• 検索結果がありません。

最 も 心 に 残 ったN 響 コンサート A パーヴォ ヤルヴィ 指 揮 エリン ウォール(ソプラノ) リリ パーシキヴィ(アルト) 東 京 音 楽 大 学 ( 合 唱 ) 2 N N!! NHK NHK SYMPHONY ORCHESTRA, TOKYO

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "最 も 心 に 残 ったN 響 コンサート A パーヴォ ヤルヴィ 指 揮 エリン ウォール(ソプラノ) リリ パーシキヴィ(アルト) 東 京 音 楽 大 学 ( 合 唱 ) 2 N N!! NHK NHK SYMPHONY ORCHESTRA, TOKYO"

Copied!
40
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

Paavo Järvi

パーヴォ・ヤルヴィ

Charles Dutoit

シャルル・デュトワ 1997年に「N響ベスト・コンサート」として始まって以来、 今回で19回目を迎える「最も心に残ったN響コンサート&ソリスト」。 2015年1月~12月に行われた定期公演から、 演奏をお聴きになったみなさまに投票をお願いし、今年は530近くの票が集まりました。 みなさまの思い出がどのように順位に反映されているでしょうか。 投票にご参加いただいたみなさま、ご協力ありがとうございました。

最も心に残った

N

響コンサート&ソリスト

2015

Herbert Blomstedt

ヘルベルト・ブロムシュテット

Vladimir Fedoseyev

ウラディーミル・フェドセーエフ

Gianandrea Noseda

ジャナンドレア・ノセダ

(2)

N響新時代の幕開け。ここまで完璧に再現された《復 活》を聴いたのは初めて。決して情緒的な演奏ではな いのに打ちのめされた感じ。感激のあまり久しぶりにコ ンサートで泣いてしまった。(益田隆太郎) パーヴォ・ヤルヴィの指揮は期待した以上で、N響やソリ スト・合唱が一体となった素晴らしい演奏。マーラーの 世界を壮大に構築して聴かせていただき、大いに堪能 しました。生で聴いて大正解 !! (松岡豊) 繊細かつ力強く、華麗なマーラーの《復活》でした。金 管のまとまりが素晴らしかった。パーヴォ・ヤルヴィ氏の 細部まで行き届いた構成がよかったです。(柴田薫) 新しい歴史が始まるという節目にぴったりの選曲で、演 奏も期待にたがわぬ名演奏でした。上京した甲斐があ りました。(北澤康秀) パーヴォ・ヤルヴィの首席就任にふさわしい壮大で感動 的な《復活》に鳥肌。あれほどの割れんばかりの拍手 は、いまだかつて聞いたことがない。(村田茜) NHKホールの大きな空間を生かしたバンダの効果が 素晴らしく、いまだに耳に残っている。ちょっと飽き気味 だった《復活》を新鮮に聴くことができた。圧倒的名演。 (宮脇幹太) パーヴォ・ヤルヴィ氏の首席指揮者就任披露にふさわし い感動的な名演。大きな音楽と広い心に包まれた幸せ な演奏会であった。(松下脩司) パーヴォさんの気迫あふれる指揮にしっかりと付いてき ているオーケストラ。就任記念にふさわしいプログラム とこれからが非常に楽しみになる名演だったと思います。 (横堀慎二) マーラー/交響曲第

2

番ハ短調「復活」 エリン・ウォール(ソプラノ)

リリ・パーシキヴィ(アルト)

東京音楽大学(合唱) 最も心に残ったN響コンサート2015 10月Aプロ  第1817回| 10月3日、4日

1

パーヴォ・ヤルヴィ

指揮

(3)

12 NHK SYMPHONY ORCHESTRA, TOKYO PHILHARMONY | APRIL 2016 12月Aプロ  第1823回| 12月4日、6日

2

シャルル・デュトワ(

指揮

キム・ベグリー(ヘロデ)、ジェーン・ヘンシェル(ヘロディア ス)、グン・ブリット・バークミン(サロメ)、エギルス・シリンス (ヨカナーン)、望月哲也(ナラボート)、中島郁子(ヘロディ アスの小姓・どれい)、大野光彦、村上公太、与儀巧、加 茂下稔、畠山茂(5人のユダヤ人)、駒田敏章、秋谷直 之(2人のナザレ人)、井上雅人、斉木健詞(2人の兵士)、 岡昭宏(カッパドキア人) R.シュトラウス/楽劇「サロメ」(演奏会形式) グン・ブリット・バークミンさんは、サロメそのものでした。最初 から最後まで目も耳も離せない魅力の舞台。次の展開がわ かっているのに何度も鳥肌が立つほどの感動! 両日とも聴か せていただきました。(髙橋陽子) デュトワはすごい。N響と充実した歌手から、R.シュトラウス の芳醇で豊かな響きと、ダイナミックでドラマチックな表現を引 き出してくれる。とてもぜいたくな演奏会でした。(栗原正篤) 演奏会形式ですが、ドラマが目に見えるようでした。デュトワ の12月オペラ・シリーズが長く続くことを希望します。(蝦名 和郎) 演奏会形式ながら、各ソリスト全員が素晴らしい歌唱を聴か せてくれたことで、オペラの醍醐味を堪能できました。もちろ んN響もデュトワの指揮のもと、熱く素晴らしい演奏でした。 (原田泰典) デュトワさんの心揺さぶる指揮に、レベルの高い歌手陣を得 て、そこにN響の熱演が加わり、ステージ・オペラ特有の緊張 感に満ちた感動的な演奏だった。(岡本博生) バークミンの鬼気迫るサロメはまさに(サロメ)そのもの。デュト ワとN響の迫力ある演奏と相まって素晴らしいドイツ・オペラを 聞きました。(上田真) トゥール/アディトゥス(2000/2002) ショスタコーヴィチ/ヴァイオリン協奏曲第1番イ短調作品77 バルトーク/管弦楽のための協奏曲 パーヴォ・ヤルヴィと五嶋みどりの熱演を聴ける興奮、感動、喜 び、緊張で、前半が終わった段階でくたくたになってしまった。 久しぶりに味わうことができた音楽の喜び! 何物にもかえがた いものであった。二十数年ぶりに聴いた五嶋の成長にただた だ脱帽するのみ。(鈴木邦昭) パーヴォ・ヤルヴィの棒と神にとりつかれたような五嶋みどりの ショスタコーヴィチ。今まで何回も聴いた曲なのに初めてこの 曲の真理が理解できた。今年聴いたすべてのコンサートで間 違いなくナンバーワンの演奏。身が震えるような感動をありがと う。(寺田明弘) 五嶋みどりさんの熱演に感動した。トゥールの作品も面白かっ た。(富田真以子) 五嶋みどりさんの実演を久しぶりに聴いたのですが、まるで音 楽の神が降りてきたようなシャーマニスティックな演奏に打たれ ました。こんなショスタコーヴィチは初めて。パーヴォ・ヤルヴィ の《管弦楽のための協奏曲》も、ひとつひとつの民俗的旋律 が生き生きと躍動する名演でした。(星井渉) 10月Cプロ  第1819回| 10月23日、24日

3

パーヴォ・ヤルヴィ

指揮

五嶋みどり(ヴァイオリン)

(4)

ビルギット・レンメルト(アルト) 東京音楽大学(女声合唱) NHK東京児童合唱団(児童合唱) 12月Cプロ  第1824回| 12月11日、12日

4

シャルル・デュトワ(

指揮

マーラー/交響曲第3番ニ短調 マーラーの壮大な楽曲が、透けて見えるほどの全体構築力で 聴かせていただきました。アルト・ソロ、コーラスもとても瑞々しく てよかったです。(渡辺弘樹) マーラー《交響曲第3番》最終楽章の弱音の表情がすばらし かった。管楽器、特にトランペットおよびポストホルンの演奏は これまでの多くの海外オケを含めて最高でした。(白井眞) マーラーの《交響曲第3番》がこんなに素晴らしい曲だったとは! 最初から最後まで一音たりとも緩みがなく、穏やかな部分の美 しさも格別。終始、感動の連続でした。N響の力量も存分に 発揮された最高の演奏だったと思います。(小林晴彦) 参りましたの一言です。最後まで途切れない緊張感にあふれ た感動的な演奏でした。(丸山純一) アリサ・ワイラースタイン(チェロ) 2月Aプロ  第1802回| 2月7日、8日

