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国語科の読むことが困難な生徒へのシンキング・ツールによる支援の効果の検証-香川大学学術情報リポジトリ

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香川大学教育実践総合研究(Bull. Educ. Res. Teach. Develop. Kagawa Univ.),30:1-14,2015

国語科の読むことが困難な生徒への

シンキング・ツールによる支援の効果の検証

川田 英之

(附属坂出中学校) 762-0037 坂出市青葉町1-7 香川大学教育学部附属坂出中学校

Practical Study Support using “Thinking Tools” for Students

who have Difficulties in Learning “Reading”

of Japanease Classes

Hideyuki Kawata

Sakaide Junior High School Attached to the Facutory of Education, Kagawa University, 1-7 Aoba-cho, Sakaide 762-0037 要 旨 国語科の読むことが困難である生徒に,シンキング・ツールを用いた支援を行い, その効果を検証した。実践研究の結果,難読症の内,脳の情報処理(入力側)に問題のある 生徒,情報発信(出力側)に問題のある生徒のどちらにも効果的な支援のツールとなること が明らかになった。 キーワード シンキング・ツール 国語科スクーリングテスト 視覚支援        読みの交流の活性化 個の読みの成立

はじめに

 最近,通常学級においても,LD,ADHDな どが原因で国語科の読むことが困難な児童・生 徒が増えてきている。そのために,学級集団で の国語の学習が成立しない状況が見受けられ る。そうしたLD,ADHDの児童・生徒に対し て,シンキング・ツールを用いることが,読む ことの支援として有効に働くことを検証するの が,本論の目的である。  既に筆者は,佐藤明宏他との共同研究におい て,視覚支援の内「スケジュールを示す視覚支 援」「物事の相互関係を示す視覚支援」が児童・ 生徒の読むこと・書くことの習得に有効である ことを明らかにしている1。シンキング・ツー ルは,この内,「物事の相互関係を示す視覚支 援」にあたる。  シンキング・ツール(thinking tool)は,思 考ツールとも呼ばれ,Yチャート,PMI,ベン 図など,思考の過程や枠組を可視化したワー クシートや図・表などの総称である。「視覚 的に表して,組織化するもの」という意味で 「グラフィック・オーガナイザー」(graphic organizer)とも言われる2  先行実践として関西大学初等部の総合学習を 初めとした実践3等があるが,国語科における 実践はまだまだ少なく,中学校においてはほと んど例がない。

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する。  生徒A(男子)  対人関係を作るのに問題があり,一つの物事 に対して執着する傾向がある。国語科スクーリ ングテスト6の結果,文字の形態識別,視覚的 短期記憶,言葉の想起,情報の統合につまずき がある。「ぼくわ今日…」というように,よく 「てにをは」の誤りが見られ,記述テストは無 回答が多い。聴覚的短期記憶が優位である。  生徒B(女子)  授業での教師や友人との対話に問題は感じら れないが,定期テスト等の記述問題の成績は良 くなく,言語力の習得が困難な様子が伺える。 国語科スクーリングテストでは,文字の形態識 別や視覚的短期記憶は得意だが,言葉の想起, 言葉の解釈,言葉の意味認識,長期記憶(知識) に問題を抱えていることが明らかになった。  永江誠司は,「読む」ときは文字情報が視覚 野に伝えられたあと,左能の側頭葉の下側頭回 と側頭葉のウェルニッケ言語中枢と頭頂葉の角 周という三つの部位からなるシステムに運ばれ るとされ,難読症は,この三つの部位間の統合 が弱いと指摘する7。我々は読む時,脳のそれ ぞれの処理パートを結合しながら情報処理をし (入力),情報発信(出力)を行うのであるが, 難読症の場合,入力側に問題があるのか,出力 側に問題があるのかをアセスメントによって見 極める必要がある。国語科スクーリングテスト の結果から判断すると,対象生徒Aの場合は入 力側に問題があり,Bの場合は出力側に問題が あることが伺える。

3 実践方法

 以下の二つの実践で思考ツールを用い,対象 生徒の読みの変容を追っていった。 ○実践事例1  単元名:「芭蕉を旅する(おくのほそ道)」 (伝統的な言語文化)  シンキング・ツール:イメージマップ,ベン図 ○実践事例2  シンキング・ツールが読むことの支援として 有効性を持つことについて,筆者は先行研究に おいて明らかにした4。国語科の読みの段階に おいて必要な思考(「比較する」「分類する」「多 面的に見る」「関連づける」「構造化する」「発 想する」)をシンキング・ツールが支援し,読 みの深まりを生徒が実感できたり,読みの交流 において有効に機能したりするのである。  なぜシンキング・ツールが読みにおいて有効 なのか。秋田喜代美は,図のはたらきについて 次のように述べる。   図のはたらきとして,焦点化,集約化,構 造化,精緻化の四つの働きをあげることがで きる。焦点化とは,文章の重要な情報に注意 を向けさせることである。集約化は内容を簡 潔に整理しまとめること,構造化は文間の関 係やつながりを示すことで構造を表すこと, 精緻化は,具体的な状況や書かれていない内 容を補足して示すことである5  この四つのはたらきが生徒の頭の中で行われ る際,シンキング・ツールが有効に働くのであ る。  学習指導要領で示されている「言語活動の充 実」「思考力の育成」は,国語科の読みにおい て一般の生徒のみならず,読むことが困難な生 徒も含めた全員の生徒に保障しなければならな い。とするならば,LD,ADHDなどが原因で 国語科の読むことが困難な児童・生徒の内,焦 点化,集約化,構造化,精緻化の過程に問題を 持つ生徒に適切なシンキング・ツールの支援を 行うことは有効であると考えられる。  そこで,授業実践とその検証により,読むこ とが困難な生徒にシンキング・ツールを用いる ことで,個の読みの成立過程を明らかにしてい くとともに,その支援の方法としての有効性と 課題について検証するものとする。

