有効数字の考え方
(改訂2.5)数値計算の結果は不確実な値を含む
有効数字
2
桁なら
1 → 1.0
0.3 → 0.30
120 → 1.2 × 10
2598 → 6.0 × 10
2有効数字の意味
理科では数学と違い,有効数字というルールがある。有効数字をいい 加減に扱っていると入試で少しずつ減点され,泣くことになる場合があ る。図のようにメスシリンダーで液体の体積を測るとき,体積vを読み 取る と7.3m < v < 7.4m であ ること がわ かる。さら に最小 目盛り の 1/10まで読むと,7.37くらいである。7.36や7.38でもいいが,7.31で はないし,ましてや7.3724と断定もできない。しかし7.37までは信頼 できるので,有効数字は3桁となる。 また,デジタル目盛を使った場合でも同じである。図のはにわの質量 は9.81gと表示されているが,9.805~9.814の枠内である。9.81は有効数字3桁である。実際問題の答え方
有効数字は意味を知っておく必要もあるが,どちらかというと理屈よりも問題の答え方に 神経を尖らせてほしい。計算結果が整数値で求まったときや割り切れたとき,また深い小数 になったときはつい忘れがちなので注意したい。以下に2桁の例を挙げる。 5.00 × 0.2 = 1 → 1.0 0.40 × 0.5 = 0.2 → 0.20 9828 → 9800とし9.8 × 103 0.071428 · · · → 0.071とし7.1 × 10−2 0.で始まる場合の桁数のカウント方法には気をつけてもらいたい。100を超えるときや0.1 未 満 の と き は 極力a × 10n(nは 整 数) の よ う な 表 記 を す る 。ち な み に1 a < 10で あ り, 35 × 103 のような表記はしない。あくまで3.5 × 104とする。 ●途中計算 65.2 × 0.834 ÷ 1247を有効数字2桁で答える場合,皆さんならどう処理され るだろうか? これをくそ真面目にやると4.36060· · · × 10−2だが,2桁で答えるときは 65.2 × 0.834 = 54.3768 54.4 のように,3桁に削って計算すればよい。そして 65.2 × 0.834 ÷ 1247 1250 =54.4 54401250× 10−2= 4.352 × 10−2 削りな がら計算した 値もくそ真面 目に求めた 値もどちらも3桁 目を 四捨五 入すると4.4 × 10−2と なる。このよ うに,2桁で 答 えるときは1桁多めにとって計算するだけで十分である。 気をつけてもらいたいのが,2桁で答える問題は途中は2桁に してはいけないことで ある。この方法 では誤差 が大き くなって しまう。必ず1桁多くとるか,もしくは分数のまま計算したい。 また,有効数字何桁で答えるかは常日頃から計算結果が出た後には問題文を読み直す習慣を つけてほしい。有効数字で何ヶ所も間違えると本番では非常に危険なのである。化学の基本知識
覚えておきたい元素記号
番号 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 元素 H He Li Be B C N O F Ne 番号 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 元素 Na Mg Al Si P S Cl Ar K Ca 水兵リーベ 僕のお船 七曲り ships クラークか 質量 電荷 陽子 1 +1 電子 0 −1 中性子 1 0基本単位の原子
物質を 細か く分 けて いく と,分子,そ して分 子を さら に細 かく すると原子となる。その原子はさらに細かく分けることができる。 正の 電気 をもつ陽子と 負の 電子を もつ電子と 電気的 に0の中性子 から成る。たとえば63Liのリチウム6を考えてみる。6というのは 質量数であり,陽子と中性子の個数のことである。また,電子はこ の2つに比べて非常に小さいので,質量は0とみなしている。 まず,陽子の数が原子番号,元素記号を決定する。原子番号が増 え ると電 子も 同じ 数だけ 増え る。また ,中性 子も 陽子 の数 が1個 増えるごとに増える。同位体と同素体