5

パーヴォ・ヤルヴィ

指揮

エルガー/チェロ協奏曲ホ短調作品85 マーラー/交響曲第1番ニ長調「巨人」 2日目を聴く。世界トップレベルの演奏会が《巨人》で展開。 各パートの歌が、心にしみた。その歌が重層的であることに、 パーヴォが N響と築いていくこれからの歴史的な場と認識し た。若い聴衆の心に強い火を灯した。(永田重樹) パーヴォ・ヤルヴィ氏の首席就任を控えた公演だったので楽し みにしていました。マーラー《第1番》は聴く機会が多かったの で他のプログラムがよいなとも思いましたが、ヤルヴィ氏とN響 の相性の良さを感じさせる公演でした。(今泉美輪) パーヴォ・ヤルヴィ氏の指揮でN響の音が変わった(特にダイナ ミックレンジの幅が大きくなった)と感じました。マーラーを聴き終 わった後、涙が止まりませんでした。(冨永尚史) エルガーの《チェロ協奏曲》に込められた悲しみや孤独を誇張 なく伝える演奏が深く心に残った。(野田淑子) 6位|9月Bプロ|第1815回|9月16日、17日 ヘルベルト・ブロムシュテット(指揮) ベートーヴェン/交響曲 第1番 ハ長調 作品21 ベートーヴェン/交響曲 第3番 変ホ長調 作品55「英雄」 7位|2月Cプロ|第1803回|2月13日、14日 パーヴォ・ヤルヴィ(指揮) 庄司紗矢香(ヴァイオリン) シベリウス/ヴァイオリン協奏曲 ニ短調 作品47 ショスタコーヴィチ/交響曲 第5番 ニ短調 作品47 8位|11月Cプロ|第1821回|11月20日、21日 ウラディーミル・フェドセーエフ(指揮) チョ・ソンジン(ピアノ) ショパン/ピアノ協奏曲 第1番 ホ短調 作品11 グラズノフ/バレエ音楽「四季」作品67―「秋」 ハチャトゥリヤン/バレエ組曲「ガイーヌ」―「剣の舞」   「ばらの少女たちの踊り」「子守歌」「レズギンカ舞曲」 チャイコフスキー/序曲「1812年」作品49 9位|9月Aプロ|第1816回|9月26日、27日 ヘルベルト・ブロムシュテット(指揮) ティル・フェルナー(ピアノ) ベートーヴェン/交響曲 第2番 ニ長調 作品36 ベートーヴェン/ピアノ協奏曲 第5番 変ホ長調 作品73「皇帝」 10位|1月Aプロ|第1799回|1月10日、11日 ジャナンドレア・ノセダ(指揮) アレクサンダー・ガヴリリュク(ピアノ) フォーレ/組曲「ペレアスとメリザンド」作品80 プロコフィエフ/ピアノ協奏曲 第3番 ハ長調 作品26 ベートーヴェン/交響曲 第5番 ハ短調 作品67「運命」

(5)

14 NHK SYMPHONY ORCHESTRA, TOKYO PHILHARMONY | APRIL 2016 ひたすら「音」と向き合い、全身全霊で弾く姿に圧倒されました。凄ま じいオーラを放つ Midoriの演奏を生で聴く喜びに酔いしれました。ス テージも客席も、いつもと違う空気を感じました。(疋田和代) 靴音のよく響く靴で、舞台に登場されたときから期待が高まりました。ご 自身の足で、リズムを刻みながらのカデンツァは、圧巻でした。生演奏 で聴くことができて、宝物がひとつ増えたように感じています。(谷口馨) ショスタコーヴィチの《ヴァイオリン協奏曲》がすごかった。特に何か にとりつかれたような第3楽章のカデンツァは本当にすごかった!(高 橋勝弥)

ショスタコーヴィチ/ヴァイオリン協奏曲

1

イ短調

作品

77

最も心に残ったソリスト2015 10月Cプロ  第1819回| 10月23日、24日

1

五嶋みどり

ヴァイオリン

12月Aプロ  第1823回| 12月4日、6日

2

グン・ブリット・バークミン(

サロメ

R.シュトラウス/楽劇「サロメ」(演奏会形式) 6月Cプロ  第1812回|6月12日、13日

3

ラデク・バボラーク

ホルン

モーツァルト/ホルン協奏曲第1番ニ長調 K.412 R.シュトラウス/ホルン協奏曲第1番変ホ長調作品11 2月Cプロ  第1803回| 2月13日、14日

4

庄司紗矢香(

ヴァイオリン

シベリウス/ヴァイオリン協奏曲ニ短調作品47

5

5月Bプロ | 第1810回 | 5月20日、21日 ギル・シャハム(ヴァイオリン) メンデルスゾーン/ヴァイオリン協奏曲ホ短調作品64 6月Aプロ | 第1811回 | 6月6日、7日 ルノー・カプソン(ヴァイオリン) ラロ/スペイン交響曲ニ短調作品21 11月Cプロ | 第1821回 | 11月20日、21日 チョ・ソンジン(ピアノ) ショパン/ピアノ協奏曲第1番ホ短調作品11

(6)

10月Cプロ  第1819回| 10月23日、24日

投票を通じて寄せられたみなさまの声

パーヴォ・ヤルヴィを首席指揮者に迎えて、今まで以 上に奏でる音楽に深みが出てきた、素晴らしいシーズ ンだったと思います。今後にさらなる期待をしています! (長谷川尚斗) 19年前、病院から外出許可をもらって聴いたのがブロ ムシュテットのベートーヴェンの《第2番》だった。元気 になって再び聴けて感無量です。(幸純一) 2月に聴いた《巨人》や《英雄の生涯》のプログラム が素晴らしかったので、N響の会員になりました。今後 のパーヴォ・ヤルヴィとN響の演奏に期待しております。 (石川友規) いまどき、NHKホール自由席の1500円は助かります。よ り、良質なコンサート企画に期待しています。(今井達朗) 昨年9月からAプロ年間会員に久方ぶりに復帰。在京 オケ鑑賞を経て、N響のプログラミングの良さ・指揮者・ ソリスト・技術レベルの高さを痛感。(伊福正明) R.シュトラウス《歌劇「サロメ」》、ドビュッシー《ペレアス とメリザンド》、ベルリオーズ《テ・デウム》、ストラヴィン スキー《夜鳴きうぐいす》、バルトーク《青ひげ公の城》 ─過去5年間に定期で演奏されたデュトワ指揮の 曲目。演奏会形式とはいえ、オペラがズラリ。年末は 《第9》が恒例イベントですが、デュトワ指揮の定期は もう一つの注目コンサートです。(千秋亀三雄) 単身赴任先の名古屋でFM生中継を聴いていました。 特に11月Bプロ、マリナー指揮の端正なモーツァルト と、豊かな響きに満ちたブラームスに大変感動しました。 (斎藤寿男) パーヴォ・ヤルヴィ首席指揮者就任、あらためておめで とうございます。そして、ここまでの NHK交響楽団サイ ドの尽力に深く感銘しております。マエストロ、パーヴォ のお陰でクラシック、特にオーケストラへの関心を持 つヤングユーザーがさらに増えること期待しております。 (嶋谷宏明) 昨年はパーヴォ・ヤルヴィ元年。N響の新しい魅力を 引き出してくれると思います。今年のプログラムも楽し みです。(田村寿栄) 1月のノセダによる鮮烈な《運命》から12月のデュトワ 快演3連発まで、まさに快進撃といっていい1年だった と思います。パーヴォ・ヤルヴィ効果に加え、新たなメ ンバーの活動も印象的。マーラー《第3番》での菊本 さんはすごかった!! (吉田淳) 12月Cプロ2日目(マーラー《交響曲第3番》)の金管 は、出色の出来栄えであったと思います。たいへんリ ラックスした雰囲気のなか、芯のある伸びやかな音色 が、ホールを満たしていた感があります。こうした金管 の音色に、大いに感動しました。(河村秀俊) 招聘してほしい指揮者ベスト5 1 ヘルベルト・ブロムシュテット 2 サイモン・ラトル 3 エサ・ペッカ・サロネン 4 グスターボ・ドゥダメル 5 ファビオ・ルイージ 招聘してほしいソリストベスト5 1 マルタ・アルゲリッチ(ピアノ) 2 五嶋みどり(ヴァイオリン) 3 ヒラリー・ハーン(ヴァイオリン) 4 庄司紗矢香(ヴァイオリン) 5 アンネ・ゾフィー・ムター(ヴァイオリン)

