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日雇労働者の多様な実態と社会的排除-2008年「あいりん日雇労働調査」から-

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はじめに

周知のように、あいりん地域をはじめとする「寄せ場」において、日雇労働 者の雇用情勢の悪化が指摘されるようになって久しい1。「寄せ場」では高度成 長期以降、日雇労働者を対象とする諸施策が実施されてきたが、そのご多くの 日雇労働者が十分な就労日数を確保できなくなるなかで、日雇労働に従事する ことを支援するために整備された施策の活用が難しくなってきている。では、 いまどのような施策が必要とされているのだろうか。この点について明らかに するためには、「寄せ場」における労働者の実態を詳細に解明する必要がある だろう。2008年に実施された「あいりん日雇労働調査」(以下、2008年調査) では、あいりん地域の 800人を超える日雇労働者から回答を得ることができた。 本稿の目的は、この調査結果からあいりん地域の日雇労働者の実態を明らかに し、今後の施策の方向性について検討を加えることである。 以下では、まず、先行研究を検討することによってあいりん地域のおかれた

日雇労働者の多様な実態と社会的排除

-2008年「あいりん日雇労働調査」から-

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あいりん地域のように日雇労働市場を有し、その周辺に簡易宿泊所が立地するなど日

雇労働者の居住の場となっている地域のことを「寄せ場」と呼ぶことがある。しかし、 この言葉は、日雇労働者が早朝にその日の仕事についての取引を行う、あいりん総合セ ンター内の特定の場所などを意味することもある。本稿ではこの二つを区別するために、 前者を「寄せ場」、後者を「寄場」と表記している。

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状況が社会的排除概念で捉えられることを明らかにし、社会的排除の克服とい う観点から施策を検討するとどのような視点が得られるのかを示す(第 1節)。 次に、2008年調査の結果の分析を通して、あいりん地域の日雇労働者の実態 を克明に描く(第 2節)。最後に、あいりん地域の日雇労働者がいくつかの類 型に分けられることを示し、それぞれにおける社会的排除の状況を説明したう えで、社会的排除の克服という視点から今後の施策の方向性についての検討を 行う(第 3節)。

第 1節 あいりん地域と社会的排除

近年、あいりん地域などの「寄せ場」について論じる際に、社会的排除論を 手掛かりとしてその実態に迫ろうとする研究が登場してきている。これは社会 的排除論が空間に重きをおいた概念であるために、あいりん地域のように非常 に不安定な就労形態の労働者が集中しているような特定の地域の分析をおこな う際に、重要な視点を提供すると考えられるからである[Geddes,2000,783: Ali,2003,81:Byrne,1999,117:岩田,2008,28-29]。本稿は、先述のよ うに日雇労働者に対する実態調査の結果について論じるものであるが、そもそ もあいりん地域の日雇労働者の就労や生活などの実情は、「寄せ場」の機能や 「寄せ場」に対する施策、ひいては「寄せ場」における社会的排除とも密接に 結びついているといってよい。そこで、本論に入る前にあいりん地域における 社会的排除の実態について概観するとともに、社会的排除を克服するための施 策の方向性に関する議論についてもみておくことにする。 (1)あいりん地域と社会的排除 岩田正美は日本における社会的排除を体現した存在の一つとして、「寄せ場」 における日雇労働者を取り上げている[岩田,2004,250:岩田,2008,28-32]。 岩田はこのときの排除の形態として、「ある制度が特定層を特定の場所へ隔離 したり、隠蔽したりする」点を指摘する[岩田,2008,32]。つまり、「寄せ場」 において実施された諸制度を活用することによって、日雇労働者の人々は結果 的に「寄せ場」という特定の地域の内部にとどまることになり、その外にいる

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人々からは見えにくい存在になっているというのである。 こうした社会的排除の過程を、いくつかある「寄せ場」のうちあいりん地域 について、より幅広い視点から具体的に述べたのは原口剛である。原口はこの 地域に対する排除の過程について、場所の構築と制度的実践という二つの局面 から論じている。まず、場所の構築であるが、これは 1966年に当該地域に 「あいりん」というそれまでとは異なる名称が付けられ、この地域が近隣地域 とは切り離して捉えられるようになったことによる[原口,2003,34-35]。こ の理由として原口は、マスメディアの報道のために当該地域にネガティブなイ メージが付与されることとなったが、それによって「寄せ場」と住所表記上同 じ町名のエリアに居住する近隣住民も差別的なまなざしにさらされるようになっ た点を挙げている。そして、これに対する近隣住民の抵抗もあいまって、結果 的に「寄せ場」部分だけに「あいりん」という新たな名称が付けられたと述べ る。次に、制度的実践であるが、これについてはあいりん地域が日雇単身男性 労働者の集住地となるような施策が打ち出されたことと、あいりん地域を「日 雇労働力の供給地として整備する」ためにさまざまな制度が整えられていった ことが挙げられている[原口,2003,39]。前者は、1961年 8月の第一次暴動 以降、大阪市による住宅政策が家族持ちの労働者を当該地域から分散させる方 向で実施されたことに起因しており、後者は、1970年の大阪万博を控えてあ いりん地域の日雇労働者を労働力として十分に確保しておく必要があったため だという。原口は、これらを通して「寄せ場労働者を取り巻く諸問題のすべて をその境界内に封じ込める制度が確立された」と主張する[原口,2003,40]。 原口の描いたあいりん地域の日雇労働者が社会的に排除されていく過程は、あ いりん地域で実施された諸制度に加えて、当該地域に対するネガティブなイメー ジの付与と関連する事柄が含まれている点で岩田よりもやや踏み込んだ分析と なっているが、こうした社会的な偏見・差別も社会的排除の過程とは無関係で ないと考えられる。 以上からすると、あいりん地域における社会的排除の過程は、1960~70年 代にはすでにかなり進んでいたといえよう。では、その後はどうなっていった のであろうか。原口は、社会的排除が「その形態を変えながらもいまだに彼ら

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を取り巻き続けている」と述べ、これが 1990年代以降の野宿生活者の急増に つながったと指摘する[原口,2003,43]。原口が述べるように、確かに日雇 労働者のなかには常態的な野宿生活に陥った者もいる。しかし、現在でも簡易 宿泊所などに宿泊しながら日雇労働を続けている者もおり、そうした多様な実 態がある点についてはいまだ十分に説明されているとはいえない。そこで、以 下では野宿生活者が急増した 1990年代以降のあいりん地域の変化についてみ ていきたい。 (2)あいりん地域における変化 先述のように、1960年代以降のあいりん地域では、日雇労働者を対象とし た種々の施策が展開されていた。日雇労働者の人々はこれらを活用することに よってそれまでよりも安定的に日雇労働に従事しながら生計を維持することが 可能になったが、この施策のなかにはあいりん地域に限定される形で実施され たものが多数あった。そのため、日雇労働者の人々は日々の職場となる建設現 場などに赴くとき以外は、あいりん地域内でほぼ完結する生活を続けていくこ ととなった。そして、それがゆえにあいりん地域の日雇労働者の抱える問題は 社会の表舞台に出ることはほとんどなかったのである。先の岩田や原口の研究 は、この過程について社会的排除概念を用いて説明していたといえる。 しかし、1990年代に入ると、あいりん地域において二つの構造的な変化が 起こった。一つめは、労働力供給側の変化であり、日雇労働者の高齢化が進ん だことである[玉井,1998,10:中山・海老,2007,43]。玉井金五は、これ が日雇労働者の就業機会の著しい低下につながったと指摘する[玉井,1998, 10]。二つめは、労働力需要側の変化であり、日雇労働市場においてあいりん 地域の労働者に対する労働力需要が減少したことである。これは一つめの日雇 労働者の高齢化にともない建設事業者がより年齢の若い労働者を確保するため に、あいりん地域以外での求人を拡大させたことによるという[島,2001, 35-37:中山・海老,2007,43]。こうしてあいりん地域の日雇労働者に対する 労働力需要は減少していったが、それに建設不況や地方自治体などによる公共 事業の削減が追い打ちをかけたのである[島,2001,31:中山・海老,2007,

