児童期 における意見表明の諸形態 とその発達
田丸 敏高
*1,井
戸垣直美*2,日
村崇
*3,田
中 恵子*3A developmentttt study on foコ ms of expression of views in school children
TAMIARU TOShitぷ (a*1,IDOGAKI Naomi*2,TAMtlRA TakaShi*3,TANAKA Keiko*3 キー ワー ド:意見 表 明
,児
童期,発
達Kcy Words:Expression of vie、vs,School children,Development
は じめ に 発達心理学は
,人
間の生涯をい くつかの時期 に区切って理解 しようとする。一般には,胎
児期 を 別にすれば,乳 児期,幼 児期,児
童期,青
年期,壮
年期,中年期,老
年期 というように区分 される。 こうした時期区分の上に立ってみると,そ
れぞれの時期に理論的にも実践的にも特有の研究の意義 が認められる。発達過程におけるそれぞれの時期特有の心理を認めることは,子
どもが子 どもらし く生 きる権利保障や障害をもつ子 どもを含めすべての子 どもの発達保障へ とつながってい く。発達 段階を認めない立場であっても,便
宜上はこうした区分を認めて研究するし,認
知心理学や臨床心 理学など発達心理学以外の心理学でも時期区分 を抜 きにして人間心理一般を語ることは難 しい。ま た,このような時期区分は,発
達段階との理論的な区別は別にしても,一
般にも流布 している。 発達の時期区分や発達段階という考え方は,い までこそ人口に恰久 しているが,昔からそうであっ たわけではない。こうした考え方は,子 どもの権利思想によつて準備 されたものである。たとえば, 18世紀のルソーの思想は,子
どもが子 どもらしく振 る舞い,子
どもらしく考えることなど,子
ども が子 どもとして生 きる固有の権利を認めるが故,後
の発達段階論の先駆 となっている。また,19世 紀のダーウインによる実子の「伝記的素描Jに
始 まり,ビ
ネーやゲゼルなどの科学的な研究に結実 する子 ども研究は,子
どもの権利 を認め,あらゆる子 どもの発達の社会的保障を促す うえで重要な 役割 を担 うことになる。さらに,20世紀前半の「児童の権利に関するジュネーブ宣言」や新教育逗 動は,心
理学研究にも影響を与え,ピ
アジェやヴィゴーツキー,ワロンの発達理論を生み出してい くことになるし,また彼 らの発達理論が子 どもの権利録障の理論的な根拠 ともなってい く。 このように大局的に見ると,発
達心理学の理論的発展は子 どもの権利思想の深化 と相互依存的関 係にあると言える。 もちろん,発
達理論には,第
1に それ自身のもつ整合性,第
2にそこか ら多様 な研究が生 まれるという意味での生産性,第
3に教育へ貢献するなどその実践性,第
4に真理 を解*ユ発達心理学研究室 Depa血正IIt of DevclopmcntЛ Psychology
*2附属教育実践研究指導センター Universily EducationЛ Celattr for Practical Studies alld Tcaching *3教育学研究科学校教育 Gl・記uttc School of Education,School Educttion
田丸敏高 ・井戸垣直美・田村崇 田中恵子 :児童期 における意見表明の諸形態 とその発達 明するという科学性
,な
どが問われることは言 うまでもない。 しか し,人
類の認識の発展 という見 地か らすると,子
どもについての心理学的な認識は子 どもの権利についての法的な認識 とつながっ ているし,またそうなることによって科学的研究の成果が現実的な力をもつことに至る。 ところで,1989年11月20日 に国連で採択 され,我
が国で国会批准の上1994年 5月22日 に発効 した 「児童の権利 に関する条約」(子どもの権利条約)は ,子
どもの権利思想の発展においてはもちろ んのこと,発
達心理学研究の理論的な深化 をはかる上で も重要な意義 をもつ ものである。 しか し, そうした重要性に比 して,い
まだそれに関連 した心理学的研究に乏 しいのは残念な事態であると言 わざるを得ない。「子 どもの権利条約」において,「意見表明権」は重要な地位 を占めることとなっ たが,この「意見表明権」を子どもに実質的に保障するのはたやすいことではない。子 どもの発達 段階に即 して意見表明の場や相談相手が提供 されなければならない し,また子 ども自身意見表明す るための能力 を発達させてい くことが求められる。だが,今
のところ,意
見表明の諸条件や子 ども の意見表明の発達可能性について実証的な研究はほとんど見 られない。こうしたなか,本
稿 は,児
童期 に焦点を当て,子
どもの意見表明の発達を明 らかにしようとするための萌芽的な研究である。 ところで,鳥
取大学の発達心理学研究室では,1985年以来10数年にわたり,子
どもの社会認識に 関するデータを1え集 し,そ の発達論的な整理を行 ってきた。そ して,社
会認識の発達には,幼
児期, 児童期,青
年期それぞれに特有の様相があること,社
会についての思考の発達 という観点か らする と,児
童期では9,10歳
頃を分岐点として,場
面的思考から推論的思考へ,自分中心的思考から客 観的社会的思考へ,自然物的思考から社会関係的思考へ と展開してい くこと,さらに「発達期」 と 「発達段階」 とは概念的に区別 して用いる必要のあることなど明らかにしてきた(D9)。 こうした社 会認識 に関する研究は,子
どもの意見表明に関する研究に対 し示唆を与えている。認識は表現 と表 裏の関係にある。表現 を通 して認識 し,認
識を通 して表現する。意見表明は,認
識であると同時に 表現で もある。こうして,意
見表明を姑象 とした枡究 を進めてい くことは,認
識を基準 にした発達 理論 を,表
現をも視野に入れた人格的な発達理論へ と発展 させてい くことにつながるのではないだ ろうか。 問 題 と 目的 1924年国際連盟総会において「人類が子 どもに対 して最善のものを与える義務 を負 う」 と謳 つた 「子 どもの権利宣言」(ジュネーブ宣言)が
採択 された。そ して,1948年「世界人権宣言」 を受け て,子
どもという固有性においてその権利を深めることが重要であるとして,「子 どもの権利宣言」 が国連総会で1959年に採択 された。そこでは,親
をはじめ地方行政機関および政府 に対 して も,子
どもの権利を遵守するための努力を要請している。同時期,日本では1951年に「児童憲章」力諦U定 され,そ
の冒頭には「児童は人として尊ばれる」 と記 されている。その後,1989年に「子 どもの権 利条約Jが
第44回国連総会で採択 され,日本は1994年にこれを「児童の権利に関する条約」 として 158番目に批准 した。 「子 どもの権利条約Jは
世界中の子 どもの危機的状況 を解決するための権利保障の基準 を示す も のである。ユニセフの統計 (1998)に よると,世
界中で5歳未満の子 どもたちが年間11,694,000人 死亡 しているという。)。「子 どもの権利条約Jの
背景 には ,このように子 どもたちが貧困や飢え, 戦争などによって死亡 しているという事態や,多
くの子 どもたちが路上生活や劣悪な労働条件ある いは性的暴力などのもとにおかれているという現状がある。このような子どもの生存や発達の侵害鳥取大学教育地域科学部紀要 教育 ・人文科学 第
1巻
第1号
(1999) は,何
も発展途上国や戦争がおこっている地域 に限ったことではない。 日本でも,子
どもたちをと りまく実際的な問題は多様化 し複雑化 してきている。い じめや不登校,非行,虐
待,薬
物に加えて, 教育現場では「子 どもの荒れJが
問題 となっている。「荒れ」 という言葉でまとめられているが, 個々の子 どもたちが抱えている問題は,家
庭崩壊や子育て環境の荒廃,遊
び場や遊ぶ時間,子
ども が休息する時間が保障されていないことなど様々であると考えられる。 さて,「子 どもの権利条約」の中で,子