陽子と 電子 の数 で化学 的性 質は 決まる が,中性 子の数 が違 うも のがある。これらを同位体(アイソトープ)という。126Cと136Cは 中性子の数が1個だけ違う。このようなもののことを指す。他に水 素(1H)と重水素(2H)と三重水素(3H)がある。 また,酸素O2とオゾンO3の関係や,炭素CとダイヤモンドCのような関係は同素体と よばれる。同位体は原子のこと,同素体は物質のことであるから,間違えないようにしたい。 軌道殻 K L M N 電子 2 8 18 32 中心からn番目の軌道に入る電 子数は2n2個電子の軌道
陽子と中性子でできたものを原子核という。太陽と惑星か らなる太陽系のようにその原子核の周りを電子が決まった軌 道で公転しているのである。その軌道のことをその軌道のこ とを電子殻のようにいう。電子殻は内側からK殻,L殻,M 殻…の順に名前をつける。また,最も外側の電子殻を最外殻 といい,その軌道を回る電子を最外殻電子という。各殻には 入る ことの でき る電子 の数が 決まってお り,K殻に は2個, L殻には8個,M殻には18個…と内側からn番目の殻には 2n2 個の電子が入る。 周期表で1段下,つまり1周期だけ上がると,軌道が増え るということになる。同じ1族の水素,リチウム,ナトリウ ム…の順で,電子殻が1つずつ増えていく。イ オ ン
まず,陽イオンと陰イオンを
正確に覚える
そのあとプラスとマイナスの数が合うように
イオンを準備する
化学式の書き方に慣れる
イオンと価数
原 子 は 正 の電 気 を 持 つ 陽 子 と ,負 の 電 気 を 持つ 電 子 と 帯 電 し て い な い 中性 子 か ら な る 。陽 子 の 数 と 電 子 の数 が 一 致 し な いと,正または負に帯電する。これをイオンとよぶ。電子が少 なく,正に帯電したものを陽イオン,電子が多く負に帯電した ものを陰イオンとよぶ。また,学術用語としては「プラスイオ ン」や「マイナスイオン」という呼称は使わないので気をつけてもらいたい。覚えるべきイオン
高校化学においては物質名を覚えてなんぼの世界である。もう「あとで」ではなく,「今す ぐに」覚えてもらいたい。英語で言うなら英単語を暗記するようなものである。まずは陰イ オンから。 名 前 イオン式 名 前 イオン式 名 前 イオン式 塩化物イオン Cl− 酸化物イオン O2− リン酸イオン PO43− フッ化物イオン F− 硫化物イオン S2− チオ硫酸イオン S2O32− 臭化物イオン Br− 硫酸イオン SO42− シアン化物イオン CN− ヨウ化物イオン I− 炭酸イオン CO32− 過マンガン酸イオン MnO4− 水酸化物イオン OH− クロム酸イオン CrO42− 炭酸水素イオン HCO3− 二クロム酸イオン Cr2O72− 硝酸イオン NO3− 次に陽イオンも次のものを覚えたい。なお,以下の表はすべて「イオン」を省略している。 名 前 イオン式 名 前 イオン式 名 前 イオン式 水 素 H+ マグネシウム Mg2+ 亜 鉛 Zn2+ アンモニウム NH4+ カルシウム Ca2+ アルミニウム Al3+ オキソニウム H3O+ バリウム Ba2+ クロム(III) Cr3+ ナトリウム Na+ 銅(II) Cu2+ 銀(I) Ag+ カリウム K+ 鉄(II) Fe2+ リチウム Li+ 鉄(III) Fe3+ また,陽イオンと陰イオンは結合して化合物を作る。最も身近なのが塩化ナトリウムNaCl であろう。Na + とCl−が合わさってNaClとなった。 イオンで化合物を作るときは電荷が0になるようにする。塩化カルシウムなら,陽イオン のカルシウムイオンCa2+と陰イオンの 塩化物イオンCl−が結合するが,1個ずつでCaCl とすると, +が1つ余ってしまう。このときCl−は2個必要である。Clが2個というのは O2やH2Oなど と同 様,右 下に小さく 書いて表 現す る。だか らCaCl2となる。また,リン 酸カルシウムは3個のCa2+と2個のPO43−が合体する。Caはこの2文字で元素記号1つ なのでCa3と書くが,PO4が2つというのはカッコで閉じて右下に2と書く。だからリン 酸カルシウムはCa3(PO4)2になる。電気陰性度とイオン化エネルギー
電気陰性度
電子を引きつける強さ
→大きいほど陰イオンになりやすい