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37-38]。 こうした日雇労働市場における構造的な変化が起こるなかで、それまでのよ うに主に日雇労働に就くことを支援するための施策の展開だけでは、事態は改 善されなくなっていったと思われる。だとすれば、これまでとは異なる視点を 有した施策が必要になってくる。あいりん地域においても、1990年代にこう した事態に関連して、いくつかの指摘がなされるようになった。 あいりん総合対策検討委員会が、1998年に発刊した『あいりん地域の中長 期的なあり方』によると、あいりん地域における福祉制度として、生活困窮者 に対して生活保護法に基づく救護施設、更生施設への入所、医療扶助の給付、 社会医療センターでの無料診断が挙げられている。ただし同委員会によると、 これらはいずれも事後的な施策であるため、より事前的な施策が必要だとの指 摘がなされている[あいりん総合対策検討委員会,1998,30]。また、玉井は、 日雇労働者のための独自の年金保険がつくられてこなかった点などを挙げ、高 齢日雇労働者の老後の保障が整えられてこなかったことを指摘する[玉井, 1998,10]。これらはいずれも、日雇労働者の就労を前提としない施策に関す る指摘であると考えられる。したがって、それまでとは異なる視点として、こ れらのいわば福祉施策の拡充について検討することが一つの重要なポイントに なってくるといえよう。こうした点に留意しながら、続いて社会的排除を克服 するための施策の方向性について述べたい。 (3)社会的排除を克服するための施策の方向性 社会的排除を克服するための施策に関連しては、近年さまざまな研究が進め られているが、ここではとくにあいりん地域の日雇労働者の状況を改善してい くために、就労と福祉の両者を視野に入れた考え方に着目したい[武川・宮本・ 小沢,2008,221]。そこで以下では、ワークフェア、アクティベーション、ベー シック・インカムという 3つの概念を取り上げながら、あいりん地域の日雇労 働者を取り巻く社会的排除を克服するための施策の方向性について検討する。 一つめのワークフェアは、福祉施策の受給にあたって何らかの形で就労要件 が課せられるというものである。この概念は、もともとは「福祉依存」に陥っ

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ているとされている人々に対する批判から注目されるようになった考え方であ るため、施策によっては就労要件が満たせなかった利用者に対して厳しい罰則 が科せられるものもある。ただし、なかにはこの就労要件が単に労働市場など への参加を促す程度のものもみられるため、一言でワークフェアといっても、 かなり幅のある概念だといえる[埋橋,2007,18]。 二つめのアクティベーションは、福祉施策の利用者に対して、就労を軸とす る施策を展開する点ではワークフェアと似ているが、それに加えて所得保障や 教育訓練プログラムなどについても実施するという点で異なる[武川・宮本・ 小沢,2008,219-221:宮本,2009,124-125]。とくに、積極的労働市場政策 をきめ細やかに実施していくために十分な政府支出が用意されている点、生涯 教育、家事支援などの就労との関連の弱い領域でのサポートも重視されている 点はアクティベーションの特徴だといえる[武川・宮本・小沢,2008,220]。 三つめのベーシック・インカムは、「毎週ないし毎月、すべての男性・女性・ 子どもに対して、市民権に基づく個人の権利として、すなわち、職業上の地位、 職歴、求職の意思、婚姻上の地位とは無関係に、無条件で支払われる所得」の ことである[フィッツパトリック,2005,3]。つまり、ベーシック・インカム が実現すれば、人々は自分自身の属性や生活状況に関係なく、定期的に決めら れた額の所得を保障されることになる。このベーシック・インカムについては その実現可能性を疑問視する見解もあるが、日本においても財政的な側面から その導入は可能であることを示唆する試算が存在している[小沢,2002,167-183]。また、ベーシック・インカムは完全ベーシック・インカムと部分ベーシッ ク・インカムに分けられる場合もあり、後者については北欧諸国、カナダやニュー ジーランドで実施されている基礎年金のように、すでに実現している施策を挙 げる論者もいる[鎮目,2008,147]。したがって、一概に実現が困難であると いうわけではない。 一般にワークフェアとアクティベーションは就労と福祉の結びつきを強めよ うとする考え方であり、ベーシック・インカムは就労と福祉を切り離した考え 方だと評されることが多い。つまり、ワークフェアやアクティベーションはい ずれは仕事に就くことを前提とした考え方であり、ベーシック・インカムにつ

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いては仕事に就くことを前提としない考え方なのである。あいりん地域の日雇 労働者に対する社会的排除を克服する施策について検討するためには、いずれ の考え方も視野に入れておくことは意味があるといえる。ただし、ワークフェ アとアクティベーションに関連しては、あいりん地域の日雇労働者に対する労 働力需要が著しく減退している現状を考えると、アクティベーションの方向性 を採用する方が現実的だと考えられる。ここでは、社会的排除を克服するため の施策の方向性について検討したが、どのような施策が具体的に必要とされて いるかは、あいりん地域の日雇労働者の実態が明確に示されるなかで明らかに していくことになるだろう。以下では、いよいよ 2008年調査結果について言 及していきたい。

第 2節 あいりん日雇労働調査(2008年)

(1)調査の概要2 2008年 9~12月に実施された 2008年調査では、日雇労働者のおかれた状況 を幅広く把握するために、合計 8ヶ所の調査場所が設定されていた。それぞれ の調査場所は、「ⅰ西成労働福祉センターの紹介課窓口」、「ⅱ西成労働福祉セ ンターの労働福祉課窓口」、「ⅲ西成労働福祉センターの技能講習室窓口」、「ⅳ 早朝時の寄場」、「ⅴあいりん労働公共職業安定所の前」、「ⅵ簡易宿泊所」、「ⅶ 高齢者特別清掃事業の受付」、「ⅷ平日の寄場」、である。最後の「ⅷ平日の寄 場」のみ、調査票の質問項目が他の 7ヶ所に対するものとは若干異なっていた が、その理由については後述する。以下では、それぞれの調査場所について説 明していきたい3 まず、財団法人西成労働福祉センターの 3ヶ所の窓口において実施された調 22008年調査においては、日雇労働者に対する調査と求人事業所に対する調査がそれぞ れ実施されたが、本稿では紙幅の関係上、日雇労働者に対する調査に絞って検討を加え ることとしたい。 3 2008年調査については 8ヶ所の調査場所を設定していたため、1度調査に回答したと しても他の場所で再度調査を受けてしまう日雇労働者がいる可能性が考えられた。そこ で調査を実施する際に、いずれかの場所ですでに調査に回答している場合は、再度回答 しないようにお願いし、同一人物が複数の調査票に回答することのないようにした。

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査からみていこう。「ⅰ西成労働福祉センターの紹介課窓口」では、通常、平 日の午前 10時 20分より事業所から西成労働福祉センターに寄せられた、主に 期間雇用の求人情報の紹介が行われている。そのため、ここで調査に回答した 者は、おおよそ仕事についての情報を収集しに来ていた者と考えられる[西成 労働福祉センター,2009a]。「ⅱ西成労働福祉センターの労働福祉課窓口」で は、賃金未払い、労働災害に関する相談事業や諸手続きが実施されている。そ のため、ここで調査に回答した者は、賃金の未払いや労働災害の被害にあうな どして相談や手続きに来ていた者だといえる。「ⅲ西成労働福祉センターの技 能講習室窓口」では、キャリアカウンセリングや技能講習の案内などがなされ ている。したがって、ここで調査に回答した者は、キャリアに関するカウンセ リングを受けたり、新しい技能を身につけるための講習を受けたりするための 手続きや相談に来ていた者だといえよう。 次に、「ⅳ早朝時の寄場」と「ⅴあいりん労働公共職業安定所の前」につい てみていきたい。これらの調査場所は、あいりん総合センターのそれぞれ 1階 と 2階に位置している。前者は、日雇労働者が早朝に事業所の関係者と接触し てその日の仕事を探す場所である。そのためここで調査に回答した者は、その 日の仕事を探しに来ていた者だと考えられる。後者は、その日の仕事を得られ なかった場合に日雇雇用保険に加入している日雇労働者が手続きをして求職者 給付金(通称「アブレ手当」)を受け取る場所である。ただし、この求職者給 付金を受け取るためには、直近の 2ヶ月で 26日以上の日雇労働に従事し、雇 用された事業所からそれを証明するための印紙を自身の日雇労働被保険者手帳 (通称「白手帳」)に貼ってもらっておく必要がある。したがって、ここで調査 に回答した者は、直近の 2ヶ月で少なくとも 26日以上の日雇労働に就くこと ができた者で、かつ求職者給付金を受け取りに来ていた者だと考えられる。 さらに、今回は通称「ドヤ」と呼ばれるあいりん地域内の簡易宿泊所でも調 査が実施された。「ⅵ簡易宿泊所」がそれであり、とりわけ簡易宿泊所のなか でも比較的長く滞在している日雇労働者を調査の対象とした。 また、「ⅶ高齢者特別清掃事業の受付」では、高齢者特別清掃事業を利用し ている労働者に対して調査が実施された。これは大阪府・市による事業であり、