どもの権利の主体的行使 を最 もよく示 しているのが「第 12条 意見表明権Jで
あろう。12条は,子
どもが自分の見解 を自由に表明する権利 を探障するもの である。しかし,子 どもにとって意見を表明するのは容易なことではない。なぜなら,そ こには様々 な心理的葛藤があると考えられるか らである。例 えば,意
見を求められるような場面で,「自分の 考えを言おうか?相手の言 うとお りに従順 に同意 しようか?」「こんなことを言って嫌われた りし ないだろうか?J「自分の考えはあるけど,相
手に言 うだけの自信が 自分にはないな。Jと
いう気持 ちが,意
見表明 という行為そのものを困難にしていることもある。また,実
際に自分の考えを表明 するときも,説
得的に意見 を言 う場合 もあれば,怒
ってすねて しまうことで気持ちを表現 しようと する場合 もある。このような芯理的葛藤 を乗 り越えなが ら,子 どもは意見 を表明 してい くのである。 ところで,意
見表明はどのようにして発達 してい くのであろうか。 ある子 どもが非行 を疑われた場合,「お前がやったんだろう」 と言われ「やっていないJこ
とを 証明することは難 しい。むしろ,や
ったことにしておいてその場をしの ぐ方が早 く解放 してもらえ ると信 じて,あえて自己主張 しない子 どももいるだろう。子 どもが自分な りの論理を示 しながら考 えをまとめ,そ
れを表明することは,そ
の子 どもの認識の発達にも関わる。社会認識や論理性の発 達は,意
見表明の発達において 1つ の重要な側面ではある。 もし,子
どもが意見を表明する際の論 理性や説得力だけを問題にするのであれば,子
どもは自らに関わる事項について何歳 になれば意見 表明が可能になるのか という議論が生まれるか もしれない。14歳になれば意見表明で きるようにな るのか,10歳になればできるようになるのかというような議論は子 どもの能力に重 きをおいた考え 方である。 しか し,意
見表明 とは子 どもが一方的に意見を述べるのではなく,意
見 を聞いて くれる 相手を必要 とする行為である。つまり,意
見表明は一種のコミュニケーションであ り,そ
のコミュ ニケーションにおいて形成される相手 との関係によって,様
々な現れ方をするものである。 子 どもたちが1日 の大半 を過ごす学校では,子
どもが意見を求められる場面が多 く存在する。学 校生活の中で子 どもたちは,友
だちや教師に対 して自分の考えや気持ちを表明する。子 どもが休憩 時間や遊び時間を教師に要求 しようとするとき,「先生は何 を言つて も聞いて くれない」 と思い込 んで自分の意見を言わないこともあるか もしれない。逆に「先生ならわかって くれるかもしれないJ と信 じれば,自分の気持ちを表現する子 どももいるだろう。友だちに対 して意見 を表明するときも, 「みんなの前で言うのは恥ずかしい」「こう思うけど相手に言う自信がない」「みんなと違うことを 言 うのは…Jというような消極的な気持ちと「みんなのために言 うべ きではないか」 という気持ち との狭間で,子
どもの心理は揺れ動 く。単に論理的に話をするだけでなく,子
どもが自分の感情や 態度を表現することも意見表明の 1つ の側面であろう。 ここで,意
見表切について心理学的に整理 してみよう。その領域の知識が蓄積 しさえすれば,子
どもは意見表明が可能になるのであろうか。あるいは,ピ
アジェがぃう具体的操作期か ら形式的操 作期へ と移行 してい く段階にある子 どもは,認
識の発達 と平行 して意見表明が可能になるのであろ うか。あるいは,子
ども自身の性格によって,意
見表明するか しないかが規定されて しまうのであ ろうか。田丸敏高 ・井戸垣直美 ・田村崇・田中恵子:児童期における意見表明の諸形態 とその発達 私たちが明 らかにしようとしている意見表明 とは
,意
見を表明する相手 との人間関係の中で自分 の認識だけでなく感情や態度を表現するという人格的な行為である。確かに「宿題は絶対 にやらな ければならない」「給食は全部食べなければならないJというような認識のもとでは,意
見表明は 生まれないか もしれない。認識の発達 も意見表明の発達の重要な側面であることはもちろんである が,そ
れだけではな く意見表明は人格の発達 とも関わつている。ワロンのいう「多価的人格 とカテ ゴリー的思考」の段階にある子 どもたちの人格は,相
手 との関係の変化 においてのみ機能するので はないか。子 どもが意見 を求め られるときも相手 との関係によって子 どもの人格は変容 し,ゆ
えに 意見表明も多様な回答様式 として現われるのではないだろうか。そこに,従
来の認識の発達や性格 の問題 としてはとらえきれない,意
見表明特有の発達があると考えられる。 では,意
見表明特有の発達があるとすれば,そ
れはどのようなものであろうか。本稿は,1997年 および1998年の2度にわた り同一の小学校における児童に対 しておこなった調査をもとにしている。 1997年調査は,親
や教師・友だち 。地域の人に姑 して子 どもが どのように自分の意見を表現するの かについておこなわれたに)。 また,1998年調査は,友
だちとの葛藤場面で子 どもが友だちに対 して どのように自分の意見 を表現するのかにういておこなわれた6)。 本稿 においては,友 だちとの関わ りにおける3場面を選び出し分析 を試みた。3場面については, 宿題を増やさないでほしいというような「学習に関わつて意見を主張する場面」 として く宿題 〉の 場面,磁
石にくつつ く紙はあるのかというような「事実認識に関わつて意見を主張する場面」 とし て く磁石〉の場面,鳩
時計を壊 したのは自分ではないというように「潔白を主張する場面」 として く鳩時計〉の場面を設定 した。 さらに,子
どもの多様な表現方法を可能な限 り引 き出すためインタ ヴュー法を採用 し,各
場面において子 どもが どのように意見を表現するのか子 どもたちから直接聴 取することとした。 そ して,①
子 どもが友だちに対 して自分の意見をどのように表現 しようとするのか,②
子 どもが 友だちに対 して意見を表現する形態に学年差はあるのか,①
1997年と1998年の2度にわたる調査で 子 どもの表現形態にどのような変化がみ られるのかについて明らかにする。また,子
どもの意見表 明の形態について分析する中で,回答の仕方がどのように発達 してい くのかについても考察 したい。 意見表明の形態については,相
手に何かを言 うという行為だけではな く,意
見表明に対する子 ども の態度や感情にも着 目しなが ら検討する。鳥取大学教育地域科学部紀要 教育 ,人文科学 第
1巻
第1号
(1999) 5
方 法 [被験児〕鳥取市立K小
学校児童1997年 85人 (表1)/1998年77人 (表2) 表1 1997年児童数表2 1998年児童数 [日 時]調査111997年 7月 ∼9月
/調
査2:1998年 9月∼10月 [場 所]′ミ取市立K小
学校内の教室 [手続 き]イ ンタヴュー法をもちいて 1人 あた り約20分程度の調査 をおこなった。質問項 目は,以
下 のように学級内の出来事に関わるものである。調査は1997年と1998年の2度にわた りおこなった。 なお,イ ンタヴューの際は,実
物の磁石および鳩時計の絵 を用いなが ら行い,対
話過程 をテープレ コーダーで録音 した。 (質問項 目〉 1.宿題 もし○○ちゃんのクラスの中に「た くさん勉強 したいので,宿
題をいっぱい出してほ しい」 と言 う人がいたら,OOち
ゃんはその人に何て言いますか? 2.磁石 ①先生が「磁石 にくっつ くものは何で しよう?く っつかないものは何で しよう?調 べてきなさい。」 と言つたとします。○○ちゃんは,家
でいろいろ試 してみて,紙
でも磁石にくつつ くものがあると いうことを発見 しました。次の日,学校へ行ってみるとみんなは「磁石にくつつ くものは鉄で,く つ つかないものは紙です。Jと言つています。○○ちやんは,そ
