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卒業論文 ヒノキ人工林の林分構造と立木価格評価, および小面積調査法の検討 岐阜大学応用生物科学部生産環境科学課程環境生態科学コース附属岐阜フィールド科学教育研究センター山地管理学研究室 二村真美

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卒業論文

ヒノキ人工林の林分構造と立木価格評価,および小面積調査法の検討

岐阜大学 応用生物科学部 生産環境科学課程 環境生態科学コース 附属岐阜フィールド科学教育研究センター 山地管理学研究室 二村 真美

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目次

要旨 ... 2 1.はじめに ... 3 2.調査地と方法 ... 5 (1)調査地の概要 ... 5 (2)調査方法 ... 6 (3)相対幹曲線を利用するために ... 8 (4)調査器機 ... 9 3.調査方法 ... 12 (1)作業道測量 ... 12 (2)毎木調査 ... 15 (3)樹木位置図の作成 ... 16 (4)樹皮厚 ... 17 (5)価値評価 ... 18 (6)丸太の価格・収穫量・落札価格の予想... 21 (7)小面積調査法の検討 ... 22 4.調査結果 ... 23 (1)作業道測量 ... 23 (2)毎木調査 ... 24 (3)樹木位置図 ... 26 (4)樹皮厚 ... 28 (5)価値評価 ... 30 (6)丸太の価格・収穫量・落札価格の予想... 33 (7)小面積調査法の検討 ... 41 5.考察 ... 46 (1)調査地の林分構造 ... 46 (2)立木価格評価 ... 47 (3)小面積調査法の検討 ... 48 6.おわりに ... 49 7.引用・参考文献 ... 50 8.付表・付図 ... 51

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要旨

【目的】森林経営おいて,森林の立木価格を知ることは重要である。広範囲の森林での毎木 調査は多くの労力を要するため,通常は小面積の標本地法が用いられる。その適用に際して, 小面積の標本地法から得られる推定値が森林全体の値と比較しどのような特徴をもつのか明 らかにする必要がある。 本研究ではヒノキ人工林約1ha を対象として,全立木の毎木調査を行い,林分構造の把握 と立木価格評価を行った。立木の末口径の推定には相対幹曲線式(直井,2010)を用いた。 次に小面積調査法の検討では,岐阜県の補助金事業で実施されている 10m×10m(0.01ha) の標本地調査法を検討した。さらに標本地から推定した林分評価(材積)が,調査地全体の 全数調査によって明らかにされた現実の値と比較し,どのような特徴をもつのか考察した。 【調査地と方法】調査地は岐阜県下呂市にある位山演習林1-ろ林小班において,50 年生ヒ ノキ人工林が分布する全範囲 1.04ha とした。まず作業道測量,毎木調査(胸高直径,樹高, 樹種),樹木位置図作成を行った。次に樹皮厚の調査,曲がりや樹幹の傷などの丸太の価値評 価を行った。そして調査結果から,調査地の人工林としての林分構造の把握,立木価格評価 を行った。標本地調査法の適応精度については,樹木位置図の中で林縁・スギ林を除き無作 為に 100 ヶ所の調査区を設置し材積推定を行い,実際の値と比較した。 【結果と考察】全調査を通じて,全立木本数は 1071 本,うちヒノキは 899 本,立木密度は 1030 本/ha,ヒノキのみでは 864 本/ha であった。林野庁材積式よりヒノキ立木材積は 301.7 m3,290.1 m3 /ha,収量比数は 0.75 であった。 調査地内のヒノキを皆伐し,立木1本から長さ 3.1mの丸太を最大3本採材した際の落札価 格を試算した。丸太価格は実際の下呂総合木材市売市場での落札価格をもとにした。その結 果丸太の収穫本数は 2348 本,丸太材積は 179.3 m3 ,落札予想価格は 300.2 万円となった。 標本地調査の検討で標本地を1個選ぶとき,立木材積の推定値は最大値 604.2m3 /ha,最小 値 129.6m3 /ha,平均値 357.4 m3 /ha,標準偏差は 111.6 m3 /ha であった。標本地数と変動係 数の関係について,標本地数 20 以上で変動係数は5%以下に収束することが示された。しか し標本地数が十分に大きい場合も,推定値は現実の値より過大であった。本研究の検討での 推定割合は,材積で 128%,立木密度で 115%と評価された。推定材積は面積当たりで算出し ており,森林内には沢など樹木のない部分や対象樹種以外が多い場所も含まれている。標本 抽出地が,ヒノキが均質に成立している場所から抽出されたため,面積当たりの立木材積は 過大推定されたと考えられる。

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1.はじめに

日本は国土の3分の2が森林で覆われた緑豊かな国である。日本の森林面積は 2512 万 ha で,このうち人工林は 1036 万 ha,41%である(森林・林業白書 平成 20 年版)。戦後の拡大 造林政策で植栽された人工林は,主伐の時期を迎えている。しかし,日本の林業は低迷して おり,その要因として木材価格の下落や後継者不足が挙げられる。 平成 19 年のスギ中丸太(径 14~22cm,長 3.65~4.0m)とヒノキ中丸太(径 14~22cm,長 3.65~4.0m)の木材価格は,それぞれ 13000 円/m3,25400 円/m3である。これは,丸太価 格の高かった昭和 55 年の価格(スギ 38700 円/m3 ,ヒノキ 74400 円/m3)と比較すると,ス ギ・ヒノキともに 34%の価格である(農林水産省「木材需給累年報告書」,「木材価格」)。こ のようにスギ・ヒノキともに木材価格は下落している。山村においては,この 40 年間で人口 が6割に減少していることに加え,高齢化も進んできており,かつてのように家族や集落の 助力などを得つつ森林所有者が植栽,保育,間伐,主伐等の作業を行うことは困難となりつ つある(森林・林業白書 平成 20 年版)。 人工林において多面的機能を発揮させるためには,適切な森林整備がかかせない。森林の 多面的機能には生物多様性保全機能,地球環境保全機能,土砂災害防止機能,水源涵養機能 などがあり,安全で安心な暮らしに重要な役割を果たしている。また日本は,京都議定書で 1300 万炭素トンを森林による二酸化炭素吸収により確保することとしている(森林・林業白 書 平成 20 年版)。林業の低迷により,適切な森林整備がなされないことが,森林の多面的 機能の喪失へとつながると考えられる。 適切な森林整備や健全な林業経営には,森林の林分構造や立木価格を知ることが重要であ る。森林の林分構造や立木価格を知るには,定量的な現地調査が必要である。しかし,大面 積森林調査では全部の木を調査することは実行上からも費用の面からも不可能なことが多く, 森林材積は通常サンプル調査により推定される(西沢,1972)。サンプル調査には,標準地調 査法や標本地調査法などがある。標準地調査法とは,森林全体の代表的だと考えられる場所 を標準地として,調査する方法である。標本地調査法とは,森林内を無作為に抽出し調査す る方法である。これらは森林全体の調査を行わないため,サンプリング誤差を評価し,推定 値の信頼度やどの位の標本抽出を行う必要があるかを調査前に知らなければならない(西沢, 1972)。森林全体の評価の際には,小面積での調査結果による推定値が森林全体の値に対し, どのような特徴をもつのか十分に明らかにしておく必要がある。 そこで本研究では,ヒノキ人工林を対象として,全立木の毎木調査を行い,調査地全体の 林分構造の把握と立木価格評価を行った。毎木調査の結果から,調査地全体の立木材積など

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立木価格の評価には,実際の木材市場での丸太落札価格を使用した。丸太材積は,丸太の 長さ(以下径級とする)と,立木状態で樹幹上方にある木口(以下末口とする)の直径,つ まり末口径から末口二乗法により求められる。丸太の末口径を求める方法として,都竹ら (2006)は,それぞれの末口径を枝打ち梯子で樹に登り,直径巻尺による実測を行っている。 しかし,これには非常に多くの労力を要する。そこで今回,位山演習林内で作成された相対 幹曲線(直井,2010)を使用し,丸太の末口径を推定した。また,相対幹曲線式だけでは求 められない,丸太の価格形成に関する質の評価を行った。 丸太の価格は材積からおおよその価格が決まる。さらに,まっすぐな丸太などは柱材など に利用しやすく,落札価格が高くなる。逆に,曲がっている丸太などは落札価格が安くなる。 実際,立木を伐採し丸太にする際,曲がっている部分や傷のある部分は丸太にせず廃棄した り,節が多く安く落札されそうならば出荷しなかったりする。これら丸太の材積ではなく質 に着目し,丸太の価値評価として,調査を行った。価値評価を行う項目は,素材の日本農林 規格(農林水産省,2007)を参考にし,節(枝・枝跡),曲がり,へび下り(樹幹の傷)とし た。 小面積調査に関して,岐阜県の造林補助事業で実施されている補助金交付制度を参考にし た。この中では森林調査には標準地として 100m2(0.01ha)以上の正方形あるいは円形を設定 するとされている(岐阜県林政部,2009)。本研究では 10m×10m(0.01ha)の正方形を小面 積の調査地形状とした。本研究の検討では,調査地の林縁と対象樹種ヒノキのほぼないスギ 林を除いた部分から,無作為抽出による標本地を設定した。そして標本地の数により,推定 値がどのように変化するか,現実値と比較しどのような特徴をもつか,比較・検討を行った。