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主にあいりん地域の「55歳以上の日雇労働者を雇用して、大阪市内及び府下 の施設や道路などの除草・清掃」などを行うものである[釜ヶ崎支援機構, 2005]。この事業は、1994年から開始されており、一時期国の緊急地域雇用創 出特別交付金を活用することによって事業の規模が拡大したものの、2005年 には大阪府・市の単独予算事業に戻っている[中山・海老,2007,44]。高齢 化したあいりん地域の日雇労働者の就労機会の確保を意図したものであるが、 登録者が多いため、近年では仕事が回ってくるのが一ヶ月に3~4回程度だと いわれている[西成労働福祉センター,2009b,74:ホームレス問題の授業づ くりネット,2009]。 最後の「ⅷ平日の寄場」は、「ⅳ早朝時の寄場」と場所は同じであるが、調 査時間が異なる。近年、日雇労働者の高齢化と関連してか、平日の日中に「寄 場」に滞在している者が増えていることが指摘されており、かかる層の実態に 迫るために調査が実施された[玉井,2008,4]。ただし、この層についてはあ いりん総合センター 1階での滞在の状況をより詳細に把握する必要があったこ とから、他の 7ヶ所の調査場所とは一部質問項目の異なる調査票を活用してい る。 それぞれの調査場所別の回答者数を表にまとめたのが、表 1である。同表に あるように、便宜上、以下では「ⅰ西成労働福祉センターの紹介課窓口」を 「紹介」、「ⅱ西成労働福祉センターの労働福祉課窓口」を「労働福祉」、「ⅲ西 成労働福祉センターの技能講習室窓口」を「技能講習」、「ⅳ早朝時の寄場」を 「早朝」、「ⅴあいりん労働公共職業安定所の前」を「職安」、「ⅵ簡易宿泊所」 を「簡宿」、「ⅶ高齢者特別清掃事業の受付」を「特掃」、「ⅷ平日の寄場」を 「寄場」と表記することとしたい。表 1によると、各調査場所によって回収さ れた調査票の数に違いがあることがわかる。そこで以下では、主に調査場所ご との特徴に着目する形で分析を行っていくことにする。

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(2)あいりん日雇労働調査(2008年) 1)年齢 2008年調査の回答者の年齢を示したのが表 2である。調査場所別にみてみ ると、同表からはいくつかの特徴的な点が浮かび上がってくる。一つは「特掃」、 「寄場」について、年齢の高い者が多い点である。これは「特掃」については、 先述のように高齢者特別清掃事業そのものが原則として 55歳以上の年齢の者 を対象とする制度となっているためである。ただし、「寄場」についてはそう いった事情はないので、平日の寄場に滞在している者が相対的に高齢であるこ とを示しているといえる。二つは「技能講習」について、あいりん地域の日雇 労働者のなかでは突出して年齢の低い層が多く含まれている点である。「技能 講習」においては他の調査場所ではみられなかった 20歳未満、20歳代の者が 含まれており、さらに 30歳代、40歳代の者も一定数みられる。ただし、50歳 代後半の日雇労働者も 26.5%含まれており、その意味では、年齢の低い層と 年齢の高い層の両方を含んでいる点が「技能講習」の特徴であるといえよう。 表 1 調査場所別の回答者数 人数 割合 (人、%) 紹介 56 6.7 労働福祉 80 9.6 技能講習 117 14.0 早朝 50 6.0 職安 82 9.8 簡宿 61 7.3 特掃 291 34.8 寄場 99 11.8 合計 836100.0 出所:西成労働福祉センター編 『あいりん日雇労働調査報告書』(以下、 2008年調査報告書)より筆者作成。

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ところで、先に述べたように、近年あいりん地域の日雇労働者が高齢化した との指摘がある。そこでこの点について確認するために、2008年調査の結果 を、1996年に社会構造研究会が実施した「あいりん地域日雇労働者調査」(以 下、1996年調査)の結果と比較しておきたい(表 3)[社会構造研究会編, 1997]4。ただし、1996年調査結果においては調査場所別にデータがまとめら れているわけではないため、ここでは回答者全体の年齢構成について比較して いくことにする。 表 2 年齢は、おいくつですか (人、%) 紹 介 労働福祉 技能講習 早 朝 職 安 簡 宿 特 掃 寄 場 合 計 人数 割合 人数 割合 人数 割合 人数 割合 人数 割合 人数 割合 人数 割合 人数 割合 人数 割合 20歳未満 0 0.0 0 0.0 2 1.7 0 0.0 0 0.0 0 0.0 0 0.0 0 0.0 2 0.2 20-24歳 0 0.0 0 0.0 7 6.0 0 0.0 0 0.0 0 0.0 0 0.0 0 0.0 7 0.8 25-29歳 0 0.0 1 1.3 5 4.3 0 0.0 0 0.0 1 1.6 0 0.0 0 0.0 7 0.8 30-34歳 2 3.6 0 0.0 8 6.8 2 4.0 3 3.7 0 0.0 0 0.0 2 2.0 17 2.0 35-39歳 2 3.6 3 3.8 12 10.3 4 8.0 3 3.7 6 9.8 0 0.0 1 1.0 31 3.7 40-44歳 3 5.4 6 7.5 18 15.4 6 12.0 7 8.5 4 6.6 1 0.3 2 2.0 47 5.6 45-49歳 6 10.7 9 11.3 14 12.0 5 10.0 9 11.0 8 13.1 0 0.0 2 2.0 53 6.3 50-54歳 17 30.4 13 16.3 8 6.8 12 24.0 13 15.9 15 24.6 2 0.7 18 18.2 98 11.7 55-59歳 17 30.4 27 33.8 31 26.5 14 28.0 24 29.3 13 21.3 120 41.2 24 24.2 270 32.3 60-64歳 8 14.3 19 23.8 11 9.4 5 10.0 18 22.0 11 18.0 126 43.3 36 36.4 234 28.0 65-69歳 1 1.8 2 2.5 1 0.9 2 4.0 5 6.1 3 4.9 32 11.0 10 10.1 56 6.7 70-74歳 0 0.0 0 0.0 0 0.0 0 0.0 0 0.0 0 0.0 9 3.1 4 4.0 13 1.6 75歳以上 0 0.0 0 0.0 0 0.0 0 0.0 0 0.0 0 0.0 1 0.3 0 0.0 1 0.1 有効回答者数 56100.0 80100.0 117100.0 50100.0 82100.0 61100.0 291100.0 99100.0 836100.0 不明 0 0 0 0 0 0 0 0 0 合計 56 80 117 50 82 61 291 99 836 出所:2008年調査報告書より筆者作成。 42008年調査と 1996年調査とでは調査場所やそれぞれの回答者数が異なっているが、 それぞれの調査場所や回答者の状況についてみていくと、この二つのデータを比較検討 することはある程度妥当だと判断できる。というのも、1996年調査の回収された調査票 の内訳は、「西成市民館」(219人、47.5%)、「総合センター」(182人、39.5%)、「三徳 寮」(44人、9.5%)、「早朝のセンター」(16人、3.5%)となっているが、このうち 2008 年調査の「早朝」は、1996年調査の「早朝のセンター」とほぼ同じ場所と考えられるし、 2008年調査の「紹介」、「労働福祉」、「技能講習」、「職安」、「特掃」、「寄場」は、1996 年調査でいうところの「総合センター」内での調査だからである[社会構造研究会編, 1997]。また、1996年調査の「西成市民館」、「三徳寮」などは、あいりん地域の日雇労 働者が普段から頻繁に行き来したり、利用したりしている場所である。いずれにしても、 2008年調査、1996年調査ともにあいりん地域の日雇労働者の声を十分に反映したもの だと考えられる。