第一イオン化エネルギー
電子
1
個をはがすのに必要なエネルギー
→小さいほど陽イオンになりやすい
電気陰性度
水分子H2Oや塩化水素HClを電子式で書くとき,OやClの方 に電子を偏らせて 書く。事実電子はOやClなどの非 金属元素に 集まる。電子を引きつける力があるのである。この強さを電気陰 性度とよび,周期表の希ガスを除く右上(F)が最強で,左下に進 むにつれて弱くなる。電気陰性度はフッ素Fが世の中で最強の原 子である。 参考書の周期表などを見ると,フッ素は4.0,酸素は3.5などの ように電気陰性度の値が記載されている。必ずしも覚える必要はないが,理解を深くするた めには知っていても損はない。 ●希ガスは含めない 電気陰性度は電子を引きつける度合いであり,原子は電子を引きつけ て電子殻内に取り込むことにより陰イオンになる。ところが希ガスは電子殻が飽和状態のた め電子を中に取り込むことができない。つまり電子を積極的に 引きつけようとしないため, 電気陰性度は弱いといえる。第一イオン化エネルギー
原子のまわりを回る電子を引き離すにはエネルギーが必要 である。ホワイトボードなどに貼り付いているマグネットを 外すには力を入れる必要がある。それと同じようなものと考 えればよい。原子から電子1個を引き離すのに必要なエネル ギーを第一イオン化エネルギーとよぶ。周期表の右上がもっ とも大きく,左下に行くにつれ弱くなる。実際,左下には金 属が多い。アルカリ金属やアルカリ土類金属は実際,第一イ オン化エネルギーが小さいため,陽イオンになりやすいので ある。イオン化エネルギーが小さいものほど陽イオンになり やすいということである。 ところで今回は希ガスも含む。ということは希ガスの第一イオン化エネルギーは莫大であ るといえる。実際希ガスは最外殻電子が安定しているためこの状態を保とうとする。希ガス の電子を奪うためには 相当なエネルギーが必要である。 当然ながら第二イオン化エネルギーというものも存在する。2個目の電子を奪うのに必要 なエネルギーである。1族は1個電子を失い,希ガス型電子配置になるので,2個目のの電子 を奪うのは至難の業である。つまりアルカリ 金属の第二イオン化 エネルギーは莫大である。電 子 式
電子式
最外殻電子を・で書く
共有結合
対
(
偶数個
)
の電子を
2
原子で共有
価 電 子
一般的に最外殻電子のことを価電子という。ただし希 ガスの最外殻電子は8個であるが,価電子は0と考える。 価電子数だけ・を元素記号のまわりに書いたものを電子 式という。価電子の数によって電子式は図のようになる ので覚えてもらいたい。共 有 結 合
酸素O2や水素H2などは原子どうしの間で電子を提供し合う共有結合をつくる。 ●水素の場合 水素原子Hは1個の最外殻電子をもっている。すると水素分子H2は最外殻 電子の合計が2個となるが,この2個を2つの水素原子の間で共有することになる。この電 子のことを共有電子対という。 ●酸素の場合 酸素原子は最外殻電子が6個あり,その中の4個は2個ずつのペアを組んで い る。 残り の2つ は1つず つ 単 独 で原 子の ま わり を公 転 して いる が ,こ れを不対電子と よ ぶ。酸素分子O2になると, 片方の酸素原子がもつ2 × 2 = 4個の不対電子が 相手を求めて 他方の酸素原子の 不対電子とペアを組む。そのため,O2の共有結合は4個の電子が関わる ことになる。これは2組の電子 対が間に入り込むので,二重結合ということになる。不 対 電 子
最外殻電子の中でペアになっていないものが不対電子である。そ れ ぞ れ の原 子 が 持 つ 不 対 電 子 の数 は1族1個 ,2族2個 ,13族3 個,14族4個で,15族が3個,16族が2個,17族が1個である。 窒素分子の電子式を考えてみる。窒素は最外殻電子が5個の15族 である。不対電子の数は3個なので図のように書く。窒素原子は3 個の不対電子をもつため,窒素分子N2の原子どうしの間には6個 の電子が入る。そのため,三重結合になる。 二 酸化 炭素 の場合 は, 不対電 子が4個の 炭素 原子1個 と,最外 殻電 子6個 ,うち 不対電 子2個 の酸素 原子2個 が化合 したも ので ある。図のように考えると,炭素と1つの酸素の間には電子が4個 入るので,二重結合となる。極 性 分 子