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2.調査地と方法

(1)調査地の概要

調査地は,岐阜県下呂市萩原町に位置する岐阜大学応用生物科学部附属位山演習林1-ろ 林小班内の,ヒノキ人工林が分布する全範囲約1ha(10000m2)とした。調査地の境界は1 -ろ林小班の境界でもある林縁のカラマツ林手前までと,1-ろ林小班内を通っている作業 道とし,作業道から斜面上側を調査地とした。斜面方位は西~北西である。緯度と経度は北 緯 36°00’34~40”,東経 137°12’33~40”,標高は 1035~1073m,斜面傾斜は 18~25 度であ る。気候メッシュファイル(気象庁,1985,1989)によると,平均気温は 8.80℃,温量指数 は暖かさの指数が 72.54,寒さの指数が-26.98 である。年降水量は 2071mm,平年積雪深は 64cm である。 1-ろ林小班は 1960 年に植栽された約 50 年生のスギ・ヒノキ人工林である。1-ろ林小 班内の植栽樹種はヒノキ,スギ,カラマツ(数本)のみである。調査地の一部にはスギの植 栽地が含まれる。林内は間伐が進んでおらず,林床の一部でササがみられる以外,植生はあ まりみられない(写真-1.)。林内には他に針葉樹のアカマツ,ウラジロモミ,広葉樹のダ ケカンバ,ホオノキ,ミズナラなどが生育している。

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(2)調査方法

調査地内をB~Jの9つの区画に分けた(写真-2.)。区画は作業性を考慮し尾根線或い は谷線で分けた。そのため区画ごとの面積や樹木本数,樹木密度は一定ではない。 調査内容は,1-ろ林小班内に通っている作業道測量を行い,区画ごとに毎木調査(胸高 直径(山側 1.2mの高さの直径,以下胸高直径とする),樹高,樹種)と樹木位置図の作成を 調査地内の樹高2m以上の樹木について実施した。さらに樹皮厚の調査,丸太の価値評価の 調査をC区画内で行った。C区画は,傾斜角が約 18 度と緩やかで下層植生がほぼない。C区 画内の一部で 2008 年9月と 2009 年9月に夏季フィールド実習により間伐が行われている(写 真-3.)。以下,この実習地を間伐区とする(写真-4.)。2009 年9月の間伐で得られた丸 太を用いて樹皮厚の調査を行い,2009 年9月の間伐以降の保残木について丸太の価値評価を 行った。さらに,演習林の落札木材価格から,演習林材の落札価格予想を行い,相対幹曲線 を利用した丸太の収穫予想,落札価格予想を行った。 また,小面積調査法の検討として,小面積調査での推定値と,毎木調査から得られる調査 地全体の現実の値をもとに,その推定精度や特徴について検討した。 写真-2.調査地区画分け (赤線:1-ろ境界線,黄線:作業道,水色線:区画境界線)

J I

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写真-3.調査地内間伐区(2009 年8月3日撮影) 写真-4.調査地内間伐区

間伐区

2009

2008

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(3)相対幹曲線を利用するために

幹曲線とは,任意の高さと樹幹の太さの関係を表した式である。このうち相対幹曲線とは, 樹高と幹径を相対化したものである。相対幹曲線は同一林分内では同じような曲線を描くこ とが知られており(梶原,1972),今回直井(2010)により位山演習林内で Behre 型相対幹曲 線式(以下相対幹曲線とする)が作成された。 Behre 型相対幹曲線式とは,

y =

x a+bx で表される相対幹曲線式である。直井(2010)により位山演習林における定数aとbが, a=0.9514,b=0.8990 とされた。これを使用し,任意の高さの樹幹太さ,今回の場合は丸太の 末口径の大きさを求めることとした。 相対幹曲線を利用するために必要なデータは,樹木個体ごとに樹高(H),末口の高さ(求 めたい任意の高さ),樹高の 10 分の1の高さの直径(以下基準直径,またはD09 とする)が 必要である。樹高は実際の毎木調査から得た。基準直径は,一般に森林調査では調査せず, かつ樹高がわからないと得られない。そこで,基準直径のない森林データを用いる際にも対 応できるよう,樹幹高 1.2mの位置の直径である胸高直径(DBH)から,相対的に基準直径を 求めることとした。 出荷するときの丸太の太さは,樹皮を除いた直径(以下皮内直径とする)で表される。相 対幹曲線から得られるのは樹皮の外側の直径(以下皮付直径とする)なので,今回のように 丸太の末口径を知りたい場合,調査地ごとに樹皮厚の調査が必要である。 相対幹曲線を用いて丸太の末口径を求める手順は以下の通りである。 1.求めたい末口高の相対高xを計算する。 相対高

x =

樹高−末口高 樹高 2.相対幹曲線に当てはめ,末口の相対半径yを計算する。 相対半径

y =

相対高x a+b・相対高 x 3.相対半径yに2倍の基準直径 D09 をかける。 皮付直径= 2・D09

y =

DBH 2D09,

x =

H−1.2 H ,とし,相対幹曲線

y =

x a+bx に代入し,D09 を得る。 4.樹皮厚から皮内直径を求める。 5.丸太の規格に合わせる。 x:樹高を1とした相対高 y:基準直径に対する相対半径 a , b:定数

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(4)調査器機

・ TruPulse360B(以下 TruPulse とする) Laser Technology,Inc 製,レーザー距離計。 測定モードは7つあり,作業道測量,樹木位置図作成時には斜距離(SD:Slope Distance) で測定し,樹高測定時には目標物高さ(HT:Height)で測定する。 磁気による誤差の増大が予想される。 付表-1.:TruPulse の概要 写真-5.TruPulse ・ IMPULSE200LR(以下 IMPULSE とする) Laser Technology,Inc 製,レーザー距離計。 樹高測定時に使用。測定モードは目標物高さ HT。 写真-6.IMPULSE

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・ HP iPAQ hx2400 シリーズ Pocket PC(以下 PDA とする) Hewlett-Packard Development Company, L.P.製,携帯情報端末。

内蔵のプログラムソフト TimLogger を用いた。TimLogger は,TruPulse と通信を行い, TruPulse の斜距離・方位角・鉛直角の測定値から,器械点を中心とする xy 平面に測定点 の位置を示すことができる。 写真-7.PDA ・ 2m赤白ポール ・ 反射板,伸縮赤白ポール ・ 雲台

SLIK 社製の CARBON MASTER 813 FA を使用。

TruPulse は鉄製の雲台などを使用すると誤差の増大が予想される。この雲台の脚はカーボ ン製,器機を取り付ける部分やその周辺のネジがチタン製のため磁気が生じない。 ・ 電子デジタルセオドライト(以下セオドライトとする),三脚 SOKKIA 製。 磁気の影響を受けず,高精度。2線間の水平角,測量線の高低角を測定することができる。 写真-8.セオドライト

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・ DISTO pro4a(以下距離計とする) Leica Geosystems 社製,レーザー距離計。 斜距離が計測可能。磁気の影響を受けず,高精度での測定が可能。(測定精度:±1.5mm) ・ 金属鋲,明示板 ・ ナンバリングテープ,ガンタッカー ・ スチール製直径巻尺 ・ 方位磁針 ・ 定規 ・ 野帳

