香川生物(Kagawa Seibutsu)㈹:23−−27,1984.
モンカゲロウ(ガpんβ刑βγめ属3種の斑紋および形態の比較
黒 田 珠 美 香川郡香川町立大野小学校渡 辺
直 香川大学教育学部環境科学研究室Colour Patter・n and Morphometry of the Mayfly Nymphs, 鞄九β仇βγαJ叩0サー宜cα,β・β亡γ宜gα£αand丘’・0γ乞¢れ£αg宜8
TamamiKuRODA,Ono丹imarySchool,Kagawa−Cho 761−12,Japan
NaoshiC.WATANABE,EnvironTnentalScience Laboratoヶ甘,凡culty of
/∴//′川J川′′、八りこ/りJ′、・JJ′(J∼・=・バ′/′′、丁●・′/−=′州/よ′′ 丁∴・、
・J■中洲′一
Abstract:Eph,emera j’aponica,E.slrigata andE・Orientalisin theKazurIadani
River,Kagawa Prefecture,Were COmparedin the colour patter・n andin the body
length−pr・OnOtumwidth r・elationship・・The three species ar・e differIent in the
colour・pattem Of head besides that of dorsalabdomenwhich has been used for
theidentification of the speciesl・According to the colour patter・n Of head,the
three species can be distinguished each other evenin the young nymphs smaller
than5rrmin bodylength・The r・atio of pronotum width to bodylength of female
is greater than that of malein every species・IIt does not differ・amOng females
of the thrIee SpeCies but male E..strigatais greater・in this ratio than males
Of the other species…
特徴によれば若令幼虫でも種の判別が可能であ ることを見い出した。この結果に3種の体長一 前胸幅関係の比較をあわせて以下に報告する。 本研究を進めるにあたり,石部孔詞氏,藤本 篤子氏をはじめとする香川大学教育学部生物学 教室室員の皆様には採集など多方面にわたって 御協力いただいた。ここに記して深く感謝する。 材料および方法 ここで用いた標本は,香川県高松市の東部を 流れる春日川の支流,葛谷川において,1982 年2月19日から1983年1月11日の間に毎月1 回採集したものである。採集地点は標高約35m から230mの問に位置する8地点である。採集 は じ め に 日本産のモソカゲロウ属は,フタスジモソカ ゲロウEphemera japonicaMcLachlan,キ ンカゲロウβ.β≠γ五gαfαEa亡On,トウヨウモ ソカゲロウE.orientalis Mcl.achlan,タイ ワンモソカゲロウガ‖/0γmOβα朋αUlmer・の4 種が知られている(御勢,1980;1981)。こ のうち沖縄諸島以外には前3老が生息し,これ ら3種の判別は従来腹節背面の縦条紋の配列に よってなされてきた(津田,1962)。しかし, 著者らの研究の過程で,体長5mm以下の若令幼 虫ではこの縦粂紋は明瞭でなく,3種の判別が 困難であることがわかった。そこで著者らは頭 部の斑紋に瞥目して3種を比較した結果,この ー23・−
地点の詳しい状況および採集方法は黒田・藤本 ・渡辺(1984)に述べられているのでここでは 省略する。 採集した標本は直ちに10%ホルマリン溶液で 固定して持ち帰り,砂や植物破片から選別した のち,70%・エチルアルコ∼・・・・・ル溶液に移して保存 した。実体顕微鏡下で,頭部斑紋を観察し,腹 部背面の縦条紋と合わせてモソカゲロウ属の3 種を判別したのち,腹部第9節腹面の交接器原 基の有無によって雌雄を分けた。雌雄の判別は 各種とも体長約7mm以上の個体で可能である。 さらに万能投影器で10倍に拡大し,最小目盛1 mmの定規で体長および前胸幅を討測した。計測 部位をFigい1に示す。 頭部斑紋の比較 Fig・・2はこモソカゲPウ属3種の幼虫の頭部 および腹部背面の典型的な斑紋を示したもので ある。