2 対象生徒

 香川大学教育学部附属坂出中学校平成26年度 3年1組(39名:男子18名,女子21名)に在籍 するA(男子)B(女子)の2名を対象生徒と

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 教材名:「渡り鳥のなぞ」「弥生の絵」 (説明的な文章)  シンキング・ツール:ツリー図

4 実践事例1

「芭蕉を旅する」(おくの「ほそ道」を味わう) 26年5月実施 (1)単元の目標  芭蕉の旅観(人生観)と自分の旅観(人生観) を比較し,追究する中で,「おくのほそ道」の 中にある現在や自分の存在を実感し,日本人, 日本語,人生等について,自己の認識を深め る。 (2)単元計画(全7時間)  古典を,単なる知識として学ぶだけではな く,「古典はおもしろい」と価値を実感するこ とを目標とし,生徒一人一人が芭蕉研究家と なって「なぜ芭蕉は旅に出たのか」を追究して いく単元を貫く課題を設定し,学習を進めた。 (図1) (3)シンキング・ツールの活用   ① イメージマップ    単元を通しての課題についての自己の考 えの変化を表出するために用いた。   ② ベン図    立石寺(第6時)で「閑さや…」の俳句 の推敲の過程を追求する際に用いた。 (4)シンキング・ツール活用の実際   ① 生徒A    図2は,Aのイメージマップである。 学習の流れ 時間 教師の支援 ・「旅」のイメージを出し合う。 ・「おくのほそ道」の概略を知る。 ・学習の見通しをもつ。 50分 ・イメージマップに記述することで,自己の「ものがたり」 の表出や対話のツールとして用いる。 ・初めに芭蕉の概略について語ることで,自己と比較して の問いと結びつけられるようにする。 ・「冒頭」全文を読む。 ・旅に対する芭蕉の考えや,旅 への思いを読む。 50分 ・まず現代語訳をしっかりと読ませ,概要をつかませる。 また,音読を繰り返すことで,芭蕉の思いを感じられるよ うにする。 ・関連図書を読み「冒頭」と併 せて芭蕉の旅観(人生観)を自 分の旅観(人生観)と比較する。 50分+ 家庭学習 ・思考スタイルに合わせ,選ぶ資料について個々に助言する。 ・「平泉」を読み,「高館」「金色 堂」を比較して気づいたことを 交流し,自己の認識を深める。 50分 ×2 ・ベン図で比較し,それをもとに話し合うように助言する。・新たな気づきはイメージマップを書き加えることで,自 己の「ものがたり」をつむがせる。 ・「閑さや・・」(立石寺)の推 敲の過程から芭蕉の思想に気づ き,交流することで自己の認識 を更に深める。 50分 ・ベン図で句を比較する中で,新たな気づきが生まれた箇 所を明確化させる。 ・事前に個々の「ものがたり」を把握しておき,新たな気 づきが生まれる班編成を工夫する。 ・「芭蕉を旅する」批評文を書き, 学びの意味を認識したり,価値 を実感したりする。 50分+ 家庭学習 ・イメージマップを俯瞰させ,自己の「ものがたり」の足跡を記述させることで,意味づけや価値の実感へとつなげ られるようにする。 【図2 生徒A イメージマップ】 【図1 単元構成(下線部はシンキング・ツールの活用部分)】