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3.調査方法

(1)作業道測量

TruPulse による測量を行い,かつ TruPulse の測量精度について確認するため,セオドライ トによる測量も行った。調査地の上空を高圧電線が通っており,TruPulse が高圧電線の影響 を受ける可能性が考えられたからである。それらの測点を測量基点とし,樹木位置図を作る 際に使用した。 測点は金属鋲および明示板を用いて,作業道(写真-9.)の道幅のほぼ中央に作成した。 明示板に測点の番号を書き,金属鋲で固定した(写真-10.)。1-ろ林小班内で測点数は 25 点になり,TruPulse とセオドライトで測量した。後日測点 30 と 31 を追加し,TruPulse でのみ 測量した。 測量方法は,TruPulse もセオドライトもトラバース測量を行った。トラバース測量とは, 測量しようとする地域を折線でカバーし,その辺の長さと方位角を測定して各折線の交点の 位置を決めていく方法である(丸安,1991)。 写真-9.作業道 写真-10.金属鋲と明示板

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TruPulse によるトラバース測量は,TruPulse,PDA,雲台,反射板,伸縮赤白ポールを用い た。TruPulse と PDA を雲台に固定し,測定精度を高めるため反射板を伸縮赤白ポールに取り 付ける。TruPulse の測定モードは斜距離 SD に設定し,PDA 内のプログラムソフト TimLogger でトラバース測量を行った。TruPulse の高さと反射板の高さは約 1.2mとした。

まず,TruPulse は測点1に据え付け,反射板を測点2に立て TruPulse で視準した。次に TruPulse を測点2に移し据え付け,反射板を測点3に立て視準した。これを繰り返し,最終 測点 25 に反射板を立て視準したところで終了した(図-1.)。

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セオドライトによるトラバース測量はセオドライト,三脚,距離計,2m赤白ポールを2 本用いて行った。セオドライトは測点2に据え付け,測点1と3にそれぞれ赤白ポールを立 てる。測点1-2線と測点2-3線に挟まれた間の水平角を測定していく(図-2.)。 測量精度を高めるため,水平角の測定は正反2倍角法で行った。まず,セオドライトの望 遠鏡が正位で水平角の2倍を測定し,次に望遠鏡が反位で再び水平角の2倍を測定する。実 際の角度の2倍の値が正位と反位それぞれで得られるので,実測値を2で割り平均をとり水 平角の測定値が得られる。この方法により望遠鏡正反の誤差,測定ミスの誤差をなくした。 高低角は望遠鏡が正位で測定した。セオドライトの高さを約 1.2mに据え付け,赤白ポールの 約 1.2mの高さを視準した。測点間の距離は距離計により測定した。 セオドライトを測点2から測点3,測点4と順に移動させていき,それぞれの角度を測定 した。測点 24 にセオドライトを据え付け,測点 23,測点 25 をそれぞれ視準し,測量を終了 した。 図-2.セオドライトによるトラバース測量

(16)

1回目 2回目 3回目

(2)毎木調査

まず,樹木個体の特定のためナンバリングテープとガンタッカーを用いて樹木に対し山側 の地上高 1.2mの位置(以下,胸高とする)にナンバリングを行う。この調査地は他の調査に も用いられているため,ナンバリングテープのアルファベットを上にしてテープが縦長にな るように打つことで統一し,他の調査との混合を防いだ(写真-11.)。次に胸高位置の直径 (以下胸高直径とする)を直径巻尺を用いて計測した。単位は cm とし,小数点以下第一位を 四捨五入し,整数で記録した。 樹高の測定には TruPulse,IMPULSE を用いた。これらは測定モードを目標物高さ HT に設 定し,2器機ともに同様の方法で測定ができる。1度目の照射で水平距離を測り,2度目, 3度目の照射で上下それぞれの高低角を測ることで,樹高が求められる(図-3.)。 樹種は,針葉樹については木材としての需要,取引があると思われたので種まで同定し, 広葉樹については植栽されたものではなく,かつ木材としての需要が低いと思われたため科 までの同定とした。以上のことを野帳に記録した。 写真-11.ナンバリング 1度目:測定対象の樹木までの水平距離を測る (樹幹のどの位置に視準してもよい) 2度目:測定対象の樹木の地際を視準 3度目:測定対象の樹木の梢端を視準

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(3)樹木位置図の作成

TruPulse,PDA(TimLogger),雲台,伸縮赤白ポール,反射板を用いた。作業道測量と同様 に器機を準備し,TruPulse は斜距離 SD,PDA 内のプログラムソフト TimLogger は座標測定で 行う。TruPulse および雲台を据え付けた点を始点,座標(0,0)として測量基点ならびに 各樹木を放射測量により位置を特定した(図-4.)。放射測量とは,始点を中心にして放射 状に各測点の位置を決定する方法である(丸安,1991)。測定対象が障害物により TruPulse から視準できない場合,方位磁針を用い測定対象から北に1~3m(+1~3m)もしくは 南に1~3m(-1~3m)移動した点で視準し,移動した方位と距離を+,-,1~3で 記録し,後の編集時に正しい位置に補正した。 図-4.樹木位置図作成の様子

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(4)樹皮厚

相対幹曲線で求められる任意の高さの直径とは,皮付直径である。しかし,丸太の末口径 や材積計算で使用されるのは皮内直径である。そこで,樹皮の厚さを実測で調査することと した。 2009 年9月の間伐で得られた丸太を使用し,調査した。木口面の最小径になる直線上で, 両側の樹皮の厚さを測定した(写真-12.)。また,樋渡(1985)によると,樹皮の厚さは樹 幹での高さに関係し,樹種や林分ごとに異なるとされている。そこで,樹皮の厚さと高さの 相関を調べるため,木口面が樹幹上でどの高さにあったか分かっているものを調査に使用し た。 写真-12.樹皮厚の測定方法 皮付直径 樹皮

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(5)価値評価

丸太の価値評価の基準として,素材の日本農林規格(農林水産省,2007)を参考にした。 この規格では節,曲がり,腐れ・虫食い又は空洞などについて基準が設けられている。また, 林業の現場では熟練の林業家による“目利き”により価値評価がなされている。これになら い,位山演習林勤務の技術職員に立木状態での見方を習った。それらをもとに,間伐区が含 まれるC区画内のヒノキに対して価値評価を行った。 調査する項目は,枝・枝跡,曲がり,へび下りなど樹幹の傷である(表-1.)。素材の日 本農林規格では木口面に対しても基準が設けられているが,立木状態では判断できないため 樹幹の評価のみとした。これらを樹幹の欠陥と表わす。 この価値評価をもとに,全ヒノキに対する樹幹の欠陥の出現率や,丸太の廃棄率を求めた。 この出現率や廃棄率を調査地内の全ヒノキに反映させることにより,調査地の全ヒノキに対 して価値評価を行わずに,実際の丸太の搬出量により近い値がわかると考えた。 表-1.価値評価の項目と基準

価値評価の項目

判断基準・測定基準

廃棄への対応

枝・枝跡

多い

利用

少ない

利用

曲がり

通直:約3%未満

利用

小:約10%以下

利用

大:約10%より大きい

曲がりの部分を廃棄

樹幹の傷

みられる高さと範囲

傷のある部分から上下に1m廃棄

枝・枝跡は製材したとき節になる。枝打ちが積極的に行われてきたならば,枝跡は樹木 の肥大生長により表面に見えなくなる。枝や枝跡が多いと節が多くなり,丸太としての価値 が下がる。調査は多いか少ないかの2段階で行った。

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曲がりの調査を通直(曲がり約3%未満)小(曲がり約 10%以下)と大(曲がり約 10%よ り大きい)の3段階で行った。曲がりの大きさは最大矢高の割合で表される。最大矢高とは, 図-5.のように丸太の両端を糸などで結び,丸太と糸との間の間隔が最大となる部分の大 きさである。曲がりの計算方法は最大矢高/丸太の末口径×100 で%単位で示される(河島, 1973)。例えば丸太の末口径が 20cm,最大矢高が2cm の場合,曲がりの大きさは 10%となり, 曲がりは小となる。本研究では目測で,通直・曲がり大小を判断した。 最大矢高 丸太の末口径

× 100[%]