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まず、2008年調査結果についてみていくと、全体としては、最も高い割合 だった「55-59歳」が 32.3%、次に高かった「60-64歳」が 28.0%、三番めの 「50-54歳」が 11.7%となっている。すなわち、2008年調査では、50代後半か ら 60代の者が相対的に多かったのである。次に、1996年調査結果についてみ ていくとあいりん地域の日雇労働者は 40歳代後半、50歳代前半の者が多く、 50歳代後半、60歳代前半の者が少ないことがわかる。ここから、2008年調査 の方が相対的に高齢の者が多いことが明らかとなる。以上からすると、あいり ん地域の日雇労働者は 1996年から 2008年にかけて高齢化したといえるだろう。 ただし、この比較からだけでは、高齢化が 1996年調査当時からあいりん地 域に居住していた労働者が年齢を重ねたことによる結果なのか、それとも異な る要因による結果なのかはわからない。そこで、この点について検討するため に、2008年調査時点におけるあいりん地域での仕事の年数を示した表 4をみ ておくことにしよう。これによると、全体ではあいりん地域で仕事をするよう になったのはこの 10年以内だという者が 50.8%と過半数を占めていた。この ことは、2008年調査に回答した者の約半数が、1996年調査時点ではあいりん 地域でまだ仕事をしていなかったことを意味する。したがって、2008年調査 におけるあいりん地域の日雇労働者の高齢化は、1996年調査当時からあいり ん地域に居住していた労働者が年齢を重ねた点だけに依拠して説明することは できないといえる。その原因については、ここに示されたデータからだけで解 表 3 1996年調査の年齢別回答者数 人数 割合 (人、%) 20-25歳未満 2 0.4 25-30歳未満 6 1.3 30-35歳未満 3 0.7 35-40歳未満 6 1.3 40-45歳未満 32 7.1 45-50歳未満 72 16.0 50-55歳未満 87 19.3 55-60歳未満 100 22.2 60-65歳未満 88 19.5 65-70歳未満 44 9.8 70歳以上 11 2.4 有効回答者数 451100.0 不明 10 合計 461 出所:社会構造研究会編 『あいりん地域日雇労働者調査』より 筆者作成。

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明することは困難であるが、島和博によるあいりん地域についての分析のなか で「一方では地区内日雇労働者の急速な高齢化が進行し、またもう一方で釜ヶ 崎への『新規流入者』の大部分がやはり中高年層なのである」との指摘があり、 2008年調査結果からもそのような実態が読み取れるといえよう[島,2001, 35]。 また、同じく表 4より調査場所別の結果についてもみておくと、10年以内 にあいりん地域で仕事をするようになった者の割合は調査場所によってかなり 異なることがわかる。あいりん地域で仕事をするようになって 10年以内とい う者の割合が高い順にみていくと、「技能講習」(77.4%)、「紹介」(64.3%)、 「簡宿」(60.6%)、「労働福祉」(50.1%)、「早朝」(50.0%)、「職安」(48.4%)、 「寄場」(47.5%)、「特掃」(37.6%)となっている。「技能講習」のように多く の者がこの 10年であいりん地域での仕事を始めたという調査場所もあれば、 「特掃」のように少数にとどまる調査場所もあることがわかる。 2)最近 1ヶ月にもっとも多く寝泊まりした場所と居住地 最近 1ヶ月にもっとも多く寝泊まりした場所について問うた結果を示したの が表 5である。調査場所別にみてみると、「簡宿」、「紹介」、「職安」、「労働福 祉」、「早朝」において「簡易宿泊所」を挙げた者が、それぞれ 93.4%、60.7%、 表 4 あいりん地域(釜ヶ崎)で仕事をして何年くらいになりますか (人、%) 紹 介 労働福祉 技能講習 早 朝 職 安 簡 宿 特 掃 寄 場 合 計 人数 割合 人数 割合 人数 割合 人数 割合 人数 割合 人数 割合 人数 割合 人数 割合 人数 割合 1年未満 2 3.6 8 10.0 18 15.7 6 12.0 2 2.4 7 11.5 0 0.0 7 7.1 50 6.0 1-5年 13 23.2 13 16.3 42 36.5 11 22.0 19 23.2 19 31.1 54 18.6 23 23.2 194 23.3 6-10年 21 37.5 19 23.8 29 25.2 8 16.0 19 23.2 11 18.0 55 19.0 17 17.2 179 21.5 11-15年 5 8.9 12 15.0 8 7.0 5 10.0 12 14.6 9 14.8 32 11.0 10 10.1 93 11.2 16-20年 9 16.1 14 17.5 10 8.7 5 10.0 14 17.1 5 8.2 51 17.6 13 13.1 121 14.5 21-25年 2 3.6 3 3.8 3 2.6 6 12.0 3 3.7 5 8.2 35 12.1 4 4.0 61 7.3 26-30年 2 3.6 7 8.8 2 1.7 7 14.0 9 11.0 3 4.9 33 11.4 12 12.1 75 9.0 31-35年 0 0.0 2 2.5 2 1.7 0 0.0 1 1.2 1 1.6 12 4.1 2 2.0 20 2.4 36-40年 2 3.6 1 1.3 1 0.9 2 4.0 2 2.4 0 0.0 10 3.4 7 7.1 25 3.0 41-45年 0 0.0 1 1.3 0 0.0 0 0.0 1 1.2 1 1.6 5 1.7 2 2.0 10 1.2 46-50年 0 0.0 0 0.0 0 0.0 0 0.0 0 0.0 0 0.0 3 1.0 2 2.0 5 0.6 51年以上 0 0.0 0 0.0 0 0.0 0 0.0 0 0.0 0 0.0 0 0.0 0 0.0 0 0.0 有効回答者数 56100.0 80100.0 115100.0 50100.0 82100.0 61100.0 290100.0 99100.0 833100.0 不明 0 0 1 0 0 0 1 0 2 非該当 0 0 1 0 0 0 0 0 1 合計 56 80 117 50 82 61 291 99 836 出所:2008年調査報告書より筆者作成。

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59.3%、51.9%、48.0%と高い割合を占めていたことがわかる。なかでも「簡 宿」は、先述のように、比較的長く簡易宿泊所に滞在している日雇労働者を対 象としていたため、突出して高い数値となっている。また、「寄場」、「特掃」 において「シェルター」を挙げた者が、それぞれ 57.0%、35.5%と高い割合と なっている。とくに「寄場」は半数を超えており、多くの者が野宿生活に陥る 危険に直面しているといえよう。さらに、すでに野宿生活に陥っていることを 意味する「野宿」は、「特掃」で 17.8%、「寄場」で 14.0%に上っている。ま た、「技能講習」、「早朝」において、「アパート」と回答した者はそれぞれ 33.0 %、26.0%となっており、「技能講習」や「早朝」については一定数の者が安 定した居住状況にあることがわかる。 また 2008年調査では、現在住んでいるのがあいりん地域内かどうかを問う た質問項目も設けられていた。ここでその結果について数値のみ紹介しておく と、あいりん地域内に居住していると回答した者の割合の高い順に「簡宿」 (100.0%)、「紹介」(92.9%)、「寄場」(91.9%)、「特掃」(83.8%)、「早朝」 (82.0%)、「労働福祉」(80.0%)、「職安」(75.6%)、「技能講習」(53.8%)と なっていた。多くの調査場所では、あいりん地域内に居住している者が多数を 占めているものの、「技能講習」に限っては、約半数の者があいりん地域外か ら通ってきていることがわかる。 3)社会保障制度への加入状況 ここでは、社会保障制度への加入状況についてみていきたい。2008年調査 表 5 最近 1ヶ月間に、一番多く寝泊りしたのはどこですか (人、%) 紹 介 労働福祉 技能講習 早 朝 職 安 簡宿 特 掃 寄 場 合 計 人数 割合 人数 割合 人数 割合 人数 割合 人数 割合 人数 割合 人数 割合 人数 割合 人数 割合 簡易宿所 34 60.7 41 51.9 35 31.3 24 48.0 48 59.3 57 93.4 79 27.5 14 15.1 332 40.5 アパート 4 7.1 13 16.5 37 33.0 13 26.0 14 17.3 0 0.0 34 11.8 10 10.8 125 15.3 知人の家 0 0.0 1 1.3 5 4.5 0 0.0 1 1.2 0 0.0 7 2.4 1 1.1 15 1.8 寄宿舎(飯場) 8 14.3 8 10.1 14 12.5 1 2.0 4 4.9 3 4.9 0 0.0 0 0.0 38 4.6 福祉施設 0 0.0 3 3.8 0 0.0 1 2.0 0 0.0 0 0.0 1 0.3 0 0.0 5 0.6 シェルター 4 7.1 6 7.6 4 3.6 10 20.0 0 0.0 0 0.0 102 35.5 53 57.0 179 21.9 野宿 2 3.6 3 3.8 0 0.0 1 2.0 1 1.2 1 1.6 51 17.8 13 14.0 72 8.8 その他 4 7.1 4 5.1 17 15.2 0 0.0 13 16.0 0 0.0 13 4.5 2 2.2 53 6.5 有効回答者数 56100.0 79100.0 112100.0 50100.0 81100.0 61100.0 287100.0 93100.0 819100.0 不明 0 1 5 0 1 0 4 6 17 合計 56 80 117 50 82 61 291 99 836 出所:2008年調査報告書より筆者作成。