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   イメージマップに書かれている「一人」 「自由」「孤独」等は教材学習前(第1時) に書いた言葉であり,第2時以降書き加え られていない。Aの毎時間の振り返りを見 ると,「松尾芭蕉が旅をしたいと想った理 由は人生の最後を旅でおわらせたかったの だと想う(第2時)」「死ということをわかっ ていてはいくをつくってたびをしている芭 蕉はすごいなとをママもいました(第4時)」「芭 蕉わママ死んだ兵をそうぞうしてそのあとたく ましく成長している夏草を見て命のはかな さおママしって泣いたのだと想った(第5時)」 というように,各時の感想は書けている。 それがマップに表出できないのは,視覚的 短期記憶,言葉の想起,情報の統合のつま ずきに起因していると考えられる。    図3は,第6時のAのベン図である。三 つの俳句の違いをAは言葉ではなく,絵で 表現している。これはこれでAにとって意 味があるのであるが,このベン図を基に4 人班(AとCDE)での話し合いを行ったと ころ,次のようなやりとりが見られた。 【図3 生徒A ベン図】 A:えっと「山寺や石にしみつく蝉の声」で,こ の蝉は…えっとその蝉の声が大きくなっている 気がして…それで「さびしさや岩にしみ込む 蝉の声」と「閑さや岩にしみ込む蝉の声」は音 が小さいと感じました。理由は,えっと石は小 さいから伝わるけど,岩は大きいからなかな か…。 C:音が入りやすい? A:石って,ぽつんって感じやん。岩って石より は音が響くのは,小さい?大きさが小さいけん ちゃうん? C:石っていうのはさ,せいぜいあの小石より小 さい石で,岩っていうのは,1メートルくらい の大きい岩のことかな。 A:もっと大きい。 C:小石って響くっていうより…あの小石があ たってそのあと声が響く。岩はぶつけたら岩に こうぼんっと。わかる? D:なんとなく。 E:山寺がこっちに入ってないって事は必要でな かったってことやろ? D:山寺,何の意味やったんやろ? E:あっ石は響かんからここしみつくになっとる んかな。なんかしみ入るのほうがさ、しーんっ て感じがせん? D:ああしみ込むやったらなんか音が。 E:こわーい。 A:あっ。わかったかも。これ石にしみつくぐら いうるさく、周りがうるさくてその中の蝉って ことやな? C:ん? A:違うん? C:蝉の声が…山寺があるんか知らんけど,岩や 山寺に浸透するような…閑かな中に蝉の声だけ が響くようなそういう状況ではない?山寺や石 があるようなとこにさ,人がわいわいおると思 う? A:だって山寺はみんな行くやろ? D:山の中まで行かんやろ? C:それって何? A:芭蕉。 C:どこらへんがさびしさなん? A:それは表してないけど,一人でいますよって いうそのさびしさやと思う。 C:いっしょのところか。 A:さびしさって芭蕉の気持ちなん? C:そやな。さびしさっていったら人の気持ち。 広いところにぽつんっておるみたいな。 A:閑かさはまあ周りのことやけん。これは自分 の気持ちで,これは周りのことやな。 C:あー…まあ現代風にいえば,夏場にキャンプ にいく。そしたらテントに張るやん。(A:うん) 夜中にさ,(A:うん)周りが閑かな時にさ、(A: うん)蝉の声もしくはコオロギの声が聞こえる。 みんみんみん…。 D:それ,みんってこおろぎ?(笑) C:自分がわいわいしてたらそんなん聞こえんやん。

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   まず特筆すべきは,Aの発言の多さであ る。Aは普段の授業中,理解できないとい う理由もあり,あまり発言しない。ここで は,約3分の間に,あいづちも含めると14 回発言を行っている。    下線(  )部は,他の生徒のやりとり を聞いていたAの「あっ。わかったかも。」 という気づきの発言である。ここから班の 話し合いが深まっていく。特に後半の二重 下線部(  )ではAのベン図の絵を示し ながら,Cが「それって何?」と発した質 問から,「さびしさ」と「閑さ」の違いや「閑 さ」の実体験とのつながりを感じ,集団の 読みが深まっている様子が伺える。    シンキング・ツールが,読みの交流にお いて有効に機能し,読みの広がりや深まり につながることは,前稿でも示した8が,A の場合は特に聴覚的短期記憶が優位である ため,文字情報よりも他人の発言を聞きな がら自分の書いた絵と結び付け,読みが深 まったと考えられる。    第7時にAは,ノート3枚にわたって評 論文を書いた(図4)。一部を抜粋して示す。    Aの評論文を分析すると,成果として三 つの点が挙げられる。    第1に,書いた文量の多さである。Aは 普段板書を写すのが精一杯の生徒であり, これほど自分の考えを書く生徒ではない。 今回,全1892字(400字詰め原稿用紙5枚 弱の量)もの評論文を書くことができたの は,先に示したような授業での話し合いの やりとりがAの「書きたい」という意欲に つながったためと考えられる。    第2に読みの深まりが挙げられる。評論 文の抜粋に示した部分は,Aが班で話した A:うん。 C:だから周りが閑かだったら小さい声でもやっ ぱ聞こえるというか。「閑かさや」自分が周りか ら離れているというか,周りと比べて。 E:それやな多分な。 (下線部―筆者)  (前略)…最後は「閑さや岩にしみ入る蝉 の声」の句の推敲の課題から芭蕉が求めたも のは,よりいい句を作ろうとしているのだ と思う。  芭蕉わママこの句にいたるまでに「山寺や石に しみつく蝉の声」「さびしさや石にしみ込む 蝉の声」など芭蕉は3回も句を書き直してい る。  僕個人のかってな妄想ですが蝉の声を 使って周りの閑さを強調しているのだと想 う。理由は,山寺,さびしさ,閑さ,この 言葉は閑なイメージのフレーズだと想いま す。山寺は山の中にある寺という意味なの で普段は静な場所なので僕にとって閑なイ メージがあり,さびしさは自分の心理状態 でなかったら静かでさびしい,物たりなく てさびしい,というイメージが心の中には あり,閑といういみは文字どうり閑なので 3つの共通する点はここだと想いました。  このようなことを考えて何回も書き直し をしているので芭蕉はいい句を作りたいの だと想います。…(以下略) (下線部―筆者) 【図4 生徒A 評論文】

