂くすなわち手術可能かどうかの
予測検査が可能になった。
◆
Y染色体微小欠失は、無精子症や高度乏精子症の
患者の
10-15%に認められる
無精子症例の中に
低ゴナドトロピン性性腺機能低下症あり
視床下部-下垂体系の機能低下に起因する性腺
機能障害の総称
Male Hypogonadotropic Hypogonadism
精巣サイズがやや小さい。
FSH, LH, テストステロン値が低い
• 臨床所見
– 思春期前の発症では
二次性徴の欠如、外性器の発育不全
– 成人期以降では
不妊症、性欲低下、勃起障害、腋毛・陰毛の減少
外性器発育不全
• 検査所見
– 血中ゴナドトロピンがFSH,LH 1.0mIU/ml未満
– テストステロンが1.0ng/ml
– ゴナドトロピン分泌刺激試験で低反応(ただし、視床下部性
では、正常反応を示すことがある)
– hCG負荷試験にて性ホルモン分泌反応がある
低ゴナドトロピン性男子性腺機能低下症の診断
無精子・無精液症から精子を出現させる
ここが男性不妊専門医の腕の見せ所
無
精子を生む
外科手術により造精機能が改善しうる疾患がある
ー男性不妊専門医は精索静脈瘤に注目ー
精索静脈瘤とは陰嚢内に静脈血が溜まる病態。腫瘤として膨らんでいることもある
思春期以降の男性に見られ多くの患者様は左側に発生しますが、
両側に認めることもある
陰嚢内の静脈叢の発生機序は左腎静脈から左内精索静脈への静脈血の逆流説
どうして診断するのか;
① 立位で下腹部に力を入れると陰嚢内の静脈が浮き出てくる
② 超音波検査で静脈が太い、逆流現象を捉える
精索静脈瘤罹患率 若年男性で20%、 不妊症患者で
30-40%
最近増加して来た男性不妊症の疾患
性機能障害
患者様は恥ずかしいとのことで直接私どもに話さないことから、医療
側から聞いて差し上げないといけない。パートナーの協力が必要で
あることから夫婦で受診を勧める
1.無精液症、精液減少症の方は膀胱内に精液が逆行性してしまうこと
がある。糖尿病、悪性腫瘍リンパ節廓清術後の方に起こる。
2.膣内射精障害; 排卵日に性行為をするようにとのタイミング法の指
導によって発症することがある。心因性であるため治療が困難である
ことから第1子は人工授精を勧めている。通常お子様を作ろうとされ
る方は排卵日を意識せず夫婦生活をして頂きたい。
◆未婚・既婚の悪性腫瘍患者さんへ
• 診断がついたら主治医の治療の説明(化学療法
、手術療法、放射線療法)後、治療開始前までに
精子を凍結保存しておこう。半永久に保存可能で
ある。治療を急ぐあまり現在でもおきざりにされる
ことがある。
◆ 脊損、透析中の患者様もサポート出来ます
男性不妊専門医からのメッセージ
◆無精子症例は精巣サイズを見てほしい。ホルモン検査は
必須である
◆無精子症だからといって直ちに精巣内精子回収法に走らない
◆非閉塞性無精子症例の中でホルモン療法にて射出精子の
出現をみることがある。
◆精液量が減少している症例は逆行性射精、射精管閉塞・
精嚢異常等の鑑別診断を行い、治療が可能になる症例
がある。
◆患者さんに無精子症だからといって決して諦めないよう指導する。
男性不妊専門医は現在
「NPO法人男性不妊ドクターズ」
を設立しました。不妊カップルの皆様への啓発活動を行って
まいります。男性諸君、積極的に愛するパートのために御夫
婦一緒に受診して頂くようお勧め致します。ホームページを
御覧ください。本日の講演内容も見れます。
◆ 行政へのお願い
少子化対策の一環として男性不妊患者様
にも不妊治療の公的支援をぜひとも!!!
御清聴有難うございました。