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図-13.樹皮率と樹幹での高さの相関(R2=0.03602)

図-11.から図-13.はそれぞれの相関を散布図で表したもので,図中の直線は回帰直線 である。それぞれの相関について調べた回帰分析の結果を表-5.に示す。

表-5.回帰分析結果

決定係数R

2

p値 樹皮厚-樹幹高さ 0.01381 0.3884 樹皮厚-皮付直径 0.05835 0.07289 樹皮率-樹幹高さ 0.03602 0.1612

表-5.より,回帰分析の結果,回帰式の決定係数R2はすべて0.06未満であり,p値はす べて0.07以上であったため,相関はないといえる。

樋渡(1985)より,樹皮厚を立木1本の中で高さに関係なく一定値にする場合,胸高直径 の一定割合を樹皮厚としている。これより樹皮厚は,得られた樹皮厚率の相乗平均3.95%(表

-4.)から,胸高直径の3.95%とした。

(5)価値評価

C区画約0.16ha内の2009年9月の間伐以降の保残ヒノキに対し価値評価を行った。その結

果を付表-6.に示す。C区画には間伐区があるため,C区画内の間伐区以外の場所を間伐 区外とした。C区画や間伐区内外の概要を表-6.に,C区画の樹幹の欠陥の本数と割合を 表-7.に示す。なお,C区画内のヒノキ以外の樹木は,オニグルミが1本のみなので,立 木本数・立木密度はヒノキのみである。枝・枝跡の数は多いものばかりで,少ないと判断し たものは1本のみであったため,記載を省略した。

表-6.C区画概要

C区画 間伐区 間伐区外

面積[ha] 0.1562 0.1170 0.0392

立木本数 136 78 58

立木密度[本/ha] 870.68 666.67 1479.59

表-7.C区画の樹幹の欠陥の本数と割合

C区画 間伐区 間伐区外 C区画 間伐区 間伐区外

通直 98 68 30 72.06 87.18 51.72

曲がり 38 10 28 27.94 12.82 48.28

曲がり小 26 9 17 19.12 11.54 29.31

曲がり大 12 1 11 8.82 1.28 18.97

樹幹の傷 26 9 17 19.12 11.54 29.31

根元から 21 8 13 15.44 10.26 22.41

途中から 5 1 4 3.68 1.28 6.90

樹幹の欠陥 本数 割合[%]

表-7.より,間伐実施後は立木密度,曲がりや樹幹に傷のある木の割合が低くなってい る。これは,2008 年および 2009 年の間伐では,曲がっているものや樹幹に傷があるもの,

成長が良くないものを伐採していく下層間伐を行ったためである。間伐区外についてみると,

曲がりのある木は約5割,樹幹に傷のある木も約3割を占める。また,樹幹の傷は根元から の割合が非常に高い。

図-14.欠陥の高さと範囲

図-14.はC区画全体における曲がり(黒点線)と樹幹の傷(赤実線)について樹幹での 高さと範囲を示したものである。点はその欠陥の出現した高さを示しており,点と線で示し たのはその欠陥の範囲である。これを見ても樹幹下部において多く生じているのがわかる。

林業で高価な丸太となるのは,傷などがなく通直で太い丸太である。1本の木で最も太くな るのは樹幹下部であり,これらの欠陥による林業的損失は大きい。なお,曲がり大の12本の うち4本は樹幹上部まで曲がっていた。この4本はすべて間伐区外にあったものである。

0 50 100 150

051015

樹木番号

樹幹での高さ[m] - -曲がり

- 樹幹の傷

表-8.間伐区外の欠陥の出現率と丸太の廃棄率

曲がり 樹幹の傷 曲がり 樹幹の傷

0.0 18.97 22.41 18.97 29.31

0.5 18.97 20.69 18.97 29.31

1.0 18.97 12.07 18.97 29.31

1.5 15.52 1.72 15.52 27.59

2.0 12.07 0 12.07 15.52

2.5 10.34 0 10.34 1.72

3.0 10.34 0 10.34 0

3.5 6.90 0 6.90 0

4.0 6.90 0 6.90 0

欠陥の出現率[%] 丸太廃棄率[%]