(7)

16 NHK SYMPHONY ORCHESTRA, TOKYO PHILHARMONY | APRIL 2016

Leonard Slatkin

 レナード・スラットキンがまたN響に来てく れる。2012年以来だから4年ぶりだ。本当 は2014年11月にも来日が予定されていた のだが、健康上の理由で中止となり、定期公 演はネヴィル・マリナーが代役を務めたのだっ た。若々しいイメージが強いが、70代を迎え、 今やアメリカを代表する巨匠となったスラット キン。今回の来日では、3回の演奏会に得意 のレパートリーをずらりと揃そろえてくれた。  古くからのファンならご記憶かと思うが、 スラットキンの名を一躍有名にしたのは、 1983年に『タイム』誌が発表した全米オーケ ストラ・ランキングだった。この記事で、彼が 音楽監督を務めるセントルイス交響楽団が、 名だたる強豪オーケストラを抑え、シカゴ交 響楽団に次ぐ2位に選ばれたのだ。そしてそ の翌年、1984年10月には、早くもスラットキ ンとN響の共演が実現する。以来、スラット キンとN響は、信頼関係を育み、名演を重 ね、今回で実に9回目の共演となった。  さて、国際的に活躍した最初のアメリカ人 指揮者は、言うまでもなくレナード・バーンスタ インだ。しかし、それに続く人はなかなか出 てこなかった。1983年頃を思い出してみる と、いわゆるメジャー・オーケストラを率いて

Leonard Slatkin

レナード・スラットキン

アメ

を代表

指揮者

文脈豊

プロ

ラム

を堪能

今月のマエストロ

©Cybelle Codish スラットキンの描く バーンスタインのポートレート

(8)

Leonard Slatkin

いたのは、メータ、小澤征爾、ショルティ、ムー ティといった米国人以外の指揮者ばかりだっ たし、レヴァインやティルソン・トーマスはようや くまだ期待の若手という感じだった。だから スラットキンの登場は、バーンスタインに続く 有望な才能の出現という受け止められ方を していたと記憶する。実際、バーンスタインと 同じく、ロシアから移住したユダヤ人の家に 生まれ、同じファーストネームを持ち、20世紀 のアメリカ音楽を熱心に演奏するとなれば、 比較してしまうのも自然なことだろう。さらに は野球、特にセントルイス・カージナルスを熱 愛し、コンサート中に試合の途中経過を聴 衆にアナウンスしたり、中継放送のゲストとし て出演したりしたこともある、などという気さく な人柄も、バーンスタインと同様に愛された。  ただ、音楽家としては、スラットキンとバー ンスタインは正反対と言ってもいいほど違う。 熱烈な高揚や濃厚な表情を持ち味とする バーンスタインに対し、スラットキンは調和の とれた温かい響きと気品のある表現が身上 だ。また、ニューヨーク・フィルハーモニックに 次ぐ古い歴史を持ちながらぱっとしなかった セントルイス交響楽団を一流のアンサンブル に育て上げたスラットキンが腕の確かなオー ケストラ・ビルダーであったのに対して、バーン スタインは、どちらかというと、完成したアン サンブルをドライブする方に才能を発揮した。 さらに細かいことを言うなら、バーンスタイン が拒否感を隠さなかったマーラーの《交響曲 第10番》の5楽章版をスラットキンは積極的 に演奏しているし、バーンスタインがエルガー の《変奏曲「謎」》で名演を残しながらも険悪 な関係になったBBC交響楽団を、スラットキ ンは首席指揮者として5年間率いた。  そう思うと、今回のBプログラムは興味深 い。この演奏会でスラットキンが指揮する のは、そのバーンスタインの代表作3曲と、 バーンスタインが十八番にしていたマーラーの 《交響曲第4番》だ。スラットキンはバーンス タインの弟子だったわけではないが、他のア メリカの指揮者と同様、彼のことを深く尊敬 していて、3つの交響曲をはじめとする彼の 作品を熱心に演奏し、録音している。この演 奏会は、スラットキンの描く、バーンスタイン のポートレートと言えるかもしれない。  Aプログラムもまた、偉大な先輩指揮者た ちをリスペクトする曲目が含まれている。前半 は、珍しい管弦楽編曲によるバッハ作品集 なのだが、それらの編曲者が、スラットキンも 何度も出演したロンドンの名物行事「BBC プロムス」を草創期から支えたヘンリー・ウッ ド、そしてアメリカのオーケストラ界を長年に わたって支えたストコフスキーやオーマンディ

レナード・スラットキン

先輩指揮者や武満徹などへの 敬意に満ちたプログラム

(9)

18 NHK SYMPHONY ORCHESTRA, TOKYO PHILHARMONY | APRIL 2016 ら、往年の名指揮者たちなのだ。そして後半 は、スラットキンの得意のプロコフィエフ作品 から、最高傑作のひとつである《交響曲第5 番》だ。スラットキンはこの曲を1984年にセ ントルイス交響楽団と録音している。それか ら32年、円熟を重ねた現在のスラットキン は、あの美しい第3楽章をどのように演奏し てくれるだろうか。  Cプログラムでは、今年没後20年を迎え る武満徹の《系図(ファミリー・トゥリー)》が演奏 される。成人の語り手が起用されることも少 なくないこの曲だが、今回は「12歳から15 歳の少女が望ましい」という作曲者の言葉 通り、15歳の山口まゆが語り手を務める。ス ラットキンは武満徹をしばしば取りあげてい て、N響でも1993年5月定期で《ア・ストリン グ・アラウンド・オータム》を演奏した。そして もちろん、1995年に《系図》を、ニューヨーク・ フィルハーモニックとともに世界初演した指 揮者もスラットキンだった。今や、世界中の オーケストラのレパートリーとなっている武満 徹だが、日本で、日本人以外の指揮者によ る演奏を聴く機会はさほど多くない。スラット キンの作る、温かくも冴え冴えとした響きは、 晩年の武満作品にいかにもふさわしく思わ れる。名演を期待しよう。 [ますだりょうすけ/音楽評論家]  現代アメリカを代表する指揮者のひとりであるレナード・スラットキンは1944年、指揮者、ヴァイオリニストと してハリウッド弦楽四重奏団などを創設したフェリックス・スラットキンを父に、同団のチェリストだったエレノア・ アラーを母に、ロサンゼルスで生まれた。ジュリアード音楽院ではジャン・モレルから指揮を学んだ。1979年、 米国で2番目に古い歴史を持つ名門オーケストラ、セントルイス交響楽団の音楽監督に就任、短期間に演 奏水準を飛躍的に引き上げ、一躍名声を得た。その後スラットキンは、ワシントン・ナショナル交響楽団音楽 監督やBBC交響楽団首席指揮者を歴任し、現在はデトロイト交響楽団とフランス国立リヨン管弦楽団の 音楽監督を務めるほか、世界中の一流オーケストラに客演している。また、これまでに録音したアルバムは 100枚を超え、グラミー賞を7度も受賞するなど高い評価を受けている。  NHK交響楽団とは、1984年以来、すでに8度もの共演を重ねている。今回は2012年以来の共演とな る。[増田良介] プロフィール

(10)

指揮]レナード・スラットキン

コンサートマスター]篠崎史紀、伊藤亮太郎*

[conductor]Leonard Slatkin

[concertmasterFuminori Shinozaki,

[concertmaster]Ryotaro Ito*

PROGRAM

A

第1832回

NHKホール

4/16

6:00pm

4/17

3:00pm

NHK Hall

Concert No.1832

April

16

(

Sat

)

6:00pm

17

(

Sun

)

3:00pm バッハ 無伴奏ヴァイオリン・パルティータ

3

番ホ長調

BWV1006

─前奏曲(

4

′)

*

Johann Sebastian Bach

(1685-1750)

Partita for Violin solo No.3 E major

BWV1006–Prelude

*

バッハ カンタータ「神よ、あなたに感謝をささげ ます」

BWV29

─シンフォニア(

4

′) (《無伴奏ヴァイオリン・パルティータ第3 ─前奏曲》の作曲者自身による編曲)

Johann Sebastian Bach

Wir danken dir,

Gott, wir danken dir

BWV29,

cantata–Sinfonia

(

Arranged by the Composer from “Partita for Violin solo No.3–Prelude”

)

バッハ(ウッド編)

組曲第

6

番─終曲(

4

′)

(《無伴奏ヴァイオリン・パルティータ第3

─前奏曲》の編曲)