(改訂2.5)極性分子の例は
水・アンモニア・ハロゲン化水素
電子がある一ヶ所に集まっていて
電気的な偏りが大きい分子
F
,
O
,
N
があると水素結合
極 性
原 子が結合 して分子 ができる とき,共有結合によって原子 ど うし が結 合する 。こ のとき ,組合 せに よっては電 子が一ヶ所 に 偏ってしまい,分子全体として少し電気を帯びることがある。電 気を帯 びた分子のことを極性分子という。 水素原子はH·のように電子を1個だけ持つ。他の原子と共有 結合 すると,その 唯一 の電子が 結合に使わ れるため ,結合の反 対側は陽子がむき出しになり,ちょっとプラスに帯電する。この 「 ちょっと」をギ リシャ文 字のδ(デ ルタ)で表 現し,δ+と 書く。 また, 窒素や 酸素や 塩素 は共有結合 をしてもそ の 反対側に もた くさんの電子があるので,これらの原子はマイナスに帯電する。 これをδ−で表現する。電子を奪う度合いである電気陰性度の大 きく違う原子どうしが結合した分子は極性を持つものが多い。 ●メタン・無極性分子 メタンは中 心にC,4方向がHの正四 面体型の分子であ る。正 に帯電した水 素を4方 向対称 的に 突き 出しているためトータルとしては打ち消し合い,極性はない。 ●窒素・無極性分子 窒素原子は電気陰性度が高く,2つが共有 結合し た 窒素分子 は非 共有電 子 対を2対4個持つ。だから 両方 とも マイナスに 帯電する が,対 称的なので 打ち消し 合い,無 極 性である。塩素Cl2,酸素O2,水素H2なども同様である。 ●塩化水素・極性分子 水素はプラスに帯電する。またClは多量に電子を持つためマイナ スに帯電する。非 対称なのでH側がプラス,Cl側がマイナスで棒磁石 のようになる。 ●水・極性分子 代表的な極性分子である。電子 式を見ると一見対 照的な直線型 に見えるが, 実際は折れ線型である。酸素側がマイナ スに帯電する。 ●アンモニア・極性分子 メタンとの違いは,水素原子が3個しか ない こと である 。N側がマ イナ スに帯 電す る。Nを頂 点,3個 のH を底面三角形とする三角錐型分子になる。水 素 結 合
電気陰性度の高いF,O,Nの各原子と水素でできている極性分子 は,F,O,Nが隣や近くの分子のHとの間に強い引力がはたらく。 F,O,Nと他分子のHとの間の分子間力のことを水素結合という。極性分子は分子どうし が強く引き合うため,沸点が高いという 特徴があり,水素結合分子はそれが 顕著である。イ オ ン 結 晶
A4
個,
B8
個なら
イオン結晶の組成式
AB
2面心立方格子と同じ配列もあるので
時間をムダに費やさない
NaCl
型・
CsCl
型は覚えて損はない
塩化ナトリウム型
上の図の結晶である。●をNa,○をCl,またその逆にしても, 要するに●と○が縦横無尽に1個ずつ交互に並んでいる。これは ●のみを見ると面心立方格子と同じで,4個となる。 ○は中心に 1つ。辺には1/4個ある。立方体の辺は12本ということを知って いれば 1 4× 12 = 3個。よって ○も4個と分かる。ある○を取り 囲んでいる ●の数は何個で あろうか。上の図で中 央にある 白丸に注目する。そうすると 立方体の各面に●があるので, 6個と分かる。ある○を取り囲む○は各辺の○と考えれば,数えなくても12個と分かる。塩化セシウム型
面心立方格子と似ているが,頂点と中心に入っている原子 (イオン)は別物。NaCl型よりはスカスカである。 右図は球体に少々グラデーションをかけてしまったが,○ と●として扱う。●は各頂点にあるため, 1 8× 8 = 1個とな る。また○は堂々と中央に1個ある。中央のイオンには分かりやすくするためイラストに影 を加えたが 実際の塩化セシウム 型構造 ではもちろん 影はない。2種類の原子は1 : 1で存在 することになる。閃亜鉛鉱型