図-5.最大矢高の測定方法 樹幹の傷は,例としてくまはぎや凍裂が挙げられる。くまはぎはクマが歯で木の根元から 樹皮を剥がしたものである(写真-13.,写真-14.)。凍裂は冬季に樹幹内の水分が凍結する などが原因で,樹幹に裂け目ができるものである(写真-15.)。これらは,根元から腐りが 入り,実際には傷のない高さまで腐りによる変色が生じる。また,樹幹の傷は年月が経つに つれて周囲の樹皮による巻き込みが生じ,傷は見えなくなり樹皮の盛り上がり部分が残る。 これをへび下りという(写真-16.)。へび下りは,一見すると傷はないように見えるが,内 部には腐りによる変色があることが多い。これら傷やへび下りの高さと大きさについて,上 下の地上高を測定した。 最大矢高 末口径 径長 根元側

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写真-13.くまはぎの様子 写真-14.クマの歯跡

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(6)丸太の価格・収穫量・落札価格の予想

丸太の価格は年変動・月変動があり出荷時期によって異なり,さらに落札する業者によっ ても異なる。今回は 2008 年と 2009 年9月の間伐実習で得た丸太を木材市場に出荷し,実際 にどれほどの価格で落札されるのかをみた。 競りでは通常,末口径の小さいものは数十本ごとに,末口径の大きいものは1本または数 本ごとにまとめて番号(椪番)がつけられ,落札される(写真-17.)。位山演習林では通常 径級3(長さ3m)として採材し,岐阜県下呂市乗政にある下呂総合木材市売協同組合(以 下下呂木材市場とする)に出荷している。2008 年 10 月 22 日と 2009 年 12 月2日に行われた 競りで落札された位山演習林材のうち,径級3の落札木材の価格をもとに,加重平均により 演習林材の価格を算出した。 丸太の収穫予想は,相対幹曲線により丸太の末口径を推定し,末口径別に収穫予想本数を 算出し,丸太材積を末口二乗法により求めた。位山演習林では,本研究の調査地のような約 50 年生の人工林で樹高が 15~20m付近の場合,欠陥のない木であれば径級3で立木1本から 最大丸太3本を得る。1本の木から得られる丸太を,立木の根元(地面)側から順に1番玉 (元玉),2番玉,3番玉と呼ぶので,以下このように表記する。また位山演習林の慣例に習 い,傷などが丸太部分にまで及ばないよう余尺を 0.1mつけ丸太1本の長さを 3.1mとした。 丸太の太さは,素材の日本農林規格より末口径8cm となるものとした。 相対幹曲線の利用により収穫が予想された丸太について,演習林材の丸太価格予想を当て はめ,調査地全体のヒノキを皆伐(立木をすべて伐採)したときの,落札価格,収入額の予 想を行った。

(23)

(7)小面積調査法の検討

サンプル調査法として小面積の調査地を設ける場合,調査地の設け方の違いにより2つの 方法が挙げられる。1つは広範囲の森林内で平均的と思う場所を小面積の調査地とする標準 地法,もう1つは無作為に小面積の調査地を作成する標本地法である。 岐阜県では造林補助事業として,植林や保育などを行った場合,申請により経費の一部を 補助金として受け取ることができる。補助金申請の際に標準地調査が必要になり,標準地は 1ヶ所 100m2 (0.01ha)以上,形状は正方形または円形とされている(岐阜県林政部,2009)。 よって本研究の調査法の検討では,100m2 となる 10m×10mの正方形を小面積の調査地形状 とし,無作為抽出による標本地法の検討とした。そして標本地から得られた推定値が,実際 の調査地全体での毎木調査結果と比較して,その推定精度など,どのような特徴をもつのか 検討した。 無作為抽出の方法は,2mの格子を作成し,その交点を無作為に抽出,10m×10mの正方 形の中心となるよう標本地を設定した。標本地の辺はそれぞれ緯線と経線に平行である。 標本地を無作為抽出により 100 個,調査地内に作成した。標本地 100 個の中から,1~100 個の標本地を選ぶとき,立木材積(m3/ha),全立木密度(本/ha),ヒノキの立木密度(本 /ha),胸高直径の平均値(cm),樹高の平均値(m)がどのように変化するかを検討した。

(24)

4.調査結果

(1)作業道測量

TruPulse での測量結果,セオドライトでの測量結果をそれぞれ付表-2.と付表-3.に 示す。 図-6.作業道測量線重ね合わせ 図-6.は2つの測量線を重ねたものである。青線は TruPulse,赤線はセオドライトの測 量線である。図内の数字は測量基点の番号で TruPulse は右側に番号を示し,セオドライトは 基点に対し左側に番号を示している。図-6.のように2つの測量線はほぼ一致しており, TruPulse でもかなりの精度の測量が可能だといえる。なお,基点 30 と 31 は,後日追加した 測点のため TruPulse でのみ測量した。 0 50 100 150 200 250 0 50 100 150 200 250 [m] [m]

1

2

3

4

5

6

7

8

9

10

1112

13

30

31

14

15

16 17

18

19

20

212223

24

1

2

3

4

5

6

7

8

9

10

1112

13

14

15

16 17

18

19

20

212223

1

-TruPulse -セオドライト

(25)

(2)毎木調査

区画B~Jのそれぞれの毎木調査の結果を付表-4.に示す。調査地の面積は約 1.04ha, 樹高2m以上の全立木は 1071 本,うちヒノキは 899 本であった。素材の日本農林規格で規定 されている末口径の最小値は8cm のため,胸高直径8cm を境界として調査結果を表-2. と表-3.にまとめた。 表-2.毎木調査概要 全体 DBH>8cm 1071 1044 ヒノキ 899 893 スギ 30 他針葉樹 52 広葉樹 90 1029.81 1003.85 ヒノキ[本/ha] 864.42 858.65 301.69 301.67 [m3/ha] 290.09 290.07 立木材積[m3] 樹木本数 立木密度[本/ha] 表-3.毎木調査要約 全体 DBH>8cm 全体 DBH>8cm 最小 4 9 2.5 6.9 最大 35 35 19.7 19.7 平均 22.6 22.8 15.8 15.9 胸高直径[cm] 樹高[m] 胸高直径8cm 以上の立木を対象にした結果は,表-2.と表-3.中では DBH>8cm と示 している。材積はヒノキのみで胸高直径と樹高を用い,立木幹材積表西日本編(林野庁)よ り算出した。 岐阜県のヒノキ人工林林分密度管理図(岐阜県林政部,1992)より,間伐の指針となる収 量比数を求めた。収量比数とは,ある樹高における最大の材績を 1.0 としたときの実際の材 績割合を示したものである。立木密度と平均樹高より収量比数を求めると,約 0.75 となる。 これは「必要に応じて間伐を実施」と評価された。 さらに岐阜県飛騨川地域森林計画書(岐阜県林政部,2009)より,冠雪害の発生防止に関 する指針となる形状比を求めた。形状比とは樹高/胸高直径で求められる。平均形状比は 70.74 となり,冠雪害が発生する危険性は高くないと評価された。

(26)

0

40

80

120

160

200

<8 <10<12<14<16<18<20<22<24<26<28<30<32<34<36<38

本数

胸高直径

[cm]

図-7.胸高直径のヒストグラム

0

40

80

120

160

200

240

280

<7 <8 <9 <10 <11 <12 <13 <14 <15 <16 <17 <18 <19 <20 <21

本数

樹高

[m]

図-8.樹高のヒストグラム 図-7.と図-8.はそれぞれヒノキの胸高直径と樹高のヒストグラムである。樹高は胸 高直径8cm 以上を対象とした。胸高直径や樹高が同程度の木が多いことがわかる。調査地は 同齢の人工林であり,かつ調査地内のどの場所も生育速度に著しく大きな差はないといえる。

(27)

(3)樹木位置図

区画B~Jのそれぞれの樹木位置図を付図-1.に示す。区画B~Jまでの全立木の位置 図を図-9.と図-10.に示す。1-ろ林小班の境界線を赤線で,作業道の測量線を黄線で 示す。黄線上の赤正方形(□)は測量基点である。樹木位置は青丸(○)がヒノキ,緑丸(●) がスギ,その他の樹木をオレンジ色の三角形(▲)で示す。また,2008 年9月と 2009 年9 月の間伐の際に伐採された樹木の位置を 2008 年分はプラス(+),2009 年分はバツ(×)で 示している。 調査地の斜面上側,樹木位置図の1-ろ林小班の境界線付近にその他の樹木が多いのは, 境界がカラマツ林であり,調査地内に境界のカラマツが含まれたためである。また,スギが 多くある場所は沢沿いで,水気を好むスギを沢沿いに植栽したためスギが多くなっている。 図-9.1-ろ林小班全体図と樹木位置 3700 3750 3800 3850 3900 3950 4000 900 1000 1100 1200 -1-ろ林小班 境界線 -作業道測量線 (TruPulse) □測量基点 ○ヒノキ ●スギ ▲その他樹木 +2008 年間伐木 ×2009 年間伐木