Johann Sebastian Bach /

Henry Wood (1869-1944)

Suite No.6–Finale

(

Arranged from “Partita for Violin solo No.3–Prelude

)

バッハ(バルビローリ編)

カンタータ「狩りだけが私の喜び」

BWV208

─「羊は安らかに草を食み」

6

′)

Johann Sebastian Bach /

John Barbirolli (1899-1970)

Was mir behagt,

ist nur die muntre Jagd

BWV208, cantata

(11)

20 NHK SYMPHONY ORCHESTRA, TOKYO PHILHARMONY | APRIL 2016 プロコフィエフ 交響曲第

5

番変ロ長調作品

100

45

′) Ⅰアンダンテ Ⅱアレグロ・マルカート Ⅲアダージョ Ⅳアレグロ・ジョコーソ

Sergei Prokofiev (1891-1953)

Symphony No.5 B-flat major op.100

Ⅰ Andante Ⅱ Allegro marcato Ⅲ Adagio Ⅳ Allegro giocoso バッハ(ストコフスキー編) トッカータとフーガニ短調

BWV565

10

′)

Johann Sebastian Bach /

Leopold Stokowski (1882-1977)

Toccata und Fuge d minor

BWV565

バッハ(オーマンディ編)

カンタータ「心と口と行ないと命」

BWV147

─「主よ、人の望みの喜びよ」(

3

′)

Johann Sebastian Bach /

Eugene Ormandy (1899-1985)

Herz und Mund und Tat

und Leben

BWV147, cantata

Jesus bleibet meine Freude

・・・・ intermission ・・・・

(12)

 ベルリンのプロイセン文化財国立図書館には、次のような表題を持ったバッハ自筆の楽 譜が所蔵されている。「無伴奏ヴァイオリンのための6曲の独奏曲、第1巻、ヨハン・セバス ティアン・バッハ作、1720年」。1720年といえば、 バッハ(1685∼1750)は35歳、ケーテン 宮廷楽長を務めていた。ケーテン時代(1717∼1723年)のバッハは、音楽好きの君主レオ ポルト侯のために数多くの協奏曲、室内楽曲を作曲上演し、幸福な時代であった。しかし この年には最愛の妻、マリア・バルバラが急死するという家庭の悲劇もあった。さらにケー テン宮廷の音楽予算が軍備拡張の余波で削減された結果、バッハの仕事が減り、彼の目 がしだいに外に向き始めたともいわれている。さて上述の自筆譜は、表紙を含めて24葉か らなり、3曲のヴァイオリン・ソナタとパルティータとが、1曲ずつ交互に書き込まれている。雄 渾な筆致はバッハならでは。ひとつひとつの音符やスラーが、そのままバッハの意志を反映 しているかのようだ。「第1巻」というからには「第2巻」の自筆譜も存在したはずだが、残念 ながらすでに失われている。現在は、いくつかの筆写楽譜で伝えられている《無伴奏チェロ 組曲》(BWV1007∼1012)全6曲がそれにあたる。  3曲のソナタは、緩─急─緩─急の4楽章構成をとる典型的な教会ソナタ、他方、3曲の パルティータは、さまざまな舞曲を並置した室内ソナタないしは組曲である。  《パルティータ第3番ホ長調》は、〈前奏曲〉に始まり、〈ルール〉〈ガヴォット〉などが続くよう に、フランスの管弦楽組曲に近い構成がとられている。  今回演奏されるその第1曲〈前奏曲〉は3/4拍子。あたかもヴィヴァルディの協奏曲を彷彿 とさせるような華麗な音楽で、ヴァイオリニストに高度な演奏技術を要求する。開放弦の効 果的な用法、エコー効果と、バッハのパレットは多彩きわまりない。 [樋口 一]

Program A

バッハ

無伴奏ヴァイオリン・パルティータ

3

ホ長調

BWV1006

─前奏曲

作曲年代 1720年以前 初演 不明 楽器編成 ヴァイオリン・ソロ

(13)

22 NHK SYMPHONY ORCHESTRA, TOKYO PHILHARMONY | APRIL 2016  バッハ(1685∼1750)の半世紀にもおよぶ創作活動を俯瞰すると、若いころはオルガン 曲を多く作曲していたが、帝国自由都市ミュールハウゼンの聖ブラジウス教会オルガニスト 時代(1707∼1708年)から始まった教会カンタータに代表される宗教曲の作曲は、ライプ ツィヒ聖トーマス教会カントル時代(1723∼1750年)に、《ヨハネ受難曲》(BWV245)、《マタ イ受難曲》(BWV244)、そして《ミサ曲ロ短調》(BWV232)で頂点を迎える。教会カンター タだけでも約300曲、そのうち現存するものだけでも約200曲もある。  《カンタータ「神よ、あなたに感謝をささげます」》(BWV29)は、1731年8月31日、ライプ ツィヒの市参事会員交代式の礼拝で初演され、さらに1739年、1749年にも再演されてい る。当時のライプツィヒは、ザクセン選帝侯国の大学・商業都市だった。選帝侯は首都のド レスデンにいたため、市参事会による自治が許されていた。市民の代表である市参事会 員は12人ずつ3グループに分けられ、3年に1回ずつ交代で市参事会を構成した。市民自 治の象徴であるその交代は、朝7時から始まる市参事会員交代式で盛大に祝われた。市 参事会員交代式のためのカンタータには、通常の日曜日の礼拝のためのそれよりも多くの 予算がゆるされ、バッハも安心してトランペット3本とティンパニを含む華やかな編成の音楽 を用意することができたのである。バッハはこの〈シンフォニア〉のために、《無伴奏ヴァイオ リン・パルティータ第3番》(BWV1006)の〈前奏曲〉をオルガン独奏と管弦楽のために編曲 している。バッハの編曲はこれが初めてではなく、すでに1729年に上演された《主なる神、 万物の支配者よ(婚礼用カンタータ)》(BWV120a)の第2部の導入曲としても用いているの で、いわば二重の転用ということになる。この華やかな音楽がライプツィヒの市民たちを喜 ばせたことは疑いようもない。 [樋口 一]

Program A

バッハ

カンタータ「神よ、あなたに感謝をささげます」

BWV29

─シンフォニア

作曲年代 1731年 初演 1731年8月31日、ライプツィヒの市参事会員交代式の礼拝にて 楽器編成 オーボエ2、トランペット3、ティンパニ1、オルガン1、弦楽

(14)

 ヘンリー・ウッド(1869∼1944)は、イギリスの指揮者・編曲者である。父は職人で模型製 作者。音楽好きの両親のもとで幼いウッドは才能をのびのびと育んだという。ピアノ、ヴァイ オリン、オルガンを学び、1883年にはロンドンの博覧会で、オルガンの公開リサイタルを開 いている。1886∼1888年、王立音楽院で学び、卒業後はフラムの聖ジョンズ教会のオル ガニスト兼合唱隊指揮者を務めた。1888年には、クランプトン音楽協会で指揮者としてデ ビューしている。オペラ指揮者としての経験を積んだ後、1895年にロンドンのクイーンズホー ルで始まった「プロムナード・コンサート」(現在のBBCプロムス)の指揮者に、26歳で任命さ れたことが彼の生涯を決定した。戦後はロイヤル・アルバートホールに会場を移し、現在で は、世界中に知られるようになったロンドンの夏の名物コンサート・シリーズだが、その最終 夜を飾る定番曲《ルール・ブリタニア》も、彼の管弦楽編曲である。  「プロムス」でのウッドは、気取らない雰囲気で大衆に音楽を楽しんでもらうことを大切に しながら、同時に、エルガーなど数多くのイギリスの作曲家、さらにはドビュッシー、リヒャルト・ シュトラウス、シベリウス、マーラーなど、ヨーロッパの作曲家の新作の初演も数多く行っている。  世紀末から20世紀初頭にかけては、バッハ(1685∼1750)やヘンデルなどのバロック音 楽が上演される機会もまだ少なかったが、ウッドはそれらの作品を大管弦楽のために編曲 して上演し、普及に努めた。バッハ作曲/ウッド編曲による《組曲第6番》は、バッハの《平 均律クラヴィーア曲集》《旅立つ最愛の兄に思いを寄せる奇想曲》《無伴奏ヴァイオリンのた めのパルティータ第3番》と《イギリス組曲》に基づく6曲からなる組曲で、今回演奏される〈終 曲〉は、《パルティータ第3番》の〈前奏曲〉に基づく大規模な管弦楽編曲である。 [樋口 一]