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内容が基になっている。下線部の「蝉の声 を使って周りの閑さを強調しているのだと 想う」はAの班の結論であり,Aはそれを 自分の意見として取り入れた「専有」9が見 られる。これは,Aの読みの深まりを示す ものである。社会構成主義10を持ち出すま でもなく,学習者が他と関わり合いながら 主体的に意味を再構成していくことで高い 思考を身に付けることができるのである。    第3に「てにをは」の誤りが少ないこと が挙げられる。Aの評論文における助詞の 「は」「を」を分析すると,正しく使用して いるのは44個,使用の誤りは4個であっ た。これは,それまでのAの誤りの頻度に 比べて極端に低い。それまでも別の国語教 員や担任が適宜指導を行ってきていたが効 果は薄かった。「てにをは」は小学校低学 年で習得しておかなければならない基本的 な言語事項である。当然,何度も取り立て 指導が行われてきたはずであるが,中学校 3年のこの時期に習得できていないという ことは,これまで,「能力の問題」として 片付けられていた可能性がある。第7時の 最初に筆者は少し取り立て指導を行っただ けであるが,「自分の思いを書きたい」「自 分が書く文章を見てもらいたい」という状 況が,この成果につながったのであろう。 文法や技能の取り立て指導は,あくまで熱 中する学びの表現活動の中でこそ効果があ ることを示す一例と言える。これは,「習 得」と「活用」の関係に関わる指導上の課 題でもあり,今後もっと議論されても良い と思われる。    こうしたAの学びの成果に,シンキン グ・ツールの効果があったと考えられる。 Aは振り返りの中で,次のように記述して いる。    下線部からはAの学びにおいてシンキン グ・ツールのベン図が,他とつながる有効 な道具であったことを実感していることが 伺える。特に,聴覚優位のAにとっては, シンキング・ツールによる読みの交流が, 有効に働いたと考えられる。   ② 生徒B    図5は,Bの第6時のベン図である。    Aと違ってBは三つの句の違いを言葉で 表出している。一人読みの段階でAが既述 したのは「なきやまなくてずっとないてい る(しずまらない)」(山寺や…)「辺りは さびしい」「蝉はそびしそうにないている」 (さびしさや…)「辺りはひっそりと静まり 返っている」「蝉は悲しそうな感じでない ている」(閑さや…)であり,蝉の鳴き方 の違いについて考えたことが伺える。  この授業で使わしていただいたマインド マップ(シンキング・ツール全体のこと―筆 者注)は自分の想ったことわママもちろん,友達 の想ったことをかけるので,その友達の考 え方,一つ一つの言葉のつながり,説明が わかりやすく,自分の想ったことも書いて もらえるので,学習えママの価値,勉強への姿 勢,意欲,達成感,学習がつながる楽しさ, これらのことでマインドマップは必要だと 僕は想いました。 (下線部―筆者) 【図5 生徒B ベン図】

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   ベン図を基にした第6時の4人班(Bと FGH)での話し合いでは,次のようなや りとりが見られた。(一部教師Tが介入し ている。)    前半,Bはほとんど話していない。しか し,FとGの対話にじっと聞き入ってる。 図5のベン図にBが後で書き加えた部分 (納得したら色を変えて書き加えるよう, あらかじめ指示してある)を見ると,「し みつく」「じわじわ」「じめじめ」(山寺や…) 「人間視点」(さびしさや…)「俳句的な→ こういうかんじ」「すっと入ってきた,入っ てきやすい」「間接」(閑かさや…)が,班 での話し合いの下線(  )部と共通して おり,Bの専有が見られる。(他の部分の 書き加えは,全体での話し合いによるもの である。)    後半の話し合いの二重下線部(  )か らは,Bが自身の生活体験と結び付けて, 句の「閑か」を実感していることが伺える。    図6は,Bの最終的なイメージマップで ある。    各時の振り返りの中で,Bの考えが広 がっている。先に示した第6時の気づき は,ベン図の下部に書かれている。「俳句 をきわめる」が「俳句を作りたかった」(第 7時の振り返り)「景色を見たい 俳句づ くり」(第1時の振り返り)と,「日本の自 然を伝える」が「自然から力をもらう」(第 5時の振り返り)「俳人だから,最後に, きれいな景色を見ておきたい」(第7時の 振り返り)とつながっている点に注目した い。 F:「しみ込む」と「しみ入る」って読んだ感じが「し み入る」の方が読みやすいやんか。 T:ユニフォームに泥が? F:はい? T:「しみ入る」?「しみ込む」? B:ふふっ。 T:「しみつく」?その違い説明できる? G:「しみ入る」って読みやすいし俳句っぽくない ですか? F:「みぃ」と「いぃ」で同じ発音だから。 T:ああ。 G:読みやすさを追究したんかなぁ。 T:なるほどなー。そんなんもあるかも知れん なぁ。 F:Gさぁ。「閑さ」でさぁ。「しみ込む」って何 か奥に入っていくって感じやからさびしさを追 究した感じでない?で「しみつく」は。 G:ただ付いただけ。 F:ただ付いただけみたいな。 B:ああ。 G:ユニフォームで考えたらさぁ。「しみつく」っ てちょっと付いたくらいで。 F:そうそう。 G:「しみ込む」って奥までしみついてる感じで。 F:きたーみたいな感じで。 G:「しみ入る」は…。 F:もうだいぶやろ。 G:もう入ってきたみたいな…すっと入ってきた みたいな感じ。 F:おなじ「ぃ」だから G:でこれを蝉の声に置き換えたら。 F:そうそうそう。 G:蝉の声が石とかにただ付いただけ。蝉の声が じわじわとしみ込んできた。岩にすっと入って きた。 F:芭蕉に置き換えると,はじめは「しみつく」 だから,芭蕉は着いただけでただ景色を読んだ だけだけど,「岩にしみ込む」ということは, さびしさの感じを強調して芭蕉の視点が入って 「岩にしみ込む」って書いて…。 G:すっと入ってきたっていうのは閑かやけん。 H:「しみ込む」より「しみ入る」のほうがいいっ てこと? G:「しみ込む」ってじわじわって感じやからさび しさに集中しとる。          (中略) (蝉が鳴いているのに「閑か」なのかという問い に対し) G:秋の夜とかに虫が鳴いたら閑かだなって感じ がする。 B:こおろぎ的な。 H:んー…何かあるかな。 G:んー。 H:思いついたけどだめやと想う。葬式の時とか に何か唱えよったら閑かみたいな。 G:あー。 B:海とか川が何か近くで流れとったら閑かな感 じ。 H:あー。 (下線部―筆者)