閃亜鉛鉱 というのは 硫化亜鉛ZnSのことである。 ●は面心 立方格子と同じ配列なので,4個とすぐに分かる。面心立方格 子は単位格子の中に4個入っていることはもはや知識として覚 えておくべきである。○は,立方格子の中にすっぽりと入り込 んでいる。このZnS単位格子の図は 若干見づ らいので 見方を 訓練しておきたい。図の右のようにイラストを描くとき,手前 のものは奥のものの上から描くというのは分かると思う。それ で○の位置を見ると,4個すべてが格子の中に入っていること が分かる。単位格子の図は論理的に見ることを心がけたい。 一辺の長さをaとし,この格子を一辺がa/2の立方体に分割すると8個できる。そのうち 手前下にある2つの小さな立方体を見てほしい。1つは8頂点のうち4頂点に●があり,中 央に○が,もう1つは○がないバージョンである。なお,ZnS型において●と○を同じ元素 にすれば正四面体型に原子が並ぶダイヤモンドの結晶格子になる。2次試験を中心とした入 試では意外と出題される。結 晶 の 種 類
共有結合結晶はあらゆる意味で最強
分子結晶はその反対で最弱
金属は自由電子を持つ
イオン結晶は硬いが衝撃には弱い
共有結合結晶は少数派
結 晶
固体で粒子が規則的に並んでいるものを結晶という。結晶には分子 結晶,共有結合結晶,イオン結晶,金属結晶がある。 ●金属結晶 最大 の 特 徴は自由電子を 持ち ,電気伝導性が高いこ と で ある 。 アル ミ や鉄 や 銅な ど が ある 。融 点 は高 い と いう 印 象が あ る が,それは鉄や銅であり,中にはナトリウム(融点約98℃)やカリウ ム(同63℃)がある。延性や展性がある。また,比熱が低く,熱しや すく冷めやすい。 ●イオン結晶 陽 イ オン と 陰 イオ ンが 規 則正 しく 配列 し てい る。電 気的な 静電気力(クーロン力)で結合しているので,ガッチリとつな がっていて結晶は硬い。しかし衝撃には弱く,図のようにイオン配列 がずれると同符号のイオンどうしの反発力により破壊される。硬くも ろい,一見矛盾しているように 思えるが,イオン結晶の特徴である。 電 気伝 導 性は な いが ,水 に 溶け や すい も のな ら 水 溶 液に す るこ と で イオンに電離するので,液体中なら電気 伝導性を持つ。 塩化ナトリウムNaCl,石灰石(炭酸カルシウム)CaCO3,硝酸ナト リウムNaNO3 など,種類は多い。 ●共有結合結晶 原子どうし共有結合によって結合する。どこまでも共有結合で永遠につな がっている。共有結合は強力であるため,結晶も硬い。また,原子どうしが散らばりにくい ため,融点が高いことが挙げられる。また,電気伝導性もないが,黒鉛は例外である。 例 とな る物質 は少 なく,炭素C,ケイ 素Si,二酸化 ケ イ素SiO2,炭化ケイ素SiCを覚えておけば十分である。 ●分子結晶 分子 自身は 共有結 合ででき ている が,その 分子たちが分子間力によって集まって固体となったもの。 ただ集まっているだけなので結合力も弱く,融点も低い。 固体 から 液体に ならず そのま ま気 体にな る昇華する もの が多いのも特徴である。 ドライアイスCO2,ナフタレンC10H8,ヨウ素I2など がある。分子 式を書けるものに多い。結晶の性質
共有結合結 晶はあら ゆる意味で「最 強」である。非常に 硬く,頑丈である。融点も高い, 力 を加 え ても 壊 れに く い。そ して 分 子結 晶 がそ の 逆で 最 弱で あ る。その 覚 え方 で 十分 で あ る。物質によって「個性」が強いのが金属結晶である。モ ル の 概 念
(I)
物質量の定義
1mol
は
6.02 × 10
23個のこと
モルは個数と同じように扱う
分子量・原子量は
1mol
の重さのこと
酸素分子
1mol(6.02 × 10
23個
)
で
32g
標準状態の気体は
1mol
がおよそ
22.4
モ ル と は
定 義 に 従って 忠 実 に 説 明 す る と ,炭 素12(12C)の12g中 に 入っている炭素原子の個数のことをアボガドロ定数という。し かし,一 般にはこういった 説明よりも「6.02 × 1023個のこと を1molという」と定義した方が分かりやすい。アボガドロ定 数をN0やNAなどで表 現する。 単位は[/mol]。 そ し てこ の ア ボ ガ ドロ 定 数 を 使 うと 化 学 の 世 界 は何 か と 便 利なのである。水素原子を1mol集めると,ちょうど1g程度, 窒素原子なら14g…のように,原子,分子,イオンなどを1mol 集めるとおおよそ整数値になり,計算がしやすくなる。話をややこしくするために「モル」 を導入しているわけではなく,シンプルにするための究極の技なのである。 ここで,3mol,5molなどのことを物質量または習慣的にモル数という。式 量