の子たちに何て言いますか? ②友だちが「磁石にくっつ く紙なんかあるわけない。そんなのインチキだ。Jと言つたら,○
○ちゃ んはその友だちに何て言いますか? 3.鳩時計 ①ある教室で,○
○ちゃんが1人で鳩時計 を見ていたら,鳩
時計が急に壊れて動かな くなって しま いました。○○ちゃんは見ていただけなのに,み
んなは「○○ちゃんが壊 したんだ」 と言 つていま す。○○ちゃんは,そ
の子たちに何て言いますか? ②それでも「やっぱ り○○ちゃんが壊 したんだJと言 う人がいたら,○
○ちゃんはその人に何て言 ヤヽますか? 男 子 女 子 計 1年 5 8 2年 7 3年 7 4年 5 5年 7 4 6年 8 計 人 男 子 女 子 計 1年 5 3 2年 3 5 3年 7 4年 7 5年 6 5 11 6年 7 4 11 計 人田丸敏高 ,井戸垣直美 ・田村崇・田中恵子 :児 童期 における意見表明の諸形態 とその発達 結 果 子 どもとの対話過程 をテープレコーダーで録音 し,お こしたものを資料 として用いることにした。 資料 を通覧 した上で
,質
問項 目 (1.宿題2.磁
石3,鳩
時計)ご
とに子 どもの回答 を表現形態 に注 目しなが ら分類 した。そうしたところ大 きく3つの回答の形態 を取 り出すことができた。 1つ は子 どもが相手に自分の意見 (設定された場面における考えや感情・態度を含む)を
伝 えようとし ない もの (未了表現), 2つは相手に自分の意見 を伝 えようとするとき行動をもって表現するもの (行動表現), 3つはことばによって自分の意見を述べ ようとするもの (言語表現)で
あつた。 ここでは,は
じめにこうした回答の諸形態が学年ごとにどのように現れるのか,1997年の調査 に 基づいて明らかにする。次いで,ことばによって自分の考えを述べ ようとする回答 (言語表現)に
ついてさらに詳 しく分類 し,言
語表現内の学年的な違いについて明 らかにする。1998年の調査 につ いても同様な升紙 を行 うこととする。さらに両年の調査姑象 となった69人について質問項 目ごとに 1997年の回答 と1998年の回答 との関連をみてい くことにする。 I,1997年 調査 1.意 見表現場面での回答の 3つ の形態 意見 を表現 しようとしない回答 (未了表現)とは,「何 も言いません」あるいは「わか りません」 と回答 した り,質
問には何 も答えず沈黙 している回答である。また「ふん!って言 う」などのよう に意見 としては不明な回答 もこれに分類 している。 主 として行動によって意見を表現 しようとする回答 (行動表現)とは,「何て言いますか?」 と いう質問に対 して何を言うかではなく自分がその場面でどうするかという行動を述べる回容である。 子 どもが質問に対 して自分の行動 を述べた場合,再
度「何て言いますか?」 と質問 しても意見では な く行動を表現する回答がこれにあたる。 主 として言語によって意見を表現 しようとする回答 (言語表現)とは,自分 とは異なる考えをも つかもしれない相手に対 して何かを言 うことで自分の考えを表現する回答である。 質問項 目別の結果は表 3の ようになった。『未了表現』では,最
も多いのが 〈宿題 〉20人 (240/0) で,最
も少ないのが 〈鳩時計① 〉3人(4%)で
あった。『行動表現」では,最
も多いのが く鳩時 計② 〉9人(11%)で
,最
も少ないのが く宿題 〉0人であった。F言語表現』では,最
も多いのが 〈鳩時計① 〉79人 (930/0)で,最
も少ないのが く鳩時計② 〉54人(67%)で
あつた。 表3
意見表明場面 での 回答 の諸形態(1997) 未了表現 行動表現 言語表現 宿 題 20(24) 65(77) 磁石① 11(13) 1(1) 71(86) 磁石② 13(16) 4(5) 64(79) 鳩時計① 3(4) 79(93) 鳩時計② 18(22) 9(11) 54(67) 人(%)鳥取大学教育地域科学部紀要 教育 。人文科学 第
1巻
第1号
(1999) 2.主 として言語によって意見 を表現 しようとする回答 (言語表現)に
ついて (表4∼表 8) ここでは言語表現について,各
場面 ごとに子 どもの回答が どのように現れるのか学年別に明 らか にする。子 どもが意見を述べ ようとするとき,そ の言い方にはどのようなものがあるのであろうか。 (1)宿 題―一人が「宿題はた くさんがいい」 と言ったとき (表4) この質問に対する65人の回答 には多様な回答が見 られるが, 1)「私 も宿題はた くさんがいい」 という「同意」,ii)「いやだ!」「え―!」「や りたくない」または「宿題は減 らしたほうがいい」 「宿題を多 く出してほしくない」 という「感情・態度・要望」,
)「そんなに宿題が したいの?」 というように相手に逆に問いかけた り,「やったら」「自分だけや りなさいJというように相手に問 題をなげかえす表現である「反問 レトリック」,iv)「あんまり遊べな くなるからやめてほしいJと いうように自分なりの「根拠を示 しながら説得」する回答に分類 した。 1年 生では「同意」「感情・態度・要望」がそれぞれ2人であった。2年生では「同意」が6人, 「感情・態度 ・要望」が5人,「反聞 レトリック」が1人であった。3年生では「感情 ・態度・要 望Jが 8人,「同意」が6人,「反問 レトリック」が3人であった。4年生では「感情・態度,要望」 が5人,「反問レ トリック」が2人,「根拠を示 しなが ら説得」が1人であった。5年生では「反問 レトリック」が5人,「根拠 を示 しなが ら説得」が4人,「感情・態度 ・要望」が 1人 であった。6 年生では「感情 ・態度 ・要望J「根拠 を示 しなが ら説得」がそれぞれ6人,「同意」「反聞 レ トリッ クJが
それぞれ1人であった。 表4
人が「宿題はたくさんがいい」と言ったとき(1997) 1年 2年 3年 4年 5年 6年 同 意 6 6 0 1 感情 ・態度 ・要望 5 8 ユ 6 反 問 レ トリック ユ 3 5 1 根拠 を示 しなが ら説得 0 0 1 4 6 人 (2)磁石 ①磁石にくっつ く紙 を発見 したとき (表5) この質問に対する71人の回答 には多様な回答が見 られるが, i)「やっぱ り磁石 は紙 にくつつか ない」 という「同意」,il)「ちが う!J「そんなことない│」 とい う「否定主張J,
)「紙が磁石 にくっついた」 という「事実主張J,iv)「発見 したのだから,そ
んなことはないI」 という「否定 主張+事
実主張」,v)「
なぜ鉄 じゃないとくっつかないのか?」「ちゃんと調べたの?」 というよ うに相手に逆に問いかける「反問レトリック」,
)「あなたも試 してみてよ」 と相手に要望 した り 磁石や紙 を用いて実際にやつて見せた り自分な りの根拠 をもって考えを述べる「実験 ・証拠 を示 し なが ら説得」の回答に分類 した。 1年 生では「事実主張Jが
4人,「実験 ・証拠 を示 しなが ら説得」が 1人 であった。2年生では 「事実主張」が11人 ,「同意」「実験 ・証拠を示 しなが ら説得」がそれぞれ1人であった。3年生で 1ま「事実主張Jが
12人 ,「否定主張+事
実主張」が2人,「同意」「反問 レ トリック」がそれぞれ1 人であった。4年生では「事実主張」が7人,「同意」「反問 レ トリック」「実験・証拠 を示 しなが田九敏高・井戸垣直美 ・田村崇・田中恵子:児童期における意見表明の諸形態 とその発達 ら説得」がそれぞれ1人であった。5年生では「事実主張
Jが
7人,「実験 ・証拠 を示 しながら説 得」が3人,「反問レトリック」が 1人 であった。6年生では「事実主張」が10人 ,「実験 ・証拠 を 示 しながら説得」が5人,「否定主張」が1人であった。 表5