(28)

図-10.調査地樹木位置 3850 3900 3950 4000 1050 1100 1150 1200 -1-ろ林小班 境界線 -作業道測量線 (TruPulse) □測量基点 ○ヒノキ ●スギ ▲その他樹木 +2008 年間伐木 ×2009 年間伐木

(29)

(4)樹皮厚

2009 年9月のヒノキの間伐木は 30 本で,得られた搬出丸太は 68 本であった。このうち, 高さ分かる木口面 56 ヶ所で計測し,付表-5.に示す。 表-4.樹皮厚と樹皮率

樹皮厚[mm]

樹皮率[%]

最小

2.50

2.45

最大

6.00

7.41

相加平均

4.08

4.06

相乗平均

3.99

3.95

調和平均

3.89

3.86

表-4.は樹皮厚と樹皮率の代表値についてである。木口面の樹幹上での高さ,同一木口 面での皮付直径とのそれぞれの相関を調べた。また,同一の木口面での樹皮率(皮付直径に 対する樹皮の割合)と樹幹上での高さの相関も調べた。 0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 0 2 4 6 8 樹幹高 さ [m] 樹皮厚[mm] 図-11.樹皮厚と樹幹での高さの相関(R2 =0.01381) 0 5 10 15 20 25 30 0 2 4 6 8 皮付直径 [cm ] 樹皮厚[mm] 図-12.樹皮厚と皮付直径の相関(R2 =0.05835)

(30)

0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 0 2 4 6 8 樹幹高 さ [m] 樹皮率[%] 図-13.樹皮率と樹幹での高さの相関(R2 =0.03602) 図-11.から図-13.はそれぞれの相関を散布図で表したもので,図中の直線は回帰直線 である。それぞれの相関について調べた回帰分析の結果を表-5.に示す。 表-5.回帰分析結果

決定係数R

2

p値

樹皮厚-樹幹高さ

0.01381

0.3884

樹皮厚-皮付直径

0.05835

0.07289

樹皮率-樹幹高さ

0.03602

0.1612

表-5.より,回帰分析の結果,回帰式の決定係数 R2 はすべて 0.06 未満であり,p値はす べて 0.07 以上であったため,相関はないといえる。 樋渡(1985)より,樹皮厚を立木1本の中で高さに関係なく一定値にする場合,胸高直径 の一定割合を樹皮厚としている。これより樹皮厚は,得られた樹皮厚率の相乗平均 3.95%(表 -4.)から,胸高直径の 3.95%とした。

(31)

(5)価値評価

C区画約 0.16ha 内の 2009 年9月の間伐以降の保残ヒノキに対し価値評価を行った。その結 果を付表-6.に示す。C区画には間伐区があるため,C区画内の間伐区以外の場所を間伐 区外とした。C区画や間伐区内外の概要を表-6.に,C区画の樹幹の欠陥の本数と割合を 表-7.に示す。なお,C区画内のヒノキ以外の樹木は,オニグルミが1本のみなので,立 木本数・立木密度はヒノキのみである。枝・枝跡の数は多いものばかりで,少ないと判断し たものは1本のみであったため,記載を省略した。 表-6.C区画概要 C区画 間伐区 間伐区外 面積[ha] 0.1562 0.1170 0.0392 立木本数 136 78 58 立木密度[本/ha] 870.68 666.67 1479.59 表-7.C区画の樹幹の欠陥の本数と割合 C区画 間伐区 間伐区外 C区画 間伐区 間伐区外 通直 98 68 30 72.06 87.18 51.72 曲がり 38 10 28 27.94 12.82 48.28 曲がり小 26 9 17 19.12 11.54 29.31 曲がり大 12 1 11 8.82 1.28 18.97 樹幹の傷 26 9 17 19.12 11.54 29.31 根元から 21 8 13 15.44 10.26 22.41 途中から 5 1 4 3.68 1.28 6.90 樹幹の欠陥 本数 割合[%] 表-7.より,間伐実施後は立木密度,曲がりや樹幹に傷のある木の割合が低くなってい る。これは,2008 年および 2009 年の間伐では,曲がっているものや樹幹に傷があるもの, 成長が良くないものを伐採していく下層間伐を行ったためである。間伐区外についてみると, 曲がりのある木は約5割,樹幹に傷のある木も約3割を占める。また,樹幹の傷は根元から の割合が非常に高い。

(32)

図-14.欠陥の高さと範囲 図-14.はC区画全体における曲がり(黒点線)と樹幹の傷(赤実線)について樹幹での 高さと範囲を示したものである。点はその欠陥の出現した高さを示しており,点と線で示し たのはその欠陥の範囲である。これを見ても樹幹下部において多く生じているのがわかる。 林業で高価な丸太となるのは,傷などがなく通直で太い丸太である。1本の木で最も太くな るのは樹幹下部であり,これらの欠陥による林業的損失は大きい。なお,曲がり大の 12 本の うち4本は樹幹上部まで曲がっていた。この4本はすべて間伐区外にあったものである。 0 50 100 150 0 5 10 15 樹木番号 樹幹での高さ[m] - -曲がり - 樹幹の傷

(33)

表-8.間伐区外の欠陥の出現率と丸太の廃棄率 曲がり 樹幹の傷 曲がり 樹幹の傷 0.0 18.97 22.41 18.97 29.31 0.5 18.97 20.69 18.97 29.31 1.0 18.97 12.07 18.97 29.31 1.5 15.52 1.72 15.52 27.59 2.0 12.07 0 12.07 15.52 2.5 10.34 0 10.34 1.72 3.0 10.34 0 10.34 0 3.5 6.90 0 6.90 0 4.0 6.90 0 6.90 0 欠陥の出現率[%] 丸太廃棄率[%] 樹幹高さ[m] 表-8.は,間伐区外の曲がりと樹幹の傷それぞれについての欠陥の出現率と丸太廃棄率 を示したものである。それぞれ間伐区外のヒノキ 58 本に対する割合を示している。欠陥の出 現率とは曲がり,樹幹の傷が目で確認できた木の高さ別の割合のことである。丸太の廃棄率 とは丸太として価値の低い曲がりや傷のある部分を廃棄する高さ別の割合のことである。曲 がりは調査で曲がり大と判断した部分のみを廃棄とした。樹幹の傷がみられたものは傷によ り内部の変色が予想される。この変色は価格下落に繋がるため,変色があると予想される傷 のみられた範囲から上下1mを廃棄とした。 C区画全体ではなく間伐区外を対象にしたのは,現在の調査地全体はあまり間伐が行われ ておらず,欠陥の割合などを表すには割合の低い間伐区を除くのが適していると考えたため である。なお,曲がり大の樹幹上部まで曲がっている4本は,曲がっている部分を廃棄して も丸太になる部分が残らないと判断し,立木1本廃棄とした。 立木のうち約7%は曲がりのために廃棄となる。また樹幹の高さ 2.5m以下では最大約 30% の本数の丸太を廃棄となる。

(34)

(6)丸太の価格・収穫量・落札価格の予想

実際の丸太落札価格を付表-7.に示し,加重平均により位山演習林の材の末口径別丸太 立米価格を算出した(表-9.)。 表-9.末口径別丸太立米価格 径級[m] 末口径[cm] 立米価格[/m3] 3 10,11 5,000 12,13 8,000 14 13,477 16 19,637 18 21,056 20 19,152 22 18,000 24 21,000 26 15,000 28 20,000 30 25,000 ※末口径8,9cmは1本単価で200円 表-9.の欄外にあるように,末口径8~9cm のものは1本単価 200 円で取引されている。 出荷がなかった末口径に関しては前後の大きさの末口径から推定した。 現在の調査地全体のヒノキについて,相対幹曲線を当てはめ,丸太の本数の収穫予想を行 った。結果を表-10.と図-15.に示す。

(35)