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   Bは,文字の形態識別や視覚的短期記憶 は得意だが,言葉の想起,言葉の解釈,言 葉の意味認識,長期記憶(知識)に問題を 抱えている。つまり,入力した情報を統合 して解釈したり意味を考えたりする出力側 に問題があるのであるが,各時の振り返り が,イメージマップによって統合されてい るのである。    Bの第7時の評論文からも,各時の情報 が統合されていることが伺える。一部を抜 粋する。    Bの最終の評論文は,自分の意見,友人 の意見,そこから生まれた自分の考えが統 合されている。全4440字(400字詰め原稿 用紙12枚弱の量)の文章の中,以前までよ く見られた論理の矛盾は見られなかった。 自分が記入したベン図やイメージマップを 見ながら評論文を書くことで,情報が整理 【図6 生徒B イメージマップ】  芭蕉が旅で求めたものは,自分の目で旅 の風景を見て,自らの俳諧を高めたいと 思ったんだと思う。(中略)  次に「閑さや…」の句の推敲の課程から, 芭蕉が求めたものを次のように考えた。 三つの句の違い  最初の「山寺や岩にしみつく蝉の声」はし みつくというのが,じわじわ・じめじめして いて,あつくて良い感じはしないような句 である。情景としては,蝉がなきやまなく て,ずっとないている。(しずまらない)よ うなイメージがした。あと,山寺というよ うに,想像がはっきりしていると思う。例 えば,さっきの「しみつく」を野球のユニ フォームにしてみると,ただつく,ついた だけの状態でないかと考えた。  次に「さびしさや岩にいみ込む蝉の声」で は,しみ込むがじわじわしているし,さび しさというのが,人間視点から見ている気 がした。  情景は,辺りはさびしくて,蝉もさびし そうにないているイメージ。このようなこ とから,寒い感じが思いうかぶ。例えば野 球のユニフォームで考えると,しみ込むは, 中に中にじわじわと入り込んでいくような 感じがした。  そして,「閑さや岩にしみ入る蝉の声」で は,俳句的な古風な感じがした。情景は, 辺りはひっそりと静まり返っていて,蝉は 悲しそうな感じでないているイメージがう かんだ。調べると「静」の方は争いがしず まるというような意味で,この詩ママに出てく る「閑」はこっちと向こうは別という意味が 分かった。「静か」の方は,川の音とか,風 りんの音がきこえると,静かだなと思う時 がある。でも,この場合このような意味で 使っていないので「閑さ」の方にした。ここ ではくずれない。立石寺の風景は変わらな いということをいい日本の自然を伝えるた めだと思った。例えば野球のユニフォーム で考えると,ユニフォームにすっと入って きた,入ってきやすいというイメージがつ いた。これらのことにより,芭蕉は共感で きる句だと思うし,芭蕉は最終的にこの詩ママ をえらんだんだと思った。 (以下略)

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されて出力されたためであろう。   次に示すのは,Bの振り返りの一部である。  (前略)蝉の声が「しみつく」「しみ込む」「し み入る」という,びみょうな違いによって 感じが変わってくる。友達が,野球やサッ カーのユニフォームに例えていたのにはと ても表現の違いが分かりやすかった。あと, 「閑か」と「静か」も全然ちがうことに気づ いた。「静か」の方は,私が考えた「川の音」 のように,良い音が聞こえてくると静かだ なあと思える。でもここでは,そうじゃな くて「閑さ」はこっちと向こうは別という意 味で,全体的に対比のような関係になって いるので,あえて「閑さ」の方を選んだんだ なあと思った。(中略)  マップやベン図を使っての感想(使わな いで考える時との違いなどについて感じた 事)。今回,マップやベン図を使って,一番 最初の授業からの変化がよく分かっていい と思った。金色堂と高館の違い,「閑さや岩 にしみ入る蝉の声」の3つの違いについて, それぞれ述べることできて,どこでどんな 違いがあるのかという,疑問点とかも分 かったりしてとても考えやすかった。次の 古文を読むときでも,違いがはっきり分か るので取り入れた方が,考えやすいと思っ た。 (下線部―筆者)    下線部(  )部からは,友達の意見 と自分が新たに生み出した考えとが統合 され,Bの中で意味づけられたことが伺え る。また,二重下線部(  )では,シン キング・ツールがBにとって,入力された 情報の統合に有効だったことが示されてい ると言えるだろう。 (5)成果と課題  実践1の結果,成果として次の点が挙げら れる。