磁 石 に くっつ く紙 を発 見 した とき(1997) 1年 2年 3年 4年 5年 6年 同 意 0 l ユ 1 0 0 否定主張 0 0 0 0 0 1 事 実主張 4 7 7 否定十事実 0 0 2 0 0 0 反 問 レ トリック 0 0 1 1 1 0 実験 。証拠 を示 しなが ら説得 1 1 1 3 5 人 ②友だちが「紙が磁石にくっつ くわけがない。インチキだ!」 というとき (表6) この質問に汁する64人の回答には多様な回答が見 られ,上
記 と同様 に分類 した。 1年 生では「事実主張」が2人,「否定主張」「実験・証拠 を示 しなが ら説得」がそれぞれ 1人 で あった。2年生では「事実主張」が6人,「実験・証拠 を示 しなが ら説得」が3人,「同意」「否定 主張+事
実主張」「反問レ トリック」がそれぞれ1人であった。3年生では「事実主張」が9人, 「実験 ・証拠 を示 しなが ら説得」が3人,「否定主張」「否定主張十事実主張」がそれぞれ2人, 「同意」「反問レトリック」がそれぞれ1人であった。4年生では「事実主張J「反問 レ トリック」 「実験・証拠 を示 しなが ら説得Jが
それぞれ2人であった。5年生では「実験 ・証拠 を示 しなが ら 説得」が6人,「事実主張」が3人であった。6年生では「実験 。証拠 を示 しなが ら説得」が9人, 「事実主張Jが
3人,「同意」「否定主張J「反問 レトリック」がそれぞれ1人であった。 表6
友だちが「インチキだ」と言ったとき(1997) 1年 2年 3年 4年 5年 6年 同 意 1 1 0 0 l 否定主張 1 0 2 0 l 事実主張 6 9 3 3 否定+事実 ユ 0 0 反 問 レ トリック ユ ユ 0 1 実験 ・証拠 を示 しなが ら説得 1 3 6 9 人 (3)鳩時計 ①鳩時計が急 に壊れたとき (表7) この質問に対する79人の回答には多様な回答が見られるが, i)「わた しが鳩時計 を壊 しました」 という「同意J,五 )「わた しは壊 していないJ「違 う!僕 じゃない│」 とい う「否定主張」,
) 「鳩時計が壊れました」 という「事実主張」,iv)「見ていただけで,壊
していない」「違 う,見
て いたら勝手に鳩時計が壊れたんだ」 という「否定主張十事実主張」, v)「なぜそんなことを言うの か?」「なぜわた しが壊 さないといけないんだ!」 というように相手に逆 に問いかける「反問レ ト鳥取大学教育地域科学部紀要 教育・人文科学 第
1巻
第1号
(1999) リック」,vi)「高いところにある鳩時計には手が とどかないか ら僕 には壊せないよ」 というように 友だちに自分な りの根拠 を説明 した り,「証拠 もないのにわた しが壊 したと決めつけないで」「(私 が壊 したという)証
拠 を出してみて」 というように逆に相手の方に証拠を提示 させ ようとする「挙 証責任の転嫁・根拠ある説得」の回答 に分類 した。 1年生では「否定主刊 が3人,「事実主張」「否定主張+事
実主張」「挙証責任の転嫁・根拠あ る説得」がそれぞれ1人であった。2年生では「否定主張」が10人 ,「事実主張」「否定主張+事
実 主張」がそれぞれ3人であった。3年生では「否定主張+事
実主張」が10人 ,「事実主張」が4人, 「否定主張」「挙証責任の転嫁・根棚ある説得」がそれぞれ3人であった。4年生では「否定主張」 「否定主張+事
実主張」がそれぞれ4人,「反問 レトリック」「挙証責任の転嫁・根拠ある説得」が それぞれ 1人 であつた。 5年 生では「否定主張+事
実主張」「挙証責任の転嫁 ・根拠ある説得」が それぞれ4人,「事実主張Jが
2人,「否定主張」が1人であった。6年生では「事実主張」「否定 主張+事
実主張」がそれぞれ4人,「否定主張」が3人,「反問 レ トリック」「挙証責任の転嫁・根 拠ある説得」がそれぞれ2人,「同意」が1人であった。 表7
鳩 時計 が急 に壊 れた とき(1997) 1年 2年 3年 4年 5年 6年 同 意 0 0 0 0 1 否定主張 3 3 4 1 3 事実主張 1 0 2 4 否定十事実 1 4 4 4 反間 レ トリック 0 0 1 0 2 挙証責任 の転嫁 ・根拠 あ る説得 1 3 1 4 2 人 ②友だちが「やっぱ り壊 したんだろう」 と言うとき (表8) この質問に対する54人の回答には多様な回答が見 られ,上
記 と同様に分類 した。 1年 生では「否定主張」が2人であった。2年生では「否定主張」が10人 ,「事実主張」「挙証責 任の転嫁 ・根拠ある説得」がそれぞれ1人であった。3年生では「否定主張」が6人,「事実主張」 が4人,「挙証責任の転嫁 ・根拠ある説得」が3人,「否定主張十事実主張」が2人であつた。4年 生では「否定主張」「否定主張十事実主張」「反問 レトリックJが
それぞれ 1人 であった。5年生で は「否定主張」が4人,「挙証責任の転嫁・根拠ある説得」が2人,「事実主張」「否定主張十事実 主張」がそれぞれ1人であった。6年生では「挙証責任の転嫁 ・根拠ある説得」が6人,「否定主 張」が3人,「反間レトリック」が2人,「同意」「事実主張」「否定主張十事実主張」がそれぞれ1 人であった。10 田丸敏高 ・井戸垣直美・田村崇 ・田中恵子 :児 童期 における意見表明の諸形態 とその発達 表
8
友だちが「やっぱり壊 したんだろう」と言うとき(1997) 1年 2年 3年 4年 5年 6年 同 意 0 0 0 0 1 否 定主張 6 1 3 事実主張 0 1 4 0 1 1 否定 十事 実 0 2 1 1 1 反 間 レ トリック 0 0 1 0 2 挙証責任 の転嫁 ・根拠 あ る説得 0 1 3 0 6 人 Ⅱ.1998年調査 1.意 見表現場面での回答の 3つ の形態 質問項 目別の結果は表 9の ようになった。F未了表現」では,最
も多いのが 〈宿題 〉22人 (30%) で,最
も少ないのが 〈鳩時計① 〉2人 (30/0)で あった。『行動表現』では,最
も多いのが 〈磁石 ② 〉6人(9%)で
,最
も少ないのが く宿題 〉および 〈磁石① 〉0人であった。F言語表現』では, 最 も多いのが く鳩時計① 〉72人(95%)で ,最
も少ないのが 〈宿題 〉52人(70%)で
あった。 表9
意見表明場面 での回答 の諸形態(1998) 未了表現 行動表現 言語表現 宿 題 22(30) 0 52(70) 磁石① 9(12) 0 67(88) 磁石② 10(14) 6(9) 55(77) 鳩時計① 2(3) 72(95) 鳩時計② 16(21) 57(76) 人(%) 2.主として言語によって意見を表現 しようとする回答 (言語表現)に
ついて (表10∼表14) (1)宿題一一人が「宿題はた くさんがいい」 と言つたとき (表10) この質問に汁する52人の回答には多様な回答が見 られる。 1年 生では「感情 ・態度・要望」が2人,「同意J「根拠 を示 しながら説得」がそれぞれ1人であっ た。2年生では「同意」が4人であった。3年生では「感情,態度・要望」が8人,「同意」が5 人,「反問レ トリック」が1人であった。4年生では「感情・態度・要望Jが
9人,「根拠 を示 しな が ら説得」が4人,「同意」「反問レトリック」がそれぞれ 1人 であった。5年 生では「感情・態度・ 要望」が3人,「反問 レトリックJ「根拠 を示 しなが ら説得」がそれぞれ2人であった。6年生では 「感情・態度・要望」「反問レトリックJが
それぞれ3人,「根拠 を示 しながら説得Jが
2人であっ た。鳥取大学教育地域科学部紀要 教育・人文科学 第
1巻
第1号
(1999) 表10 人が「宿題はたくさんがぃぃ」と言ったとき(1998) 1年 2年 3年 4年 5年 6年 同 意 1 4 5 1 0 0 感情 ・態度 ・要望 0 8 3 3 反問 レ トリ ック 0 1 1 つ 々 3 根拠 を示 しなが ら説得 1 0 0 2 人 (2)磁石 ①磁石にくっつ く紙 を発見 したとき (表11) この質問に姑する67人の回答 には多様な回答が見 られる。 1年 生では「事実主張」が3人,「同意」が 1人 であった。2年生では「事実主張」が4人,「否 定主張」が2人,「実験 ,証拠 を示 しなが ら説得」が1人であった。3年生では「事実主張」が10 人,「実験 ・証拠 を示 しなが ら説得Jが 4人,「同意」「否定主張+事