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では社会保障制度に関する項目として、雇用保険、医療保険、年金、建設業退 職金共済制度(以下、建退共)への加入状況について質問していた。このうち、 年金、建退共についてはいずれの調査場所の労働者についても加入している者 の割合がかなり低くく、あまり差はないものと思われた。そこで以下では、雇 用保険と医療保険への加入状況について、調査場所別に詳しくみていきたい。 まず、雇用保険についてである。日雇雇用保険制度に加入している者が所有 する日雇労働被保険者手帳の所持について質問した結果を示したのが、表 6で ある。調査場所別にみてみると、雇用保険における求職者給付金が給付される あいりん労働公共職業安定所前で調査を受けていた「職安」が 100%で全員が 手帳を所持しており、続いて「紹介」が 54.5%、「技能講習」が 43.0%で相対 的に高い割合を占めていた。反対に、「労働福祉」(26.3%)、「早朝」(24.5%)、 「簡宿」(23.0%)、「特別清掃」(17.7%)、「寄場」(11.1%)の労働者について は、日雇労働被保険者手帳の所持率が低くなっているといえる。 次に、医療保険への加入状況についてみていきたい。表 7は日雇健康保険へ の加入の有無を示したものであり、表 8は国民健康保険への加入の有無を示し たものである。日雇健康保険は「職安」(41.3%)、「紹介」(30.2%)、「技能講 習」(26.8%)で、国民健康保険は「技能講習」(53.5%)、「簡宿」(32.8%)、 「早朝」(30.6%)、「職安」(25.3%)で相対的に多くの者が加入していた。こ のうち「職安」と「技能講習」はどちらの医療保険においても一定数加入者が みられるが、「職安」についてはとくに日雇健康保険の、「技能講習」について はとくに国民健康保険の加入者が多いことがわかる。また、日雇健康保険と国 民健康保険が併用の認められていない公的医療保険制度であることを考えると、 表 6 日雇労働被保険者手帳(白手帳、あぶれ手当、認定とも言う)を持っていますか (人、%) 紹 介 労働福祉 技能講習 早 朝 職 安 簡 宿 特 掃 寄 場 合 計 人数 割合 人数 割合 人数 割合 人数 割合 人数 割合 人数 割合 人数 割合 人数 割合 人数 割合 持っている 30 54.5 21 26.3 49 43.0 12 24.5 82100.0 14 23.0 51 17.7 11 11.1 270 32.6 以 前 は 持 っ て いたが、 今は 持っていない 16 29.1 27 33.8 24 21.1 14 28.6 0 0.0 15 24.6 139 48.3 38 38.4 273 33.0 作ったことがない 9 16.4 32 40.0 41 36.0 23 46.9 0 0.0 32 52.5 98 34.0 50 50.5 285 34.4 有効回答者数 55100.0 80100.0 114100.0 49100.0 82100.0 61100.0 288100.0 99100.0 828100.0 不明 1 0 3 1 0 0 3 0 8 合計 56 80 117 50 82 61 291 99 836 出所:2008年調査報告書より筆者作成。

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両保険への加入者の数値を合計すれば、おおよその公的医療保険制度への加入 者の割合を知ることができるといえる。そこで、日雇健康保険と国民健康保険 の加入者の割合を合計したところ、数値の高い順に「技能講習」(80.3%)、 「職安」(66.6%)、「紹介」(48.4%)、「簡宿」(42.6%)、「早朝」(32.6%)、「労 働福祉」(27.5%)、「特掃」(17.2%)、「寄場」(10.1%)となっていた。「技能 講習」や「職安」においては公的医療保険へ加入している者の割合がそれなり に高いが、それ以外の調査場所については加入していない者が相当数に上って いることがわかる。 4)高齢者特別清掃事業とのかかわり 2008年調査では、高齢者特別清掃事業とのかかわりについても質問してい る。表 9は、高齢者特別清掃事業に登録している者が所持することになってい る特別清掃カードの有無について問うた結果を示したものである。この設問に ついては、高齢者特別清掃事業に登録できるのが原則として 55歳以上の者で あることから、回答者もほぼ 55歳以上の者となっている5 表 7 日雇健康保険に加入していますか(現在) (人、%) 紹 介 労働福祉 技能講習 早 朝 職 安 簡 宿 特 掃 寄 場 合 計 人数 割合 人数 割合 人数 割合 人数 割合 人数 割合 人数 割合 人数 割合 人数 割合 人数 割合 有 16 30.2 6 7.5 22 26.8 1 2.0 33 41.3 6 9.8 13 4.6 4 4.1 101 12.8 無 37 69.8 74 92.5 60 73.2 49 98.0 47 58.8 55 90.2 269 95.4 94 95.9 685 87.2 有効回答者数 53100.0 80100.0 82100.0 50100.0 80100.0 61100.0 282100.0 98100.0 786100.0 不明 3 0 35 0 2 0 9 1 50 合計 56 80 117 50 82 61 291 99 836 出所:2008年調査報告書より筆者作成。 表 8 国民健康保険に加入していますか(現在) (人、%) 紹 介 労働福祉 技能講習 早 朝 職 安 簡 宿 特 掃 寄 場 合 計 人数 割合 人数 割合 人数 割合 人数 割合 人数 割合 人数 割合 人数 割合 人数 割合 人数 割合 有 10 18.2 16 20.0 53 53.5 15 30.6 20 25.3 20 32.8 36 12.6 5 6.0 175 21.7 無 45 81.8 64 80.0 46 46.5 34 69.4 59 74.7 41 67.2 249 87.4 93 94.0 631 78.3 有効回答者数 55100.0 80100.0 99100.0 49100.0 79100.0 61100.0 285100.0 98100.0 806100.0 不明 1 0 18 1 3 0 6 1 30 合計 56 80 117 50 82 61 291 99 836 出所:2008年調査報告書より筆者作成。 5ただし、障害を有するなどの事情がある場合、55歳に達していなくても特別清掃カー ドを取得し、高齢者特別清掃事業を利用できるケースもある。

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調査場所別にみてみると、高齢者特別清掃事業の手続きを行う場所で調査を 行っている「特掃」においては 100.0%、「寄場」については 60.0%が特別清 掃カードを所持しており相対的に高い数値を示していた。しかし、一方でこの 二ヶ所以外の調査場所においては、「労働福祉」(25.0%)、「紹介」(17.4%)、 「早朝」(15.0%)、「技能講習」(12.5%)、「簡宿」(8.0%)、「職安」(7.0%)と 比較的低い数値にとどまっていた。ここから、高齢者特別清掃事業を利用して いる者が多いのは、「特掃」と「寄場」だと判断できよう。 5)日雇労働に従事した日数 2008年 9月の 1ヶ月に、いわゆる日雇労働(日々雇用または期間雇用)に 従事した日数の合計について聞いた結果を示したのが表 10である6。先述のよ うに、日雇労働者に対しても雇用保険制度は整備されているが、この求職者給 付金を受給するためには就労日数が直近の二ヶ月で 26日以上という条件を満 たさなければならなかった。これは一ヶ月の目安として、13日以上の日雇労 働に従事している必要があることを意味する。そこで以下では、表 10の日数 の区分の都合上、11日以上仕事に就いたと回答した者がどれくらい存在する のかをみていくことにしたい。 表 9(55歳以上の方に)特別清掃カードを持っていますか (人、%) 紹 介 労働福祉 技能講習 早 朝 職 安 簡 宿 特 掃 寄 場 合 計 人数 割合 人数 割合 人数 割合 人数 割合 人数 割合 人数 割合 人数 割合 人数 割合 人数 割合 持っている 4 17.4 12 25.0 5 12.5 3 15.0 3 7.0 2 8.0 281100.0 45 60.0 355 64.0 以 前 は 持 っ て いたが、 今は 持っていない 0 0.0 6 12.5 1 2.5 0 0.0 1 2.3 1 4.0 0 0.0 10 13.3 19 3.4 作ったことがない 19 82.6 30 62.5 34 85 17 85.0 39 90.7 22 88.0 0 0.0 20 26.7 181 32.6 有効回答者数 23100.0 48100.0 40 100 20100.0 43100.0 25100.0 281100.0 75100.0 555100.0 不明 3 0 5 1 4 2 10 0 25 非該当 30 32 72 29 35 34 0 24 256 合計 56 80 117 50 82 61 291 99 836 出所:2008年調査報告書より筆者作成。 62008年調査においては、2008年 9月時点での仕事の日数や収入に加えて、2008年 10 月時点での仕事の日数や収入についても質問している。ただし、この 9月と 10月のデー タについてはほとんどの調査場所において、結果が大きくは異ならなかった。そこで、 本稿では 2008年 9月時点での調査結果のみを取り上げている。

