愛総研・研究報告 第14号 2012年
相互浸透型有機薄膜太陽電池の開発
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Hasikawa
t tAbstract When preparing organic thin film solar ce11, the wet process巴民suchas spin coating method and the
drop casting method are genera11y used for the fabrication of organic thin film solar cell.
The spin coating and the drops casting methods are simple techniqu久thehigh-quality thin film and they are suitable for the system of mass production, such as ro11 to ro11. On the other hand, by these methods, two or more layers preparing by the solvent ofth巴samekind are very difficult, and ne巴dselection of the solvent which does not damage the organic thin film used as a lower layer. However, the organic semiconductor typica11y used by organic thin film solar ce11 have the hydrophobic property. Therefore, multilayer is difficult and the semiconductors used as an organic solar ce11 wi1l be limited‘In anoth巴r,by using the spray coating method, the damage to lower layer films by solvent can b巴lessened.In this paper, organic thin film solar ce11s are prepared by spray coating method and evaluated the characteristics 1.緒 言 ウェットプロセスで有機薄膜太陽電池を作製する際、有 機薄膜の製膜にはスピンコート法やドロッフ。キャスト法 等の製膜法が一般的に使用されている。スピンコート法や ド、ロップρキャスト法は非常に簡便な製膜方法で且つ、高品 位な薄膜を得ることができ、ロール・ツー・ローノレ等の大 量生産の方式に適していると言える。一方で、これらの製膜 法では、同種の溶媒を用いて作られた溶液での複数回の製 膜は非常に困難で、あり、下層となった有機薄膜を傷っけな い溶媒の選定が必要である。しかし、有機薄膜太陽電池で 代表的に使用される有機半導体材料は親溶媒材料の性質 を持っている。そのため、積層化が困難であり、有機太陽 電池として使える材料の種類が限定されてしまう。一方、 スプレーコート法を用いた製膜では溶液を細かい噴霧粒 子を重ねていくため、スピンコートで発生する遠心力等の 物理的な下層膜へのダメージを少なく出来る 1)。 十 愛 知 工 業 大 学 工 学 部 電 気 学 科 ( 豊 田 市 )
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日本電話施設(株) (名古屋市) 次に、現在主な研究がされている有機薄膜太陽電池の接合 はバルクヘテロ接合を有している素子である問。バルク ヘテロ接合の素子で、はp-nヘテロ接合の非効率な電荷分離 を改善するために見出された接合方法だが、電子供与体と 電子受容体がブレンドされているために電荷移動経路が 複雑で電子供与体と電子受容体の相分離のコントロール が非常に難しい。その解決のため、電子供与体と電子受容 体を相互に浸透させた相互浸透型接合が提案されている。 そこで本研究では、以上の2つの利点を実現させるため に、スピンコート法で製膜した電子供与体の上にスプレー コート法を用いて電子受容体を製膜し相互浸透型有機薄 膜太陽電池を作製し、その評価・検討を試みた。 2.使用材料 図 l に p 型 有 機 半 導 体 高 分 子 と し て Poly[[ 4,8-bis[(2-ethylhexyl)oxy ]be回 0[1,2-b:4,5-b']由 民ophene -2,6-diyl] [3 -fluoro-2-[ (2-ethylhexyl)carbonyl]thieno[3, 4-b ]thiop 1920 愛知工業大学総合技術研究所研究報告,第 14号, 2012年