樹幹高さ[m]

表-8.は,間伐区外の曲がりと樹幹の傷それぞれについての欠陥の出現率と丸太廃棄率 を示したものである。それぞれ間伐区外のヒノキ58本に対する割合を示している。欠陥の出 現率とは曲がり,樹幹の傷が目で確認できた木の高さ別の割合のことである。丸太の廃棄率 とは丸太として価値の低い曲がりや傷のある部分を廃棄する高さ別の割合のことである。曲 がりは調査で曲がり大と判断した部分のみを廃棄とした。樹幹の傷がみられたものは傷によ り内部の変色が予想される。この変色は価格下落に繋がるため,変色があると予想される傷 のみられた範囲から上下1mを廃棄とした。

C区画全体ではなく間伐区外を対象にしたのは,現在の調査地全体はあまり間伐が行われ ておらず,欠陥の割合などを表すには割合の低い間伐区を除くのが適していると考えたため である。なお,曲がり大の樹幹上部まで曲がっている4本は,曲がっている部分を廃棄して も丸太になる部分が残らないと判断し,立木1本廃棄とした。

立木のうち約7%は曲がりのために廃棄となる。また樹幹の高さ2.5m以下では最大約30% の本数の丸太を廃棄となる。

(6)丸太の価格・収穫量・落札価格の予想

実際の丸太落札価格を付表-7.に示し,加重平均により位山演習林の材の末口径別丸太 立米価格を算出した(表-9.)。

表-9.末口径別丸太立米価格 径級[m] 末口径[cm] 立米価格[/m3]

3 10,11 5,000

12,13 8,000

14 13,477

16 19,637

18 21,056

20 19,152

22 18,000

24 21,000

26 15,000

28 20,000

30 25,000

※末口径8,9cmは1本単価で200円

表-9.の欄外にあるように,末口径8~9cmのものは1本単価200円で取引されている。

出荷がなかった末口径に関しては前後の大きさの末口径から推定した。

現在の調査地全体のヒノキについて,相対幹曲線を当てはめ,丸太の本数の収穫予想を行 った。結果を表-10.と図-15.に示す。

表-10.調査地1.04ha内の丸太の収穫予想本数と材積

1番玉 2番玉 3番玉 1番玉 2番玉 3番玉

8 1 3 32 0.019 0.058 0.614

9 3 8 65 0.073 0.194 1.580

10 3 17 86 0.090 0.510 2.580

11 8 35 125 0.290 1.271 4.538

12 6 45 114 0.259 1.944 4.925

13 27 62 103 1.369 3.143 5.222

14 69 189 172 4.057 11.113 10.114

16 135 212 84 10.368 16.282 6.451

18 173 177 20 16.816 17.204 1.944

20 207 93 5 24.840 11.160 0.600

22 165 28 0 23.958 4.066 0

24 66 8 0 11.405 1.382 0

26 17 2 0 3.448 0.406 0

28 7 0 0 1.646 0 0

30 3 0 0 0.810 0 0

32 0 0 0 0 0 0

計 890 879 806 99.448 68.733 38.567

合計 末口径 本数

[cm]

材積[m3]

2575 206.748

0 50 100 150 200 250

8 9 10 11 12 13 14 16 18 20 22 24 26 28 30 32

本数

末口径 [cm]

1 番玉 2 番玉 3 番玉

図-15.丸太の収穫予想本数

表-10.は丸太の末口径別収穫予想本数と材積,図-15.は収穫予想本数のグラフである。

表-10.から胸高直径8cm以上のヒノキ立木899本中,丸太の収穫予想本数は合計2592本,

丸太の収穫予想材積は207.46m3となった。

表-11.立木材積と丸太材積 立木材積[m3]