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表 10より、11日以上仕事をした者について割合の高い順にみていくと、 「職安」(95.1%)、「簡宿」(67.8%)、「技能講習」(65.5%)、「紹介」(54.7%)、 「早朝」(53.1%)、「労働福祉」(36.7%)、「特掃」(5.5%)となっていた。ここ から、「職安」についてはほとんどが、また「簡宿」、「技能講習」、「紹介」、 「早朝」については過半数が、一ヶ月に 11日以上の日雇労働に従事していたこ とがわかる。他方で、「労働福祉」や「特掃」のように、一ヶ月あたりの就労 日数が 11日以上であった者の割合がかなり低い調査場所もあった。この「労 働福祉」と「特掃」においては、一ヶ月の就労日数について「なし」と回答し た者がそれぞれ 38.0%、72.2%に上っている。このうち「労働福祉」について は、労働災害によるけがなどの影響があるものとみられる。しかし、「特掃」 についてはそのような事情はないため、すでに日雇労働に従事することのでき なくなった者がかなりの数に上っているものと思われる。 6)仕事で得た収入 2008年 9月の仕事で得た収入について質問した結果を示したのが、表 11で ある。調査票によると、この場合の「収入」にはアルミ缶集めやダンボール集 めなど日雇労働以外の仕事によるものが含まれている。そのために、上述の表 10で日雇労働をしていなかったと回答した者についても何らかの収入を得て いる場合がある。例えば「特掃」についてみると、先に述べたように、2008 年 9月の一ヶ月は日雇労働に一日も従事していない者が 72.2%に上っていた 表 10 2008年 9月の現金(日雇)と契約(期間)で仕事をした日の合計 (人、%) 紹 介 労働福祉 技能講習 早 朝 職 安 簡 宿 特 掃 合 計 人数 割合 人数 割合 人数 割合 人数 割合 人数 割合 人数 割合 人数 割合 人数 割合 なし 9 17.0 30 38.0 9 8.2 2 4.1 1 1.2 6 10.2 210 72.2 267 36.9 1-5日 6 11.3 11 13.9 7 6.4 7 14.3 1 1.2 0 0.0 36 12.4 68 9.4 6-10日 9 17.0 9 11.4 22 20.0 13 26.5 2 2.4 13 22.0 29 10.0 97 13.4 11-15日 13 24.5 9 11.4 35 31.8 13 26.5 61 74.4 20 33.9 11 3.8 162 22.4 16-20日 10 18.9 15 19.0 27 24.5 10 20.4 12 14.6 10 16.9 3 1.0 87 12.0 21-25日 6 11.3 4 5.1 6 5.5 2 4.1 4 4.9 8 13.6 2 0.7 32 4.4 26日以上 0 0.0 1 1.3 4 3.6 1 2.0 1 1.2 2 3.4 0 0.0 9 1.2 有効回答者数 53100.0 79100.0 110100.0 49100.0 82100.0 59100.0 291100.0 723100.0 不明 2 1 7 0 0 2 0 12 非該当 1 0 0 2 0 0 0 3 合計 56 80 117 50 82 61 291 737 出所:2008年調査報告書より筆者作成。 注 この質問項目は、「寄場」労働者に対する調査には含まれていなかった。

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ものの、収入についてみると「1万円未満」の者は 1.4%に過ぎず、「1-5万円」 の収入を得たと回答した者が 73.8%に上っている。これは高齢者特別清掃事 業、アルミ缶集めや段ボール集めなどによる収入がカウントされたことによる ものだといってよい。 ここでは調査結果の分析に入る前に、あいりん地域の日雇労働者の収入がど の程度であるのかについて明らかにするために、生活保護制度による給付額を 参考におおよその最低生活費を計算しておきたい。あいりん地域の日雇労働者 の多くは中高年齢の単身男性であるため、生活保護制度を受給した場合の一ヶ 月あたりの受給額は大体 11~12万円程度となる。周知のように、生活保護制 度を利用しているときには、医療費の免除や公共料金の減免などの措置がある ため、最低生活費を計算する際には受給額の 1.2~1.4倍の額が目安にされる ことが多い[岩田ほか,2009,14]。だとすれば、ここではおおよそ 16万円が 一つの基準になると考えられる。 調査場所別に収入が 16万円以上の者の割合についてみてみると、割合の高 い順に「職安」(59.8%)、「技能講習」(38.5%)、「簡宿」(33.9%)、「早朝」 (32.7%)、「紹介」(29.4%)、「労働福祉」(27.5%)、「特掃」(2.1%)となって いた。日雇雇用保険を利用している者がほとんどを占める「職安」ですら、 一ヶ月あたり 16万円の収入を得ている者は 60%を切っており、その他の調査 場所においてはさらに多くの者が一ヶ月あたり 16万円の収入を確保すること 表 11 2008年 9月の収入 (人、%) 紹 介 労働福祉 技能講習 早 朝 職 安 簡 宿 特 掃 合 計 人数 割合 人数 割合 人数 割合 人数 割合 人数 割合 人数 割合 人数 割合 人数 割合 1万円未満 7 13.7 27 33.8 8 7.3 1 2.0 0 0.0 3 5.4 4 1.4 50 7.0 1-5万円 7 13.7 11 13.8 7 6.4 6 12.2 2 2.4 1 1.8 214 73.8 248 34.6 6-10万円 10 19.6 12 15.0 23 21.1 17 34.7 3 3.7 15 26.8 48 16.6 128 17.9 11-15万円 12 23.5 8 10.0 29 26.6 9 18.4 28 34.1 18 32.1 18 6.2 122 17.0 16-20万円 7 13.7 13 16.3 27 24.8 9 18.4 37 45.1 13 23.2 2 0.7 108 15.1 21-25万円 7 13.7 5 6.3 8 7.3 4 8.2 10 12.2 4 7.1 3 1.0 41 5.7 26-30万円 1 2.0 2 2.5 5 4.6 3 6.1 1 1.2 1 1.8 0 0.0 13 1.8 31万円以上 0 0.0 2 2.5 2 1.8 0 0.0 1 1.2 1 1.8 1 0.3 7 1.0 有効回答者数 51100.0 80100.0 109100.0 49100.0 82100.0 56100.0 290100.0 717100.0 不明 4 0 8 0 0 5 1 18 非該当 1 0 0 1 0 0 0 2 合計 56 80 117 50 82 61 291 737 出所:2008年調査報告書より筆者作成。 注 1 ここでの収入には、アルミ缶集め、ダンボール集めなどによるものを含む。 注 2 この質問項目は、「寄場」労働者に対する調査には含まれていなかった。

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ができていない。ここから、非常にたくさんの日雇労働者が低い収入のもとで 生活をしていることが確認されたといえよう。 7)仕事を探す方法 では、就労日数の確保が困難となるなか、あいりん地域の日雇労働者はどの ような方法で仕事を探しているのだろうか。この点について質問した結果を示 したのが、表 12である。同表によると、多くの調査場所の日雇労働者によっ て利用されているのが、「手配師から声がかかって」、「プラカード求人」であ ることがわかる。これらは、あいりん総合センター内の寄場で仕事を探してい ることを意味する。仕事を探す際に、寄場の機能を利用している者が多いこと が明らかになったといえよう。 それに加えて、さらにいくつかの特筆すべき点がみられたのでそれらについ ても指摘をしておきたい。一つめは、「業者に連絡を取る」が「職安」(55.7%)、 「技能講習」(35.9%)、「簡宿」(32.7%)で高い数値を示していたことである。 二つめは、「友達の紹介」が「簡宿」(30.9%)で高くなっていたことである。 つまり、「職安」、「技能講習」、「簡宿」の日雇労働者は自分から業者に連絡を 取って仕事を確保することのできる者が多く、また「簡宿」の労働者について 表 12 どのような方法で仕事を探していますか(複数回答) (人、%) 紹 介 労働福祉 技能講習 早 朝 職 安 簡 宿 特 掃 合 計 人数 割合 人数 割合 人数 割合 人数 割合 人数 割合 人数 割合 人数 割合 人数 割合 プラカード求人 24 45.3 17 21.5 18 17.5 19 38.0 23 29.1 10 18.2 81 31.9 192 28.5 センターの窓口 36 67.9 18 22.8 16 15.5 5 10.0 6 7.6 7 12.7 32 12.6 120 17.8 手配師から 声がかかって 21 39.6 30 38.0 30 29.1 34 68.0 24 30.4 16 29.1 87 34.3 242 36.0 業者に連絡 をとる 12 22.6 18 22.8 37 35.9 14 28.0 44 55.7 18 32.7 40 15.7 183 27.2 新聞や求人雑誌 8 15.1 7 8.9 16 15.5 2 4.0 1 1.3 7 12.7 15 5.9 56 8.3 友達の紹介 7 13.2 9 11.4 22 21.4 5 10.0 11 13.9 17 30.9 59 23.2 130 19.3 インターネット (携帯サイト) 0 0.0 0 0.0 6 5.8 0 0.0 0 0.0 1 1.8 1 0.4 8 1.2 職安 5 9.4 3 3.8 10 9.7 0 0.0 0 0.0 1 1.8 19 7.5 38 5.6 その他 1 1.9 18 22.8 6 5.8 8 16.0 8 10.1 10 18.2 32 12.6 83 12.3 有効回答数 114215.1 120151.9 161156.3 87174.0 117148.1 87158.2 366144.1 1052156.3 有効回答者数 53 79 103 50 79 55 254 673 不明 2 1 14 0 3 6 37 63 非該当 1 0 0 0 0 0 0 1 合計 56 80 117 50 82 61 291 737 出所:2008年調査報告書より筆者作成。 注 この質問項目は、「寄場」労働者に対する調査には含まれていなかった。