実主張」がそれぞれ 1人 であっ た。4年生では「事実主張」が13人 ,「実験・証拠 を示 しなが ら説得」が4人,「同意」が2人, 「反聞レトリックJが
1人であった。5年生では「事実主張」が6人,「実験・証拠 を示 しなが ら 説得Jが
3人であった。6年生では「事実主張」が7人,「実験・証拠 を示 しなが ら説得」が3人, 「同意」が1人であった。 表刊 磁石に くっつ く紙 を発見 したとき(1998) 1年 2年 3年 4年 5年 6年 同 意 l 0 1 2 0 1 否 定主張 0 2 0 0 0 事実主張 3 4 6 否定+事実 0 0 1 0 0 0 反 問 レ トリック 0 0 1 0 0 実験 ・証拠 を示 しなが ら説得 1 4 4 3 3 人 ②友だちが「紙が磁石にくっつ くわけがない。インチキだ!」 というとき(表 12) この質問に汁する55人の回容には多様な回答が見られる。 1年生では「否定主張Jが
1人であった。2年生では「否定主張」が3人,「事実主張」が2人, 「反問レトリックJ「実験・証拠を示 しながら説得」がそれぞれ 1人 であった。 3年 生では「事実 主張」「実験・証拠を示 しながら説得Jが
それぞれ4人 で,「否定主張」が 3人,「反問レトリック」 が1人であった。4年 生では「実験,証拠を示 しながら説得」が 9人 で,「事実主張」が 3人,「否 定主張」が2人,「同意」が 1人 であった。 5年 生では「事実主張」が 4人,「反問レトリック」 「実験・証拠を示 しながら説得」がそれぞれ2人で,「同意」が 1人 であった。6年 生では「実験, 証拠を示 しながら説得」が6人 で,「事実主張」が4人,「反問レトリックJが
1人であった。12 田丸敏高・井戸垣直美 ・田村崇・田中恵子 :児 童期 における意見表明の諸形態 とその発達 表12 友だちが「インチキだ」と言ったとき(1998) 1年 2年 3年 4年 5年 6年 同 意 0 0 1 1 0 否定主張 1 3 2 0 事実主張 0 4 3 4 否定 十事 実 0 0 0 0 反 問 レ トリック 0 1 1 0 1 実験 ・証拠 を示 しなが ら説得 0 1 4 9 6 人 (3)鳩時計 ①鳩時計が急に壊れたとき (表13) この質問に対する72人の回答には多様 な回答が見 られる。 1年 生では「否定主張
+事
実主張Jが
3人,「否定主張J「事実主張」がそれぞれ1人であった。 2年生では「否定主張」が6人,「否定主張+事
実主張」が1人であった。3年生では「否定主張」 が11人 ,「否定主張+事
実主張」が3人,「事実主張」「挙証責任の転嫁・根拠ある説得」がそれぞ れ2人であった。4年生では「否定主張十事実主張」が9人,「事実主張」が5人,「否定主張」が 4人,「反問レトリック」「挙証責任の転嫁 ・根拠ある説得Jが
それぞれ 1人 であった。5年生では 「否定主張十事実主張」が8人,「否定主張」が2人,「挙証責任の転嫁 ・根拠ある説得」が 1人 で あった。6年生では「否定主張+事
実主張Jが
4人,「挙証責任の転嫁・根拠ある説得」が3人, 「否定主張」「事実主張」がそれぞれ2人であった。 表13 鳩時計 が急 に壊 れた とき(1998) 1年 2年 3年 4年 5年 6年 同 意 0 0 0 0 否 定主張 1 11 4 2 事実主張 1 2 5 2 否定十事実 3 1 3 9 4 反 問 レ トリック 0 0 0 1 0 0 挙証責任 の転嫁 ・根拠 あ る説得 0 0 2 1 1 3 人 ②友だちが「やっぱ り壊 したんだろう」 と言 うとき (表 14) この質問に対する57人の回答 には多様な回答が見られる。 1年 生では「否定主張」が2人,「否定主張十事実主張」「挙証責任の転嫁・根拠ある説得Jが
そ れぞれ1人であった。2年生では「否定主張J「事実主張」がそれぞれ2人,「反問 レ トリック」 「挙証責任の転嫁 ・根拠ある説得」がそれぞれ1人であった。3年生では「否定主張」が7人, 「反問 レトリック」「挙証責任の転嫁・根拠ある説得」がそれぞれ2人であった。4年生では「否 定主張Jが
12人 ,「事実主張J「反問レ トリック」「挙証責任の転嫁 ・根拠ある説得」がそれぞれ1 人であった。5年生では「否定主張」が6人,「事実主張」「否定主張十事実主張」がそれぞれ2人, 「挙証責任の転嫁・根拠ある説得Jが
1人であった。6年生では「否定主張」が5人,「事実主張J鳥取大学教育地域科学部紀要 教育・人文科学 第
1巻
第1号 (1999) 13
「挙証責任の転嫁・根拠ある説得」がそれぞれ2人,「否定主張十事実主張」が 1人 であった。 表14 友だちが「やっぱり壊したんだろう」と言うとき(1998) 1年 2年 3年 4年 5年 6年 同 意 0 0 0 0 否定主張 2 2 6 事実主張 0 1 2 否定十事実 1 0 0 2 1 反問 レ トリック 0 1 ユ 0 挙証責任 の転嫁 ・根拠 あ る説得 1 1 2 1 1 人 Ⅲ.1997年と1998年との回答の関連 1997年の調査姑象児の 1年 生∼5年生が,1998年の2年生∼6年生に姑応 してお り,そ
の数は69 人であった。1997年の回答 と1998年の回答の間にはどのような関連があるのであろうか。各場面ご とに1997年の回答 と1998年の回容のクロス集計 を行い分析する。(1)宿
題一一人が「宿題はた くさんがいいJと言ったとき (表15) 1997年の回答が1998年にはどのように変化 したかをみてい くことにする。 1997年に『未了表現』に分類 した児童 (17人)は
1998年には『未了表現』が9人,「感情 ・態度・ 要望Jが 3人,「同意」「反問レトリック」がそれぞれ2人,「根拠 を示 しなが ら説得」が1人であっ た。1997年に「同意」に分類 した児童 (13人)は
1998年には「感情・態度・要望」が6人,「同意」 が4人,『未了表現』が2人,「根拠 を示 しなが ら説得」が1人であった。1997年に「感情・態度・ 要望Jに
分類 した児童 (21人)は
1998年には「感情 ・態度 ・要望」が9人 ,F未了表現』が5人, 「根拠を示 しながら説得」が4人,「同意」が2人,「反問 レトリック」が 1人 であった。1997年に 「反間レトリック」に分類 した児童 (11人)は
1998年には「感情・態度・要望」が4人,『未了表 現』「同意」「反問 レ トリック」がそれぞれ2人,「根拠 を示 しなが ら説得」が1人であった。1997 年に「根拠 を示 しなが ら説得」に分類 した児童 (5人)は
1998年には「反問 レトリック」が2人, 層未了表現』「感情 ・態度・要望」「根拠を示 しなが ら説得」がそれぞれ 1人 であった。 1997年と1998年の両年にわたる分析の結果,1997年と1998年のどちらにも同じ回答で分類 したの は,『未了表現』「感情・態度・要望」でそれぞれ9人,「同意Jで 4人,「反間レトリック」で2人, 「根拠を示 しなが ら説得Jで
1人 であった。14 田丸敏高 ・井戸垣直美 ・田村崇 田中恵子:児童期 における意見表明の諸形態 とその発達 表15 宿題 (1997/1998 比較)
殺
8 未 了 同 意 感 情 反 問 説 得 未 了 9 2 3 2 1 同 意 4 6 0 1 感 情 5 9 1 4 反間 (11) 2 4 1 説得(
ユ 1 2 1 計 人(2)磁
石 ①磁石 にくっつ く紙を発見 したとき (表16) 1997年の回答が1998年にはどのように変化 したかをみてい くことにする。 1997年 に『行動表現』 に分類 した児童 (1人)は
1998年には「事実主張」であった。1997年に 『未了表現Jに
分類 した児童 (11人)は
1998年には「事実主張」が7人,『未了表現』「同意」「否 定主張」「実験 。証拠 を示 しなが ら説得」がそれぞれ1人であった。1997年に「同意」 に分類 した 児童 (3人)は
1998年には「事実主張」「否定主張十事実主張」「実験 。証拠を示 しなが ら説得」が それぞれ 1人 であった。1997年に「事実主張」 に分類 した児童 (40人)は