(立木幹材積表)

丸太材積[m3]

(相対幹曲線)

調査地1.04ha 301.69 206.75

/ha 290.09 198.80

歩留り 0.69

表-11.より,立木材積と丸太材積の比率から丸太歩留りは0.69となった。よって,立木

材積の69%が丸太となると推定された。

この丸太の収穫予想(表-10.),作成した丸太立米価格(表-9.)から,調査地内の全ヒ ノキを伐採し,出荷したときの落札価格を予想した。それを表-12.に示す。

表-12.調査地1.04haの落札価格予想

1番玉 2番玉 3番玉

8 200 600 6,400

9 600 1,600 13,000

10 450 2,550 12,900

11 1,452 6,353 22,688 12 2,074 15,552 39,398 13 10,951 25,147 41,777 14 54,679 149,773 136,301 16 203,596 319,722 126,682 18 354,069 362,256 40,933 20 475,736 213,736 11,491

22 431,244 73,181 0

24 239,501 29,030 0

26 51,714 6,084 0

28 32,928 0 0

30 20,250 0 0

32 0 0 0

計 1,879,444 1,205,583 451,570 末口径

[cm]

価格

表-12.より,相対幹曲線を用いて丸太の収穫予想,落札価格予想を行うと,約 354 万円 の収入が見込める計算となった。

しかし前述の通り,相対幹曲線を用いた丸太価格の推定は丸太の長さと太さのみからの推 定である。つまり,表-12.の落札価格予想には曲がりやくまはぎなど樹幹の欠陥による損 失が含まれていない。よって,価値評価の結果より,間伐区外の価値評価前後における丸太 の収穫予想本数・落札予想金額の変化を検討した。

表-13.間伐区外の価値評価前後の末口径別収穫予想本数

1番玉 2番玉 3番玉 1番玉 2番玉 3番玉

8 0 0 1 0 0 2

9 0 0 4 1 0 5

10 1 0 6 0 1 6

11 0 0 6 0 1 4

12 0 4 9 0 5 8

13 0 4 5 0 5 5

14 3 11 15 6 8 13

16 11 13 6 11 13 3

18 12 13 3 7 13 2

20 12 6 0 12 3 0

22 9 5 0 11 3 0

24 6 1 0 3 1 0

26 3 0 0 2 0 0

28 1 0 0 1 0 0

30 0 0 0 0 0 0

計 58 57 55 54 53 48

合計

価値評価前・本数 価値評価後・本数

末口径 [cm]

170 155

0 5 10 15 20 25 30 35

8 9 10 11 12 13 14 16 18 20 22 24 26 28 30

本数

末口径[cm]

価値評価前 価値評価後

図-16.間伐区外の価値評価前後の末口径別収穫予想本数

表-13.は丸太の末口径別収穫予想本数を価値評価前後で比較したもの,図-16.はその グラフである。表-13.と図-16.より,価値評価後のほうが末口径の大きいものが少なく なっているのがわかる。これは,価値評価により立木の根元側の部分が曲がりや傷により廃 棄され,先端の細い部分から丸太を得ているためである。

表-13.の収穫予想,丸太価格(表-9.)から,表-12.と同様にC区画間伐区外のヒノ キの落札価格予想を行った。それを表-14.に示す。

表-14.間伐区外の価値評価前後の落札価格計

1番玉 2番玉 3番玉 1番玉 2番玉 3番玉

8 0 0 200 0 0 400

9 0 0 800 200 0 1,000

10 150 0 900 0 150 900

11 0 0 1,089 0 182 726

12 0 1,382 3,110 0 1,728 2,765

13 0 1,622 2,028 0 2,028 2,028

14 2,377 8,717 11,887 4,755 6,340 10,302

16 16,589 19,606 9,049 16,589 19,606 4,524 18 24,560 26,606 6,140 14,327 26,606 4,093