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は友人などとのつながりを活用して仕事を確保することのできる者も一定数含 まれているのである。 8)常用の仕事に対する希望の有無と希望する仕事 会社勤めなど常用の仕事を希望するか、という問いに対する回答結果を示し たのが表 13である。ほとんどの調査場所において「希望している」と回答し た者が半数を超えていることがわかる。なかでも「技能講習」の 84.7%とい う数値は突出して高く、常用の仕事に変わりたいと考えている者が相当数に上っ ているといえよう。反対に、「希望していない」と回答した者が過半数に上っ ていたのは「職安」のみであった。 では、常用の仕事を希望すると回答した者は、どのような仕事を希望してい るのであろうか。表 14によると、「特掃」の日雇労働者を除き、希望する仕事 として「建設業」を挙げた者が多いことがわかる。具体的な数値をみてみると、 「技能講習」(75.5%)、「職安」(72.4%)、「簡宿」(55.6%)、「早朝」(53.6%)、 「紹介」(51.5%)、「労働福祉」(45.5%)となっていた。ここから、日雇労働 の仕事から転職したいと考えている者は多いものの、多数の者が「建設業」に 引き続き従事したいとの意向であることが明らかとなる。こうした結果は、日 雇労働者の多くがこれまでに従事してきた仕事に、今後も従事したいと考えて いることによるものと思われる。 表 13 会社勤めなど常用の仕事を希望していますか (人、%) 紹 介 労働福祉 技能講習 早 朝 職 安 簡 宿 特 掃 合 計 人数 割合 人数 割合 人数 割合 人数 割合 人数 割合 人数 割合 人数 割合 人数 割合 希望している 33 58.9 44 55.0 94 84.7 28 56.0 29 35.4 36 60.0 144 50.2 408 56.2 希望していない 23 41.1 36 45.0 17 15.3 22 44.0 53 64.6 24 40.0 143 49.8 318 43.8 有効回答者数 56100.0 80100.0 111100.0 50100.0 82100.0 60100.0 287100.0 726100.0 不明 0 0 6 0 0 1 4 11 合計 56 80 117 50 82 61 291 737 出所:2008年調査報告書より筆者作成。 注 この質問項目は、「寄場」労働者に対する調査には含まれていなかった。

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しかし、このことは「建設業」以外に希望する仕事がないということを意味 するわけではない。というのも、「紹介」や「労働福祉」の「製造業」と「清 掃業」と「運輸業」、「早朝」の「運輸業」と「製造業」、「技能講習」の「運輸 業」、「簡宿」の「製造業」、「特掃」の「清掃業」と「警備業」などはそれなり の数の労働者が希望していたからである。「製造業」や「運輸業」については、 「建設業」と同様にデスクワークではなく体を動かす仕事を希望した者が多かっ たことによるものと思われる。また、「特掃」で「清掃業」が 44.4%に上って いるのは、高齢者特別清掃事業において清掃に関する職業体験を積み重ねるこ とによってこの仕事についてのスキルを身につけたり、自信がもてるようになっ たりしたために、この仕事への就労意欲が高まったものと考えられる。さらに 「特掃」では「警備業」の仕事を希望する者の割合もやや高かった。実は高齢 者特別清掃事業と同様に特別清掃カードを所持している労働者は、高齢者特別 清掃事業ほどの頻度ではないものの、輪番制の警備の仕事に登録することも可 能となっており、「警備業」についても「清掃業」と同様の理由で希望者の割 合が相対的に高まったとみられるのである。 9)平日午後の寄場 先述のように、2008年調査については「寄場」の労働者に対してのみ、他 の 7ヶ所の調査場所とは一部異なる質問項目を用意していた。そこで、以下で 表 14 希望する職種は何ですか(複数回答) (人、%) 紹 介 労働福祉 技能講習 早 朝 職 安 簡 宿 特 掃 合 計 人数 割合 人数 割合 人数 割合 人数 割合 人数 割合 人数 割合 人数 割合 人数 割合 建設業 17 51.5 20 45.5 71 75.5 15 53.6 21 72.4 20 55.6 39 27.1 203 49.8 製造業 13 39.4 14 31.8 10 10.6 7 25.0 4 13.8 10 27.8 27 18.8 85 20.8 運輸業 7 21.2 9 20.5 20 21.3 8 28.6 2 6.9 5 13.9 14 9.7 65 15.9 清掃業 8 24.2 12 27.3 1 1.1 3 10.7 0 0.0 3 8.3 64 44.4 91 22.3 警備業 5 15.2 5 11.4 0 0.0 2 7.1 0 0.0 0 0.0 30 20.8 42 10.3 農林漁業 3 9.1 1 2.3 10 10.6 0 0.0 0 0.0 2 5.6 6 4.2 22 5.4 事務 0 0.0 0 0.0 4 4.3 0 0.0 0 0.0 2 5.6 2 1.4 8 2.0 その他 5 15.2 6 13.6 9 9.6 7 25.0 5 17.2 8 22.2 14 9.7 54 13.2 有効回答数 58175.8 67152.3 125133.0 42150.0 32110.3 50138.9 196136.1 570139.7 有効回答者数 33 44 94 28 29 36 144 408 不明 0 0 0 0 0 0 0 0 非該当 23 36 23 22 53 25 147 329 合計 56 80 117 50 82 61 291 737 出所:2008年調査報告書より筆者作成。 注 この質問項目は、「寄場」労働者に対する調査には含まれていなかった。

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は、「寄場」の日雇労働者だけになされた質問に対する回答を紹介し、「寄場」 の労働者の実態についてさらに詳細に明らかにしていきたい。 そもそも平日午後に寄場に滞在しているということは、日雇労働の仕事には すでにあまり従事していない可能性をうかがわせる。そこで、まず「寄場」の 日雇労働者の収入についてみていくと、調査直前の 3ヶ月の平均で 1ヶ月あた りの収入額は1~5万円台と回答した者が 53.2%と半数を超えていた。この 収入の額からは、「寄場」の労働者が日雇労働の就労機会を十分に得ていると は考えにくい。また、ここ 3ヶ月で建設日雇労働以外にどのような仕事に就い たかを聞いたところ、高齢者特別清掃事業と回答した者が 40.2%、アルミ缶 回収等と回答した者が 26.1%、特にないと回答した者が 37.0%に上っていた。 先の 1ヶ月あたり1~5万円という収入は、主に高齢者特別清掃事業や廃品回 収によって得られた可能性が高いと考えられる。ただし、日雇労働に就く意思 については現在も有している者が多く、「寄場」の労働者のうち西成労働福祉 センターの職業紹介事業を利用している者は 57.1%に上っていた。 次に、ふだんの生活に関する質問に対する回答についてみていきたい。昼間 の滞在場所を知るために、あいりん総合センター内の 2008年調査を受けた場 所をよく利用しているかどうかを聞いたところ、よく利用していると回答した 者は実に 90.9%に達していた。また、あいりん総合センターに 1週間あたり 何日来ているのかを聞いたところ、6~7日と回答した者が 64.3%に上って いた。さらに、あいりん総合センター内の寄場での滞在時間を知るために、来 る時間と帰る時間についても聞いたところ、来る時間については午前中のうち に来ている者が約 80%、帰る時間についてはシェルターの受付時(夕方)と あいりん総合センターのシャッターが閉まる頃と回答した者が約 70%に上っ ていた。 以上からすると、「寄場」の労働者の多くは日雇労働に対する就労意欲をな くしているわけではないものの、就労の機会がなかなか得られない状況に陥っ ており、高齢者特別清掃事業やアルミ缶回収等に従事しているとき以外は、朝 から夕方まで一日中をあいりん総合センターで過ごしているといえるのである。