5 実践事例2

 「渡り鳥のなぞ」「弥生の絵」(説明的な文章) 26年7月実施 (1)題材のねらい  実践1でシンキング・ツールがA,Bの生徒 に有効であると推測されたが,別のジャンルの 文章で,他のシンキング・ツールを使っての効 果を検証するために行ったのが実践2である。  「渡り鳥のなぞ」(教育出版1年)「弥生の絵」 (教育出版2年)という説明的な文章を取り上 げ,ツリー図を用いて,文章情報を上位概念, 下位概念のレベルごとに整理して内容の要点を 理解することを目標とした11 (2)シンキング・ツールの活用  事前のアンケートでは,クラスの約8割(39 人中32人)の生徒が,説明的な文章が苦手と回 答していた。そこで,1時間の取り立て指導的 な授業ではあるが,ツリー図で文章を理解する のに適した二つの教材を取り上げ実践を行うこ とで,説明的な文章を理解する方略が習得でき ると考えた。  また,Aは文字の形態識別,視覚的短期記 憶,言葉の想起,情報の統合につまずきがあ り,こうした説明文のような情報の理解(入 力)自体困難な状況にある。また,Bは,言葉 の想起,言葉の解釈,言葉の意味認識に問題が あり,文字情報は入力されるものの,それを意 ① 読むことの困難な生徒に対し,シンキ ング・ツール(ベン図,イメージマップ) は有効に機能し,読みを成立させた。 ② 入力側に課題のある生徒には,特にシ ンキング・ツールが対話を促し,「読みの 交流」が読みの成立に効果的であった。 ③ 出力側に課題のある生徒には入力され た情報の統合に,シンキング・ツールが有 効性を示した。 ④ 生徒が熱中して取り組む真正の課題に よる学びの中で,シンキング・ツールはよ り有効性を持つ。

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味として認識したり,別の形で表現したりする のが難しいのではないかと思われる。  ツリー図を用いることで,こうした問題にも 対処できるのではないかと考え,実践を試み た。 (3)シンキング・ツール活用の実際   ① 生徒A    簡単な単語レベルの練習問題でツリー図 について理解した後,「渡り鳥のなぞ」の 説明文情報をツリー図で書き表す課題に取 り組んだ。    Aは,初めは情報を読み取れず,鉛筆が 止まっていたので,教材文を音読させると 課題に取り組み出した。    図7は,Aのツリー図である。教材文の 「…候鳥とよばれる。いわゆる『渡り鳥』 のことである」の文が理解できておらず, 上下関係に書いた誤りが見られるが,他は 正しく文が読み取れている。とくに教材文 末にある「以上のように,一口に渡り鳥と いっても,夏鳥・冬鳥・旅鳥・漂鳥などが あり,そのほか,渡りをしない留鳥,他の 国から紛れ込んでくる迷鳥といったよう に,移動の種類によって鳥類もいろいろに 分けられる」の情報を正しく読み,ツリー 図で情報を分類して表している点が注目さ れる。    実践前には,Aにこの課題は難しいので はないかと予想していた。実際,最初はそ ういう様子だったのであるが,音読し,聴 覚と併せて情報を入力するだけで,理解が 進んだ。時間切れで「弥生の絵」に取り 組めなかったが,授業後の振り返りでは, 「きょうは説明文の内容情報についてべん きょうした。パソコンの公式サイトのこう せいとおなじだと思った。鳥のはできたけ ど,絵はできなかったのでもっと腕を上げ たいと思います。」と記入していた。    このことから,Aが普段行っているパソ コンの既有体験とツリー図が一致したた め,Aの理解が進んだと考えられる。    また,音読を取り入れることが効果的で あったが,実践1で行ったような対話活動 を組み込むことでより有効性は増すだろ う。   ② 生徒B    生徒BはAと異なり,なかなか課題に取 り組めなかった。    図8は,「渡り鳥のなぞ」に取り組む前 のツリー図を理解するための練習課題のB のノートの後であるが,「ツリー図」と言 葉を結び付けられず,何度も間違い,苦闘 した跡が見られる。実際,ツリー図の理解 はクラスで最も遅く,パソコンの既有体験 のあったAとの違いが見られた。    その後,「渡り鳥のなぞ」の教材文にな るとやや理解が進み,最終的には図9のよ うなツリー図を書いた。Aが間違えていた 「渡り鳥=候鳥」の文も読み取れている。 次に「弥生の絵」の教材に取り組み始めた ところで時間切れとなった。    Bは振り返りとして,「私は論理的に考 えるのが嫌いなので,正直この授業はつら かったけど,まとめてみると案外さっぱり 【図7 生徒A ツリー図】

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 ① 言葉を【切る・つなぐ】ためのツール としての効果 していて,自分の頭がどんなに整理してい ないかというのが分かった。」と記入して いた。    Bは,説明文理解の方法として,ツリー 図の意味の理解がなかなかできなかった。 最終的に「渡り鳥のなぞ」をツリー図で表 すことはでき,一応の成果は見られたが, 実践1の学びと比較すると,本実践の効果 は薄かったのではないかと思われる。本実 践は,実践1のような単元学習ではなく, 取り立て指導であり,Bにとって「学びた い」という切実な課題とならなかったこと, また,Aのように既有体験との結び付きが なかった点も,Bの学びを停滞させた原因 だろう。 (4)成果と課題  実践2の結果,その成果と課題として次の点 が挙げられる。  ① 説明的な文章においても,シンキン グ・ツール(ツリー図)は有効に機能し, 読むことの困難な生徒の読みを成立さ せた。  ② 入力側に課題のある生徒には,音読 等を併せて取り入れることで,シンキ ング・ツールはより有効に機能した。  ③ 生徒にシンキング・ツールの持つ意味 や有効性を実感させる事が重要である。 実感のない学びでは,いくらシンキン グ・ツールを使っても,効果は薄い。  ④ ③のためにも,生徒が熱中して取り 組む課題とつなげてシンキング・ツール を用いることが重要である。