20 27,579 13,789 0 27,579 6,895 0

22 23,522 13,068 0 28,750 7,841 0

24 21,773 3,629 0 10,886 3,629 0

26 9,126 0 0 6,084 0 0

28 4,704 0 0 4,704 0 0

30 0 0 0 0 0 0

計 130,380 88,420 35,203 113,873 75,003 26,738 合計

末口径 [cm]

価値評価前・価格 価値評価後・価格

254,003 215,615

表-14.より,C区画間伐区外の価値評価前後の落札価格は約38,000円減少し,その割合

は84.89%となった。 これら価値評価前後の減少率を丸太の本数・材積・落札価格それぞれ

についてまとめ,調査地1.04haに反映させた結果を表-15.に示す。

表-15.調査地1.04haにおける価値評価前後の丸太本数・材積・落札価格

丸太本数 2575 91.18 2348

丸太材積[m3] 206.75 86.72 179.30 落札価格 3,536,597 84.89 3,002,102

価値評価前 価値評価による

減少率[%] 価値評価後

表-15.より,調査地1.04ha を皆伐すると,丸太の本数2348本,丸太材積179.30m3の収 穫が予想され,落札予想価格は約300万円となった。この約300万円というのが,曲がりや くまはぎによる樹幹の欠損を含めた,より現実の収入に近い金額だといえる。

また,木材を木材市場に出荷する際に各種手数料がかかる。下呂木材市場に出荷するため にかかる手数料は表-16.の通りである。

表-16.調査地1.04ha皆伐時の手数料と収入合計額 179.30

2348

収入 3,002,102

150,105

支出 -1,858,085

市場費用: 椪積料[\1,050/m3] -188,265 市場手数料[落札価格の8%] -240,168 -114,326 751,363 落札木材材積[m3]

消費税[5%]

収入合計額 落札丸太本数

落札価格消費税[5%]

木材落札価格計

搬出費[\10,363/m3]

表-16.の材積は,表-13.の価値評価後の減少割合を用い,収穫予想の丸太材積207.455

(表-10.)の86.72%(表-13.)として算出した。表-16.の,搬出費(10,363円/m3),

市場費用としてはえ積料(1,050円/m3)と市場手数料(落札価格の8%)は社団法人岐阜県 森林公社(2009)の資料を参考にした。その結果,手数料を除いた純収入合計額は約75万円 となった。これを林齢の50年で割ると約15,000円/年となる。調査地は約1.04haなので,

調査地と同様の森林の場合,約72万円/haの収入が見込める計算になった。これは約14,000 円/ha・年である。しかし,この収入には保育費や人件費などは含まれておらず,実際の純 収入はもっと少ないものになる。

表-17.材積の比較

調査地1.04ha 301.69 206.75 179.30

/ha 290.09 198.80 172.40

丸太材積[m3]

(相対幹曲線)

丸太材積[m3]

(価値評価後)

立木材積に

対する歩留り - 0.69 0.59

立木材積[m3]

(立木幹材積表)

表-17.は立木材積と丸太材積,さらに価値評価後の丸太材積を比較し,歩留りを算出し た結果である。立木材積(立木幹材積表)から相対幹曲線により算出した丸太材積の歩留り は0.69,さらに価値評価後の丸太材積の歩留りは0.59となった。本研究の調査地では,立木 材積から簡易的に丸太材積を求めたい場合,59%で推定することが最も現実に近い値になる。

しかし,価値評価は森林によって大きく異なると考えられる。よってこの歩留りは本研究 の調査地固有のものであり,演習林の他の林班や他の森林に適応できるとは考え難い。樹幹 の欠陥は森林の管理状況や,地形や気候など周辺環境に大きく影響されると考えるからであ る。よって,他の森林では,相対幹曲線により算出した丸太材積の歩留り0.69という値を参

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