このうち腹部背面の縦粂紋は従来から3 種を判別する特徴として用いられてきた(津田, 1962)。しかし,この縦粂紋での相違は体長5 mm以下の若令幼虫では明確でない。とくにβ. 8£γ宜gα≠αとβ.0γ宜β彿£α∼宜β の若令幼虫の斑 紋は非常に良く似ているため混同されやすい。 一・方,頭部の斑紋は体長約2mmまでの若令幼虫 でも識別が可儲である。体長2mm以下の幼虫に ついては,今回の採集では数個体しか得られな かったが,これらの個体では斑紋はまだ現われ ていなかった。 3種の頭部斑紋の特徴を以下に記述す−る。 ガ・J叩0≠宜cα:頭部斑紋はほとんどみられな い。 β..8£γ宜gα£α:対になった2個の単眼は黒褐 色の斑紋によって結ばれる。一斑紋の前縁は頭部 前縁突起の基部中央にある1個の単眼に向って 弧を描いており,後縁も胸部の方向へ緩やかな 弧を描いている。 β.0γ宜¢れ≠α∼宜8:斑紋は左右に対をなした単 眼と前方の】.個の単眼との問に位置し,中心部 で2分されている。斑紋はいずれの単眼とも接 しておらず,無紋の部分によって隔てられる。 左右の斑紋はそれぞれほぼ逆三角形をなし,底 辺にあたる前縁は胸部の方向へ弧を描く。この 斑紋は色素の多い終令幼虫になると消える場合 がある。 β.0γ五βれ≠α£宜βで述べたように,終令幼虫で は頭部斑紋の消失するものがあるが,この場合 でも腹部の斑紋は残っているため,頭部斑紋と 従来用いられてきた腹部の縦粂紋の両方を並用 することにより,ほとんどすべての個体につい て種の判別が可能である。 体長一前胸幅関係の比較 ここで用いた標本は,1982年2月から1983 年1月の間に採集された標本より、ガ.jdpo7もー 乞cαは雌雄あわせて350個体を,丘\βれ再− gα≠αは同様に133個体を,且0γ宜β耽£α∼乞8∼ま
Fig1 The diagramillustr・ating the
method of making the measur・e−
ments of Ebhemera nymphs・
B.L.;bodylength,P.W;prO−
A
Fig,.2 The colour− PatternS On the head and the dor・Salabdomen of Ebhemera nymphs・A;E.japonica,B;E・Strigata,C;E orLen・−
fαわざ. 50個体を,いずれもランダムに選んだものであ る。 /∴′り/−り・・∴・り、/∴・ヾレ1〟′†り、/・∴り′・J‥小∫りバ の体長一・前胸幅関係をそれぞれFig・3A,3 B,3Cに示した。雌雄の区別の可能な体長7 mm以上の個体についてみると,3種共に雄より も雌の方が傾きの大きい傾向が認められる。回 帰直線を共分散分析によって検定した結果では β.J叩0れ乞¢αでは1%レベルで雌雄間に有意な 差が検出され,雌の方が雄よりも体長の割りに 前胸幅の大きい傾向が示された。しかし,β. さ孟γ宜gα£αとg.0γ最微細けねでは雌雄間に有意 な差は検出されなかった。 雌雄それぞれについて3種間の比較を行った 結果,3種の雌間では回帰直線に有意な差は認 められなかった。雄間では,乱.ブ如0彿五¢αとガ. 0γ宜β耽≠αg宜βとは傾き,切片ともほとんど同一・ であるが,乱8まγ宜gα紬は他の2種よりも傾き が大きく,体長の割りに前胸幅の大きい傾向が ある0属,.β£γ乞gα吉αの傾きは且ゴ叩0?甘五cαの それと5%レベルで,またガ.0γ宜βれ≠αg五8とも 10%レベルで有意な差が認められた。ちなみに β.Jdpoヶも乞cαと互い0γ宜β常吉α上官さの雄の体長は 18mm前後が最大であるが,ガ.β孟γ宜gαとαの雄 は23mmに達するものが採集されている。 要 約 1香川県高松市の近郊を流れる春日川の支 −25−
∑⊃トO Z O∝d
︵∑∑︶ 工卜凸 膚き 0 2 0 3 0 5 10 15 20 25BODY LENGTH(MM)
Fig13 The r・elationship between the bodylength and the protonum
width.Solid circles are rnale,Open Cir・Cles ar’e female and dots are the earlyinstars which cannot be determined sex・
流,篇谷川で採集されたフタスジ、モンカグロウ 鞄んβ仰β用J叩0γ乙壱cα,モソカゲロウβ.8孟γ宜− gα紬,トウヨウ・モソカゲpウβ・0γ五βれね∼五8の 3種の幼虫について,頭部斑紋および体長一前 胸幅関係を比較した。