表-10.調査地 1.04ha 内の丸太の収穫予想本数と材積 1番玉 2番玉 3番玉 1番玉 2番玉 3番玉 8 1 3 32 0.019 0.058 0.614 9 3 8 65 0.073 0.194 1.580 10 3 17 86 0.090 0.510 2.580 11 8 35 125 0.290 1.271 4.538 12 6 45 114 0.259 1.944 4.925 13 27 62 103 1.369 3.143 5.222 14 69 189 172 4.057 11.113 10.114 16 135 212 84 10.368 16.282 6.451 18 173 177 20 16.816 17.204 1.944 20 207 93 5 24.840 11.160 0.600 22 165 28 0 23.958 4.066 0 24 66 8 0 11.405 1.382 0 26 17 2 0 3.448 0.406 0 28 7 0 0 1.646 0 0 30 3 0 0 0.810 0 0 32 0 0 0 0 0 0 計 890 879 806 99.448 68.733 38.567 合計 本数 末口径 [cm] 材積[m3] 2575 206.748

0

50

100

150

200

250

8 9 10 11 12 13 14 16 18 20 22 24 26 28 30 32

本数

末口径

[cm]

1番玉

2番玉

3番玉

図-15.丸太の収穫予想本数

(36)

表-10.は丸太の末口径別収穫予想本数と材積,図-15.は収穫予想本数のグラフである。 表-10.から胸高直径8cm 以上のヒノキ立木 899 本中,丸太の収穫予想本数は合計 2592 本, 丸太の収穫予想材積は 207.46m3 となった。 表-11.立木材積と丸太材積 立木材積[m3] (立木幹材積表) 丸太材積[m3] (相対幹曲線) 調査地1.04ha 301.69 206.75 /ha 290.09 198.80 歩留り 0.69 表-11.より,立木材積と丸太材積の比率から丸太歩留りは 0.69 となった。よって,立木 材積の 69%が丸太となると推定された。 この丸太の収穫予想(表-10.),作成した丸太立米価格(表-9.)から,調査地内の全ヒ ノキを伐採し,出荷したときの落札価格を予想した。それを表-12.に示す。 表-12.調査地 1.04ha の落札価格予想 1番玉 2番玉 3番玉 8 200 600 6,400 9 600 1,600 13,000 10 450 2,550 12,900 11 1,452 6,353 22,688 12 2,074 15,552 39,398 13 10,951 25,147 41,777 14 54,679 149,773 136,301 16 203,596 319,722 126,682 18 354,069 362,256 40,933 20 475,736 213,736 11,491 22 431,244 73,181 0 24 239,501 29,030 0 26 51,714 6,084 0 28 32,928 0 0 30 20,250 0 0 32 0 0 0 計 1,879,444 1,205,583 451,570 末口径 [cm] 価格

(37)

表-12.より,相対幹曲線を用いて丸太の収穫予想,落札価格予想を行うと,約 354 万円 の収入が見込める計算となった。 しかし前述の通り,相対幹曲線を用いた丸太価格の推定は丸太の長さと太さのみからの推 定である。つまり,表-12.の落札価格予想には曲がりやくまはぎなど樹幹の欠陥による損 失が含まれていない。よって,価値評価の結果より,間伐区外の価値評価前後における丸太 の収穫予想本数・落札予想金額の変化を検討した。 表-13.間伐区外の価値評価前後の末口径別収穫予想本数 1番玉 2番玉 3番玉 1番玉 2番玉 3番玉 8 0 0 1 0 0 2 9 0 0 4 1 0 5 10 1 0 6 0 1 6 11 0 0 6 0 1 4 12 0 4 9 0 5 8 13 0 4 5 0 5 5 14 3 11 15 6 8 13 16 11 13 6 11 13 3 18 12 13 3 7 13 2 20 12 6 0 12 3 0 22 9 5 0 11 3 0 24 6 1 0 3 1 0 26 3 0 0 2 0 0 28 1 0 0 1 0 0 30 0 0 0 0 0 0 計 58 57 55 54 53 48 合計 価値評価前・本数 価値評価後・本数 末口径 [cm] 170 155

(38)

0 5 10 15 20 25 30 35 8 9 10 11 12 13 14 16 18 20 22 24 26 28 30 本数 末口径[cm] 価値評価前 価値評価後 図-16.間伐区外の価値評価前後の末口径別収穫予想本数 表-13.は丸太の末口径別収穫予想本数を価値評価前後で比較したもの,図-16.はその グラフである。表-13.と図-16.より,価値評価後のほうが末口径の大きいものが少なく なっているのがわかる。これは,価値評価により立木の根元側の部分が曲がりや傷により廃 棄され,先端の細い部分から丸太を得ているためである。 表-13.の収穫予想,丸太価格(表-9.)から,表-12.と同様にC区画間伐区外のヒノ キの落札価格予想を行った。それを表-14.に示す。

(39)

表-14.間伐区外の価値評価前後の落札価格計 1番玉 2番玉 3番玉 1番玉 2番玉 3番玉 8 0 0 200 0 0 400 9 0 0 800 200 0 1,000 10 150 0 900 0 150 900 11 0 0 1,089 0 182 726 12 0 1,382 3,110 0 1,728 2,765 13 0 1,622 2,028 0 2,028 2,028 14 2,377 8,717 11,887 4,755 6,340 10,302 16 16,589 19,606 9,049 16,589 19,606 4,524 18 24,560 26,606 6,140 14,327 26,606 4,093 20 27,579 13,789 0 27,579 6,895 0 22 23,522 13,068 0 28,750 7,841 0 24 21,773 3,629 0 10,886 3,629 0 26 9,126 0 0 6,084 0 0 28 4,704 0 0 4,704 0 0 30 0 0 0 0 0 0 計 130,380 88,420 35,203 113,873 75,003 26,738 合計 末口径 [cm] 価値評価前・価格 価値評価後・価格 254,003 215,615 表-14.より,C区画間伐区外の価値評価前後の落札価格は約 38,000 円減少し,その割合 は 84.89%となった。 これら価値評価前後の減少率を丸太の本数・材積・落札価格それぞれ についてまとめ,調査地 1.04ha に反映させた結果を表-15.に示す。 表-15.調査地 1.04ha における価値評価前後の丸太本数・材積・落札価格 丸太本数 2575 91.18 2348 丸太材積[m3] 206.75 86.72 179.30 落札価格 3,536,597 84.89 3,002,102 価値評価前 価値評価による 減少率[%] 価値評価後 表-15.より,調査地 1.04ha を皆伐すると,丸太の本数 2348 本,丸太材積 179.30m3の収 穫が予想され,落札予想価格は約 300 万円となった。この約 300 万円というのが,曲がりや くまはぎによる樹幹の欠損を含めた,より現実の収入に近い金額だといえる。 また,木材を木材市場に出荷する際に各種手数料がかかる。下呂木材市場に出荷するため にかかる手数料は表-16.の通りである。

(40)

表-16.調査地 1.04ha 皆伐時の手数料と収入合計額 179.30 2348 収入 3,002,102 150,105 支出 -1,858,085 市場費用: 椪積料[\1,050/m3] -188,265 市場手数料[落札価格の8%] -240,168 -114,326 751,363 落札木材材積[m3] 消費税[5%] 収入合計額 落札丸太本数 落札価格消費税[5%] 木材落札価格計 搬出費[\10,363/m3] 表-16.の材積は,表-13.の価値評価後の減少割合を用い,収穫予想の丸太材積 207.455 m3(表-10.)の 86.72%(表-13.)として算出した。表-16.の,搬出費(10,363 円/m3 市場費用としてはえ積料(1,050 円/m3)と市場手数料(落札価格の8%)は社団法人岐阜県 森林公社(2009)の資料を参考にした。その結果,手数料を除いた純収入合計額は約 75 万円 となった。これを林齢の 50 年で割ると約 15,000 円/年となる。調査地は約 1.04ha なので, 調査地と同様の森林の場合,約 72 万円/ha の収入が見込める計算になった。これは約 14,000 円/ha・年である。しかし,この収入には保育費や人件費などは含まれておらず,実際の純 収入はもっと少ないものになる。 表-17.材積の比較 調査地1.04ha 301.69 206.75 179.30 /ha 290.09 198.80 172.40 丸太材積[m3] (相対幹曲線) 丸太材積[m3] (価値評価後) 立木材積に 対する歩留り - 0.69 0.59 立木材積[m3] (立木幹材積表) 表-17.は立木材積と丸太材積,さらに価値評価後の丸太材積を比較し,歩留りを算出し た結果である。立木材積(立木幹材積表)から相対幹曲線により算出した丸太材積の歩留り は 0.69,さらに価値評価後の丸太材積の歩留りは 0.59 となった。本研究の調査地では,立木 材積から簡易的に丸太材積を求めたい場合,59%で推定することが最も現実に近い値になる。 しかし,価値評価は森林によって大きく異なると考えられる。よってこの歩留りは本研究 の調査地固有のものであり,演習林の他の林班や他の森林に適応できるとは考え難い。樹幹 の欠陥は森林の管理状況や,地形や気候など周辺環境に大きく影響されると考えるからであ る。よって,他の森林では,相対幹曲線により算出した丸太材積の歩留り 0.69 という値を参