Program A

バッハ(

ウッド編

組曲

6

番─終曲

作曲年代 原曲は1720年以前 初演 不明 楽器編成 フルート3、オーボエ2、イングリッシュ・ホルン1、クラリネット3、ファゴット2、コントラファゴット1、ホルン 4、トランペット3、トロンボーン3、テューバ1、ティンパニ1、弦楽

(15)

24 NHK SYMPHONY ORCHESTRA, TOKYO PHILHARMONY | APRIL 2016  ジョン・バルビローリ(1899∼1970)は、イギリスの大指揮者である。イタリア人の父とフ ランス人の母の間にロンドンで生まれている。1916年にヘンリー・ウッドが率いるロンドン・ クイーンズホール管弦楽団の最年少のチェロ奏者として音楽活動をはじめたが、1925年 に指揮者に転向した。1927年、ロンドン交響楽団の演奏会でビーチャムの代理を務めた 後、1931年にはスコットランド管弦楽団の客演指揮者、さらに3シーズンは同楽団の常任 指揮者となった。1936∼1937年のシーズンにはニューヨーク・フィルハーモニー交響楽団 (現ニューヨーク・フィルハーモニック)の客演指揮者を務め、そのときの成功により、彼はトスカ ニーニの後を継ぐ常任指揮者として5年間を務め上げた。同楽団の創立100年記念となっ た1941∼1942年のシーズンには、トスカニーニをふくむ著名な指揮者たちと指揮をする 栄誉を担った。1942年には、大戦下にもかかわらずイギリスを訪れ、ロンドン交響楽団、 BBC交響楽団、ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団を指揮した。1943年から1970年の あいだ、イギリスのマンチェスターにあるハレ管弦楽団の首席指揮者として名声を博し、と くにマーラーの交響曲に名演を残している。バッハ(1685∼1750)だけでなく、パーセルや バードの管弦楽編曲を残しているのは、ウッドの影響だろう。  バッハの世俗カンタータ《狩りだけが私の喜び》(BWV208)は、「狩りのカンタータ」とも呼 ばれ、おそらく1713年(あるいは1712年)2月23日、ワイマール近郊ワイセンフェルスの城館 で、狩りが好きだったザクセン・ワイセンフェルス公クリスティアンの誕生日のために初演され た。その第9曲〈羊は安らかに草を食み〉は、領民の平和を保証する領主クリスティアン公 の治世を称えるおだやかで美しい旋律が愛されている。NHK-FM「あさのバロック」の テーマ音楽としても親しまれていた。 [樋口 一]

Program A

バッハ(

バルビローリ編

カンタータ「狩りだけが私の喜び」

BWV208

─「羊は安らかに草を食み」

作曲年代 原曲は1712年ないし1713年 初演 原曲は1713年(ないし1712年)2月23日、ワイマール近郊ワイセンフェルスの城館にて 楽器編成 フルート4、オーボエ2、イングリッシュ・ホルン2、ファゴット2、弦楽

(16)

 ユージン・オーマンディ(1899∼1985)は、ハンガリー出身のユダヤ系アメリカ人指揮者で ある。1936∼1938年、ストコフスキーとともにフィラデルフィア管弦楽団共同指揮者を務め たあと、1938∼1980年の42年間、同楽団をその音楽監督として鍛え上げ、「フィラデルフィ ア・サウンド」と呼ばれる豊麗な響きを生み出した。その幅広いレパートリーは、厖大な録 音によって世界の音楽ファンに親しまれている。その中には、バッハ(1685∼1750)のオル ガン曲やカンタータを大オーケストラのために編曲したものも複数ある。ストコフスキーの影 響と考えられるが、アメリカにおけるバッハ音楽普及のひとつの重要なかたちを示している といってよい。  バッハの教会カンタータ《心と口と行ないと命》(BWV147)は、1723年7月2日のマリア訪 問の祝日の礼拝式において、ライプツィヒで初演された。天使ガブリエルによって受胎を告 知されたマリアは大きな不安に悩まされていたが、高齢にもかかわらず妊娠したという親せ きのエリザベトを訪問したところ、その胎内の子(のちの洗礼者ヨハネ)が喜びのあまり踊った ことを知り、初めて神の子を身ごもった喜びを自覚した。マリア訪問の祝日とは、このことを 記念する祝日で、現在、プロテスタント教会で祝われることはないが、バッハの時代のライプ ツィヒでは、マリア信仰の伝統が根強く、バッハもまたこうした美しいカンタータを残している。  《主よ、人の望みの喜びよ》は、2部からなるカンタータの最後を飾るコラールで、「イエスは 常に私の喜び。わが心の慰めであり、命の水」と、神の子イエスを称えるものである。イギリ スのピアニスト、マイラ・ヘス(1890∼1965)によるピアノ独奏のための編曲によって、世界中で 愛されるようになった。オーマンディによる管弦楽編曲を聴けるのもうれしいではないか。 [樋口 一]

Program A

バッハ(

オーマンディ編

カンタータ「心と口と行ないと命」

BWV147

─「主よ、人の望みの喜びよ」

作曲年代 原曲は1723年7月2日以前 初演 原曲は1723年7月2日、ライプツィヒにて 楽器編成 弦楽

(17)

26 NHK SYMPHONY ORCHESTRA, TOKYO PHILHARMONY | APRIL 2016  レオポルド・ストコフスキー(1882∼1977)はポーランドとアイルランドの移民の子としてロン ドンに生まれ、13歳で王立音楽大学に入学。1902年、ピカデリーの聖ジェームズ教会の オルガニスト、聖歌隊指揮者となり、1903年にはオックスフォード大学クイーンズ・カレッジで 音楽学士号を取得。1905年にはニューヨークの聖バーソロミュー教会のオルガニストとな る。1909年、パリで急病の指揮者の代わりに指揮をしてデビュー。その成功がきっかけで、 シンシナティ交響楽団の指揮者となった。1912∼1940年、フィラデルフィア管弦楽団常任 指揮者。その後、全米青少年管弦楽団、ニューヨーク市交響楽団、ハリウッドボール交響 楽団、アメリカ交響楽団を次々に結成し、アメリカの交響楽運動の第一線にたち続けた。  1941年、フィラデルフィア管弦楽団との戦前最後の演奏会がバッハ(1685∼1750)の《マ タイ受難曲》であったように、彼にとってバッハは常に大切なよりどころでもあった。  ストコフスキーは、映画という新しいメディアの可能性に早くから着目し、自ら出演すること によってクラシック音楽を大衆に届ける活動を行ってきた。『オーケストラの少女』(1937年)、 『カーネギー・ホール』(1947年)での活躍は伝説となった。しかしディズニーの音楽アニメー ション映画『ファンタジア』(1940年)こそは、彼の先見性を示す傑作だろう。演奏はすべて ストコフスキー指揮フィラデルフィア管弦楽団が担当し、ストコフスキーも実写のシルエットで 登場する。冒頭はバッハの《トッカータとフーガニ短調》で、この作品がバッハの代名詞とし て全世界で愛好される下地を作った。《トッカータとフーガ ニ短調》は、超絶技巧による印 象的なトッカータに、足 盤も使った4声のフーガが続く。オルガニストだったストコフスキー の大胆な管弦楽編曲は、今聴いても大いに刺激的である。 [樋口 一]

Program A

バッハ(

ストコフスキー編

トッカータとフーガ

ニ短調

BWV565

作曲年代 原曲は1702年ないし1703年以前 初演 不明 楽器編成 フルート4(ピッコロ2)、オーボエ3、イングリッシュ・ホルン1、クラリネット3、バス・クラリネット1、ファゴッ3、コントラファゴット1、ホルン6、トランペット4、トロンボーン4、テューバ1、ティンパニ1、チェレスタ1、 ハープ2、弦楽

(18)