6 成果と課題

 以上,実践1,2の結果から,読むことの困 難な生徒に対して,シンキング・ツールによる 支援は一定の有効性を持つと言える。  佐藤明宏は,特別支援の指導に必要な10の観 点(「支持的風土」「アセスメントを生かす」「言 語基礎力の育成」「生活の必要性」「焦点化」「視 覚化」「動作化・劇化」「構造化」「共通化」「個 別化・個性化」)を示し,実践のポイントとし て「言葉を【切る・つなぐ】行為の明確化・自 覚化・焦点化」「視覚的サポート」「構造的サポー ト」「活動的サポート」「教育機器の活用」を挙 げている12  読むことが困難な生徒へのシンキング・ツー ルの支援の効果の要因を佐藤の挙げる観点とポ イントにあてはめ,3点述べる。 【図8 生徒B 練習課題】 【図9 生徒B ツリー図】

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 さらに,今回の実践からは,次の2点を考慮 する必要性も見えてきた。  今後の課題として,次の2点を挙げる。    実践1においては,ベン図が三つの 俳句の言葉の違いの切れ目を視覚化さ せ, そ れ に よ り 比 較 が 容 易 に な っ た (【切る】)。また,イメージマップが各 時で考えたことをつなげて,新たな意 味が形成された(【つなぐ】)。    実践2においても,ツリー図がキー ワード同士を【つなぐ】役割を果たした。    国語科で育てるべき思考を「関係づけ る力」13と定義するならば,シンキング・ ツールの構造自体が【切る】【つなぐ】 役割を果たし,有効に働くのである。  ② 視覚的サポートとしての効果    当然ながら,シンキング・ツール自体 が視覚的サポートの役割を果たしてい る。さらに,実践1の生徒Aのように, 字ではなく絵をシンキング・ツールに描 くことが対話を促し,Aの読みを深めた ように,シンキング・ツールの視覚情報 が,①の【切る】【つなぐ】思考を促す。 ワークシート等と比べても,単純で汎 用性が高い分,応用が利く。  ③ 活動的サポートとしての効果    対話を行う際,自分の意見を持たな い状態では話し合いにはならない。ま た,意見を書かせると,自分の意見を 言うことに精一杯で双方向の対話が成 立しない場合も多々ある。    実践1の対話分析にあるように,シ ンキング・ツールは,自分の考えを単語 レベルの短い言葉(生徒Aのように絵の 場合もある)で書き込む分,その不完全 部分をめぐっての双方向の対話が生ま れやすい。また,相手の意見を付け足 して書き込んでいくことで対話が活性 化する。これが,10の観点の中の「支持 的風土」を成立させ,「共有化」が促さ れる。対話が活性化されることは,個 の読みの広がりや深まりにもなる。  ① 学ぶ意味や価値の実感の必要性    佐藤は10の観点で「生活の必要性」 を挙げているが,今回の実践は生活の 必要性に支えられていたわけではない。 むしろ生活とはかけ離れた学びである。 しかし,実践1において,生徒A,B は,自己の学びを深めた。一方,実践 2のBの学びは実践1に比べ,効果的 ではなかった。重要なのは,生活の必 要性ではなく,追究する問いが生徒に とって本物の問いとなるかどうかであ り,「自分にとって今の学びは意味や価 値がある」と実感することである。その 中でシンキング・ツールによる支援も十 分に効果を発揮するのである。  ② 基礎言語力の育成につなげる必要性    読むことの困難な生徒も,最終的に は自分の力で読む力を付けることを目 指すべきである。    そのためには,①のような学ぶ意味 や価値を実感していく中での「読みた い」「書きたい」という思いの中でこそ 指導の効果はあるのではないか。実践 1における生徒Aの「てにをは」の指導 のように,取り立て指導と併せる指導 により,基礎言語力を育成することが 必要である。実践2で行ったようなシ ンキング・ツールを使って読みの方略を 習得するような取り立て指導も,そう した場面でこそ支援がより有効性を持 つと思われる。  ① 今回,生徒A,Bを抽出して検証を 行ったが,読むことが困難な生徒の原 因は多様であり,他のつまずきによる 生徒も当然考えられる。国語科スクー リングテストを使う等の個々の生徒の 観察と把握が前提となるのは間違いな いが,どのようなシンキング・ツール