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第 3節 日雇労働者の多様な実態と社会的排除

前節では 2008年調査結果をみてきたが、そこから同じあいりん地域の日雇 労働者といっても調査場所によってかなり就労や生活の実態が異なっているこ とが明らかとなった。本節ではこれまでに明らかとなった特徴などに着目して、 「固定化」、「困窮化」、「ホームレス化」、「非あいりん地域化」という 4つの観 点からあいりん地域の日雇労働者を類型化し、その多様な実態を描き出してい きたい。 (1)日雇労働者の多様な実態 1)「固定化」する日雇労働者 第一は、あいりん地域の日雇労働者に対する労働力需要が減退するなかで、 高齢化しながらもあいりん地域を中心とする生活を続け、それなりの日雇労働 の就労日数と収入を確保している層である。「職安」の労働者が、これにあた ると考えられる。というのも、「職安」の労働者は約 95%が 2008年 9月の一ヶ 月に 11日以上日雇労働の仕事に従事し、日雇雇用保険を利用しながらではあ るものの、本稿で最低生活水準とした 16万円を超える収入を得ている者が約 60%に上っていたからである。「職安」の労働者は、日雇労働者に対する労働 力需要が減退するなかで、55%以上の者が直接事業所に連絡を取ることによっ て就労日数を確保していた。これは「職安」の労働者が、事業所との継続的な 関係を有していることによるものと思われる。 こうした実態を踏まえて、現在の状況でも生計を維持していけると判断した 者が一定数に上るのか、会社勤めなどの常用の仕事への転職を希望した労働者 の割合は 35.4%に過ぎなかった。つまり、この層は 8ヶ所の調査場所のなか でもっとも経済的に安定しているが、それも関係しているのか労働者自身は現 状を維持しようと考えている者が多く、日雇労働者としての状況が「固定化」 されようとしている層だといえる。 2)「困窮化」する日雇労働者 第二は、あいりん地域の日雇労働者に対する労働力需要が減退するなかで、

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高齢化しながらあいりん地域を中心とする生活を続けているものの、就労日数 があまり確保できず、収入についても十分には得られていない層である。「簡 宿」、「紹介」、「早朝」、「労働福祉」の労働者が、これにあたると考えられる。 これらの層は就労日数については多少のばらつきがみられるものの、総じて 「職安」ほどには確保できておらず、1ヶ月の収入が 16万円に達している者も おおよそ 3割に過ぎなかった。つまり、日雇労働に従事し続けているものの、 現状としては「困窮化」しているということができる。 日雇労働の就労日数が減少すると、例えば、日雇雇用保険における求職者給 付金の受給のための、2ヶ月に 26日以上就労するなどといった条件を満たす ことが難しくなっていく。そもそもあいりん地域における日雇労働者を対象と する施策は、労働者が日雇労働に従事していることを前提にして整えられてい るものが多いため、就労日数の確保ができなくなりつつあることは、活用でき る施策が少なくなっていくことをも意味しているのである。こうした状況に対 する危機感が強まっているせいか、この層については会社勤めなどの常用の仕 事への転職を希望する者が 50%台後半から 60%台に達していた。希望する職 種として挙がっていたのは、建設業、製造業、運輸業、清掃業などであった。 3)「ホームレス化」する日雇労働者 第三は、あいりん地域の日雇労働者に対する労働力需要が減退するなかで、 高齢化しながらあいりん地域を中心とする生活を続けているものの、日雇労働 に就くことが困難となり、「ホームレス化」しつつある層についてである。「特 掃」と「寄場」の労働者が、これにあたると考えられる。というのも、最近 1ヶ月でもっとも多く寝泊りしたところとして、「特掃」と「寄場」の労働者 は、シェルターがそれぞれ 35.3%、57.0%、野宿が 17.8%、14.0%となってお り、ホームレスに至る危機にまさに直面しているか、もしくはすでにホームレ ス状態にあるといえるからである。 両者の就労日数や収入についてみておくと、「特掃」においては、2008年 9 月に 1日も日雇労働に従事しなかったと回答した者が 70%強に上っており、 収入については 16万円という基準を満たしたのが 2.1%しか存在しなかった。

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また、「寄場」においては、調査直前の 3ヶ月の平均で収入が 1ヶ月あたり1 ~5万円台と回答した者が半数を超えていた。したがって、この層については 日雇の就労日数の確保がほとんどできておらず、収入についてもかなり低いと いえるのである。 すでに日雇労働に就くことがほとんどできていないにもかかわらず、あいり ん地域を中心とする生活を続けているのは、この層がシェルターや高齢者特別 清掃事業など、あいりん地域内にある資源を活用することによって、なんとか 生活を維持しているためだと考えられる。しかし、とくに高齢者特別清掃事業 については、先述のように輪番制となっており、次の順番が回ってくるまでに しばらく期間があいてしまう。「寄場」の労働者に対する調査から浮かび上がっ てきた、高齢者特別清掃事業やアルミ缶回収などに従事していないときなどに は朝から夕方まで一日中をあいりん総合センターの寄場で過ごしている姿は、 日雇労働に従事することが難しくなった高齢労働者が、他に時間を過ごす場所 をもたないために寄場に滞在している実態を如実に示しているといえよう。 4)「非あいりん地域化」する日雇労働者 最後は、従来のあいりん地域の日雇労働者とはやや異なる特徴を有している 層であり、ここでは「非あいりん地域化」する日雇労働者と呼んでおきたい。 年齢の相対的に若い者、あいりん地域に生活の中心のない者、あいりん地域で の生活の経験が短い者などを含む「技能講習」の労働者の一部がこれにあたる と考えられる。この層は、年齢や居住地、あいりん経験年数の他にも従来のあ いりん地域の日雇労働者とは異なる特徴をいくつか有している。 一つは、公的医療保険について国民健康保険に加入している者が半数以上に 達しており、他の調査場所と比べても突出して高い数値を示していたことであ る。あいりん地域の日雇労働者に対する施策を活用する傾向にある「職安」な どでは、公的医療保険についても日雇健康保険に加入している者が多かったが、 「技能講習」では国民健康保険に加入している者の方が多いのである。二つは、 常用の仕事への転職を希望する者が約 85%となっており、他の調査場所と比 べてもとりわけ高い数値を示していたことである。この事実は、「技能講習」

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の労働者が日雇労働市場とは異なる労働市場の方を身近に感じていることを反 映していると考えられるかもしれない。つまり、年齢が若く、あいりん地域に 生活の中心がなく、あいりん地域での仕事の経験年数の短いというこの層の特 徴は、もともとは他の労働市場での仕事に参入しようとしていたものの、それ がうまくいかずに日雇労働に従事するようになった者が含まれていることをう かがわせるのである。 こうした実態は、この層が技能講習の手続きなどであいりん地域とかかわり を有してはいるものの、先行研究の指摘にもあったような、1990年代以降建 設事業所が高齢化した日雇労働者の代わりに採用するようになった、あいりん 地域以外の場所の相対的に年齢の若い労働者にかなり近い存在だとみられるこ とを示唆するといえるのではないだろうか。 (2)日雇労働者と社会的排除 上述してきたように、2008年調査の結果からあいりん地域の日雇労働者は 4 つの類型に分けることができると考えられる。では、あいりん地域の日雇労働 者に対する社会的排除のあり様は、それぞれの類型によってどのように異なっ ているのであろうか。以下では、それぞれの類型における社会的排除のあり様 について論じていきたい。 まず、「固定化」する日雇労働者であるが、この層はあいりん地域での生活 を中心としていた。そして、高齢化は進んでいたものの、直接連絡のとれる事 業所をもつことによって日雇労働の就労日数の確保が可能になっていたといえ る。また、日雇労働者を対象とする制度、ここではとくに日雇雇用保険を活用 することによって、今回の調査場所のなかではもっとも収入の高い層を形成し ていた。そのことが影響していたのか、就労については現状を維持する意向の 者が多かった点がこの層の特徴といえる。以上からすると、この層はあいりん 地域に特有の制度を利用し、今後もこの生活を継続しようとしていることがわ かる。つまり、この層は 1960~70年代当初のあいりん地域の日雇労働者と非 常に近い状態におかれているといえるのである。 二番めに、「困窮化」する日雇労働者であるが、この層はあいりん地域での

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