 セルゲイ・プロコフィエフ(1891∼1953)は1913年に初めて外国旅行に出かけたのを きっかけに外国での演奏活動を始め、1918年には日本を経由してアメリカに居を移した。 その後、アメリカからヨーロッパ、そしてソ連への帰国へと、多くの亡命ロシア人音楽家が たどった方向(ロシアから欧州を経由してアメリカへと向かう流れ)とは真逆の経路をたどる。 しかも完全帰国をはたした1936年は、「エジョフシチナ」として知られる大粛清の始まり の年であった。そのため、プロコフィエフの一連の活動経路や帰国の決断にまつわる説 明には、よく軽率という表現がつきまとう。だが、ヨーロッパでの人気が翳りを見せていた 1930年代、ソ連の公演ではいずれも成功を収めていた。ほかにもフランス駐在ソ連大 使ウラディーミル・ポチョムキンから帰国後の厚遇を約束されていたこと、また常に自分の 強い味方でいてくれた10歳違いの朋友ニコライ・ミャスコフスキーから再三に渡って帰国 を勧められたことも、プロコフィエフの決断の現実的な後押しになったと想像する。  しかしながら、やはりソ連に帰国したプロコフィエフを待っていたのは決して平坦な道 ではなかった。自他ともに認める国民的作曲家として輝かしい時期を迎えることができ たのは、ようやく1940年代半ばになってのことである。それを象徴的に示しているのが、 1946年のスターリン国家賞第1席の4作品同時受賞であった。1946年には戦時下に あった1943∼1945年の3年分の授与がまとめて行われ、プロコフィエフはソ連音楽史 において後にも先にもこのとき一度きりの4作品での第1席同時受賞という快挙を果たし た。その4作品とはいずれも1944年に完成された《ピアノ・ソナタ第8番》《交響曲第5番》 《バレエ「シンデレラ」》、さらにプロコフィエフが音楽を創作したエイゼンシテイン監督の 映画『イワン雷帝』(第1部が1944年完成)である。  この頃、ソ連において交響曲は記念碑的なジャンルとして殊に重要視されており、プロ コフィエフが実に15年ぶりの交響曲となる《第5番》を完成させたのもこうした時流を受け てのことであった。さらに独ソ戦における戦局が完全に有利に展開するなか、ソ連の勝 利を確信する祝勝ムードにも合致し、1945年1月に作曲家自身の指揮で行われた初演 は大成功を収めた。  この作品ではそれまでのプロコフィエフ的な不協和音が影を潜め、全音階的な旋律と

Program A

プロコフィエフ

交響曲

5

変ロ長調

作品

100

(19)

28 NHK SYMPHONY ORCHESTRA, TOKYO PHILHARMONY | APRIL 2016 わかりやすい形式で書かれている。作品に表題はないが、後にプロコフィエフはこの曲で 「人間の精神の偉大さ」を表そうとしたと語った。  第1楽章 アンダンテ、変ロ長調、3/4拍子。ソナタ形式。冒頭でフルートとファゴットが 第1主題を牧歌的に奏でる。《オペラ「修道院での結婚」》や《バレエ「ロメオとジュリエッ ト」》といった舞台音楽の情景的な調べを彷彿とさせる。第2主題は叙情的な響き。再現 部冒頭、第1主題は打って変わって金管楽器による荘厳な雰囲気に包まれる。その祝祭 性は第2主題後のクライマックス、コーダでいっそう響きわたる。  第2楽章 アレグロ・マルカート、ニ短調、4/4拍子。ニ長調の中間部をもつスケルツォ。 諧 謔 的な主題が変奏されていく。この変奏の過程で、弱音器をつけた第1ヴァイオリンに よる16分音符のパッセージが流れる。近年の研究によると、これはもともと1930年代前 半に使っていたアイディア帖(スケッチブック)にあった楽想で、当初は《ロメオとジュリエット》 の草稿でエンディングに使われていたという。そのため、前楽章につづいてこの楽章がど こか情景的に響くのも当然といえば当然である。またこの事実は、プロコフィエフの楽想 に付随音楽・純粋器楽の境がなかったことの証ともいえるだろう。  第3楽章 アダージョ、ヘ長調、3/4拍子。楽譜上は長調の表記であるが、美しくも物 悲しい息の長いモノローグが流れる。その美しさは前の楽章のスケルツォとのギャップで さらに引き立っている。  第4楽章 アレグロ・ジョコーソ、変ロ長調、2/2拍子。ロンド形式。導入部では冒頭の パッセージにつづき、第1楽章の第1主題が流れる。つづくロンド主題ではプロコフィエフ 独特の半音階的な転調が愉しい。ここに副主題としてやはり第1楽章提示部最後に登 場する滑 なパッセージがつづく。中間部で低弦によって奏される旋律も上述のアイディ ア帖に残されていたもの。コーダではこれらの主題が一体化し、華やかに幕を閉じる。 [中田朱美] 作曲年代 1944年夏 初演 1945年1月13日、モスクワ音楽院大ホール、作曲者自身の指揮、ソ連国立交響楽団 楽器編成 フルート2、ピッコロ1、オーボエ2、イングリッシュ・ホルン1、クラリネット2、Esクラリネット1、バス・クラリ ネット1、ファゴット2、コントラファゴット1、ホルン4、トランペット3、トロンボーン3、テューバ1、ティンパ1、ウッド・ブロック、タンブリン、トライアングル、小太鼓、シンバル、サスペンデッド・シンバル、大太鼓、 タムタム、ハープ1、ピアノ1、弦楽

(20)

指揮]レナード・スラットキン

ソプラノ]安井陽子*

コンサートマスター]伊藤亮太郎

[conductor]Leonard Slatkin

[soprano]Yoko Yasui*

[concertmasterRyotaro Ito バーンスタイン

「キャンディード」序曲(

5

′)

Leonard Bernstein (1918-1990)

Candide

–Overture

バーンスタイン 「オン・ザ・タウン」 ─「

3

つのダンス・エピソード」(

10

′) Ⅰグレート・ラヴァー Ⅱロンリー・タウン:パ・ド・ドゥー Ⅲタイムズ・スクエア:1944年

Leonard Bernstein

On the Town

–Three Dance Episodes

Ⅰ The Great Lover displays himself

Ⅱ Lonely Town: Pas de deux

Ⅲ Times Square: 1944 バーンスタイン 「ウェストサイド物語」 ─「シンフォニック・ダンス」(

24

′) プロローグ─サムホエア─スケルツォ─マンボ ─チャチャ─出会いのシーン─クール・フーガ ─ランブル─終曲

Leonard Bernstein

West Side Story

–Symphonic Dances

Prologue–Somewhere–Scherzo–Mambo –Cha-cha–Meeting Scene–Cool Fugue –Rumble–Finale

PROGRAM

B

第1834回

サントリーホール

4/27

7:00pm

4/28

7:00pm

April

27

(

Wed

)

7:00pm

28

(

Thu

)

7:00pm ・・・・ intermission ・・・・ ・・・・ 休憩 ・・・・

Suntory Hall

Concert No.1834 マーラー 交響曲第

4

番ト長調(

*

54

′) Ⅰ落ち着いて、急がずに Ⅱゆったりとした動きで、慌てないで Ⅲ安らぎに満ちて:ポーコ・アダージョ Ⅳ非常にくつろいで

Gustav Mahler (1860-1911)

Symphony No.4 G major*

Ⅰ Bedächtig. Nicht eilen

Ⅱ In gemächlicher Bewegung. Ohne Hast

Ⅲ Ruhevoll: Poco adagio

(21)

30 NHK SYMPHONY ORCHESTRA, TOKYO PHILHARMONY | APRIL 2016  桐朋学園大学声楽科卒業。同大学研究科修了。二期会オペラ 研修所修了後、文化庁芸術家在外研修員としてウィーン国立音楽 大学に留学した。クラーゲンフルト市立劇場のヘンツェ《若き貴族》 イーダ役でヨーロッパ・デビュー。以来、《魔笛》夜の女王役、オッフェ ンバック《青ひげ》ロザリンデ役などで高い評価を受けた。  国内では、2008年 R.シュトラウス《ナクソス島のアリアドネ》の ツェルビネッタ役でデビュー。《ホフマン物語》オランピア、《フィデリ オ》マルツェリーネ、《ばらの騎士》ゾフィーの各役のほか、池辺晋一郎《鹿鳴館》(世界初演)顕子役 など幅広い役柄で好演。なかでも《魔笛》夜の女王は彼女の当たり役で、日生劇場、新国立劇場、 東京二期会の公演等に出演している。コロラトゥーラ・ソプラノとして確かな技術と豊かな表現力に 定評があり、コンサートでもソリストとして著名オーケストラと共演を重ねている。マーラー《交響曲第 4番》終楽章でもその清らかな声が存在感を示すだろう。二期会会員。 [柴辻純子/音楽評論家]

Program B

|SOLOIST

安井陽子(ソプラノ)

(22)