(41)

また都竹ら(2006)では,立木状態で丸太の末口になる高さの直径を,枝打ち梯子に登り 直径巻尺による実測を行っている。この実測の結果と本研究の相対幹曲線による推定結果の 比較を行い,表-18.に示す。都竹らの調査は位山演習林 11 林班の 45 年生ヒノキ人工林で 行われた。調査対象は胸高直径 14cm 以上,丸太の末口径 14 以上のものであったため,本研 究の調査結果もそれに準じたものを使用している。 表-18.胸高直径 14cm 以上,末口径 14cm 以上における調査結果の比較 間伐区 (都竹ら,2006) 無間伐区 (都竹ら,2006) 0.04 0.04 312 435 0.51 148 1606 289 1.04 調査地 (価値評価後) 立木材積 [m3/ha] 2125 1575 203 139 0.65 0.32 歩留り 丸太本数 [本/ha] 丸太材積 [m3/ha] 面積[ha] 表-18.の都竹ら(2006)の結果と本研究の調査地の結果とを単純に比較はできない。 本研究の調査地は植栽後除伐は行われたが,間伐があまり行われていない。一方,都竹らの 調査地は間伐を積極的に実施した間伐区と,間伐を全く行っていない無間伐区である。人工 林の林齢はほぼ同齢だが,森林の林分構造が異なる。その事実を考慮し結果を比較すると, 相対幹曲線を用いた丸太本数と材積の推定結果は都竹らの間伐区と無間伐区の間に入ってい る。歩留りは一般に 0.6 といわれている(千廣,1983)。本研究の調査地では,一般の歩留り より小さい値になったが,これは相対幹曲線による推定が過小評価だとはいえない。都竹ら の無間伐区の歩留りのように,実測調査でもこのように小さくなる。これは,歩留りが立木 の形質に左右されるためであり,一般的な値 0.6 と離れていても,推定誤差か,立木の形質 によるものかわからない。歩留りが過大か過小かの考察はできないが,相対幹曲線を用いて も実測と同じように丸太の収穫予想ができることがわかり,その推定歩留りは一般的な値に 近いものであった。

(42)

(7)小面積調査法の検討

樹木位置図より,標本地の中心点がとる位置は図-17.のようになった。 図-17.標本地の中心点がとる位置 図-17.のように,調査地の林縁や調査対象のヒノキのほぼ生えていないスギ林は除き, 格子を作成した。格子から林縁を除いた理由は,格子の交点を小面積の調査地の中心とする ため標本地が必ず調査地全体の中に入るようにするためである。スギ林を除いた理由は,無 作為抽出といえども実際の調査の際,ヒノキ人工林の林分構造を調べるのにスギ林内を調査 する可能性は低いと判断したためである。 3850 3900 3950 4000 1050 1100 1150 1200 -1-ろ林小班 境界線 -作業道測量線 (TruPulse) □測量基点 ○ヒノキ ●スギ ▲その他樹木 +2008 年間伐木 ×2009 年間伐木 ・標本地の中心点

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図-18.標本地数 10 のときの標本地位置 標本地 100 個中 10 個を抽出したときの標本地の位置は図-18.である。無作為で格子の交 点を抽出しているため,図-18.のように標本地同士の重なりが生じる可能性がある。 3850 3900 3950 4000 1050 1100 1150 1200 -1-ろ林小班 境界線 -作業道測量線 (TruPulse) □測量基点 ○ヒノキ ●スギ ▲その他樹木 +2008 年間伐木 ×2009 年間伐木

標本地

(44)

図-19.立木材積(m3 /ha)の変化 図-20.立木材積(m3 /ha)の変化 図-19.は,標本地 100 個から抽出する調査プロットの数を1から 100 まで順に増加させ たときの立木材積の変化である。図-19.の標本地の抽出の仕方を 100 通りにしたものが図 -20.である。赤実線は推定値の平均で 367.82 m3 /ha,赤点線は現実の立木材積で 290.09 m3 /ha である。 図-19.より,調査プロットの数が 20 個以上になると値が横ばいになっていくのがわかる。 図-20.のように,調査プロット数の増加に伴い立木材積の推定値は収束していくが,その 推定値は現実の値より,過大推定された値となった。推定割合は現実の値と比較し 126.80% となっている。 図-21.標準偏差(m3/ha)の変化 図-22.変動係数の変化 図-21.は推定材積についての標準偏差を,図-22.は推定材積についての変動係数を表 している。両者とも調査プロット数が 10 個までは値が大きいが,20 個からは緩やかに減少 していくのがわかる。変動係数は,調査プロット数 20 個以上では5%以下に収束することが 0 20 40 60 80 100 1 0 0 2 0 0 3 0 0 4 0 0 5 0 0 6 0 0 調査プロット数 立木材積 0 20 40 60 80 100 1 0 0 2 0 0 3 0 0 4 0 0 5 0 0 6 0 0 調査プロット数 立木材積 0 20 40 60 80 100 0 2 0 4 0 6 0 8 0 1 0 0 調査プロット数 推定材積の標準偏差 0 20 40 60 80 100 0 . 0 0 0 . 0 5 0 . 1 0 0 . 1 5 0 . 2 0 0 . 2 5 調査プロット数 推定材積の変動係数 推定値 推定平均値 現実値

(45)

立木材積と同様に,全立木密度(本/ha),ヒノキ立木密度(本/ha),平均胸高直径(cm), 平均樹高(m)について作図したものを,以下に示す。

図-23.全立木密度(本/ha)の変化 図-24.ヒノキ立木密度(本/ha)の変化

図-23.,図-24.より,全立木密度とヒノキ立木密度についても,立木材積と同様に現実 の値より推定値のほうが過大推定となっているのがわかる。推定値平均と現実値はそれぞれ, 全立木密度では 1237.00 本/ha,1060.58 本/ha,ヒノキ立木密度では 1127.00 本/ha,893.27 本/ha であった。推定割合は全立木密度で 116.63%,ヒノキ立木密度で 126.17%となった。 図-25.胸高直径(cm)の変化 図-26.樹高(m)の変化 図-25.の胸高直径と,図-26.の樹高より,胸高直径と樹高に関しては,立木材積や立 木密度のように過大推定はされていない。推定値平均と現実値はそれぞれ,胸高直径では 22.41cm,22.64cm,樹高では 15.91m,15.83mとなった。推定割合は胸高直径で 98.96%,樹 高で 100.51%となった。 0 20 40 60 80 100 5 0 0 1 0 0 0 1 5 0 0 2 0 0 調査プロット数 全立木密度 0 20 40 60 80 100 5 0 0 1 0 0 0 1 5 0 0 調査プロット数 ヒノキ立木密度 0 20 40 60 80 100 1 5 2 0 2 5 3 0 調査プロット数 胸高直径 0 20 40 60 80 100 1 3 1 4 1 5 1 6 1 7 1 8 調査プロット数 樹高 推定値 推定平均値 現実値 推定値 推定平均値 現実値 推定値 推定平均値 現実値 推定値 推定平均値 現実値

(46)

表-19.現実値と推定値,推定割合

現実値

推定値

推定割合[%]

立木材積[m

3

/ha]

290.09

367.82

126.80

全立木密度[本/ha]

1060.58

1237.00

116.63

ヒノキ立木密度[本/ha]

893.27

1127.00

126.17

平均胸高直径[cm]

22.64

22.41

98.96

平均樹高[m]

15.83

15.91

100.51

表-19.は各項目について現実値と推定値,推定割合についてまとめたものである。この 推定値は標本地 100 個の平均値である。立木材積と立木密度は過大推定されているが,平均 胸高直径と平均樹高は推定割合が 100%近い。 表-20.無作為抽出の推定値と実測値の割合

sampleNo.