ヘリウムならHe = 4.0,酸素ならO = 16,またナトリウムなら Na = 23という表記を化学ではよく見る。これらの原子を1mol集 めるとこの質量になるという意味である。このように原子1molの 質量(重さ)を原子量という。また,O2= 32やNH3 = 17などは分 子量といい,分子1molの質量(重さ)を表す。また,NaCl = 58.5 は どう だ ろ うか 。塩 化 ナト リ ウム はイオン結晶で あ り,分 子 や原 子 とい う 形 では ない ので ,分 子量 ,原 子量 とは 言わ ない 。こ の場 合は式量という。いずれにせよ,原子量も分子量も式量も1molの 重さと考えればよい。あとは「算数 」の世界である。 分 子量 ,原子 量 ,式 量 には 単 位 は書 か な い。分 子量 を 求 めよ と いう 問 題 のと き ,単 位 を 書いたら減点されるので注意してもらいたい。しかし1molあたりの重さなので,計算上は [g/mol]として考えるとラクである。 ●基本の計算 基本的なモル数の計算を紹介する。有効数字2桁 O = 16, C = 12 ①酸素0.30molは何gか→O2 = 32つまり,1molが32gなので, 0.30 × 32 = 9.6g ②二酸化炭素22gの物質量→CO2 = 44で,1molは44g。 22 44 = 0.50mol ③二酸化炭素22g中の酸素原子は何molか→CO21つをバラすと,Oは2個になる。 CO2が0.50molなので Oは0.50 × 2 = 1.0molモ ル の 概 念
(II)
標準状態の気体
分子量は分子
1mol
の重さ
原子量は原子
1mol
の重さ
標準状態の気体は
1mol
が
22.4
になる
1mol
は
6.02 × 10
23個セットのこと
まずモルで考える
化学全範囲にわたる「公用語」といえるのがこのモルである。分 子 量と 質量 が分 かれ ばモ ル数 も計 算に よって求 めら れる 。気 体の 場合,標準状態のとき1mol集めるとその体積は22.4になる。こ れ は ど の 気 体 で も 同 じ で あ る 。ち な み に 標 準 状 態 と は ,温 度 が0 ℃,圧力が1気圧(1atm・1.01 × 105Pa)のことである。だから酸 素11.2は0.5mol,窒素44.8は2molのようになる。計 算 例
(標準状態,アボガドロ数6.0 × 1023/mol) ①酸素2.24に含まれる酸素原子の個数(有効数字2桁) まず酸素O2の2.24は0.1molなのは上記の通り。O2分 子1粒は2個の酸素原子でできているので,酸素0.1molは 原子0.2molということになる。よって酸素原子の数は 0.2 × 6.0 × 1023= 1.2 × 1023 個 ② ア ン モ ニ ア33.6に 含 ま れ る 水 素 原 子 の 物 質 量[mol](有 効数字3桁) 気 体33.6は1.5molで あ る。 ア ンモ ニ ア 分子 はNH3と 書く。アンモニア分子1つは3個の水素原子と1個の窒素 原子から成る。モルは個数をまとめたものなので,個数と 同じように扱う。アンモニア分子を15個集めると,その中 には水素原子は45個存在する。それと同じく,アンモニア 分子1.5molの中に含まれる水素原子は 1.50 × 3 = 4.50mol ③エチレン(C2H4= 28・気体)20gの標準状態体積[](有効数字2桁) エチレン20gは 20 28[mol]。これは割り切れないので割り算はガマン。化学では計算しない 忍耐力も必要といえる。気体は1molが22.4なので,これを22.4倍すればリットル体積に なる。 20 28 × 22.4 = 1014 × 22.4 = 22414 = 16 ④密度が1.5g/の気体の分子量(有効数字2桁) 基本 的 に分 子 量と い うの は分子1molの重さとい う 認識 よ い。こ の気体は1で1.5gという意味である。1mol集めると,22.4になる ので分子量,すなわち1molの重さ,つまり22.4の重さは 1.5 × 22.4 = 33.6 34 34係数決定の方法
Ⅰ
.