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図 1PTB7の分子構造 図 2PC7IBMの分子構造 henediyl]][PTB7](l-material社製)と図 2に n型有機半導体と して[6ぷ]司PhenylC71bu守ricacid methyl ester [PC71BM]( American Dye Sourceヲ Inc社製)を用いた。添加剤として lふDiiodooctane[DIO](東京化成工業株式会社製)を用いた。 PTB7/PC7IBMクロロベンゼン混合溶液に DIO添加した。 3.作製手順 基板として ITOガラス基板(朝日ガラス社製25Q)を用 いた。 ITOガラス基板の上にマスクを 3mm幅に貼り付け、 それをアノード電極として塩酸蒸気下で曝露した。その 後、十分な流水で残留した塩酸を除去し、マスクを剥が した。基板の洗浄には超音波洗浄機を用い、中性洗剤、 蒸留水、アセトン、エタノールの順に各 10分間超音波洗 浄を行った。 次に電子パップァ一層として、 PEDOT:PSS(Heraeus 製 Clevios™pAI4083)膜を膜厚が平均 30nm程に 製膜した。製膜に当たって基板との接触性を良好にする ため、基板に対し真空紫外線を 10分間照射し、親水性を 高めた。その後スピンコート法を用いて 5000rpmで 30 秒間製膜し、 120度のオープンで過熱乾燥をした。 活性層にクロロベンゼ、ンを溶媒として PTB7 及 び PC71B Mをそれぞれ lwt%になるように溶かした。この実 験では、それぞれの PTB7と PC71B M溶液に DIOを lml に対し 3vol%添加した溶液及び DIO未添加溶液の計 4種 類の溶液を用意した。 先ず、作製した添加または未添加 DIOの PCB7溶液を 滴下し、スヒ。ンコート法を用いて 1000rpm 30秒間で製膜 し、第 1層とした。次に相互浸透型接合を実現するため にスプレーコート法(ノズノレ口径:0.2mm,噴射 圧 0.05Mpaラキャリアガス:窒素を用いて添加または未 添加 DIOの PC71B M溶液をスプレー噴霧時間 20秒間と し相互浸透膜を製膜した。最後にカソード電極としてア ルミニワムを真空蒸着法にて有効受光面積が 9mm2にな るように作製した。作製した有機薄膜太陽電池は、キセ ノンランフ。光源をエアマスフィルタにより A M1.5 100 mW/cm2に調整したソーラシミュレタ光で、電流【電圧特 性を測定した。 4. UV/visスベクトルによる評価 図 3に DIO添加、未添加 PTB7の UV/visスベクトノレ、 図 4に DIO添加、未添加 PC71B M単体の UV/visスベクト ノレ、図 5に添加、未添加、両添加 PTB7/PC7IB M薄膜の UV/visスベクトノレを示すo 図 30を見ると、 PTB7に DIO を添加した UV/visスベクトルの変化は特に見られないが、 図 4を見ると PC7lB Mに DIOを添加した UV/visスベクト ノレはピークがブルーシプトしていることが分かる。この ことから、 DIOが PC71B Mに対して凝集体の形成を阻害 する作用があると考えられる。これは、 DIO添加 PC71B M が PTB7薄膜中に一様分散すること、言い換えれば、 PTB7・PC7lB M複合薄膜でヘテロ界面が増大することを 示唆する。 次に、図 5のグラフを見ると、 PTB7に DIOを添加し た薄膜と未添加のスベクトノレに変化が見られない。一方、 PC71B Mに DIOを添加したものは 350nmから 700nm付近 までブロードな吸収があることから、太陽光の収集効率 の増大が期待され、有機薄膜太陽電池の効率向上が期待 できる。 0.9 { 8 韮0.8
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0.2 0.1 300 400 500 600 700 800 900 Wavelength [nm] 図 3 DIO添加、未添加 PTB7の UV/visスベク トノレ 0.9 【 司0.8 3 言。.7 g 'f0.6 偲 ~ 0.55
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2 0.1 300 400 500 600 700 800 900 Wavelengih [nm] 図 4 DIO添加、未添加PCnBM
単体の UV/visスベクトノレ相互浸透型有機薄膜太揚電池の開発 0.8 宮0..777
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同一PTB7IPC7IBM+DIδ両蕊茄 一一一一一一一一 司 0.1~一一一一一一一一一一一ー 一一九ーー 300 400 500 600 700 8。由 Wavel叩 gthInm] 図5添加、未添加、両添加PTB7IPC71B M 薄膜のUV/visスベクトノレ 5.原子間カ顕微による各条件下で成膜した薄膜表面の 観 察 図 6 PTB7薄膜表面のAFMイメージ(a:DIO未 添加、 b:DlO添加) 表 1 PTB薄膜の表面パラメータ PTB7 DIO未添加 PTB7+DIO添加 間 S[nm] 高低差[nm] 1.17 11.1 3.12 24.2 表 2各PTB7IPC71B M薄膜の表面パラメータ 作製溶液 自 乗 平 均 面 粒 さ 高低差[nm] [nm]P
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DIO無添加 2.16 22.6 PTB7十DlO添 加 IPC71B恥4 13.0 57.7 PTB7IPC71B M 十 DIO添加 3.19 23.7 PTB7IPC71B M + DIO両添加 3.23 26.5 表 3 各薄膜の膜厚 膜厚[nm] PTB7単体 70 PTB7単体十DIO添加 80P
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DIO未添加 150 PTB7+DIO添加IPC71B M 160 PTB7IPC71B M + DIO添加 160 PTB7IPC71BM+DIO両添加 170図7各PTB7IPC71B M薄膜のAFMイメージ(a:DlO 未添加、 b:PTB7にのみDIO添加、 C:PC71B Mのみ にDIO添加、 d:両方にDIO添加) 図 6に PTB7単体膜の AFMイメージ、図 7に各
PTB7/PC71BM