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 読むことの困難な生徒への支援というと,ど うしても個別の支援が考えられがちであるが, こうした課題を研究することは,読むことの困 難な生徒のみならず,一般の生徒を含めた魅力 ある授業作りの方向性をデザインすることにも つながる。  今後の研究と成果については,別稿に譲るも のとする。 引用・参考文献 1 佐藤明宏ほか「小学校・中学校における読むこと・ 書くことの習得が困難な児童・生徒に対する視覚 的支援の方法についての研究」『香川大学教育実践 総合研究第27号』香川大学教育学部附属教育実践 総合センター,2013.9月,11~24頁 2 シンキング・ツールについては,以下の文献等を 参考にされたい。  ・大庭コテイさち子『考える・まとめる・表現す る―アメリカ式思考の技術』NTT出版,2009  ・桑田てるみ『中学生・高校生のための探究学習 スキルワーク』全国学校図書館協議会,2012  ・足立幸子「グラフィック・オーガナイザーを使 用した情報を活用する読書の指導」『月刊国語教育 研究No.461』日本国語教育学会,2010,9月,4 ~9頁  ・鈴木円「小学校社会科における『考える力』と しての思考技能育成:グラフィック・オーガナイ ザーを活用した学習活動の提案」『学苑・初等教育 学科紀要776』2005,68~82頁 3 関西大学初等部『思考ツール 関大初等部式思考 力育成法<実践編>』さくら社,2013,および『思 考ツールを使う授業 関大初等部式思考力育成法 <教科活用編>』さくら社,2014 4 川田英之「国語科の説明的な文章の読みの授業 に『K―W―L』を導入する効果の検証」『香川大 学教育実践総合研究 第28号』香川大学教育学部 附属教育実践総合センター,2014.3月,1~14頁, および川田英之・大西小百合・山本茂喜「中学校 国語科における『思考ツール』を使った読みの授 業の実践的研究」『香川大学教育実践総合研究  第29号』香川大学教育学部附属教育実践総合セン ター,2014.9月,1~14頁 5 秋田喜代美『読む心・書く心 文章の心理学入門』 北大路書房,2002,44頁 6 香川大学教育学部特別支援教室「すばる」で開発 されたアセスメントのためのテストである。第三 回香川大学教育学部特別支援教育研究大会資料集, 2011。なお,国語科スクーリングテストは,平成 18~22年度文部科学省特別教育研究経費「特別支 援教育推進事業」「特別支援教育の充実:発達障害 児を対象とした根拠のある指導と評価をともなう 支援」香川大学教育学部,2011にすべて収録され ている。 7 永江誠司「脳科学から考える子どもの読む力・書 く力」『児童心理』金子書房,2007,8月,50頁 8 注4「中学校国語科における『思考ツール』を使っ た読みの授業の実践的研究」に同じ。8頁 9 「専有」とは,「他者に属する文化的道具を取り入 れ,それを自分のものとする過程を示す概念」で ある。田島元信『共同行為としての学習・発達~ 社会文化的アプローチの視座』金子書房,2003, 等参照。濱田秀行は,国語科の小説の読みの対話 的交流において,他者の意見を取り入り自分のも のとする「専有」の過程を分析している。(濱田秀 行「小説の読みの対話的な交流における『専有』」「国 語科教育第六十八集」全国大学国語教育学会編集, 2011,43~50頁。)尚,筆者も詩の読みにおける質 疑応答が,「専有」の機会を多く持つことについて 言及している。(「国語科の読みにおける話し合い 活動に,アクションラーニングの手法を取り入れ る有効性に関する検証」『香川大学教育実践総合研 が,どのような生徒のつまずきに,ど のような部分で有効性を発揮するのか, さらに実践の中で検証する必要がある。  ② 「読むこと」だけでなく「話すこと・ 聞くこと」「書くこと」の思考と有効な シンキング・ツールについても実践の中 で研究していく必要がある。それによ り,中学校国語科の授業における思考 とシンキング・ツールの全体像が明らか になり,読むことが困難な生徒に対す る「読むこと」の授業の構成や具体的な 展開が具体化していくであろう。

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究 第23号』香川大学教育学部附属教育実践総合 センター,2011.9月,73~86頁) 10 社会構成主義とは,現実の社会現象や社会に存在 する事実や実態,意味とは,すべて人々の頭の中 で作り上げたものであり,それを離れては存在し ないとする社会学の立場である。学習とは,外か ら来る知識の需要と蓄積ではなく,学習者自らの 中に知識を精緻化し,再構成していく過程である とする。社会構成主義は,おおよそ次のような授 業観を持つ。  ①学習は学習者自身が知識を構築する過程である。  ②知識は状況に依存している。  ③学習は共同体の中での相互作用を通して促進さ れる。 (松崎正治「理論的研究の方法論」全国大学国語教 育学会編『国語教育学の成果と展望』』明治図書, 2002,448頁)  このような前提により,学習者は受け身的な存在 ではなく,積極的に意味を見つけ出すために主体 的に世界にかかわる存在になる。一方,教師は学 習を支援する役割を担うが,学習者にとっては多 くのリソースの一つとみなされる。 11 「渡り鳥のなぞ」は,堀裕嗣・研究集団ことのは『総 合的学習を支え活かす国語科』明治図書,2002, 112~115頁を,「弥生の絵」は,堀裕嗣・研究集団 ことのは『全員参加を保障する授業技術』明治図書, 2001,82~86頁,を参考に実践を行った。 12 佐藤明宏編『特別支援の子どもの言語力をどう育 成するか―スクーリングテスト出題の実例とバイ パス教材による指導のヒント―』明治図書,2012, 17~41頁および138~141頁 13 佐藤明宏『国語科研究授業のすべて―教材研究・ 指導案・授業実践―』東洋館出版社,2012,69頁 付記  本研究は,平成26年度文部科学省科学研究費 助成事業(科学研究費補助金)(奨励研究 研 究課題番号26908014)の成果による。

参照

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