両辺に
1
回ずつしか登場していない
元素を探し好きな係数をつける
Ⅱ
.
その他の
1
回ずつしか登場していない
元素の係数を文字でおく
Ⅲ
.
残りものの係数も文字でおく
理屈よりも練習が大切
化学反応式の係数を決めるのは基本であり,化学をやる以上,何かと必要である。だから なるべく早めに身につけてもらいたい内 容である。例題① ( )Fe2O3+ ( )CO → ( )Fe + ( )CO2
■解答■ まず手順Iより,鉄Feと炭素Cは左右の辺で1回ずつしか出ていない。まずは
Fe2O3の係数を1にしてみる。すると右辺のFeの係数は自動的に2となる。また, 左辺の
CはCOのみ, 右辺のCはCO2のみだからCOとCO2は どちらも係数が同じに なるはず
なのでxとでもおく。ここで勝手に2とか3にしてはいけない。それではFeとの関係がな
くなってしまう。好きな数字にできるのは 初めの1回だけである。
( 1 )Fe2O3+ ( x )CO → ( 2 )Fe + ( x )CO2
とする。そして両辺のOの数は 等しいのでxで方程式を立てる。すると
3 + x = 2x x = 3
以上から Fe2O3+ 3CO → 2Fe + 3CO2
例題② ( )MnO2+ ( )HCl → ( )MnCl2+ ( )H2O + ( )Cl2 ■解答■ 塩素を発生させる有名な式。ややこしく見えるが,MnとOとHは左辺,右辺ど ちらを見ても1回ずつしか登場していないので,まず左辺のMnO2の係数を1とする。そう すれば右辺のMnCl2はMnのみに注目すればこちらの係数も自ずと1になる。また,MnO2 の係数が1ならOが2個になり,右辺のH2Oは2個必要になる。その影響から,Hが4個 になるから左辺のHClは4個。あとはCl2の係数をxとでもおく。 ( 1 )MnO2+ ( 4 )HCl → ( 1 )MnCl2+ ( 2 )H2O + ( x )Cl2 Clについて 4 = 2 + 2x x = 1。 結論は MnO2+ 4HCl → MnCl2+ 2H2O + Cl2
例題③ ( )Cu + ( )HNO3→ ( )Cu(NO3)2+ ( )NO + ( )H2O ■解答■ 希硝酸と銅の反応であり,最 終的には 覚えてもらいたい反応式である。
まずCuとCu(NO3)2の係数が同じであり,1とする。Hも左辺はHNO3,右辺はH2Oで
1回ずつしか出ていないため,H2Oの係数をxとしてみる。すると左辺はHが2x個になる ため,HNO3の係数2xとなる。NOの係数は直接出しにくいのでyとおく。
( 1 )Cu + ( 2x )HNO3 → ( 1 )Cu(NO3)2+ ( y )NO + ( x )H2O
Nについて 2x = 2 + y Oについて 6x = 6 + y + x x = 43, y = 2 3 分数係数になってしまったが,3倍して分母を払えばよい。
3Cu + 8HNO3 → 3Cu(NO3)2+ 2NO + 4H2O
化学反応式の定数決定はあくまでも見たことのない反応式を完成させる手法である。例題 ①~③で扱った化学反応式は,実はすべて覚えてほしい 代表的な化学 反応式である。
化学反応式の使い方
化学反応式の係数は
反応するときのモル比を表す
左図の場合,
7mol
の窒素の完全反応で
14mol
のアンモニアが生成する
分子量や
22.4/mol
も活用
モルがすべて
化学反応式の係数は,反応するときの比を表す。上は 窒素1molと水素3mol からアンモ ニアが2molできるという反応である。もっと 複雑な反応でも同じである。例としてプ ロピ レンC3H6の完全燃焼を考えてみる。化学反応式は 2C3H6+ 9O2 → 6CO2+ 6H2Oとなる。これは2molのプロピレンに9molの酸素,つまり,a[mol]のプロピレンには
9 2a[mol]
の酸素が反応することを表す。a[mol]のプロピレンなら,二酸化炭素は3a[mol],水も3a[mol]