1998年には「事実主張」 が25人,「実験,証拠 を示 しなが ら説得」が8人,『未了表現』が4人,「同意」が2人,「否定主張」 が1人であった。1997年に「否定主張+事
実主張」 に分類 した児童 (2人)は
1998年には「反問 レ トリック」「実験・証拠 を示 しながら説得」がそれぞれ 1人 であった。1997年に「反間 レ トリック」 に分類 した児童 (3人)は
1998年 には「事実主張」が2人,「同意」が1人であった。1997年に 「実験・証拠を示 しながら説得」に分類 した児童 (6人)は
1998年には「実験 ・証拠 を示 しなが ら 説得」が4人,「事実主張」が2人であった。 1997年 と1998年の両年にわたる分析の結果,1997年と1998年のどちらにも同 じ回答で分類 したの は,「事実主張」で25人 ,「根拠 を示 しなが ら説得」で4人,『未了表現』で 1人 であった。 表16 磁石①(1997/1998比較)辞
翌
行 動 未 了 同 意 否 定 事 実 否+事 反 問 説 得 行動(1)
0 0 0 0 1 0 未 了 0 1 1 1 0 1 同 意 ( 0 0 0 0 1 1 1 否定(0)
0 0 0 0 事 実 4 2 ユ 0 否 十事 (2) 0 0 0 1 1 反問(
0 1 0 0 説得(6)
0 0 0 計 人 ②友達が「紙が磁石にくっつ くわけがない。インチキだ!」 というとき(表17) 1997年の回答が1998年にはどのように変化 したかをみていくことにする。鳥取大学教育地域科学部紀要 教育,人文科学 第
1巻
第1号 (1999) 15
1997年に『行動表現さに分類 した児童 (3人)は
1998年には『行動表現』「否定主張」「実験・証 拠を示 しなが ら説得」がそれぞれ1人であった。1997年に『未了表現』に分類 した児童 (12人)は
1998年には「実験 ・証拠 を示 しなが ら説得」が5人,『未了表現』が3人,「否定主張」が2人 , F行動表現』「同意」がそれぞれ1人であった。1997年に「同意」 に分類 した児童 (2人)は
1998 年には「否定主張」「実験 ・証拠 を示 しなが ら説得」がそれぞれ1人であった。1997年に「否定主 張」に分類 した児童(3人)は
1998年には『未了表現』「事実主張」「実験・証拠を示 しなが ら説得」 がそれぞれ1人であった。1997年に「事実主張Jに
分類 した児童 (21人)は
1998年には「実験・証 拠を示 しなが ら説得」が8人,「事実主張」が7人,『未了表現』が3人,「否定主張」が2人,『行 動表現』が 1人 であった。1997年に「否定主張十事実主張」に分類 した児童 (3人)は
1998年には 『未了表現」「事実主張」「実験・証拠を示 しながら説得」がそれぞれ 1人 であった。1997年に「反 問レトリックJに
分類 した児童 (4人)は
1998年には「事実主張」が2人,「反問レ トリック」「実 験・証拠を示 しなが ら説得」がそれぞれ1人であった。1997年に「実験・証拠を示 しなが ら説得」 に分類 した児童(14人)は1998年には「事実主張」が6人,「否定主張」「反問 レトリック」「実験 ・ 証拠 を示 しなが ら説得」がそれぞれ2人,『行動表現』「同意」がそれぞれ1人であった。 1997年と1998年の両年にわたる分析の結果,1997年と1998年の どちらにも同じ回答で分類 したの は,「事実主張」で7人,『未了表現』で3人,「根拠 を示 しなが ら説得」で2人,『行動表現』「反 問レトリック」でそれぞれ1人であった。 表17 磁石②(1997/1998歩ヒ較) 1997 行 動 未 了 同 意 否 定 事 実 否+事 反 問 説 得 行動(3)
1 0 l 0 0 1 未 了 1 1 2 0 0 5 同 意 ( 0 0 1 0 0 ユ 否 定 ( 0 1 0 1 0 0 1 事 実 ユ 3 0 7 0 0 否+事(3)
1 0 1 0 0 1 反問(4)
0 0 0 0 2 0 1 1 説 得 1 0 1 6 0 つ々 計 人(3)鳩
時計 ①鳩時計が急に壊れたとき (表18) 1997年の回答が1998年にはどのように変化 したかをみてい くことにする。 1997年に『行動表現』に分類 した児童 (3人)は
1998年には「否定主張」が2人,「挙証責任の 転嫁・根拠ある説得Jが
1人であった。1997年に『未了表現』に分類 した児童 (3人)は
1998年に は「否定主張」が2人,「否定主張+事
実主張」が1人であった。1997年に「否定主張」 に分類 し た児童 (21人)は
1998年には「否定主張」が10人 ,「否定主張+事
実主張」が7人,「事実主張」が 2人,『未了表現』「挙証責任の転嫁・根拠ある説得」がそれぞれ1人であった。1997年に「事実主 張」 に分類 した児童 (10人)は
1998年には「否定主張」「否定主張十事実主張Jが
それぞれ4人, 「事実主張」「挙証責任の転嫁・根拠ある説得」がそれぞれ1人であった。1997年に「否定主張+
16 田丸敏高・井戸垣直美・田村崇・田中恵子:児童期における意見表明の諸形態とその発達 事実主張」 に分類 した児童 (21人
)は
「否定主張十事実主張」が11人
,「否定主張」「事実主張」 がそれぞれ4人,「反問レ トリックJ「挙証責任の転嫁・根拠ある説得」がそれぞれ1人であつた。 1997年に「反問レ トリック」 に分類 した児童 (1人)は
1998年には「挙証責任の転嫁 ・根拠ある説 得Jで
あった。1997年に「挙証責任の転嫁・根拠ある説得」に分類 した児童 (9人)は
1998年には 「否定主張」が3人,「事実主張」「否定主張十事実主張」「挙証責任の転嫁・根拠ある説得」がそ れぞれ2人であった。 1997年と1998年の両年にわたる分析の結果,1997年と1998年のどちらにも同 じ回答で分類 したの は,「否定主張十事実主張」で11人 ,「否定主張」で10人 ,「挙証責任の転嫁 ・根拠ある説得」で2 人,「事実主張」で1人であった。 表18 鳩時計①(1997/1998比較) 1998 1997 行 動 未 了 同 意 否 定 事 実 否 十事 反 問 説 得 行動(3
0 0 2 0 0 1 未了(3
0 0 0 1 0 同意(0)
0 0 0 0 0 0 否定 (21 0 1 2 7 l 事 実(10
0 0 4 1 4 1 否 キ事 (21 0 0 4 4 1ユ 1 1 反問(1
0 0 0 0 0 l 説得(9
0 0 3 2 2 計 (68) 人 ②友だちが「やっぱ り壊 したんだろう」 と言 うとき (表19) 1997年の回答が1998年にはどのように変イとしたかをみてい くことにする。 1997年に『行動表現』に分類 した児童 (9人)は
1998年には「事実主張」が3人,「否定主張J が2人,『行動表現』『未了表現』「否定主張十事実主張」「反問 レ トリック」がそれぞれ1人であつ た。1997年にF未了表現』に分類 した児童 (16人)は
1998年には「否定主張」が5人,『未了表現』 「挙証責任の転嫁・根拠ある説得」がそれぞれ4人,「事実主張」が2人,「否定主張十事実主張J が 1人 であった。1997年に「否定主張Jに
分類 した児童 (22人)は
1998年には「否定主張」が13人, 『未了表現』が5人,『行動表現』「事実主張」「反問レトリック」「挙証責任の転嫁 ・根拠ある説得J がそれぞれ 1人 であつた。1997年に「事実主張」に分類 した児童 (6人)は
1998年には『未了表現』 が3人,「否定主張J「否定主張十事実主張」「反問レ トリック」がそれぞれ1人であった。1997年 に「否定主張+事
実主張」に分類 した児童 (4人)は
1998年には「否定主張」が2人,「事実主張」 「挙証責任の転嫁・根拠ある説得」がそれぞれ 1人 であつた。1997年に「反問レ トリック」に分類 した児童(1人)は1998年には「否定主張Jで
あった。1997年に「挙証責任の転嫁・根拠ある説得」 に分類 した児童 (6人)は
1998年には「否定主張」が5人,「挙証責任の転嫁 ・根拠ある説得Jが