推定値

割合[%]

推定値

割合[%]

推定値

割合[%]

1

367.57

126.71

1206.60

113.77

1090.03

122.03

2

368.84

127.15

1220.18

115.05

1106.44

123.86

3

377.92

130.28

1239.30

116.85

1131.34

126.65

4

371.15

127.95

1247.40

117.61

1128.96

126.39

5

362.31

124.90

1191.38

112.33

1073.98

120.23

6

359.06

123.78

1213.12

114.38

1083.31

121.27

7

378.10

130.34

1233.94

116.35

1129.14

126.41

8

378.79

130.58

1240.30

116.95

1133.58

126.90

9

366.75

126.43

1195.72

112.74

1091.77

122.22

10

370.47

127.71

1220.52

115.08

1109.44

124.20

平均

370.10

127.58

1220.85

115.11

1107.80

124.02

現実値

立木材積[m

3

/ha]

全立木密度[本/ha]

ヒノキ立木密度[本/ha]

290.09

1060.58

893.27

表-20.は標本地 100 個を作る無作為抽出を 10 回繰り返した結果である。推定値の検討を 行った項目の中で,表-20.より過大推定された立木材積と立木密度について行った。これ より,過大推定割合は立木材積で約 128%,全立木密度で約 115%,ヒノキ立木密度は約 124% となった。小面積調査法ではこれだけ過大推定される可能性がある。

(47)

5.考察

(1)調査地の林分構造

毎木調査の結果より,調査地 1.04ha 内の樹高2m以上の樹木本数は 1071 本,そのうちヒノ キは 899 本であった。立木密度は 1029.8 本/ha,ヒノキ立木密度は 864.4 本/ha となった。 立木幹材積表西日本編(林野庁計画課,1970)によるヒノキの立木材積は 301.7m3 ,290.1m3 /ha となった。ヒノキの平均胸高直径は 22.6cm,平均樹高は 15.8mであった。 間伐指針となる収量比数(岐阜県林政部,1992)は 0.75 となり,「必要に応じて間伐を実 施」となった。冠雪害発生防止の指針となる形状比(岐阜県林政課,2009)は 70.7 となり, 冠雪害の危険性は高くないとなった。 また,人工林の伐採時期については都道府県ごとに地域森林計画の中で標準伐期齢という 基準を設けており,位山演習林の所属する岐阜県飛騨川地域森林計画書(岐阜県林政部,2009) によると,ヒノキの標準伐期齢は 50 年とされている。 調査地は 1960 年植栽,50 年生の人工林である。標準伐期齢や収量比数から,演習林全体 のバランスを考え,必要に応じて間伐や主伐など,立木の伐採を実施していく必要があると 思われる。

(48)

(2)立木価格評価

調査地内のヒノキを皆伐すると得られる収入は約 75 万円,約 15,000 円/年となる。調査 地と同様の森林の場合,約 72 万円/ha,約 14,000 円/ha・年である。2005 年農林業センサ スより,日本の林家の 57%は保有山林面積3ha 未満である(森林・林業白書 平成 20 年版)。 また,この収入には保育費や人件費が含まれていない。これらの事実を踏まえると,林家が 林業のみで生計を立てていく,または林業を主収入としているとは考え難く,林業での収入 は非常に小さなものである。 林業での収入を増やすためには,やはり売却する丸太の価格を上げることが重要である。 高価格の丸太を生産するためには,下刈りや除伐などの最低限の保育作業がかかせない。さ らに,良質の丸太を生産しようとするならば,枝打ちや間伐が必要となる。これらを適切に 行うと,高価格な丸太の生産ができる(渡辺,1996)。 今回,演習林出荷木材の実際の落札価格から立米価格の算出を行った。その際,末口径 18 の立米価格は末口径 20 の立米価格よりも高くなった(表-8.)。これより末口径が大きけれ ば,つまり丸太が太ければ必ず高価格であるとは言えない。丸太が高価格になるには,丸太 の質も関係し,さらにまとめて競り落とされる丸太の本数も関係するのではないかと考えら れる。演習林出荷木材の場合,末口径 16 と 18 が,末口径の割に高く落札されている。これ は末口径 16 と 18 は出荷本数が比較的多いためではないかと考えられる(付表-7.)。 林業で高収入をあげるには,以下のことが考えられる。まず,広面積の森林を保有し,施 業をまとめて行うことが経費の節減になる。次に植栽樹木が木材として高価格となるように することである。木材として高価格にするには,除伐などの最低限の保育作業は必ず行い, 枝打ちや間伐などの保育作業も適切に行い,良質な木を育てることである。 しかし現状として,除伐などの最低限の保育作業ですらできていない。この背景には木材 価格の下落,後継者不足などによる林業の不振がある。林業不振だけではなく,人々の林業 への関心が薄くなったこともあると考える。森林所有者のうち森林所在地と異なる市町村に 移住する不在村者の保有する森林面積は私有林の 24%を占めており(森林・林業白書 平成 20 年版),森林所有者のなかには自分の森林がわからない人もいると思う。このように森林 から離れてしまった人々を森林へ呼び戻し,補助制度などの説明を行い,少しでも森林経営 に興味をもってもらうことが適正な森林管理へと繋がるのではないだろうか。 また,木材市場の需要や木材価格の月変動などを読み取り,出荷時期を考えることが必要 である。さらに,落札者の木材業者にはそれぞれ使用しやすい丸太の規格(径級と末口径, 長さと太さ)がある。これを考慮し,高価格で落札されるような規格を多くの本数を揃えて

(49)

(3)小面積調査法の検討

小面積調査法の検討として,標本地法の検討を行った。その結果,立木材積,立木密度で は過大推定が生じたが,平均胸高直径,平均樹高では過大推定は生じなかった。これは立木 材積と立木密度は面積当たりで算出され,胸高直径と樹高は立木ごとに算出されるため十分 にサンプルがあれば母集団の値に近づくことに違いがあると考えられる。 調査地全体,広範囲の森林を見てみると,沢,ササの繁茂,作業道など樹木の生育しにく いまたはできない場所があり,さらに対象樹種以外の樹木が多く生育している場所などもあ る。これらすべてを含めた森林であり,森林面積である。本研究の標本地は,林縁やスギ林 を除いた,調査地内のヒノキが均質に成立している場所から抽出された。そのため,面積当 たりで算出した立木材積や立木密度は過大評価になったと考えられる。平均胸高直径と平均 樹高は,面積当たりではなく立木本数当たりの平均値である。よって,標本地の面積や,合 計調査面積に関係なく,抽出する立木本数が多ければ正確な推定は可能であると考えられる。 推定材積や推定立木密度の過大推定は,実際の標本地調査でも,樹木の生育している場所か ら抽出されたとすると,このような過大推定は生じる可能性があると思われる。

(50)

6.おわりに

本研究の調査研究により1-ろ林小班内調査地のヒノキ人工林の林分構造がわかった。こ の調査地は斜面傾斜角が 20 度前後で,急傾斜地の多い位山演習林内では比較的傾斜が緩やか である。また,植栽樹種もほぼヒノキで長年間伐が行われず下層植生も少なく,学生の間伐 実習などに利用しやすい環境である。 本研究の調査地約 1.04ha を皆伐すると得られる収入が約 75 万円であり,約 72 万円/ha で ある。これは約 14,000 円/ha・年である。近年の木材価格の下落や後継者不足など,林業の 不振により適切な森林管理は難しい。しかし,森林の多面的機能に期待する声は多いため, 適切な森林管理はかかせない。よって,良質な木材の生産,高価格な丸太の取引により,林 業で少しでも高収入を上げることが必要であると考えられる。 小面積調査法として,標本地調査の検討では,実際の立木材積より推定材積のほうが過大 に推定されることがわかった。しかし,本研究の全立木毎木調査は,1日3~4人で8時間 程度調査を行い,計 20 日ほど実施して得た結果であり,非常に多くの労力がかかっている。 その点を踏まえると,標本地法による推定値も,過大評価された推定値であることを前提と して考えれば有効であると思われる。 最後になりましたが,本研究を行うに際してご指導をいただきました岐阜大学応用生物科 学部山地管理学研究室の石田仁准教授,位山演習林技術職員の谷口昇様,青木達雄様,都竹 彰則様,青木将也様,資料をご提供くださいました下呂総合木材市売協同組合の皆様,調査 にご協力くださいました岐阜大学応用生物科学部山地管理学研究室の学生の皆様,2008 年及 び 2009 年夏季フィールド実習での間伐実習受講生の学生の皆様,深く御礼申し上げます。

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