 バーンスタイン(1918∼1990)は、そのあふれる才能で指揮者、作曲者、教育者として多 彩な音楽活動を行った。作曲家としては《ウェストサイド物語》などのミュージカルで名を残し ている。  この序曲は、フランスの哲学者ヴォルテールが18世紀に書いた小説『カンディード』を原 作にした軽妙な喜歌劇のために作曲された。主人公キャンディードは哲学教授パングロス 博士の楽天的な世界観を信じていたが、恋人クネゴンデを探してリスボン、パリ、ブエノスア イレス、ヴェネチアと波乱の旅を続け、ようやく故郷のウェストファーレンに戻ってくる。そして 世の中は完全ではなく、現実に根ざしながら最善を目指すべきだと悟ることになる。  ウィットに富み洗練された《キャンディード》は評論家や玄人筋には受け入れられたものの、 ミュージカルとしては73回の上演、3か月もたたずに打ち切られた。しかし序曲はフル・オー ケストラで演奏できるよう作曲者バーンスタインによりオーケストレーションが施され、コンサー トで紹介された。それ以来《「キャンディード」序曲》はバーンスタイン作品の中で最も頻繁に 演奏される曲のひとつになっている。また原作こそフランス人によるものだが、力強くエネル ギッシュで、変拍子のひねりも効いた、華やかでアメリカ的な小品として親しまれている。  曲は、ファンファーレで高らかに始まり、めまぐるしく上下する元気な主題が続く。これと 対照的な叙情的旋律は、キャンディードとクネゴンデの二重唱〈幸せな私たち〉から取られ たもの。終結部にはクネゴンデのコロラトゥーラを駆使したアリア〈着飾ってきらびやかに〉 の旋律も登場する。 [谷口昭弘]

Program B

バーンスタイン

「キャンディード」序曲

作曲年代 1956年(ミュージカル版) 初演 ミュージカル初演は1956年12月1日、ニューヨークのマーティン・ベック劇場にて。フル・オーケストラ版の 初演は1957年1月26日、カーネギー・ホールにて、作曲者指揮、ニューヨーク・フィルハーモニックによる 楽器編成 フルート2、ピッコロ1、オーボエ2、Esクラリネット1、クラリネット2、バス・クラリネット1、ファゴット2、コン トラファゴット1、ホルン4、トランペット2、トロンボーン3、テューバ1、ティンパニ1、グロッケンシュピール、 シロフォン、トライアングル、シンバル、小太鼓、中太鼓、大太鼓、ハープ1、弦楽

(23)

32 NHK SYMPHONY ORCHESTRA, TOKYO PHILHARMONY | APRIL 2016  1944年4月18日、バーンスタイン(1918∼1990)は振付師ジェローム・ロビンズと組んで 制作した《バレエ「ファンシー・フリー」》を初演した。3人の水兵が24時間の上陸許可をも らい、ニューヨークの街に繰り出し、素敵な女性を探し、奪い合う物語だった。《オン・ザ・タ ウン》は、このバレエを発展させたもの。3人の水兵たちと3人の女性たちの間で繰り広げ られるラヴ・コメディーとニューヨークの街探検をメインに据えたミュージカルとなった。  《オン・ザ・タウン》はバーンスタインにとって初めてのミュージカルだったが、463回の公演 を記録した成功作となった。またフランク・シナトラが出演した映画(邦題『踊る大紐育(ニュー ヨーク)』)も作られ、現在でも広く親しまれている。今回演奏するのは、劇中に使われたダン ス・ナンバーを再構築して3曲からなる組曲にした《3つのダンス・エピソード》である。  第1曲〈グレート・ラヴァー〉は、「ミス地下鉄」に一目惚れするロマンチックな水兵ゲイビー が、彼女のために踊る自分の姿を夢想する場面から取られている、細かいモチーフが繰り 返されながら、エネルギッシュに展開される。  第2曲〈ロンリー・タウン:パ・ド・ドゥー〉は「恋人がいなければ、この街も寂しい」と歌うバ ラードである。バーンスタインのバラード・ナンバーとしては最も美しいもののひとつ。  第3曲〈タイムズ・スクエア:1944年〉は、日頃の任務から解放された3人の水兵たちが 期待と夢をふくらませて街へ飛び出していくときに歌う〈ニューヨーク・ニューヨーク〉のメロ ディを織り込んだ、賑やかな一曲である。 [谷口昭弘]

Program B

バーンスタイン

「オン・ザ・タウン」─「

3

つのダンス・エピソード」

作曲年代 ミュージカルの作曲は1944年。《3つのダンス・エピソード》の作曲は1945年 初演 ミュージカル初演は1944年12月28日、ニューヨーク、アデルフィ劇場にて。《3つのダンス・エピソード》 の初演は1946年2月13日、サンフランシスコ、シヴィック・オーディトリアムにて、作曲者指揮、サンフラ ンシスコ交響楽団による 楽器編成 フルート1(ピッコロ1)、オーボエ1(イングリッシュ・ホルン1)、クラリネット3(Esクラリネット1、バス・クラリネッ1)、アルト・サクソフォン1、ホルン2、トランペット3、トロンボーン3、テューバ1、ティンパニ1、サスペンデッ ド・シンバル、小太鼓、大太鼓、トライアングル、ドラムス、ウッドブロック、シロフォン、ピアノ1、弦楽

(24)

 作曲家バーンスタイン(1918∼1990)の地位を不動にした《ミュージカル「ウェストサイド物 語」》は、シェークスピアの『ロメオとジュリエット』を出発点とし、舞台を20世紀のニューヨー クにした。そこに2つの不良少年集団の対立がある。一方は「アメリカ人」を自称するジェッ ト団、もう一方はプエルトリコから移住してきたヒスパニック系のシャーク団である。そして 別々の団のメンバーであるトニーとマリアが恋に落ちるが、2人は引き裂かれる。今回演奏 される《シンフォニック・ダンス》は、1961年、ニューヨーク・フィルハーモニックの基金集めの ために催された演奏会を機に、ミュージカルから9曲を選んでメドレーにしたものである。  ジャズのリズムとフィンガー・スナッピングを伴った〈プロローグ〉では、敵対する街の不良グ ループが描かれる。一方〈サムホエア〉は、2つのグループが友情で結ばれる未来の希望を 表現する。〈スケルツォ〉による場面転換の後、ラテンの熱いリズムによる〈マンボ〉となり、火 花が飛び散る。〈チャチャ〉は、物語の主人公、トニーとマリアが一緒に踊る場面。神秘的な 和音による、2人がセリフを交わす〈出会いのシーン〉につづき、フーガを使った〈クール〉では、 ジェット団のリーダーが「クールに行こうぜ」と盛り上がり、〈ランブル〉、つまり格闘につながる。 悲劇的シーンの後はフルートの独奏があり、〈終曲〉はマリアの歌〈アイ・ハヴ・ア・ラヴ〉の旋律 が登場。繰り返される祈りのように曲は閉じられる。 [谷口昭弘]

Program B

バーンスタイン

「ウェストサイド物語」─「シンフォニック・ダンス」

作曲年代 ミュージカルの作曲は1955∼1957年。《シンフォニック・ダンス》の作曲は1960年 初演 ミュージカル初演は1957年9月26日、ニューヨーク、ウィンター・ガーデン劇場にて。《シンフォニック・ダ ンス》の初演は1961年2月13日、カーネギー・ホールにて、ルーカス・フォス指揮、ニューヨーク・フィル ハーモニックによる 楽器編成 フルート3(ピッコロ1)、オーボエ2、イングリッシュ・ホルン1、クラリネット2、Esクラリネット1、バス・クラ リネット1、アルト・サクソフォン1、ファゴット2、コントラファゴット1、ホルン4、トランペット3、トロンボーン3、 テューバ1、ティンパニ1、小太鼓、中太鼓、大太鼓、トムトム、コンガ、音程のある4つの太鼓、ボンゴ、 ドラムス、シンバル、サスペンデッド・シンバル、フィンガー・シンバル、カウベル、テューブラー・ベル、タ ムタム、トライアングル、フィンガースナップ、ティンバレス、警笛、ウッドブロック、タンブリン、マラカス、 ギロ、シロフォン、グロッケンシュピール、ヴィブラフォン、ハープ1、ピアノ1(チェレスタ1)、弦楽

(25)