1人であった。 1997年と1998年の両年にわたる分析の結果,1997年と1998年のどちらにも同じ回答で分類 したの は,「否定主張Jで
13人 ,『未了表現』で4人,『行動表現』「挙証責任の転嫁・根拠ある説得」でそ れぞれ 1人 であつた。鳥取大学教育地域科学部紀要 教育 。人文科学 第
1巻
第1号
(1999) 17
表19 鳩時計②(1997/1998比較) 1997 行 動 未 了 同 意 否 定 事 実 否+事 反 問 説 得 行動(9
1 1 0 2 3 1 ユ 0 未 了 0 4 0 5 つ々 1 0 4 同意(0
0 0 0 0 0 0 否定(22
1 5 0 1 ユ 1 事実(6
0 ユ 0 1 l 0 否十事(4
0 2 1 0 0 1 反問(
0 1 0 0 0 説得(6
0 0 5 0 0 0 1 計 人 考 察1.3つ
の回答形態『未了表現』『行動表現』『言語表現』の年齢的特徴 結果でははじめに子 どもの回答 を質問項 目ごとに,『未了表現』『行動表現』『言語表現』に分類 した。この 3つ の形態は,子
どもが自分の意見 を相手に伝えようとするのかどうか,伝
えようとす るならばどのような方法を用いて伝えるのかという祝点から分類 したものである。つまり,子
ども が相手に自分の意見 を伝えようとしない回答は『未了表現』 として分類 し,相
手に自分の意見を伝 えようとするとき行動 をもって表現する回答は『行動表現』,ことばによって自分の意見 を述べ よ うとする回答は『言語表現』 とした。意見表明における心理過程が明らかでない時点では,回
容結 果 という外的な形態から意見表明の心理に接近する必要があるからである。 これら3つの表現形態について, どのような年齢的変化がみられるのであろうか。『未了表現』 『行動表現さ『言語表現』の 3つ の回答形態について,低
学年・高学年別に整理 しなお し,低
学年 と高学年 との違いをみてみると表20∼22のようになる。 表20 未了表現 〈場面 〉 低学年 高学年 宿 題 14(30) 6(16) 磁石① 10(22) 1(3) 磁石② 7 6(17) 鳩時計① 2 1(3) 鳩時計② 7(19) 1998 宿 題 12(29) 磁石① 7 2(5) 磁石② 5 5(12) 鳩時許Э 2 鳩時許② 6(14) 人(%) 表21 行動表現 〈場面 〉 低学年 高学 年 宿 題 0 磁石① 1(2) 0 磁石② 4(9) 0 鳩時計① 3(6) 0 鳩時許② 5(11) 宿 題 0 磁石① 0 0 磁石② 6(19) 0 鳩時計① 2(6) 0 鳩時計② 2(6) 0 人(%)18 田丸敏高 ・井戸垣直美,日村崇 ・田中恵子:児童期における意見表明の諸形態 とその発達 表22 言語表現 〈場面 〉 低 学年 高学年 1997 宿 題 33(70) 磁石① 34(76) 磁石② 34(75) 鳩時計① 42(90) 鳩時計② 29(65) 1998 宿 題 22(69) 磁石① 27(79) 磁石② 20(65) 35( 88) 鳩時訥③ 30(88) 42(100) 鳩時計② 21(64) 36( 86) 人(%) 以上のように,『未了表現』や『行動表現』は低学年に特徴的にみられる回答であるのに対 して, 『言語表現』は高学年に多 くみられる回答である。子どもが意見を表現する方法は,まず『未了表 現」や『行動表現』から『言語表現』へ と変化 してい くのではないだろうか。以下に,1997年から 1998年にかけて,ξ未了表現』から『言語表現』へ回答が変イとした事例 をあげる。
O.T。
(女) 【1997年:1年
生→1998年:2年
生】 場 面 質 問 1997年 の回答 1998年 の回答 宿 題 宿題 をいっぱい出 してほ しいっ て言 う人には何て言 う? 「…(沈黙)」 「やる。」 磁石① みんなは紙 は磁石 にくっつかな い と言っています。Tちゃんは, 何 て言 う? 「・・。(沈黙)」 「紙でもくっつくって言う。」 磁石② 磁石 に くっつ く紙 なんかあるわ けない│イ ンチキだ!って言わ れた ら,何て言 う? 「…(沈黙)」 「…なんでインチキだあ?って言 う。」 鳩時計① み んなはTちゃんが鳩 時計 を壊 した と言 い ます。Tちゃんは何 て言 う? 「・・・(沈黙)」 「私は壊してないって言う。J 鳩時計② それでもTちゃんが壊 したって 言う人がいたら,何て言う? 「…(沈黙)」 「…私,見とっただけなのに,な んで私のせいにする?って言う。」 本児 は,1997年調査では質問に姑 して何 も回答せず沈黙す るとい う回答形態であったが,1998年 調査 では3場面 に対 してことばで 自分の気持 ちや考 えを表現する『言語表現』の回答形態へ と変化 している。 さらに,そ
の言語表現 も場面 によつて多様であ り,(宿題 〉では「宿題 をや る」 と同意 しているが,く磁石 〉と く鳩時計 〉では「なぜ インチキなのか?J「なぜ私のせいにす るのか?」 と 反問 している。質問 に対 して何 も言わず沈黙 しているとい う回答形態は,表
現方法 としては消極 的 ではあるが,そ
の後の意見表明の発達 において多様 な可能性 をもつ形態であると言 えよう。鳥取大学教育地域科学部紀要 教育 ・人文科学 第
1巻
第1号
(1999) 2.『 未了表現』『行動表現』『言語表現』の多様性 ここでは, 3つの回答形態について,そ
の形態のもつ様々な側面を事例によつて明らかにしてい く。 (1)F未 了表現』について 未了表現 とは,「わか らない」「何 も言わない」「黙っていて質問に回答 しない」 というように, 相手に対 して自分の気持ちや考えを伝 えようとしない回答である。 しか し,単
に「わか らない」 「言わないJという回答だけではなく,複
雑な心理過程 を表す『未了表現』 もある。以下に事例を 示 しなが ら考察 してい く。0.Y。
(男) 〔1997年:3年
生】 Yくんは紙でも磁石 にくっつ くことを発見 したのに。そのとき, ら,そうでいい。」―――そ うでいいってい うのは?―
「例えば, 思ってればいい。」 Yく んはどうするかな ?―― 「自分で思ってるな 僕が くっつ くつて言つても, 自分で くつつ くって 本児 は,単
に言 えないわけではな く,自分では紙が磁石 に くっつ くとい う事実 を認識 してお り, その事実 に自信 をもっている。だか らこそ,あえて口に出 して言 うまで もな く「自分で思っている だけで十分である」 と言 っている。本児 自身 としては明確 な意見 をもっているようにみえるが,あ
えて相手 に自分の意見 を伝 えようとしていない。A.K.(男
) 【1997年:4年
生】 みんなは磁石にくっつかないものは紙ですつて言つています。Kく んは何って言う?――「何 も言わない。」―一 なんで ?一―「紙がくっつくって言う人が他にもいたら, くっつかないって言つた人に何か言うかもしれない。」 本児は,み
んなに対 して自分 1人 では言わないが,他
に同じ意見の人がいれば自分の意見を述べ るつもりだと言っている。「紙が磁石にくつつく」という事実は認識 しているが,大
勢に対 して自 分1人で意見を言うことの難 しさを表現している。相手に伝えたいという気持ちがあるにも関わら ず何 も言わないという,意
見表明する際の本児の心理的葛藤がうかがえる。 (2)[行動表現』について 行動表現とは,相
手に対 して自分の気持ちや考えを伝えようとはするものの,そ
れが行動によつ て表現されるという回答形態である。表21からもわかるように,『行動表現』は1997年の く鳩時計 ②〉を除いて,す
べて低学年に現われる回答形態である。 では,結
果で 履行動表現Jに
分類 した回答について,事
例に即 して考察してみよう。K.N。
(女) 【1998年i3年
生】20
田九敏高 ・井戸垣直美 ・田村崇 ・田中恵子 :児 童期 における意見表明の諸形態 とその発達 友だちがな,そんなのインチキだ!って言ったら,Nちゃん何て言いますか ?一―「怒る。J――どんな風に怒る?―一 「けんかする。J――何か言うか ?――「なんか,言わんけどなあ,たたいたりしてから。J 本児の場合,「怒るJ「けんかするJ「たた くJという行動を述べることによつて,場