薄膜のAFMイメージ、表lにPTB7単体、 表2に各薄膜の表面パラメー夕、表3に各薄膜の膜厚を示 す。 図6のAFMの形状象や表 1の表面パラメータから、 PTB7にDIOを添加したものはDIOを添加していないのに 比べて、 RMS値並びに高低差が増大していることが分か る。このことから、 PTB7のDIO添加はPTB7に微細なグ レインの形成を促進しているのではなし、かと推察される。 この微細なグレインが表1のRMSの微増に起因している と考えられる。また、図7の(b)のようにPTB7にのみDIO を添加した場合上部のPC71B M層に大きなグレインが見ら れる。これは、下層である PTB7層のグレインが上部の PC71B Mの表面AFMイメージに反映しているのではない かと示唆される。 (c)及び(ののようにPC71B MにDIOを 21愛知工業大学総合技術研究所研究報告,第 14号, 2012年 2mmHgの時 1440Cと高いことから PTB7層に対して噴霧さ れた PC71B Mが乾燥する時間が遅くなり PTB7層に浸透す る時聞が長くなったのではないかと、また、 PC71BM膜中、 大きな界面グレインが形成されないことに密接に関係す ることが示唆される。 添加した場合にはその凝集が見られない。このことは、 DIOが PC71B Mに対して良溶媒として働き、噴霧による凹 凸を滑らかにしているのではないかと考えられる。これは DIOを添加した PC7IBM単体の UV/visスベクトノレの結果 と一致する。 22 まとめ 7. 6.各条件下で作製された PTB7IPC71B M相互浸透型有機 薄膜太陽電池のJ-V特性 本研究では、相互浸透型有機薄膜太陽電池を作製し、そ の特性を評価した。スヒ。ンコート法で作製したp層の上部 にスプレーコート法で噴霧したn層によって相互浸透界面 を有する有機薄膜太陽電池を製作し、ウェットプロセスの みで作製出来ることを示した。これは、従来の真空蒸着(ド ライプロセス)とスヒ。ンコート法(ウェットプロセス)を用 いて作製されていた相互浸透型有機薄膜太陽電池の脱真 空、低温化によって大幅なコスト削減を意味する。また、 PCDTBT に関わらず他の高分子材料にも適用可能で、ある ことを示す。さらに、無機太楊電池のような多堆積層構造 を有する太陽電池の作製を有機薄膜太陽電池で発展・応用 出来る可能性を示す。 0.9
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ι7 0.8 ト判~PTB7IDIO添加IPC7lBM 0.6 0.5 0.4 0.3 0.2 0.1 0.1 同 刊 阿 国 ω ¥ ︿ 国 同 ︼ み お 由 罰 則 ぷ 可 制 国 曲 ・ 同 ﹄E
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図8各条件下で成膜された PTB7/PC7IBM 相互浸透型有機薄膜太陽電池の J-V特性 謝辞 「本研究は文部科学省私立大学戦略的研究基板形成支援 事業(平成 22年 平成 26年)により実施した」 各 PTB7IPC71B有機薄膜太陽電池の 特性パラメータ電圧電流特性 表41) Sung-Eun Park, Jun-Young Hwangラ Kangmin K.im,
Buyoung Jung, Woochul, Jungho Hwang,: Spray d巴positionof electrohydrodynamically atomized polymer mixture for active layer fabrication in organic photovoltaics, Solar Energy Materials& Solar Cells, 95 (2011) 352
2) SSung Heum Park, Anshuman Roy, Serge Beaupre, Shinuk Cho, Nelson Coatesラ Ji Sun Moonラ Daniel Mos巴s,Mario
Leclerc, Kwanghee Lee, Alan j. Heeg巴r.:Bulk heterojunction solar cells with intemal quantum efficiency approaching 100%, Nature Photonicsヲ3ラ(2009)297
3) Yougye Liang, Zheng Xu, JiangbinXia, Szu-Tsai, Yu巴Wu,
Gang Li, Claire Ray, Luping Yu, :For the bright Future -Bullc HeteroJunction Ploymer Soler Cells with Power conversion Efficiency of7.4%, Adv. Mater, 22.(2010) 1 参考文献 各素子の DIO 開放電圧 短絡電流密 曲線因 光電 添加の有無 VodV] 度 子 変換 JsdmA/cm2] FF 効率 PTB7/PC71B恥f η[%] DIO無添加 0.75 3.24 0.49 1.24 PTB7+DIO 添加/PC71B M 0.76 3.43 0.48 1.24 PTB7IPC71B M 0.74 +DIO添加 10.51 0.45 3.54 PTB7IPC71B M 0.74 +DIO両添加 9.84 0.46 3.46 図8に各素子の J-V特性、表 4に各素子の諸特性を示す。 DIO未添加および PTB7にのみ DIOを添加した太陽電池 は、電力変換効率に大きな差はない。一方、 PC71B Mに DIO を添加した場合効率が飛躍的に向上している。特に、短絡 電流密度 Jscの増大が著しい。このことから、DlOによっ て PC71B MとPTB7との相互浸透界面を増大させ励起子の 生成量を増やしていると考えられる。 DIOの沸点が