34 NHK SYMPHONY ORCHESTRA, TOKYO PHILHARMONY | APRIL 2016  《交響曲第4番》の終楽章には、1892年に作曲され、1893年10月にはすでに初演さ れていた、ドイツ民謡集『こどもの不思議な角笛』の詩による歌曲《天上の生活》がそのま ま流用されている。マーラー(1860∼1911)はこの管弦楽伴奏歌曲を交響曲に組み込む というプランを早くから抱いており、もうひとつの『角笛』歌曲、《浮世の生活》と対にして 同じ交響曲に組み入れる、あるいは《第3交響曲》最終の第7楽章とする計画もあったが、 これらのプランがいずれも頓挫した後、1899年から翌年にかけて残りの3楽章が書き足 され、現在のような形になった。  《第3番》が1896年に完成されてから3年ほどブランクがあったわけだが、スタイルとし てはむしろすぐ続いて着手される《第5番》に近い作品で、マーラーの交響曲では唯一、ト ロンボーンとテューバを含まない、やや小ぶりな楽器編成も影響して、室内楽的かつ対位 法的な書法が目立っている。  終楽章の歌詞のたとえば第2節では、ヨハネ様(イエスに洗礼を施した人)が放す小羊 をヘロデ王(イエスの命を狙ってベツレヘムの赤子を虐殺した)が狙い、とうとう天使たちはそ の小羊=イエス・キリストを殺して食卓に乗せてしまう。今日ではバイエルンの司祭、ペー ター・マルセリン・シュトゥルム(1760∼1812)の作と判明しているが、あまりにも冒瀆的な 詩であり、この歌詞の露骨なアイロニーが作曲者を強く惹きつけたであろうことは、想像 に難くない。これと抱き合わせるプランもあった《浮世の生活》はパンを買えない母親が 麦を刈り、麦を打ち、パンを焼いている間にわが子を餓死させてしまうという悲惨きわま りない詩であり、そのような「地上の生活」(先の題名の直訳)から見れば、「天上の生活」 の飽食、享楽の様は許しがたいものとして相対化されざるをえない。  このような毒々しい終楽章を既定のゴールとして第1∼第3楽章を事後的に書いてゆく という、いわば「不自然」な作曲手順は、メルヘンチックな外見にもかかわらず、この作品 にメタ・ミュージック(音楽についての音楽)としての屈折した性格、つまりは「パロディ交響 曲」もしくはプロコフィエフの作品に十数年先立つ「古典交響曲」という性格を濃厚に付 与することになった。  第1楽章 落ち着いて、急がずに、ト長調、4/4拍子。終楽章にも登場する冒頭の鈴

Program B

マーラー

交響曲

4

ト長調

(26)

の音について作曲者は「道化の帽子についた鈴」と説明している。提示部は旋律素材が 豊富だが、展開部に入るとまもなくフルート4本のユニゾンで新たな主題が出る。展開部 の主役となるこの清冽な主題は終楽章冒頭主題の変形。展開部の大騒ぎの後、何事も なかったかのように再現部が始まること、静寂のうちに沈み込んでしまった再現部の終 わりから、ホルンのファンファーレによって音楽が無理やり喜ばしい終結へと追い立てら れること等々の仕様から、ソナタ形式のパロディと考えられる。  第2楽章 ゆったりとした動きで、慌てないで、ハ短調、3/8拍子。2つのトリオをもつレ ントラー。長2度高く調弦されたヴァイオリンを弾くコンサートマスターが中世以来のポピュ ラーな表象である「ヴァイオリンを弾く死神」を演ずる。文学ではホフマンスタールの戯曲 『痴人と死』、絵画ではベックリーンの『ヴァイオリンを弾く死神のいる自画像』、音楽では サン・サーンスの《死の舞踏》など、世紀末には特に好まれた表象であった。  第3楽章 安らぎに満ちて、ト長調、4/4拍子。《第3交響曲》第6楽章以来、マーラー 愛用の形式となった二重変奏曲。「天上の生活」と「地上の生活」の対比を思わせる両 主題のどぎついコントラスト、変奏自体のすこぶる奔放な作り(第1主題第2変奏ではアレグ ロ・モルトにまでテンポが上がる)のために、やはりパロディ色を払拭しがたい。すべての変奏 が終わった後、終楽章冒頭主題(第1楽章フルート主題)の変形がトランペットで強奏され、 突発的なクライマックスを築くと、そのまま終楽章に続いてゆく。  第4楽章 非常にくつろいで、ト長調、4/4拍子。前述の通りの歌曲楽章でソプラノ独 唱が登場。最後はテンポをゆるめて詩の原題「天国にはヴァイオリンがいっぱい」の通り の天上の音楽の描写となり、静かに消えてゆくが、むしろ重苦しいハープのつま弾きとコ ントラバスの最低音だけが残るという、「天上的」とは考えにくい凝ったオーケストレーショ ンにも注目してほしい。天国のヴァイオリンとは、実は死神のヴァイオリンではないのか。 [村井翔] 作曲年代 1899∼1901年 初演 1901年11月25日、ミュンへン。作曲者指揮、カイム管弦楽団、マルガレーテ・ミヒャリク(ソプラノ) 楽器編成 フルート4(ピッコロ2)、オーボエ3(イングリッシュ・ホルン1)、クラリネット3(Esクラリネット1、バス・クラ リネット1)、ファゴット3(コントラファゴット1)、ホルン4、トランペット3、ティンパニ1、グロッケンシュピー ル、トライアングル、シンバル、サスペンデッド・シンバル、タムタム、スレイベル、大太鼓、ハープ1、弦楽、 ソプラノ・ソロ

(27)

36 NHK SYMPHONY ORCHESTRA, TOKYO PHILHARMONY | APRIL 2016 Wir geniessen die himmlischen Freuden,

d’rum tun wir das Irdische meiden. Kein weltlich’ Getümmel hört man nicht im Himmel!

Lebt Alles in sanftester Ruh’! Wir führen ein englisches Leben! Sind dennoch ganz lustig daneben! Wir tanzen und springen,

wir hüpfen und singen!

Sanct Peter im Himmel sieht zu! Johannes das Lämmlein auslasset, der Metzger Herodes drauf passet! Wir führen ein geduldig’s, unschuldig’s, geduldig’s, ein liebliches Lämmlein zu Tod! Sanct Lucas den Ochsen tät schlachten ohn’ einig’s Bedenken und Achten, der Wein kost kein Heller

im himmlischen Keller,

die Englein, die backen das Brot. Gut’ Kräuter von allerhand Arten, die wachsen im himmlischen Garten! Gut’ Spargel, Fisolen und was wir nur

         うれしい愉しい天上の国 浮世のことは忘れよう 天の国には 地上の騒ぎはとどかない! どこもかしこも平穏そのもの! 天使のような暮らしぶり! とはいえ、まことに浮きうきわくわく! 歌って踊って 跳んでははねて! ペーテロさまが見ておわす! ヨハネスさまが小羊放せば 肉屋のヘロデがつけねらう! このおとなしいけがれない このかわいらしい小羊を われらは死なしてしまうのだ! 気づかいなどはどこへやら ルーカスさまは雄牛を殺め 天の蔵では 酒は無料 パンを焼くのは天使たち おいしい野菜は 庭にいっぱい! アスパラ、インゲン

マーラー 交響曲 第4番 ト長調 歌詞対訳

Mahler Symphony No.4 G major

訳◎檜山哲彦|Translation: Tetsuhiko Hiyama

4

楽章

IV

参照

関連したドキュメント

推計方法や対象の違いはあるが、日本銀行 の各支店が調査する NHK の大河ドラマの舞 台となった地域での経済効果が軒並み数百億

Given T and G as in Theorem 1.5, the authors of [2] first prepared T and G as follows: T is folded such that it looks like a bi-polar tree, namely, a tree having two vertices

以上の各テーマ、取組は相互に関連しており独立したものではない。東京 2020 大会の持続可能性に配慮し

、コメント1点、あとは、期末の小 論文で 70 点とします(「全て持ち込 み可」の小論文式で、①最も印象に 残った講義の要約 10 点、②最も印象 に残った Q&R 要約

 東京スカイツリーも五重塔と同じように制震システムとして「心柱制震」が 採用された。 「心柱」 は内部に二つの避難階段をもつ直径 8m の円筒状で,

 「世界陸上は今までの競技 人生の中で最も印象に残る大 会になりました。でも、最大の目

英国のギルドホール音楽学校を卒業。1972

 大都市の責務として、ゼロエミッション東京を実現するためには、使用するエネルギーを可能な限り最小化するととも