面における 本児 自身の感情 を表現 している。ことばでは表現 しないが,意
見 を表明する相手に向 き合い,自分 の気持ちを伝 えようとする様子はうかがえる。本児のように自分の感情や態度を行動によって表現 するという形態 も,『未了表現』の 1つ の側面である。T,D。
(男) 【1998年:1年
生】 みんなは紙は くっつかないよと言っています。Dく んはみんなに何て言いますか ?一―「考える。J一― それでも 友だちが,そんなのインチキだって言ったら?―― 「明日,持って くる。J 本児は,“何 と言 うのか?"と いう質問に対 して「考える」 という自分の行動を述べている。そ して再び,「磁石 にくっついた紙 をもって くる」 という自分の行動について回答 している。本児が 「紙をもって くるJという行為によって「磁石が紙にくつついたJという事実を示そうしているこ とは予測できる。回答形態 としては『行動表現』であるが,本
児に意見がないわけではな く,紙
を もって くることによって相手に自分の意見を伝 えようとしている。 ことばで自分の意見 を表現 して はいないものの,本
児が事実を主張 しようする様子は行動に反映されていると考えられる。 (3)『言語表現J 言語表現は高学年に多 くみられる回答形態である。ことばによって相手に自分の意見 を伝えると いう回答形態には,「同意」「感情・態度表明J「否定主張J「事実主張」「否定主張+事
実主張J「反 問」「説得」 という多様な回答がみられる。 ここで,〈宿題 〉く磁石①② 〉〈鳩時計①② 〉における計 5つ の質 目項 目のうち 1つ で も「説得J の回答 を示す児童数について,学
年ごとにまとめると表23のようになる。1997年および1998年の質 問項 目に対 して「説得」の回答 を示す児童は, 4年生で半数を占めるようになり, 6年生では学年 の約70%の子 どもが説得的に意見表明 していることがわかる。高学年になれば説得的に意見表明す ることができるようになるということから,『言語表現』のなかで も「説得」 という回答は意見表 明においてより高い水準に位置すると考えられる。 表23
「説得」の回答 1997年 1998年 1年 2(25 1(13) 2年 5(26 2(25) 3年 6(30 8(42) 4年 5(45 10(50) 5年 8(73 5(45) 6年 11(69 8(73) 人(%)鳥取大学教育地域科学部紀要 教育 。人文科学 第
1巻
第1号 (1999) 21
2.『 言語表現』による回答の1997年から1998年への変化 ここでは,多
様な回答が現われる『言語表現』をとりあげ,1997年から1998年にかけて子 どもの 回答がどのように変化 してい くのか,事
例 をあげなが ら考察 してい く。 そこで,まず1997年において「同意」の回答 を示 した子 どもについて,1998年の回答 にどのよう な変化がみられるか明らかにする。次に,意
見表明の中でも高い水準であると考えられる「説得J の回答について,1998年の回答で「説得」 を示 した子 どもが1997年にどのように回答 していたのか を明らかにする。それによつて,子
どもがどのように「説得J水
準へと至るのか明らかにする。さ らに,1997年 の時点で「説得」の回答を示 していた子どもについて,1998年 の回答がどのように変 イとしていくのか明らかにする。 (1)1997年「同意」の回答について 1997年において「同意」の回答を示 した子どもたちは,1998年 にはどのように回答するのであろ うか。事例をあげながら,考
察する。 ①「同意」から「同意Jヘ
T.S.(女
) 【1997年11年
生】 宿題いっぱい出してほしいと言う人がいたら, Sち ゃんはその人に何て言いますか ?――「いいよって言う。だっ て11こだもん。」 【1998年:2年
生】 (1997年と同じ質問に対して)一―「いいよって言います。J 本児 は両年 にわた つて,“ 宿題 をい っぱい だ してほ しい"とい う意見 に「同意」 してい る。 ②「同意」から「否定主張」ヘK.」
.(男) 【1997年:2年
生】 ともだちが磁石にくっつ く紙なんかあるわけない!そんなのインテキだ!って言つたら,」 くんは何て言いますか ?一一 「ないって言う。」――何がない ?――「んと, くっつ く紙がない。」 【1998年:3年
生】 (1997年と同じ質問に対して)一―「インチキじゃないって言う。」 本児は,1997年 において「紙と磁石がくつつ く」という発見をしたにも関わらず「 くっつ く紙は ない!イ ンチキだ!」 と言う友だちの意見に「同意」している。しかし,1998年 では「インチキじゃ ないJと 主張するようになっている。意見が自分とは異なる相手に対 して「否定主張Jす
るという ことは,意
見表明の発達において基本的ではあるが大きな1歩 であると考える。 ③「同意Jか
ら「実証」ヘS.N.(男
) 【1997年:3年
生】22
田丸敏高 ・井戸垣直美 ・田村崇 ・田中恵子:児童期における意見表明の諸形態 とその発達 磁石 にくっつ く紙 なんかあるけないIそんなのインチキだ!って友だちが言つてきたら,Nく ん何 って言 う?一一 「まあいいって。」 【1998年:4年
生】 (1997年と同じ質問に対 して)一―「ウソじゃないって言う。J――それから?――「う∼んと,本当だから,う ∼ んと,絶対持ってくるって言う。」――それから?――「う∼んと,他には…信 じないなら,確かめてみなって。」 本児 は,1997年においては “インチキだ !"と いう友だちの意見に対 して,自分の意見 を表明せ ず「まあいい」 と相手に同意する回答を示 している。 しか し,1998年においては「確かめてみて」 というように,相
手に実験 をさせ相手を説得 しようとしている。 (2)1998年で「説得」の回答様式を示す子 どもの1997年はどうであったか 1998年に説得的に意見表明 した子 どもは, 1年前の1997年にはどのような回答であったのだろう か。表15∼ 19に示す ように,〈宿題 〉では「感情・態度・要望」から「説得」へ と変化 している回 答が最 も多 く,〈磁石 〉では「事実主張Jか
ら「説得Jへ
変化 している回答が最 も多い。 また,(鳩 時計 〉では様々な回答から1998年の「説得」へ と変化 していることがわかる。ここでは,そ
れぞれ の場面で特徴的な変化について事例をあげなが ら考察 してみよう。 ① 〈宿題〉「感情 ・態度表明」から「説得」ヘY.K.(女
) 【1997年:4年
生】 宿題いっぱいや りたいって言う人がおったらな,Kちゃん何て言う?――「嫌だって言う。」 【1998年:5年
生】 (1997年と同じ質問に)一―「何言つとるう?って言つてねえ,…他にはねえ,宿題多いいとたいざいけえ,やめ ようや∼って。」 本児 は, 4年生 で あ った1997年 には「宿題 をい っぱい出すの は嫌 だJとい う自分 の感情 を述べ て い たの に対 し, 5年生 になった1998年 には「宿題 が多 いの は大変 だか ら多 くす るの はや め よう」 と 自分 な りの根拠 を示 しなが ら相 手 に要望す る こ とで,説
得 的 に意見表 明す る ようになった。「嫌 だJ という感情だけを主張することから,自 分なりの理由を相手に示 しながら論理的に説得する意見表 明へ変化している。 ② く磁石〉「事実主張」から「説得」ヘK.E。
(女) 【1997年:5年
生】 みんなは磁石にくっつかないものは紙ですって言っとるだが。Eさ んはどうする?――「紙でもくっついたで一つ て。」――それから?――「…まだ紙はくっつかんと思っとったけど, くつついたでって。」 【1998年:6年
生】 (1997年と同 じ質問に)一―「やってみて,紙にもくっついたから,みんなもやってみて∼とか。J鳥取大学荻育地域科学部紀要 教育・人文科学 第