である。では,プロピレン3.0mol,酸素15molを混合し,プ ロピレンを完全燃焼したとす る。プ ロピレン3.0molに必要な酸素は3.0 × 92 = 13.5molで……なんて 頭の中だけで考え てやっていると「あー,もう!」と嫌になってくるので,下のような表を 書いてみる。 [mol] 2C3H6 + 9O2 → 6CO2 + 6H2O 初期の量 3.0 15 0 0 反応する量 −3.0 −13.5 +9.0 +9.0 ←係数比 反応後 0 1.5 9.0 9.0 反 応の 行 の み,係 数を 使 う。化学 反 応 式の 左 辺 は「 材 料 」で ,右 辺は「 製品 」で ある 。反 応 する とき は 左辺 の 物質は減り, 右辺の物質は増加する。
化学反応後の処理
では 具 体的 にこ れら の化学 反応 式を 使って計 算する 方 法を紹介する。有効数字は2桁とし,原子量はCO2 = 44,H2O = 18とする。 二酸化炭素は9.0mol発生したので 44 × 9.0 = 396 4.0 × 102 また,水は18 × 9.0 = 162 1.6 × 102 これより, 二酸化炭素 :4.0 × 102g,水:1.6 × 102g 水蒸気の体積を無視し,残った気体の標準状態における体積を求めよ,という問題はどう すればよいか。とりあえず残った気体のモル数をすべて求め,それに22.4をかければよい。 上の表の通りであるが,酸素も一部が残っているため,二酸化炭素とこれを足さなければな らない。すると,これらの合計は10.5mol となる。 10.5 × 22.4 = 235.2 2.4 × 102 化学反応式を使う計算問題では急がば回れの精神で,時間を惜しまずに表を書いて丁寧に 考えたい。その方が素早く問題を解くことができるうえ,ケアレスミスなども減る。面倒く さがって頭の中で考えると 混乱し,かえって 遅くなることが多いのである。混合物の成分計算
混合物を反応させるとき
各物質は独立して反応する
したがって,
2
つの化学反応式を
辺々足したり引いたり代入したりしない
単位に注意する
混合物は独立して反応
例えば鉄とアルミニウムの混合物(ただ混ざっただけのもの) の比率を求めるとき,その混合物の各成分の量(モル数か質量) をxやyな ど とお く。そし て 塩 酸 をか け て 発 生 した 水 素の 量 や加熱してできた酸化物の質量などのデータから,連立方程式 を立てて考えるという方法が一 般的である。 鉄とアルミニウムの混合物が3.61gある。これに塩酸を加え ると気体が 標準状態換算で2.128発生した。鉄の質量 パーセ ント を求 めて みたい 。有 効数字 は2桁 ,Fe = 56,Al = 27と する。まず化学反応式を書くことから始める。 Fe + 2HCl → FeCl2+ H2 2Al + 6HCl → 2AlCl3+ 3H2これを見ると鉄は1molにつき水素が1mol,アルミニウムは1molにつき水素が3
2mol発生
する。ここで,間違ってもしてはいけないことがある。2つの式を足し合わせて
×Fe + 2Al + 8HCl → FeCl2+ 2AlCl3+ 4H2×
とは,何が何でもやっていはいけない。このやり方は,FeとAlがモル比にして1 : 2とい うことを自分で決め付けていることになり,根底から間違っているのである。 混合物の場合,各物質がお互いに関わり合わずに反応するので,鉄をx[g],アルミニウム をy[g]とする。このとき,合計3.61gなので, x + y = 3.61 · · · ·① 次に,発生した水素を考える。x,yはグラム,水素はリット ル,化学反応式はモルと単位がバラバラなので,まず揃えるこ とが必要である。モルに統一すると分かりやすい。 水素2.128は, 2.128 22.4 = 0.095mol。これは 鉄と反応した分 と ア ル ミ ニ ウム と 反 応 し た 分 の 合計 で あ る 。化学 反 応 式 を 見 る と 鉄1molか ら 水素1molが,ア ル ミニ ウ ム1molか ら 水 素
3 2molが発生する。鉄は x 56molなので,鉄によって発生する水 素は x 56mol,アルミニウムによって 発生する水素は 3 2 × y27mol。これらを合わせると前 述 の0.095molだから, x 56 +32× y27 = 0.095· · · ·② ①,②よりx = 2.8g,y = 0.81g。鉄の含有率は 2.8 3.61× 100 = 77.56 · · · 78 78%